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2009年10月20日 (火)

相対的貧困率をどう解釈するか?

かなり唐突ですが、本日、厚生労働省から相対的貧困率が発表されました。厚生労働省のサイトにある報道発表資料は実にアッサリしたもので、以下に引用する通りです。

厚生労働大臣のご指示により、OECDが発表しているものと同様の計算方法で、我が国の相対的貧困率及び子どもの相対的貧困率を算出しました。
最新の相対的貧困率は、2007年の調査で15.7%、子どもの相対的貧困率は14.2%。

書出しからして、いかにも「いやいややった」という雰囲気が表れているんですが、それはともかく、いつもながら、3枚ものの簡単なpfd ファイルのリポートも公表されています。その最初のページからグラフを引用すると以下の通りです。

相対的貧困率

引用にもある通り、相対的貧困率は経済協力開発機構 (OECD) と同様の算出方法で、世帯人員の平方根で世帯の可処分所得を除して人員調整をして、その中央値、すなわち、初等数学でいうところのメディアンを特定し、その中央値の半分を貧困ラインに設定して、この貧困ライン以下の人口を総人口で除した比率です。積文を使って数式で説明した方が早い気もしますし、なかなか分かりにくいんですが、リポートの2ページ目にグラフを使った解説があります。詳しくはソチラをどうぞ。
相対的貧困率15%超というのは先進国の中ではかなり高い数字で、今日の厚生労働省の発表には国別の比較はなかったんですが、私の知る限り、OECD の "Income Distribution and Poverty in OECD Countries in the Second Half of the 1990s" と題するワーキングペーパーに2000年時点の国別比較があります。p.21 の Figure 5. Relative poverty rates among the entire population から引用しており、縮小して見にくいんですが、以下のグラフの通りです。

Figure 5. Relative poverty rates among the entire population

上のグラフにある国の中では、一番右の濃い緑色の2000年で見て、もっとも相対的貧困率が高いのがメキシコで20%を超えています。次に、右から2番目の米国、その2つ左隣のトルコ、そして、アイルランド、日本の順となっているように見受けられます。朝日新聞のサイト読売新聞のサイトでは OECD の2008年のリポートで2004年時点でメキシコ、トルコ、米国に次いで日本が4番目に相対的貧困率が高いと報じています。メディアでは対日審査報告か何かを取り上げているんでしょうが、私には見つけられませんでしたので、上のグラフで大雑把に代替しておきます。
相対的貧困率はその名の通り所得の絶対水準ではなく相対的な位置関係で決まりますが、ホントの絶対的貧困ではない分、相対的な格差を表していると解釈すべきと私は考えています。ですから、政策的には、世銀なんかの言う貧困削減ではなく、格差是正の方策が求められます。すなわち、各国で所得分布が決して正規分布しているとは思いませんが、正規分布のような山型の所得分布曲線を頭に浮かべるとすれば、世銀的な貧困はこの山型の所得分布を形状を変えずにそっくり右側にスライドさせれば改善しますが、相対的貧困率は右側にスライドさせるだけでは一向に改善されず、分布の尖度を大きく、つまり、左右のすそ野を狭くして中央の山を高くすることで改善されます。いくつかの報道を見る限り、この点で、大臣もメディアも相対的貧困と絶対的貧困を混同して誤解しているように見受けられなくもありません。やや心配な点です。

まったくついでながら、来年3月号の大学の紀要には貧困指標に関してエッセイを書こうと準備しているところです。私の「準備」とは実は何もしていないことを表現していたりするんですが、12月号の紀要のランダムウォークに関するエッセイほどではありませんが、数式が並びそうな予感がしています。

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