今日は、月末最終営業日の閣議日ですから、昨年12月の経済統計が一挙に発表されました。以下の通りです。上の2項目を雇用でひとくくりにして、順に見て行きたいと思います。
まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
雇用なお一進一退 12月、失業率5.1%・求人倍率0.46倍に改善
総務省が29日発表した2009年12月の完全失業率(季節調整値)は5.1%と前月比0.1ポイント低下した。失業率の低下は2カ月ぶり。厚生労働省がまとめた昨年12月の有効求人倍率(同)も4カ月連続で改善し、前月比0.01ポイント上昇の0.46倍だった。雇用情勢は一進一退の状況にあり、当面は厳しさが継続するとの見方が多い。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。09年12月の完全失業者は317万人で、前年同月比47万人増加。増加幅が同11月の同75万人に比べ縮小し、失業率の低下につながった。
09年12月の就業者数は6223万人と前年同月に比べ108万人減。製造業や卸売・小売業での減少が目立つ。一方、医療・福祉は増加が続く。
鉱工業生産持ち直し続く 12月指数2.2%上昇
経済産業省が29日発表した2009年12月の鉱工業生産指数(速報値、05年=100)は89.9となり、前月に比べて2.2%上昇した。上昇は10カ月連続で、輸出の増加や国内の政策効果などに支えられて生産は持ち直しの動きが続いている。ただ生産の水準はピーク時の8割程度にとどまり、本格回復にはなお時間がかかりそうだ。
12月の生産の上昇率は11月と同じだったが、市場予測の平均(前月比2.5%)よりは低い水準だった。
業種別の生産指数では電子部品・デバイス工業が前月比6.5%上昇。携帯電話向けの半導体メモリーや中国向けの液晶テレビ部品などの生産が好調だった。米国やインドネシア向けの蒸気タービン部品なども増加し、一般機械工業も6.1%上昇した。一方、自動車を含む輸送機械工業は2.9%低下し、10カ月ぶりにマイナスとなった。経産省は11月の水準が高かったことの反動が表れたとみている。
物価の下落、10カ月連続 12月1.3%低下
総務省が29日発表した2009年12月の全国消費者物価指数(CPI、05年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.8となり、前年同月比で1.3%低下した。10カ月連続で前年同月を下回った。昨夏まで高騰したガソリン価格の下落による影響は一巡する一方、物価下落が広範な品目に波及した。
食料とエネルギーの影響を除いた指数(欧米型コアCPI)は1.2%低下と、低下率は比較可能な1971年以来で過去最低となった。エネルギー価格を除くベースでの指数の低下は、日本経済がデフレ状況にあることを改めて裏付けた。生鮮食品を含む総合指数は前年同月に比べ1.7%低下した。
12月は前の月まで指数を押し下げていたガソリン価格が前年同月比でプラスに転じた。だが物価の調査対象となる585品目のうち上昇したのが147、下落したのが377と下落品目が前月に比べて増加。食料品や家電、日用品などに価格下落が目立った。
12月消費支出、実質2.1%増 ボーナス減で臨時収入落ち込み最大
総務省が29日発表した12月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年同月に比べて2.1%増加した。2008年秋以降の景気の落ち込みで消費マインドが急激に冷え込んでいた昨冬の反動増が主因。政策効果を反映した自動購入なども下支えした。
一方、個人消費を裏付ける実収入は名目で6.5%減。冬のボーナスが減ったことで、世帯主の「臨時収入・賞与」は11.1%減と12月としては比較可能な1971年以来最大の落ち込みになった。
総務省は個人消費の状況について「おおむね順調な回復を続けている」と分析。物価の変動を加味した名目消費は0.3%増で1世帯あたり33万7887円だった。物価下落が実質消費を押し上げている面も大きい。
まず、雇用のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、産業別雇用者数の前年同月差増減です。上の3つのパネルは季節調整済みの系列で、一番下は季節調整していない原系列です。一番下のパネルの単位を忘れましたが、万人となっています。上の3つのパネルで影をつけてある部分は景気後退期ですが、直近の景気の谷は昨年3月と仮置きしています。グラフからも明らかなように、雇用は最悪期を脱して反転しましたが、改善のペースは極めて緩やかになっています。ですから、雇用が本格的に回復し、例えば、失業率が4%程度になったり、有効求人倍率が1倍に近づくのにはかなり時間がかかると受け止めるべきです。
次に、鉱工業生産の推移は以下のグラフの通りです。影をつけた部分は上の雇用と同じで景気後退期です。上のパネルが季節調整済みの生産指数、下のパネルは在庫循環図です。1999年1-3月期に上向きの緑色矢印から始まって、2009年10-12月期に下向きの矢印に至り、とうとう45度線を超えました。上下の順が逆になりましたが、月次指数は12月の季節調整済み指数の前月比は+2.2%の増産と、市場の事前コンセンサスを少し下回りましたが、ほぼ順調な回復過程にあると受け止めています。しかし、この先は鉱工業生産は減速の見通しとなっています。すなわち、製造工業予測指数で、今年1月が+1.3%、2月が+0.3%と急ブレーキがかかる形になっています。特に、電気機械、情報通信機械、輸送機械、化学などでは2月に減産に転じる見通しとなっており、やや息切れの様相を呈しています。11月統計がドカンと下がった機械受注も気がかりなポイントです。
3番目に、消費者物価はデフレが続いています。下のグラフは生鮮食品を除くコア CPI の前年同月比上昇率とエネルギー・食料品・その他の寄与をプロットしていますが、コア CPI が前年同月比でゼロに近づいているのは、マイナスの寄与を示しているエネルギーがその幅を縮小しているためであり、エネルギーと食品を除く欧米流のコアコア CPI はほぼ一貫してマイナス幅を拡大しているのが見て取れます。緩やかながら景気拡大が続いている中で、需給ギャップも緩やかながら縮小していると考えるべきですから、このマイナス幅を拡大し続けるコアコア CPI は循環的なものではなく、何らかの構造的な要因を反映していると受け止めるべきです。このことが理解されているのであれば、私が今週火曜日1月26日付けのエントリーで根拠なく宣言したように、日銀が何らかの追加的な緩和策を取るべきタイミングが近付いていると考えるべきです。もっとも、日銀ではこのことが理解されていない、あるいは、理解した上で無視している可能性も否定できません。
最後に、昨冬のボーナスが大きく減少した影響を受けて、所得が一向に冴えないにもかかわらず、家計消費はかなり順調な回復を示しています。もっとも、実質の伸び率が名目を上回っていますから、物価下落で大きく見えているという側面も否定できません。下のグラフは2人以上世帯の名目と実質の消費指数で、2005年を100とする季節調整済みの系列です。
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