貿易統計に見る輸出の底打ち
本日、財務省から4月の貿易統計が発表されました。貿易収支は事前の市場コンセンサスが▲550億円の赤字であったところ、+690億円の黒字を記録しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。
財務省が27日発表した4月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月に比べて39.1%減の4兆1969億円となった。マイナスは7カ月連続。自動車や鉄鋼の輸出減が響いた。ただ、減少率は2カ月連続で縮小しており、金融危機を契機とする昨秋以降の輸出の急激な落ち込みはやわらぎつつある。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は690億円と、小幅ながら黒字を確保した。
次に、これまた、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の原数値で季節調整はしてありません。上のパネルは輸出入の折れ線グラフとその差額たる貿易収支の棒グラフです。左軸の単位はいずれも兆円です。下のパネルは輸出金額を貿易指数により価格と数量に寄与度分解したものです。単位は前年同月比のパーセントです。上下のパネルとも下げ止まり感を見て取ることが出来ます。
何人かの同業者エコノミストから送ってもらったニューズレターによると、季節調整済みの系列で見て、輸出は各地域向けも品目別も、前月比で軒並み増加に転じているようです。季節調整していない上のグラフなどを見ても、前年同月比ではまだ大きなマイナスを続けているものの、輸出は明らかに下げ止まったと受け止めるべきです。上のグラフからは輸出の底は今年の1-3月期であったと考えられます。
この貿易統計から私が読み取ったのは以下の3点です。第1に、昨年10-12月期以来の輸出の急減は主として輸出先国での在庫調整に起因するものであった可能性が高いことです。これは統計がないので確たることは言えません。ですから、こんなことを言っているエコノミストは他にいないように思います。そして、繰返しになりますが、第2に、その在庫調整はこれまた急激な国内の生産調整によりほぼ終了し、今年1-3月期に輸出は底を打ったと見られます。これは統計から明らかです。多くのエコノミストが同意するところだと思います。特にグラフは示しませんが、米国のISM指数との関係で見ても明らかです。第3に、この貿易統計から見て、4月の生産は前月比で+3%程度の増産を示す可能性が高いことです。4-6月期の四半期では+5-6%の増産となるペースと考えられます。従って、4-6月期のGDP成長率は前期比で見て0.5%、あるいはこれを超える水準に達する可能性があります。経済企画協会が5月18日に発表したESPフォーキャストでは4-6月期の平均は年率で1.14%ですから、これをはるかに上回る可能性があります。というものの、実は、私は少し前まで今年4-6月期のGDP成長率は年率1%程度、四半期ベースの前期比で0.2-0.3%くらいと見ていて、5月8日付けのエントリーで三菱UFJ証券が発表したリポートを取り上げた際、新型インフルエンザの経済的影響により4-6月期の実質GDPが▲0.4%程度押し下げられると試算されていましたから、これでは4-6月期の実力GDP成長率のプラスが吹っ飛ぶ可能性があると心配していたんですが、その可能性はかなり低下したように受け止めています。さらに付け加えれば、新型インフルエンザのリスクはここ1-2週間で急速に低下したようにも感じています。
最後に、今日の輸出の数字から、この先の7-9月期は上振れリスクが高まったように私は感じ始めています。もっとも、さらにその先の10-12月期以降の年度後半は、W字型の景気パスを想定してはいるんですが、もう少し指標を見極めたい気がします。
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