本日、総務省統計局から9月の消費者物価指数 (CPI)と失業率などの労働力調査が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業紹介統計が、それぞれ発表されました。まず、それぞれの統計のヘッドラインに関して日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
消費者物価
総務省が30日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで100.2になり、前年同月比で2.3%低下した。7カ月連続で前年同月を下回ったが、昨年夏の原油高の影響が弱まり、低下幅はやや縮小した。ただ食料品や衣料品の値下げ競争の影響が出るなど、物価下落傾向は収まっていない。
CPIの低下幅が縮んだのは、前年同月比で低下に転じた3月以降で初めて。昨年夏の原油高の影響が9月以降弱まってきたためだ。ただ食料とエネルギー価格の影響を除いた指数(欧米型コアCPI)は1.0%低下しており、下落幅は前月よりも拡大した。物価下落の主因がガソリンや灯油といった石油関連製品から、身の回りの商品に移ってきた格好だ。
生鮮食品も含む総合指数は2.2%低下した。このうち食料は0.5%の低下で、指数を0.13ポイント押し下げた。食用油や納豆の価格が下がった。被服・履物もズボンや上着類の値下がりで1.2%下がった。低価格ジーンズ人気で、店頭での価格競争が激しくなっていることが影響した。
労働統計
総務省が30日発表した9月の完全失業率(季節調整値)は5.3%と、前月比で0.2ポイント改善した。厚生労働省が同日発表した9月の有効求人倍率(同)も前月比0.01ポイント高い0.43倍に上昇した。失業率の改善は2カ月連続で、生産の持ち直しで製造業就業者数の減少幅が8カ月ぶりに縮小したことが影響した。ただ水準自体は依然悪く、年末に向けて厳しい雇用情勢が続くとの見方が引き続き優勢だ。
完全失業率は15歳以上の働く意欲がある人のうち、職に就いていない人の割合を示す。失業率が2カ月連続で改善したのは2008年10月以来になる。男女別にみると、男性が5.6%、女性は4.9%だった。
9月の就業者数は前年同月比で98万人減の6295万人。一方、完全失業者数は92万人増の363万人と11カ月連続で増えた。業種別では、製造業が81万人減り、減少幅が3カ月ぶりに100万人を割った。自動車などの一部業種で生産が持ち直していることを反映した。政府が雇用創出を期待する医療・福祉も37万人増え、5カ月連続でプラスを維持した。
まず、消費者物価について、いつものグラフは以下の通りです。青い折れ線が全国のコア CPI の前年同月比、赤が全国のコアコア CPI、グレーが東京都区部のコア CPI です。棒グラフは全国のコア CPI に対する寄与度となっています。ただし、エネルギーの寄与度は統計が公表されるようになったのが2005年ですから、前年同月比の寄与度は2006年からしか計算できません。いずれも季節調整をほどこしていない原系列の前年同月比で、左軸の単位はパーセントです。

消費者物価については、デフレの最悪期は脱しつつあるように見受けられます。昨年の物価上昇のピークが8月でしたから、今年のデフレのピークも8月でした。ただし、上のグラフに見て取れるように、青い折れ線のコア CPI は9月単月ながら反転しましたが、赤のコアコア CPI は以前として下落幅を拡大しています。コアコア CPI は需給を反映すると考えられており、我が国マクロ経済の需給バランスがまだ回復していないことの表れと私は受け止めています。昨夜も取り上げた冬季ボーナスも含めて、賃金の減少ないし伸悩みとデフレによる買控えにより、消費の本格的な回復はまだ望めません。消費と物価のスパイラルに加え、ここ1年くらいの円高の輸入物価への影響も考え合わせると、さらに物価が安定を取り戻す、少なくとも日銀が「物価安定の理解」として示したゼロに戻るのさえ、かなりの時間がかかることを覚悟すべきです。デフレはまだまだ続くのかもしれません。

次に、労働統計は上のグラフに見る通り、各指標が下げ止まるとともに反転が始まった可能性があります。いずれも季節調整済みの系列で見て、失業率、有効求人倍率、新規求人数とも水準はともかく方向としては改善の緒に就いた可能性があります。もちろん、バックグラウンドは昨夜取り上げた生産の回復です。相変わらず、日本では企業から家計へと景気は流れているようです。

非農業部門の雇用者数について、産業別に増減を見たのが上のグラフです。久し振りに書いた気がします。季節調整済みの系列は発表されていませんので、原系列の前年同月差です。折れ線グラフが非農業部門の雇用者増減、棒グラフはその内訳です。左軸の単位は万人ですから、今年5-6月ころは前年同月と比較して100万人単位で雇用が失われていたわけです。グラフから明らかなように、建設業と製造業が雇用を減少させています。逆に、コンスタントに雇用を増加させているのは医療・福祉ということになります。今年に入ってから4月までは、建設業で減少して情報通信業で増加していましたから、私は産業別には当然の雇用者の流れだと受け止めていましたが、5月以降では情報情報通信業で雇用が減少しているようです。

日本経済に関する最後の話題は日銀の「展望リポート」です。上の表は日銀審議委員の大勢見通しを取りまとめたものです。GDP成長率は来年度にはプラスに復帰するものの、物価については企業レベルでも消費者物価でもマイナスを続けると予想されています。じゃあ、「何とかしてくれ」と私なんかは考えるんですが、そうはならないんでしょうか。

ホントの最後の最後に、昨日発表された今年7-9月期の米国GDP成長率の推移が上のグラフに取りまとめてあります。4四半期続いたマイナス成長から7-9月期は季節調整済みの前期比年率で+3.5%を記録し、米国も景気後退から景気回復局面に脱しました。中身をもう少し詳しく見ると、構築物がまだマイナスのままなので設備投資は5四半期連続でマイナスを続けていますが、機械・ソフトウェアはプラスに転じましたし、輸出入がトータルのGDPと同じように4四半期連続のマイナスから脱してプラスに転じたのは、貿易を通じて世界経済の拡大に寄与するものと期待しています。
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