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2009年7月31日 (金)

回復の兆しを見せる雇用とさらに深い底に達しつつある消費者物価

本日、総務省統計局から6月の消費者物価失業率が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が発表されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

労働統計
雇用情勢の厳しさが増している。総務省が31日発表した6月の完全失業率(季節調整値)は5.4%と前月から0.2ポイント上昇し、直近で2003年4月に記録した過去最悪の5.5%に迫った。厚生労働省が同日発表した6月の有効求人倍率(同)は0.43倍と2カ月連続で過去最低を更新した。雇用・所得への懸念を背景とした消費低迷なども影響し、6月の消費者物価は前年同月比で過去最大の低下幅を記録。企業の雇用調整はさらに進む可能性があり、日本経済の先行き不透明感を強めている。
失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。完全失業率の上昇は5カ月連続で、5.4%となるのは03年6月以来6年ぶり。男女別にみると、男性は5.7%、女性は5%だった。
消費者物価
総務省が31日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動が大きい生鮮食品を除いたベースで100.3となり、前年同月比で4カ月連続で低下した。低下幅は1.7%で、比較可能な1971年以来で過去最大だった前月(1.1%)を上回った。昨年春から夏にかけガソリン価格が急騰していた反動が大きいが、家電などの価格下落も影響している。
6月のCPIは前月比でも0.2%低下しており、物価の下落傾向は顕著。ガソリンなどエネルギー価格などの影響を除いたベースで前年同月比0.7%低下と、一般的な製品やサービスの価格下落による影響度も高まりつつあり、日本経済がデフレに陥る懸念も強まっている。
生鮮食品を含む総合指数全体は、前年同月比1.8%低下。ガソリン価格は29.5%下落し、指数全体を0.9ポイント押し下げた。灯油も40.7%低下し、0.37ポイントの下押し要因となった。ガソリンと灯油だけで指数の落ち込みの7割を占める。

続いて、まず、労働統計に関して、いつものグラフは以下の通りです。一番上のパネルは季節調整済みの月次の完全失業率、真ん中のパネルは同じく有効求人倍率、一番下のパネルは新規求人数です。失業率が遅行系列、有効求人倍率が一致系列、新規求人倍率が先行系列と見なしているエコノミストが多いように感じます。

労働統計の推移

ということで、雇用の回復が遅れているのは確かなんですが、6月短月ながら先行系列の新規求人数が反転したように見えなくもありません。もちろん、短月では増加を示す場合もあり、昨年2008年も4月と12月に増加しましたが、上のグラフを見ても分かるように、傾向的には反転に兆しは見られません。今回も短月の不規則変動なのか、それとも、そろそろ雇用が回復に向かう兆しなのか、現時点では判然としませんが、何といっても先行指標ですから、やや期待を持たせる動きであることは確かです。でも、6月は派遣や期間契約社員の一応の期間切れとなる可能性のある月ですので、次の7月の労働統計は注目です。

続いて、消費者物価のいつものグラフは以下の通りです。折れ線は青が生鮮食品を除くいわゆるコア消費者物価、赤がエネルギーと食糧を除く欧米流のいわゆるコアコア消費者物価、グレーが東京都区部のコア消費者物価で、積上げ棒グラフは黄色がエネルギーの寄与度、緑色が食料の寄与度、水色がその他の寄与度となっています。

消費者物価の推移

コアCPIの前年同月比がとうとう▲1.7%の下落となり、過去最大の下げ幅を記録しました。しかし、グラフを見ても分かる通り、コアコアCPIはそこまで下がっておらず、基調としてデフレであることは間違いありませんが、▲1.7%の史上最大の下落は相対価格の変化の結果であるといえます。先に引用した記事にもある通り、「ガソリンと灯油だけで指数の落ち込みの7割を占める」といいうことですから、一般物価水準がそこまで下落しているわけではありません。昨年年央と逆のことが生じているだけです。でももっと言うと、昨年年央と今は基調がデフレであることも共通しています。これも忘れるべきではないポイントです。ですから、この7-8月には前年同月比で▲2.5%くらいに達する可能性があると私は考えています。

そろそろ今年年央から後半にかけて、要素需要の強さと最終需要の盛り上がりを見せ始めるべき時期に差しかかっているような気がします。商品市況に強く影響される物価は年内でプラスに反転する可能性もありますが、雇用が年末から来年年始にかけて改善しなければ、本格的なデフレ・スパイラルに陥る可能性が出始めます。12月いっぱいで雇用期間の切れる非正規労働者も少なくない可能性があり、今年の年末から来年年始は日本経済の崖っぷちかもしれません。

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2009年7月30日 (木)

鉱工業生産の増産はいつまで続くか?

本日、経済産業省から6月の鉱工業生産指数が発表されました。いずれも季節調整済みで、月次指数では前月比+2.4%と今年2月を底に4か月連続の増産となり、4-6月の四半期でも前期比+8.3%と5期振りの上昇となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

経済産業省が30日発表した4-6月期の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は78.3となり、前の期に比べて8.3%上昇した。上昇は5四半期ぶり。在庫調整が進み、一部新興国の経済が回復し始めたことなどから、電子部品や鉄鋼製品などの生産が持ち直している。ただ消費や雇用は依然として厳しい状況にあり、経産省は「注意してみていく必要がある」としている。
鉱工業生産の大きな流れを示す四半期ごとの指数は、昨秋の世界的な金融・経済危機を背景に低下し、09年1-3月期には下げ幅がマイナス22.1%まで広がった。その後には主要国を中心とした需要喚起策などが徐々に浸透し、在庫調整も一巡したことから、生産が上向き始めている。
経産省が同日発表した6月の鉱工業生産指数は81.0で、前月比2.4%上昇した。上昇は4カ月連続。業種別にみると、電子部品・デバイス工業が12.5%上昇した。国内向けのゲーム機やAV機器に用いる半導体集積回路の生産がけん引役となっている。

続いて、いつものグラフは以下の通りです。一番上のパネルは季節調整済みの月次の鉱工業生産指数、真ん中のパネルは同じく水色の出荷指数と緑色の在庫指数、一番下のパネルは季節調整済みの四半期系列で出荷指数と在庫指数の前年同期比をプロットしたもので、1999年1-3月期に緑色の上向き矢印から始まって、2009年4-6月期には同じく緑色の下向き矢印に達しました。45度線である赤の破線にはまだ達しません。

鉱工業生産指数の推移

輸出とともに鉱工業生産が増加を示すのは当然なので、私が注目していたのは、第1に、先行きでした。製造工業予測指数は7月が前月比+1.6%増と先月の時点での予測である+0.9%増から上方改訂され、新たに出た8月も+3.3%増と6か月連続の増産を見込んでいます。GDP統計が4-6月期にはプラスに転じるとの予想はエコノミストの間で当然視されているんですが、7-9月期も潜在成長率水準を超えるプラスを記録する可能性が出て来たと私は受け止めています。少なくとも、4-6月期は鉱工業セクターの寄与だけでGDPh2%成長します。第2に注目すべきは、増産が幅広い業種に拡大して来たことです。そして、第1と第2の点を合わせて、要素需要のうち、雇用に先駆けて設備投資が回復する可能性があることです。ただし、現時点では逆の見方もあり得て、雇用の回復の遅れが設備投資の足を引っ張る可能性も排除できません。増産が設備投資をもたらし、雇用の回復に結実するのか、それとも、雇用の回復の遅れが最終需要の低迷につながって設備投資の伸びを抑制するのか、見方は分かれると思います。もちろん、中間の道もあって、輸出依存で生産と設備投資が回復し雇用が取り残される可能性もあり得ます。でもやっぱり、現在のような鉱工業生産の力強い増産がいつまで続くかは雇用にかかっているいるような気もします。

日本ではかなり確度高く1-3月期が景気の谷であったと考えているエコノミストが多いんでしょうが、米国でも発表されたベージュブックを見る限り、持直しの動きに向かっています。欧州のいくつかの国でははっきりと景気は回復局面に入っていますし、新興国はなおさらです。来年の今ごろには景気実感も大いに上向いていることを期待しています。

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2009年7月29日 (水)

ランダムウォークに関するペーパーを書き終える

先日、ランダムウォークに関するペーパー "An Essay on Random Walk Process: Features and Testing" を書き上げて、紀要の編集会議向けに提出しておきました。もっとも、12月発行号の研究ノートの予定ですから、もう少し時間的な余裕があり、英語の表現は書き直すつもりです。一応、大学のホームページにアップしてあります。何について書いたのかといえば、タイトル通り、ランダムウォークについて、その特徴と検定について書きました。久し振りの英語のペーパーですから、やや時間がかかった気がします。印刷に出すまでの間に、もう少し英語の表現は見直すつもりです。最近、大学教授になってからの数本のペーパーは全部日本語で書いていたので、英語のペーパーは久し振りです。しかも、テーマがテーマですから英語でかつ数式がギッシリ詰まったペーパーです。多くの人は読む気がしないと思います。書いていて自分でも驚いたんですが、ベルヌーイ数についても取り上げました。しかも、n=50 の時のベルヌーイ数ですから巨大なもんでした。なお、Wikipedia には n=20 までのベルヌイー数が紹介されています。ペーパーにも書きましたが、私は pari/GP で計算しました。知らない人は知らないと思います。また、かの有名なフォン・ノイマン博士の論文も引用しています。普通のエコノミストは扱わないような気がしないでもありません。

Random Walk

内容は、まず、ものの順序として、確率分布について、NIDiid などを簡単に取りまとめ、次に、マルチンゲールを取り上げます。さらに、ペーパーのコアとなる部分でランダムウォークの数理統計的な特性について述べ、私のペーパーの特徴として、実際の数値例が検定に付されています。上のグラフがその数値例で、ボックス・ミューラー法により発生させた正規乱数を基にしています。通常、ランダムウォークの誤差項は εt∼iid(μ, σ2) なんですが、正規乱数ですから εt∼NID(μ, σ2) になっています。上のグラフの青い折れ線はドリフトなし、下の赤線はドリフトあり (μ=0.1) です。誤差項は共通です。発生させた標準誤差は500系列なんですが、全部を対象にするとタイヘンですので、この誤差項の最初の50系列に限定して連検定、ランク検定、平均平方逐次階差 (MSSD) の3方法による無規則性と独立性の検定をしています。ペーパーの中身は大したことはなく、いくつかのテキストから標準的な説明を取り出して、私なりに取りまとめたものです。繰返しになりますが、ミソは実際の数値例に検定を加えていることです。英語で書いたのは、後々引用するときに便利だからなんですが、久し振りの英語でしたし、内容的に通常の英文チェックに向かないので、紀要掲載論文という気安さもあって、自分で適当に校正しようと考えています。

1か月に3本のペーパーを書き上げたのはさすがに初めてです。粗製乱造のそしりを免れないんですが、ここまで研究を進めたんですから、期末試験の後は本格的な夏休み体制に入ります。

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2009年7月28日 (火)

電子マネーの普及が1億枚を超え長崎スマートカードを購入する

昨夜のエントリー以上に旧聞に属する話題かもしれませんが、今月7月10日に日銀が 「最近の電子マネーの動向について(2008年度)」 と題するリポートを発表しています。昨年2008年8月26日付けでこのブログに取り上げた話題のアップデート版だと受け止めています。

【図表1】電子マネー発行枚数等

今年のひとつの話題は、2009年3月末の時点で電子マネーの発行枚数が1億枚を超えたことで、リポートの pp.1 【図表1】から引用した上の表の通りです。今年2009年3月末時点の電子マネーは1億503万枚、前年同月比で+30.3%増となりました。なお、調査対象としている電子マネーと発行元は以下の通りです。

電子マネー系列発行元
Edy独立系ビットワレット
ソニー、NTT docomo、さくら銀行(現・三井住友銀行)、トヨタ自動車、デンソー、DDI(現・KDDI)、三和銀行、東京三菱銀行(ともに現・三菱東京UFJ銀行)など11社の出資により設立。現在は、日立、伊藤忠、NEC、富士通なども参加。
Suica交通系JR東日本
ICOCA交通系JR西日本
PASMO交通系パスモ
関東地区の大手鉄道事業者9社の出資により設立。
nanaco流通系セブン&アイ・ホールディングス系列のアイワイ・カード・サービス
WAON流通系イオン
SUGOCA交通系JR九州
Kitaca交通系JR北海道

どうでもいいことながら、理由はよく分かりませんが、JRグループ発行の電子マネーのうち、SuicaICOCA はもちろん、SUGOCAKitaca も今年から調査対象に含まれるようになった一方で、歴史も発行枚数も SUGOCAKitaca をしのぐJR東海の TOICA は調査対象に入っていません。もっとも、TOICA の発行枚数は50万枚を超えたあたりですから、1億枚に比べると微々たるものであることは確かですが、日銀の関係者がこのブログをご覧になっていただいているのであれば、来年から調査対象になるかもしれません。なお、付け加えると、長崎スマートカードも調査対象になっていないんですが、コチラが日銀の調査対象になるのは少し時間がかかるような気がします。
電子マネーの発行枚数1億枚といっても、デビットカードが4億枚を超え、クレジットカードも3億枚に迫っていますから、まだまだ増える余地はありそうに思います。特に、長崎に暮らして周囲を見回すと、地域限定の長崎スマートカードはかなり普及しているものの、全国版の電子マネーは普及が進んでいない気がしないでもありません。地方圏は規模の経済が働きにくいので仕方がない面もあります。私は上の表の EdySuicaPASMOnanaco の4枚と長崎スマートカードを持っています。長崎でもコンビニや空港をはじめとして、Edy が使えるお店は少なくないんですが、使っている人はほとんど見かけません。私くらいなのかもしれません。電子マネーの典型的な使い方としては、ビックカメラで買い物をしたポイントを Suica にチャージして丸善で本を買う、なんてのが東京の場合は可能ですが、長崎スマートカードは電車賃やバス代専用です。このあたりが規模の経済の違いといえます。でも、その分、長崎スマートカードは回数券並みの割引があったりします。実は、長崎の電車の回数券が昨年末で販売中止になりスマートカードに一元化されたので、今月から私もスマートカードを使い始めています。なお、私が持っている電子マネーはすべてプリペイドの記名式なんですが、長崎スマートカードだけは無記名です。従って、子供用もないんだろうと想像しています。少子高齢化の進んだ長崎らしいのかもしれません。

電子マネーの普及はしばらく続きそうですし、ますます便利になることと思います。ですから、上手に付き合いたいと考えています。

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2009年7月27日 (月)

ヤケに強気なアジア開銀の Asia Economic Monitor

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週の7月23日にアジア開銀が Asia Economic Monitor (AEM), July 2009 を発表しています。もちろん、リポート全文の pdf ファイルもアップされています。私が注目している経済の現状分析と見通しに関する基本的な部分は、このブログの今年3月31日付けのエントリーで取り上げた『アジア開発見通し』 Asian Development Outlook (ADO) 2009 の中間見直し版といった位置づけなんでしょうが、大きく下方修正した前回と違って、かなり強気の見通しとなっています。まず、リポートの Highlights から経済の現状と見通しについて私が重要と考えるポイントを5点ほどピックアップすると以下の通りです。

  • Economic growth in emerging East Asia dropped sharply in the first quarter of 2009, but early indicators suggest the pace of decline slowed during the second quarter.
  • The slowdown in growth, coupled with lower oil and food prices, helped inflation to decline across the region.
  • Emerging East Asia has entered the transition from recession to recovery, with GDP growth sourced more from domestic stimulus than a resurgence in external demand.
  • Emerging East Asia could see a V-shaped recovery, with growth dipping sharply in 2009 before regaining last year's pace in 2010.
  • Major risks to the outlook include (i) a more prolonged recession and weaker recovery than expected in developed countries; (ii) unintended consequences of economic stimulus or premature policy tightening; (iii) falling inflation becoming deflation; and (iv) non-economic events with low probabilities, but potentially large impacts.

ほぼ上の Highlights で尽きるんですが、最近の景気動向ということで、東アジア主要国について、GDP統計よりも速報性の高い生産統計のグラフを引用すると以下の通りです。前年同月比ですが、日本の鉱工業生産指数と同じような動きを示しており、今年1-3月期が谷であったと推定される国や地域が見受けられます。リポート pp.3 の Figure 2 を引用しています。

Figure 2: Industrial Production Growth - ASEAN-4 and Viet Nam

また、アジア諸国の景気後退のひとつの大きな要因として、先進各国の景気後退による外需の不振が上げられ、GDP成長率の落ち込みと輸出比率の関係をリポート pp.5 の Figure 6 で示しています。かなり不明瞭な関係ながら、2009年1-3月期の成長率の落ち込みは輸出比率の大きさと何らかの相関があることを示そうとしているようです。

Figure 6: Exports Share and GDP Growth - Emerging East Asia

繰返しになりますが、上の Highlights で議論は尽きていて、東アジアは外需の落ち込みから景気後退に突入したものの、ほぼ今年1-3月期を谷としてすでに景気回復局面に入っており、新興国らしくというか、その回復過程は V 字型が想定されています。先行きのリスクとしては、第1に、先進国の景気後退が長引くこと、第2に、不適切な政策対応、特に、早過ぎる引締め、そして、第3に、商品市況の下落に伴う物価上昇率の低下がデフレを招くこと、最後に、わけの分からない経済外要因で締めくくられています。

日本経済を主として見ている私なんかからすれば、ヤケに強気な経済見通しだという気もしないでもありませんが、昨年春の Asian Development Outlook (ADO) 2008 を取り上げた2008年4月2日付けのエントリーに書いたように、かつての昭和30年代の日本と同じで、極めて大袈裟に言えば、今は中年を過ぎてしまった日本や老齢期に入りつつある欧州なんかと違って、アジアはまだまだ少年期にあり、政府や中央銀行の政策動向、あるいは、多少の外的条件をものともせずに成長を続けるのかもしれません。

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2009年7月26日 (日)

子供の携帯電話と電子辞書を考える

何かのテレビでやっていたんですが、子供の携帯電話について考えさせられる番組がありました。それから、青山の我が家で購読している朝日新聞の記事で、電子辞書と紙の辞書に関する特集も見かけました。子供向けの電子機器ということでくくって、少し考えてみたいと思います。
まず、子供の携帯電話なんですが、我が家では持たせていません。青山のような高級住宅街に住みながら、一家の大黒柱の私が公務員や大学教授といった薄給の職業ですから、かなり我が家は貧しい消費生活を送っており、さらに、昨年からの単身赴任生活でこれに拍車がかかり、子供に携帯電話を買い与える余裕がないのが大きな原因です。そもそも、親が携帯電話を持っていません。我が家もおにいちゃんは中学生ですから、クラスメートの中に携帯電話を持っている子もいるような気がしますが、一家の経済的な窮状を察してか、特に欲しがりもしません。それに、さすがに固定電話は家にありますし、我が家の契約しているプロバイダは4つまで無料なので、子供達にもPCメールのアドレスは与えており、ゲーム会社のメルマガを購読していたりして、大きな不便はないのかもしれません。しかし、私も大学の教員になって、1度だけ学生に緊急連絡を取る必要があり学生の連絡先を確認すると、私のゼミの学生はみんな携帯電話を持っていたのを記憶しています。特に、就職活動に入ると携帯電話は必要不可欠とも聞きますし、我が家の子供達もそのくらいまで成長すると携帯電話を持つようになる気がします。6月1日付けのエントリーで書いたように、選挙権や酒・タバコなど法律で明示的な年齢制限があるものを除いて、大学生は大人であると私は認識しています。携帯電話を持つかどうかはこの範疇に入ると思います。
電子辞書については、それほどコトが単純ではないように私は受け止めています。朝日新聞の投書を読むと、ある高校では電子辞書であることを前提に、カシオの操作方法やシャープの電子辞書の引き方などを授業で堂々とやっているらしいんですが、さすがに、ここまでやると疑問を感じざるを得ません。でも、子供が電子辞書を欲しがるということは勉強に意欲がある証拠、という意見にも説得力があります。もちろん、カバンに入れて学校と家の間を運ぶということになれば、まだ体の小さい中高生にはサイズも重量も手軽な電子辞書が魅力的です。基本的に、手早く数をこなそうとすれば電子辞書が便利ですが、目指す単語だけでなく周辺の単語も含めた幅広い知識が得られるという点では紙の辞書にも利点が多くあります。要は使い分けなのかもしれないと考え始めています。実は、私自身は「英辞郎」に頼っていて、それに、私は英語とスペイン語のマルチリンガルですから、英語だけでなくスペイン語も収録している電子辞書はコンパクトで便利です。もっとも、日本でスペイン語を収録している電子辞書はたったひと種類だけです。最近もチリ財務省発表のスペイン語資料を電子辞書でひも解いたりしていました。でも、我が家のおにいちゃんが中学に上がった時には、学校から紙の辞書にすることを指定されました。もちろん、これはこれでひとつの見識です。

結論として、私自身は子供の携帯電話についてはやや否定的な気もしないでもありませんが、電子辞書についてはケースバイケースで、目的などに従って使い分けつつ、どちらも上手に利用することが出来るんではないかと考えています。

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2009年7月25日 (土)

大学の講義で取り上げた計算問題

期末試験に向けて、以下の計算問題を大学のホームページにアップしてあります。一応、授業で取り上げて、板書して解答を示したものばかりなんですが、今週のオフィスアワーには何人か学生諸君が来たので解説をしておきました。今日は、授業シリーズの番外編で取り上げてみます。

  1. 所得がそれぞれ次のような3 世帯からなる集団のジニ係数を求めよ。
       A: 0   B: 500万円   C: 1000万円
  2. 毎年のリターンが120万円、金利が5%、リスクプレミアムが3%、毎年の値上り期待率が2%である資産の現在価値はいくらか。
  3. 以下のフィリップス曲線と社会的厚生関数があたえられている時、失業率 x と物価上昇率 y の最も望ましい組み合わせはいくらか。
       フィリップス曲線: y = 1 / x - 1
       社会的厚生関数: U(x, y) = 5 - ( x + y )
  4. 限界消費性向が0.5、限界税率が0.2、限界輸入性向が0.2 の場合、ケインズ的な財政乗数はいくらになるか。
  5. 金融危機に際して銀行の救済範囲(全銀行数における救済範囲の割合をパーセント表示したもの) x を決める時、以下のシステミック・リスク及びモラル・ハザードに対する社会的コスト関数 y が与えられているならば、何パーセントの銀行を救済するべきか。
       システミック・リスク: y = 1 / x
       モラル・ハザード: y = 1 / ( 100 - x )
  6. ある財の価格 P と生産量 Q の間の需要関数と供給関数が次のように与えられている時、財1単位当たり従量的に4の補助金が支給されるとすれば、社会的に失われる余剰の死荷重はいくらになるか。
       供給関数: P = Q + 2
       需要関数: P = 30 - Q
  7. ドルと円との為替の需要関数が次の場合、通貨当局が10\/$の円安を目指すとすれば、為替介入額はいくらになるか。なお、円レート R の表象は\/$である。
       円需要関数: D\ = R + 250
       ドル需要関数: D$ = 450 - R

週末の頭の体操にご活用ください。

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2009年7月24日 (金)

平成21年度『経済財政白書』に見る労働環境の厳しさ

本日、内閣府から『経済財政白書』が閣議配布されました。まず、主要な全国紙の記事についてリンクだけ張っておくと以下の通りです

各紙とも『経済財政白書』について、この1-3月期に景気後退が終了し景気回復局面に入ったとの前提から、今後のリスク要因を分析した部分に着目しています。私も同じです。『白書』では web 上に発表されている説明資料の第1章に当たります。ここではリスクとして雇用とデフレを上げているんですが、メディアが注目したのは雇用だけみたいです。まず、読売新聞のサイトと同じですが、雇用保蔵が大幅に増加しており、失業「予備軍」が600万人に上るというグラフは以下の通りです。

雇用保蔵の推計

続いて、下のグラフは朝日新聞と同じで、バブル崩壊以降の景気後退局面のエピソードとして、生産の減少とこれに起因する労働投入量の減少です。労働投入量は労働時間と就業者数に分解してあります。

生産と労働投入

今回の景気後退局面では、過去の景気後退局面のエピソードに比べて、生産の落ち込みに対応する労働投入量の減少が小さかったんですが、逆に考えると、雇用がこの先もさらに減少したり、あるいは、生産が拡大するとしても、雇用の回復が大きく遅れる可能性が示唆されていると受け止めるべきでしょう。

最終需要項目別の雇用者所得・就業誘発係数

それでは、GDPコンポーネントのうちで何が増加すると、雇用者所得や就業者数の拡大につながるかということを分析したのが上のグラフです。やっぱり、公共投資の拡大が有効だと言いたいのかもしれません。

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2009年7月23日 (木)

貿易統計に見る輸出のリバウンド

本日、財務省から6月の貿易統計が発表されました。一時は、前年同月比でほぼ半減していた輸出もかなり減少幅を縮小させており、季節調整済み系列では前月比プラスとなっていたりします。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

財務省が23日発表した6月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比35.7%減の4兆6千億円となった。9カ月連続で減少したものの、減少率が5月の40.9%より縮小した。季節調整済みの前月比では1.1%増えた。中国などの景気対策を追い風に、日本の輸出に下げ止まりの兆しが出てきた格好だ。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5080億円の黒字となり、黒字額が前年同月比で1年8カ月ぶりに増加した。
昨年秋以降の金融危機が響き、日本の輸出は昨年10月から前年同月の水準を下回っている。ただ世界的な財政出動の効果もあって、減少率は2月の49.4%をピークに縮小する傾向にある。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルが月次原系列の輸出入とその差額たる貿易収支、下が輸出金額を価格と数量で寄与度分解したものです。

貿易統計の推移

まず、輸出が順調に回復して来ています。ほぼすべての国向けの輸出が回復するとともに、特に、欧米向けの自動車が好調です。エコカーの販売促進策は日本だけの専売特許ではないので、特に欧州方面では日本車の売行きは悪くありません。さらに、昨年末からの急速な在庫調整もほぼ完了したように見受けられます。ただし、貿易収支の逆側の輸入はまだ回復に至っていないように見受けられます。彼我の景気回復の力強さの違いを反映しているわけです。昨年後半からの日米欧の実質輸入をグラフ化すると、実に見事に米国では需要のバッファーとして輸入を活用する経済構造が出来上がっているのに対して、日本はそうなっていません。必要なものは必要に応じて輸入するという構造のままですから、本格的な日本経済の回復がなければ、輸入の増加は今しばらく実現しない可能性も残されています。でも、逆の面から見ると、これは貿易収支の黒字幅拡大をもたらしており、景気の回復や成長の加速には好影響を及ぼします。極めて大雑把な計算でも、4-6月期GDPの外需の寄与度はほぼ1%くらいになるんではないかと私は考えています。

最後に、この輸出動向を見ると、来週発表される6月の鉱工業生産指数はプラスを記録することがほぼ確実ですから、事後的に今年1-3月期が景気の谷だったと判定される確率がさらに高まった気がします。

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2009年7月22日 (水)

長崎では日食は見られず

今日は日食の観察で持切りでした。本学の教員の中にも観察グラスを用意していた人もいました。欠け始めた最初のころは観察できていたらしいんですが、すぐに雲が広がり、私は見逃してしまいました。でも、かなり暗くなったのは確かです。皆既日食はもともと長崎では観察できませんが、かなり欠けたので太陽光線が届きにくいことは明らかです。私は大昔に読んだアシモフの『夜来たる』を思い出してしまいました。日本で次の日食が観察できるのは26年後だそうですから、何とか平均余命に入っていますので、長生きしたいと思います。

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2009年7月21日 (火)

衆議院解散・総選挙から民主主義の成熟度を考える

本日、かねての予定通りに衆議院が解散され、8月末の総選挙となりました。ということで、これに触発されて、やや縁遠い話題ながら、今夜は民主主義の成熟度について途上国も含めて考えたいと思います。
私は日本以外の外国の在住経験は2か国あり、チリとインドネシアです。いずれも途上国で、私が赴任した時点で、それまで人によっては独裁政権と呼びかねない長期の大統領職にあった、チリのピノチェット元大統領、インドネシアのスハルト元大統領が退任し、いわば、民政移管されていましたが、偶然にも、今世紀に入って、両国の両元大統領とも自国で天寿を全うしました。私のブログでも、ピノチェット将軍の死は2006年12月11日付け、スカルノ元大統領の死は2008年1月27日付けのエントリーで取り上げています。他方、チリの隣国であるペルーのフジモリ元大統領に目を転じると、4月に1990年代の軍特殊部隊による民間人虐殺事件で禁固25年の有罪判決が出た後、腹心だった元国家情報部顧問に国庫の金を不正に渡したとして横領などの罪に問われ、昨日、禁固7年6か月の有罪判決が下りました。また、5月には我が日本の隣国である韓国で盧武鉉前大統領が自殺したのも記憶に新しいところです。こういった例も途上国にはいとまがありません。
田中角栄元総理のような特別の例外を別にすれば、日本や米国などの先進国で退任した総理大臣や大統領が罪に問われたり、国外への亡命を余儀なくされたり、ましてや、自殺に追い込まれたりするような事態は想像され難いんですが、民主主義の未成熟な途上国ではしばしば目に付きます。私が記憶しているくらいに有名なところでは、イランのパーレビ元国王、フィリピンのマルコス元大統領、それに、東欧の旧共産主義諸国の独裁者などもこれに含めるべきかも知れません。国王は別としても、大統領や総理大臣などについては、直接間接に国民が何らかの選挙で選出したんではないかと私は考えているんですが、別の大統領や総理大臣が選ばれると前職者は投獄されたり、亡命したりするケースは途上国では決して稀ではありません。
おそらく、途上国の大統領職とは余禄の多いお仕事で、極めて利益率の高い職種なんだろうと勝手に想像していますが、同時に大きな権力もあって、政敵に対する懲罰的・制裁的・報復的な措置を発動することが可能なのかもしれません。でも、何よりも、それを許す民主主義の成熟度が低いんではないかと私は考えています。"winner takes all" というのもひとつの民主主義の形なのかもしれませんが、逆に、"losers lose all" はエゲツないと感じる日本人がいても不思議ではありません。もっとも、私は長らく国家公務員をしていましたから、公務員バッシングの激しい政党が政権交代を果たした折には、標的にされる可能性がありますので、ポジショントークの面もあります。

1993年の内閣不信任案の可決とこれ伴う総選挙の時、私は在チリ大使館で外交官をしていました。総選挙も投票していません。帰国すると自民党と社会党の連立政権が成立していました。ですから、もしも本格的な政権交代があると仮定すれば、国内で接する初めての経験となります。昨年末からの猛烈な景気後退はエコノミストとして初めての体験でしたが、解散から総選挙、内閣総理大臣の指名と組閣へと、メディアの世論調査に示されているように、もしも政権交代があると仮定すれば、これまた、公務員・大学教授として貴重な体験になるかもしれません。

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2009年7月20日 (月)

下の子がカブ隊キャンプから帰る

一昨日に東武線を使って北関東方面にボーイスカウトのカブ隊からキャンプに行った下の子が今日の夕方に帰って来ました。下の写真はいつもの集合場所に帰って来て解散集会の下の子です。少しズームして暗くなってしまったんですが、本人が好みに合わせて選びました。

カブ隊キャンプから帰って解散集会の下の子

キャンプで何が楽しかったかと言うと、キャンプ2日目の昨夜の夕食のバーベキューだったそうです。牛焼き肉、ウィンナー、鶏肉、ヤキソバ、野菜炒めとほぼ食べ放題状態で大量に食べて来たらしいです。料理も今回のキャンプの眼目のひとつと言うことで、スカウト達が焼いたのかと思ったんですが、火を使うのは危険だとかで大人が焼いてくれて、まあ、ウチの子は食べる方が専門ですから関係ありません。でも、食材を買いこんで出かけた初日のカレーはみんなで作ったようです。魚釣りは3匹釣れて大満足だったみたいです。先月、私が下の子を送り届けたのと同じログハウスに泊ったんですが、管理人さんが親切でいろいろと野菜の差入れもあり、食べる方では不自由しなかったとのことです。ウチの子には重要なポイントです。食べ物に関しては、釣ったニジマスを燻製にしたのとキュウリのピクルスをお土産に持ち帰りましたので、今夜の夕食で一家そろっていただきました。最後に、ウチの子はウサギ、シカ、クマと3学年いるカブ隊の中でも最上級生のクマになり、次の上進式でボーイ隊に上進します。ということで、キャンプでも統率の取れない子がいて困ったと言っていて、ある意味で、下級生を批判的な目で見るのも上級生として成長した証しだと私は好意的に受け止めています。

おにいちゃんも下の子も、夏休み前半は学校行事があって山や海やと行きますから、本格的な家族サービスは私が期末テストの採点を終えたお盆明けになるかもしれません。

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2009年7月19日 (日)

東野圭吾『名探偵の掟』と『名探偵の呪縛』 (講談社文庫) を読む

昨日は下の子のスカウト活動の関係でキャンプやバザーやと忙しくしていましたが、今日は打って変わってヒマになりましたので、エンタメのカテゴリーに属する本を読みます。一部にはギャグに通じるものもあります。すなわち、東野圭吾さんの『名探偵の掟』と『名探偵の呪縛』です。いずれも講談社文庫で読みました。表紙の画像は以下の通りです。どこから画像を借用したのかは失念しました。悪しからず。

東野圭吾『名探偵の掟』と『名探偵の呪縛』 (講談社文庫)

知っている人も多いと思いますが、『名探偵の掟』の方はテレビでドラマ化されて、今年の4月から先月6月までテレ朝系列で金曜日の深夜の時間帯に放映されていました。私はホンの10分ほど見ただけなんですが、名探偵の天下一がチェックのヨレヨレスーツを着ていない上に、これも映画化された東野圭吾さん原作の『容疑者 X の献身』と同じで、なぜか、女性刑事役が付け加えられているので、そもそも、チャンネルをいじっているうちに偶然に見始めたものですし、ちょっと見ただけですぐに別の番組に切り替えてしまいました。原作を知らない人が見るものなのかもしれないという気もします。でも、金曜11時台の番組にしては10%近い視聴率だったらしいですから、それなりに人気があったようです。
私は『掟』と『呪縛』の両方とも、数年前に図書館で借りて文庫本を読んだ記憶があるんですが、今回は買い求めて再び読みました。生協の書店で文庫・新書の割引セールをやっていたこともありますが、夏休みに入ってヒマにしているおにいちゃんへの読書案内の一環でもあります。でも、夏休みに読んで読書感想文の宿題にする本はすでに決まっていて、伊坂幸太郎さんの本だそうです。『ゴールデンスランバー』ではなかったような気がします。図書館で私が借りて来た井伏鱒二の「山椒魚」はなかなか読んでくれません。どうして「山椒魚」を借りたかと言えば、基本的には、中学生や高校生のころに読むべき作品だというのは当然なんですが、先日、長崎でテニスを始める前、コートに散水しようと思って地面にある蛇口をひねると、その蛇口の窪地にカエルが入っていて、「山椒魚は悲しんだ」を思い出したからです。多感な中学生・高校生のころに読んでおくべき代表的な日本文学だと私は考えています。なお、井伏作品の中でも『黒い雨』や、あるいは、三島文学は大学生になってからでも遅くないような気もします。
さて、読書感想文なんですが、『名探偵の掟』も『名探偵の呪縛』も主人公は名探偵天下一と大河原警部です。一応、探偵が推理で難事件を解き明かし、警察は舞台回しをするという一般的な本格推理小説の構成のように見えるんですが、実は、前者では特にギャグの要素も含めて小説外の会話が主人公2人の間で交わされたりします。後者はパラレル・ワールドを思い起こさせる少し趣の変わった「本格推理」というもののない町に行った天下一探偵が推理を展開します。一応、いずれも推理小説ですから内容はここまでとしますが、『掟』の方にはメチャメチャな推理もありますから、それ相応の覚悟を持って読み進む必要があります。最初からギャグだと割り切ってしまえば、まあ、こんなもんでしょう。

「本格推理」ファンの大向こうをうならせる謎解きがあるかどうかはともかく、この本が謎解き以外の部分も含めて「本格推理」ファンに人気があるのは理解できるような気がします。

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2009年7月18日 (土)

下の子がカブ隊のキャンプに出かける

今日から、下の子が活動しているボーイスカウトのカブ隊がキャンプに出かけました。今回のキャンプの眼目のひとつは料理だとかで、ある程度はスカウト達で食事を作るそうです。ということで、いつもの集合場所に集まってから、まず、近くのスーパーに食材の買い物に出かけます。私も長崎に単身赴任してからスーパーで買い物することもありますが、そのまま食べられるものだけで、食材を買うことはありませんから、他のスカウトの母親がアドバイスします。無事に買い物を終え、荷物をまとめて出発です。写真は、上から最初の集合、買い物、荷物をまとめての出発です。

キャンプのために集合したスカウト達
キャンプのために食材の買い物をするスカウト達
荷物を持ってキャンプに出発するスカウト達

ウチの子は男の子ですから、食べる方専門でもないんですが、そんなに料理には興味を持っているわけではありません。ですから、今回のキャンプでウチの子が楽しみにしていることのひとつは魚釣りだそうです。確かに、今までやったことはありませんから、初めてかもしれません。しかも、釣った魚が調理されて食事に出るんですから、やる気満々でした。

バザーで働くおとうさん
三田2丁目の交差点からみた東京タワー

下の子をキャンプに送り出してから、私はボーイスカウトの収益事業であるバザーの手伝いに行きます。今日夕方からの三田納涼カーニバルでボーイスカウトがバザーを出しています。私は早番のお手伝いで、商品の値付けや売り場の設営などを手伝います。5時に営業を開始して、集客力は抜群でした。30分足らずでかなりの商品がさばけて一段落しましたので、早番の私は早々に失礼しました。東京タワーを三田2丁目の交差点の真ん中から見るという、普段にはない体験もしました。

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2009年7月17日 (金)

地域経済について考える

長らくお休みしていましたが、授業で考える経済問題について、今夜は地域経済です。まず、大都市圏、あるいは東京と長崎経済の違いについて、授業の冒頭にいろいろと学生諸君から考えを聞いてみました。私の考えとピッタリ一致するものもありますし、やや違うものもありましたが、私が重要と考える地域経済と都市圏経済との違いは以下の5点です。

  1. 所得
  2. コスト
  3. 居住スペース
  4. 社会資本
  5. 消費生活

まず、所得が違います。一般に都市部における所得の方が高いと考えられています。次に、コストが違います。一般にも使われますが、経済学的な用語で「混雑」という言葉があり、この混雑の程度は都市部で高くコストも高くなります。一般的な物価水準によるコストももちろん含まれます。居住スペースについては土地と人口の相対的な希少性により、地方圏でより広いスペースが享受できます。社会資本はかなり広い概念で、特に生活基盤となる水道、電力、ガス、電話、放送なども含み、これらについては、かなりの程度に全国で最低限の供給がなされていますが、高速道路、新幹線などについては都市部と地方で差があります。最後の消費生活については、アマゾンや楽天などの通販で規格の統一された消費財は大きな差がありませんが、同時消費性のあるサービスでは差が大きいです。もっとも財について考えても、私の家族が住んでいる青山からほど近い表参道ヒルズに比べて、昨年2008年10月13日付けのエントリーで紹介した長崎のココウォークで買えるものはまだ差があります。でも、特にサービスについては、本学学生諸君を目の前にして言いにくかったんですが、一例として大学教育サービスを考えると、一部の例外を除いて大都市圏に質の高い大学教育サービスが集中していて、例えば、全国レベルでは東京や京阪神に、九州レベルでは福岡に、長崎県域では長崎市と佐世保市に集中していることは、明らかで、諸外国はともかく、少なくとも日本におけるこの大都市集中の傾向は衆目の一致するところではないでしょうか。
経済学的にはこれらの要素を勘案して、個々人の効用関数に従って人口移動が起こると考えられます。しかし、経済学的な要因だけでなく、別の人口移動要因もありますし、何よりも個々人のマイクロなレベルで効用関数の大きな差があるでしょうから、当然のことながら、都市部に、あるいは逆に地方圏に、一方的に人口が移動してしまうことはありません。大きな流れとして、地方から都市部に人口が移動する動きは戦後日本で観察されますが、少なくとも、地方の人口がゼロになり都市だけに人口が集中し切ってしまう現象は今のところ観察されません。
4番目の社会資本以外は、特に、コストと居住スペースの関係などは人口移動により、あるいは、別の何らかの経済的な要因で希少性が変化することにより、全国レベルでは一定の均衡に向かう可能性がありますが、その均衡に達するまでの調整に社会的に許容されないような長い期間を要するかもしれませんし、何よりも、4番目の社会資本整備は市場では解決されない公共財的な要素を含んでいますから、中央または地方政府が介入する必要がある分野だと私は考えています。しかし、社会資本を整備するにしても、従来からのハード、あるいはハコモノではなく、ソフト、すなわち、社会福祉や介護などを充実させるべきではないかと私は考えています。その昔は、将来にわたって便益が及ぶとか、あるいは、かなり直接的に地方公共団体の首長を選出する選挙における論功行賞などもあったのかもしれませんが、ハードの整備が中心に進められてきた印象がないとも言えません。これからは、なかなか社会資本とは見なされにくいんですが、もう少し、医療や介護を含むソフトなサービスにも目を向けた広い意味での社会資本の整備に資源を振り向ける時代になりつつあるような気がしないでもありません。ただし、考えるべきポイントは、社会資本整備はストックとして地域生活の便益を増進させるものと受け止めるべきであり、フローとしての所得増進的な意味合いで実施されるべきではない点を確認しておきたいと思います。

今週で授業を終え、月末の試験を経て、8-9月は学生諸君は長い夏休みです。私も東京に帰宅する機会が増えそうな気がしないでもありません。授業シリーズはこれにて終了とします。

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2009年7月16日 (木)

長崎の地域景気指標を推計する

すでに先週になってしまったんですが、新たなペーパー「長崎における確率的地域景気指標の推計: 長崎景気のけん引役は何か?」を書き上げてディスカッションペーパーとして取りまとめました。どうしてディスカッションペーパーかというと、基本的には、紀要をオーバーフローしてしまったからです。6月3日付けのエントリーで取り上げた「九州7県における人的資本の推計」が推計モノのペーパーで、7月2日付けのエントリーで紹介した「今次景気後退局面の特徴 - 猛烈なスピードによる調整後の景気展望とともに -」が推計ナシのエッセイとなりますので、この2本で9月号の紀要はおしまいにし、今回の長崎地域景気指標 (NRBI=Nagasaki Regional Business Indicator) のペーパーはディスカッションペーパーにしました。

長崎地域景気指標 (NRBI)

何を推計したかというと、要するに、長崎県域のデータを用いてストック・ワトソン指数を推計しました。上のグラフの通りです。これだけで理解できればお終いなんですが、ストック・ワトソン指数は知ってる人しか知りませんから簡単に解説しておきたいと思います。景気について、何らかの観測不能な単一の景気指標があると仮定し、この景気指標が観測可能なデータに表れていると考え、さらに、この観測不能な景気指標についてAR(2)の確率過程を仮定するとともに、観測不能な景気指標から観測可能な経済データを推計する際の誤差項についてもAR(1)の確率過程を仮定し、これらを状態空間表現してカルマン・フィルターで解きます。これでも、理解できない人が大部分なんだろうと思いますが、これ以上の説明には長い時間がかかります。今回のペーパーでは観測可能な経済データとして、生産の代理変数に産業向け大口電力、雇用の代理変数に有効求人倍率、所得の代理変数に実質賃金指数、消費の代理変数に百貨店販売額を消費者物価で実質化したデータを用いて、観測不能な単一の景気指標である NRBI を推計しています。この地域景気指標の動きは上のグラフに見る通り、全国レベルの景気動向指数 (CI) と比べてかなり大袈裟で、標準偏差は2倍以上に達するんですが、おおむね、景気の山と谷は捉えていると自負しています。
さらに、NRBI を使っていくつか分析を試みており、まず、推計期間である1985年1月から2009年4月までの線形のタイムトレンドに対して単純に回帰し、CI は時間に対してやや上向きのトレンドを有しているのに対して、NRBI は右肩下がりのトレンドであることが明らかになっています。長崎経済は時の流れとともに縮小傾向にあるのかもしれません。また、上のグラフに見る通り、2001年のいわゆる IT バブル後の景気後退が長崎では極めて軽微にしか観察されません。実は、これは日銀の長崎短観にも表れており、私には大きなパズルでしたが、要するに、2001年景気後退は長崎では軽微だったので、長崎短観に表れたマインドにも影響しているんだと解釈できます。次に、NRBI と CI に加えて、企業物価で実質化した造船の受注残高を加えてグレンジャー因果を計測しました。1%水準の統計的有意性で CI が NRBI に先行し、造船も NRBI に先行することが確認されました。逆のグレンジャー因果はありません。他方、CI と造船に関しては明確な関係はありません。グレンジャー因果は時間的な先行性を検定するものであって、科学としての経済学的な因果関係を見るものではありませんが、長崎経済は全国に遅行していることは確かで、しかも、造船業が長崎経済をけん引している可能性が強く示唆されています。長崎に詳しいエコノミストの間でいわば「常識」とされていることばかりなんですが、それを計量的に確認したことの意義は大きいと考えています。

データを取るのにお世話になった県庁やシンクタンクにお礼とともに配布しておきました。また、紀要は公刊論文と見なされますが、ディスカッションペーパーですから公刊論文ではなく、どこかのジャーナルに投稿しようかと考えなくもありません。

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2009年7月15日 (水)

第141回芥川賞は磯崎憲一郎さんの「終の住処」に授賞

本日、第141回芥川賞・直木賞の選考会が開かれ、芥川賞が磯崎憲一郎さんの「終の住処」(『新潮』6月号)に、直木賞が北村薫さんの『鷺と雪』(文藝春秋)に、それぞれ授賞されることが決まりました。まず、朝日新聞のサイトから芥川賞に関する最初の4パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

第141回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に磯崎憲一郎さん(44)の「終(つい)の住処(すみか)」(新潮6月号)、直木賞に北村薫さん(59)の「鷺(さぎ)と雪」(文芸春秋)が選ばれた。副賞は各100万円。授賞式は8月21日午後6時から、東京・丸の内の東京会館で開かれる。
磯崎さんは千葉県我孫子市生まれ。早稲田大卒。07年、「肝心の子供」で文芸賞を受け、作家デビュー。三井物産に勤務しながらコンスタントに小説を執筆し、08年、「眼(め)と太陽」が芥川賞候補に。著書に「世紀の発見」など。東京都世田谷区在住。
受賞作は、ともに30歳を過ぎてなりゆきで結婚した感のある夫婦の上に流れた20年という時間を描いた。娘も生まれ家も建てたが、常に不機嫌な妻は夫にとり不可解な存在であり続け、夫も浮気を繰り返す。細やかな描写が、相愛の情を欠きながら長い時間を共有したのちに得た、夫婦の関係を浮き彫りにする。
選考委員の山田詠美さんは「圧倒的な支持で決まった。言葉を深く考えて選び、時間軸を考えながらブロックを積み重ねるような実験的な方法で小説を描き出した。独自の世界を作った点が評価された。文学に対する確かな信頼と誠実な態度を感じさせた」と語った。

まずは、磯崎さんと北村さん、誠におめでとうございます
すでに、7月4日付けのエントリーで候補作を紹介していますが、芥川賞について私は磯崎憲一郎さんの「終の住処」に期待を寄せていました。実は、候補作品を書いた作家の中で、私が読んだことがあるのが、引用した記事にもある磯崎さんの『肝心の子供』だけだったりするのも理由のひとつです。なお、『肝心の子供』については、昨年2008年2月1日のエントリーで読書感想文の日記をアップしています。それから、いつも私が参照している大森望さんと豊崎由美さんの文学賞メッタ斬り!のサイトでは、めずらしく大森さんと豊崎さんの意見が一致して、芥川賞と直木賞の本命は、それぞれ、磯崎憲一郎さんの「終の住処」と北村薫さんの『鷺と雪』を推していましたから大的中といえます。少なくとも、芥川賞については引用した記事にもある通り、山田詠美さんの「圧倒的な支持」という一言がすべてを物語っているような気がします。いつもの通り、私は8月発売の「文藝春秋」で選評とともに読みたいと考えています。

梅雨前線の形状の変化

最後に、文学賞とは何の関係もないことながら、昨日7月14日に関東甲信が梅雨明けしたにもかかわらず、九州北部がなかなか梅雨明けしません。沖縄から奄美、さらに、九州南部まで梅雨明けし、九州北部をすっ飛ばして関東甲信が梅雨明けした形です。私が見た今日の西日本新聞の記事では九州北部の梅雨明けを「遅刻」と称して、上の画像のような天気図を示して、梅雨前線がスンナリと北上しないお天気を嘆いていたりします。

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2009年7月14日 (火)

『情報通信白書』を読む

今夜も先週金曜日7月10日に発表された積残し分で『情報通信白書』を取り上げたいと思います。そもそもナントカ白書というのは自省の政策や所管する産業分野を我田引水的に広報するのも重要な役目のひとつですが、この『情報通信白書』はその傾向がもっとも強いもののひとつです。昨年に続いて、今年も「ユビキタス」をキーワードに情報通信産業の重要性をしつこいくらいに指摘しています。地域振興も、世界経済の回復も、すべての中心は情報通信産業のようです。今年の白書でも第1部第1章第1節で、いきなり、「経済再生における情報通信の重要性」を論じたりしています。私が役所に就職した時なんか、かつての郵政省はx流官庁と呼ばれていましたが、今でもメンタリティはそんなに変化していないような気がします。
ですから、誠に心苦しいながら、私が着目するのは、昨年版の白書では第2章の「情報通信の現況」であったり、今年は第2部第4章の「情報通信の現況」だったりします。メディアも大雑把にこの傾向を示しており、日経新聞の記事のタイトルは「日本の情報通信、インフラ世界一 行政や医療は利用低迷、09年白書」だったり、読売新聞の記事のタイトルは「低所得者のネット利用率低下…情報通信白書」だったり、毎日新聞の記事のタイトルは「情報通信白書:先進7カ国中『安心度』の評価は最下位に」だったり、要するに、情報通信産業が世界経済や地域振興をどうかしてくれるという視点はまったくなく、客観的なデータに関する記事が中心のように私は見受けました。しかも、こういった宣伝型白書の場合、大きなジレンマがあります。何らかの予算や振興策を獲得しようとすれば、所管産業が立ち遅れている現状を提示する必要がありますし、そうなったら「何をやっているんだ」ということになり、逆に、所管産業をしっかりと伸ばすことが出来ていることを示せば「もはや振興策や予算は必要ない」と言われかねません。悩ましいところです。
前置きが長くなりましたが、今年4月16日付けのエントリーで「通信利用動向調査」を取り上げた際と同じグラフなんですが、下の図はインターネットの普及に関してのグラフです。水色の棒グラフが人口で左軸の単位は万人、赤の折れ線が普及率で右軸の単位はパーセントです。そろそろロジスティック曲線の傾きが緩やかになっている部分に達している気がします。

インターネット普及率

次に、ブロードバンドの年齢別及び所得階層別の普及状況です。いずれも水色の棒グラフが2007年末、赤が2008年末のパーセント表示です。上のパネルにある年齢別では中学生から50歳未満で高く、50歳に達すると年齢が高くなるにつれて利用率が大きく下がっているのが見て取れます。当然と言えば当然でしょう。下のパネルの所得階層別では、これまた当然ながら、大雑把に所得が高くなるにつれて普及率が上がっています。特に注目すべきは、ほとんどの所得階層で2007年末から2008年末にかけて普及率が上昇しているのに対して、200万円未満の階層は上がっていないことです。読売新聞が指摘するように、低所得者や高齢者のネット利用にはまだまだハードルが高いのかもしれません。

ブロードバンド利用状況

情報通信産業は世界経済や地域経済を救う救世主ではないかもしれませんが、それよりももっと重要なのは官庁の規制やいわゆる行政指導なんかとともに育成策をどこまで必要とするかを考えることです。多くのエコノミストには政府の育成策を必要とする産業には見えないような気がします。私もそうです。

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2009年7月13日 (月)

内閣府景気動向指数研究会における判断基準見直しの議論

この週末は、土曜日にラクイラ・サミットの首脳宣言のコピペ、日曜日にお台場ガンダム+ドラクエを取り上げ、金曜日に発表された興味ある話題をすっ飛ばしてしまいましたので、今週の冒頭はこれらを取り上げたいと思います。まず、今夜は景気動向指数研究会について、明日は出来れば『情報通信白書』を取り上げたいと思います。
7月10日の内閣府の景気動向指数研究会で話し合われたのは、主として、景気動向指数 (CI) による基調判断のあり方でした。公表された資料を見る限り、基調判断に加えて、指数そのものの採用系列に関する議論、トレンド処理の方法、外れ値の刈り込み処理なども議論されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府の景気動向指数研究会(座長・吉川洋東大教授)は10日の会合で、景気動向指数のCIを使った基調判断について、複雑だった区分けを整理することを了承した。今後は指標の変化に応じて「改善」→「足踏み」→「局面変化」→「悪化」→「下げ止まり」というプロセスで景気の状態を判断する。指標の変化が小さい場合は、前月の判断を引き継ぐ。
会合後の記者会見で吉川座長は、今年1-3月だったとの指摘がある景気の「谷」の判定について「通常は1年ほどのデータ蓄積が必要」と述べ、まだ時間がかかるとの認識を示した。

今夜のエントリーで注目する基調判断のあり方については、いずれも7月10日の景気動向指数研究会の参考資料2-1 「『CIによる景気の基調判断』の基準」の一部見直し(案)についてから引用したんですが、下の表と概念図の通りです。

基調判断定義基準
改善景気拡張の可能性が高いことを示す。原則として3ヶ月以上連続して、3ヶ月後方移動平均が上昇した場合。
足踏み景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す。3ヶ月後方移動平均の符号が変化し、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
局面変化事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。7ヶ月後方移動平均の符号が変化し、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
悪化景気後退の可能性が高いことを示す。原則として3ヶ月以上連続して、3ヶ月後方移動平均が下降した場合。
下げ止まり景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す。3ヶ月後方移動平均の符号が変化し、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。

基調判断の変更順序のイメージ図

上で明らかなように、今回の基調判断の変更は従来と同じミッチェル的な景気の2分法に基づき、景気の方向を拡張と後退だけでなく、景気転換点付近の景気をより正確に反映しようとするものです。CI の傾きが正か負かで拡張と後退を判断しつつ、その傾きがゼロに近づくのが足踏みと下げ止まりであり、ゼロになるのが局面変化=景気転換点となります。しかし、遠い昔に放棄された手法とはいえ、シュンペーター的な2分法を景気判断に盛り込むことが可能かどうかも検討として欲しい気もしないでもありません。

景気の2分法

上のイメージ図は5月15日付けのエントリーで取り上げたものですが、一般国民の間における景気実感はかなりの程度にシュンペーター的な2分法に近いことも確かです。しかし、圧倒的に先進各国でミッチェル的な景気の2分法が採用されているのは、マクロ経済安定化政策をシュンペーター的な2分法に従った景気判断に基づいて実施すると、認知・実施・波及の3つのラグがあると仮定すれば、意図した counter-cyclical よりもむしろ pro-cyclical な、別の言葉でいえば、景気循環をかえって拡大しかねず、意図と逆方向の政策になってしまうことに対する危惧が基本にあると言えます。しかも、現行の CI は景気に敏感な指標の量的な動きを合成した指標であり、一応、景気変動の量感を測定することを目的としているんですが、必ずしも、GDP や鉱工業生産指数のように経済活動の水準そのものを計測することを目的としたものではありません。もしも、シュンペーター的な景気の2分法を景気判断に取り入れるとすれば、この点、すなわち、経済活動水準そのものを表現できるような指数の開発が必要であることは言うまでもありません。

昨日のエントリーはお台場ガンダム+ドラクエで済ませてしまいましたが、午前中のテレ朝系で放映された「サンデープロジェクト」を興味深く拝見しました。司会者をはさんで慶応大学の竹中教授と双日総研の吉崎副所長が討論していましたが、竹中教授は私の持論である W 字型の景気パスを主張し、吉崎さんが現在の景気状況について方向は上向きながら水準は低いと結論していました。吉崎さんが私のこのブログを時折ご覧いただいているのは知っていたんですが、ひょっとしたら、竹中教授にも見ていただいているのかもしれません。単なる冗談として笑い飛ばして下さい。

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2009年7月12日 (日)

週末らしい話題 - お台場ガンダムとドラクエ IX

昨日のラクイラ・サミットの首脳宣言そのままも、考えようによっては、週末らしく手を抜いたエントリーではなかったかと思うんですが、今日はもっと週末らしく大きくくだけて、エンタの話題を取り上げます。
まず、夏休み限定でお台場に出現した 1/1 スケールのガンダムです。今年は『機動戦士ガンダム』アニメ放映30周年ということで、GUNDAM 30th ANNIVERSARY なんてホームページも開設され、とうとう、お台場に 1/1 等身大18メートルのガンダムが現れました。この大きさのガンダムは世界初だそうです。我が家の子供達が作っているガンプラは HG で 1/144、MG で 1/100 のスケールですから、当然のことながら我が家にあるガンプラの100倍以上の大きさです。GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト実行委員会なる団体が潮風公園内にある太陽の広場に設置して、一昨夜7月10日にオープニング・セレモニーがあり、アムロ・レイの声優を務めた古谷徹さんが「『GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト』行きまーす!」と開会宣言し、昨日から一般公開が始まりました。実物大ガンダムは鉄骨と FRP 製で重さ約35トンあり、頭部が可動し、体の50か所が発光してレーザービームっぽい光を出し、14か所からミストを噴射するらしいです。来月8月いっぱいの夏休み限定公開だそうです。何といっても、18メートルの巨大なものですから、安全管理なんかが大変なんだろうという気はしますが、せっかく作ったのに2か月足らずで撤去するのはもったいないように思わないでもありません。我が家はその昔に松戸にバンダイ・ミュージアムがあったころ、実物大 RX-78-2 ガンダムの上半身5.6メートルを見に行って感激した記憶がありますが、2年ほど前に東武線沿線の「おもちゃのまち」に移設されてしまいました。なお、下は YouTube のサイトで見かけたガンダム設置中の動画です。また、毎日新聞のサイトでも一昨日のオープニングを報じており、写真も満載です。

次に取り上げるのは、同じく昨日7月11日に発売が開始されたドラクエです。正式かつ長いタイトルは「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」だそうです。その昔は2007年秋に発売開始予定と言われていたんですが、2年近く遅れての発売です。製作会社は言うまでもなくスクウェア・エニックスで、ドラクエを作っていたエニックスとファイナル・ファンタジー (FF) を作っていたスクウェアが合併した会社なんですが、私が仄聞する限り、前者が後者を救済合併したらしいです。不確かな情報です。ドラクエの前の2作はソニーのプレステ用に開発されたんですが、この最新作は昔と同じくニンテンドーのゲーム機用に開発されていて、今回は DS 向けです。私の従来からの主張では、FF は画面の美しさやサウンドもひとつの売り物ですから、音声にも凝った大画面テレビなんかにつないでプレーするのがベストだという意味でプレステ3向けだと思うんですが、ドラクエは2等身キャラがチョコマカと動き回るんですから、DS なんかの携帯ゲーム機にピッタリな気がします。なお、下の動画も YouTube のサイトで見かけたドラクエの CM とそのメイキングです。

青山のような高級住宅街に住んでいながら、一家の大黒柱の私が薄給の公務員や大学教授をしているため、我が家はかなり貧しい消費生活を送っています。子供達が友達の家にお呼ばれで行って驚くのは、大きな画面のテレビ、高級な自動車、家族みんなで持っている携帯電話などで、我が家にはないものばかりでしたが、せめて、夏休みには青山に戻って子供達とともにお台場にガンダムを見に行ったり、欲しい子には新しいドラクエを買ってやったりしたいと考えています。今から夏休みが待ち遠しいです。

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2009年7月11日 (土)

ラクイラ・サミット首脳宣言

L'Aquila Summit Logoイタリアのラクイラで7月8日から開催されていたサミットが昨日で閉幕しました。今回のサミットの首脳宣言は、原文の英語版で40ページ134パラから成っていて、RESPONSIBLE LEADERSHIP FOR A SUSTAINABLE FUTUREと題されています。私が参照したバージョンは、サミットのホームページにある英語版と我が国外務省のサイトにある日本語仮訳です。どう分かれるのかはやや不明瞭ながら、経済、環境、開発の3部構成で、"WORLD ECONOMY"に始まって、"Sustainable use of natural resources: climate change, clean energy and technology"、そして、"Development and Africa: promoting sustainable and inclusive globalization" と続くんだろうと思います。以下は経済に関するパラ59までです。

RESPONSIBLE LEADERSHIP FOR A SUSTAINABLE FUTURE

1. We, the Leaders of the Group of Eight meeting in L'Aquila, express our heartfelt solidarity to the people of Abruzzo affected by the tragic earthquake which struck the region on 6th April 2009, and to all those around the world who have been touched by natural disasters.

2. We are determined to ensure sustainable growth and to tackle the interlinked challenges of the economic crisis, poverty and climate change. These challenges require immediate action and long term vision.

3. Guided by our common values, we will address global issues and promote a world economy that is open, innovative, sustainable and fair. To this end, effective and responsible leadership is required. We are determined to fully take on our responsibilities, and are committed to implementing our decisions, and to adopting a full and comprehensive accountability mechanism by 2010 to monitor progress and strengthen the effectiveness of our actions.

4. We remain focused on the economic and financial crisis and its human and social consequences. We will continue to work together to restore confidence and set growth on a more robust, green, inclusive and sustainable path. This will include strengthening standards of integrity, propriety and transparency for economic activities.

5. We intend to secure our present and future prosperity by taking the lead in the fight against climate change. We are committed to reaching a global, ambitious and comprehensive agreement in Copenhagen. In this respect, we call upon other industrialised countries and emerging economies to actively engage, consistently with the principle of common but differentiated responsibilities and respective capabilities.

6. We renew all our commitments towards the poor, especially in Africa. We are determined to undertake measures to mitigate the impact of the crisis on developing countries, and to continue to support their efforts to achieve the Millennium Development Goals.

WORLD ECONOMY

Economic and financial crisis: the way to recovery

7. The world economy is experiencing the most severe economic and financial disturbances in decades. After several years of very high global growth, we have been facing challenging economic conditions, characterised by financial turmoil, widespread recession, intense deleveraging, an abrupt decline in international trade and growing unemployment and social suffering. While there are signs of stabilization, including a recovery of stock markets, a decline in interest rate spreads, improved business and consumer confidence, the situation remains uncertain and significant risks remain to economic and financial stability.

8. We strongly reaffirm commitments undertaken at the London Summit to take all necessary steps to support demand, restore growth and maintain financial stability, including strengthening financial regulation and International Financial Institutions (IFIs) and maintaining open markets worldwide. We will continue to implement swiftly these decisions and call on all countries to act decisively to reinforce the international economic and financial system, and to work cooperatively and responsibly with regard to the impact on other countries.

9. We have taken stock of progress made to date to restore confidence, stabilise the financial sector and provide stimulus to boost growth and create jobs. Despite the current difficult conditions, we will continue to address global challenges, including fighting poverty and climate change, with the aim of establishing a more balanced and sustainable growth path, underpinned by sound fundamentals and social inclusion.

10. The current financial and economic crisis has reinforced the need generally for cooperation among key economies. The Heiligendamm Dialogue Process (HDP), a topic-driven dialogue of the G8 with major emerging economies - China, India, Brazil, Mexico and South Africa - established in 2007, has helped to fulfil this role by serving as a platform to develop common understanding and shared responsibility in responding to the challenges of the world economy concerning investment, innovation, development and energy efficiency, which will be important for global economic growth going forward. The dialogue has helped to gain a shared understanding of these global challenges in order to find appropriate responses. We endorse the results achieved until now and call for an extension of this dialogue among equals.

Economic stimulus and financial stabilisation

11. Since the beginning of the crisis we have taken an unprecedented and concerted action to ensure recovery and repair our financial systems. We have
coordinated our efforts with partners at various levels in response to a crisis that has affected every corner of the world. We have taken forceful and coordinated action to provide stimulus to economic growth. We have also acted to restore confidence by providing comprehensive support to our financial systems. While these necessary measures have an impact in the short term on our public finances, we commit to ensure fiscal sustainability in the medium term.

12. We note some signs of stabilisation in our economies and we believe that the turnaround will be reinforced as our measures reach their full effect on economic activity and contribute to improving confidence and expectations. However the economic situation remains uncertain and significant risks remain to economic and financial stability. We will take, individually and collectively, the necessary steps to return the global economy to a strong, stable and sustainable growth path, including continuing to provide macroeconomic stimulus consistent with price stability and medium-term fiscal sustainability, and addressing liquidity and capital needs of banks and taking all necessary actions to ensure the soundness of systemically important institutions.

13. We agreed on the need to prepare appropriate strategies for unwinding the extraordinary policy measures taken to respond to the crisis once the recovery is assured. These “exit strategies" will vary from country to country depending on domestic economic conditions and public finances, and must ensure a sustainable recovery over the long term. We welcome the analytical work of the IMF which will assist us with this process.

Repairing the financial system

14. Repairing the financial sector, including stabilising financial markets and normalising banking activity, is an urgent priority to ensure lasting economic recovery. We are implementing swiftly the commitments made at the London Summit and call on others to join our efforts to ensure global financial stability and an international level playing field.

15. Besides ensuring access to liquidity, it is crucial to deal decisively with distressed assets and to recapitalize viable financial institutions. We recognise the importance of further international cooperation in dealing with impaired assets, based on common principles and on an objective and transparent valuation of these assets, and in assessing the adequacy of banking capital and reserves, where necessary. Strong coordination on the principles underlying public capital injections, their conditions, and incentives to private interventions is also relevant. We ask the Financial Stability Board (FSB) to continue monitoring developments in financial systems and to help promote a coordinated approach, consistent with avoiding distorting competition and regulatory arbitrage.

Further efforts in international tax and prudential cooperation and in combating illicit financing

16. In this difficult time, the protection of our tax base and the efforts to combat tax fraud and tax evasion are all the more important, especially given the extraordinary fiscal measures adopted to stabilise the world economy and the need to ensure that economic activity is conducted in a fair and transparent manner. We are making progress in promoting tax information exchange and transparency across the globe, which is helping to widen the acceptance of internationally agreed standards on the exchange of tax information and increase the number of bilateral agreements signed by several jurisdictions. But there is no space for complacency: all jurisdictions must now quickly implement their commitments. We cannot continue to tolerate large amounts of capital hidden to evade taxation.

17. Echoing the call of the G-20, an appropriate follow up framework is needed to fully benefit from this renewed emphasis on tax information exchange and transparency:
a. the OECD Global Forum on Transparency and Exchange of Information must implement a peer-review process that assesses implementation of international standards by all jurisdictions and provides an objective and credible basis for further action;
b. since all countries monitored so far by the Global Forum have committed to implement international standards on exchange of tax information, efforts should now concentrate on implementing actual information exchange and increasing the number, quality and relevance of the agreements that adhere to these standards;
c. participation to the Global Forum should be expanded;
d. recognising the particularly damaging effects of tax evasion for developing countries, concrete progress needs to be made towards enabling developing countries to benefit from the new co-operative tax environment, including through enhanced participation in the Global Forum and the consideration of a multilateral approach for exchange of information;
e. criteria used to define jurisdictions which have not yet substantially implemented internationally agreed standards on tax information exchange and transparency should be revised as part of the peer review assessment process to ensure an effective implementation of international standards; and
f. a toolbox of effective countermeasures for countries to consider for use against countries that do not meet international standards in relation to tax transparency should be discussed and agreed.
We ask the OECD to swiftly address these challenges, propose further steps and report by the time of the next G20 Finance Ministers' meeting.

18. We call on all jurisdictions to adhere to international standards in the prudential, tax and Anti-Money Laundering and Combating Financing of Terrorism (AML-CFT) areas. To this end, we call on the appropriate bodies to conduct and strengthen objective peer-reviews, based on existing processes, including through the Financial Sector Assessment Program (FSAP) process.

19. We are pleased with the progress being made by the Financial Action Task Force (FATF) in improving the standards for combating money laundering and the financing of terrorism and by the OECD on international standards of transparency.

20. The fight against non-cooperative jurisdictions should also encompass anti money laundering and terrorism financing, as well as in the area of prudential regulations. We call on the Financial Stability Board (FSB) to assess jurisdictions against international supervisory and prudential standards. The FATF and FSB should report back by September on their progress in identifying uncooperative jurisdictions.

21. We note that several countries are implementing voluntary compliance strategies in order to repatriate assets held in non-cooperative jurisdictions, and the need is felt to define a discussion framework for interested countries.

A common framework for balanced and sustainable-growth

22. Going forward, we need a strategy to comprehensively address long-term issues and lead the global economy to stable, balanced and sustainable growth. Achieving economic and social stability as a global public good requires better governance. Regulatory reform will reduce room for excessive leveraging and risk taking and promote sound capitalisation of financial institutions. Common principles and standards on propriety, integrity and transparency governing the conduct of international business and finance help promote a healthy and sustainable economic system. The social dimension of growth is also crucial in this effort, through the promotion of employment opportunities, the creation and updating of skills and the protection of the weakest through appropriate social safety nets and income support.

23. Stable and sustained long-term growth will require a smooth unwinding of the existing imbalances in current accounts. We recognise the importance of working together to ensure the necessary adjustments in line with the multilaterally agreed strategies, which include supporting strong internal demand in surplus countries and increasing savings rates in deficit countries through appropriate macroeconomic and structural policies. New sources of growth will have to be supported by investments in infrastructure, innovation and education to facilitate productivity growth, while ensuring sustainable use of resources in a greener economy, within a context of open markets. Greater macroeconomic policy coordination will also be needed to help ensure that the burden of adjustment is fairly shared.

Financial and regulatory reform

24. We strongly support the work undertaken at the Washington and London Summits for the reform of financial regulation, IFIs and the FSB. We are fully committed to implement these decisions in a timely manner and we urge other partners to join our efforts.

25. We emphasize the need for an enhanced global framework for financial regulation and supervision, promoting consistency between accounting and prudential standards and setting up adequate tools to address procyclicality, as well as ensuring a comprehensive oversight of all systemically significant entities and activities. We commit to vigorously pursue the work necessary to ensure global financial stability and an international level playing field, including on compensation structures, definition of capital and the appropriate incentives for risk management of securitisation, accounting and prudential standards, regulation and oversight of systemically important hedge funds, standardisation and resilience of OTC derivative markets, establishment of central clearing counterparties for these products, and regulation and transparency of credit rating agencies.

26. We are fulfilling the commitments to provide resources to the International Monetary Fund (IMF) and for trade finance. We have led efforts to provide the IMF with the necessary resources to expand its lending capacity and urge other countries to participate. We are also exploring ways to substantially increase the IMF capacity for concessional lending and we encourage the Fund to explore the scope for increased concessionality to low-income countries. We remain committed to reforming the IMF to enable it to carry out its critical role in the modern global economy. We support the completion of the IMF quota review by January 2011 and the agreement on the second phase of voice and representation reform in the World Bank Group by the 2010 Spring Meetings. We welcome the actions being taken by the World Bank and other Multilateral Development Banks (MDBs) that highlight their important countercyclical role in responding to the global crisis. After comprehensively reviewing their capital positions, including a thorough resource demand analysis based on agreed medium to long-term strategies, we are prepared to consider additional financing needs. Additional elements to be considered include a clearer division of labor and collaboration among institutions, enhanced balance sheet flexibility, good governance, better risk management, effective use of aid, progress on promoting innovation, and an adequate focus on the world's poorest.
Common Principles and Standards

27. For the market economy to generate sustained prosperity, fundamental norms of propriety, integrity and transparency in economic interactions must be respected. The magnitude and reach of the crisis has demonstrated the need for urgent action in this regard. Reform efforts must address these flaws in international economic and financial systems with resolve. This will require promoting appropriate levels of transparency, strengthening regulatory and supervisory systems, better protecting investors, and strengthening business ethics. To address these issues we have agreed on the objectives of a strategy to create a comprehensive framework, “the Lecce Framework", building on existing initiatives, to identify and fill regulatory gaps and foster the broad international consensus needed for rapid implementation. The Framework includes the areas of corporate governance, market integrity, financial regulation and supervision, tax cooperation, and transparency of macroeconomic policy and data. To ensure the effectiveness of the Lecce Framework, we will make every effort to pursue maximum country participation and swift and resolute implementation. We are committed to working with our international partners to make progress, with a view to reaching out to broader fora, including the G-20 and beyond.

28. We invite international organisations, in particular the World Bank, the International Monetary Fund (IMF), the World Trade Organisation (WTO), the International Labour Organisation (ILO) and the Organisation for Economic Cooperation and Development (OECD), to enhance their cooperation and to improve coherence.

Corruption

29. In this context we are determined to strengthen action on corruption, which poses serious problems to the stability and security of societies, undermines the institutions and values of democracy and jeopardises sustainable development and economic prosperity. Reaffirming our previous commitments, we will intensify our efforts to effectively fight against corruption in all countries.

30. The ratification and implementation of international Conventions in this field is a fundamental signal in this direction. We call for the ratification of the United Nations Convention against Corruption (UNCAC) by all countries and a strong and consistent follow-up of the Bali Conference by ensuring effective implementation of UNCAC, including the development of an effective, transparent and inclusive review mechanism. We will promote adherence to and enforcement of the OECD Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions and support of its permanent monitoring mechanism. We will fully enforce our laws against bribery of foreign public officials and, consistent with national legal principles, will rigorously investigate and prosecute foreign bribery offences. We encourage other major economies to accede to the OECD Convention as soon as possible.
31. International cooperation against corruption should be enhanced in order to achieve effective results. We are therefore committed to update G8 anticorruption initiatives and further support outreach activities and technical assistance to other countries.

32. We reiterate our previous commitments to deny safe havens to corrupt individuals and their illicitly acquired assets, and to prevent corrupt holders of public office from gaining access to the fruits of their illicit activities in our financial systems. We will strive to improve international legal cooperation in asset recovery investigations within the framework of the UNCAC, including by seeking ways to facilitate informal cooperation and supporting identification and dissemination of good practices. We will strengthen cooperation on asset recovery, including through the Stolen Asset Recovery initiative (StAR).

33. We encourage IFIs to adopt more transparent business practices, including through enhanced internal safeguards, and enhancement of measures to facilitate cooperation with national authorities in corruption cases.

34. We also welcome the update of the Accountability Report: Implementation Review of G8 on Anti-Corruption Commitments which was presented for the first time in Toyako. We envisage making it a permanent tool which sets examples on combating corruption and holds the G8 countries to the highest standards of transparency and accountability. To this end, we appreciate the assistance of the OECD in preparing our regular reports on anti-corruption commitments. Going forward, we invite our major partners to prepare similar reports on their anti-corruption commitments.

35. We continue to support the Extractive Industries Transparency Initiative (EITI) to improve governance and reduce corruption in the extractive sector. We will intensify efforts to promote validation by all implementing countries and all companies operating in those countries. We also strongly encourage EITI candidate countries to complete implementation within their agreed timeframe and call on other developing and emerging countries and their companies to adhere to the initiative.

Employment and social dimension

36. We are committed to tackling the social dimension of the crisis, putting peoples' concerns first. The impact of the economic crisis on labour markets can undermine social stability. Therefore, good macroeconomic policies must be linked to employment and social policies that reduce unemployment, enable a quick re-entry into the labour market and prevent social exclusion. We support the conclusions of the G8 Social Summit in Rome and the London Jobs Conference to take further coherent actions to reduce the impact of the crisis on employment and maximise the potential for growth in jobs, in accordance with the following principles:
a) promotion of active labour market policies to reduce unemployment, enhance skills development and match jobs with labour market needs; maintain income support for the unemployed; sustain existing employment, including through partial
unemployment schemes combined with training provisions and temporary flexible work or other arrangements, such as employment subsidies, in order to prevent lay-offs;
b) ensuring the sustainability and effectiveness of social protection systems as drivers of confidence and consequently of economic and employment recovery;
c) we invite international organisations, in particular the IMF, the OECD and the ILO, to take into account the labour and social impact of their advice and cooperation with governments.

37. Social and employment policies are a crucial pillar in the context of a new global framework. Measures should provide income relief for people and households and prevent long-term unemployment, with particular reference to the most vulnerable groups, taking into consideration gender issues. Advanced, emerging and developing countries as well as international institutions should work together to ensure employment oriented growth and promote social cohesion. Taking forward the ILO Decent Work Agenda, building on the ILO resolution on “Recovering from the crisis: A Global Jobs Pact", is relevant to respond to the crisis at worldwide level and advance the social dimension of globalisation. Governments and enterprises should not use the crisis as an excuse to diminish compliance with worker rights or to diminish worker protections. We commit to promote employment and social protection on a global level and the observance of internationally recognised labour rights as reflected in the ILO declaration on Fundamental Principles and Rights and its follow-up. We also commit to address the human dimension of the crisis and to restore growth on a stronger footing.

38. We support the decisions taken in London regarding the reinforcement of resources for social protection for the poorest countries through voluntary and bilateral contributions, including to the World Bank's Vulnerability Framework.

Green recovery

39. The emergency response to the economic crisis should not overlook the opportunity to facilitate a global green recovery putting our economies on a path towards more sustainable and resilient growth. Our fiscal stimulus packages are increasingly investing in measures encouraging the creation of green jobs and low-carbon, energy efficient and sustainable growth. These include energy efficiency measures, investment in public transportation infrastructure, incentives for fuel-efficient vehicles, research in alternative sources of energy, support for renewable energy technologies, as well as in enhanced CO2 reduction, recycling and disposal such as Carbon Capture and Storage. We remain committed to enhance the environmental dimension of budgetary measures and to reinforce efforts to promote clean energy and energy efficiency. Along with the ongoing WTO negotiations on the liberalization of environmental goods and services, we will intensify efforts to make progress on the reduction or elimination of trade barriers on a voluntary basis on goods and services directly linked to addressing climate change, as agreed at the Toyako Summit. At the same time, we will ensure proper regulatory and other frameworks facilitating transition towards low-carbon and resource efficient growth. In this light, we call for a reduction of subsidies that artificially encourage carbon-intensive energy consumption.

Energy security, global energy markets and investment climate in the energy sector

40. The current financial and economic crisis should not delay cost-effective investments or programmed energy projects that would create jobs, enhance energy security and help limit greenhouse gas emissions in the short and medium term. We urge all countries and the private sector to adopt a long-term view in planning their investments. We are committed to promoting economic recovery together with a significant change in investment patterns that will accelerate the transition towards low-carbon, energy efficient growth models. We especially encourage more rapid application of the many cost-effective technologies already available to improve the energy efficiency of power generation facilities, buildings, industry and transport. Accelerated investment in low-carbon technologies is needed to minimize the existing and potential carbon lock-in represented by capital stock in buildings, factories, vehicles and electric power generating facilities.

41. In this context, we reaffirm our strong commitment to implement the St Petersburg Principles on Global Energy Security in our countries and call on others to join us in this effort. We invite the major international energy organisations to review and update their programmes and promote them in light of the changing energy challenges.

42. Unpredictable energy markets and highly volatile prices put at risk the ability of the industry to plan and implement investments in new infrastructures, consistently with long term demand dynamics. It is in the interest of both producers and consumers to enhance transparency and to strengthen their dialogue towards reducing excessive volatility in the market. Fossil fuel producing, transit and consuming countries must work together to increase stability and predictability of supply and demand patterns and promote investments in the energy sector, including by supporting and developing further predictable legal and regulatory frameworks. We welcome the progress made and the follow up initiatives of the Jeddah and London Energy Meetings in identifying obstacles to efficient energy markets. We call for better coordination among the international institutions and for the acceleration and strengthening of the existing initiatives towards a more structured dialogue, based on the outcome of the London Energy Meeting, between producing, transit and consuming countries, focused on improving the investment climate, discussing ways to reduce excessive volatility of prices and promoting energy security. To this effect we support the important work undertaken by the International Energy Agency (IEA) and the International Energy Forum (IEF), including the activities of the High Level Steering Group of the IEF. We ask experts within the IEF to assess different options to reduce excessive volatility in oil prices.

43. Besides stable and predictable regulatory frameworks, transparent and well-functioning energy markets are essential prerequisites for reducing investment risks and uncertainties both in producing and consuming countries. We therefore emphasise the need for timely and reliable data on demand, supply, stocks, spare capacity and investment plans. To this end, we continue to strongly support the Joint Oil Data Initiative (JODI), managed by the IEF, and call for all countries to cooperate in improving quality, completeness and timeliness of data. We also strongly support the IEF's work on initiating the collection of annual data on investment plans. We believe that greater transparency in gas markets is required. We therefore call upon the IEF to examine the possibility of extending JODI-type activities to natural gas.

44. We encourage international initiatives to improve market transparency and functioning and to address excessive price volatility in commodities markets. In particular, we welcome recommendations by the International Organization of Securities Commissions (IOSCO) on regulation and supervision of financial derivative markets, and underline the importance of accelerating their implementation by national authorities and further cooperation between them and ask all countries to implement IOSCO's recommendations. We ask the IOSCO Task Force on Commodity Markets to consider further possible specific improvements to the transparency and market supervision of oil futures markets and make specific recommendations.

Trade

45. We reconfirm our commitment to keep markets open and free and to reject protectionism of any kind. In difficult times we must avoid past mistakes of protectionist policies, especially given the strong decline in world trade following the economic crisis. Recovery needs a strong international trade component to be viable and the relevant programmes must fully respect our obligations and commitments to non-discriminatory treatment under WTO and other international agreements. We will maximise efforts and steps to promote and facilitate trade and investment.

46. We stress the importance of fully adhering to the standstill commitment and the commitment to rectify protectionist measures adopted in London to avoid further deterioration of international trade, including refraining from taking decisions to increase tariffs above today's levels. We will refrain from raising new barriers to investment or to trade in goods and services, imposing new exports restrictions, or implementing World Trade Organisation (WTO) inconsistent measures to stimulate exports. We ask the WTO together with other international bodies, within their respective mandates, to continue to monitor the situation and to report publicly on the adherence to these commitments on a quarterly basis.

47. We will continue to ensure that our share of the pledge taken in the London Summit of $250 billion of support for trade finance is promptly made available through our export credit agencies (ECAs) and investment agencies and through Multilateral Development Banks. We support coordination and cooperation in its implementation, and welcome exchange of information on the measures taken in this regard. Cooperation among ECAs, such as strengthening re-insurance schemes, is expected to play an important role to this end.

48. We commit to reach a rapid, ambitious, balanced and comprehensive conclusion of the Doha Development Agenda on the basis of progress already made, including with regard to modalities. We are engaged in a strengthened dialogue with our major partners to this end and look forward to discussing with them tomorrow.

Investment

49. The current crisis has affected capital flows, including foreign direct investments (FDIs), which represent an important source of financing and a driver of economic growth and integration. We stress the positive role of long term investments. We will work to reverse the recent decline in FDI, by fostering an open, receptive climate for foreign investment, especially in emerging and in developing countries.

50. Aware of the global nature of the markets where our citizens and businesses operate, and of the interrelated effects of our actions, we fully stress our engagement against protectionist measures. In this light, we welcome OECD's efforts to monitor restrictions on investments and encourage the ongoing joint work of the OECD Freedom of Investment Roundtable (FOI RT) with the WTO, the United Nations Conference on Trade and Development (UNCTAD) and the IMF, in this area.

51. The interconnected nature of the crises we are facing and the contribution investment can make in tackling them - for example, by improving energy security, agricultural production, technology transfer and development opportunities - calls for an improved investment framework. Progress was made at the Toyako Summit on the basic principles contained in Bilateral Investment Treaties and Free Trade Agreements that set the stage for attracting investments. We now need to work with a wider group of countries toward principles and instruments suited to a global scenario, that foster predictability and stability of the investment framework and we stress the important contribution that the Heiligendamm Dialogue has made in this context to build common ground on the need for an open investment climate.

52. To this end, we commit to enhance cooperation with our major partners to agree upon shared principles which may serve as the basis for a more structured and wider process towards an agreed common multilateral framework in the long run creating a predictable and stable climate for investment. To this end, we commit to work with our HDP/HAP partners to produce in one year's time a report on progress made in order to evaluate possible common responses, including the feasibility of launching a process with wide ownership, and with participation from relevant international organisations such as OECD, UNCTAD, the World Bank, and other major stakeholders.

53. Conscious of the complementary role played by governments and the private sector in reaching a sustainable growth, we call for enhanced efforts to avoid wider consequences of the financial crisis and to promote responsible business practices. To this end we promote the dissemination of internationally-recognised voluntary Corporate Social Responsibility (CSR) standards to raise awareness among our governments, citizens, companies and other stakeholders. We will further promote and foster Corporate Social Responsibility through encouragement of adherence to the existing relevant international instruments, in accordance with our Heiligendamm commitments. We also welcome the work of relevant international institutions (ILO, OECD, UN Global Compact) to incorporate CSR into business practices and encourage them to work together in a coherent way in order to achieve synergy effects with existing CSR instruments.

Innovation and Intellectual Property Rights

54. Innovation and knowledge are key factors for supporting the recovery and putting the world economy on a more sustainable growth path. We intend to accelerate innovation in relation to long-term challenges and to encourage the development of new industries, companies and services that will be decisive to create new sources of growth. We are committed to implementing innovation policies in our countries, also through our stimulus packages. We aim to foster research, entrepreneurship, human capital and skills, green technologies and investment in infrastructure, including Information and Communication Technology (ICT) networks.

55. Innovation has also a major role in addressing global policy challenges, such as environment protection, health and poverty. Stronger international cooperation and more effective mechanisms for diffusion of innovation in all its forms are needed, both in, and between, developed and developing economies, including modernisation of public administration. In this framework, we acknowledge the contribution made by the OECD Innovation Strategy to the development of mechanisms for monitoring changes in the innovation process, its diffusion and its impacts and evaluating innovation policies.

56. We also recognize the important contribution that the Heiligendamm Dialogue has made to build common understanding on priorities of Partner countries, on the socio-economic aspects of intellectual property, and on ways to increase the efficiency of the international system to the benefit of all. The Dialogue has reinforced a common understanding with Partner countries that an enabling policy and business environment where intellectual property rights (IPR) are respected is necessary to promote innovation, knowledge, entrepreneurship and creativity.

57. Innovation can be promoted via an effective Intellectual Property Rights system. The increasing use of IPR at the international level has made IP a key component in sectors as diverse as trade, industrial policy, public health, consumer safety, environment protection and the internet. We acknowledge the central role that the World Intellectual Property Organisation (WIPO) plays in fostering an integral vision and coherent development of the international IP system. We also reaffirm the importance of Patent Cooperation Treaty and global patent harmonisation such as Substantive Patent Law Treaty (SPLT) and acknowledge the expansion of international patent collaboration including work-sharing initiatives such as the Patent Prosecution Highway.

58. Counterfeiting and piracy continue to pose a threat to the global economy, public health and welfare. For this reason, we welcome the results of work carried out by our experts, as reflected in the G8 Intellectual Property Expert Group Report of Discussion. We stress the importance of enhanced, inclusive, ambitious international cooperation to tackle counterfeiting and piracy. The negotiations for the Anti-Counterfeiting Trade Agreement (ACTA), which the participants should seek to agree as soon as possible, represent an important opportunity to strengthen standards for enforcement of IPR. With the same aim, we will continue strengthening bilateral and multilateral cooperation among customs authorities through INFO IPR and information exchange considering the model arrangement and capacity building at the World Customs Organisation (WCO). Moreover, we encourage governments and businesses to participate in the ongoing work of the OECD as it examines further the economic impacts of counterfeiting and piracy in Phase III of its study.

59. Internet and the new technologies have created new opportunities and business models for the creation and widespread distribution of digital content that fosters increased knowledge, science, education and free speech. At the same time, these technologies can provide a mechanism for digital piracy. For this reason we consider it important to deepen our understanding of the impact of the Internet and the new technologies on the worldwide diffusion of digital piracy and counterfeit goods, as a component of strategies aimed at ensuring that ICT fully serves the goal of fostering innovation and creating sustainable economic growth and prosperity.

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2009年7月10日 (金)

企業物価に見るデフレの現状と為替の動向

本日、日銀から6月の企業物価指数が発表されました。国内企業物価は▲6.6%の下落と、過去最大の落ち込みを記録しました。いよいよ、昨年の原油価格がピークを迎えた8月に向かって、我が国では逆に今年はデフレのピークを迎えるのかもしれません。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどを報じた記事を引用すると以下の通りです。

日銀が10日発表した6月の国内企業物価指数(2005年=100、速報値)は102.6と前年同月比で6.6%下がった。1960年の統計開始以来、過去最大の下落率となった。前年同月に原油価格が急上昇した反動が出ているほか、景気悪化を背景にした内需の低迷で最終製品に近い品目にも価格の下落圧力が強まってきている。
企業物価は出荷や卸売り段階で企業同士がやりとりするモノの価格水準を示す。品目別では石油・石炭製品が前年同月比で41.7%下落した。足元の原油価格は上昇傾向にあるが、昨年に大幅上昇した反動が続いている。このほか非鉄金属は29.1%下落、化学製品も10.3%下がった。鉄鋼は自動車向けの需要が減少したことなどを背景に9.3%下落した。

次に、企業物価指数の前年同月比上昇率の推移は以下の通りです。上のパネルは国内物価とサービス物価、下は輸出入物価です。なお、サービス物価はまだ5月の指数しか発表されていません。

企業物価上昇率の推移

今年年央の物価は、基本的に、昨年の急激な原油価格上昇の反動があることは確かですが、同時に、景気動向にも影響を受けて、デフレ気味に推移することは早くから見通されていました。しかし、ここ1-2週間で浮上したのは為替がジリジリと円高傾向で推移している点です。私のこのブログでは5月25日付けのエントリーから一貫して景気に対するリスク要因として為替を第1に上げて来ましたが、今となっては物価下落やデフレに対しても大きなリスク要因となっている感があります。ここ1-2週間の為替の動きは、米国景気の動向の不透明さに起因する円資産への資金シフトが原因ですが、長い目で見て、私が従来から指摘している日米金融当局の通貨供給の差が現れ始めている可能性も排除できません。ソロス・チャート的な見方と言えます。しかも、購買力平価仮説が正しいとすれば、物価上昇率が小さいというか、物価下落率が大きい通貨がより増価し、かつ、増価すると物価は下がりますから、収束的というよりも発散的な動きを示す可能性も否定できません。もちろん、購買力平価仮説は成立するとしても超長期に成立するものであり、短期的な為替の動きを左右するものではありませんが、一定の背景を成すことも考えられます。いずれにせよ、為替が最大のリスクであり、しかも、短期的には円高が進む方向にあるものと私は考えています。円高とデフレが相まって、W字型の景気パスをたどって2番底を付けに行く可能性を忘れるべきではありません。

ひょっとしたら、企業物価をこのブログで取り上げるのは初めてかもしれません。今年年央から後半にかけては、米国景気を除く国内要因としては、デフレが最大の景気回復阻害要因となると私は考えていますので、引き続き物価動向を注視したいと思います。

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2009年7月 9日 (木)

国際通貨基金 (IMF) の改定世界経済見通し

昨日、国際通貨基金 (IMF) から「改定世界経済見通し」World Economic Outlook Update が発表されました。もちろん、pdf ファイルのリポートも利用可能です。まず、Financial Times のサイトから記事を最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。

The world economy is starting to pull out of recession, the International Monetary Fund said on Wednesday, marking up its growth forecasts for next year and hinting that it might reduce its estimates for bank losses.
"The recovery is coming," said Olivier Blanchard, IMF chief economist. But he cautioned "it is likely to be a weak recovery" and said policy-makers needed to guard against ongoing economic and financial risks. However, investors signalled their doubts about the strength of any economic recovery by selling off commodities, notably oil and gold, and stocks.
The yen, a barometer of risk aversion, also shot up 3 per cent against the euro and the dollar.

ということで、世界経済の成長率見通しのグラフを IMF のサイトから引用すると以下の通りです。なお、グラフをクリックすると、別画面で詳細な見通しの表が現れます。

Global GDP Growth

今年2009年は我が国の▲6.0%、ドイツの▲6.2%をはじめ、先進各国は軒並みマイナス成長なんですが、来年2010年になるとユーロ圏が▲0.3%と縮小を続けるのを除いて、日米はプラス成長に復帰すると見込まれており、特に、日本は2010年+1.7%成長と4月見通しを+1.2%ポイント上回って、潜在成長率を軽く超える成長を見通されています。世界の成長率は来年には+2.5%に回復し、新興国は+5%近い成長が見込まれています。また、成長率の上方修正だけでなく、金融機関の損失も縮小する方向で修正されることが示唆されています。
もっとも、先行きが明るいかというとそうでもなく、今回の見通しの副題は "Contractionary Forces Receding But Weak Recovery Ahead" だったりします。金融危機を伴う景気後退はその後の景気回復局面は弱いものになるというのは、Reinhart and Rogoff などのエピソード分析も含めて経験則に照らしてもその通りですし、我が国の直近の景気動向を考えても、私が W 字型の景気回復パスを想定していることは、繰返し、私のブログでも書いて来た通りです。

何度も繰返しになりますが、上に引用した IMF の成長率見通しのグラフでも、2009年末か2010年初に再び2番底を付けに行く W 字型の景気パスが想定されているような気がしてなりません。

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2009年7月 8日 (水)

機械受注統計から占う設備投資の動向

本日、内閣府から5月の機械受注統計が発表されました。ヘッドラインとして注目され、設備投資の先行指標となるコア機械受注、すなわち、船舶・電力を除く民需の季節調整値は事前の市場コンセンサスの前月比+2%に対して▲3.0%減の6682億円となり、3か月連続で減少しました。内閣府は基調判断を「減少のテンポが緩やかになってきている」で据え置いています。まず、いつもの日経新聞から記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が8日発表した5月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は前月比3.0%減の6682億円となり、3カ月連続で減少した。非製造業が設備投資を減らしている影響が大きく、受注額は比較可能なデータがある1987年4月以降で最低となった。
発注企業を業種別でみると、製造業は5.4%増えたが、非製造業は6.9%減。非製造業は内需の本格回復に時間がかかるとみているためで、3カ月連続でマイナスとなった。運輸業や金融・保険業からの受注が2カ月連続で減ったほか、卸・小売業など「その他非製造業」も2けた減となった。

いつものグラフは以下の通りです。青い折れ線がコア機械受注、赤がその後方6か月移動平均、影を付けた部分は景気後退期ですが、今年3月を景気の谷と暫定的に仮定しています。

コア機械受注の推移

引用にもありますし、上のグラフからも見て取れるんですが、比較可能なデータがある1987年4月以降でコア機械受注額は最低を記録しています。さらに、極めて短いこの先行きについて考えると、もしも、6月の機械受注が5月と同じで横ばいと仮定すると、4-6月期は前期比▲7.9%減となります。逆に、先月公表された4-6月期の見通し▲5.0%減を達成するためには6月は前月比で+9.5%増を必要としますから、見通しの達成は困難になったと言わざるを得ません。しかし、これで機械受注の底は7-9月期に確定したような気もします。機械受注から遅れるGDPベースの設備投資について考えると、年内いっぱいから年度末くらいが底と受け止めるべきです。まだまだ低い水準ですが、底が見えて来たのは明るい話題かもしれません。

景気ウォッチャー調査の推移

次に、同じく内閣府から6月の景気ウォッチャー調査の結果が発表されました。上のグラフの通り、昨年12月を底に現状判断DIも先行き判断DIもグングン上昇しています。エコノミストとして、DIの水準を論じるのは意味がないと知りつつ、現状判断DIが40を超えたのは景気が山を付けた2007年10月以来です。内閣府は基調判断を「景気の現状は、厳しいながらも、下げ止まっている」と、前月までの「景気の現状は厳しいものの、悪化に歯止めがかかりつつある」から上方修正しています。景気ウォッチャーの現状判断DIは家計動向、企業動向、雇用の3つのコンポーネントから成るんですが、今年に入ってから、この3つともグングンと上昇を示しています。前回の2001年景気後退を終了した時点では、現在と同じデフレの局面でDIの水準が50に達する前に少し反転した経験があるんですが、今回はどうなるのか、歴史の浅い統計だけにやや不明な点も残されています。

何度も繰り返しているように、ミッチェル的な景気回復の初期はシュンペーター的な不況にあることが多く、エコノミストには強弱入り混じった指標を的確に分析する能力が要求されます。

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2009年7月 7日 (火)

オールスター出場選手が決まる

マツダオールスターゲーム2009ロゴ

昨日、今年のマツダオールスターゲーム2009の出場選手の発表がありました。なお、上のロゴはスポンサーであるマツダのサイトから引用しています。注目の出場選手は以下の通りです。こちらはマツダオールスターゲーム2009のサイトから引用しています。氏名・背番号・球団などは明らかなんですが、左端の記号や回数欄のカッコ書きなどに関する注は以下の通りです。

◎印はファン投票選抜、☆は選手間投票選抜、他は監督選抜による。
回数欄の数字は選抜回数 (監督・コーチの最初の数字は、それぞれ監督またはコーチとして出場した回数・後の数字は全出場回数)、カッコ内数字は上記回数中事故のため不出場の回数。
セントラル・リーグパシフィック・リーグ
 氏名背番号球団出場回数 氏名背番号球団出場回数
監督
 原 辰徳88G4・16(1) 渡辺久信99L1・7
コーチ
 真弓明信72T1・10 大石大二郎81Bs1・11(1)
 落合博満66D6・22(1) 梨田昌孝88F5・12(1)
投手(先発)
◎☆大竹 寛17C2◎☆ダルビッシュ有11F3
投手(中継)
山口鉄也47G1攝津 正50H1
投手(抑え)
林 昌勇12S1武田 久21F4
投手(他)
 D.ゴンザレス49G1 岸 孝之11L1
 藤川球児22T5 涌井秀章18L3
 川井雄太17D1 金子千尋19Bs1
 吉見一起19D2(1) B.シコースキー49M1
 C.ルイス11C2(1) 田中将大18E3
 永川勝浩20C3 有銘兼久26E1
 由規11S1 B.ファルケンボーグ25H1
 館山昌平25S2 杉内俊哉47H4
 三浦大輔18YB4 
捕手
石原慶幸31C2◎☆里崎智也22M4
阿部慎之助10G6 高橋信二2F3
 相川亮二2S2 田上秀則70H1
一塁手
栗原健太5C2◎☆小久保裕紀9H12(2)
ブランコ42D1 
二塁手
東出輝裕2C3◎☆井口資仁6M5
荒木雅博2D3 
三塁手
◎☆小笠原道大2G10◎☆中村剛也60L2
遊撃手
◎☆坂本勇人6G2川﨑宗則52H6
 中島裕之3L5
内野手
 井端弘和6D6 金子 誠8F3
 宮本慎也6S5 
外野手
◎☆青木宣親23S5◎☆稲葉篤紀41F5
赤松真人38C1大村直之6Bs5
内川聖一2YB2草野大輔12E1
金本知憲6T11サブロー3M2
A.ラミレス5G5長谷川勇也30H1
  糸井嘉男26F1
DH
 二岡智宏23F6
 松中信彦3H10

コーチとして出場する真弓監督は、昨年までの岡田前監督がAクラスだった余禄で出場するわけですから、実力で出場する選手としては、我が阪神からは藤川投手と金本外野手だけしかいません。昨年のオールスター出場選手は、このブログの2008年7月8日付けのエントリーで紹介していますが、二塁手と三塁手以外はすべて阪神の選手が入っています。今年も選ばれた2人に加えて、岩田投手、久保田投手、新井一塁手、鳥谷遊撃手、赤星外野手の計7人が出場しています。今年は2人です。この7月上旬のペナントレース中盤の時点において、トップを快走していた昨年と横浜を除けば実質的に最下位に近い今年の我が阪神の状態を如実に表しています。
しかし、考えようによっては、このオールスター期間中は多くの阪神選手に時間があり、しかも真弓監督がいないわけですから、阪神の選手にはいい休養と練習が出来るかもしれません。多くの阪神ファンにとって、真弓監督の評価はこのあたりまで下がって来ているように感じられなくもありません。それとも、私だけなんでしょうか?

オールスター明けの後半戦こそ、
がんばれタイガース!

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2009年7月 6日 (月)

景気動向指数に見る景気後退期の終了

本日午後、内閣府から5月の景気動向指数が発表されました。一致指数は86.9となり、前月と比較して0.9ポイント上昇しました。7か月後方移動平均はマイナスを続けているものの、3か月後方移動平均は0.57ポイント上昇し、15か月振りに上昇を記録しました。内閣府は基調判断を「悪化」で据え置きましたが、但し書きを付し、「ただし、CI一致指数の前月差が2か月連続プラスになるなど、下げ止まりの動きも見られる」としました。なお、内閣府が公表している「『CIを用いた景気の基調判断』の基準」によれば、一致CIの「振幅」の目安(標準偏差)は0.86だそうですから、4月の1.2ポイント、5月の0.9ポイントはこれを上回っています。
いつものグラフは下の通りです。どちらも月次系列で、上のパネルはCIで単位は2005年=100、赤い折れ線の一致指数と青の先行指数です。いずれも季節調整値です。下のパネルは久し振りに登場したDI一致系列です。半年ほどゼロが続いていましたが、4月10.0の後、5月は66.7を記録しています。上下とも影を付した部分は景気後退期なんですが、直近は暫定的に今年3月を景気の谷としています。

景気動向指数の推移

昨年2008年の今ごろは、ようやく、2007年10-12月期が景気の山だったと確定した時期なんですが、今年は早くも1-3月期が景気の谷だったと確定したいと思います。昨年の判断を遅らせた大きな阻害要因は鉱工業生産指数の基準年の改定だったような気がします。しかし、このブログでも何度か書きましたが、ミッチェリアンには経済活動の変化の方向は上向きになり景気拡大局面に入ったことはほぼ確実な一方で、シュンペタリアンにはまだ経済活動の水準が低くて不況が続いており、本格的な景気回復が実感されるのは来年になるかもしれません。家計的には労働や雇用の統計が、企業的には設備投資が、それぞれ、改善や回復・拡大を示すようになれば本格的な景気回復と多くの国民が実感することと思います。まだ、1年くらいかかるのかもしれません。

最後に、経済の話題とは関係なく、昨夜は参考にならないと言いつつ、ウィンブルドン男子ファイナルを2時半まで見てしまいました。歴史に残るような熱戦だったのはいいんですが、私はかなり寝不足です。

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2009年7月 5日 (日)

アーチャー The Prodigal Daughter を読む

The Prodigal Daughter

アーチャーの The Prodigal Daughter を読みました。Pan Books のペーパーバックを長崎市立図書館で借りました。上の画像は著者であるアーチャーのホームページから引用しています。日本の邦訳は『ロスノフスキー家の娘』として新潮文庫から出版されています。もちろん、原題は『聖書』の「放蕩息子の帰還」を下敷きにしていることは言うまでもありません。タイトルを上げただけでも分かるように、『ケインとアベル』の続編でアベル・ロスノフスキーの娘フロレンティナを主人公にしています。フロレンティナが幼稚園に上がるあたりから、ケイン家の長男であるリチャードと結婚して、さらに、政界に入って米国大統領に就任するまでの60年近くを扱う長編です。でも、私は英語版のすべてを読んだわけではなく、日本語版の印象的なところを拾い読みしただけだったりします。なお、邦訳が文庫で出版されてから数えても25年以上たっていますので、ネタバレについてはご容赦ください。
大雑把に、いくつかの部分に物語は分かれ、フロレンティナが幼稚園から大学に入るまで、大学時代からリチャードと結婚してビジネスで活躍するころ、政界に入り下院議員から上院議員そして民主党の大統領予備選から副大統領になり、最後は現職大統領の死により大統領に就任する宣誓をし、リチャードの死後フロレンティナを支え続けて来た幼馴染みのエドワード・ウィンチェスターとの結婚を宣言するところで終わります。このうち、私はフロレンティナが大学に入るまでの物語を特に気に入っています。この部分では、ミス・トレッドゴールドというとっても魅力的なフロレンティナの家庭教師 governess が主人公とすら言えます。
ミス・トレッドゴールドは英国人で聖職者を父に持ち、その父から "I was born to be a teacher and the Lord's plan took us all in its compass so perhaps I might teach someone who does have a destiny." と言われたことがあると雇い主のアベルに打ち明けると、アベルは最後の部分を受けて "Let us hope so." と応じます。特に、私が気に入っているのはこの場面で、フロレンティナが幼稚園のころ、大事にしていて FDR と名付けたテディベアのぬいぐるみ、もちろん、当時のローズベルト米国大統領にちなんで名付けられたこのぬいぐるみを、エドワード・ウィンチェスターが手をもぎ取って青いインクをかけた事件の夜、ミス・トレッドゴールドとアベルの間で交わされる会話です。繰返しになりますが、フロレンティナがアベルの仇敵であるウィリアム・ケインの息子であるリチャードと結婚し、リチャードの死後に結婚を宣言するのが、このエドワード・ウィンチェスターです。少し脱線すると、フロレンティナとエドワードの米国大統領夫妻は、同じアーチャーの続編『大統領に知らせますか?』 Shall We Tell the President? にもチラリと登場します。

私自身は何かになるために生れついたとも思いませんし、運命の誰かや何かに出会うとも考えていませんが、逆に、仏教徒的にすべては縁によって決定されるとまでは達観していません。でも、人々は神や仏が予定された範囲にあるという記述は、孫悟空がきんと雲に乗って遠くまで飛んで来たつもりでも、それでも、お釈迦さまの掌の範囲内であった、とされる『西遊記』の記述と通ずるところがあって、非常に興味深いものがあります。

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ウィンブルドン大会女子シングルス決勝を見る

Winbledon Championships Logo

昨夜、NHKの中継でウィンブルドン女子シングルスのファイナルを見ました。結果はみなさんご存じの通り、妹のセリーナが姉のビーナスを7-6、6-2のセットカウント2-0で下して6年ぶり3度目のチャンピオンシップに輝きました。姉のビーナスは1991-93年のグラフ以来となるウィンブルドン3連覇を逃しました。
第1セットはビーナスのダブルフォルトで始まって、同じくダブルフォルトで終わりました。タイブレークに入るまでの試合展開でもセリーナが少し押していたんですが、タイブレークを一気にセレーナがモノにしてから、第2セットはほぼ一方的な内容だったような気がします。ファイナルが始まるまで事前の予想では3連覇をねらう姉のビーナス有利とのもっぱらのウワサで、特に、セリーナのフォアハンドが冴えなくて、セミファイナルの後では "It's always good to win when one of your strokes is on vacation." とまで、どこかで報じられていたんですが、決勝では第1セットのタイブレーク以降はセリーナが圧倒しました。こうなると、ビーナスは足のテーピングも痛々しく、第2セットではいいところがありませんでした。でも、私は見ていませんが、シングルスに続いて行われた女子ダブルスのファイナルでは、ウィリアムス姉妹が2連覇を達成してチャンピオンシップに輝きました。まあ、当然なんでしょう。シングルスのファイナルで対戦した姉妹がペアを組んでるんですから。
テニスやゴルフにコントラクト・ブリッジと、私はいかにも海外勤務でやりそうなスポーツやゲームは一通りやります。長崎でも少し前からテニスを再開したりしています。でも、かなり前から、テニスとゴルフについては男子のプロのプレーを見ても、私のようなシロートには何の参考にもならないと諦め、観戦する方は女子の方にシフトしています。たぶん、今夜の男子シングルスのファイナルを見ても、ロディックのサービスをフェデラーがリターンするところなど、ため息が出るだけのような気がします。しかしながら、昨夜の中継を見ていると女子のテニスもパワープレイになってしまって、これまた、女子のテニスも参考にならなくなりつつあると感じ始めています。

最後に、ウィンブルドンでは日本人選手はすべて姿を消したと考えられていますが、北京パラリンピック金メダルの国枝慎吾さんが車いすの部の男子ダブルスのファイナルに残っています。私は大いに応援しています。

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2009年7月 4日 (土)

第141回芥川賞と直木賞の候補作品が決まる

昨日の新聞に掲載されていたので、一昨日の7月2日の発表だと思うんですが、第141回芥川賞と直木賞の候補作品が決まりました。まず、文藝春秋社が開設している芥川賞のホームページ直木賞のホームページから候補作品一覧を引用すると以下の通りです。

氏名作品
芥川賞
磯崎憲一郎
(いそざきけんいちろう)
「終の住処」 (新潮6月号)
戌井昭人
(いぬいあきと)
「まずいスープ」 (新潮3月号)
シリン・ネザマフィ
(Shirin Nezam Mafi)
「白い紙」 (文學界6月号)
藤野可織
(ふじのかおり)
「いけにえ」 (すばる3月号)
松波太郎
(まつなみたろう)
「よもぎ学園高等学校蹴球部」 (文學界5月号)
本谷有希子
(もとやゆきこ)
「あの子の考えることは変」 (群像6月号)
直木賞
北村 薫
(きたむらかおる)
「鷺と雪 (さぎとゆき)」 (文藝春秋)
西川美和
(にしかわみわ)
「きのうの神さま」 (ポプラ社)
貫井徳郎
(ぬくいとくろう)
「乱反射」 (朝日新聞出版)
葉室 麟
(はむろりん)
「秋月記 (あきづきき)」 (角川書店)
万城目学
(まきめまなぶ)
「プリンセス・トヨトミ」 (文藝春秋)
道尾秀介
(みちおしゅうすけ)
「鬼の跫音 (おにのあしおと)」 (角川書店)

メディアで注目されているのは芥川賞候補のシリン・ネザマフィさんの「白い紙」ではないでしょうか。顔写真入りで報じていた新聞も見かけました。文學界新人賞を授賞された作品ですから期待できると思うんですが、どうも、作者がイラン人女性で漢字圏出身者ですらないという話題性が先行しているような気がしないでもありません。漢字圏ながら日本語を母語としない作家ということで、同じように注目を集めて第139回芥川賞を授賞された楊逸さんの『時が滲む朝』については、私もこのブログで昨年2008年9月1日付けで読書感想文をアップしましたが、「薄いスープ」と酷評した記憶があります。「白い紙」を収録している『文學界』は多くの図書館に置いてあるでしょうから、私も機会があれば読みたいと思いますが、期待と不安がゴッチャになっています。
実は、密かに私は磯崎憲一郎さんの「終の住処」に期待しています。このブログでも磯崎作品は昨年2008年2月1日付けのエントリーで『肝心の子供』を取り上げました。芥川賞の候補作にノミネートされるのは昨年の『眼と太陽』に続いて2回目ですし、どうでもいいことですが、今回のノミネート作者の中で40歳を超えているのは磯崎さんだけだったりします。決してラストチャンスとは思いませんが、控え目に言っても、そろそろ受賞しても不思議ではありません。「終の住処」は「彼も、妻も、結婚したときには三十歳を過ぎていた。」で書き出す小説で、この夫婦の何十年かに渡る結婚生活を夫の視点から振り返り、タイトルから想像される通りの内容らしいです。『文學界』だけでなく、『新潮』も多くの図書館に備えられていると思いますので、コチラも機会があれば読んでみたいと考えています。
最後に、いつも私が参照している大森望さんと豊崎由美さんの文学賞メッタ斬り!のサイトでは、めずらしく大森さんと豊崎さんの意見が一致して、芥川賞と直木賞の本命は、それぞれ、磯崎憲一郎さんの「終の住処」と北村薫さんの『鷺と雪』を推していました。両賞とも7月15日の選考会だそうですから、今から楽しみです。

文学賞とは何の関係もなく、文化の話題の範囲に入れて、来年度前半のNHK朝ドラ「ゲゲゲの女房」のヒロインは松下奈緒さんに決まったと報じられています。もちろん、メディアでもっとも詳しく報じているのは本家のNHKのホームページです。今朝も見ましたが、現在放映中の「つばさ」がややドタバタで私の手に負えなくなっているので、今年度後半の「ウェルかめ」とともに大いに期待しています。

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2009年7月 3日 (金)

雇用統計から米国経済の先行きを考える

昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は季節調整済み系列の前月差で▲46.7万人減と、事前の市場コンセンサスの▲36.5万人減を上回った一方で、失業率はこれも季節調整済みで9.5%と事前予想の9.6%を下回りました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

米労働省が2日発表した6月の雇用統計(季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は前月から46万7000人減った。減少規模は5月(32万2000人、改定値)を上回り、市場予測の平均(36万5000人)よりも悪かった。失業率(軍人を除く)は前月より0.1ポイント悪化し9.5%。米雇用情勢は底入れがまだ見えにくい状況だ。
雇用者数減は18カ月連続で1981年8月~82年12月を抜き戦後最長。今年1月の74万1000人減をピークに減少ペースが鈍っていたが再び減少幅が拡大した。
製造業が13万6000人減と引き続き低調なうえ、底入れの兆しが見え始めていた建設(7万9000人減)、小売り(2万1000人減)も減少幅が再び拡大した。2007年12月からの景気後退局面での雇用減は合計で約650万人になった計算になる。

次に、いつものグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの月次データで、上のパネルが非農業部門雇用者数の前月差、下のパネルは失業率です。影を付けた期間は景気後退期で、日本と違って米国では今もって景気後退が続いていると仮定しています。

米国雇用統計の推移

さらに、これまた、いつものフラッシュを New York TimesLos Angels Times から引用すると以下の通りです。


個別に統計を詳しく見ると、非農業部門雇用者数については、日経新聞にあるようにブルームバーグの集計によれば、事前の予想は▲36.5万人減といわれていて、私なんかは▲30万人近くまで、あるいは、▲20万人台まで悪化幅が縮小するんではないかと考えていたほどなんですが、結局、逆に、▲46.7万人減に悪化幅が拡大しました。ただし、米国の国勢調査の結果を受けた改定もあり、直近の4月が下方修正され5月が上方修正された結果、6月の悪化幅が大きく見えるという点は割り引いて考える必要がありそうに思います。同様に、失業率についても、就業者数が▲37.4万人減少した一方で、労働力人口も▲15.5万人減りましたから、このいわゆる discouraged worker の影響により、事前の予想ほどは失業率が上昇しなかったとも考えられます。ただし、全体として考えれば、メディアの論調のように、雇用環境の悪化が加速していると捉えるべきかどうかは疑問が残り、役人的な細かな表現振りかもしれませんが、せいぜい、雇用の悪化が続いていると言ったところではないかと思います。しかし、今回のこの統計を見て私も今後の米国雇用見通しについては大きく修正し、今年年末から来年年始くらいまで米国雇用者数の減少が続く可能性がある、と見方を変更しました。従って、米国の景気転換点も同じくらいの時期になる可能性が高いと受け止めるべきです。
我が国への影響を考えると、春先から輸出が増加を始めていますが、中国向けの失速とともに米国経済の回復の遅れから、夏場から秋口にかけて弱含みの展開となる可能性が残っていると考えるべきです。日本の景気に関する結論は従来と変わりありませんが、輸出はそれなりに我が国にとって重要な需要項目ですから、すでに景気後退を終えて拡大に転じているとしても本格的な回復にはもう少し時間がかかりそうな気がしないでもありません。

最後に話は大きく変わって、米国の雇用統計とも日本の景気と関係ないんですが、昨日、第141回芥川賞と直木賞の候補作品が発表されました。追って、この週末のエントリーで取り上げたいと思います。

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2009年7月 2日 (木)

新しいペーパー「今次景気後退局面の特徴 - 猛烈なスピードによる調整後の景気展望とともに -」を書き上げる

今週になって、標記の新しいペーパー「今次景気後退局面の特徴 - 猛烈なスピードによる調整後の景気展望とともに -」を書き上げて提出しました。大学のホームページにもアップしてあります。本学紀要の9月号に研究ノートとして掲載予定です。出るのが9月末ですので、その時点で、はなはだ古い記述になっている可能性もありますが、一応、7月1日に利用可能な指標に基づいていると但し書きを付してあります。実は、紀要の9月号には1か月前にこのブログでも取り上げた「九州7県における人的資本の推計」も掲載されるんですが、人的資本の推計を基にした研究論文のペーパーと推計のないエッセイの研究ノートを区別しているつもりです。今回のペーパーについては、今までこのブログなどで書いてきたことを、それなりに、もっともらしく研究ノートして書き直したことばかりですので、新味はありません。なお、英文タイトルは "An Essay on Recent Japanese Recession" ということで、current ではなく recent ですから、景気後退は1-3月期に終わったとの基本的認識の下に書いています。

景気動向指数の推移

まず、今回の景気後退局面において、特に、2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻以降、2008年10-12月期から2009年1-3月期の景気の落ち込みが激しかったのは、基本的に、生産や在庫の調整スピードが猛烈な速さであったことに起因すると私は考えています。上のグラフは今回とバブル崩壊後の景気後退期の景気動向指数をピークを100としてプロットしてあります。両方の景気後退期ともピークのほぼ80%レベルまで落ちましたが、その落ち方の傾きが今回はかなり急であったことが読み取れます。

各国輸入の推移

この猛烈なスピードによる生産と在庫調整のバックグラウンドには、日本の輸出先国における在庫調整も寄与しているんではないかと私は考えています。日本の輸出先における日本からの輸出品の在庫に関する統計は存在しないでしょうから、傍証でしかあり得ないんですが、上のグラフは、世界共通で景気のピークと考えられる2007年10-12月期を100として、日米欧のGDPベースの実質輸入をプロットしたものです。米欧では昨年10-12月期から今年1-3月期にかけて大きく輸入が減少しているのが読み取れます。それに対して、日本は1四半期遅れて今年1-3月期に大きく輸入が減っており、米欧では国内需要の減退に対して輸入をバッファーとして活用する経済構造になっていることが示唆されています。グラフはありませんが、機械受注統計の外需が大きく落ち込んでいることも傍証のひとつかもしれません。
前半で事実関係を確認してから後半に入り、シュンペータ的及びミッチェル的な景気の2分法について触れ、ミッチェル的な景気拡大の初期にシュンペータ的な不況にあれば経済活動の水準が低く、資本係数や労働係数が高い水準にとどまっているため要素需要は増加せず、一定のタイムラグがあることを指摘しています。最後に、今夜のブログでは繰り返しませんが、今後の景気動向は今年の年末から来年年始にかけて2番底を付けに行く W 字型のパスが想定されると締めくくっています。W 字型か L 字型かは潜在成長率と実際の成長率のそれぞれの水準に依存しますが、今回の景気後退を経て設備投資の減少などにより潜在成長率は1%程度の水準に低下したと私は考えている一方で、今年4-6月期から7-9月期はこの水準を上回るものと見込んでいます。というか、少なくとも、L 字型のパスの定義として、この1%の潜在成長率を下回る成長率が続くと考えるのは非現実的だと受け止めています。

W 字型の景気パスをたどって2番底を付けに行くと私が想定している最大の理由は最終需要の動向にあります。今夜は明日の独立記念日の休日のため、米国の雇用統計がいつもの第1金曜日から前倒しで発表されます。輸出の先行きを占う上で米国景気の占める比率は依然として高く、明晩のエントリーで詳しく取り上げたいと思いますが、今から気がかりです。

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2009年7月 1日 (水)

日銀短観から何を読み取るべきか?

本日、日銀から6月調査の短観が発表されました。ヘッドラインとして注目されている大企業製造業の業況判断DIは3月調査の▲58から▲48に上昇するとともに、先行きについても▲30とさらに改善する見通しとなっています。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス48と、過去最悪だった3月の前回調査(マイナス58)から10ポイント上向いた。改善は2006年12月以来、2年半ぶり。3カ月先の見通しでも改善を見込んでおり、輸出などの持ち直しを背景に急速な悪化には歯止めがかかった。ただ設備や雇用の過剰感は払拭(ふっしょく)されておらず、09年度の設備投資計画は前年度比2割強の減少に下方修正された。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。大企業製造業のDIは最悪期は脱したものの、水準的には日本の金融システム不安が強まった1999年3月(マイナス47)と同程度にとどまる。
業種別でみると、製造業の15業種のうち鉄鋼と木材・木製品を除く13業種で、DIが前回から改善した。輸出環境の持ち直しと在庫調整が進んだ結果、自動車はマイナス79に13ポイント、電気機械はマイナス52に17ポイント、それぞれ改善した。

次に、いつもの日銀短観業況判断DIのグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業、下は非製造業です。それぞれ、規模別に3本の折れ線グラフでプロットしてあります。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このところのグラフの例の通り、暫定的に今年1-3月期を景気の谷としています。

日銀短観業況判断DIの推移

ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIについては、私は少なくとも▲40周辺まで、場合によっては▲30台まで大きく回復すると考えていたんですが、回復幅は小さなものにとどまりました。市場の事前コンセンサスも下回りました。ただし、その分という言い方はおかしいかもしれませんが、3か月先の先行き見通しは大きく改善しています。年央の2四半期をならしてみれば、こんなもんということかもしれません。足下の4-6月期GDP成長率は大きくジャンプする一方で、景況感の改善とは少し乖離がある可能性も残されています。何といっても日本では大企業製造業が景気回復をけん引しますから、中堅・中小の製造業と大企業非製造業に景気拡大の余波が及びつつある一方で、中小企業非製造業はまだまだ景気回復から遠い位置にあることが実感されます。

日銀短観設備・雇用判断DIの推移

次に、上のグラフは見ての通りの設備と雇用の判断DIなんですが、業況の回復を受けて、生産要素たる設備と雇用に対する過剰感も反転しつつあります。でも、まだまだ過剰感は根強く、設備投資の回復や雇用の本格的な増加に至るまでしばらくの間ラグがありそうです。しかし、バブル崩壊後の景気後退期から今世紀にかけて観察される通り、設備や雇用に対する過剰感は一気に高まる一方で、景気拡大初期の過剰感の低下はゆっくりとした動きとなるのが特徴だったんですが、上のグラフを見る限り、今回だけは過剰感の低下がかなりのスピードで進む可能性が示唆されていると私は受け止めています。

日銀短観設備投資計画の推移

とうことで、本年度の設備投資計画も下方修正されています。通常、各企業は3月時点で抑えめの設備投資計画を作成した後、6月には上方修正することが多く、日銀短観の統計としてのクセが出るんですが、今年のように6月調査時点で下方修正されるのは極めて異例のことだといえます。鉱工業生産指数の資本財出荷や機械受注統計などを併せて見ても、年内から年度内いっぱいくらいは設備投資が盛り上がりそうな気配すらありません。なお、上のグラフは大企業の全産業ベースの設備投資年度計画です。土地を含みソフトウェアを含んでいませんから、GDPベースの設備投資とは少し概念が異なるので単純な比較は出来ませんが、設備投資は年度を通して軽く2桁マイナスを覚悟する必要があるかもしれません。特に、同じ要素需要といいながら雇用とやや違う点として、設備投資のバックには企業収益があるんですが、今回の短観では企業収益見通しも悪化しています。

ハッキリ言って、今日の短観はやや物足りない印象を受けます。4-6月期GDP成長率が大幅プラスに回帰する実体経済に対して、企業マインドとの間に少し乖離が見られるような気がします。ウェイトを持って合計される付加価値生産額とウェイトなしに単純に合計される企業マインドの差かもしれません。

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