« 全産業活動指数に見る景気の停滞 | トップページ | 夏川草介『神様のカルテ』(小学館) を読む »

2009年11月20日 (金)

OECD Economic Outlook No.86 に見る日本のデフレと日銀の無策

昨日、パリに本部を置く経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し」Economic Outlook No.86 が発表されました。加盟国全体の成長率見通しは、今年2009年に大きく落ち込んで▲3.5%のマイナス成長を記録した後、来年2010年には+1.9%、2011年には+2.5%と順調に回復するとのシナリオが描かれています。しかし、失業率は見通し期間中の2011年まで高止まりし、日本については2011年までデフレが継続するとの予測となっています。日米欧を中心とする成長率、失業率、インフレ率、一般政府バランスのグラフは以下の通りです。なお、下のグラフをクリックすると別窓で詳細な表が現れます。四半期別の成長率見通しがあり、日本の場合は2010年1-3月期に少し成長率が鈍化する形になっています。グラフの方は Economic Outlook No.86 のサイトから、詳細表の方はジャーナリスト向けのハンズアウトの p.2 から引用しています。

OECD Economic Outlook No.86

特に、詳細な日本のGDPコンポーネントについての表は以下の通りです。一目瞭然なんですが、今年2009年に▲5.3%の大幅なマイナス成長を記録した後、来年2010年が+1.8%、その次の2011年が+2.0%と順調な成長経路に戻るような形になっています。今年6月の OECD 経済見通しは6月24日付けのエントリーで取り上げましたが、その時点で日本の成長率見通しは2009年▲6.8%、2010年+0.7%でしたから、各年+1%ポイントを超えるような、かなりの上方修正です。しかも、来年以降は着実に公共投資が減るとともに、輸出に依存するわけでもないという意味で、極めてバランスのいい成長の姿が描かれています。ここまで理想的な成長パスを示されると、ウソっぽいと感じる人がいそうな気もしないでもありません。なお、下の表は経済見通しの国別のサマリーから引用しています。

Japan: Demand and output

もう1度、ジャーナリスト向けのハンズアウトから、私の目についたリポートの特徴的な図表をいくつか引用したいと思います。まず、ハンズアウトの p.12 から、在庫投資の反転を示すグラフです。日本でも先日の1次QEを見ると7-9月期から在庫は積増しに向かっています。

OECD inventory cycle is turning

次に、ハンズアウトの p.14 から四半期別の年率成長率ですが、OECD 加盟国よりも非加盟国の方が成長率が高くなっていることが一目瞭然です。なお、下段の Non-OECD はいわゆる BRICs、すなわち、ブラジル、ロシア、中国、インドの各国を購買力平価で加重平均した成長率です。

The recovery in the non-OECD region will be faster

最後の2枚のグラフは金融政策と財政政策に関するものです。まず、日米欧の中央銀行のバランスシートの拡大が p.22 のグラフから見て取れます。といっても、日本はそうでもありません。グラフのタイトルも、"Central bank balance sheets have expanded strongly in the United States and the euro area" となっています。昨日から金融政策決定会合を開催していた日銀は相変わらず無策のまま会合を終了しました。来春から神戸大学の宮尾教授が加わりますので、このまま無策を続けるんではなく、デフレ下の金融政策に新たな試みが導入されることを、祈るような気持ちで私は見守っています。

Central bank balance sheets have expanded strongly in the United States and the euro area

そして、いつもの政府債務残高のグラフです。もともと大幅な政府債務を抱えていた日本なんですが、最近までの景気後退に対応した拡張的財政政策の発動により、さらに赤字を積み増した形になっています。ここまで拡大した政府債務が「事業仕分け」によってどこまで縮減されるのか、私にはまったく不明ですが、そのうちに、考えてみたいと思います。

Government debt levels are being pushed to record highs

OECD のグリア事務総長は昨日東京で記者会見し、「日銀はデフレと戦え」と述べるとともに、「財政再建の中期目標を早急に打ち出すべき」と政府に注文をつけたと日経新聞のサイトで報じられています。また、今日の閣僚会議で決定された11月の「月例経済報告」では物価の現状について「緩やかなデフレ状況にある」と表現され、正式にデフレと認定されました。「デフレ」の3文字の復活は2006年8月以来だそうです。これらに対して、淡々と無策のままに終わった日銀金融政策決定会合なんですが、この先、日銀はどのような対応を取るんでしょうか。それとも、カギカッコ付きの「政府からの独立」に守られて無策を続けるんでしょうか。

|

« 全産業活動指数に見る景気の停滞 | トップページ | 夏川草介『神様のカルテ』(小学館) を読む »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/32286614

この記事へのトラックバック一覧です: OECD Economic Outlook No.86 に見る日本のデフレと日銀の無策:

« 全産業活動指数に見る景気の停滞 | トップページ | 夏川草介『神様のカルテ』(小学館) を読む »