« 先進各国のCO2削減目標 | トップページ | 景気動向指数は順調に改善を示す - ついでにギリシア財政危機 »

2010年2月 4日 (木)

前年比マイナスに転じた資本ストックと潜在成長率

昨日、内閣府から昨年2009年7-9月期の資本ストック統計が発表されました。季節調整のされていない原系列を見ると、2000年基準の固定価格 (実質) の進捗ベースで約1204兆円となり、前年同期と比較して▲0.1%の減少を記録しました。資本ストックが減少したのは、ほぼ戦後初めてだろうという気がします。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業設備、戦後初の実質目減り 7-9月の内閣府統計
企業が持つ機械やコンピューターなどの設備が戦後初めて目減りした。内閣府が3日発表した2009年7-9月期の民間企業資本ストック統計では、企業が持つ有形固定資産は実質で前年同期比0.1%減となり、統計が始まった1955年以来初のマイナスを記録した。新規の設備投資が大きく減る一方で、除却額が投資額を上回った。マイナスが長引けば日本経済の潜在的な成長力を下押しする可能性がある。
固定資産のストック総額は、前の期の資産総額に企業の新規投資額を加え、古くなった設備の目減り分である除却額を差し引くことではじき出す。09年7-9月期の企業の固定資産総額は物価変動を除いた実質(2000年基準)で1204兆円となり、前年同期を1兆6500億円下回った。新たな投資額は16兆円で、前年同期に比べ22.1%減った。
産業別に資産をみると、運輸・通信業が前年同期比9.0%減と7四半期連続のマイナスになった。サービス業も1.1%減だった。一方で金融・保険業や製造業は伸びた。

次に、資本ストックのグラフは以下の通りです。赤い折れ線が資本ストックの実額、季節調整していない原系列であり、2000年基準の固定価格 (実質値) です。左軸の単位は兆円です。水色の棒グラフはその前年同期比で、右軸の単位はパーセントです。いずれも、直近で利用可能なデータは2009年7-9月期です。

資本ストックの推移

どうして、資本ストックのデータがマイナスになると気にかかるかというと、長期的な潜在成長率への影響が大きいからです。多くのエコノミストは、短期的な成長率は需要サイドで決まるが、長期的な成長率は供給サイドで決まると考えています。一応、念のために、短期と長期については、伝統的な経済学では、価格が硬直的で量で不均衡を調整するのが短期で、逆に、価格が伸縮的で価格によりすべての不均衡が解消されるのが長期と考えています。もちろん、価格と量がともに不均衡解消の方向に動いている中期を考える場合もあります。
長期の成長を決定する生産関数を考えます。生産関数の一般形は以下の通りです。Y は産出、ほぼGDPと考えて差し支えありません。A は全要素生産性、全要素なしでも要するに生産性です。工学的な意味ではなく、経済学的な意味で技術と表現される時もあります。K は資本ストック。ここに登場します。L は労働投入量です。一応、自然単位ではなく効率単位としておきますが、今夜のエントリーでは生産性が別に考えられていますので関係ありません。

Y = ƒ(A,K,L)

もっとも単純ながら経済学でよく援用されるコブ・ダグラス型の生産関数は以下の通りです。α はデシマル単位の資本分配率、逆に、1-α は労働分配率です。

Y = AKαL1

このコブ・ダグラス型生産関数を時間について微分して伸び率で表示すると以下の通りとなります。もちろん、t は時間です。


dY=dA+ αdK
dtdtdt
(1)dL
dt

長期的な成長率、別の言葉で潜在成長率と言い換えても OK です。この潜在成長率は生産性の伸び、資本ストックの伸びと資本分配率の積、労働投入量の伸びと労働分配率の積、の和で表現されます。もちろん、右辺第1項が生産性の伸び、第2項が資本ストックの伸びと資本分配率の積、第3項が労働投入量の伸びと労働分配率の積、となっていることはいうまでもありません。逆の表現をすれば、潜在成長率は生産性を含めた要素成長率と要素分配率の積に分解されます。
日本の資本ストックの伸び率は1980年代半ばにおいては、前年比で10%を超えた時期もありましたが、バブル崩壊の後に大きく落ち込み、とうとう、リーマン・ショック後の直近時点でマイナスを記録するに至りました。すでに、日本は人口減少社会に入っていますから、女性や高齢者の労働力化率を高めて労働投入量を増加させることが可能としても、大きな効果は望めません。頼みの綱は資本ストックと生産性ということになります。しかしながら、この生産性も、教育効果などで労働力に体化される場合もありますが、多くは資本ストックに体化されると考えられます。ですから、日本経済の将来を考える上で、資本ストックの動向は極めて重要といえます。

昨年10-12月期にはフローの設備投資がプラスに転じる可能性もあり、資本ストックの前年比マイナスは遅くとも今年中に解消されると私は考えていますが、繰返しになるものの、資本ストックの動向が長期的な日本経済を考えるポイントになる可能性を指摘しておきたいと思います。

|

« 先進各国のCO2削減目標 | トップページ | 景気動向指数は順調に改善を示す - ついでにギリシア財政危機 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/33245892

この記事へのトラックバック一覧です: 前年比マイナスに転じた資本ストックと潜在成長率:

« 先進各国のCO2削減目標 | トップページ | 景気動向指数は順調に改善を示す - ついでにギリシア財政危機 »