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2010年3月11日 (木)

昨年10-12月期GDP統計2次QEから金融政策を考える

本日、内閣府から昨年10-12月期のGDP統計2次QEが発表されました。季節調整済み前期比成長率は1次QEの+1.1%から+0.9%に少し下方修正されました。市場の事前コンセンサスが+1.0%でしたので、やや下回ったんですが、私が注目した設備投資は+0.9%増と1次QEの+1.0%増から極めて小幅の下方改定に止まりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月期の実質GDP改定値、年率3.8%増に下方修正
内閣府が11日発表した2009年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%増(年率3.8%増)だった。速報値の1.1%増(同4.6%増)に比べて下方修正となった。在庫調整が想定より進んだことが、成長率の押し下げ要因になった。設備投資は前期比0.9%増と小幅な下方修正にとどまり、7四半期ぶりのプラスを確保した。
改定値は速報値の公表後にまとまる財務省の法人企業統計などのデータをもとにGDPを推計し直したもの。日経グループのQUICKがまとめた民間調査機関の事前予測の中央値(前期比年率4.1%増)とほぼ同じだった。会見で津村啓介政務官は「景気が再び悪化する二番底懸念が若干薄らいだ。今後の自律回復に期待したい」と述べた。実感に近い名目成長率は前期比年率0.5%増と速報値(0.9%増)より下方改定になった。
改定値に大きく影響したのが民間在庫。原材料や仕掛かり品の在庫について新たなデータを加えて推計し直した結果、速報値より取り崩し幅が膨らんだ。特に製粉や鉄鋼などの在庫が減った。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と外需はGDPの前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2008/
10-12
2009/
1-3
2009/
4-6
2009/
7-9
2009/
10-12
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)▲2.7▲3.6+1.5▲0.1+1.1+0.9
民間消費▲0.8▲1.3+1.1+0.6+0.7+0.7
民間住宅+2.4▲6.6▲9.4▲7.8▲3.4▲3.3
民間設備▲7.3▲8.7▲4.2▲2.6+1.0+0.9
民間在庫 *+1.3▲0.9▲0.4▲0.2+0.1▲0.1
公的需要+1.1+1.2+1.4▲0.3+0.4+0.3
外需 *▲2.7▲0.6+1.8+0.3+0.5+0.5
輸出▲2.0▲13.9▲21.3+6.5+6.4+6.5
輸入+0.1▲17.6▲3.9+5.4+1.3+1.3
国内総所得(GDI)▲0.8▲2.2+1.3▲0.6+1.1+0.8
名目GDP▲1.3▲3.7▲0.1▲0.6+0.2+0.1
雇用者所得+0.4▲0.7▲1.2+0.9▲0.4▲0.4
GDPデフレータ+0.4+0.3▲0.6▲0.6▲3.0▲2.8
内需デフレータ+0.2▲1.3▲2.6▲2.8▲2.9▲2.8

さらに、これまたいつものGDP成長率と需要項目別の寄与度のグラフは以下の通りです。折れ線グラフは季節調整済みの系列で見た前期比成長率、棒グラフはこれを需要コンポーネント別に寄与度表示したもので、いずれも左軸の単位はパーセントです

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度

極めて順調な景気回復過程と私は受け止めています。全体のGDP成長率の修正は設備投資とともに小幅の下方修正で済みましたし、4-6月期のように外需寄与度が突出しているわけでもありません。在庫はマイナスに改定され調整が進んでいることが見て取れますが、逆に、本格的な在庫積増しの局面には入っていないともいえます。▲0.2%ポイントのこの在庫投資の寄与度のスイングで、全体のGDP成長率の下方修正がほぼ説明できます。足下の1-3月期を含めて今後の経済を大雑把に見通すと、2番底の可能性はかなり遠のき、今年年央くらいまで、すなわち、4-6月期か7-9月期くらいまで前期比年率で2-3%のやや潜在成長率を上回る成長が続き、その後、やはり2-3四半期くらいの景気の踊り場でゼロ近傍の成長率を記録した後、2011年度から本格的な景気回復局面に入ると私は想定しています。もっとも、米国経済の見通しに大きく依存していますので、極めて大雑把な見込みであることは繰り返して強調しておきます。
この2次QEを見て金融政策について考えると、来週の日銀金融政策決定会合で決まるであろう追加的な緩和策は小手先で終わる可能性が高まったと私は受け止めています。昨年12月の新型オペの導入の際のように、長期国債の買取り額の増額はなく、年度末の資金需要の高まりを見据えた、何らかのオペを実施することになりそうな気がします。そして、政府から拍手喝采を、市場からブーイングを、それぞれ受けるんではないかと感じています。昨年12月1日付けのエントリーでお示しした私の感想が繰り返されそうな予感があります。日銀は別にして、政府サイドでインフレーション・ターゲティングの議論が高まるかどうかに私は注目しています。

景気は回復軌道に乗っていますが、GDPギャップはまだまだ巨額に上っており、私が最も重視する雇用の確保には需要不足です。景気回復の方向性ではなく、現時点でも、量としてのギャップを埋めて完全雇用に近づけるような政策対応が必要な局面にあると私は考えています。

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