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2009年5月31日 (日)

再び、小学校の運動会に行く

今日はも下の子の小学校の運動会に行きました。昨日の予定が途中でサスペンデッドになっていたので、残りのプログラムを今日になってから続けました。特に、滑りやすいのでかけっこが軒並み延期になっていたんですが、今日はしっかり行われました。それから、小学校の運動会は学年ごとに、得点に関係ないマスゲームのほか、個人戦で勝ち負けがあって得点に関係する競技、すなわち、かけっこは1位から順に得点が与えられますし、加えて、勝ち負けがあって得点がつく団体競技があります。典型的には、1年生の玉入れです。我が家も2人の子供が小学1年生の時に玉入れを見続けてきました。おにいちゃんが小学1年生だった年は、ジャカルタで初夏のころに現地の日本人学校で運動会があって玉入れをやってから、秋口に日本に帰国して日本の小学校で再び玉入れを見たりしました。
そういった学年ごとの勝ち負けのある団体競技のうちで花形なのが、我が家の子供達の通った小学校では6年生の騎馬戦です。ほかの小学校でもそうかもしれません。実は、我が家の下の子は5年生であるにもかかわらず、体が大きいということで数合わせで今年の騎馬戦に出場しました。ウチの子以外にも数人の5年生が騎馬戦に参加したみたいです。本人はとっても楽しみにしていて、私も大いに期待して出かけました。今日はたっぷりと迫力ある肉弾戦を楽しみました。しかし、今年は我が家の下の子の白組は優勝できませんでした。個人戦のかけっこは大差ないとしても、団体競技はウチの子の5年生以外はことごとく赤組の勝ちで終わり、最後の全員参加の名物・大玉送りも赤組が制し、残念ながら、赤組の優勝で終わりました。
下の写真は、騎馬戦で活躍するウチの子と名物の大玉送りです。

小学校の運動会で「騎馬戦」に参加する下の子

小学校の運動会で名物の大玉送り

もっとも重視していた週末の予定を終えましたので、そろそろ、長崎に戻って今週の授業や研究に備えたいと思います。

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2009年5月30日 (土)

小学校の運動会に行く

今日は下の子の小学校の運動会に行きました。お天気が怪しかったので、少し開始時刻を遅らせてやや強行開催のように見えなくもなかったんですが、途中で雨も止んで、滑ると危ないのでかけっこを飛ばしたプログラムが続きました。でも、結局、かけっこを抜かした午前中のプログラムだけで、午後の部は明日に延期になってしまいました。微妙な判断だという気はします。始めちゃったんだから続けるのも見識ですが、何よりも、子供達が風邪をひいたり、滑ってケガをしたりしないことが第一です。
下の写真は、マスゲームの「大江戸ダンス」を踊ってフィニッシュを決めたところと、道具係で運動会の運営を手伝う下の子です。

小学校の運動会で「大江戸ダンス」を踊る下の子

小学校の運動会で道具係の下の子

昨日の営業日はともかく、週末については、この運動会のために東京に帰って来たんですから、明日も私は小学校に見に行くと思います。

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2009年5月29日 (金)

各種経済指標に見る景気動向

今日は月末最終営業日の閣議日ということで、いろいろと重要な経済指標が発表されました。今夜のブログで取り上げる順に、まず、経済産業省から鉱工業生産指数、次に、総務省から完全失業率と厚生労働省から有効求人倍率などの労働統計、最後に、総務省統計局から消費者物価指数が発表されています。いつもの通り、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどを報じた記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産指数
経済産業省が29日発表した4月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は前月比5.2%上昇の74.3と、1953年3月以来、約56年ぶりの上昇率を記録した。輸出の底入れに加え、在庫調整が進んだことなどが理由。一方、総務省が同日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は5.0%と、前月よりも0.2ポイント上昇。有効求人倍率(同)も0.46倍と前月を0.06ポイント下回って過去最低に並んだ。生産が持ち直しに向かう一方、雇用情勢の悪化は続いている。
鉱工業生産指数は2カ月連続の上昇。生産水準は依然低いものの、5、6月もプラス予想になっており、製造業の生産活動は上向き始めている。経産省は鉱工業生産の基調判断について「持ち直しの動きがみられる」として、前月の「停滞」から変更。上方修正は07年8月以来になる。
労働統計
生産に持ち直しの動きがみえる一方で、実体経済悪化の影響が雇用に及んできた。4月の完全失業率(季節調整値)が悪化したことに加え、厚生労働省が29日発表した4月の有効求人倍率(同)も1999年6月に記録した過去最低水準に並んだ。失業者が増える一方で、企業の雇用吸収力が弱まり、雇用情勢の悪循環が強まっている。
失業率は15歳以上の働く意欲がある人のうちで全く職に就いていない人の割合。5%台に乗せたのは2003年11月以来、5年5カ月ぶりになる。完全失業者数は前年同月比71万人増の346万人。増加幅は過去最大だった。
消費者物価指数
総務省が29日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動が激しい生鮮食品を除いたベースで100.7と、前年同月比で0.1%下落した。前年4月に揮発油税の暫定税率の期限切れに伴うガソリンの値下げがあった反動で物価下落が抑制されたにもかかわらず、2カ月連続でマイナスになった。先行指標の東京都区部の5月の指数も07年9月以来、1年8カ月ぶりに下落に転じており、デフレ警戒感が強まりそうだ。
全国のCPIは昨年夏に2%台の高い伸び率を示した後、上げ幅を急速に縮小。3月に1年半ぶりに前年同月比でマイナスに転じていた。4月は食料品の値上がり幅が縮小したほか、外国パック旅行の価格下落などが物価を下押しした。
下落幅は3月と同じマイナス0.1%だが、暫定税率切れの影響を除くと「0.5-0.6%程度のマイナスになっていた可能性もある」(総務省)。5月以降、暫定税率切れの特殊要因が消えるほか、電力・ガス料金の値下げなども影響してくるため、民間エコノミストの間では「夏にかけて2%台まで物価の下落幅が拡大する」との見方も出ている。

まず、鉱工業生産指数について、いつものグラフは以下の通りです。折れ線グラフは月次の季節調整済の系列で、単位は2005年=100となっています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。私は事後的に今年2月が景気の谷であった可能性があると考えていますが、取りあえず、データのある4月まで景気後退期が続いていると仮定しています。

鉱工業生産指数

鉱工業生産は引用した記事にもある通り、季節調整済みの系列で前月比+5.2%と約56年振りの急回復です。一昨日は3%程度の増産と書いた私も大ハズレでした。しかも、製造工業予測調査では5月が+8.8%、6月も+2.7%の増産との結果で、これを単純に当てはめると4-6月期で2桁近いV字型回復を示すことになります。一昨日の貿易統計を取り上げた際にも指摘した通り、輸出先国も含む在庫調整がほぼ終了し増産が始まっていると捉えるべきです。もちろん、在庫調整の終了だけでなく、グリーン家電に対するエコポイント制度やエコカー減税などの政策的措置も最終需要を盛り上げるという意味で大きく貢献していることは明らかです。ただし、そんなに手放しで評価できない可能性を2点指摘すると、第1に、7-9月期くらいまでは在庫のリバウンドに伴う増産が続く可能性が高いものの、私のようにW字型の景気パスを考えなくても、秋口以降に最終需要動向がどうなるのかはいまだ不透明と言わざるを得ません。第2に、今週月曜日に全産業活動指数を取り上げた際に指摘した通り、鉱工業生産指数は大雑把に景気後退局面入り前の110の水準から70の水準まで低下した後、ようやく4月に74.3に回復したばかりであり、4-6月期に2桁近い増産があるとしても、私が指摘した累積で30%くらいのリバウンドにはまだまだ及びません。次に取り上げる雇用や設備投資などの生産要素への需要が発生する水準にはほど遠いと言えます。

と言うことで、次に、労働統計のグラフは3枚あり、上から失業率、有効求人倍率、新規求人数で、失業率の単位はパーセント、有効求人倍率は倍、新規求人数は万人です。いずれも月次の季節調整済系列です。失業率は遅行系列、有効求人倍率は一致系列、新規求人数は先行系列と考えられています。影をつけた部分は鉱工業生産指数のグラフと同じで景気後退期を示しています。

労働統計

大幅なリバウンドを見た生産と違って、雇用は悪化が継続しています。基本的な理由は5月15日付けのエントリーで書いた通り、要素需要はシュンペーター的な景気の2分法に従い、経済活動がある程度の水準に達しないと、雇用増や設備投資は発生しません。遊休化した生産要素の再活用、すなわち、残業は増えるが新たな新規雇用は生まれないとか、既存設備の稼働率は上がるが新たな設備投資は必要とされない、といったカンジです。上のグラフでも失業率は上昇し、有効求人倍率は低下を続け、先行系列である新規求人数だけがやや下げ止まりに近づいた雰囲気を漂わせている、と言ったところが読み取れると思います。さらに、3月の年度末の次は6月が派遣労働者の契約期間の区切りになる場合が多いと言われており、そのころに、正規職員には大幅に減額された賞与が支給され、派遣職員に一段の人件費削減圧力が加わる可能性があり、所得条件が大いに悪化するとともに、年末年始を底に改善しつつある消費者マインドに悪影響を及ぼす可能性もあるんではないかと私は考えています。

最後に、消費者物価指数 (CPI) のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整をしていない月次の原系列に基づく前年同月比で単位はパーセントです。青い折れ線が生鮮食品を除くコアCPI、赤が食料とエネルギーを除く欧米流のコアコアCPI、灰色の折れ線が東京都区部のコアCPIです。棒グラフは全国のコアCPIに対する寄与度で、緑色が食料品、黄色がエネルギー、水色がその他のそれぞれ寄与度を示しています。

消費者物価指数

全国のコアCPIが1-2月にゼロ、4月は3月に続いて▲0.1%の下落となりましたが、東京都区部の5月コアCPIは▲0.7%の下落となっています。この差は引用した記事にもある通り、昨年4月がガソリン暫定税率の期限切れであった反動により物価下落率が抑制されているためで、実力CPIは▲0.5-0.6%のデフレと多くのエコノミストは考えています。また、これも記事にある通り、今年夏場のデフレは▲2%を超えるとの観測もあり私も同感です。なお、5月の東京都区部のコアCPIへの電気ガスなどの公共料金の寄与度は▲0.3%程度あったと考えられており、同様の条件で、来月の全国コアCPIは軽く▲1%を超えると私は予想しています。このデフレが昨年の夏に高騰した原油価格のリバウンドと正しく認識され、短期で終わって消費者の期待に強く影響を与えないことを願っています。「もっと待てばより安くなる」とのデフレ期待が形成されると、消費だけでなく投資の方にも後送り行動が発生する可能性が高まります。年末年始にかけて、最終需要の不透明感とともに景気が弱含んで、W字型の景気回復パスをたどる可能性があると私が考えている大きな要因のひとつです。

今日発表された景気指標は、鉱工業生産指数の大幅な回復を別にすれば、ほぼ市場の事前予想にミートしたように私は感じています。東証の日経平均株価にもそれは現れています。デフレの急速な進展を別にして、7-9月期は上振れリスクがあるとする私の考えに変化はありません。

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2009年5月28日 (木)

財政政策に関するメモ

今週の授業シリーズは財政政策です。ごくかいつまんで、メモとして簡単に済ませます。雑な説明になるかもしれません。
まず、IS-LM曲線と財政政策の効果について、以下のケインズ的なモデルを考えます。

  1. Y = C + I + G
  2. C = a + cY
  3. a > 0
  4. 1 > c > 0

見れば分かりますが、輸出入を考えない閉鎖経済で、GDPは消費と投資と政府支出の和から成り立ちます。消費関数は租税を考慮せず、正の基礎的消費 a にGDPと限界消費性向をかけた積との和で決まります。限界消費性向はいうまでもなく小文字の c で (0, 1) の開区間にあります。そうすると、ケインズ的な財政乗数は以下の通りに計算されます。

ΔY = ΔGまたはΔY=1
1 - cΔG1 - c

しかし、ケインズ的な乗数はクラウディングアウトを考慮していません。あるいは、後に詳しく書く流動性の罠にある場合の乗数と同じともいえます。これをイメージ図で示すと以下の通りとなります。

IS-LM 曲線

ケインズ的な乗数は①の大きさに対応します。しかし、IS 曲線が正の傾きを有している限り、②のクラウディングアウトが生じます。なお、上の IS-LM 曲線のイメージ図で、LM 曲線が左下でフラットになっている部分がありますが、これが流動性の罠と呼ばれる部分です。経済がこの部分にあればケインズ的な乗数はクラウディングアウトを生ずることなくフルに経済を拡大させます。逆に、LM 曲線の右上の部分が垂直になっているのは古典派的な実物経済と貨幣の2分法が成立する世界で、経済がこの部分にあるということは完全雇用が達成されており、拡張的な財政政策はすべてクラウディングアウトされ、GDPに対する何らの効果を持ちません。IS-LM 曲線の分析は物価を一定と仮定しているんですが、完全雇用が達成されていて LM 曲線が垂直な部分で拡張的な財政政策を実施すれば、利子率が上昇するのは要するにインフレを招くと考えるべきです。

加えて、財政のサステイナビリティに関するドーマー条件も式を展開して説明したんですが、私の html に関するテクニックではコチラは書き切れません。大学の紀要の今年3月号に研究ノートとして取りまとめてありますのでご覧ください。

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2009年5月27日 (水)

貿易統計に見る輸出の底打ち

本日、財務省から4月の貿易統計が発表されました。貿易収支は事前の市場コンセンサスが▲550億円の赤字であったところ、+690億円の黒字を記録しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

財務省が27日発表した4月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月に比べて39.1%減の4兆1969億円となった。マイナスは7カ月連続。自動車や鉄鋼の輸出減が響いた。ただ、減少率は2カ月連続で縮小しており、金融危機を契機とする昨秋以降の輸出の急激な落ち込みはやわらぎつつある。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は690億円と、小幅ながら黒字を確保した。

次に、これまた、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の原数値で季節調整はしてありません。上のパネルは輸出入の折れ線グラフとその差額たる貿易収支の棒グラフです。左軸の単位はいずれも兆円です。下のパネルは輸出金額を貿易指数により価格と数量に寄与度分解したものです。単位は前年同月比のパーセントです。上下のパネルとも下げ止まり感を見て取ることが出来ます。

貿易統計

何人かの同業者エコノミストから送ってもらったニューズレターによると、季節調整済みの系列で見て、輸出は各地域向けも品目別も、前月比で軒並み増加に転じているようです。季節調整していない上のグラフなどを見ても、前年同月比ではまだ大きなマイナスを続けているものの、輸出は明らかに下げ止まったと受け止めるべきです。上のグラフからは輸出の底は今年の1-3月期であったと考えられます。
この貿易統計から私が読み取ったのは以下の3点です。第1に、昨年10-12月期以来の輸出の急減は主として輸出先国での在庫調整に起因するものであった可能性が高いことです。これは統計がないので確たることは言えません。ですから、こんなことを言っているエコノミストは他にいないように思います。そして、繰返しになりますが、第2に、その在庫調整はこれまた急激な国内の生産調整によりほぼ終了し、今年1-3月期に輸出は底を打ったと見られます。これは統計から明らかです。多くのエコノミストが同意するところだと思います。特にグラフは示しませんが、米国のISM指数との関係で見ても明らかです。第3に、この貿易統計から見て、4月の生産は前月比で+3%程度の増産を示す可能性が高いことです。4-6月期の四半期では+5-6%の増産となるペースと考えられます。従って、4-6月期のGDP成長率は前期比で見て0.5%、あるいはこれを超える水準に達する可能性があります。経済企画協会が5月18日に発表したESPフォーキャストでは4-6月期の平均は年率で1.14%ですから、これをはるかに上回る可能性があります。というものの、実は、私は少し前まで今年4-6月期のGDP成長率は年率1%程度、四半期ベースの前期比で0.2-0.3%くらいと見ていて、5月8日付けのエントリーで三菱UFJ証券が発表したリポートを取り上げた際、新型インフルエンザの経済的影響により4-6月期の実質GDPが▲0.4%程度押し下げられると試算されていましたから、これでは4-6月期の実力GDP成長率のプラスが吹っ飛ぶ可能性があると心配していたんですが、その可能性はかなり低下したように受け止めています。さらに付け加えれば、新型インフルエンザのリスクはここ1-2週間で急速に低下したようにも感じています。

最後に、今日の輸出の数字から、この先の7-9月期は上振れリスクが高まったように私は感じ始めています。もっとも、さらにその先の10-12月期以降の年度後半は、W字型の景気パスを想定してはいるんですが、もう少し指標を見極めたい気がします。

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2009年5月26日 (火)

読売新聞の年金報道を読む

年金の世代間格差について、共同通信のサイトで報じられており、報道各社もいっせいにキャリーしていますが、実は、この週末をはさんで、読売新聞でいくつか年金受給に関する報道を見かけました。厚生労働省のホームページを見た限りでは、特に記者発表はないようなので、メディア側の取材に基づくものだと考えています。コチラの読売新聞の報道の方が図表もあったりして、共同通信よりずっと詳しいので、今夜のエントリーで取り上げたいと思います。まず、引用した図表と引用元のリンクは以下の通りです。なお、それぞれの表の注にありますが、貨幣価値は物価上昇率で現在価値に換算してあります。

単純に見ただけでも、上の表では、厚生年金・国民年金とも、生まれた年によって保険料負担と受給できる年金額の比率に3倍ほどの差が生じることが明らかにされています。下の表でも、年齢により受給額に1.5倍近い差が出ています。よく知られた通り、年金制度は2004年度に大きな改革が実施されましたが、その時点と比べて、まず、上の表に即して言えば、高齢者は負担に比べて受給額の倍率が上昇しており、逆に、若年層はこの倍率が低下していると読売新聞は報じています。次に、下の表ではカッコ内に現役世代の給与と老齢世代の年金受取額の比率があり、2004年度の年金制度改革の際には、これが50%を下回らないとされていたんですが、年齢が若くなるほどこの比率が低下しているのが見て取れます。
繰返しになりますが、年金制度は2004年度に大きな改革があり、長期的な財政の見通しを把握するため、5年に1回、財政検証を行うこととされており、その内部検討資料か何かを読売新聞の記者が把握する機会があったんだと思います。いずれにせよ、私の従来からの主張の通り、現在の日本の年金制度は若年層との相対的な比較で言えば高齢者に非常に手厚い制度になっていることが明らかです。国民年金保険料の納付率に関する最新データについて、今年2月に社会保険庁から発表された「国民年金保険料の納付率について」を見れば、昨年4月から今年2月末までの納付率は61.1%にとどまっており、政府の目標の80%には遠く及ばない状況です。もちろん、国民年金以外の年金ではここまで低くはないことは容易に想像されます。さらに、私は正確な年齢別納付率のデータを知りませんし、ましてや、国民年金保険料を納付しないことを勧めるつもりは毛頭ありませんが、これだけ若年層に不利な年金制度に対して、少なくとも若年層から見た場合、保険料を払うインセンティブが低いのも事実かもしれません。極端な見方かもしれませんが、2004年度の年金制度改革の前の古い記事ながら、『日本の不平等』で第46回エコノミスト賞などを受賞した大阪大学の大竹教授なんかのように、「年金未納は若者の逆襲」と見る識者がいることも事実です。この言葉は、大竹教授が「東洋経済」2004年5月29日号のpp.9に投稿した記事のタイトルから引用しています。なお、この記事の中で大竹教授は「団塊の世代以上の年齢層の人々の既得権を崩さないかぎり年金改革は不可能」と喝破しています。

2005年の人口と年齢別投票者数

上のグラフは朝日新聞のサイトから引用して、このブログの12月30日付けのエントリーで取り上げたものですが、選挙権のある若者はもっと選挙に行って若年層の意見を政治に反映させるべく努めるとともに、私なんかを含めたより年齢層の高い人たちは、まだ選挙権を有していない世代のことも考えて投票しなければ、年金の高齢者優遇と若年層の年金離れの悪循環がさらに進むことにもなりかねません。

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2009年5月25日 (月)

全産業活動指数から生産要素需要の動向を考える

本日、経済産業省から今年3月の全産業活動指数が発表されました。ヘッドラインの農林水産業を除く指数が季節調整済み系列で93.6、前月比▲2.4%の低下となりました。この全産業活動指数と、そのサブセットである鉱工業生産指数及び第3次産業活動指数をプロットしたのが下のグラフです。なお、基準年は青い折れ線の鉱工業生産指数のみ2005年=100で、残る緑の第3次産業活動指数と赤の全産業活動指数は2000年=100となっています。影を付けた期間はいつもの通り景気後退期です。

全産業活動指数

一見して明らかなんですが、景気拡大局面においても景気後退局面においても、いずれも鉱工業生産指数の傾きが他の2指数より急傾斜になっています。これは、すでに5月14日付けのエントリーで取り上げた通り、最終需要のわずかな動きが在庫の最適化行動を通じて増幅され、出荷や生産活動に大きな変動をもたらしている実例と言えます。
それはそれとして、今夜のエントリーでは生産や産業活動の水準と生産要素需要、すなわち、労働力と資本設備に対する需要、雇用の増加と設備投資の回復について、5月15日付けのエントリーでイメージ図を示したシュンペーター的な2分法に基づいて簡単に考えたいと思います。大雑把に丸めて、鉱工業生産指数は景気後退局面に入る直前の水準が110くらいで、直近では70くらいに落ちています。110を基準に考えると▲35%くらいの低下で、逆に、直近の70を基準に考えると、110水準に達するまでほぼ60%くらいの活動水準の上昇が必要となります。同じように考えると、全産業活動指数では景気後退前の108の水準に対して、直近が103くらいの水準ですから、大雑把に▲14%くらいの低下を見ています。私の直感では、鉱工業生産指数で考えて、累積で30%くらいの増産があれば、すなわち、元の水準に戻る半分強くらいの90-95くらいの水準までの増産があれば、要素需要は出始めるんではないかと思っています。もっとも、強力な根拠があるわけではありません。これまた、何の根拠もなく、四半期単位で5-6%の増産があるとすれば、W字型の景気パスを想定して1四半期くらい足踏みが生ずると仮定すれば、この2009年4-6月期から数え始めて6四半期くらいで本格回復に到達するように単純に計算できます。来年年央というか、7-9月期くらいということになります。何度も繰り返しますが、何の根拠もない直感的な見通しながら、来年年央には本格回復軌道に回帰することになります。W字型の景気パスでもなく、加えて、もっと精緻な見通しを作成しているエコノミストの一部と大差ない結果かもしれません。
それに対するリスクもいくつかあり、来年中は本格的な景気回復には至らず、さ来年にズレ込む可能性もあります。単純な前のパラの計算が成り立たないのが最大のリスクとも言えますが、計算に根拠がないのは何度も繰り返しましたので、これを別にすると、4月27日付けの内閣府独自試算の「平成21年度経済見通し暫定試算」を取り上げたエントリーと大差ないものの、今では最大のリスクは第1に為替だと考えるようになりました。米国がマネーを急拡大させている一方で、日銀はそうでもないですから、ソロス・チャート的に為替が円高に振れる可能性は残されています。ついでながら、現時点まで、企業収益は少なくとも株価には大きく影響を及ぼしておらず、設備投資への影響を生じさせる段階ではないと考えるようになりました。第2に在庫です。在庫調整がもう少し、4-6月くらいまでズレ込む可能性はあります。第3にデフレです。今年年央が物価上昇率マイナスのトラフだと思いますが、今年年末から来年年始にかけてW字型に沿って2番底を付けに行くとする私の考えの最大の根拠です。インフレレ期待が大きく下方シフトすると、「もう少し待てばもっと安くなる」とのマインドが消費者に刷り込まれてしまい、後送り行動により消費の回復を大きく妨げることになります。後は順不同に、米国経済、特に金融とビッグスリー、政府の財政政策の引締めへの変更の可能性、特に消費税増税へのコミットのあり方、などがリスクになるような気がしないでもありません。

最後に、先行きリスクに関して1点だけ付け加えると、新型インフルエンザのリスクは無視し得ると見なすようになりました。むしろ、新興国経済の回復に伴う逆デカップリングから輸出が増加する上振れリスクの方が大きいんではないかとも思えなくもありません。

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2009年5月24日 (日)

今年の阪神タイガースは優勝を諦めてクライマックス・シリーズ狙いか?

阪神タイガース2009年ロゴ

我が阪神タイガースが今シーズンは開幕から冴えません。上の今年のロゴは球団のホームページから引用しているんですが、この険しい表情はファンの怒りを表しているのかもしれません。

順位チーム試合勝数敗数引分勝率勝差
1巨  人4227123.692-
2ヤクルト3823150.6053.5
3中  日4220220.4768.5
4阪  神4016222.42110.5
5広  島4116232.41011.0
6横  浜4115260.36613.0

今日の甲子園球場でのロッテ戦は4回裏攻撃中に雨でノーゲームになりましたので、ニッカンスポーツのサイトから引用した上の表は、昨日の試合終了時点でのセリーグの勝敗表です。よく知りませんが、今夜の試合で広島が勝てば阪神は5位に転落するような気がします。
シーズン開幕前からのもっぱらのウワサで、セリーグについては1位と6位はやらなくても決まっていて、残る4チームはダンゴ状態ということでしたが、まさか、我が阪神が交流戦が始まってもBクラスに甘んじているとは想定外でした。大きな誤算は打線にあるのは衆目の一致するところです。開幕当初は金本外野手がよく打っていて、そうでもなかったんですが、特に最近の試合では点が取れません。このまま投手陣にストレスをかけ続けて行けば、そのうちに、もっと悪い結果が出そうな気がして怖いです。真弓監督の掲げる「守り勝つ野球」も結構なんですが、今となっては1985年に日本一になった当時のような打ち勝つ野球にも魅力を感じてしまいます。もちろん、シロートの私の考えでも、監督が守りを重視するか、攻めを重視するかで、そんなに簡単にチームカラーが変わるわけではないんでしょうが、せめて、外国人選手の補強にはもう少し打力を重視して欲しかった気がしないでもありません。

今年はリーグ優勝は諦めたので、せめて、Aクラスとクライマックスシリーズ目指して、
がんばれタイガース!

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2009年5月23日 (土)

長崎交響楽団の定期演奏会を聞きに行く

長崎交響楽団ロゴ昨日の将棋の名人戦に続いて、今夜も週末らしく文化シリーズです。ということで、今日は長崎ブリックホールに長崎交響楽団の第73回定期演奏会を聞きに行きました。マスク姿は少なかったんですが、新型インフルエンザの影響からか、受付に消毒液があったりしました。でも、お客さんの入りがイマイチだったのはインフルエンザに起因するのかもしれません。右上にあるのが長崎交響楽団のロゴマークです。画像にリンクを張ったホームページから引用しています。どうしてコンサートに行ったのかと言うと、同僚教授がチケットを売り付けに来たからです。「売り付けに来た」と表現すると言葉が悪いように聞こえなくもないですが、同僚教授が私の研究室を訪ねて「チケットを買ってくれないか」とのことでしたので、適切な表現の範疇に入っているように思います。話を続けると、どうして同僚教授が私にチケットを売り付けに来たかと言うと、その人がオーケストラの一員だからです。ようやく何を言いたいかにたどり着いたんですが、上のロゴにリンクを張った長崎交響楽団のホームページのプロファイルから引用すると、このオーケストラは「長崎市およびその周辺市民によるアマチュアオーケストラ」であり、年2回の定期演奏会などを通じて、「地域音楽文化の向上と青少年の情操教育に寄与すること」を目的に活動しています。どうでもいいことですが、昨日はこの同僚教授を見かけませんでしたから、ゲネプロに励んでいたのかもしれません。なお、今夜の演奏曲目は以下の通りで、指揮は三河正典さん、ソロは2曲目のメンデルスゾーンのバイオリン・コンチェルトで加納暁子さんでした。もちろん、バイオリンです。誠に不勉強ながら、お二人とも存じ上げません。

  • ブラームス「大学祝典序曲」op.80
  • メンデルスゾーン「バイオリン協奏曲ホ短調」op.64
  • ドボルザーク「交響曲第8番ト長調」op.88

アンコールには、やっぱり、ドボルザークの「スラブ舞曲」が用意されていました。私はモダン・ジャズであればともかく、このクラシックの方面はめっぽう暗いんですが、2曲目のメンデルスゾーンのバイオリン・コンチェルトは超有名な曲だと思います。誰でも1度は聞いたことがあるでしょう。でも、この季節にどうしてEマイナーなんだという気はします。枯れ葉の舞い落ちる季節の方が適している気がしないでもありません。順序が逆になって、最初の序曲は知りません。そもそも、ブラームスが序曲を作曲していること自体知りませんでした。もっとも、序曲はチャイコフスキーに限ると考えているわけではありません。3曲目のドボルザーク作品は「イギリス」として有名な曲なんではないかと思います。自信はありません。アメリカに行く前か後かも知りません。「知りません」が多いんですが、最後の「スラブ舞曲」もこのオーケストラによくマッチしていました。誰だか、楽団幹部にでもドボルザークの好きな人がいるのか、それとも、指揮者がこのオーケストラにはドボルザークが合っていると考えたのか、後者だとすれば素晴らしい見識だと思います。もっとも、私個人に関して言えば、ドイツ・ロマン派の超大作を夜を徹して聞きたい年齢はとうに過ぎています。

私の生まれ育った京都にも京都市交響楽団というのがあり、一般には「京響」と略称されていて、長崎交響楽団も「長響」と略すようです。長響は1970年、京響は1956年の創設です。歴史的に大きな差はないものの、京響は自治体直営のオーケストラでモーツァルトの演奏では定評があり、海外も含めて各地を演奏旅行に出かけたりしています。そもそも、京都市には市立芸術大学があって、音楽のみならず絵画や彫刻などの美術の方でも人材を輩出しています。ついでに、エコノミストらしく価格比較をすると、京響のコンサートであれば、私の大学時代でもS席3000円、今ではネットで調べた限りでS席4500円、それに比べて、長響の今夜のコンサートは全席自由で2000円のところを私は割引料金で買っていたりしますから、両者を単純に比較するのはなんでしょうが、今夜のコンサートは立派なものでした。

長崎に着任して、そろそろ10か月になります。今年に入ってから、ペーパーを書き出したり、先日の書道展などの文化行事にも参加したりして、長崎でもっともツラい季節と言われる梅雨を乗り切るべく、仕事とリフレッシュに励んでいます。

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2009年5月22日 (金)

将棋の第67期名人戦7番勝負第4局は挑戦者の郷田九段が勝ち2勝2敗の再びタイに

このブログでは将棋の名人戦をたびたび取り上げているんですが、一昨日から和歌山県高野町の金剛峯寺で指し継がれていた第67期名人戦7番勝負第4局は昨夜遅くに終局し、挑戦者の郷田九段が86手で羽生名人に勝ち、再び対戦成績を2勝2敗のタイに戻しました。なお、第5局は6月2-3日、秋田市の秋田キャッスルホテルにて行われる予定です。下の画像は朝日新聞のサイトから引用した終了図です。

第67期名人戦7番勝負第4局終了図

いつも、将棋の名人戦クラスになると、まだ詰んでないじゃないかというような終了図なんですが、今回のは分かりやすかったです。上の終了図を引用した朝日新聞のサイトにも解説がありましたが、羽生名人の先手玉が5八玉と逃げても後手の郷田九段が6七銀を打って、先手4七玉、後手3五桂打ちで、さらに先手玉が右上に逃げて3六玉としても、後手の飛車が2七に戻って龍になれば、後は、先手玉が桂馬を取って3五玉と真っすぐ上に逃げようとも、桂馬の横の4五玉と逃げようとも、後手の4四金打ちで詰みです。終了図から5手詰めですから、私にも理解できます。理解できてうれしい気もしますが、ひょっとしたら、間違っているんではないかという不安も残ります。もしも、間違っていたら、このブログのコメントで教えて下さい。

それにしても、羽生名人が先勝しては郷田九段が追いついてタイになる展開で、7番勝負ですからプロ野球の日本シリーズと同じで、奇数戦を重視するのか、偶数戦を勝ちに行くのか、議論が分かれるところのような気もします。でも、私は今年については我がタイガースが日本シリーズに出るのは早くも諦めました。

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2009年5月21日 (木)

労働経済学におけるトレードオフとミクロ経済学とマクロ経済学の役割

今週の講義メモは労働経済学で、主として、トレードオフとミクロ経済学マクロ経済学の役割について考えたいと思います。労働ですから、ついでに日本的雇用慣行もあったりします。まず、誰が考えても理解できるトレードオフが以下の3点です。

  • 労働と余暇
  • 賃金とワークシェアリング
  • 賃金上昇率 (インフレ率) と失業率

第1の点は明らかで、1日は24時間しかなく、誰にとっても平等です。労働時間を長くして所得増を目指せば余暇時間は減少します。平たく言えば、「お金を稼いでも使う時間がない」ということになります。第2の点は最近クローズアップされている点で、1人当たりの賃金を減らして多くの人で仕事をしようというのがワークシェアリングですが、ケインズ卿が指摘するごとく、賃金に下方硬直性が強ければワークシェアリングは進みません。第3の点はフィリップス曲線で表現される関係です。以下のイメージ図の通りです。

フィリップス曲線

そもそも、経済学を大きく2分する分野として、いわゆるミクロ経済学とマクロ経済学があり、私は前者はミクロとは呼ばずに、マイクロ経済学と言ったりするんですが、極めて大雑把にいえば、限りある資源を希少性と何らかの最適化原理に基づいて配分するのがミクロ経済学の重要な分析対象で、一国とか世界経済の安定化や成長を分析するのがマクロ経済学の役割です。ということは、1日24時間という極めて限られた資源を配分するのはミクロ経済学の対象分野と言えます。フィリップス曲線のイメージ図にある通り、トレードオフの関係がある場合、グラフは1次微分がマイナスの右下がりにプロットされます。従って、どちらかを立てれば他方が損なわれる関係にあるわけで、機会費用 opportunity cost が発生します。労働時間を増やして所得を増やそうとすれば、余暇時間が犠牲になるわけです。この機会費用を最小化すべく適切な効用関数を設定すれば、このトレードオフを解くことが出来ます。これは先週土曜日5月16日のエントリーで新型インフルエンザのパンデミックを考えた時と同じです。フィリップス曲線で表現されるインフレ率と失業率のトレードオフは社会的な厚生関数を適切に設定することにより最適解が導出される可能性があります。でも、これまた、新型インフルエンザのパンデミックの防止と社会的活動の水準の関係を決めるのと同じで、科学としての経済学の未成熟な面がここにあり、理論上はともかく、実用的な意味でコンセンサスを得られるような最適解が導出されるのはまれといえます。
次に、労働問題で重視されるのは失業の解消です。それぞれの人に希望する賃金水準で希望の職種を提供することが労働政策の究極の目標とも言えます。しかし、現実には失業が発生する場合があり、次の2種類の失業があります。

  • 循環的失業 - マクロ経済政策の対象分野
  • 構造的失業 - ミクロ経済政策の対象分野

循環的失業はケインズ卿が指摘した通り需要不足に起因する失業で、マクロ経済政策により成長を促進することで解決される可能性があります。もっとも、現在くらいの大きな需要不足の場合は経済政策リソースの量的な不足もあり得ます。構造的な失業はミスマッチに基づく失業で、賃金、職能、地域、産業、年齢など、求人する側の企業と求職する側の労働者の間で何らかの不一致が生ずる場合に起こります。特に大きいのが職能のミスマッチで、職業訓練などの果たすべき役割が大きいといえます。

  • 長期雇用
  • 年功賃金
  • 企業内組合

最後に、日本的雇用慣行の特徴が上の3点です。日本の大きな特徴として、職業を問われた場合、企業名で答えるのが通例になっていますが、アングロサクソンをはじめとする海外では職能で答えることもめずらしくありません。例えば、昨年の米国大統領選挙戦で話題になった「配管工のジョー」なんかは典型でしょう。でも、日本では長期雇用と年功賃金を前提とし、企業内で異なる職能に配置転換されることもあるため、職能ではなく企業名を職業として答える場合も少なくありません。この3点は、現在はもとより高度成長期にあっても、すべての日本の労働者がこの慣行下にあったとはとても言えないものの、日本の雇用慣行を象徴するものであり、相互に補完的な関係にあります。もっと言えば、ひとつが崩れると残りも維持可能性が低下します。歴史的に見ると、徐々に、これら日本的雇用慣行は崩れて来たんですが、特に今世紀に入ってから、リストラという名で長期雇用が大きく放棄され始めて、新しい枠組みが模索されているんだと私は認識しています。

苦手な労働経済学ですので、やや雑駁な講義メモで終わってしまいました。

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2009年5月20日 (水)

今年1-3月期GDP速報 (1次QE) をどう見るか?

本日、内閣府から1-3月期のGDP速報が発表されました。エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている重要な経済指標です。昨夜のエントリーでシンクタンクなどの予想を取り上げた際に指摘した通り、過去最大のマイナス成長を記録しました。まず、いつもの通り、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどに関する記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が20日発表した1-3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質で前期比4.0%減、年率換算で15.2%減となった。減少率は戦後最大を記録。初めて4四半期連続のマイナス成長となった。昨年秋以降の世界的な金融危機の影響による輸出の落ち込みが拡大したのに加え、設備投資や個人消費などの内需も減少幅を広げた。
同時に発表した2008年度のGDPは実質が3.5%減、名目が3.7%減でいずれも戦後最大の減少率を記録。実質は01年度以来7年ぶり、名目は02年度以来6年ぶりにマイナス成長へ転じた。
過去のデータの季節調整などを修正した結果、昨年10-12月期の実質GDPは前期比年率14.4%減へ2.3ポイント下方修正した。その時点で、第一次石油危機の1974年1-3月期の年率13.1%減を超える減少率を記録していたことになった。1-3月期は2四半期連続で「戦後最大」の落ち込みを更新。昨秋以降の日本経済の急落ぶりを改めて浮き彫りした。

まったくどうでもいいことですが、今朝がたに1次QEが発表されるまで、1974年1-3月期の前期比年率▲13.1%、前期比▲3.4%が戦後最大のマイナス成長とされていたんですが、発表後には、昨年2008年10-12月期の統計が改定されて、この期が前期比年率▲14.4%、前期比▲3.8%と石油危機後の1974年1-3月期を上回るマイナス成長だったことが判明しました。記事ではその点を訂正していたりします。次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは名目ですし、GDPデフレータだけは伝統に従って原系列の前年同期比となっています。アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は保証しません。正確な計数は最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2008/
1-3
2008/
4-6
2008/
7-9
2008/
10-12
2009/
1-3
国内総生産GDP+0.8▲0.9▲0.6▲3.8▲4.0
民間消費+1.4▲1.0+0.1▲0.8▲1.1
民間住宅+4.8▲2.0+3.1+5.5▲5.4
民間設備+1.7▲2.9▲4.4▲6.7▲10.4
民間在庫 *▲0.1▲0.2▲0.0+0.5▲0.3
公的需要▲1.3▲0.7▲0.0+1.3+0.2
外需 *+0.0+0.5▲0.1▲3.2▲1.4
輸出+2.4▲0.8+1.0▲14.7▲26.0
輸入+2.4▲4.2+1.5+3.1▲15.0
国内総所得GDI+0.8▲2.2▲1.6▲1.4▲1.9
名目GDP+1.3▲2.1▲1.5▲1.6▲2.9
雇用者所得+0.4▲1.3▲0.2+0.5+0.0
GDPデフレータ▲1.3▲1.5▲1.5+0.7+1.1

次に、少し長い期間を取ったGDP前期比成長率のグラフと、最近時点での需要項目別に寄与度分解したグラフは以下の通りです。上のパネルはGDPの前期比成長率、左軸の単位は言うまでもなくパーセントで、影を付けた部分は景気後退期です。下のパネルは、そのGDP前期比成長率に対する寄与度で、単位は同じくパーセントです。

GDP成長率の推移

今日発表された今年1-3月期には、下のパネルの寄与度で見て、公的需要を除くすべての需要項目がマイナスとなりました。「総崩れ」と称されるのももっともです。特に大きいのは外需と設備投資で、消費もマイナス幅を広げています。全体としてのGDP前期比成長率▲4.0%は市場の事前コンセンサスを少し上回ったくらいで、この結果、東証の日経平均株価は上げたりしましたが、需要項目別に見ていい内容とは私にはとても思えません。逆説的ですが、第1に、在庫調整がまだ進んでいないように見られ、それが成長率を若干なりとも押し上げているように感じています。昨年10-12月期の寄与度である+0.5%の逆で、1-3月期には寄与度で▲0.5%くらいの在庫調整があってしかるべきなんですが、▲0.3%にとどまりました。これは4-6月期にさらなる調整を要する可能性があります。この点に気付いているエコノミストは多くないように私は感じています。第2に、雇用の悪化に伴う所得面からの消費押下げ圧力が強まっているように見えます。特に、夏季賞与と関係して、私は4-6月期と7-9月期はともにプラス成長の可能性があると考えているんですが、後者の7-9月期は輸出が伸びなければ少し怪しいかもしれません。第3に、設備投資については、先週、機械受注を取り上げた金曜日のエントリーで書いた通りで、生産の下げ幅が大きい分、資本ストック調整はもう少し時間がかかる可能性があります。
この1次QEを受けて、私の景気パスに関する基本的なシナリオは変わりないんですが、改めて書くと、4-6月期と7-9月期はプラス成長に回帰し、その後、今年の年末か来年の年始に再びマイナス成長を記録してから、来年年央には本格的な景気回復期を迎える、というものです。事後的には、今年1-3月期が景気の谷だったと判定される確率が高いように受け止めています。もっとも、4-6月期のプラス成長が小さく、7-9月期には早くもマイナス成長に戻るようだと、今年の10-12月期か来年前半が谷と判定される可能性も残されています。昨年2008年10-12月期と今年2009年1-3月の大幅なマイナス成長は生産と在庫の調整速度が速かっただけであるとの持論と合わせて、私の考えを大学の紀要あたりで取りまとめようかと考えないでもありません。もっとも、大学の紀要が時論を掲載してくれるのかどうかは私は知りません。

最後に感想を2点あげると、第1に、経常収支の報道で年度の数字が大きくクローズアップされたんですが、さすがに、今回の1次QEでは2008年度の▲3.5%のマイナス成長を大きく報道するメディアは少なく、逆に、足元の4-6月期はプラス成長となる可能性を示唆する記事が多く、キチンとした取材がなされていることを実感しました。第2に、本格的な景気回復は来年年央からとなると、それでなくても厳しい学生諸君の就職戦線は来年からさ来年にかけてさらに3年連続で悪化する可能性が高くなったような気がしないでもありません。1990年代半ばのバブル崩壊後の氷河期や超氷河期で大量のフリーターを生み出した経験に基づき、何とか就職状況の改善を願って止みません。

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2009年5月19日 (火)

明日発表の1-3月期GDP速報(1次QE)は過去最大のマイナスか?

明日5月20日、内閣府から1-3月期のGDP速報が発表されます。エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている重要な経済統計指標です。シンクタンクや金融機関などでは、ゴールデンウィークをはさんで、この予想が出そろったように見受けられます。第一生命経済研究所は先週になって微修正をしていたりします。まず、先週に掲載されたものですが、日経新聞のサイトからこの1次QEの予想に関する記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が20日発表する2009年1-3月期の実質国内総生産(GDP)が戦後最大の下落率になるとの観測が広がっている。民間調査機関27社による予測平均は前期比年率で16.0%減。予測通りになれば、第1次石油危機時の1974年1-3月期の13.1%減を超え、35年ぶりに「戦後最悪」を更新する。ただ4-6月期は生産の持ち直しなどでプラスに転じるとの見方も出ている。
民間予測平均は日経グループのQUICKがマクロ経済予測「コンセンサス・マクロ」の一環で調査した。実質GDPは4四半期連続のマイナス成長になる。

次に、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。第一生命経済研究所については微修正前のリポートから取っています。なお、詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲3.9%
(▲14.9%)
内・外需の大幅な減少により過去最大のマイナス成長に
みずほ総研▲4.9%
(▲18.1%)
内外需とも落ち込み、2四半期連続で年率2ケタのマイナス成長
ニッセイ基礎研▲4.4%
(▲16.4%)
外需の悪化に加え、民間消費、住宅投資、設備投資などの国内需要も大きく落ち込んだ
三菱総研▲4.4%
(▲16.3%)
内需悪化も加わり大幅な落ち込み
三菱UFJ証券▲3.7%
(▲14.0%)
輸出、設備投資、個人消費が大幅に減少し、4四半期連続のマイナス成長
第一生命経済研
微修正前
▲5.4%
(▲19.8%)
需要項目別にみてもプラスに寄与するものはなく、まさに総崩れ
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲4.2%
(▲15.6%)
輸出の急減を起点とした企業の生産活動の低迷とそれを受けた家計部門の不振が鮮明となってこよう
新光総研▲4.8%
(▲17.8%)
過去最悪のマイナス成長が予想される

引用した記事やほとんどのリポートで触れられている通り、四半期ベースとしては過去最大のマイナス幅を記録した1974年1-3月期の前期比年率▲13.1%をはるかに超えて、今年1-3月期は歴史に残りかねない大幅マイナス成長を記録することが予想されています。他方、これまた、引用した記事や多くのリポートで強調されている通り、逆に、現在進行形の4-6月期はプラス成長にリバウンドすることがかなり高い確率で予想されています。この変動の激しい大きな要因は、生産や在庫の調整スピードが極めて速かったからではないかと私は考えています。通常は4-6四半期かけて調整するところを、フルスピードでもって1-2四半期で生産と在庫の調整を終えてしまった可能性があります。直感的には、先週5月12日に取り上げた景気動向指数の落ち方の傾きが極めてスティープであることから明らかです。GDP統計はもとより、景気全体も1-3月期に底入れして4-6月期から反転する可能性もあり得ます。もちろん、その後、さらに下方に振れてW字型のパスを描く可能性もあります。これは、ここ何日かのこのブログで表明している通りです。

あす発表のGDP統計が過去最大の落ち込みとなれば、もちろん、メディアは大騒ぎするでしょうし、ある意味で、エコノミストとして実際にこの歴史的な四半期に立ち会えたのは貴重な体験なのかもしれません。でも、直ぐに「過去の数字」と見なされる可能性も指摘しておきたいと思います。

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2009年5月18日 (月)

新しいペーパー「今次景気循環のピークの推計 - マルコフ・スイッチング・モデルによるアプローチ」を書き上げる

かなり苦労して標記のペーパーを書き上げて、提出しておきました。本学の紀要の6月号に掲載される予定です。取りあえず、このブログのサイドにリンクを置いてある大学のホームページにアップしてあります。
何をやっているかはタイトルから明らかなんですが、12月に完成して本学の『東南アジア研究所年報』に掲載された「今次景気循環のピークに関する考察」と同じで、直近の景気後退局面に入る前のピーク月を月次データで推計しています。いずれのペーパーも時系列推計なんですが、手法は異なり、前回のペーパーは状態空間表現した2変数 (bivariate) モデルをカルマン・フィルターで解いていて、今回は1変数 (univariate) モデルをマルコフ・レジーム・スイッチング・モデルで解いています。どちらもそうなんですが、これだけで理解できる人はいいんでしょうが、これだけで理解できない場合は長時間かけた説明が必要になります。
推計するに当たって、景気を表現しているであろう、いろいろな月次データに当たってみたんですが、解けたのは景気動向指数だけで、鉱工業生産指数、全産業活動指数、全産業供給指数、有効求人倍率、日本経済研究センターからいただいた月次GDPなど、ことごとく最尤法の収束計算に失敗しました。ということで、景気動向指数の一致指数に基づいて、2000年以降の景気後退確率をマルコフ・レジーム・スイッチング・モデルで計算した結果が以下のグラフの通りです。

2000年以降の景気後退確率

2001年ころのITバブル崩壊後の景気後退期に続いて、直近の景気後退期にも確率が高まっているのが見て取れると思います。ただし、推計期間は2008年12月までのデータに基づいていますので、足元は分かりません。取りあえず、ピーク月を推計するのが目的ですから、トラフ月は別の課題となっています。しかし、推計結果は決して美しくなく、2001年ころのITバブル崩壊後の景気後退局面も、直近の景気後退局面も、景気後退直前のピーク月は遅めに検出しています。さらに、ITバブル崩壊後の景気後退から景気転換するトラフは早めに判定していたりします。私が大きな理由としてペーパーの中で言い訳がましく上げておいたのは、やっぱり、1変数のマルコフ・レジーム・スイッチング・モデルはかなりデータに sensitive で、2008年10月以降の大幅なデータの落ち込みを組み入れて推計したものですから、落ち込み方がかなり大きくないと景気後退とは判定しないことから、ピーク月は遅めに検出し、逆に、データ系列が少しでも上向きになると景気後退から脱したと判定してしまって、トラフ月は早めに検出するんではないかと考えています。それにしても、sensitive な推計を収束させるために多大の時間を費やしてしまいました。推計には RATS を用いたんですが、そもそも、このソフトを入手するのに手間取ってしまった上に、推計にも時間がかかったため、原稿提出の締切りを大幅に過ぎ、一時は諦めるとか言い出して、結局、収束したのでやっぱり提出することにし、本学の紀要の編集委員さんとか研究所の事務室にも多大な迷惑をかけてしまいました。
私はジャカルタにいた時にもマルコフ・レジーム・スイッチング・モデルを使ってペーパーを書いたことがあり、その当時の印象から、かなり気楽に考えていたのも苦労した原因かもしれません。どうしてかと言うと、当時、オックスフォード大学にいて、今はケント大学に移っている Krolzig 教授が提供していた MSVAR というモジュールを OX で走らせるだけで、極めてお手軽に推計結果が得られたんですが、現在ではこのモジュールが expire してしまっていて、エラい先生が示した数式通りに RATS でプログラムを組む必要があったからです。
私などが使っている EViews や STATA なんかの初歩的な計量計算ソフトには状態空間モデルを解くカルマン・フィルターは実装されているんですが、マルコフ・レジーム・スイッチング・モデルの解法が実装されているソフトは、少なくとも私は知りません。たぶん、かつての MSVAR を除いて、世の中に存在しないんではないかと想像しています。理由のひとつは MSVAR が存在したからです。例えば、2002年の STATA のサポートからの回答では、マルコフ・レジーム・スイッチング・モデルの推計には MSVAR を推薦するとあったりします。従って、極めてお手軽に MSVAR で推計できるものですから、他のソフトに実装するインセンティブがなかった可能性があります。あえて申し上げると、極めてお手軽な MSVAR の存在は、他の汎用ソフトへの実装を遅らせたという意味で罪なものだったのかもしれません。もっとも、私はお手軽推計の恩恵にあずかった1人ですし、MSVAR が expire してからは、かなり複雑なプログラムを組めるということは私の専門性を高める結果になっているのかもしれません。

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2009年5月17日 (日)

今回のNHK連続テレビ小説「つばさ」はパスかも?

NHK連続テレビ小説「つばさ」

今さらなんですが、3月30日からNHKで朝の連続テレビ小説「つばさ」が放映されています。上の画像はNHK連続テレビ小説のホームページから引用しています。このブログでは、必ずNHKの朝の連続テレビ小説を取り上げることにしているんですが、今回はややパス気味です。川越を舞台とし、最初の方にドタバタがあって、放浪中だったヒロインの母親が帰って来て、しかし、和菓子のお店の土地建物を売り払い、川越の地域FM局の創設に加わるとともにパーソナリティとして働く、といったストーリーですが、余りにも個性的な出演者ばかりで、誰を中心に話が進んでいるのか、サッパリ分かりません。特に最初の方では、主人公がヒロインなのか、ヒロインの母親が主役なのか判然としなかったように感じてしまいました。そう言えば、つばさの母親役の高畑淳子さんは「篤姫」でもヒロインの母親役を演じていたような気がします。この朝ドラと同じで、特に、最後の方はハメを外し気味の母親を演じていたような気がしないでもありません。私は大学で今年前期は1コマ目の授業があり、少し見逃すとストーリーについて行けないようなハイテンポのドラマのように感じています。でも、それはそれでファンもいることでしょう。それから、最初に流れる主題歌にも違和感があり、朝の早い時刻からアンジェラ・アキさんのいきなり絶叫調になる歌を聴くのは避けたい年齢に達してしまった気がしないでもありません。

ということで、今年度後半の大阪局作成の朝ドラに期待したいと思います。

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2009年5月16日 (土)

新型インフルエンザからパンデミックの恐怖を考える、ほか、いろいろ

今日午後の民主党の代表選で鳩山由紀夫さんが新しい党代表に選出されましたが、まったくどうでもいいジョークを思い出してしまいました。というのは、私の愛読書のひとつである「ハリー・ポッター」のシリーズ第2話『秘密の部屋』から登場して、後にホグワーツ校の厨房などで働く屋敷しもべ妖精のドビーの外見は、もっぱらのウワサとして、ロシアのプーチン首相をモデルにしていると言われていたんですが、大昔に、私の知り合いの誰かが「日本ならさしずめ鳩山由紀夫さんではないか?」と言っていたのを思い出してしまいました。分かる人にしか分からないジョークだったりします。

エントリーの最初の軽いつかみのジョークは終わりにして本題に入ると、すでに、いろんなメディアで報じられている通り、今朝、神戸で海外渡航経験のない高校生が新型インフルエンザに感染していることが確認されました。海外からの帰国者を除いて、国内でのヒト-ヒト感染が強く疑われる感染例の発生として注目を集めています。まず、朝日新聞のサイトから記事を最初の2パラだけ引用すると以下の通りです。

厚生労働省は16日、国立感染症研究所での詳しい検査で、神戸市内の県立高校3年生の男子が新型の豚インフルエンザに感染していることを確認した、と発表した。検疫を除く国内で初めての発生。同じ高校に通う2人の高校生も、神戸市環境保健研究所の検査で、陽性反応が出ている。3人とも渡航歴はなく、国内で人から人への感染が広がっている可能性がある。
政府は同日午後、対策本部の幹事会を招集し、新型インフルエンザの国内対策をこれまでの「第1段階(海外発生期)」から、「第2段階(国内発生早期)」に切り替える予定。水際での食い止め重視から、地域での感染拡大防止を主眼にした段階に移る。

記事にもある通り、同じ高校に通う他の2人や他の高校の生徒からも陽性反応が出ており、他にかなりの人数が体調不良を訴えていると報じられています。神戸市では東部地区のすべての市立小中高校と幼稚園を来週いっぱい休校・休園にすることを決めており、感染拡大の防止に努めています。厚生労働省も職員を派遣すると報じられていますから、感染拡大防止とともに感染経路の解明も進められるんだろうと思います。それにしても、6年前のSARSの時も関西圏が巻き込まれたんですが、海外からの感染例とはいえ、大阪の府立高校生と教員も長らく成田で回復を待っていましたし、今回の豚由来の新型インフルエンザも関西から感染者を多く出しているような気がします。単なる偶然かもしれませんし、単なる偶然以外の何かが作用しているのかもしれません。
官庁エコノミストとしてキャリアを送ってきた私の専門外もはなはだしいですし、報じられている以上の詳細な情報は持ち合わせませんが、現在の新型インフルエンザの特徴として上げられているうちで私が注目しているのは次の2点です。すなわち、第1に、季節性のインフルエンザと比較しても致死率が飛び抜けて高いわけではなく、そんなに強烈な強毒性ではないように見受けられることです。第2に、理由は専門家にもいまだ不明ながら、60代以上の人の死亡例が極端に少なく、その年代の人が何らかの免疫を有している可能性があることです。さらに付け加えれば、従来から想定されていた鳥由来ではなく、豚由来であるという点もありますが、SARSの時は聞き慣れないハクビシンまで持ち出されましたから、どの動物に由来しているのかは私のような一般人には関係が薄いのかもしれません。
通常の季節性のインフルエンザよりも致死率がそう高くなく、60代以上の人に免疫がある可能性があるとすれば、感染力の問題になります。と言うのは、パンデミックの恐怖は致死率と感染力の掛け算になると私は考えているからです。どちらかがゼロであれば結果はゼロです。このパンデミックの恐怖が一定の水準よりも大きければ、私の専門分野の経済なんかは国民の生命や健康の観点からすれば吹っ飛んでしまいます。医療は言うまでもなく、電力や水道などのライフラインを最低限確保しつつ、経済活動は極端に言えばストップして、GDP成長率が瞬間風速で大きなマイナスになろうとも、国民生活の豊かさや便利さを犠牲にするくらいの覚悟で、国民の生命や健康を守る政策が採用されるべきことは当然です。しかし、致死率がそれほど高くなく、パンデミックの恐怖が一定の水準を超えないのであれば、国民生活の豊かさや便利さを支える経済活動などとのトレードオフを考えることになります。トレードオフとは、要するに、2変数の間に負の相関があることから、一方を重視すれば他方は軽視される関係です。経済学の分野としては労働などにトレードオフが多くみられ、私の授業でも詳述していますので、このブログでも来週あたりに取り上げようと考えています。いずれにせよ、非常に複雑な利害がからむんでしょうが、社会的な効用関数とコスト関数を適切に設定すれば、経済学的な意味での最適解が導出される可能性はあります。ただし、今までそんなことが出来た例はありません。

次に、タイトルとは何の関係もなく、昨日、欧州統計局 Eurostat から季節調整済の前期比でユーロ圏の1-3月期のGDP成長率は▲2.5%であったと発表されました。一応、エコノミストとして欧州経済もフォローしているということで、Financial Times のサイトから European Economic Forecast のフラッシュを引用しておきます。ドイツと英国は土砂降りです。

最後に、これまた、新型インフルエンザともパンデミックとも何の関係もなく、羽生名人と郷田九段の第67期将棋名人戦7番勝負については、このブログでもたびたび取り上げていますが、下の写真では、将棋に熱心な下の子が名人戦の扇を両手に持ってご満悦の表情です。

名人戦の扇を持つ下の子

向かって右の扇には羽生名人と郷田九段が1字ずつ、羽生名人は、郷田九段はと揮毫しています。向かって左は羽生名人のみの揮毫で一陽来復と読めます。割と有名な四文字熟語で、『易経』からの出典だと思います。陰陽道にも出て来るのかもしれません。さすがに、名人戦に出るようなレベルの棋士になると墨痕鮮やかに揮毫し、落款なんかも持っているんだと、今さらながら、しょうもないことに感心していたりします。下の子には私から、その辺の渋谷あたりの街頭で配っている団扇のようにパタパタとあおいで実用的に使うべきものではなく、飾りや置物の類であって厳重に保管に努めるように言い渡してあります。我が家のお宝ともいえる取っておきの逸品としては、私が大使館勤務の時にご訪問いただいた皇族方の宮様から拝領した三段重ねの盃があるんですが、それに次ぐ品ではないかと思います。

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2009年5月15日 (金)

機械受注統計から景気パスと景気転換点を考える

本日、内閣府から3月の機械受注統計調査報告が公表されました。民間設備投資の先行指標と見なされている電力と船舶を除く民需のいわゆるコア機械受注の結果が2月統計で5か月振りにプラスに転じて注目されていたところですが、結果は季節調整済みの同じコア機械受注の系列で前月比▲1.3%減となりました。加えて、4-6月期も同じベースで前期比▲5.0%減と見込まれています。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計結果の概要に関する記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が15日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.3%減の7279億円となり、2カ月ぶりに減少に転じた。このうち製造業は21.8%増、非製造業は3.1%減だった。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額は22.2%減だった。4-6月期は前期比5.0%減の2兆883億円を見込む。
内閣府は基調判断を「わずかに増加したものの、基調としては減少が続いている」から「減少のテンポが緩やかになってきている」に変更した。

次に、電力と船舶を除く民需のいわゆるコア機械受注のグラフは以下の通りです。左軸の単位は兆円で、青の折れ線が毎月の受注額、赤が後方6か月平均です。影を付けた部分はいつもの通り景気後退期です。

機械受注統計調査

直感的に、コア機械受注はこの年央に底を打って反転するんではないかと見られます。そうだとすると、GDPベースの設備投資も今年年末か来年年初には反転する可能性が高まっています。現時点で、今後の年度内いっぱいくらいの景気パスを考えると、アルファベットで表して3通りあり、W字型、V字型、L字型となります。一昨日の景気ウォッチャー調査を取り上げた際には、単純なV字型を想定しなくもなかったんですが、やっぱり、設備投資を考え合わせるとW字型なのかもしれないと、私自身も考えが揺れ動いています。でも、よほどW字型の右半分がフラットにならない限り、L字型は可能性が低いように見込んでいます。加えて、もしもW字型の景気パスをたどると仮定すれば、景気転換点としては1-3月期に底入れしたと見るか、その後のW字型のパスの2番底が景気転換点なのかは、直感的には2番底の方が浅いように見受けられるものの、なかなか微妙な判断だという気がします。
1-3月期に底入れして景気が回復局面にあると仮定しても、その後の景気回復局面の力強さについては、先月4月30日付けのエントリーで鉱工業生産指数統計を取り上げた際に、「カギを握るのは設備投資と輸出」であると書いた通りです。特に、設備投資について考えると、増産しても生産水準が低いままで推移するならば稼働率の上昇や遊休設備の再稼働につながるだけで、新たな設備投資は活発になりません。生産が一定の水準を超えて初めて新たな生産設備が必要とされます。別の表現をすると、ミッチェル的な景気拡大局面に入っても、シュンペーター的に経済活動水準が低い段階では、大きくなり過ぎた資本係数が修正されるだけで、資本係数がさらに低下して新たな設備投資が必要とされる段階まで少し時間的なラグがあります。生産や輸出はミッチェル的な景気の2分法に従って増減する一方で、設備投資はシュンペーター的な2分法に対応するということも出来ます。この意味で、知り合いのエコノミストから送られて来たリポートには「設備投資は景気の遅行指標」と明記しているものもあったりしました。その通りかもしれません。なお、詳細な説明は省きますが、私が作成したミッチェル的な景気の2分法とシュンペーター的な景気の2分法の対比をイメージ的に描き出したものが下の画像です。もちろん、現在では、日米両国をはじめとして、ミッチェル的な景気の2分法に従って景気基準日付を判定しています。縦軸は経済活動水準、横軸は時間の流れ、赤いカーブが景気の推移、水色の直線はトレンド線です。

景気の2分法

一般的な景気パスのお話に終始してしまいましたが、最後に、機械受注統計に戻ると、3月データのひとつの特徴は製造業と外需が大幅に伸びたことです。世界経済が全体として拡大し、世界の多くの国が景気転換点に向かっていることを間接的ながらうかがい知ることが出来ます。

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2009年5月14日 (木)

在庫を通じた生産の変動について考える

ここしばらくの授業で、企業の生産活動が日本の景気循環の大きなエンジン、プラスもマイナスも、になっていることを学生諸君に説明しています。主として、最終需要の変化に基づくわずかな消費や販売の変動が在庫の最適化行動を通じて増幅され、生産や出荷の大きな変動を引き起こす例を、実際の数値例に基づいて説明しています。まず、前提は以下の通りです。

  1. 生産側と販売側はともに販売に関する静学的な予想に基づいて、生産側では前期の販売と同じ量を生産し、販売側でも前期の販売と同じ量を入荷 (生産側から見れば出荷) します。
  2. 生産側においても、販売側においても、出荷や販売と同量の在庫を保有します。
  3. ただし、販売側で需要の変動があり、入荷と異なる販売であった場合は在庫の変動が生じ、次期の入荷を増減させて在庫調整を行います。
  4. 同様に、生産側で出荷の変動があり、生産と異なる出荷であった場合は在庫の変動が生じ、次期の生産を増減させて在庫調整を行います。

これを基に、最終需要が変化した場合の在庫調整を通じた生産の変動を以下の表に基づいて説明しています。生産や販売の対象となるのは何でもいいんですが、最近、話題になっている業界を代表して自動車の台数で授業しています。なお、表に一番左側の列の「期」については、分かりやすいと思うので「年」で説明していたりしますが、基本は変わりありません。

生産 / 在庫出荷 = 入荷販売 / 在庫
1100 / 100100100 / 100
2100 / 10010090 / 110
390 / 1207090 / 90
460 / 909090 / 90
590 / 909090 / 90
690 / 9090100 / 80
7100 / 70120100 / 100
8130 / 100100100 / 100
9100 / 100100100 / 100

見れば明らかなんですが、各期における特徴は以下の通りです。

  1. 第1期には、生産、生産側の在庫、出荷・入荷、販売、販売側の在庫とも100で均衡しています。
  2. 第2期には、販売が何らかの理由により減少し、販売側で意図せざる在庫の積上がりが生じます。
  3. 第3期には、販売側で販売の減少とそれに見合った在庫調整を行うため入荷を減らし、その結果、生産側で意図せざる在庫の積上がりが生じます。
  4. 第4期には、生産側で出荷の減少とそれに見合った在庫調整が行われ、生産は減少します。
  5. 第5期には、生産、生産側の在庫、出荷・入荷、販売、販売側の在庫とも90で均衡を回復します。
  6. 第6期には、販売が何らかの理由により増加し、販売側で意図せざる在庫の減少が生じます。
  7. 第7期には、販売側で販売の増加とそれに見合った在庫の積増しを行うため入荷を増やし、その結果、生産側で意図せざる在庫の減少が生じます。
  8. 第8期には、生産側で出荷の増加とそれに見合った在庫の積増しを行うため生産が増加します。
  9. 第9期には、生産、生産側の在庫、出荷・入荷、販売、販売側の在庫とも100で均衡を回復します。

実は、いろんな授業で最初に書いた前提が必ずしも同じではないので、授業ごとに数値例の計算結果は微妙に違うような気もするんですが、まさか、この数値例の表を丸暗記しようとする学生はいないでしょうから、まあ、必ずしも各種授業を通じた統一性は取れていない気もしないでもないものの、そんなに気にしていなかったりします。要するに、学生諸君に理解して欲しいのは、最初に書いた通り、最終需要のわずかな変化が在庫の最適化行動を通じて増幅され、出荷や生産活動の大きな変動をもたらすことです。上の表の数値例でいえば、10の販売の変動が30-40の出荷や生産の変動をもたらしていることを理解してもらおうと努力しています。少し困ったのは、前期末の在庫と、生産側でいえば当期の生産、販売側でいえば当期の販売の合計が、生産側でいえば当期の出荷、販売側でいえば販売とそれぞれの当期末の在庫の和に等しいことを理解させるという、本来の重要性からやや遠いことで苦労して、お小遣いの例を持ち出して、前月末の繰越額と今月にもらった小遣いの合計が、今月中に使った額と来月への繰越額の合計に等しくなることを持ち出したりして説明していたりしました。
ポイントは、繰返しになりますが、最終需要段階でのわずかな変化が在庫の最適化行動を通じて増幅され生産や出荷の大きな変動をもたらすことと、ついでながら、景気循環の4つの波のひとつであり、もっとも短いながら現実経済でもっとも重要と見なされていて、例えば、内閣府の景気基準日付の基になっている在庫循環、キチン・サイクルについて理解を深めることです。

一応、上の表は板書して学生諸君もノートを取っていたように思いますので、頭に入っていることと期待していますが、厳しい就職戦線を乗り切るために、しっかりと授業を進めたいと考えています。

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2009年5月13日 (水)

景気ウォッチャー調査は景気転換点が近づいていることを示唆しているか?

本日午後、内閣府から景気ウォッチャー調査結果が発表されました。4月の調査結果です。メディアは国際収支統計が発表されて、2008年度の経常収支が前年度比で半減したことを大騒ぎしているんですが、私は景気ウォッチャー調査の方が足元の景気を考えるにははるかに重要だと考えています。ということで、まず、統計のヘッドラインなどを報じた日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が13日午後発表した4月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は34.2となり、前月比5.8ポイント上昇(改善)した。改善は4カ月連続。高速道路料金の引き下げや定額給付金、環境対応車への助成などの経済対策効果に加え、一部企業の受注回復や在庫調整の進展などが背景という。
内閣府は同調査による景気の基調判断を「景気の現状は厳しいものの、このところ悪化に歯止めがかかりつつある」とし、4カ月連続で上方修正した。
調査は景気に敏感な小売業関係者など約2000人が対象。4カ月前と比べた現状や2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」までの5段階で評価してもらい、「家計」「企業」「雇用」の3分野で指数をつくり加工する。今回の調査期間は4月25-30日。

いつものグラフは以下の通りです。青い折れ線が現状判断DI、赤が先行き判断DIで、ともに右軸の単位は引用した記事にある通り、100分比のパーセントです。これまた、いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。

景気ウォッチャー調査

前回のITバブル崩壊後の景気後退期では、景気ウォッチャー調査の現状判断DIが2001年10月に27.2でで底を打った後、3か月遅れて2002年1月に景気がトラフに達し、翌月から景気拡大が始まっています。今回の景気後退局面では、上のグラフからも明らかな通り、昨年12月に景気ウォッチャー調査が底を打っていますし、4月30日付けのこのブログのエントリーで取り上げた鉱工業生産指数は2月に底を打ち、3月が実績として前月比プラスに転ずるとともに、製造工業に限った予測指数では4-5月にもプラスを続けるとされていますので、事後的にはこの1-3月期が景気の谷だったと判定される可能性もあり得ます。すでに足元で景気回復局面に入っているのかもしれません。そう考えれば、3月決算で多くの企業の大幅減益や赤字転落が報じられているにもかかわらず、東証の日経平均株価がジリジリと上げているのも整合的に見えなくもありません。もちろん、昨夜のエントリーで取り上げた内閣府の景気動向指数や OECD/CLI は、まだ3月データで反転を確認しているわけではありませんが、控えめに言っても、景気転換点が着実に近づいていることは確かなように見受けられます。ただし、繰り返してこのブログで表明しているように、W 字型の回復パスをたどって2番底をつけに行く可能性は十分あります。

すなわち、今夜のエントリーのタイトルに対する回答は "Possibly, it does." だと私は考えています。

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2009年5月12日 (火)

景気動向指数に見る日本と世界の景気の現段階

昨日のエントリーまでで遅れを取り戻し、今日はカレントな話題に戻りたいと思います。すなわち、昨日、経済開発協力機構 (OECD) から先行指標 (OECD/CLI) が発表されるとともに、今日、内閣府から景気動向指数が発表されました。どちらも今年3月のデータです。発表された時間的な順序とは逆なんですが、まず、我が国の景気動向指数について、統計のヘッドラインなどを報じた東京新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が12日発表した3月の景気動向指数(速報値、2005年=100)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比0.3ポイント低下し、84.9となった。低下幅は2月(2.8ポイント)から大幅に縮小。半年程度先の景気を示すとされる先行指数は2.1ポイント上昇し76.6と6カ月ぶりに上昇した。
内閣府は「先行指数に下げ止まりの兆しがみられる」としているが、一致指数の基調判断は「悪化を示している」のまま据え置いた。
一致指数は8カ月連続の低下で、02年2月(84.9)以来の低水準だった。自動車や電機など輸出産業で在庫調整が進展したため、鉱工業生産指数がプラスに転じたが、有効求人倍率や大口電力使用量は悪化が続いた。
景気に遅れて動く遅行指数は1.6ポイント低下し88.7だった。

いつもの景気動向指数のグラフは以下の通りです。赤い折れ線が一致指数、青が先行指数で、ともに右軸の単位は引用した記事にある通り2005年=100です。これまた、いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。

景気動向指数

次に、景気の山から谷、あるいは現在の景気後退期においては現時点までの景気動向指数の下落幅と下落率、さらに、今月から下落期間の1か月当たり平均下落率を計算してみました。下落率を単純に月数で除しています。以下の通りです。

谷 (直近)下落幅 (率)
<月当たり下落率>
1990年10月 104.31993年12月 79.9▲24.4 (▲23.4%)
<▲0.62%/月>
1997年5月 96.01998年12月 84.0▲12.0 (▲12.5%)
<▲0.66%/月>
2000年12月 95.62001年12月 84.0▲11.6 (▲12.1%)
<▲1.01%/月>
2007年8月 105.22009年3月 84.9▲20.3 (▲19.3%)
<▲1.02%/月>

新たに今月から加えた1か月当たりの下落率から一見して明らかなんですが、ある意味で、調整スピードが増しているのが読み取れます。現在の景気後退局面では当初は緩やかだった下がり方が昨年末から一気に落ちていますから、この部分だけをカウントすれば、極めて速度の速い調整が行われたと理解することが出来ます。このことは景気後退局面を早期に終了させる可能性が示唆されていると私は受け取っています。4月9日付けや4月30日付けのエントリーで明記したように、fast-in fast-out のシナリオが無視できない確率であり得ると言えます。ただし、留保すべき点は2点あり、まず、在庫や生産の調整が早期に終了するとしても、その後の回復のスピードまで速いとは限りません。最終需要次第と言えます。続いて、社会的厚生の問題として、スピード速く短期に大幅な調整を行うのがいいのか、景気後退の期間は長くなっても、ある程度の時間をかけてゆっくりと調整するのがいいのかについては議論が分かれます。私はどちらかと言えば、後者のゆっくり調整型の方が社会的な痛みは小さいんではないかと考えないでもありません。

次に、OECD/CLI の主要国のグラフは以下の通りです。

OECD/CLI

注目点は、かなり多くの国が strong downturn とされている中で、最後のグラフの中国が possible trough に転じたことです。欧州でくくってしまったんですが、EU が少し反転の兆しを見せているのは、実は、グラフは割愛したものの、英仏伊の3か国も possible trough となっているからです。日本の fast-in fast-out がまだ実現していない中で、欧州の一部や中国が景気転換点を迎えている可能性を示唆されているわけで、日本が景気後退局面を早期に終わらせるとはいえ、世界の中で考えると、そんなに早くはないのかもしれません。

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2009年5月11日 (月)

政府債務残高は危機的水準で増税が必要か?

やや遅れ気味ですが、先週の金曜日5月8日に財務省から今年3月末現在の国債及び借入金並びに政府保証債務現在高が発表されまています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

財務省は8日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の総額が2009年3月末時点で846兆4970億円になったと発表した。昨年3月末から2兆7426億円減少した。09年4月1日時点の推計人口(概算値)の1億2760万人で計算すると、1人あたりの借金は約663万円になる。
国の借金は四半期ごとに財務省が公表。補正予算の財源確保のために国債を増発した影響で、普通国債の残高が増えたものの、財政投融資の償還が増加し、全体の残高は減少した。昨年3月末は過去最高の849兆2396億円を記録していた。
国の借金の内訳をみると、国債は昨年3月末よりも3兆8796億円少ない680兆4482億円、借入金は4072億円多い57兆5661億円。一時的な資金不足を補う政府短期証券は7298億円多い108兆4826億円になった。

国債及び借入金現在高と政府保証債務現在高に分けて公表されていますが、私は後者の政府保証債務の方は余り興味がないので、前者の国債および借入金の残高を見ると以下の表の通りです。なお、単位は億円ですが、単位未満四捨五入のため合計において合致しない場合があります。また、財務省のホームページからコピペで計数を取っていますので間違いはないと思いますが、完全性は保証しません。正確な計数をお求めの向きは上にリンクを張った財務省のホームページをご覧ください。

区分金額増減
内国債6,804,482▲38,796
 普通国債5,459,35644,772
 長期国債 (10年以上)3,542,378▲1,277
中期国債 (2年から5年)1,610,18364,442
短期国債 (1年以下)306,795▲18,392
財政投融資特別会計国債1,310,501▲87,042
 長期国債 (10年以上)947,37238,558
中期国債 (2年から5年)363,129▲125,600
交付国債5,266▲507
出資・拠出国債22,105▲2,952
石油債券承継国債0▲321
承継国債7,2547,254
借入金575,6614,072
 長期 (1年超)222,5194,072
短期 (1年以下)353,1420
政府短期証券1,084,826▲7,298
合計8,464,970▲27,426

上の表は2009年3月末現在の計数ですが、最後の債務残高合計と名目GDPを対比して、政府負債務残高のGDP比をプロットしたのが下のグラフです。青い棒グラフは期末残高で左軸の単位は兆円、これを期中の名目GDPで除した比率が赤い折れ線グラフで右軸の単位はパーセントです。当然のことながら、債務残高とGDP比は同じような動きを示しています。なお、お断りしておきますが、今年1-3月期のGDP統計は今月5月20日に発表される予定ですので、直近の政府債務残高のGDP比はまだ計算できません。

政府債務残高の推移

通常、経済分析を行う際は、中央政府に地方政府と社会保障基金を加えた一般政府の国民経済計算 (SNA) ベースで考えるんでしょうが、一般政府の一部をなす中央政府債務残高で見ても850兆円に近づきつつあり、昨年からGDPが大きくマイナス成長に陥っていることも加わって、政府債務残高のGDP比は170%を超えています。直近の拡張的な財政政策を考慮すると、足元ではさらに政府赤字が拡大しているのは確実です。ただし、これをどう考えるかには諸説あります。もちろん、危機的な水準であるとのプロパガンダも盛んです。EU のマーストリヒト条約になぞらえてフローの財政赤字のGDP比3%、ストックの政府債務残高のGDP比60%を主張する意見も無視できません。しかし、私は2点主張しておきたいと思います。第1に、科学としての経済学の現時点での限界かもしれませんが、政府債務残高の最適水準に関するエコノミストの合意はまったく形成されていないことです。財務省が発表した債務残高はグロスなんですが、グロスで考えるか資産とキャンセルアウトしたネットかでもコンセンサスはありません。私自身エコノミストを自称しながら、こんなことを言うのはまったくお恥ずかしい限りなんですが、我が国の現状のグロス170%が高過ぎるのか、まだ低いのかについて、あるいは、ネットで考えるべきなのか、控え目に言っても、エコノミストの間に幅広い合意はないのが実情です。ただし、このまま債務残高GDP比が上昇を続けるのは持続可能性に疑問を生じさせることは確かですし、エコノミストの間でコンセンサスがないという事実は、増税に賛成したり、逆に、反対したりする根拠にはなり得ません。第2に、これだけの国債発行、国債を含む債務残高がありながら、マクロ経済や金融市場の安定が損なわれていないのも事実です。たとえば、現在の日本がインフレになっているとは誰も考えていませんし、金融市場で国債の供給超過から国債価格が暴落、すなわち、金利が上昇したりしていません。見通し得る近い将来にも、そんなことが起こりそうにないことも多くのエコノミストが認めるところだと思います。
他方、昨年以来、麻生総理大臣は近い将来の増税を目指すことを公言しており、増税による財政再建が模索されているように見受けられます。実は、これは、starve the beast 「獣を飢えさせろ」とは逆の方向といえます。少し前のブッシュ米国前大統領のころには、クルーグマン教授が減税を先行させて財政赤字を作り出して政府支出を削減しようとする傾向を starve the beast として批判していたことを思い出します。最近でも、クルーグマン教授の昨年2008年6月16日付けの New York Times のコラムについて、同日付のマンキュー教授のブログstarve the beast が示唆されていると指摘されています。要するに、starve the beast とは減税を先行させて財政赤字が拡大することを理由に、社会保障政策経費などの政府支出を削減することを目的とする方向といえます。では、現在の我が国政府がやっているように、政府支出の拡大を先行させて財政赤字をテコに、逆に、増税を実現するのは、feed the government 「政府を太らせろ」とでも称するんでしょうか。なお、お断りしておきますが、もちろん、starve the beast はクルーグマン教授やマンキュー教授も言及するようなひとつの概念としてエコノミストの間に受け入れられていますが、feed the government の方はまったくの私の思い付きの造語です。ひょっとしたら、財政学の専門家はちゃんとした名称を知っているのかもしれません。それはそれとして、starve the beastfeed the government はその帰結が全く正反対なのを理解すべきです。前者は「小さな政府」に帰着しますが、後者は「大きな政府」につながる方向であるといえます。このブログでも、昨年2008年9月22日付けの「麻生総理大臣の財政政策上のインプリケーションは何か?」と題するエントリー、次は、同じく昨年11月5日付けの「社会保障国民会議の最終報告は大きな政府への第一歩か?」、そして、これも昨年11月19日付けの「日本の社会保障はどのくらい高齢者に手厚いのか?」と続くシリーズで、麻生総理大臣就任の財政的なインプリケーションは大きな政府と行き過ぎた高齢者優遇政策であると指摘して来ましたが、前者の方は着実に進行しているように見受けられなくもありません。

かつて、「中福祉中負担」といわれたこともありますが、「小さな政府」と「大きな政府」のどちらか、あるいはその中間か、行き過ぎた高齢者優遇政策をどうするかに関する将来の社会福祉政策のあり方とも強く関連して、国家としての日本が目指すべき政府の形については、これから先、何回かの選挙で国民の審判を受けることになるような気がします。

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2009年5月10日 (日)

F. Scott Fitzgerald の The Great Gatsby を読む

昨日今日と、長崎ではいいお天気が続いていて、せっせと洗濯に励んでいます。青山で家族と共に暮らして女房に洗濯を任せていたころには気づかなかったんですが、単身赴任をして自分で洗濯などの家事をするようになると、ここ2-3週間で洗濯物が少なくなりつつあり、季節が着実に進んでいるのを実感してしまいます。

The Great Gatsby

さて、本題に入って、F. Scott Fitzgerald の The Great Gatsby を読みました。長崎市立図書館で借りた版は英国から出ている Essential Penguin でした。ホントは米国版を読みたい気もあったんですが、ゴールデンウィークに青山の家族の許に帰宅する飛行機や電車での移動の際のヒマ潰しの軽い読み物ですから、図書館に置いてある適当なのを借りてしまいました。でも、よくよく考えると、控え目に言っても、米国と英国の英語の違いに関する該博な知識を私は持ち合わせません。なお、ついでながら、続けて Harry Potter and the Philosopher's Stone も同じく英国版を長崎市立図書館から借りて読んだんですが、今日のところはパスします。
2年ほど前の2007年6月7日のエントリーでは「村上春樹による新訳『グレート・ギャッツビー』を読む」と題して、邦訳の方をこのブログで取り上げています。上の画像にリンクを張ってある英国のアマゾンのサイトではこの本の Product Description について、"A masterpiece, a dazzling social satire, and a milestone in twentieth-century literature" との書出しで紹介されています。私も日英両国語でいくつかのバージョンを読みましたが、当たり前ながら、どれを読んでもやっぱりいいに尽きます。何度も読んだ小説ですが、それ以上は言いようがありません。なお、例の old sport については、ギャッツビーはニックに対してだけでなく、デイジーの夫のトムに対しても使っていて、トムからこの呼び方を拒否されていたりします。何度も読んでいるにしては忘れるのも早いのかもしれません。それから、英語で読んで初めて知ったのは、faint という言葉を、名詞、形容詞、副詞、動詞と実に多彩に使っていることです。私は適当な表現でごまかす時、sizablesizably という形容詞・副詞を研究論文なんかでも多用するクセがあるんですが、機会があれば faintfaintly も使ってみようかという気になったりしました。

立派な図書館が出来た長崎ですが、まだまだ英語の本は貸出しに余裕があると見ていますので、いろいろと借りようと目論んでいます。

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2009年5月 9日 (土)

今週後半の海外経済に関する情報の取りまとめ

週末ながら、海外経済に関して、すでに旧聞に属する情報となってしまいましたが、ここ2-3日の動きを簡単に取りまとめておきたいと思います。まず、一昨日5月7日、欧州中央銀行 (ECB) が利下げに踏み切り、政策金利であるレポレートを25ベーシス引き下げ、1%にしました。5月13日からの実施です。プレスリリースは実に簡潔に以下の3点です。

  1. The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem will be decreased by 25 basis points to 1.00%, starting from the operation to be settled on 13 May 2009.
  2. The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by 50 basis points to 1.75%, with effect from 13 May 2009.
  3. The interest rate on the deposit facility will remain unchanged at 0.25%.

今日は週末の土曜日ですので、やや手を抜いて、日経新聞のほか、ドイツの Handelsblatt とフランスの Les Echos とスペインの El País、さらに、ユーロ圏外ながら、英国の Financial Times の記事のサマリーを引用してお茶を濁しておきます。どうでもいいことですが、さすがに一挙5か国語でメディアの記事を引用したのは、このブログでは初めてかもしれません。一応、Windows 7 RC 版 (ビルド7100) で公開された5言語、日英独仏西に対応していたりします。

日経新聞: 欧州中銀、0.25%利下げ 「量的緩和」で足並み
欧州中央銀行(ECB)は7日の定例理事会で追加的な金融緩和策を決めた。ユーロ圏16カ国に適用する政策金利を0.25%下げて13日から年1.0%とするほか、金融機関への資金の貸付期間を1年に延長。民間金融機関が発行する債券の一部も購入する。いずれも銀行の資金調達を支えるのが狙い。主要国の中銀が利下げ以外の政策手段で通貨供給量を拡大する「量的緩和」で足並みをそろえる。
最重要の市場調節金利は1999年の通貨統合後の過去最低を更新する。記者会見したトリシェ総裁は「長期のインフレ率も安定している」と利下げの理由を説明した。
Handelsblatt: EZB senkt Leitsinz auf Rekordtief
Mit einer erneuten Zinssenkung hat die Europäische Zentralbank auf die tiefe Wirtschafts- und Finanzkrise in Europa reagiert. Dass sich der Leitzins um 0,25 Punkte auf 1,0 Prozent verringerte, damit war gerechnet worden. Doch nun wird mit Spannung die geldpolitische Grundsatzentscheidung von EZB-Präsident Jean-Claude Trichet erwartet, die er im vergangenen Monat angekündigt hatte.
Les Echos: La BCE ramène son taux directeur à 1%
Si le principal taux directeur de la Banque centrale européenne a été baissé de 25 points de base, à un niveau historiquement bas, le taux de facilité de dépôt a été maintenu à 0,25% pour ne pas pénaliser les banques.
El País: El BCE baja los tipos al 1% e inyecta más dinero para superar la crisis
El Banco Central Europeo (BCE) ha cumplido con los pronósticos y ha anunciado hoy medidas excepcionales para hacer frente a la peor recesión económica desde la Segunda Guerra Mundial. Así, según ha anunciado su presidente, Jean-Claude Trichet, el instituto emisor "ha decidido en principio" llevar a cabo compras de bonos denominados en euros emitidos en la eurozona. Una medida que ya adoptó EE UU y que equivale a poner en marcha la máquina de imprimir billetes con el objetivo de inyectar dinero en el sistema. Sumada a la rebaja de tipos al 1%, también según lo esperado, y la ampliación del plazo de crédito, prevé ayudar a la recuperación.
Financial Times: ECB cuts interest rates to 1%
The European Central Bank on Thursday cut its main interest rate by a further quarter percentage point to 1 per cent as it prepared to unveil a package of additional measures to fight continental Europe's recession.

引用した記事にもある通り、ECB は金利引下げに加えて、公開市場操作を通じた金融機関への資金供給について、ユーロ建ての covered bond を購入するなど、日米英の中央銀行と足並みをそろえて量的緩和に踏み出すことも決定しています。covered bond とは金融機関が発行する社債の一種で、買入れ規模は600億ユーロとの報道を見かけました。さらに、同日、イングランド銀行 (BOE) も金融政策委員会 (MPC) を開催し、政策金利は0.5%で据え置いたものの、3月に導入した量的緩和の期間と規模の両方を拡大しました。期間は6月までの3か月からさらに3か月延長し、買入れ金額は750億ポンドから1250億ポンドに増額されています。BOE のニュースリリースへのリンクは以下の通りです。長いタイトルが決定事項のサマリーになっています。

ついでながら、先に引用した El País のサイトから米国と欧州の政策金利の推移を示したフラッシュを引用すると以下の通りです。クリックするとグラフが現れます。赤のラインが米国、青が欧州です。ただし、グラフは少し不正確なような気がしないでもありません。少なくとも、一昨日の ECB の金利引下げは1.25%から1%に引き下げたハズですが、グラフではそうなっていません。ほかにも間違いがある可能性があります。いかにも大雑把なスペインらしいということで、ご容赦ください。スペインの新聞ということで、単にものめずらしげに引用した私も極めてアバウトなのかもしれません。4月28日付けのエントリーで The Economist から引用したグラフと合わせて見ると分かりやすいかもしれません。なお、クリックすると一番下にスクロールバーが現れ、横スクロールします。少し縮小をかけてありますので見にくいかもしれませんが、これもご容赦ください。いつもの通り、ファイルに直リンしています。

次に、米国の金融監督当局が実施していた資産査定 stress tests の結果が連邦準備制度理事会 (FED) から公表されています。結果の概要は Overview of the Results と題して pdf ファイルでもアップされています。米国の19の大銀行を対象とした stress tests で5990憶ドルの損失と746億ドルの資本増強が必要との結果が明らかにされました。Wall Street Journal のサイトから最初のパラだけを引用すると以下の通りです。

The federal government projected that 19 of the nation's biggest banks could suffer losses of up to $599 billion through the end of next year if the economy performs worse than expected and ordered 10 of them to raise a combined $74.6 billion in capital to cushion themselves.

この資産査定 stress tests の結果に関して、New York Times のトップページとNew York Times の別のページから直リンしているフラッシュは以下の通りです。前者は私が見た時点ではトップページにあることを確認していますが、現在はどこにあるのか見失ってしまいました。出典を明示できなければ無断引用になったりするんでしょうか。やや心配ではあります。それはともかく、下の方は銀行ごとの査定結果なんですが、巨大なフラッシュを半分以下に縮小表示していますので見づらくなっています。縮小をかけていますので部分的な表示になっていたら、右クリックして「すべて表示」を選択すれば、小さいながら全体表示になります。より詳細にご覧になりたい向きは上のリンクからどうぞ。



なお、先に記事を引用した Wall Street Journal のサイトにも、いくつかフラッシュが置いてあります。URLの解析が出来なかったので、記事サイトへのリンクだけを示しておきます。

最後に、昨日、米国労働省が4月の米国雇用統計を発表しています。ヘッドラインの非農業部門部門雇用者数は▲53.9万人減と相変わらず大幅な減り方ながら少し減少幅がペースダウンした一方で、失業率は8.9%とさらに跳ね上がりました。まず、New York Times のサイトから記事の最初の3パラだけを引用すると以下の通りです。なかなかシニカルな見方だと思います。

The United States economy lost 539,000 jobs in April, the government reported on Friday, a sign that the relentless pace of job losses was starting to level off slightly but was still nowhere near ending.
A year ago, the loss of more than half a million jobs in a single month would have seemed like a disaster for the economy. On Friday, experts were calling it an improvement.
The Bureau of Labor Statistics reported that the unemployment rate surged to 8.9 percent in April, its highest point in a generation. But some economists saw glimpses of a bottom in the latest grim accounting of job losses. The economy, while still bleeding hundreds of thousands of jobs, is starting to lose them at a slower pace, offering the latest hint that the recession is bottoming out.

それから、いつもの米国雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルの赤い折れ線グラフが非農業部門雇用者数の前月差で左軸の単位は、下のパネルの青が失業率で単位はパーセントです。いずれも季節調整済みの統計です。

米国雇用統計の推移

これまた、いつもの New York TimesLos Angels Times から直リンしているフラッシュは以下の通りです。



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第67期名人戦7番勝負第3局は羽生名人が勝ち2勝1敗に

羽生名人と挑戦者の郷田九段の1勝1敗で迎えた第67期名人戦7番勝負第3局は、一昨日の5月7日から昨日にかけて広島県福山市の福寿会館で指し継がれていましたが、昨夜遅く、後手の羽生名人が120手で先手の郷田九段を下して対戦成績を2勝1敗とし、名人位の防衛にむけて少し優位に立ちました。今回は第1局や第2局のような相矢倉ではなく、横歩取りからやや乱戦模様になりましたが、郷田九段が「後手玉に詰みが生じた」と錯覚した失着があり、最後は羽生名人が寄せ切りました。なお、第4局は今月5月20-21日に和歌山県高野町の金剛峯寺で行われます。下の画像は朝日新聞のサイトから引用した投了図です。

名人戦第3局投了図

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2009年5月 8日 (金)

新型インフルエンザの経済的な影響をどう見るか?

すでにメディアで広く報道されている通り、メキシコや米国を中心に豚インフルエンザというか、新型インフルエンザがパンデミックに近づきつつあり、世界保健機構 (WHO) では警戒レベルを6に引き上げることを検討しているようです。当然ながら、エコノミストとして気がかりなのは経済活動への影響です。
まず、国内企業の新型インフルエンザへの対応状況なんですが、三井住友海上グループのインターリスク総研が国内全上場企業3,873社に対し、「新型インフルエンザ対策の実態調査」をこの1-2月に実施し、3月に回答状況を取りまとめています。上場企業ということで大規模な会社だけを対象にしている上に、620社(回答率16.0%)と十分な回答結果を得られているわけではなく、すでに過去の数字となっている可能性が高いんですが、簡単に紹介すると、「対策を実施している」が30.0%、「計画を策定中である」が25.3%と合わせて過半に達していおり、意識の高さがうかがえる一方で、「対応の予定はない」が32.4%と約 1/3 に上っています。対策実施企業は2008年6月に実施した同様の調査結果である9.8%と比較し20%ポイント以上増加しています。もちろん、この比率はここ1-2週間でさらに上がっているものと考えられます。しかし、対応予定がない企業の過半である52.7%は「引き起こす事態があまりにも重大なもので、企業の対応能力を超えるから」を理由に回答しており、この状況は変わっていない気もしないでもありません。
次に、今日のエントリーの表題にダイレクトに答えるものとして、三菱UFJ証券の景気循環研究所が4月28日に「新型インフルエンザの感染拡大が経済に与える影響 - 09年4-6月期の実質GDPを0.4%程度押し下げ」と題するリポートを発表しています。結果は以下の表の通りなんですが、一番上の行にあるように、2003年のSARSの際の例を参考に海外旅行と医療と輸出について、いくつかの前提を置くと、最後の行のように今年4-6月期の実質GDPを▲0.4%押し下げる経済的な効果があると試算されています。

海外旅行
5月以降▲90%減少
医療費
5月以降+7.1%増加
輸出
5月以降▲2.7%減少
4-6月期消費を▲0.4%押下げ4-6月期消費を+0.2%押上げ4-6月期輸出を▲1.8%押下げ
4-6月期消費を▲0.2%押下げ
4-6月期GDPを▲0.4%押下げ

私自身の根拠のない直感として、5月以降の海外旅行が▲90%減少するのは少し過大な前提ではないかと考えないでもありません。SARSの際の例はリポートにもあるように▲53.6%でしたし、4-6月期の海外旅行はビジネスを別にして観光ということになればゴールデンウィークに集中しており、予定通りに出発した人が多いんではないかと思います。さらに、海外旅行の減少分は国内旅行の増加である程度はカバー出来る部分があるようにも思えるからです。もっとも、先月4月21日付けのエントリーで取り上げたように、私も長崎県における定額給付金の経済効果を試算してみましたが、こういった試算は前提の置き方で大きく結果が左右されるのは言うまでもありません。
しかし、いずれにせよ、輸出も含めて▲0.5%未満とはいえ、経済的に無視できないマイナスの影響があることは確かです。どうして無視できないかというと、従来からこのブログでも主張している通り、4-6月期のGDP成長率は一時的ながらプラスに転ずる可能性があると私なんかは考えているからです。場合によっては、新型インフルエンザの影響を考慮しない実力ベースでプラスであったろうと考えられるにもかかわらず、新型インフルエンザの影響で結果としてマイナス成長となれば、企業や消費者のマインドにも悪影響を及ぼすことにもつながりかねません。まだ、1-3月期のGDP統計の1次QEが5月20日に発表される前の段階ながら、エコノミストとしては足元の景気が気にかかるところです。

まったくどうでもいいことながら、メキシコで広く使われているのはスペイン語です。私も在チリ大使館で外交官をしていた経験がありますからスペイン語は理解して、テレビなどでメキシコ人の政府高官らがインフルエンザのことを grippe と言っているのを見かけたりします。女性名詞です。私の知る範囲ではフランス語とドイツ語も同じく grippe です。どうして英語だけ influenza と称するのかがとっても不思議に感じたりしないでもありません。

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2009年5月 7日 (木)

ゴールデンウィークに青山に帰って子供の成長を実感する

昨日までのゴールデンウィーク後半の部は青山に戻って家族とともにゆったり過ごしました。ジャカルタから帰国して、ここ数年、この時期の休暇は京都に出かけたこともありますが、大雑把に家の近くで過ごしているような気がします。東京タワーに上ったこともあったように記憶しています。
この休みに青山に帰宅して感じたのは子供の成長です。やっぱり、単身赴任して以前は毎日のように子供と接していた時と比べると、しばらく見ていない分、成長を大きく感じてしまいます。第1に、去年からそうなんですが、映画について、「クレヨンしんちゃん」から「名探偵コナン」を見たがるまで成長しました。第2に、ガンプラについて、おにいちゃんがHGからMGを作るまで成長しました。分かる人にしか分からないと思います。第3に、この休みにルービックキューブを買い与えたんですが、おにいちゃんは手引書を見ながらでしたら、ほぼ完璧に6面を完成することが出来てしまうまで成長しました。実は、私の大学時代に流行っていたんですが、私には出来ませんでした。第4に、おにいちゃんから下の子に目を転ずると、先日のこのブログでも取り上げましたが、去年は4枚落ちで麻布生に負けていたのが、今年は勝つことが出来るまで成長しました。もっとも、同じ相手ではありませんし、まぐれかもしれません。第5に、少し前からそうなんですが、2人とも本をよく読むようになるまで成長しました。私が帰宅した時、おにいちゃんは夏目漱石の『坊っちゃん』を読んでいて、中学生らしい本を読むようになったものだと感激してしまいました。
さらに加えて、私が実感したのは、家が狭くなったことです。ジャカルタに住んでいたころと比べているので、今夜のエントリーを「海外生活の思い出の日記」に分類したんですが、海外生活では広い家に住めるのも魅力で、我が家は250平米ほどの広い部屋を借りていました。私も役所の参事官を務めましたので、今の宿舎は比較的広い方と考えるべきなんでしょうが、それでも100平米くらいのものですから、大雑把に半分以下になったと私なんかは考えています。さらに、私と女房はともかく、子供達はジャカルタにいたころと比べて2倍くらいの体格に着実に成長しています。かけ合わせて考えると、子供達の目から見て、4-5倍というか、 20-25%くらいに、ジャカルタのころから狭くなっているんではないかと私は想像しています。ですから、子供達が幼かったせいもありますが、ジャカルタのころに家の中で何をして遊ぶかを考えれば、かけっこが出来るくらいの広さでしたし、親子でかくれんぼすら可能でした。我が家は通いのメイドさんでしたので、女中部屋に隠れたりして遊んだものです。今や、親子で家の中で遊ぶといえば人生ゲームやポケモン・カードゲームや将棋などのボードゲームが中心になっています。ついでながら、海外生活の思い出を続けると、ジャカルタでは当然のようにプールがあり、子供達は現地のインドネシア人の先生から水泳を習っていたりしたんですが、私のような薄給の公務員の親を持てば、東京でプール付きは望むべくもありません。プールどころか、海外生活では必要不可欠な自動車すら持たない生活に慣れてしまいました。ゴールデンウィークに巣ごもりに近い近場のお出かけを繰り返している一因かもしれないと考えないでもありません。

この休みに青山に戻って子供達と接し、成長を実感するとともにジャカルタのころの豪華な生活を懐かしんでいます。この先、夏休みになるまで長崎にて教育と研究に精を出します。

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2009年5月 6日 (水)

フジフィルムスクエア『みんなの鉄道』写真展

今日行ったわけではないんですが、六本木の東京ミッドタウンにあるフジフィルムスクエアで『みんなの鉄道』写真展 - おいでよ!レール エンターテインメント - が開催されています。見れば分かるんでしょうが、下の写真は0系新幹線が富士山をバックに走っているところです。

『みんなの鉄道』写真展

上の写真に見られる通り、「さよなら0系新幹線」、「ブルートレイン、寝台特急列車」などのコーナーがあり、当然と言えば当然ながら、写真がメインになっています。でも、写真だけでなく、C62や485系特急列車のNゲージ車両に加えて、ホーロー製の駅名標やトレインマークの実物も展示してありました。トレインマークは5つあって、やっぱりと言うか何と言うか、「富士」がど真ん中に置かれていました。そう言えば、上の写真も富士山がバックになっていて、さすがはフジフィルムの写真展だと感心してしまいました。なお、この鉄道写真の業界ではシロートの私でもお名前を存じ上げている真島満秀さんの写真も、富良野駅の写真など何点か見かけました。実は、恥ずかしながら、この鉄道写真展を見に行った時点では知らなかったんですが、真島さんは先々月3月に63歳の年齢で急逝されたということを、今日、ネットで調べて知りました。ご冥福をお祈りいたします。
このゴールデンウィークも巣ごもり化の傾向が見られるかもしれないとエコノミストらしく消費の動向と合わせて観察しつつ、私自身はアチコチに出かけましたが、近場で楽しむには東京ミッドタウンのフジフィルムスクエアなんかはもってこいのスポットだと思います。ついでに少し周辺を歩いて、SMAP の彼が裸で騒いでいたと言われている檜町公園もミーハーな私らしくチラリとのぞいて見たりしました。芝生がきれいだった印象があります。

子供といっしょに、あるいは、私ひとりで近場を、アチコチ出かけたゴールデンウィークも今日までです。

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2009年5月 5日 (火)

下の子と麻布中学・高校の文化祭に行く

今年のゴールデンウィークは家族サービスに努めているんですが、今日は下の子と麻布中学・高校の文化祭に行って来ました。いつもながら、私は麻布中学・高校の雰囲気が大好きで、下の子とともに文化祭を大いに楽しみました。

麻布中学・高校文化祭の生物部にて葉脈作りに精を出す下の子

麻布中学・高校文化祭の将棋部にて4枚落ちで勝った下の子

昨年のゴールデンウィークも私は下の子と麻布中学・高校の文化祭に行きました。昨年は、下の子はレゴ展が一番印象的だったと言っていたんですが、今年は生物部がよかったと言っていました。水槽の水生生物なんかも水族館みたいできれいでしたし、部員の生徒はていねいに説明してくれました。化学部もよかったんですが、流れ作業的な説明振りで、通り一遍とのイメージをぬぐえませんでした。もっとも、あれだけの人出ですから仕方のない面もありますので、私は同情的です。それから、昨年は将棋部に行って4枚落ちで粘りはしたものの負けたんですが、今年は我が家の下の子が同じ4枚落ちで勝ちました。着実に成長していることが感じられました。でも、オセロ部では私も下の子も負けてしまいました。鉄道研究会では例年と同じように N ゲージの運転を楽しみました。

お天気が下り坂ということで、本格的に雨が降って来ないうちに駆け足で回りました。いつもの麻布中学・高校の雰囲気、すなわち、生徒の自主性に任せて開放的で自由な校風を下の子も気に入っているようです。

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2009年5月 4日 (月)

多摩テックに行ってゴーカートで遊ぶ

今日はゴールデンウィークのお出かけ第2弾で、我が家のような男の子の大好きなゴーカートで遊ぶため、多摩テックに行きました。でも、お天気のいいゴールデンウィークはさすがに人出が多く、少し失敗したかな、というカンジです。3年前の夏休みにも行ったんですが、その時は、下の子が年齢制限で引っかかる乗り物があり、そうこうしているうちに、今年の9月いっぱいで閉園とかで、少し焦ってしまったのかもしれません。2時間待っては10分ほどゴーカートを楽しむというインターバルでした。病院みたいだと受け止める向きもあるかもしれません。

多摩テックでフォーミュラ・プラスに挑戦する子供達

多摩テックでフォーミュラ・プラスに挑戦する子供達

写真は多摩テックのフォーミュラ・プラスに挑戦する子供達です。上の方はスタート地点で、下の方は2番目と3番目でゴールした時のものです。また、全長1キロのドリーム R は、3年前、下の子は年齢制限で諦めましたので、今回は2時間待って私も乗ってみました。目標タイムにわずかに及ばず残念でした。
今日は、ほとんどの乗り物が2時間待ちで、出来れば、もう一度、閉園するまでの夏休みにでもゴーカートを楽しみに来たいと考えています。3年前と同じようにプールを組み合わせるのもいい考えだと思います。

そんなにたくさんのゴーカートに乗れたわけではないんですが、行列を作っての待ち疲れというか、帰りの電車では子供達とともに爆睡してしまいました。

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2009年5月 3日 (日)

一家で名探偵コナンの劇場版「漆黒の追跡者 (チェイサー)」を見に行く

我が家のゴールデンウィーク映画はすでに3月29日のエントリーで書いたように、名探偵コナンのシリーズ第13作「漆黒の追跡者 (チェイサー)」です。今日、朝から一家そろって見に行きました。

名探偵コナン「漆黒の追跡者 (チェイサー)」

ゴールデンウィークの映画といえば、少し前まで、クレヨンしんちゃんのシリーズだったんですが、子供達の成長とともに好みも変化し、昨年から名探偵コナンのシリーズになりました。もうひとつ、子供達の成長を実感したのは、今までは映画館で子供向けの大きなクッションというか、プラスチック製の座布団のようなものを使って、身長が足りない分を補っていたんですが、今日は特に前に背の大きな大人がいなかったせいもあって、子供達が直に座席に座っていました。身長が伸びた証拠だという気がします。
それから、映画館はいつもの有楽町方面でしたので、昼食後、ビックカメラでガンプラを物色したんですが、おにいちゃんは MG に挑戦しました。さすがに、小学生の下の子は HG なんですが、おにいちゃんの小学校のころの同級生には楽勝で MG を作っていた子もいるようで、15歳以上推奨の MG を初めて買いました。大きさは 1/144 の HG に比較して MG は 1/100 ですから、そんなにびっくりするほど大きくはないんですが、箱はかなり大きくて値段も高いので部品の点数が多いんだろうと思います。もちろん、部品の多さに比例して精巧な出来上がりでアチコチよく動いたりするんだろうと期待しています。

ゴールデンウィークに青山の家に戻って、子供達の成長を実感した1日でした。

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2009年5月 2日 (土)

ポケモン映画の壁紙コレクション

ゴールデンウィーク後半が始まりました。いいお天気が続いています。
私はポケモン映画のメールマガジンを購読しているんですが、昨日、5月のポケモンの壁紙をダウンロードできる URL を含むメルマガが配信されました。思い起こせば、一昨年の春からメールマガジンの配信を受けて、毎月のメールマガジンにカレンダー付きの壁紙がダウンロードできるサイトのヒミツの URL があって、私の場合は2007年5月の壁紙から始まって、丸2年余りで25枚のカレンダー付きポケモン壁紙コレクションが出来上がりました。昨年12月からは通常の4対3のサイズに加えて、横長ワイドの大きさの壁紙も配信されています。大学のパソコンの壁紙に使っていたりします。

ポケモン映画カレンダー付き壁紙のコレクション

マイナーなブログとはいえ、オリジナルサイズの壁紙をアップすると怒られそうな気がしますので、小さくサムネイルにしてアップしてみました。まあ、これくらいの大きさで私のマイナーなブログであれば、何とか許容範囲か、という気もしないでもありません。見れば分かるんですが、一昨年2007年に封切られた映画は「ディアルガ vs パルキア vs ダークライ」、昨年2008年は「ギラティナと氷空の花束 シェイミ」、そして、今年2009年は「アルセウス 超克の時空へ」です。どうでもいいことですが、ポケモン映画は言うまでもなく子供向けですから夏休みの封切りで、封切りを終えて次の企画が固まるまでの10-11月くらいは端境期になり、映画とは関係ない画像が用いられているような気がします。それから、今度の5月の壁紙はポケモンがいっぱいいて、とってもかわいい画像を使っているんですが、早速、壁紙にしてみると少しアイコンが見づらいような気がしないでもありません。また、私はかなり早くからメールマガジンを購読していたつもりなんですが、これより前の壁紙がどこかにあれば欲しいと考えています。どなたかご存じの方は教えて下さい。

ゴールデンウィーク後半の部が始まった今日は、久し振りにポケモンの日記で軽く流しておきます。

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2009年5月 1日 (金)

マイナスに入った消費者物価と悪化を続ける労働統計

本日、いくつかの重要な経済指標が発表されました。まず、総務省から3月の消費者物価指数と失業率、それから、厚生労働省から有効求人倍率や新規雇用者数などの一般職業紹介統計が、それぞれ発表されました。まず、統計のヘッドラインについて、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

労働統計
雇用情勢が急激に悪化している。総務省が1日発表した3月の完全失業率(季節調整値)は4.8%と前月比0.4ポイント上昇。失業者数は前年より67万人増え、増加幅としては過去最高に並ぶ高水準となった。厚生労働省によると、3月は解雇などによる正社員の離職も2万人を超え、雇用不安は深刻さを増している。一方で総務省が発表した3月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は生鮮食品を除く総合で1年半ぶりのマイナスとなり、デフレ懸念も強まってきた。
失業率は15歳以上の働く意思のある人のうち全く職についていない人の比率。同率が4.8%に乗せたのは04年8月以来。完全失業者数は335万人と前年同月比67万人増え、5カ月連続の増加となった。
単月での悪化幅は0.5ポイント上昇した1967年3月以来の大きさ。業績不振企業が非正規社員だけでなく、正規社員の雇用調整にまで踏み込むようになり、雇用の悪化スピードが加速している。
消費者物価
総務省が1日発表した3月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、変動の激しい生鮮食品を除くベースで100.7となり、前年同月に比べ0.1%低下した。CPIが下落に転じたのは2007年9月以来、1年半ぶり。ガソリンが昨年の高騰の反動で値下がりしたのに加え、食料品の値上がりが一服したのが響いた。物価の反転下落を受けて、先行きのデフレ懸念が強まっている。
CPIは昨夏に2%台の高い伸び率を示した後、上げ幅を急速に縮小。1月以降は横ばいが続いていた。3月はガソリンが26.7%下がったほか、ノート型パソコンが45.8%下落。生鮮食品を除く食料が2.9%上昇となり、前月から値上がり率を0.4ポイント縮めたことも、物価の押し下げ要因となった。
生鮮食品を含んだ総合指数も0.3%低下し、2月の0.1%低下から下げ幅を拡大。05年11月のマイナス0.8%以来、3年4カ月ぶりの下落率となった。

まず、いつもの通り、労働統計のグラフは以下の通りです。一番上のパネルの赤い折れ線が失業率で単位はパーセント、真ん中の青い折れ線が有効求人倍率で単位は倍、一番下のオレンジが新規求人数で単位は万人です。いずれも月次の季節調整済み系列で、影を付けた部分は景気後退期です。

労働統計

上のグラフの労働統計について景気局面との関係では、一般に、失業率は遅行系列、有効求人倍率は一致系列、新規求人数は先行系列と考えられています。最近の経済指標では、先週の4月22日に取り上げた貿易統計や昨日の鉱工業生産指数など、一部に景気底入れに向かう動きを示していると解釈できるものが現れ始めているんですが、労働指標はサッパリです。遅行系列の失業率はさて置いて、一致性の高い有効求人倍率は景気後退局面入りに先立って悪化し始めて、いまだに反転の兆しすらありません。先行性が高いと考えられている新規求人倍率も同じです。特に、3月は雇用者数が前月差で▲46万人減少しましたが、生産の動きと照らし合わせると、まだ雇用調整が進んでいないと見る向きもあり、昨夜のエントリーで書いたように、生産がリバウンドしても雇用の悪化が続く可能性があり、ということは、消費が景気の回復の足を引っ張る可能性があるということです。もうひとつ、消費の下押し圧力になりそうなのがデフレです。

消費者物価

1年半振りに全国ベースのコアCPIがマイナスを記録しました。ひとつの要因は、上のグラフの黄色の棒グラフで示したエネルギーの寄与度がマイナスになったことなんですが、ただし、緑色の棒グラフの食料のプラスの寄与度は、ほぼエネルギーに匹敵するものがあり、エネルギーと食料を除くその他の水色の棒グラフが今年になってマイナスに入っているのを注目すべきです。要するに、直感的ながら、エネルギーだけでは決してなく、GDPギャップがマイナス幅を拡大し、これが物価を押し下げている構図が浮かび上がります。さらに、思い起こせば、昨年の8月くらいが原油価格のピークでしたから、我が国の消費者物価はアッという間に大きく下落する可能性が高いと私は考えています。従来から、私は今年の年央には消費者物価がマイナスを付けるという意味でのデフレに入ると考えていて、少し前に今年前半に消費者物価がマイナスを付けると微修正し、実際には全国ベースで3月からマイナスになったわけですが、少なくとも、私が想定するペースよりもかなり早くにデフレになってしまっています。バックグラウンドを考えると、私が考えていたよりもGDPギャップのマイナスが大きくなっていると言い換えることも出来ます。しかも、4-5月くらいまでは関西弁で言う「ボチボチ」の範囲だと思うんですが、昨年に原油価格がピークを付けた8月に向かって、まさに昨年の裏返しが生じるわけで、GDPギャップではなく物価だけに起因する要因で消費者物価のマイナス幅は急速に拡大する可能性があると私は考えています。夏場には全国のコアCPIの下落率が▲1%を超えても不思議ではありません。大きなマイナスを記録する期間は長くないと思いますが、厄介なのは消費者の期待形成への影響です。2001-02年のデフレの再来のようなもので、消費者マインドに物価下落期待が織り込まれてしまうと、「安くなってから買う」という消費の先延ばしが生じ、消費が停滞します。このため、ゆっくりながらも景気転換点に向かう動きを阻害し、景気回復が大きく遅れることにもつながりかねません。

景気回復局面で生産やそのバックグラウンドの輸出が先行するのは日本の場合は当然ですが、さらにその動きをサポートする家計の所得や消費にはまだまだ明るさは見られません。景気転換点までの道のりは長いかもしれません。

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