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2009年4月 1日 (水)

日銀短観の暗い面と明るい面

本日、日銀から今年3月調査の日銀短観が発表されました。統計のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断 DI は前回調査の▲24から▲58に大幅に悪化しました。もっとも、3月28日付けのこのブログのエントリーで取り上げたように、▲60に達すると見込んでいたシンクタンクもありましたので、おおよその予想通りと言えます。もちろん、メディアやよく分かっていないシロートさんは大騒ぎするのかもしれません。全体的な私の見方は、設備投資や先行き見込みなどで明るさが見られる一方で、言うまでもなく、まだまだ大きなリスクが残っているという意味で、明暗マチマチな結果だったと考えています。まず、いつもの通り、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス58と、第一次石油危機後の1975年5月(マイナス57)を下回り、1974年5月の統計開始以来、過去最悪になった。景気の急速な冷え込みを背景に、企業の2009年度の収益予想や設備投資計画も前年度比で減少した。ただ3カ月先の見通しについては約3年ぶりに景況感が改善した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。大企業製造業のDIは昨年12月の前回調査(マイナス24)から34ポイント下がり、悪化幅も過去最大になった。3カ月先の見通しは今回と比べて7ポイント上昇した。

次に、規模別・業種別の業況判断 DI の表は以下の通りです。単位は通常通り、、「良い」から「悪い」を引いた差の%ポイントです。もちろん、2009年6月の計数は3月調査の時点での見通しです。

 2008/92008/122009/32009/6
全産業▲14▲24▲46▲52
大企業製造業▲3▲24▲58▲51
中堅企業製造業▲8▲24▲57▲61
中小企業製造業▲17▲29▲57▲63
大企業非製造業1▲9▲31▲30
中堅企業非製造業▲12▲21▲37▲45
中小企業非製造業▲24▲29▲42▲52

いつもの業況判断 DI のグラフは以下の通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業です。

業況判断 DI の推移

グラフを見ての通りなんですが、少なくとも、大企業については製造業・非製造業ともに6月にはやや上向くとの予想になっていることも確かです。製造業での生産や在庫の調整が年央に向けて一巡するとの見通しに基づいているであろうことは容易に想像されます。しかし微妙な数字だという気もします。3月28日付けのエントリーではロイター短観が16ポイントの改善を見たことを上げて、日銀短観でも現状と先行きで10ポイントくらいの開きがあれば企業マインド上向きの兆しと書きましたし、逆に、5ポイントくらいであれば生産や在庫の調整が、平たく言って優良企業の範囲にとどまっていると私は考えていたんですが、この5ポイントと10ポイントの間のグレーゾーンに落ちたような気がします。やや明るい兆しを見出すことも出来そうに思いますが、繰返して何度も書いているように、最終需要の動向次第で、この先、まだまだ大きなリスクが残っていることは明らかです。

設備と雇用の判断 DI の推移

特に、私が大きなリスクと考えているのが、経済学でいうところの生産要素、すなわち、設備と雇用です。上のグラフはこの設備と雇用の判断 DI です。上の方のパネルが設備、下が雇用で、プラスになるほど過剰感が強いことを示していますが、設備と雇用もここ2-3四半期で一気に過剰感が高まっているのが見て取れます。設備や労働に対する需要が減少すれば、最終需要に大きな影響を及ぼします。設備投資については後述のように明るい面もありますが、特に、雇用については雇用者数とともに賃金への下方圧力が加わることが明らかです。

設備投資計画

上のグラフは過去2年間と今回調査の設備投資計画の推移です。日銀短観は統計としてのクセがあり、年度が始まる直前の3月調査では低めに出て、年度が始まった6月調査でかなり上方修正された後、年度を通して横ばいないし6月調査時点からは少し下方修正されるというパスを描きます。2007年度と2008年度に見られる通りです。しかし、2009年度の設備投資計画については、上のグラフは大企業だけを取り出していますが、年度が開始される直前の3月時点で▲6.6%減の計画となっているものの、2桁マイナスとの予想もあったにしては、設備投資は底堅い推移をする可能性も大いにあり得ます。大企業の中でも製造業が大きなマイナスを計画しているのに対して、大企業非製造業は小幅のマイナスにとどまっています。繰返しになりますが、全体として底堅いと評価できると私は考えています。これには、グラフは書きませんでしたが、資金繰り判断も加味されている可能性があります。大企業でも資金繰り判断 DI がマイナスに突っ込んだので危惧する向きもあるかもしれませんが、現状では、もちろん、資金繰り判断は悪化しているとはいえ、政府や日銀の対策により過去の景気後退期ほどのひっ迫でないことも確かです。しかし、他方で、収益計画は過去最悪となっており、今後の売上次第では設備投資も下方修正されかねない可能性は残ります。ここでも、明暗マチマチのグレーゾーンなのかもしれません。

全国と長崎の業況判断 DI の推移

最後に、日銀長崎支店から夕刻に発表された長崎短観を全国の全規模全産業と比較したものが上のグラフです。大きく悪化していることは全国の傾向と変わりありませんが、その度合いは比較的緩やかと見えます。ただし、足下で造船の商談成立が困難になっていると日銀長崎支店はリポートしており、今後の方向性は製造業で特に悪化すると見込まれています。

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