過去最大の下落を示した消費者物価からGDPギャップを考える
本日、総務省統計局から8月全国と9月東京都区部の消費者物価指数 (CPI) が発表されました。最も注目されている全国ベースの生鮮食品を除く総合、いわゆるコア CPI は前年同月比で▲2.4%と過去最大の下落を示しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
総務省が29日発表した8月の全国消費者物価指数 (CPI、2005年=100) は変動が大きい生鮮食品を除いたベースで100.1となり、前年同月に比べて2.4%低下した。前の年を下回るのは6カ月連続。下落率は比較可能な1971年以降で過去最大となり、4カ月連続で記録を更新した。昨夏に原油高の影響でガソリン価格が急騰したことの反動が大きいが、身の回りのモノの値段も下がっている。
生鮮食品を除いた物価の下落率が2%を超すのは2カ月連続。食料とエネルギー価格の影響を除いた物価指数も前年同月比0.9%低下しており、ガソリンや灯油といった石油関連製品だけでなく、洗濯用洗剤やティッシュペーパーなど幅広い製品の値段が下がっている。
続いて、いつものグラフは以下の通りです。グラフの下の凡例にある通り、すべて前年同月比をベースにし、青の折れ線が全国のコア CPI、赤が同じく全国の食料とエネルギーを除く、いわゆるコアコア CPI、グレーが東京都区部のコア CPI です。棒グラフは全国コア CPI を寄与度で分解したもので、黄色がエネルギー、緑が食料、水色がその他となっています。
コア CPI については、▲2%台半ばの下落ということで、ほぼ市場コンセンサス通りでした。昨年の夏が WTI で見た原油価格のピークでしたし、昨年2008年7-8月が2.4%、9月が2.3%のそれぞれ物価上昇を示しましたから、キッチリ、その分が下落していることになります。事実、エネルギーのコア CPI 下落率への寄与度は私の計算によれば▲1.78%となっています。コア CPI 下落の 2/3 はエネルギーに起因するということになります。じゃあそれでいいのか、原油価格上昇を反映した昨年の単なる反動かといえば、コトはそれほど単純ではありません。すなわち、食料とエネルギーを除いた欧米流のコアコア CPI が下落を続けているからです。上のグラフの赤い折れ線を見ても、原油価格からの波及にやや左右される部分はあるものの、今世紀に入ってから例外的な期間を除いてほぼ一貫してマイナスを続けていることが読み取れます。このバックグラウンドにあるのが需給ギャップです。
上のグラフは内閣府が発表している「今週の指標」No.931 (2009年8月31日) から引用した GDP ギャップの推移です。日付からして8月に公表された1次QEに基づくものだと思いますが、これまた、今世紀に入ってから例外的な時期を除いて多くの期間でマイナスとなっており、特に最近時点で大きな負の GDP ギャップを記録していることが読み取れます。言うまでもなく、これは内需の低迷に起因しています。繰返しになりますが、原油価格の反動だけでなく、コアコア CPI のバックグラウンドに上のグラフに示されているような需給ギャップが存在することを見逃すべきではありません。
もちろん、デフレに対して金融政策が注目されるのは、フリードマン教授が喝破したように、"Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon." との名言を持ち出すまでもありません。私が何人かの同僚エコノミストから受け取っているニューズレターでも、「利上げは2016年以降」とか、「2012年中を通じて政策金利は0.1%に据え置かれる」といったものを見受けました。9月8日に発表された「ESP フォーキャスト調査」でも、今年12月ころに利下げを見込んでいるエコノミストさえおり、この先1年間の利上げはないとの意見が圧倒的でした。
この先の物価を見通す上で、来年4月からガソリンの暫定税率が廃止されたり、高速道路が無料化されたりすると、政権交代に伴う経済政策からさらに CPI へのマイナスのインパクトが与えられる可能性があります。その分を内需の拡大により需給ギャップを縮小させられるかどうかが大きなポイントとなります。
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