来年度予算政府案に見る我が国の財政事情と日銀の追加緩和策の予想
やや旧聞に属する話題かもしれませんが、財務省から22日の金曜日に平成22年度予算政府案の詳細が発表されています。pdf で「我が国の財政事情」と題する資料から今夜は我が国の財政事情について取り上げます。まず、日経新聞のサイトから政府財務残高に関連する記事を引用すると以下の通りです。
「国の借金」の総額が2010年度末に過去最大の973兆1625億円に達する見通しとなった。財務省が25日、国会へ提出した予算参考資料で明らかになった。今年1月1日時点の推計人口(概算値)の1億2747万人で計算すると、1人あたりの借金は約763万円に上る。
「国の借金」は国債と借入金、政府短期証券を合わせた債務残高の総額。初めて900兆円の大台を超す09年度末見込み(900兆1377億円)に比べ、73兆248億円増加する。
国の借金が急増するのは10年度予算案で、財源不足を賄うため、当初予算段階で過去最大となる約44兆3000億円の国債を新規発行するのが主因だ。08年秋に世界金融危機が深刻化して以降、政府は景気を下支えするため、国債増発を伴う大規模な財政出動を繰り返しており、国の借金は過去最大を更新し続けている。
先に触れた「我が国の財政事情」と題する資料の p.2 から引用したグラフは以下の通りです。いずれも政府予算の一般会計から赤い折れ線が歳出、青が税収、棒グラフはピンクが赤字国債発行額、水色が建設国債発行額です。いずれも左軸に対応して単位は兆円です。なお、1990年度の赤字国債は他の年度と異なり、湾岸戦争への貢献です。
従来から主張している通り、私はリフレ派のエコノミストとして財政赤字には能天気な態度を貫いているんですが、財政タカ派の与謝野元財務大臣はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで日本の国債発行残高は2010年度予算案で債務が雪だるま式に拡大し抑制が利かなくなる「発散過程」に入り、長期金利急上昇を惹起する素地が出来たとの認識を明らかにしたりしています。
もちろん、私が昨年の今ごろ大学の紀要に書いたペーパー、「財政の持続可能性に関する考察」に取り上げた財政の持続可能性に関する時系列検定の中で、カリフォルニア大学サンディエゴ校 (UCSD) のボーン教授の検定がもっとも緩やかな検定だと私は考えていて、このボーン検定は直感的にはプライマリー・バランスが赤字であっても、その赤字幅が縮小しているのであれば財政は持続可能との結果を示すんですが、この検定でも我が国の財政が持続可能と判定されるか怪しいと受け止めています。もっとも、私が財政赤字に能天気な背景には国民の貯蓄があるからで、日銀の資金循環統計によればネットで1000兆円を超えます。国と地方を合わせたグロスの債務残高はこの額に近づいていますが、ネットはまだ500兆円くらいでネットの貯蓄残高の半分にも満たないレベルです。今しばらく、私は財政赤字や国債残高に能天気な態度を取り続けるような気がします。もっとも、日経新聞の報道によれば、スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) は日本の外貨建てと自国通貨建ての長期国債 (ソブリン) 格付けのアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更したそうです。マーケットが動けば、私の能天気な態度が吹っ飛ぶ可能性は残されています。
最後に、昨日から開催されていた日銀の金融政策決定会合は、報道されている通り、「展望リポート」の中間見直しとして、物価や成長率見通しをやや上方修正しました。しかし、誠についでながら、私は来月かさ来月には日銀が追加的な緩和措置を講じる可能性が十分あると見ています。大胆かつやや無責任、さらに何ら根拠を示さない予想を披露しておきます。
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