回復の兆しを見せる雇用とさらに深い底に達しつつある消費者物価
本日、総務省統計局から6月の消費者物価と失業率が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が発表されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。
労働統計
雇用情勢の厳しさが増している。総務省が31日発表した6月の完全失業率(季節調整値)は5.4%と前月から0.2ポイント上昇し、直近で2003年4月に記録した過去最悪の5.5%に迫った。厚生労働省が同日発表した6月の有効求人倍率(同)は0.43倍と2カ月連続で過去最低を更新した。雇用・所得への懸念を背景とした消費低迷なども影響し、6月の消費者物価は前年同月比で過去最大の低下幅を記録。企業の雇用調整はさらに進む可能性があり、日本経済の先行き不透明感を強めている。
失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。完全失業率の上昇は5カ月連続で、5.4%となるのは03年6月以来6年ぶり。男女別にみると、男性は5.7%、女性は5%だった。
消費者物価
総務省が31日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動が大きい生鮮食品を除いたベースで100.3となり、前年同月比で4カ月連続で低下した。低下幅は1.7%で、比較可能な1971年以来で過去最大だった前月(1.1%)を上回った。昨年春から夏にかけガソリン価格が急騰していた反動が大きいが、家電などの価格下落も影響している。
6月のCPIは前月比でも0.2%低下しており、物価の下落傾向は顕著。ガソリンなどエネルギー価格などの影響を除いたベースで前年同月比0.7%低下と、一般的な製品やサービスの価格下落による影響度も高まりつつあり、日本経済がデフレに陥る懸念も強まっている。
生鮮食品を含む総合指数全体は、前年同月比1.8%低下。ガソリン価格は29.5%下落し、指数全体を0.9ポイント押し下げた。灯油も40.7%低下し、0.37ポイントの下押し要因となった。ガソリンと灯油だけで指数の落ち込みの7割を占める。
続いて、まず、労働統計に関して、いつものグラフは以下の通りです。一番上のパネルは季節調整済みの月次の完全失業率、真ん中のパネルは同じく有効求人倍率、一番下のパネルは新規求人数です。失業率が遅行系列、有効求人倍率が一致系列、新規求人倍率が先行系列と見なしているエコノミストが多いように感じます。
ということで、雇用の回復が遅れているのは確かなんですが、6月短月ながら先行系列の新規求人数が反転したように見えなくもありません。もちろん、短月では増加を示す場合もあり、昨年2008年も4月と12月に増加しましたが、上のグラフを見ても分かるように、傾向的には反転に兆しは見られません。今回も短月の不規則変動なのか、それとも、そろそろ雇用が回復に向かう兆しなのか、現時点では判然としませんが、何といっても先行指標ですから、やや期待を持たせる動きであることは確かです。でも、6月は派遣や期間契約社員の一応の期間切れとなる可能性のある月ですので、次の7月の労働統計は注目です。
続いて、消費者物価のいつものグラフは以下の通りです。折れ線は青が生鮮食品を除くいわゆるコア消費者物価、赤がエネルギーと食糧を除く欧米流のいわゆるコアコア消費者物価、グレーが東京都区部のコア消費者物価で、積上げ棒グラフは黄色がエネルギーの寄与度、緑色が食料の寄与度、水色がその他の寄与度となっています。
コアCPIの前年同月比がとうとう▲1.7%の下落となり、過去最大の下げ幅を記録しました。しかし、グラフを見ても分かる通り、コアコアCPIはそこまで下がっておらず、基調としてデフレであることは間違いありませんが、▲1.7%の史上最大の下落は相対価格の変化の結果であるといえます。先に引用した記事にもある通り、「ガソリンと灯油だけで指数の落ち込みの7割を占める」といいうことですから、一般物価水準がそこまで下落しているわけではありません。昨年年央と逆のことが生じているだけです。でももっと言うと、昨年年央と今は基調がデフレであることも共通しています。これも忘れるべきではないポイントです。ですから、この7-8月には前年同月比で▲2.5%くらいに達する可能性があると私は考えています。
そろそろ今年年央から後半にかけて、要素需要の強さと最終需要の盛り上がりを見せ始めるべき時期に差しかかっているような気がします。商品市況に強く影響される物価は年内でプラスに反転する可能性もありますが、雇用が年末から来年年始にかけて改善しなければ、本格的なデフレ・スパイラルに陥る可能性が出始めます。12月いっぱいで雇用期間の切れる非正規労働者も少なくない可能性があり、今年の年末から来年年始は日本経済の崖っぷちかもしれません。
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