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2009年10月31日 (土)

下の子が青山ハロウィンイベントに出かける

青山ハロウィンイベントに出かける下の子

昨夕、青山ハロウィンイベントに我が家の下の子が参加しました。いつもの通り、青山通りのエイベックス・ビルの前の広場が集合場所で、このイベントに参加しているお店の地図をもらい、仮装した子供達が "Trick or Treat!" と叫びながらお菓子をもらい受けます。
例年、10月の最終金曜日の夕刻に開催される恒例のイベントなんですが、私が最初に下の子をこのイベントに連れて行ったのをブログに書いたのが2006年10月27日付けのエントリーで、大量のお菓子をもらって、帰宅しておにいちゃんに見せたところ、「すごい!」と感心され2人でお菓子を分け合っていた記憶があります。でも、その翌年、2007年10月26日付けのエントリーで取り上げた記憶がありますが、雨の中を歩き回ったにもかかわらず、お菓子は格段に減っていたと記憶しています。ちょうど我が国の景気循環がピークを迎えて景気後退期に入る局面だったわけです。昨年からは私が長崎に単身赴任してしまい、よく分かりません。

昨年2008年10月26日付けのエントリーでも取り上げましたが、長崎にはハロウィンのイベントはないと言えます。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を世界遺産に登録しようとの運動がありますが、まさに、宗教は違うものの「仏作って魂入れず」で、ハコモノの建築物に頼る長崎の姿が浮かび上がります。

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2009年10月30日 (金)

デフレが続く消費者物価と反転し始めた労働統計と日銀の「展望リポート」

本日、総務省統計局から9月の消費者物価指数 (CPI)失業率などの労働力調査が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業紹介統計が、それぞれ発表されました。まず、それぞれの統計のヘッドラインに関して日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価
総務省が30日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで100.2になり、前年同月比で2.3%低下した。7カ月連続で前年同月を下回ったが、昨年夏の原油高の影響が弱まり、低下幅はやや縮小した。ただ食料品や衣料品の値下げ競争の影響が出るなど、物価下落傾向は収まっていない。
CPIの低下幅が縮んだのは、前年同月比で低下に転じた3月以降で初めて。昨年夏の原油高の影響が9月以降弱まってきたためだ。ただ食料とエネルギー価格の影響を除いた指数(欧米型コアCPI)は1.0%低下しており、下落幅は前月よりも拡大した。物価下落の主因がガソリンや灯油といった石油関連製品から、身の回りの商品に移ってきた格好だ。
生鮮食品も含む総合指数は2.2%低下した。このうち食料は0.5%の低下で、指数を0.13ポイント押し下げた。食用油や納豆の価格が下がった。被服・履物もズボンや上着類の値下がりで1.2%下がった。低価格ジーンズ人気で、店頭での価格競争が激しくなっていることが影響した。
労働統計
総務省が30日発表した9月の完全失業率(季節調整値)は5.3%と、前月比で0.2ポイント改善した。厚生労働省が同日発表した9月の有効求人倍率(同)も前月比0.01ポイント高い0.43倍に上昇した。失業率の改善は2カ月連続で、生産の持ち直しで製造業就業者数の減少幅が8カ月ぶりに縮小したことが影響した。ただ水準自体は依然悪く、年末に向けて厳しい雇用情勢が続くとの見方が引き続き優勢だ。
完全失業率は15歳以上の働く意欲がある人のうち、職に就いていない人の割合を示す。失業率が2カ月連続で改善したのは2008年10月以来になる。男女別にみると、男性が5.6%、女性は4.9%だった。
9月の就業者数は前年同月比で98万人減の6295万人。一方、完全失業者数は92万人増の363万人と11カ月連続で増えた。業種別では、製造業が81万人減り、減少幅が3カ月ぶりに100万人を割った。自動車などの一部業種で生産が持ち直していることを反映した。政府が雇用創出を期待する医療・福祉も37万人増え、5カ月連続でプラスを維持した。

まず、消費者物価について、いつものグラフは以下の通りです。青い折れ線が全国のコア CPI の前年同月比、赤が全国のコアコア CPI、グレーが東京都区部のコア CPI です。棒グラフは全国のコア CPI に対する寄与度となっています。ただし、エネルギーの寄与度は統計が公表されるようになったのが2005年ですから、前年同月比の寄与度は2006年からしか計算できません。いずれも季節調整をほどこしていない原系列の前年同月比で、左軸の単位はパーセントです。

消費者物価の推移

消費者物価については、デフレの最悪期は脱しつつあるように見受けられます。昨年の物価上昇のピークが8月でしたから、今年のデフレのピークも8月でした。ただし、上のグラフに見て取れるように、青い折れ線のコア CPI は9月単月ながら反転しましたが、赤のコアコア CPI は以前として下落幅を拡大しています。コアコア CPI は需給を反映すると考えられており、我が国マクロ経済の需給バランスがまだ回復していないことの表れと私は受け止めています。昨夜も取り上げた冬季ボーナスも含めて、賃金の減少ないし伸悩みとデフレによる買控えにより、消費の本格的な回復はまだ望めません。消費と物価のスパイラルに加え、ここ1年くらいの円高の輸入物価への影響も考え合わせると、さらに物価が安定を取り戻す、少なくとも日銀が「物価安定の理解」として示したゼロに戻るのさえ、かなりの時間がかかることを覚悟すべきです。デフレはまだまだ続くのかもしれません。

労働統計の推移

次に、労働統計は上のグラフに見る通り、各指標が下げ止まるとともに反転が始まった可能性があります。いずれも季節調整済みの系列で見て、失業率、有効求人倍率、新規求人数とも水準はともかく方向としては改善の緒に就いた可能性があります。もちろん、バックグラウンドは昨夜取り上げた生産の回復です。相変わらず、日本では企業から家計へと景気は流れているようです。

産業別雇用者数の増減

非農業部門の雇用者数について、産業別に増減を見たのが上のグラフです。久し振りに書いた気がします。季節調整済みの系列は発表されていませんので、原系列の前年同月差です。折れ線グラフが非農業部門の雇用者増減、棒グラフはその内訳です。左軸の単位は万人ですから、今年5-6月ころは前年同月と比較して100万人単位で雇用が失われていたわけです。グラフから明らかなように、建設業と製造業が雇用を減少させています。逆に、コンスタントに雇用を増加させているのは医療・福祉ということになります。今年に入ってから4月までは、建設業で減少して情報通信業で増加していましたから、私は産業別には当然の雇用者の流れだと受け止めていましたが、5月以降では情報情報通信業で雇用が減少しているようです。

日銀「展望リポート」経済見通し

日本経済に関する最後の話題は日銀の「展望リポート」です。上の表は日銀審議委員の大勢見通しを取りまとめたものです。GDP成長率は来年度にはプラスに復帰するものの、物価については企業レベルでも消費者物価でもマイナスを続けると予想されています。じゃあ、「何とかしてくれ」と私なんかは考えるんですが、そうはならないんでしょうか。

米国GDP成長率の推移

ホントの最後の最後に、昨日発表された今年7-9月期の米国GDP成長率の推移が上のグラフに取りまとめてあります。4四半期続いたマイナス成長から7-9月期は季節調整済みの前期比年率で+3.5%を記録し、米国も景気後退から景気回復局面に脱しました。中身をもう少し詳しく見ると、構築物がまだマイナスのままなので設備投資は5四半期連続でマイナスを続けていますが、機械・ソフトウェアはプラスに転じましたし、輸出入がトータルのGDPと同じように4四半期連続のマイナスから脱してプラスに転じたのは、貿易を通じて世界経済の拡大に寄与するものと期待しています。

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2009年10月29日 (木)

いくつかの経済指標と冬季ボーナスを考える

今夜の本題に入る前に、昨夜のエントリーなんですが、「リスク」を前面に打ち出しましたが、やっぱり、「リスク」よりも「裁量」とか「責任」の用語の方がよかったのかもしれないと考えを改め始めています。「リスク」そのままでもいい部分が何か所もありますが、私のココロは「裁量」だと受け止めて下さるよう訂正したいと思います。

さて、本題に入って、本日、経済産業省から9月の鉱工業生産指数が発表されました。市場の事前コンセンサスは季節調整済みの前月比で+1.0%の上昇だったんですが、実際には+1.4%となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期の鉱工業生産指数は2四半期連続で高い伸び率となった。ただ単月ベースでみると9月の上昇率は1.4%にとどまり、持ち直しの勢いは鈍化してきた。先行きも国内外の景気刺激効果が徐々に薄れるとみられ、生産回復の持続力が問われそうだ。
9月の生産指数は85.1。昨年2月のピーク時と比べると8割にも満たず、水準は依然として低い。エコカー減税などの政策効果で自動車や電子部品が伸びているが、足元並みの月1-2%程度の伸び率が続いても、ピーク時に戻るまで1-2年かかる計算だ。
新政権は公共投資の見直しなどを急ピッチで進めており、景気対策効果がどこまで続くか不透明。雇用不安などで国内の個人消費も弱含んでおり、民間需要の自律回復には時間がかかりそうだ。政府は「内需主導の経済成長」を掲げるが、当面は中国など新興国向けの輸出が頼みの綱となりそうだ。

いつものグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列ですが、上のパネルは赤い折れ線が鉱工業生産指数で、影を付けた部分は景気後退期です。暫定的に今年3月を景気の谷としています。下のパネルは出荷と在庫の四半期データの前年同期比をプロットした在庫循環図です。緑色の上向き矢印の1999年1-3月期からプロットし始めて、下向き矢印の今年7-9月期のところまで達しました。45度線を超えるのももうすぐです。

鉱工業生産指数の推移

鉱工業生産指数は4-5月の5%台後半の伸びから、6-7月の2%台前半の伸びへ、そして、8-9月の1%台の伸びへと、エコカーやグリーン家電などに対する政策効果の剥落もあり、着実に鈍化して来ていることは確かですが、年末にかけてもっと鈍化すると私は予想していただけに、かなり底堅いと評価しています。特に先行きについては、製造工業生産予測調査では10月が前月比+3.1%増、11月も+1.9%と9か月連続の増産を見込んでいて、特に、10月については先月の時点で+2.2%でしたので上方修正されています。今後は輸出の動向、特に新興国向けの輸出とその背景となる為替に注目したいと私は考えています。
また、四半期の計数が出ましたので計算してみると、7-9月期の生産の伸びは季節調整済みの系列で前期比+7.2%となりました。GDPのシェアは2割そこそこですが、それでも鉱工業生産だけでGDP成長率を+1.5%ほど押し上げる効果を持ちます。先週10月22日に貿易統計が発表された日のエントリーにおいて、外需だけで7-9月期GDP成長率に対して+0.2-0.3%くらいの寄与があると書きましたが、設備投資などの減少を考慮しても、4-6月期に続いて7-9月期もかなりの大きさのプラス成長が見込めると私は予想しています。内閣府のサイトによれば、7-9月期のGDP統計1次QEは11月16日の公表予定ですから、近づいた時点でシンクタンクなどの予想を取り上げたいと考えています。

企業物価上昇率の推移

続いて、日銀から9月の企業向けサービス価格指数が発表されました。すでに10月14日に発表されている国内・輸出・輸入の企業物価指数とともにグラフを書いたのが以下の通りです。その昔に卸売物価と呼ばれていた企業物価もほぼデフレの最悪期は脱しつつあるように見受けられます。

業種2008年冬2009年冬
製造業919,461円
(+0.30%)
737,063円
(▲18.53%)
非製造業822,473円
(▲2.40%)
793,982円
(▲2.80%)
総平均904,885円
(▲0.03%)
747,282円
(▲15.91%)

さらに、昨日、日本経団連から東証一部上場と従業員500人以上を原則とする主要21業種・大手253社を対象とした年末賞与・一時金の妥結状況の第1次集計が発表されています。回答99社の加重平均で上の表の通りです。日経新聞朝日新聞などのメディア各社の記事によれば過去最大の減少だそうです。もちろん、先行きの消費に大いなる影響を及ぼすことは確実です。

最後に、経済の話題とは何の関係もなく、本日午後4時から、プロ野球のドラフト会議が開催されました。さすがにあれだけの球団が競合したんですから、我が阪神は菊池雄星投手を逃してしまいました。城島捕手の獲得とともに、日を改めて週末にでも取り上げたいと思います。

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2009年10月28日 (水)

量ではなくリスクの観点から「大きな政府」と「小さな政府」を考える

昨年9月22日付けのエントリーで、「麻生総理大臣の財政政策上のインプリケーションは何か?」と出して、この時期に政府の財政政策を考えましたが、今夜も新政権の財政政策を社会保障政策ととともに、「大きな政府」と「小さな政府」をリスクの観点から少し私なりに解釈してみたいと思います。

まず、すでに死語となった感のある「大きな政府」と「小さな政府」について考えます。よく知られた通り、死語にしたのは今年1月の米国オバマ大統領の就任演説ですが、この概念は量的な観点からはともかく、リスクの観点からはまだ有効ではないかと私は考えています。頭の体操ですから、極端な2ケースを私なりに考えると、「大きな政府」の社会保障では全国民一律の所得を保証もしくは強制します。政府が国民の意思に基づいて一定の所得、世帯当たりか個人当たりかは問わず、また、地域別や年齢別に細かく規定するかどうかも考慮の範囲外とし、何らかの一定の所得を定め、その所得を超える部分はすべて徴税し、逆に、その所得に満たない場合は負の所得税として給付されるようなケースがもっとも極端な「大きな政府」と言えます。医療費・介護費や教育費などの無料化が加わることも考えられます。この極端な「大きな政府」の場合、個人や家計では貯蓄はゼロとなります。リタイア後はすべて年金で生活することになるのは言うまでもありません。国民の自己責任はいっさい問われず、「大きな政府」ではすべての国民生活上のリスクは政府の責任となります。もちろん、リスクを取る観点から政府の規模は大きくなります。財政収支が黒字となるか赤字となるかは国民の意思に基づいて定める所得額次第で決まります。もちろん、逆に、財政収支から逆算することも可能です。反対に、極端な「小さな政府」を考えると、治安維持や外交などの極めて純粋な公共財を供給するための何らかの課税を除き、医療費・介護費や年金などはすべて国民の自己責任となり、政府は一切タッチしません。年金はありませんから、国民は就労期間中に貯蓄して老後に備え、老後は貯蓄を取り崩して生活することになります。もちろん、民間の保険会社の提供する私的年金に加入することはあり得ます。現在でも公的な健康保険や年金の他に、付加的に生命保険や入院特約付きのなど保険があります。「小さな政府」ではすべての国民生活上のリスクは国民の自己責任であり、国家は生活上のリスクの観点からは国民を放置します。政府の規模は当然に小さくなります。
繰返しになりますが、以上の「大きな政府」と「小さな政府」はどちらも私がリスクの観点から仕分けしたものであるとともに極めて極端なケースであり、現実的には、世界各国はこの両者の間に位置するいずれかの制度を採用していると言えます。ということで、我が国の現政権の社会保障政策や財政政策を考えると、一見して、10月17日付けのエントリーで取り上げた概算要求などからして、量的には「大きな政府」を目指しているように見えなくもありませんが、かなりの程度に国民の選択に任せている部分もあり、リスクの観点からは「小さな政府」の傾向も読み取れます。例えば、農家への個別所得保障であったり、子ども手当などもそうです。以前、私が世間で評判の悪かった麻生政権下での定額給付金を擁護したひとつのポイントは、経済効果の大きい公共事業を政府が選択するのではなく、使途を国民の判断に委ねた点でした。この点は農家の個別所得保障や子ども手当も同様で、例えば、受け取った親がギャンブルに使ってしまって子供に役立たない使われ方をする危惧などは大いにありますが、それも含めた判断を国民に任せてリスクとともに財政資金を国民に分配するというのは、十分に筋の通った考え方と評価できます。年金についても同様の考え方が成り立ちます。ですから、現政権の社会保障政策や財政政策を量的な観点だけで「大きな政府」と判断することは私には抵抗があります。もっとも、量的な観点を無視するつもりはなく、今日の読売新聞の記事にあるように、量的に拡大した政府財政が金融政策の独立性を損なう事態もあり得ますが、今夜のエントリーでは割愛します。

財政資金が政策手段としてかなりの程度に希少性の高いリソースとなっている現在では、私は以前から「観光立国」など、特定の産業分野や特定の地域などに対して政府の判断で支援するのは極めて疑問の大きい財政資金の使い方だと考えて来ましたが、量的に大量の財政資金を必要とするという批判はあるものの、農家も含めた家計に財政資金を回す現政権の財政資金の使い方は、国民に使途を委ねるという観点から決して悪くないと受け止めています。量的な大きさとともに、より熟慮されるべきは、投票率の高さなどに惑わされることなく、子供を持つ家族に対してより厚く配分されることが必要だということです。

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2009年10月27日 (火)

東野圭吾『新参者』(講談社) を読む

東野圭吾『新参者』(講談社)東野圭吾さんの『新参者』(講談社)を読みました。東野圭吾さんの推理小説では私が以前に読んだ『容疑者 X の献身』に出て来る「ガリレオ」こと湯川学とこの『新参者』の加賀恭一郎のキャラクターが有名なんでしょうが、今回読んだのは後者のシリーズの最新作です。前者のシリーズの主人公は帝都大学の物理学准教授である天才物理学者の湯川学、後者は言うまでもなく、警視庁練馬署などに勤務している刑事の加賀恭一郎です。『新参者』から日本橋署に転勤になったという設定です。加賀恭一郎は東野作品初登場の『卒業』ではまだ大学生で、卒業後に教師になったものの、ある生徒間の出来事から「教師としては失格」と判断して教師を辞め、父親と同じ警察官となり、捜査一課から練馬署の捜査一係の巡査部長に勤務し、その後、久松署に転勤、現在は日本橋署で警部補として勤務していることになっています。このあたりは Wikipedia の「加賀恭一郎シリーズ」から引用しています。というのは、私は東野作品の加賀恭一郎シリーズを読むのは初めてだからです。目次は以下の通りです。左上の表紙の画像とともに、講談社BOOK倶楽部のサイトから引用しています。なお、推理小説ですから気をつけてはいますが、幾分なりともネタバレが含まれる可能性がありますので、読み進む場合はご注意ください。

東野圭吾『新参者』(講談社) 目次

事件は日本橋の一角で発見された1人暮らしの40代半ばの女性の絞殺死体から始まります。日本橋署に着任したばかりの加賀恭一郎は本庁の刑事とともにアチコチと聞込みに回ります。軽く想像される通り、上の各章の最初の方に出て来る人物は真犯人ではありません。しかし、いろいろと不可思議なエピソードを通じて、日本橋界隈の人情話が展開されます。私も独身のころに浅草近くの下町にアパートを借りていましたので、この辺りは懐かしく感じないでもありません。特に、第1章から4章までのエピソードは秀逸な出来栄えだと思います。もちろん、最後には真犯人が捕らえられ、これまた、殺人事件と微妙にからんで親子関係にまつわる秀逸な結末を迎えます。他の加賀恭一郎シリーズをまったく読んでいないので何とも言えませんが、さすがに日本推理作家協会の理事長である東野圭吾さんの最新作は素晴らしい作品に仕上がっています。

日曜日のローカル紙長崎新聞の読書欄では、長崎駅前のメトロ書店で『新参者』がベストセラーのトップでした。4年近く前の2006年1月31日付けのエントリーにおいて、直木賞を授賞された『容疑者 X の献身』に5ツ星を付けたような気がしますが、この『新参者』もやっぱり5ツ星です。多くの方が手に取って読むことを願っています。

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2009年10月26日 (月)

Windows 7 の評価やいかに?

この週末はいろいろと忙しく、金曜日は東京で非常勤の研究員をしている研究所に出勤するとともに、土曜日にはおにいちゃんの通う中学校に行って体育祭を見学し、昨日の日曜日は別の公務があって疲れ切ったため、昨夜はブログも書かずに早々に寝てしまいました。休養のため今日は1日のんびりしていました。

Windows 7 logos

ということで、東京に帰った折に新宿の家電量販店に立ち寄って、先週発売が開始された Windows 7 を少し見て来ました。上の画像にリンクが張ってある Microsoft Windows 7 のホームページのうたい文句は「Windows 7 があなたと PC に、シンプルな毎日をご提案します」というもので、起動の早さやレスポンスのよさなどのパソコン動作の軽快さをシンプルと見立てているようです。メディア各社の報道を見ても、この点に着目した記事が多いように見受けられます。例えば、先にも上げた起動のスピードアップ、ファイルへのアクセスや検索のすばやさ、USBメディアへの高速な接続などが目につきます。
私が立ち寄った家電量販店の店員さんのセールストークで目立ったのは、先の起動やアクセスなどのすばやさの他に、64ビットのフルサポートが上げられます。これは私も楽しみにしています。Microsoft 自身やサードパーティでどのようなソフトウェアが開発されるか大いに期待しています。特に注目されるのはオフィス・スイートがどのようになるかで、Microsoft でいえば、現行の Office 2007 がそのままインストールされていましたから、新しいバージョンの Office が64ビットになるのかどうか、また、これと Windows 7 を組み合わせるとどうなのかに着目したいと思います。それから、「ホームグループ」なるものが出来て、自宅に複数のパソコンがある場合のネットワーク構築が容易になり、ドライブやプリンタの共有が簡単になったとも聞きましたが、これなんかは我が家では早くから実現しており、ハッキリ言って、Windows 95 のころから実現されていたものを扱いやすくしただけですから、中級者以上では特に必要ないものかもしれません。また、デスクトップの見た目は我が家にある Windows Vista と特に変わった様子も見受けられません。もちろん、店員さんが触れなかったり私が聴き逃した部分もあり得ますし、何と言っても店頭で少し操作しただけなんですが、大雑把な印象は以上の通りです。

32ビット対応になった Windows 95 から数えて7代目の新しい Windows ですが、我が家で導入するのは今しばらく様子を見たいと考えています。

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2009年10月24日 (土)

おにいちゃんの中学校の体育祭に行く

今日の東京は曇天でかなり肌寒く、夕方から雨が降り出したんですが、我が家のおにいちゃんの通う中学校の体育祭に行って来ました。元気いっぱいでした。でも、パイプいすに長時間座って、私はやや腰痛が心配になってしまいました。
小学校の運動会から中学校に上がって体育祭と名称を変え、しかも、男子校ですから当然ながら男の子ばっかりで、かなり質実剛健な体育祭に見受けました。体育祭だけでなく、小学校から中学校に上がって、詰襟の制服を着て地下鉄で通学し、教科ごとに教える先生も違えば、英語が本格的に始まるとともに算数も数学と呼ばれるようになり、美術も油彩を描くようになったり、さらに我が家の場合、私が単身赴任で長崎に来て子供のそばから離れてしまい、大きな変化があったんですが、やっぱり、子は親の知らないところで育っていることを実感しました。有り難い限りです。
下の写真はおにいちゃんのクラスが1年生の競技で綱引きに奮闘しているところです。一番後ろは担任の先生だったりするんでしょうか?

中学校の体育祭にて綱引き

この綱引きに限らず、リレーなどでも教員チームが参加して、大きく遅れてドン尻を走ったりしていました。大学には学園祭はあっても体育祭がないのを大学教員として有り難く感じています。

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2009年10月23日 (金)

社会保障給付費に見る手厚い高齢者への給付

昨日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所から2007年度の年金、医療、介護などの社会保障給付費が発表されました。2007年度の社会保障給付費は前年度伸び率+2.6%増と2006年度の+1.5%より伸びを高め、総額は91兆4305億円と過去最高となり、人口は減少しているにもかかわらず高齢化などにより毎年過去最高を更新し続けています。PDF ファイルの詳細なリポートも公表されています。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

国立社会保障・人口問題研究所は22日、医療や介護、年金などにかかった社会保障給付費の総額が2007年度に91兆4305億円と過去最高になったと発表した。高齢化が主な原因で前年度比の伸び率も2.6%と高水準。民主党は子ども手当の創設や高齢者の医療費負担の軽減など手厚い社会保障政策を打ち出しており、給付費がさらに膨らむのが確実な情勢だ。
社会保障給付費は年金や医療、介護、福祉などのために税金や保険料から支払った費用の総額で、病院での窓口負担や介護施設の利用料などの利用者負担は含まない。同研究所は「07年度は給付費に大きな影響を与える制度改正がなく、少子高齢化で膨らんだ面が大きい」と説明している。
07年度の給付費が国民所得(374兆円)に占める割合も24.4%と前年度から0.54ポイント上昇し、過去最高となった。一方で、国民所得の伸び率は0.3%にとどまった。所得の伸びが低迷する中で、給付費が着実に膨らむ構図が鮮明になった。高齢者関係の給付費は63兆5654億円と全体の69.5%を占めた。

最後のセンテンスだけフォントを大きくしてありますが、要するに、日本では約7割が高齢者関係の給付で占められています。これは日本独自の分類ですので、各国比較が可能な OECD 基準の社会支出の国際比較から、参考図2 政策分野別社会支出の構成割合の国際比較 (2005年) について、「高齢」分類と「家族」分類だけに着目して、残りを「その他」に分類し直したグラフが以下の通りです。

政策分野別社会支出の構成割合の国際比較

実は、上のグラフは昨年2008年11月19日付けのエントリーとほぼ同じなんですが、米国を別にすれば、日本が圧倒的に高齢者に手厚く、家族に冷たい社会保障給付の体系になっています。もちろん、高齢化が他の欧米各国より進展していますから、止むを得ない部分もあるんですが、現在の高齢者に厚く家族に薄い社会保障給付が少子高齢化と悪循環を生じていることも事実です。ですから、例えば、社会保障給付の5%、5兆円くらいを「高齢」から「家族」に振り向けたとしても、ドイツ並みの「高齢」構成比になるだけですから、そんなに大きなムリではないような気もします。引用した記事にもある通り、政権交代に伴って社会保障給付が増加する傾向にあることは直感的に理解できますが、年金や介護などの高齢者向けよりも、子ども手当てなどのように家族を支援する部分のいっそうの増加を望みたいと思います。

GPCI-2009 分野別総合ランキング

社会保障給付は昨年と統計も中身も大きな変化ありませんので、誠についでながら、森記念財団から発表された「世界の都市総合力ランキング」2009年版も取り上げておきたいと思います。上のグラフはリポートの p.13 から「図2-1 分野別総合ランキング結果」を引用しています。東京はニューヨーク、ロンドン、パリに続いて第4位につけています。

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2009年10月22日 (木)

為替に起因する輸出の増勢鈍化から2番底に向かうのか?

本日、財務省から9月の貿易統計が発表されました。輸出額が前年同月に比べて▲30.7%減の5兆1047億円となった一方で、輸入額は同じく▲36.9%減の4兆5841億円となり、差引きの貿易収支は5206億円の黒字を記録しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

財務省が22日発表した9月の貿易統計速報(通関ベース)は、輸出額が前年同月に比べて30.7%減の5兆1047億円になった。ロシア向け自動車や韓国向け鉄鋼などが前年比で落ち込み、12カ月連続で前の年を下回った。ただ、下落率が8月に比べて5.3ポイント縮小するなど、足元では改善が進んでいる。景気対策などで高成長が続く中国を中心に、アジア向けが輸出全体の回復をけん引している。
輸入額は前年同月比36.9%減の4兆5841億円。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は5206億円の黒字となり、前年同月の6倍近くに拡大した。単月では昨秋のリーマン・ショック後で最大の黒字となった。
9月の輸出額は対欧米、アジアともに減少ピッチが緩やかになった。米国向けは前年同月比34.1%減と、前月に比べ0.3ポイント改善。欧州連合(EU)向けは前年同月比38.6%減と、減少率が7.3ポイント縮まった。
アジア向け輸出は前年同月比22.2%減と、8月に比べて8.4ポイント改善した。うち中国向けは13.8%減と、8月の減少率(27.6%)の半分に縮まっている。

いつものグラフは以下の通りです。上の2つのパネルは輸出入と貿易収支、いずれも水色の折れ線が輸出額、赤が輸入額、緑色の棒グラフが貿易収支で、左軸の単位は兆円です。どちらも月次計数ですが、一番上のパネルは原系列、真ん中のパネルは季節調整済み系列です。一番下のパネルは季節調整前の原系列の輸出額の前年同月比を数量と価格で寄与度分解したものです。

貿易統計の推移

まず、輸出を上の真ん中のパネルの季節調整済み系列で見ると、明らかに増勢に鈍化が見られます。9月単月で考えると米国のエコカー補助が終了した影響などもありそうですが、新興国はまだしも先進国経済の回復が一段落していることに加え、私は為替の影響が大きいと考えています。昨年9月のリーマン・ショックの後、米国の連邦準備制度理事会 (FED) や欧州中央銀行 (ECB) やイングランド銀行 (BOE) はいっせいに量的緩和に踏み切って、何度もこのブログでお示ししましたが、猛烈なバランスシートの拡大が観察された一方で、日銀は及び腰でした。例えば、このブログで取り上げた範囲では、3月18日付けのエントリーの日米両国中央銀行のバランスシートのグラフを見れば明らかです。この差が為替に反映されています。ソロス・チャートの再来かもしれません。もちろん、直近では新政権発足直後の財務大臣の不用意な発言が拍車をかけた面もあります。でも、為替レートが輸出に影響を及ぼすのは1年くらいのラグがありますから、まさに、リーマン・ショック後の各国中央銀行の対応の違いが為替に表れて現在の我が国の輸出の増勢鈍化をもたらしたと私は受け止めています。
下のグラフは1973年3月を100とする実質実効レートと対ドルのスポットレートの推移です。もちろん、いずれも為替レートなんですが、ややこしいのは向きが異なることで、赤い折れ線の実質実効レートは数字が大きいほど、すなわち、グラフで上に行くほど円高ですが、水色のスポットレートは対ドル相場ですから数字が小さいほど、すなわち、グラフで下に行くほど円高です。少し難しいかもしれませんが、よく理解の上ご注意ください。

為替相場の推移

4-6月期のGDP統計は季節調整済みの前期比で見て+0.6%成長のうち、+1.6%もの外需の寄与がありました。要するに、内需はマイナスだったわけです。おそらく、7-9月期は外需の寄与度は気前よく見積もっても+0.5%くらいではないかと直感的に考えています。ひょっとしたら、+0.2-0.3%くらいに縮小すると私は受け止めています。従って、日本の景気は年末から年始にかけて2番底をうかがう可能性が高まったと考えるべきです。そして、その原因の少なくとも一部が日銀にあることは明らかです。

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2009年10月21日 (水)

援助は成長に寄与しないのか?

昨年末から今年にかけて、「援助は成長に寄与しない」もしくは、少なくとも「援助は効率的ではない」といった開発援助に疑問を呈するような趣旨の論文がいくつか権威あるジャーナルに公表されていて、開発経済学にも興味のある私は少し気になっています。大学の経済学部あたりの図書館以外では手に入りにくいかもしれませんが、私が読んだ範囲で以下の2点を例として上げておきます。

上の Rajan and Subramanian (2008) ではかなり統計的な処理を施した上で、援助と成長の間には少なくとも頑健な結果は観察されなかったと結論し、下の Doucouliagos and Paldam (2009) では2004年末までに刊行された97本の開発援助の効率性に関する論文をサーベイした上でメタ分析を実行し、援助は効率的ではないと結論しています。大きな理由は資金流入によるオランダ病と示唆しています。また、下のグラフは Rajan and Subramanian (2008) の p.647 から Figure 1. - Conditional Correlation between Growth and Total Aid, 1960-2000 を引用しているんですが、1960-2000年で援助と成長率は統計的に有意な負の相関関係を示しています。かなりショッキングと言えます。

Figure 1. - Conditional Correlation between Growth and Total Aid, 1960-2000

もちろん、援助の目的は経済成長だけではありませんが、エコノミストならずとも貧困削減とともにもっとも受け入れられやすい指標であることも確かです。よく知られている通り、今世紀を迎えるに際して、国連がミレニアム開発目標 (MDGs) を設定し、開発援助の強化もなされ始めている矢先、さらに効率的で経済発展に寄与する援助が求められていることは言うまでもありません。

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2009年10月20日 (火)

相対的貧困率をどう解釈するか?

かなり唐突ですが、本日、厚生労働省から相対的貧困率が発表されました。厚生労働省のサイトにある報道発表資料は実にアッサリしたもので、以下に引用する通りです。

厚生労働大臣のご指示により、OECDが発表しているものと同様の計算方法で、我が国の相対的貧困率及び子どもの相対的貧困率を算出しました。
最新の相対的貧困率は、2007年の調査で15.7%、子どもの相対的貧困率は14.2%。

書出しからして、いかにも「いやいややった」という雰囲気が表れているんですが、それはともかく、いつもながら、3枚ものの簡単なpfd ファイルのリポートも公表されています。その最初のページからグラフを引用すると以下の通りです。

相対的貧困率

引用にもある通り、相対的貧困率は経済協力開発機構 (OECD) と同様の算出方法で、世帯人員の平方根で世帯の可処分所得を除して人員調整をして、その中央値、すなわち、初等数学でいうところのメディアンを特定し、その中央値の半分を貧困ラインに設定して、この貧困ライン以下の人口を総人口で除した比率です。積文を使って数式で説明した方が早い気もしますし、なかなか分かりにくいんですが、リポートの2ページ目にグラフを使った解説があります。詳しくはソチラをどうぞ。
相対的貧困率15%超というのは先進国の中ではかなり高い数字で、今日の厚生労働省の発表には国別の比較はなかったんですが、私の知る限り、OECD の "Income Distribution and Poverty in OECD Countries in the Second Half of the 1990s" と題するワーキングペーパーに2000年時点の国別比較があります。p.21 の Figure 5. Relative poverty rates among the entire population から引用しており、縮小して見にくいんですが、以下のグラフの通りです。

Figure 5. Relative poverty rates among the entire population

上のグラフにある国の中では、一番右の濃い緑色の2000年で見て、もっとも相対的貧困率が高いのがメキシコで20%を超えています。次に、右から2番目の米国、その2つ左隣のトルコ、そして、アイルランド、日本の順となっているように見受けられます。朝日新聞のサイト読売新聞のサイトでは OECD の2008年のリポートで2004年時点でメキシコ、トルコ、米国に次いで日本が4番目に相対的貧困率が高いと報じています。メディアでは対日審査報告か何かを取り上げているんでしょうが、私には見つけられませんでしたので、上のグラフで大雑把に代替しておきます。
相対的貧困率はその名の通り所得の絶対水準ではなく相対的な位置関係で決まりますが、ホントの絶対的貧困ではない分、相対的な格差を表していると解釈すべきと私は考えています。ですから、政策的には、世銀なんかの言う貧困削減ではなく、格差是正の方策が求められます。すなわち、各国で所得分布が決して正規分布しているとは思いませんが、正規分布のような山型の所得分布曲線を頭に浮かべるとすれば、世銀的な貧困はこの山型の所得分布を形状を変えずにそっくり右側にスライドさせれば改善しますが、相対的貧困率は右側にスライドさせるだけでは一向に改善されず、分布の尖度を大きく、つまり、左右のすそ野を狭くして中央の山を高くすることで改善されます。いくつかの報道を見る限り、この点で、大臣もメディアも相対的貧困と絶対的貧困を混同して誤解しているように見受けられなくもありません。やや心配な点です。

まったくついでながら、来年3月号の大学の紀要には貧困指標に関してエッセイを書こうと準備しているところです。私の「準備」とは実は何もしていないことを表現していたりするんですが、12月号の紀要のランダムウォークに関するエッセイほどではありませんが、数式が並びそうな予感がしています。

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2009年10月19日 (月)

経済協力開発機構の先行指標 (OECD/CLI) に見る先進国の景気回復

先週から少しボケボケしていて、あまり経済をウォッチしていないんですが、そのためか、10月9日金曜日に発表された経済協力開発機構の先行指標 (OECD/CLI) をすっかり見逃していて、しかも、部分的ながら先週末は OECD のサイトがアクセス不可でデータをダウンロードできなかったものですから、今夜に取り上げたいと思います。まず、日米欧のグラフは以下の通りです。太めの赤い折れ線が Reference series で鉱工業生産指数 (IIP) だったと記憶していて、細めの青が Composite leading indicators すなわち CLI そのものです。

OECD/CLI

グラフを見れば一目瞭然なんですが、上に掲げた先進各国はすでに景気の谷を超えて、今年の年央時点で景気回復期に入っていることは明らかです。でも、先行きは楽観できず、年末年始あたりに2番底を迎える可能性は私が春先から指摘している通りです。今日の午後に開催された日経の景気討論会でも、日経新聞のサイトからヘッドラインを拾っただけでも、「中国経済、12年までは高成長持続」といったヨソの国の景気のいい話だけではなく、我が日本については「経済の本格回復、10年後半以降に」とか、あるいは、ヨソの国でも「日経センターの小島氏『米消費低迷、数年続く』」といった意見も出たようです。

私がこのブログで W 字型の2段階調整論を言い出したのは3月12日のエントリーが初めてで、その後、7月上旬までのデータを基に書いた本学紀要9月号の研究ノートでも堂々と W 字型の景気パスが V 字型や L 字型に比べて最有力と位置づけました。いずれも政権交代のずっと前から同じことを繰り返しています。現時点で、その確率はますます高まっているように感じています。

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2009年10月18日 (日)

新しい NHK 朝の連続テレビ小説「ウェルかめ」の視聴率やいかに?

「ウェルかめ」

新しい NHK 連続テレビ小説「ウェルかめ」が始まって3週間がたちました。舞台は太平洋に面する海辺の町、徳島県の美波町だそうです。実は、私はこの年齢に達してもまだ四国には渡ったことがなく、場所はよく分かりません。NHK の放送前情報のサイトにあるストーリーは以下の通りです。

ヒロイン・波美が生まれ育ったのはお遍路さんもサーファーも泊まる愉快な民宿(遍路宿)。
「お接待精神」にあふれる賑やかな家族に囲まれ育ちました。都会に出て一流女性誌の編集者をめざした彼女でしたが、ひょんなことからウミガメに導かれるように人生を大転換、故郷と向き合うことになるのです。
好奇心とねばり腰が裏目に出てドジをふみ、思わぬ方向へ流されながらも、一生懸命「海をこぎいくような」ヒロインの青春を、家族や恋の物語を縦糸に、美波生まれの同級生たちの青春模様を横糸にして描く、明るくコミカルな青春ドラマです。

なお、ビデオリサーチのサイトから最近の NHK 朝の連続テレビ小説の視聴率を引用すると以下の通りです。

放送年度番組名初回視聴率平均視聴率
2009年ウェルかめ16.0%?
つばさ17.7%13.8%
2008年だんだん16.8%16.2%
16.5%15.2%
2007年ちりとてちん17.1%15.9%
どんど晴れ14.9%19.4%
2006年芋たこなんきん20.3%16.8%
純情きらり17.7%19.4%

視聴率については、上の引用にはないものの、何と言っても1983年の「おしん」の平均52.6%が極めて偉大な数字だったんですが、最近は長期低落傾向に歯止めがかかったようにも見られません。特に、今年度前半の「つばさ」はヒロインが何に取り組んでいるのかやや不明で、登場人物もドタバタと入れ代わりが激しく、私は途中で見るのを諦めましたが、「ウェルかめ」は主人公の夢がはっきりしていますので、それなりのストーリー展開を期待しています。最後に、主題歌については私が記憶している限り、1997年度前半の「あぐり」が出色だったんですが、今年度は前後半とも主題歌が冴えないようです。

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2009年10月17日 (土)

2010年度概算要求の取りまとめ

今週は大学の仕事がそれなりにあって忙しく、昨夜なんかは twitter 並みの「つぶやきブログ」で終始した気もしますが、ようやく土曜日の休みになって、本格的に経済を論じようと思います。今日のテーマは新政権が発足してから初めての予算となる2010年度の概算要求です。まず、財務省のホームページにある概算要求額の一覧は以下の通りです。なお、この画像は実際には毎日新聞のサイトから引用しています。

2010年度概算要求

いつもと順番が逆ですが、次に、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

財務省は16日、2010年度予算の概算要求の概要を発表した。政策的経費に当たる一般歳出の要求額は過去最大となる54兆9929億円で、2009年度当初予算を3兆2619億円(6.3%)上回った。国債費と地方交付税交付金はいずれも増額要求となり、国の財政規模を示す一般会計ベースの要求総額は09年度当初予算比7.3%増の95兆381億円に膨らんだ。
野田佳彦副大臣が同日夕の記者会見で発表した。副大臣は世界的な金融危機の影響で、09年度の税収が当初見込みの46兆円から大きく落ち込み、「場合によっては40兆円を下回る可能性がある」とも指摘。減収に伴う赤字国債の追加発行を示唆した。新規国債の発行額は初めて50兆円の大台に乗る可能性が高まっている。
民主党が衆院選のマニフェスト(政権公約)で、来年度からの実施を明記していた子ども手当の創設などの新規政策の要求合計額は4兆3767億円。来春に予定する暫定税率の廃止に伴う税収減と合わせると、概算要求段階では公約実現には来年度に約6兆9000億円の財源が必要になる計算だ。

日経新聞の別の記事では藤井財務大臣が「このままじゃまずい」と発言したと報じられています。まさにその通り。上の表にはいわゆる「事項要求」として額を明示せずに要求しているものが含まれておらず、数兆円あるとの報道も見かけました。そうすると、概算要求時点で100兆円を超える可能性もあります。他方、概算要求の細かな点まで承知しているわけではありませんが、いわゆる公共投資予算はかなり減額される見通しのようにも報じられています。政策とは経済政策に限らず希少な資源を配分して市場の均衡点を歪めるものというのが本質だと私は考えています。こんなことを記憶している人はもういないと思いますが、戦後、高度成長の初期にもっとも希少な資源は外貨でした。この外貨をどのように配分するかを経済政策のテコにしていたことは歴史的に明らかです。そして、現時点で経済政策に用いることの出来るもっとも希少な資源のひとつは予算といえます。
別の観点から、総額としての概算要求を見ている限りでは、マニフェストに盛られた政策を従来の政策に上乗せしたかのような印象があります。要求額が大幅に増えたのですから、これは政策の転換ではなく上乗せに見えます。その上乗せを各省のレベルでは政治主導で容認したわけです。細かな実情に関する情報を持ち合わせない私から見て、各省レベルの概算要求策定作業では政治主導が失敗したような印象も受けます。要するに、官僚の言いなりに既存予算の上に新規予算を積み上げたが如き印象があります。例えば、メディアでも東京新聞の記事で「合格は前原国交相のみ 『査定大臣』になり切れず…」といったものも見かけました。私の見方を裏付けているようにも見受けられます。もしも、「政治主導の失敗」との私の見方が正しいと仮定すれば、財務省の査定レベルで政治主導が貫けるのか、それとも従来と同じように一律カットかそれに近い手法を取るのか、大いに興味のあるところです。

いずれにせよ、私の観察するところ、今までの政策を官僚が主導していた部分があることは確かで、ではどうしてそうなっていたのかというと、政治主導するだけの力量が政治の側に不足していた面もあるからです。堂々と政策論争をして国民の審判を受けたわけですから、もっとも希少な資源のひとつである政府予算の配分において、現政権の奮闘を期待します。

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2009年10月16日 (金)

パリーグでクライマックスシリーズ始まるも興味なし

今夜からセリーグに先立って、パリーグでクライマックスシリーズが始まりました。2位の楽天がソフトバンクに対して11-4と大勝したみたいです。長崎の地上波では放送はなかったようです。阪神の出ていないクライマックスシリーズは私も興味ありません。

来年こそ、
がんばれタイガース!

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2009年10月15日 (木)

ポケモンの基本はやっぱりピカチュウ

今月のポケモン映画の公式サイトからのカレンダーつき壁紙のメールマガジンが遅く、ようやく一昨日になって配信されました。下の通り、今年の夏に公開された劇場版映画の「アルセウス 超克の時空へ」も終了し、10月のカレンダーつきの壁紙はピカチュウになっています。なお、どうでもいいことですが、当然ながら、来夏もポケモン映画の公開が決定したようで、さらに、ついでながら、今夏の「アルセウス 超克の時空へ」の DVD は12月18日発売だそうです。

ピカチュウ壁紙

今年10月のカレンダーつき壁紙は右のピカチュウが座っている方なんですが、左のバンザイしている方は昨年10月に配信された壁紙です。それにしても、映画が終わるとともに、10月の壁紙にピカチュウを取り上げるところは、やっぱり、ピカチュウがポケモンの基本であり、1丁目1番地であることを実感させられます。

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2009年10月14日 (水)

『ミシュランガイド京都・大阪2010』の評価やいかに?

ミシュランガイド京都・大阪

昨日、日本ミシュランタイヤは『ミシュランガイド京都・大阪2010』日本語版と英語版を10月16日に、『ミシュランガイド東京2010』日本語版と英語版を11月20日にそれぞれ発売すると発表しました。東京版は2007年に初めて出版されて以来3冊目、もちろん、京都・大阪版は初めてです。上の画像は日本ミシュランタイヤの広報サイトから引用しています。
このブログの昨年2008年9月21日付けのエントリーでも紹介しましたが、結局、いわゆる三ツ星は京都で6店、大阪で1店だったようです。京都では「菊乃井本店」、「嵐山吉兆本店」、「千花」、「つる家」、「瓢亭」、「未在」、大阪では「Hajime」です。さすがというお店が並んでいます。三ツ星の数だけで比べると、パリが10店、東京が9店ですから、京都はこれらに次いで3番目ということになります。もっとも、朝日新聞のサイトによれば、掲載を拒否され写真撮影が出来なかった店が京都で15店、大阪で5店あったそうで、これらが全部三ツ星とは決して思いませんが、ひょっとしたら、京都の実力はパリや東京により肉薄している可能性もあります。

グルメ方面は我が家では圧倒的に下の子の得意とする分野で、食事とはエネルギーの補給としか考えないくらい私は野暮なんですが、長崎のミシュランガイドが出来るのはかなりの先になるであろうことは断言できます。一応、無理矢理に「読書感想文の日記」に分類しておきます。

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2009年10月13日 (火)

キャンパスライフの障害

先週から本格的に大学の後期の授業が始まり、私も通常のキャンパスライフに戻りました。昨年8月1日に長崎に赴任してから1年がたち、割と平凡で変化のないキャンパスライフです。というのは、6年前に亡くなった私の父親の七回忌を先日営んだ際にツラツラと思い出していたんですが、もう30年以上も前に私が高校の2年生か3年生の折、父親が考えるカギカッコ付きの「健全なるキャンパスライフ」を阻害する3要因について聞かされたことがあります。倅が京都大学に行きそうだということで、父親なりに考えて大学生活に関する注意を与えたかったんだと思います。あくまで私の父親の考えですが、以下の通りです。

  • カルト宗教
  • マルチ商法
  • 学生運動

カルト宗教はオウム真理教のようなものが想像されると思いますが、我が家は代々浄土真宗の家系で、私も高校生のころから親鸞聖人の『歎異抄』などを読んでいましたから、カルト宗教に毒される心配は元よりありませんでした。でも、マルチ商法などというものは知りもしませんでしたから、父親の意見はそれなりに参考になったという気がします。最後の学生運動については、今にして考えると、かなり京都大学に入学することを意識したものだという気がしないでもありません。というのも、私が入学したころの京都大学のシンボルである時計台には何やらスローガンがペンキで書いてあったような気がします。なお、私の印象からして、上に掲げた順番で私の父親が好ましくないと考えていたように記憶しています。
しかし、とっても不思議なんですが、長崎大学に来てから、こういったものを見かけません。実は、ジャカルタに住んでいたころ、よくシンガポールに旅行して、いろんなホテルのロビーで熱心にマルチ商法と思しき勧誘が行われているのを見かけたころがあり、どこの国でもあるもんだという気がしていたんですが、なぜか長崎では見かけません。日本の中でもかなり端っこにありますので、カルト宗教などとともに手が伸びて来ていないだけかもしれません。ある意味で不思議に感じています。

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2009年10月12日 (月)

2009年ノーベル経済学賞はオストロム教授とウィリアムソン教授に授賞

いつも普段から私は長風呂なんですが、3連休最終日で明日から大学に出勤となると、今夜は特に長くて、お風呂から上がると今年のノーベル経済学賞が発表されていました。インディアナ大学のエリノー・オストロム教授とカリフォルニア大学バークレイ校のオリバー・ウィリアムソン教授です。オストロム教授に対しては "for her analysis of economic governance, especially the commons" の貢献で、ウィリアムソン教授に対しては "for his analysis of economic governance, especially the boundaries of the firm" という授賞理由で、いずれもガバナンスを主眼にしているように見受けられます。
どうでもいいことですが、両教授とも日本式に言えば昭和1ケタ生まれの70歳代後半で、昨年のクルーグマン教授から若い一線のエコノミストに授賞する方針転換かと思わないでもなかった私にはやや肩透かしでした。ウィリアムソン教授は1991年受賞のコース教授と同じく取引費用の経済学が専門で、これを体系として完成させています。授賞理由にもある通り、直接投資の分析なんかで私もいくつか論文を参照したことがあります。広い意味では多国籍企業のガバナンスなのかもしれませんが、「ガバナンス」に入るのかどうかは少し疑問です。むしろ、「企業行動」といった方がすっきりするような印象があります。他方、オストロム教授はモロにガバナンスで、特に、同じインディアナ大学のヴィンセント・オストロム教授との共同研究 "Public Goods and Public Choice" を読んだ記憶があります。30年ほど前の論文だと思います。何となく、ガバナンスについてはヴィンセント・オストロム教授の方が有名なような気がしていますが、今回受賞したエリナー・オストロム教授とはご夫婦なんでしょうか。私はよく知りません。なお、女性がノーベル経済学賞を受賞するは初めてだと思います。

昨年来の経済危機の時期にはマクロ経済学が注目されて、金融や成長・景気の専門家が有力だと思ったんですが、私の予想は大きく外れてしまいました。

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スポーツの秋の話題2点 - 広島・長崎のオリンピックと今岡選手の阪神退団

オリンピック・ロゴ

広島市と長崎市が共同で2020年夏のオリンピック招致に名乗りを上げるべく検討を開始するそうです。アチコチの新聞やテレビで報道されていますので、特定の記事を引用することはしません。賛成・反対・戸惑いといろいろと報道されていますが、私は大きな疑問を感じます。いったい、両市長は何を考えているんでしょうか?
確かに、オリンピックは平和の祭典ですが、広島・長崎で開催すれば平和の理念の広がりや核廃絶の盛上りにつながる、との考えは成り立ちません。広島・長崎以外でのオリンピックの開催が核廃絶に逆行するとは誰も考えないからです。オリンピックあくまでシンボルであり、平和の象徴のハトと同じです。フン公害のために神社仏閣で嫌がられているハトを広島や長崎で引き取れば核廃絶が進展を早めるとは誰も考えません。私の目からすれば、東京が2016年オリンピックに落選して1週間ほどのこのタイミングで発表したということは、米国のオバマ大統領のノーベル平和賞受賞に悪乗りしたとしか見えません。
ただし、1点だけ指摘しておくと、財政面からの実現性に疑問を投げかける意見も耳にしますが、私はそう思いません。中央政府も地方政府も真っ赤っかの大赤字で財政に余裕がないのは、諸外国はいざ知らず日本では300年以上も前の元禄時代から何ら変わりありません。財政余力が出来るまでオリンピックを招致しないのであれば、百年河清を待つようなものです。
広島・長崎のこのオリンピック招致については、いろんな意見がある中、長崎市民たる私はハッキリ反対と意思表示します。

阪神タイガース今岡選手

次に、私がひいきにしていた今岡選手の阪神タイガース退団が決まりました。これも、アチコチのスポーツ新聞などで報じられている通りです。誠に残念としか言いようがありません。我が阪神も古くは小山投手のトレードから始まって、江夏投手や田淵捕手の放出、そして、掛布内野手の引退・退団と、さまざまな名選手を手放して来ました。中でも、今岡選手は2003年首位打者、2005年打点王と今世紀初頭の阪神の黄金時代を担って来ただけに、ハッキリと落ち目になった今年の阪神が手放すのは疑問が残ります。井川投手の時のように本人の希望ではないわけですからなおさらです。つい最近までの戦い振りを見ても、金本選手の衰えが目立っただけに、中心打者として復活して欲しいと願わずにはいられませんでした。でも、今となっては私ごときにはどうしようもありません。他球団での活躍を祈念します。

他に適当なカテゴリーがないので、一応、阪神タイガースの日記に分類しておきます。

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2009年10月11日 (日)

村上春樹さんにノーベル文学賞を取ってほしいもうひとつの理由

何となく、後期の授業が始まったばかりで、科研費の申請作業もあったもんですから、この3連休は長崎で過ごしていますが、やっぱりヒマですね。東京に帰って家族と過ごせばよかったと後悔しています。変化の少ない田舎暮らしにも慣れたかと思ったんですが、まだまだ修行不足です。

さて、先週からノーベル賞の発表が始まり、明日の経済学賞で終わるんですが、いまだ何の具体的成果も上げていない米国のオバマ大統領に平和賞が授賞されたのには少しびっくりしました。そして、今年も村上春樹さんは文学賞を逃してしまいました。Frau Herta Müller の受賞にケチを付けるつもりは毛頭ありませんが、やっぱり、エンタテインメント性よりは社会性のある「大きな物語」の方が評価が高いのかと思わないでもありません。もちろん、日本語を母語とする作家の不利はあります。言うまでもなく、日本語を母語とすることは経済学賞よりも文学賞の方でより大きなハンディになります。ついでながら、Wikipedia のノーベル文学賞のサイトによれば、受賞者の創作言語は以下の通りだそうです。もちろん、今年の Frau Herta Müller まで含まれていて、『ゴドーを待ちながら』で有名なサミュエル・ベケットは英語と仏語の双方にカウントしてあるようです。

  • 26人 - 英語
  • 14人 - フランス語
  • 13人 - ドイツ語
  • 10人 - スペイン語
  • 6人- イタリア語、スウェーデン語
  • 5人 - ロシア語
  • 4人 - ポーランド語
  • 3人 - デンマーク語、ノルウェー語
  • 2人 - 日本語、ギリシャ語
  • 1人 - トルコ語、ハンガリー語、中国語、ポルトガル語、アラビア語、チェコ語、イディッシュ語、ヘブライ語、セルビア・クロアチア語、アイスランド語、フィンランド語、ベンガル語、プロヴァンス語

私が村上春樹さんにノーベル文学賞を取ってほしいのは、当然ながら、私自身がハルキストであり、村上作品が大好きであるからなんですが、もうひとつの理由があります。私は1990年代前半に在チリ大使館に勤務していたんですが、ようやく私が勤務を終えた後の1994年に大江健三郎さんが受賞するまで、当時、日本人のノーベル文学賞受賞者は川端康成さんただ1人で、他方、チリには1945年のガブリエラ・ミストラルと1971年のパブロ・ネルーダの2人のノーベル文学賞受賞者がいました。いずれも詩人なんですが、ミストラルは日本でいえば明治期の与謝野晶子に相当するような情熱的な女性詩人、ネルーダは1970年代初のアジェンデ政権を支える典型的な左翼文化人の代表、などと日本からの来訪者に説明していました。特に、これもノーベル文学賞受賞者であるガルシア・マルケスはネルーダのことを「どの言語の中でも20世紀の最高の詩人」と称しています。私もネルーダの家イスラ・ネグラを訪れたことがあります。ラテン・アメリカでネルーダはキューバのゲバラとともに左翼運動のヒーローです。
チリ人でノーベル賞を受賞したのはこの2人の文学賞だけで、日本と違って他の物理学賞や化学賞などの受賞者はいないんですが、日本人のノーベル文学賞受賞者が1人しかいないことに対し、チリは2人いることをさんざ自慢する知り合いがいて、悔しい思いをした記憶があります。すなわち、実用上の学問領域ではチリは確かに日本に後れを取っているかもしれないが、文学などの芸術面では日本に優っている、などと言われたものです。普通の感覚からすれば、そうでもないんでしょうが、南米チリという極めて日本人の少ない環境で、しかも、あらゆる意味で日本を代表する大使館の外交官として、チリへの対抗心とともに日本を背負っていた記憶があり、早く2人目のノーベル文学賞受賞者が出ないものかと考えていました。2人目の大江健三郎さんが受賞してから早くも15年が経過したんですから、そろそろ、村上さんへの授賞があってもおかしくないと感じています。

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2009年10月10日 (土)

平原綾香「my Classics!」を聞く

平原綾香「my Classics!」

少し前に買った平原綾香さんの「my Classics!」を聞いています。どうして CD を買ったのかというと、6月ころに青山の家に帰宅した折に、中学生のおにいちゃんが何とマイケル・ジャクソンを聞いていて、少しびっくりして「これはイカン」というわけでもないんですが、子供達に買い与えた音楽 CD のうちの1枚です。まあ、そのころは亡くなった直後だから分からないでもないですし、私くらいの中年に差しかかると懐かしく思わないでもないんですが、私はどちらかというとハリウッド系の音楽よりも東海岸系の好みです。すなわち、マイケル・ジャクソンよりはビリー・ジョエルといったところです。なお、このブログの6月23日付けのエントリーでも取り上げた辻井伸行さんの「デビュー」をおにいちゃんに、下の子にはこの平原綾香さんの「my Classics!」にしました。3月7日のエントリーに書きましたが、下の子は FNS チャリティトーク&ライブ'09 というイベントボーイスカウトの仲間とともに平原綾香さんと共演していて、ひょっとしたら興味があるかと考えたものの、すっかり忘れていました。谷村新司さんの方の印象が強かったんだと思います。

  1. pavane - 亡き王女のためのパヴァーヌ
    ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」
  2. ミオ・アモーレ
    カルディッロ『カタリ・カタリ』及びプッチーニ歌劇『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」
  3. カンパニュラの恋
    ショパン夜想曲(第20番)「遺作」
  4. ロミオとジュリエット
    プロコフィエフ『ロメオとジュリエット』組曲より「モンターギュー家とキャピュレット家」
  5. シェヘラザード
    リムスキー=コルサコフ『シェヘラザ―ド』より「若い王子と王女」
  6. Moldau
    スメタナ『わが祖国』より「モルダウ」
  7. 仮面舞踏会
    ハチャトゥリアン『仮面舞踏会』組曲より「ワルツ」
  8. AVE MARIA
    カッチーニ「アヴェ・マリア」
  9. 新世界
    ドヴォルザーク交響曲『新世界より』第2楽章
  10. シチリアーナ
    レスピーギ「シチリアーナ」
  11. ノクターン
    ショパン夜想曲(第20番)「遺作」
  12. Jupiter
    ホルスト組曲『惑星』より「木星」

曲目は上の通りです。題名を見ても明らかな通り、誰もがどこかで聞いた曲が並んでいます。親しみがあると言えますが、逆に、私なんかの感覚からして、少し平原さんの解釈が違うと感じた曲がないわけでもありませんでした。村上春樹さんの『1Q84』で一気に知名度を増したヤナーチェク「シンフォニエッタ」に対抗したわけでもないんでしょうが、モラヴィアのヤナーチェクに対してボヘミアのスメタナとドヴォルザークを配しているのも気が利いているのかもしれません。

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2009年10月 9日 (金)

底這い続ける機械受注と回復遅れる設備投資

本日、内閣府から8月の機械受注統計調査報告が発表されました。統計のヘッドラインとなる船舶・電力を除く民需、いわゆるコア機械受注は季節調整済みの前月比で見て+0.5%増と、市場の事前コンセンサスであった+2%台前半を大きく下回りました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が9日発表した8月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は前月比0.5%増と2カ月ぶりにプラスとなった。ただ水準は受注額が過去最低だった前月から0.5%伸びたにすぎず、底ばいが続いている。同統計は半年ほど先の設備投資動向を予測できる先行指標として知られており、民間投資の持ち直しは来年前半以降にずれ込む可能性がある。
鉱工業生産は春先から持ち直しが続いているが、ピーク時の7-8割までしか戻っていない。設備の過剰感は強く、生産機械の発注を大幅に増やす状況にはない。需要者別でみると自動車や鉄鋼業からの受注が増えたが、水準は1年前の半分程度と低く、本格回復への道のりは遠い。通信業や建設業など非製造業からの受注額もマイナスが続いている。
国内経済は4-6月期にプラス成長に転じ、持ち直しつつある。ただその主な要因はエコカー減税などの政策効果。個人消費や設備投資といった民需が主導する自律回復にはほど遠く、景気の浮揚力は依然として弱い。

次に、いつものグラフは以下の通りです。青い折れ線が季節調整済みの月次系列のコア機械受注、赤がその6か月後方移動平均です。いずれも左軸の単位は兆円です。影を付けた部分は景気後退期を表していますが、直近の谷は今年2009年3月と仮定しています。

コア機械受注の推移

グラフを見れば明らかなんですが、コア機械受注は底這い状態が続いています。先月9月10日のエントリーで機械受注統計を取り上げた際には「機械受注もそろそろ下げ止まりに向かいつつある」と書き、その翌日の9月11日に4-6月期GDPの2次QEを取り上げた際には「年度内いっぱいくらいは設備投資が盛り上がりを欠いたままに推移する可能性が高い」と書きましたが、今月の予想外に弱い数字を受けて、機械受注統計の底這いがいつまで続くかによってGDPベースの設備投資の回復も遅れる可能性が高まったと受け止めるべきです。10月1日のエントリーで日銀短観を取り上げた際にも、雇用の過剰感が急速に薄れている中で、設備の過剰感が根強く残っていると指摘しましたが、設備投資の回復は軽く年をまたいで、年度内いっぱいは設備投資の減少が続き、回復は来年年央くらいと考えています。しかし、今日のエントリーのテーマではないものの、雇用の方は比較的早期に回復する可能性があります。

船舶の手持ち月数と受注残高の推移

最後に長崎ローカルで注目されている船舶の受注残高と手持ち月数です。毎月のフローの受注については volatile な数字なのでストックの受注残高について見ると、受注残高がピークを付けた昨年2008年9月の7.2兆円から直近の8月は6.1兆円までほぼ1年で1兆円のネットの受注を食い潰したことになります。フローの販売額は受注残高とは少しラグがあり、ピークは今年2009年5月の2431億円から直近の8月は1294億円までほぼ半減近くになりました。グラフから明らかですが、赤い折れ線の受注が減少している中で、手持ち月数が上昇しています。この背景は、グラフには現れませんが、販売が低迷していることであり、ともに減少しつつある分子の受注残高と分母の販売額の割り算の結果として、分母の販売額の減少の方がより大きいことから、手持ち月数が上昇しているわけです。従って、最近の手持ち月数の上昇は決して好ましいことではないと受け止めるべきです。

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2009年10月 8日 (木)

最後まで安藤投手と心中しタイガース散る!

  HE
阪  神000000000 052
ヤクルト00200210x 580

今年のプロ野球は終わりました。まさか、真弓新監督が最後まで安藤投手と心中してクライマックスシリーズを逃すとは思いませんでした。でも、久保投手も2点献上したんですから、先発がどちらでも結果的には同じことだったのかもしれません。連夜のホットコーナーの三塁手のタイムリーエラーがきっかけとは言え、先発が早い回に先取点を取られ、リリーフも次々と中盤に失点を重ねた上に、4番が忘れたころのワンヒットでみんな合わせても散発5安打と相手チームのエースに抑え込まれては、クライマックスシリーズをかけた天王山で勝てようハズもありません。少しいい夢を見かけたが、最後の最後でやっぱりコケた、という印象です。まだ100%決まったわけではないと言う人もいるかもしれませんが、私は諦めのいい関西人ですから、まったく粘りはありません。「阪神は明日も負けて一気に決まる」とまでは思いませんが、確率的に考えてクライマックスシリーズの出場はアッサリと諦めました。
ノーベル文学賞もルーマニア生まれのドイツ人 Frau Herta Müller に決まって、村上春樹さんは逃したようです。授賞理由は "who, with the concentration of poetry and the frankness of prose, depicts the landscape of the dispossessed" とされています。「韻文の濃厚さと散文の率直さをもって疎外された人びとの風景を描いた作家」とでも訳すんでしょうか。なお、ノーベル文学賞については週末にネタがなければ、日を改めて愚痴りたいと思います。阪神タイガースについては来シーズン開始まで取り上げないかもしれません。

来年こそ、
がんばれタイガース!

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気もそぞろに経常収支と景気ウォッチャーを見る

本日、財務省から国際収支統計が、また、内閣府から景気ウォッチャー調査結果が、それぞれ発表されました。

経常収支統計

まず、最近の経常収支とその内訳は上のグラフの通りです。水色の折れ線がトータルの経常収支、棒グラフがそれぞれの内訳です。ほぼ昨年のリーマン・ショック以前の状態に戻った気もします。でも、もっとも気にかかるのは為替です。すでに、対ドル相場で90円を割る水準が定着してしまいましたが、輸出企業の方でどこまで対応できるのか、やや不安が残ります。

景気ウォッチャー調査

次に、景気ウォッチャー調査のグラフは上の通りです。7月は天候不順でやや低下しましたが、8月は再び上昇傾向を示しています。10月1日に発表された9月の日銀短観の企業マインドとともに国民一般のマインドもまだ強気を維持しているように私は受け止めています。マインドで気がかりなのは株価の動向です。ここ数日で株価が東証平均で見て1万円を切る水準で推移していますので、企業マインドとともに国民一般にもどのように受け止められているのか、やや気がかりです。さらに、この株価は為替に連動している部分があるようにも見受けられます。

今夜は神宮球場でヤクルトにリードされている我がタイガースの戦い振りと、もうすぐ、日本時間の午後8時に発表されるノーベル文学賞が村上春樹さんに授賞されるかどうかで、やや気もそぞろに経済指標を取りまとめておきます。

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2009年10月 7日 (水)

国際エネルギー機関 (IEA) のリポートから環境問題に関する経済学的視点を考える

昨日、国際エネルギー機関 (IEA) から2つのリポートが発表されています。第1に、CO2 Emissions from Fuel Combustion 2009 - Highlights、第2に、World Energy Outlook 2009 - Climate Change Excerpt です。後者は11月10日に発表される予定の World Energy Outlook 2009 の excerpt、すなわち、抜粋としてプレリリースされています。従って、今夜は前者のリポートについて取り上げたいと思います。もちろん、今どきのことですから pdf のリポートも公表されています。まず、今回のリポートでもっとも注目されたのが、2007年の統計によれば二酸化炭素の排出量で中国が米国を上回ったことです。正確には燃料から排出する二酸化炭素です。朝日新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出量で、中国が07年に米国を抜いて世界一になったことが、国際エネルギー機関(IEA)が6日発表した統計でわかった。中国は今後も経済成長に伴って排出が増える見通し。13年以降の国際枠組み(ポスト京都議定書)の国際交渉で、先進国は中国に削減を求める圧力を強めそうだ。
07年の世界の排出量は290億トン(前年比3%増)。中国は60億トンと前年より8%増え、米国の58億トン(同1%増)を抜いてトップになったことが確定した。日本は12億トン(同2%増)で、国別ではロシア、インドに次いで5位だった。
中国の00年の排出量は31億トンで米国の半分だったが、右肩上がりの経済成長に伴って急増。IEAの試算では、積極的な温暖化対策を取らなければ、20年に世界の排出量に占める中国の割合は28%となり、米国の16%を大きく上回る。
また、中国が20年に向けて省エネなどの努力を進めたとしても、排出量が多い石炭火力発電所の発電量は07年と比べて約5割増え、事務所などからの排出量は4割増えると試算され、2位の米国の排出量との差はいっそう大きくなるとみられている。

ということで、リポートの p.11 にある Figure 7. Top 10 emitting countries in 2007 のグラフを2007年だけでなく2005年と2006年も入れて拡充し、2007年の排出量でソートしたグラフを書いてみました。以下の通りです。横軸はエネルギーを元にした二酸化炭素排出量で単位は10億トンです。

Top 10 emitting countries in 2007

上のグラフから一目瞭然なんですが、米国と中国の二酸化炭素排出量が他国と比較して際立って多くなっています。特に中国に着目して経済学的な視点から考えると以下の3点が浮かび上がります。第1に、経済規模です。人口とともに経済の規模が大きいことが上げられます。経済活動が盛んであれば二酸化炭素排出量も多くなります。もっとも、9月21日のエントリーで世銀の「世界開発報告 2010」を取り上げた際に触れた環境クズネッツ曲線が成り立っていれば、いずれかの時点で反転する可能性があります。第2に、産業構造と技術です。中国はすでに粗鋼生産高が世界一ですから、こういったエネルギー集約型の産業構造であれば二酸化炭素排出量は多くなります。しかしながら、世界の分業構造の中でどこかの国が担わなければならない役割なのかもしれません。第3に、やや視点を変えて、市場の失敗が生じている可能性が高いことです。エネルギーの消費から生み出される費用と便益が市場の価格に正しく反映されておらず、価格が低過ぎる可能性が高いと受け止めるべきです。そうだと仮定すれば何らかの政府介入が必要になります。炭素税の導入もひとつの選択肢です。

経済データの分析

私の個人的な関心事項を考え合わせて、少し環境クズネッツ曲線について考えると、9月21日付けのエントリーで「世界開発報告 2010」から引用したグラフは時系列的なグラフだったんですが、上のコンセプト図に見る通り、時系列的な分析の他に、クロスセクションの分析とパネルデータ分析があります。私もデータを集め始めていますので、そのうちに何らかの研究成果を得たいと考えています。

景気動向指数の推移

最後に、ついでながら、本日午後、内閣府から8月の景気動向指数が発表されました。上のグラフの通りです。7月は少し天候不順もありましたが、まだまだ水準は低いながらも、年央における我が国の景気は順調に回復軌道にあるように見受けられます。その後の景気見通しは日を改めて考えます。

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2009年10月 6日 (火)

村上春樹『スプートニクの恋人』(講談社)を読み、『1Q84』BOOK 3 とノーベル文学賞を考える

村上春樹『スプートニクの恋人』(講談社)

村上春樹さんの『スプートニクの恋人』を読みました。正確に言うと読んだのは2回目です。いろいろとある村上作品のうちで、初期の作品として私が最も好きなのは3月4日のエントリーで取り上げた『羊をめぐる冒険』です。そして、最新刊の『1Q84』の間をつなぐのは私は『スプートニクの恋人』だと考えています。もちろん、奇数章と偶数章とで交互に物語を進める方法は『海辺のカフカ』などと同じで、『アフターダーク』なども秘めたる暴力的な要素があって、ともに『1Q84』につながる部分があるんですが、「空気さなぎ」とドッペルゲンガー的な「向こうの世界」が期を一にしているような気もします。
『スプートニクの恋人』の講談社と『1Q84』の新潮社と出版社は違いますが、最近の報道を見ると『1Q84』の BOOK 3 が来夏にも出版されるようです。私が見た範囲では毎日新聞のインタビューで村上春樹さんが明言していますから、事実なんだろうと受け止めています。BOOK 1 が4-6月、BOOK 2 が7-9月でしたから、当然、BOOK 3 は10-12月なんだろうと思います。なお、6月5日にアップしたエントリーで、私は BOOK 3 はなく完結だと断定しましたが、間違っていたようです。お詫びして訂正します。自殺したらしく見える青豆をどのように復活させるのか、最後の「空気さなぎ」が青豆であることは確かなのですが、それとの関係をどうプロットするのか、非常に興味あるところです。渋谷近くの人混みでの自殺ですから、シャーロック・ホームズの復活ほど簡単ではないような気がします。

昨日の医学・生理学賞から始まって、今日の物理学賞と明日の化学賞はまさにノーベル賞のハイライトです。私の専門分野の経済学賞は来週回しですが、ハイライトの物理学賞と化学賞に続く木曜日はいよいよ文学賞です。もしも村上春樹さんが受賞すると仮定すれば、対象作品は『海辺のカフカ』ではなかろうかという気がします。

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2009年10月 5日 (月)

ノーベル賞の発表始まる

Nobel Medal

今日の医学・生理学賞を皮切りに、今週から来週にかけてノーベル賞の発表が続きます。まず、発表予定はグリニッジ標準時刻 (GMT) で次の通りです。

  • 生理学・医学賞 10月5日9:30
  • 物理学賞 10月6日9:45
  • 化学賞 10月7日9:45
  • 文学賞 10月8日11:00
  • 平和賞 10月9日9:00
  • 経済学賞 10月12日11:00

要するに、エコノミストが注目する経済学賞はもっとも遅くて来週なんですが、例年の通り、トムソン・ロイターのサイトで科学分野、すなわち、上の各賞のうち、文学賞と平和賞を除く、医学・生理学賞、物理学賞、化学賞、経済学賞の4分野について有力候補者が9月24日に発表されています。私は他の分野はサッパリですので、経済学賞についてだけ引用すると以下の通りです。なお、ノーベル賞にとっても近い大先生方なんですが、発表元がそうなっていますので敬称略です。ご容赦下さい。

功績氏名所属
for their contributions to behavioral economics, including issues of preferences, fairness, and cooperation

社会的選好、公平性、協調を含む行動経済学への貢献
Ernst FehrProfessor and Director of the Institute for Empirical Research in Economics, University of Zurich, Zurich, Switzerland
Matthew J. RabinEdward G. and Nancy S. Jordan Professor of Economics, Department of Economics, University of California Berkeley, Berkeley, CA, USA
for their contributions to environmental economics, particularly with respect to climate change

環境経済学、特に気候変動に対する貢献
William D. NordhausSterling Professor of Economics, Yale University, New Haven, CT, USA
Martin L. WeitzmanProfessor of Economics, Harvard University, Cambridge, MA, USA
for their research on monetary policy

金融政策に関する研究
John B. TaylorMary and Robert Raymond Professor of Economics, Stanford University, Stanford, CA, USA, and Bowen H. and Mary Arthur McCoy Senior Fellow, Hoover Institution, Stanford, CA, USA
Jordi GaliProfessor, Department of Economics, and Director of the Center for Research in International Economics, Pompeu Fabra University, Barcelona, Spain
Mark L. GertlerHenry and Lucy Moses Professor of Economics, New York University, New York, NY, USA

すべて欧米、特に米国のエコノミストで、日本人はノミネートされていません。これらのエコノミストについて、最初の行動経済学をよく知らないというのもありますが、私は3番目のテイラー教授などの金融分析が有力なのではないかと受け止めています。金利に関するテイラー・ルールはかなり人口に膾炙しているんではないでしょうか。もちろん、環境経済学や気候変動も流行りと言えます。今年2007年の世銀「世界開発報告」 World Development Report 2010 のテーマとなっていて、このブログの9月21日付けのエントリーでも取り上げていますし、一昨年2007年には米国のゴア元副大統領に「気候変動に関する政府間パネル」の功績で平和賞が授賞されています。トムソン・ロイターの候補者の他に、誠に僭越ながら私の方で経済学賞の候補者を考えると、例年と同じなんですが、時系列分析でシムズ教授、ストック教授、ワトソン教授、また、経済成長論でジョルゲンソン教授、といったあたりを上げておきたいと思います。いずれもかなりお年を召しています。

最後に、今年もやっぱり注目は日本人受賞者で、昨年は物理学賞と化学賞に合わせて4人の日本人が受賞しました。私は今年こそ村上春樹さんにノーベル文学賞が授賞されるんではないかと期待しています。

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2009年10月 4日 (日)

クリンナップが打てなくても先発が抑えれば勝てる!

  HE
中  日000000000 040
阪  神00010031x 580

昨夜の東京ヤクルトとの直接対決で、先発の安藤投手が3回でノックアウトされ、クリンナップがさっぱり打てなければ負けるという明白な事実をまざまざを見せつけられましたが、クリンナップが打てなくても、先発が抑えれば勝てるということも今日の試合で実証された気がします。相変わらず、金本選手は得点に何の関係もないところでヒットを打ち、5番の新井内野手がチャンスメーカーに回って下位打線と1-2番や代打だけが打点を稼ぐ情けない打線ですが、先発の岩田投手が7回までゼロに抑えれば、アッチソン投手や藤川投手の締めくくりはしっかりしていますから勝てます。クライマックスシリーズ1番手で対決する可能性のある中日相手で実践しました。それから、打つ方では、関本内野手のはオマケにしても、桜井外野手のホームランは先取点として効果的でした。ホームランが効くと言うのも当然です。
ただし、今日の最終回は久保投手が出て来ました。ピシャッと抑えましたが、私はこの投手起用は大いに疑問です。このあと2日空く甲子園の最終試合ですから、ファンサービスででも藤川投手を出すべきですし、そもそも、久保投手は短期決戦で先発に回すべきです。能見投手と今日の岩田投手は当然としても、3人目の先発は昨夜の安藤投手ではなく、久保投手を起用すべきだと私は考えています。真弓監督が久保投手を中継ぎに回して3人目の先発に安藤投手を考えているんでしたら、大きな采配ミスとしか思えません。トップの先発が安藤投手でしたら、クライマックスシリーズ最初の試合でポストシーズンゲームは終わりかもしれません。

最後までクライマックスシリーズ目指して、
がんばれタイガース!

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2009年10月 3日 (土)

先発がノックアウトされてクリンナップが打てなければ勝てない!

  HE
ヤクルト013002000 6120
阪  神020200000 471
当たり前ですが、先発が打ち込まれて点を取られまくり、クリンナップがさっぱり打てなければ負けます。タイガースはやる気あるんでしょうか?一所懸命に応援しているファンがバカにされているような気がしないでもありません。何をなすべきかを考えずに漫然とプレーしているのか、何をやるべきかを理解しているものの、それを成し遂げる能力が伴わないのか、私には分りませんが、非常に情けなく今夜の試合を見ていました。

それでもやっぱり、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計のグラフィック

昨日、米国労働省から9月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月比で▲26.3万人の減、失業率は0.1%ポイント上昇して9.8%となりました。いずれも季節調整済の系列の数値です。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

米労働省が2日発表した9月の雇用統計(季節調整済み)によると、失業率(軍人を除く)は9.8%となり、前月より0.1ポイント上昇した。一方、非農業部門の雇用者数は26万3000人減で、8月(20万1000人減、改定値)より減少幅が拡大。米景気は底入れ局面にあるが官需依存が強く、企業が雇用を増やす本格回復はなお遠い。失業率は近く10%を超すとの見方が大勢だ。
9月の失業率は市場予測通りだったが、1983年6月に記録した10.1%に次ぐ水準。雇用者数減は市場予測(17万5000人)より悪かった。雇用者数減は21カ月連続で、この間に720万人の雇用を失った。ただ5月からの減少ペースは月平均30万人強で、同60万人超だった昨年11月から今年4月までと比べ、減少ペースは緩やかになっている。
業種別では製造業で5万1000人、建設業で6万4000人それぞれ減ったのに加え、小売業(3万8500人)も減少幅を広げた。財政難の地方自治体でも雇用調整が進行、政府部門が5万3000人減少した。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルが非農業部門雇用者数の前月差増減、下が失業率で、いずれも季節調整済の月次系列です。影を付けた部分は景気後退局面なんですが、現時点でも継続しているとの前提です。なお、週末ですので、論評抜きに簡単にグラフィックだけを集めておきます。

米国雇用統計の推移

さらに、米国紙から引用したフラッシュは以下の通りです。上は New York Times のサイトから、下は Los Angels Times のサイトから、それぞれ直リンしています。


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2009年10月 2日 (金)

国際通貨基金 (IMF) の「世界経済見通し」 World Economic Outlook

昨日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook の見通し編である第1章と第2章が発表されました。もちろん、フルテキストの pdf も公表されています。来週、10月5-6日にトルコのイスタンブールで開催される世銀 IMF 総会に向けたものです。リポートによれば、昨年来の猛烈な世界的景気後退はようやく終了を告げつつあり、世界経済の成長率は2009年▲1.1%、2010年3.1%と前回7月の見通しからそれぞれ+0.3%ポイント、+0.6%ポイント上方修正されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

国際通貨基金(IMF)は1日、最新の世界経済見通しを発表した。2010年の世界全体の実質成長率は3.1%と予測し、前回の7月から0.6ポイント上方修正した。09年はマイナス1.1%で0.3ポイント引き上げられた。日本は10年が1.7%で変わらなかったが、09年はマイナス5.4%で0.6ポイント上方修正した。中国など新興国の成長が主導し、世界経済が緩やかな回復に向かう道筋が見えてきた。
米国は10年が1.5%となり、前回比0.7ポイントの上方修正。09年はマイナス2.7%で、0.1ポイントの下方修正となった。ユーロ圏は09、10年ともに0.6ポイントの上方修正となったが、それでも10年の成長率は0.3%にとどまる。
一方で中国は09、10年が8.5%、9.0%に上方修正され、世界経済をけん引する。

続いて、IMF Survey Magazine のサイトから引用した総括表は以下の通りです。クリックするとフルテキストのリポートから引用した詳細表が別画面か別タブで開きます。

Latest IMF Projections

成長率以外も含めた見通しのグラフをフルテキストのリポートから引用すると以下の通りです

Global Indicators

これらに対するリスク分析は以下のグラフの通りです。これもフルテキストのリポートから引用しています。特に、リポートでは異常なレベルまで政府介入が進んだ結果として、出口戦略の重要性を強調しています。

Risks to the Global Outlook

誠についでながら、「世界経済見通し」の前日に「世界金融安定化報告」 Global Financial Stabirity Report が発表されています。これも、もちろん、フルテキストのリポートが出ています。広く報道されていた金融機関の損失額300兆円余のグラフは以下の通りです。グラフは地域別ですが、総額の Writedown は $2,809 billion と試算されています。

Realized and Expected Writedowns or Loss Provisions for Banks by Region

最後に、本日、総務省統計局から8月の失業率などの労働力調査が、厚生労働省から同じく8月の有効求人倍率などの職業紹介統計が、それぞれ発表されました。アッとびっくりで失業率が0.2%ポイントも下がりました。引き続き雇用は厳しいんですが、昨日発表された日銀短観の雇用人員判断では過剰感が急速に薄れているのも事実です。

雇用統計の推移

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2009年10月 1日 (木)

日銀短観は大幅改善も設備投資計画は低調

本日、日銀から9月調査の短観が発表されました。ヘッドラインの大企業製造業の業況判断 DI はほぼ市場の事前コンセンサス通り▲33と15ポイント改善しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

日銀が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス33となり、6月の前回調査(マイナス48)から15ポイント改善した。改善は6月に続き2期連続。新興国など海外経済の回復を背景に輸出や生産の持ち直しが鮮明になっており、3カ月先の見通しでは一段の改善を見込む。ただ雇用や設備の過剰感は解消されておらず、2009年度の設備投資計画は過去最大となる前年度比25%減に下方修正された。
業況判断DIは、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。大企業製造業のDIは過去最悪だった今年3月(マイナス58)を底に改善が続くが、依然マイナスの域を脱していない。
業種別でみると、製造業15業種のうち金属製品と造船・重機を除く13業種でDIが前回から改善した。輸出環境の好転と、エコカー減税など麻生太郎前政権下での経済対策の効果もあって、自動車はマイナス79からマイナス49に大幅改善。電気機械も19ポイント上向きマイナス33となった。

続いて、業況判断DIのグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業、下のパネルは非製造業の、それぞれ、赤の折れ線が大企業、青が中堅企業、緑が中小企業です。今夜のエントリーのすべてのグラフに共通するんですが、影を付けた部分は景気後退期で今年1-3月期を暫定的に景気の谷としています。

日銀短観業況判断DIの推移

景況感は非製造業の中小企業を除いてすべての規模・業種で改善を見せています。最近の外需にやや依存する景気回復の特徴として、非製造業より製造業の回復テンポが速く、グラフの傾きがスティープになっていることが読み取れます。水準としては大企業、中堅企業、中小企業に順になっているのはいつもの通りです。詳しく見ると、私の直感として、非製造業が予想よりも大きな回復を見せた気がします。

日銀短観設備雇用判断DIと設備投資計画の推移

次に、要素需要に関するグラフを3枚書きました。上のパネルから順に、製造業の設備判断DI、全産業の雇用判断DI、そして、大企業全産業の最近3年間の設備投資計画の改定状況です。広く報道されているように、2桁マイナスの設備投資計画は過去最低らしいです。自分でチェックしたわけではありません。しかし、私は強調したいのは設備投資の方は過剰感も強く、過去最低の計画になっている一方で、雇用の方はかなりの程度に過剰感が薄らいで来ていることです。例えば、大企業製造業の設備過剰感のピークは今年3月調査の39でしたが、9月でもまだ34の過剰感が残り、先行きも28までしか減じません。しかし、雇用の方は大企業全産業ですが、同じく過剰感のピークは今年3月調査の35であったものが、この9月調査では18まで半減し、先行きは12まで下がる見通しになっています。同じ要素需要でも設備と雇用についてはかなり非対称に見受けられます。これは設備と雇用の代替性と補完性から生じていると私は考えていますが、この関係については日を改めて取り上げたいと予定しています。

為替レートの推移

最後に短観について指摘しておきたいのは、日経の解説記事でも取り上げられていましたが、為替レートです。上のグラフは今年に入ってからの東京市場での対ドル円レート中心相場の日々の動きですが、現状で1ドル100円を切って90円前後で推移しているいることは誰でも知っています。しかし、大企業製造業の想定レートは年度下期で94.08円、年度を通してでは94.5円となっており、6月調査の94.85円から35銭切り上がっているに過ぎません。最近でも政権交代の後に円高が進みましたし、財務大臣発言が「円高容認」と受け止められて90円を割る水準まで円高が進んだ局面もありました。内閣府が発表している最新の計量モデル分析結果である「短期日本経済マクロ計量モデル(2008年版)の構造と乗数分析」に従えば、10%の円安が1年目+0.26%、2年目+0.54%、3年目+0.55%の実質GDPに対する乗数を持っています。円高の場合に対称なのかどうかは知りませんが、円高がそれ相応の経済的インパクトを有することは常識です。短観から読み取れる企業の円高対応の遅れに比べて、新政権の為替レート観はやや乖離があるように私は感じています。

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