今週後半の海外経済に関する情報の取りまとめ
週末ながら、海外経済に関して、すでに旧聞に属する情報となってしまいましたが、ここ2-3日の動きを簡単に取りまとめておきたいと思います。まず、一昨日5月7日、欧州中央銀行 (ECB) が利下げに踏み切り、政策金利であるレポレートを25ベーシス引き下げ、1%にしました。5月13日からの実施です。プレスリリースは実に簡潔に以下の3点です。
- The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem will be decreased by 25 basis points to 1.00%, starting from the operation to be settled on 13 May 2009.
- The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by 50 basis points to 1.75%, with effect from 13 May 2009.
- The interest rate on the deposit facility will remain unchanged at 0.25%.
今日は週末の土曜日ですので、やや手を抜いて、日経新聞のほか、ドイツの Handelsblatt とフランスの Les Echos とスペインの El País、さらに、ユーロ圏外ながら、英国の Financial Times の記事のサマリーを引用してお茶を濁しておきます。どうでもいいことですが、さすがに一挙5か国語でメディアの記事を引用したのは、このブログでは初めてかもしれません。一応、Windows 7 RC 版 (ビルド7100) で公開された5言語、日英独仏西に対応していたりします。
日経新聞: 欧州中銀、0.25%利下げ 「量的緩和」で足並み
欧州中央銀行(ECB)は7日の定例理事会で追加的な金融緩和策を決めた。ユーロ圏16カ国に適用する政策金利を0.25%下げて13日から年1.0%とするほか、金融機関への資金の貸付期間を1年に延長。民間金融機関が発行する債券の一部も購入する。いずれも銀行の資金調達を支えるのが狙い。主要国の中銀が利下げ以外の政策手段で通貨供給量を拡大する「量的緩和」で足並みをそろえる。
最重要の市場調節金利は1999年の通貨統合後の過去最低を更新する。記者会見したトリシェ総裁は「長期のインフレ率も安定している」と利下げの理由を説明した。
Handelsblatt: EZB senkt Leitsinz auf Rekordtief
Mit einer erneuten Zinssenkung hat die Europäische Zentralbank auf die tiefe Wirtschafts- und Finanzkrise in Europa reagiert. Dass sich der Leitzins um 0,25 Punkte auf 1,0 Prozent verringerte, damit war gerechnet worden. Doch nun wird mit Spannung die geldpolitische Grundsatzentscheidung von EZB-Präsident Jean-Claude Trichet erwartet, die er im vergangenen Monat angekündigt hatte.
Les Echos: La BCE ramène son taux directeur à 1%
Si le principal taux directeur de la Banque centrale européenne a été baissé de 25 points de base, à un niveau historiquement bas, le taux de facilité de dépôt a été maintenu à 0,25% pour ne pas pénaliser les banques.
El País: El BCE baja los tipos al 1% e inyecta más dinero para superar la crisis
El Banco Central Europeo (BCE) ha cumplido con los pronósticos y ha anunciado hoy medidas excepcionales para hacer frente a la peor recesión económica desde la Segunda Guerra Mundial. Así, según ha anunciado su presidente, Jean-Claude Trichet, el instituto emisor "ha decidido en principio" llevar a cabo compras de bonos denominados en euros emitidos en la eurozona. Una medida que ya adoptó EE UU y que equivale a poner en marcha la máquina de imprimir billetes con el objetivo de inyectar dinero en el sistema. Sumada a la rebaja de tipos al 1%, también según lo esperado, y la ampliación del plazo de crédito, prevé ayudar a la recuperación.
Financial Times: ECB cuts interest rates to 1%
The European Central Bank on Thursday cut its main interest rate by a further quarter percentage point to 1 per cent as it prepared to unveil a package of additional measures to fight continental Europe's recession.
引用した記事にもある通り、ECB は金利引下げに加えて、公開市場操作を通じた金融機関への資金供給について、ユーロ建ての covered bond を購入するなど、日米英の中央銀行と足並みをそろえて量的緩和に踏み出すことも決定しています。covered bond とは金融機関が発行する社債の一種で、買入れ規模は600億ユーロとの報道を見かけました。さらに、同日、イングランド銀行 (BOE) も金融政策委員会 (MPC) を開催し、政策金利は0.5%で据え置いたものの、3月に導入した量的緩和の期間と規模の両方を拡大しました。期間は6月までの3か月からさらに3か月延長し、買入れ金額は750億ポンドから1250億ポンドに増額されています。BOE のニュースリリースへのリンクは以下の通りです。長いタイトルが決定事項のサマリーになっています。
ついでながら、先に引用した El País のサイトから米国と欧州の政策金利の推移を示したフラッシュを引用すると以下の通りです。クリックするとグラフが現れます。赤のラインが米国、青が欧州です。ただし、グラフは少し不正確なような気がしないでもありません。少なくとも、一昨日の ECB の金利引下げは1.25%から1%に引き下げたハズですが、グラフではそうなっていません。ほかにも間違いがある可能性があります。いかにも大雑把なスペインらしいということで、ご容赦ください。スペインの新聞ということで、単にものめずらしげに引用した私も極めてアバウトなのかもしれません。4月28日付けのエントリーで The Economist から引用したグラフと合わせて見ると分かりやすいかもしれません。なお、クリックすると一番下にスクロールバーが現れ、横スクロールします。少し縮小をかけてありますので見にくいかもしれませんが、これもご容赦ください。いつもの通り、ファイルに直リンしています。
次に、米国の金融監督当局が実施していた資産査定 stress tests の結果が連邦準備制度理事会 (FED) から公表されています。結果の概要は Overview of the Results と題して pdf ファイルでもアップされています。米国の19の大銀行を対象とした stress tests で5990憶ドルの損失と746億ドルの資本増強が必要との結果が明らかにされました。Wall Street Journal のサイトから最初のパラだけを引用すると以下の通りです。
The federal government projected that 19 of the nation's biggest banks could suffer losses of up to $599 billion through the end of next year if the economy performs worse than expected and ordered 10 of them to raise a combined $74.6 billion in capital to cushion themselves.
この資産査定 stress tests の結果に関して、New York Times のトップページとNew York Times の別のページから直リンしているフラッシュは以下の通りです。前者は私が見た時点ではトップページにあることを確認していますが、現在はどこにあるのか見失ってしまいました。出典を明示できなければ無断引用になったりするんでしょうか。やや心配ではあります。それはともかく、下の方は銀行ごとの査定結果なんですが、巨大なフラッシュを半分以下に縮小表示していますので見づらくなっています。縮小をかけていますので部分的な表示になっていたら、右クリックして「すべて表示」を選択すれば、小さいながら全体表示になります。より詳細にご覧になりたい向きは上のリンクからどうぞ。
なお、先に記事を引用した Wall Street Journal のサイトにも、いくつかフラッシュが置いてあります。URLの解析が出来なかったので、記事サイトへのリンクだけを示しておきます。
最後に、昨日、米国労働省が4月の米国雇用統計を発表しています。ヘッドラインの非農業部門部門雇用者数は▲53.9万人減と相変わらず大幅な減り方ながら少し減少幅がペースダウンした一方で、失業率は8.9%とさらに跳ね上がりました。まず、New York Times のサイトから記事の最初の3パラだけを引用すると以下の通りです。なかなかシニカルな見方だと思います。
The United States economy lost 539,000 jobs in April, the government reported on Friday, a sign that the relentless pace of job losses was starting to level off slightly but was still nowhere near ending.
A year ago, the loss of more than half a million jobs in a single month would have seemed like a disaster for the economy. On Friday, experts were calling it an improvement.
The Bureau of Labor Statistics reported that the unemployment rate surged to 8.9 percent in April, its highest point in a generation. But some economists saw glimpses of a bottom in the latest grim accounting of job losses. The economy, while still bleeding hundreds of thousands of jobs, is starting to lose them at a slower pace, offering the latest hint that the recession is bottoming out.
それから、いつもの米国雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルの赤い折れ線グラフが非農業部門雇用者数の前月差で左軸の単位は、下のパネルの青が失業率で単位はパーセントです。いずれも季節調整済みの統計です。
これまた、いつもの New York Times と Los Angels Times から直リンしているフラッシュは以下の通りです。
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