輸出の回復はどこまで続くか?
本日、財務省より今年1月の貿易統計が発表されました。輸出金額は前年同月比で何と+40.9%増の4兆9024億円と、昨年の大幅な落ち込みからの反動とはいえ、大きく増加しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
輸出、1月4割増もピーク時の8割 アジア頼み色濃く
財務省が24日発表した1月の貿易統計によると、輸出は4兆9024億円と前年同月比で4割も増えた。ただ「リーマン・ショック」で急収縮した反動増にすぎず、ピーク時の2008年1月と比べ8割弱の水準にとどまる。米欧向けは持ち直しが遅れており、日本の貿易構造はアジア頼みが鮮明だ。
輸出が好調だった08年1月と比べても、中国向けはほぼピーク時まで持ち直してきた。自動車の輸出台数は前年の3.8倍と大幅に増えたが、08年比でみても1.6倍と高水準。電子部品や一般機械の伸びも目立つ。ただ金融危機後の反動増は一服しつつあり、先行きの伸び率は鈍化する可能性がある。
米欧向けは持ち直しが遅れている。対米輸出は前年同月比で24%も増えたものの、08年と比べると6割弱の水準。欧州向けも前年比では11%伸びたが08年比ではやはり6割弱だ。
トヨタ自動車の大量リコール(回収・無償修理)や南欧諸国の財政不安など、日本の輸出環境は簡単には好転しそうにない。外需の息切れ感が強まれば、国内経済にも黄信号がともる。
いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列、下は季節調整済み系列で、水色の折れ線グラフが輸出、赤が輸入、緑色の棒グラフはその差額たる貿易収支の推移です。左軸の単位はいずれも兆円です。
引用した記事にもある通り、金額の水準はまだまだ低いものの、輸出は順調な回復といえます。1月の輸出が落ちているように見えなくもありませんが、お正月を含む1月の季節的な特徴ですから、季節調整済み系列では輸出も貿易収支も順調だということが理解できると思います。1月統計のひとつの特徴は、これまた引用した記事にもある通り、自動車や半導体の輸出が大幅に拡大したことで、日本産業の中でも競争力ある製品が順調な回復を示しているといえます。
それでは、引用した記事に下線を付しておいたように、輸出回復の持続性という観点から考えるため、上のグラフを書いてみました。上下のパネルとも前年同月比のパーセント表示で、上のパネルはいつもと同じグラフで輸出金額を価格と数量で要因分解したものです。下のパネルは初公開なんですが、輸出数量指数の前年同月比とOECD先行指数の前年同月比を並べてみました。もちろん、後者のOECD先行指数は世界需要の代理変数なんですが、3か月ずらしてあります。対応する軸は凡例にある通り左右で異なりますが、かなりの程度にシンクロしているのが読み取れます。単純にこの関係を引き延ばすと、今年の3-4月くらいまでは我が国の輸出も順調な回復を続けることが考えられます。しかし、問題はその先です。米国経済はもともと先行き不安がありますし、中国も万全とはいえません。さらに、日経新聞の記者さんも私の2月15日付けのエントリーを読んでいただいたのか、ギリシアをはじめとする南欧の財政危機とトヨタのリコール問題が極めつけの不透明なリスクとして記事に取り上げられています。
日本経済が2番底に陥る可能性は大幅に低下したとはいえ、外需を起因として年央から秋口に踊り場を迎える可能性はまだ残されています。内需拡大のためには早期のデフレ脱却が必要なんですが、日銀幹部は国会でも記者会見でも、あらゆる機会を捉えて極めて reluctant は発言を繰り返しています。
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