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2009年7月17日 (金)

地域経済について考える

長らくお休みしていましたが、授業で考える経済問題について、今夜は地域経済です。まず、大都市圏、あるいは東京と長崎経済の違いについて、授業の冒頭にいろいろと学生諸君から考えを聞いてみました。私の考えとピッタリ一致するものもありますし、やや違うものもありましたが、私が重要と考える地域経済と都市圏経済との違いは以下の5点です。

  1. 所得
  2. コスト
  3. 居住スペース
  4. 社会資本
  5. 消費生活

まず、所得が違います。一般に都市部における所得の方が高いと考えられています。次に、コストが違います。一般にも使われますが、経済学的な用語で「混雑」という言葉があり、この混雑の程度は都市部で高くコストも高くなります。一般的な物価水準によるコストももちろん含まれます。居住スペースについては土地と人口の相対的な希少性により、地方圏でより広いスペースが享受できます。社会資本はかなり広い概念で、特に生活基盤となる水道、電力、ガス、電話、放送なども含み、これらについては、かなりの程度に全国で最低限の供給がなされていますが、高速道路、新幹線などについては都市部と地方で差があります。最後の消費生活については、アマゾンや楽天などの通販で規格の統一された消費財は大きな差がありませんが、同時消費性のあるサービスでは差が大きいです。もっとも財について考えても、私の家族が住んでいる青山からほど近い表参道ヒルズに比べて、昨年2008年10月13日付けのエントリーで紹介した長崎のココウォークで買えるものはまだ差があります。でも、特にサービスについては、本学学生諸君を目の前にして言いにくかったんですが、一例として大学教育サービスを考えると、一部の例外を除いて大都市圏に質の高い大学教育サービスが集中していて、例えば、全国レベルでは東京や京阪神に、九州レベルでは福岡に、長崎県域では長崎市と佐世保市に集中していることは、明らかで、諸外国はともかく、少なくとも日本におけるこの大都市集中の傾向は衆目の一致するところではないでしょうか。
経済学的にはこれらの要素を勘案して、個々人の効用関数に従って人口移動が起こると考えられます。しかし、経済学的な要因だけでなく、別の人口移動要因もありますし、何よりも個々人のマイクロなレベルで効用関数の大きな差があるでしょうから、当然のことながら、都市部に、あるいは逆に地方圏に、一方的に人口が移動してしまうことはありません。大きな流れとして、地方から都市部に人口が移動する動きは戦後日本で観察されますが、少なくとも、地方の人口がゼロになり都市だけに人口が集中し切ってしまう現象は今のところ観察されません。
4番目の社会資本以外は、特に、コストと居住スペースの関係などは人口移動により、あるいは、別の何らかの経済的な要因で希少性が変化することにより、全国レベルでは一定の均衡に向かう可能性がありますが、その均衡に達するまでの調整に社会的に許容されないような長い期間を要するかもしれませんし、何よりも、4番目の社会資本整備は市場では解決されない公共財的な要素を含んでいますから、中央または地方政府が介入する必要がある分野だと私は考えています。しかし、社会資本を整備するにしても、従来からのハード、あるいはハコモノではなく、ソフト、すなわち、社会福祉や介護などを充実させるべきではないかと私は考えています。その昔は、将来にわたって便益が及ぶとか、あるいは、かなり直接的に地方公共団体の首長を選出する選挙における論功行賞などもあったのかもしれませんが、ハードの整備が中心に進められてきた印象がないとも言えません。これからは、なかなか社会資本とは見なされにくいんですが、もう少し、医療や介護を含むソフトなサービスにも目を向けた広い意味での社会資本の整備に資源を振り向ける時代になりつつあるような気がしないでもありません。ただし、考えるべきポイントは、社会資本整備はストックとして地域生活の便益を増進させるものと受け止めるべきであり、フローとしての所得増進的な意味合いで実施されるべきではない点を確認しておきたいと思います。

今週で授業を終え、月末の試験を経て、8-9月は学生諸君は長い夏休みです。私も東京に帰宅する機会が増えそうな気がしないでもありません。授業シリーズはこれにて終了とします。

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