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2009年9月 6日 (日)

柳広司『ダブル・ジョーカー』(角川書店) を読む

柳広司『ダブル・ジョーカー』(角川書店)

先週から読書感想文が多いんですが、8月28日に発売された柳広司さんの『ダブル・ジョーカー』(角川書店)を読みました。昨年2008年10月22日付けで読書感想文をアップした同じ作者の『ジョーカー・ゲーム』(角川書店) の続編です。ですから、スパイ小説です。なお、前作『ジョーカー・ゲーム』は昨年度の吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞しています。
柳さんは『トーキョー・プリズン』が日本推理作家協会賞の最終候補作として残ったように、基本的には推理小説作家ですから、このスパイ小説も謎解きを中心に据えたミステリのように仕上がっています。『ジョーカー・ゲーム』と同じように、昭和初期の日本陸軍でスパイ機関である通称「D機関」を創設した、魔王と呼ばれる結城中佐とD機関に属するスパイが主人公になっています。ただし、前作が昭和10年代前半を時代背景にしていたのに対して、本作は昭和10年代半ばに設定されており、最終章で戦争が始まってスパイ活動は終了します。なお、単行本で出版されていますが、「野性時代」に掲載された短編を中心に、最終章1編だけ書下ろしを加え、各々が完結した5章構成になっていて、大雑把に250ページの単行本の50ページずつを充てています。以下は各章のタイトルです。なお、今夜のエントリーは対象がほぼミステリですので、出来るだけネタバレはないように配慮しているつもりですが、この先を読み進む場合は自己責任でお願いします。

  1. ダブル・ジョーカー
  2. 蝿の王
  3. 仏印作戦
  4. ブラックバード

本と同じ題の第1章「ダブル・ジョーカー」では、前作でもハイライトされていた「死ぬな、殺すな、とわられるな」をモットーにする「D機関」に対抗すべく組織された「躊躇せず殺せ、潔く死ね」を掲げる「風機関」と「D機関」が陸軍中枢から同じ課題を与えられ、「風機関」が見事に「D機関」に裏をかかれます。第2章「蠅の王」では、「わらわせ隊」なるお笑いの前線慰問団にひそむスパイ狩りの要員の特定に悩む、前線で働くロシアのスパイである医師を描いています。もちろん、スパイ狩りの要員は「D機関」から派遣されています。第3章「仏印作戦」では暗号電信要員として軍属に雇われベトナムに赴任した青年が巻き込まれた詐欺事件をスパイが見事解決します。第4章「柩」は、「D機関」の創設者結城の若きころのドイツでの活躍を描きます。このころは結城は魔王ではなく魔術師と呼ばれていました。最後の第5章「ブラックバード」だけが書下ろしで、「D機関」から米国西海岸のロサンジェルスに送り込まれた青年が、外務省書記官として東海岸を担当する腹違いの兄と思しき青年とともに米国に関する情報収集に当たりますが、真珠湾攻撃により戦争が始まってしまい、スパイ活動が幕を閉じます。東海岸を担当する外務省書記官がほぼ公開資料だけに基づいて、米国の総合国力を日本の20倍と見積もっているところが印象に残りました。

昨日、丸の内オアゾにある丸善で購入して3時間ほどで一気に読み切り、前作『ジョーカー・ゲーム』を大いに気に入ったおにいちゃんに昨夜の時点で渡すと、おにいちゃんも今日の午前中に一気に読み切ってしまいました。角川書店の通販サイトでは売切れが続いています。面白いです。5ツ星のオススメです。

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