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2009年8月17日 (月)

4-6月期GDP速報(1次QE)は予想通りの年率4%成長

本日、内閣府から今年2009年4-6月期のGDP統計が発表されました。エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている重要な指標です。季節調整済み実質GDPの前期比成長率は+0.9%、年率換算で+3.7%とほぼ市場の事前コンセンサスにミートしました。まず、これら統計のヘッドラインなどに関する記事を、いつもの日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

内閣府が17日発表した4-6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%増、年率換算では3.7%増となった。プラス成長は5四半期ぶり。アジア向けの輸出が伸びたほか、追加経済対策による公共投資も成長に寄与した。エコカー減税などの追い風を受け、個人消費も3期ぶりに増えた。ただGDPの水準はピークをつけた昨年1-3月期と比べると7.5%小さく、戦後最悪のマイナス成長から持ち直すにはなお時間がかかる。
4-6月期の成長率は1%程度とされる日本の潜在成長率を大きく上回った。ただ、生活実感に近い名目成長率は0.2%減(年率0.7%減)と、5四半期連続でマイナスに陥っている。
内閣府は過去の成長率も改定した。この結果、戦後最悪の落ち込みは2008年10-12月期の前期比3.5%減(年率13.1%減)となった。2番目が1974年1-3月期(年率13.1%減)で、3番目は前の期である09年1-3月期(同11.7%減)となった。

要するに、財政政策による押上げとアジア向けの輸出増や在庫調整の進展に伴う生産増などがプラス成長の大きな要因です。それから、記事には詳細はありませんが、今回の発表では2000年基準による1980年までの統計の遡及改訂や季節調整モデルの再選定なども反映されていて、やや、いつもより改訂幅が大きいような気がしないでもありません。
次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは名目ですし、GDPデフレータだけは伝統に従って原系列の前年同期比となっています。アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は保証しません。正確な計数は最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2008/
4-6
2008/
7-9
2008/
10-12
2009/
1-3
2009/
4-6
国内総生産GDP▲1.1▲1.0▲3.5▲3.1+0.9
民間消費▲1.0+0.1▲0.7▲1.2+0.8
民間住宅+0.0+3.5+2.6▲5.7▲9.5
民間設備▲1.7▲4.9▲7.1▲8.5▲4.3
民間在庫 *+0.3▲0.2+0.5▲0.2▲0.5
公的需要▲1.4+0.1+1.5+0.6+1.2
外需 *▲0.3▲0.2▲2.9▲0.9+1.6
輸出▲4.1▲0.8▲13.6▲22.5+6.3
輸入▲3.1+0.2+2.5▲14.9▲5.1
国内総所得GDI▲1.8▲2.0▲1.1▲1.3+0.5
名目GDP▲1.4▲2.2▲1.3▲2.6▲0.2
雇用者所得▲0.3▲1.0+0.4▲0.5▲1.7
GDPデフレータ▲1.5▲1.5+0.7+0.9+0.5

また、同じく実質GDPのコンポーネント別の前期比伸び率で寄与度表示したグラフは下の通りです。左軸の単位はパーセントです。

GDP成長率と寄与度の推移

今回の統計から読み取るべきポイントは以下の3点だと私は考えています。第1に、景気がすでに回復過程に入っていることが確認されたことです。事後的に、1-3月期が景気の谷であろうと考える多くのエコノミストの見方をサポートしています。しかし、第2に、さはさりながら本格回復にはほど遠いことです。プラス成長の大きな要因が景気が財政措置と輸出であることに加え、山を付けた2007年10-12月期の実質GDPが2000年基準で564兆円だったのに対して、今日発表された2009年4-6月期は526兆円に過ぎず、40兆円近い差がまだあることを認識する必要があります。第3に、私だけが注目している在庫については、4-6月期には寄与度で▲0.5%となり、5月20日付けのエントリーで1-3月期の1次QEを取り上げた際に、1-3月期で▲0.5%くらいあって然るべきと書いたくらいの水準に達しはしましたが、いまだに在庫がグロスで積み上がっています。2001年景気後退の際には在庫がグロスでマイナスになったんですが、今回の景気後退局面ではプラスを記録し続けました。すでに景気は回復局面に入りましたが、これから先に在庫増加がマイナスになる可能性があるのか、それとも、私のもうひとつの主張である、海外における日本からの輸出品の在庫調整が今回の景気後退を厳しくした要因であるのか、いずれかであろうと私は受け止めています。後者の可能性が強いんではないかと考えないでもありませんが、前者の可能性も排除できません。景気循環を見る場合、在庫が注目されなくなって久しいんですが、私だけはウォッチしたいと考えています。

最後に、この先の景気パスについて考えると、現在進行形の7-9月期も私はプラス成長が続くと考えています。しかし、気がかりなのは財政と個人消費のサステイナビリティです。財政は言うまでもありませんが、個人消費も雇用者所得がマイナスを続ける環境で、どこまでエコカー減税・補助金やグリーン家電のエコポイントなどの政策効果が継続するかは極めて不透明といわざるを得ません。7-9月期を超えて、今年の年末から来年の年始にかけて、私の従来の主張通りに、景気は2番底を付けに行く可能性があります。

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