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2010年2月15日 (月)

2009年10-12月期GDP統計1次QEは順調な景気回復を示す

本日、内閣府から昨年2009年10-12月期のGDP統計速報、エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている重要な経済指標が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済み系列の実質成長率は前期比+1.1%、前期比年率+4.6%でした。シンクタンクなどの予想を先週金曜日に取り上げましたが、市場の事前コンセンサスは前期比年率で+3%台半ばから後半でしたので、これをやや上回りました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月実質GDP、年率4.6%成長 名目は7期ぶりプラス
内閣府が15日発表した2009年10-12月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.1%増、年率換算では4.6%増となった。プラス成長は3四半期連続。輸出や個人消費が伸び、設備投資も増加に転じた。生活実感に近い名目GDPは前期比0.2%増、年率換算では0.9%増となり、7四半期ぶりのプラス成長に戻った。景気の「二番底」懸念は後退しているが、経済対策の息切れなどで今年前半の成長率が低下するとの見方も出ている。
前期比年率でみた09年10-12月期の実質成長率は、日経グループのQUICKがまとめた民間予測の中央値(3.6%)より高かった。今回のGDP統計では季節調整を見直したため、前期の09年7-9月期は0.03%と事実上のゼロ成長となった。
実質成長率が名目成長率を上回る「名実逆転」は4四半期連続。物価の動向を示すGDPデフレーターは前年同期を3.0%下回り、過去最大の低下幅を記録した。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は保証しません。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2008/
10-12
2009/
1-3
2009/
4-6
2009/
7-9
2009/
10-12
国内総生産GDP▲3.0▲3.2+1.3+0.0+1.1
民間消費▲0.8▲1.3+1.1+0.6+0.7
民間住宅+2.5▲6.5▲9.4▲7.8▲3.4
民間設備▲7.3▲8.7▲4.2▲2.5+1.0
民間在庫 *+1.0▲0.6▲0.6▲0.1+0.1
公的需要+1.1+1.2+1.4▲0.2▲0.0
外需 *▲2.7▲0.6+1.8+0.3+0.5
輸出▲14.5▲23.8+9.2+8.4+5.0
輸入+0.1▲17.6▲3.9+5.4+1.3
国内総所得GDI▲1.2▲1.8+1.1▲0.5+1.1
名目GDP▲1.6▲3.4▲0.1▲0.5+0.2
雇用者報酬+0.5▲0.7▲1.2+0.9▲0.4
GDPデフレータ+0.4+0.3▲0.6▲0.6▲3.0
内需デフレータ+0.2▲1.3▲2.6▲2.8▲2.9

さらに、グラフは下の通りです。折れ線グラフは実質成長率、棒グラフは実質GDP成長率を需要コンポーネント別に季節調整済み系列の前期比伸び率で寄与度表示したもので、いずれも左軸の単位はパーセントです。

GDP成長率の推移

基本的に、順調な成長を示していると私は受け止めています。少なくとも、現在の1-3月期までは個の順調な景気回復が続くと私は見込んでいます。その要因としては、第1に、中国や米国などの世界経済が景気回復軌道にあり、我が国の輸出が伸びていること、第2に、補正予算の執行停止の影響が読み切れないものの、2次補正も含めて今年1-3月期にはまだ公共事業の執行が残っていること、第3に、在庫調整がほぼ終了したこと、などが上げられ、景気の2番底や腰折れは回避される確率が高くなったと考えられます。もっとも、エコカー減税・補助金やグリーン家電のエコポイントなどの政策に下支えされた消費も多く、決して民需の自律的な回復を示しているとは私は考えていませんから、今年年央に踊り場的な状況が生まれる可能性はまだまだ十分あります。剥落して行く政策効果とようやくプラスに転じた設備投資のせめぎ合いなんですが、少なくとも年央まで、場合によっては年内いっぱいくらいは前者の方が影響が大きいような気がします。しかし、再度の景気後退の可能性はかなり低くなったと考えるべきです。景気ウォッチャーのマインドにもこれは示されていると思います。
上振れリスクは中国をはじめとする新興国の景気回復に伴う外需くらいしか考えつかないんですが、逆に、下振れリスクは、第1に、上振れリスクの反対で、中国の景気過熱や米国の景気の腰折れなどの外需プラス為替の動向、第2に、デフレの進行による民需の後退、第3に、何とも見通し切れない、あるいは、わけの分からないリスクとして、ギリシアの財政危機がユーロの通貨危機に発展する可能性とトヨタのリコール問題を上げておきたいと思います。リフレ派のエコノミストの中には、日銀の早過ぎる出口戦略を上げる人がいそうな気がしますが、私はそこまで心配はしていません。現政権の日銀に対する圧力がさらに強まる可能性があるからです。

最後に、2点指摘すると、やや気になっていた季節調整方法の変更については、内閣府から「季節調整用ARIMAモデル設定一覧」なるメモが公表されており、事前の発表通りに、財貨の輸出入に対して傾斜的水準変化(Ramp)を設定した旨が明らかにされています。でも、結果を見る限り、大きな影響はなさそうにも見えます。第2に、発表されている経済指標と私の実感に照らし合わせて、根拠薄弱で直感的ながら、今回の1次QEは2次QEで下方修正される可能性が高いのではないかと私は受け止めています。

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