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2010年3月 2日 (火)

景気は完全雇用に向かっているか?

本日、総務省統計局から失業率などの労働力調査家計調査の結果が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が、それぞれ発表されました。いずれも今年1月の統計です。労働力調査統計と職業安定業務統計を合わせて雇用統計として考えると、失業率の低下や有効求人倍率の上昇など、雇用は完全に反転して改善を示しています。しかし、完全雇用にはほど遠いと私は受け止めています。まず、日経新聞のサイトから雇用に関する記事を引用すると以下の通りです。

1月の完全失業率4.9%、有効求人倍率も0.03ポイント改善
総務省が2日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は4.9%と前月から0.3ポイント低下し、10カ月ぶりに5%を下回った。厚生労働省が同日発表した1月の有効求人倍率(同)も0.46倍と前月から0.03ポイント改善した。景気の持ち直しを映して最悪期を脱しつつあるものの、企業の採用姿勢は依然低水準にとどまる。本格的に改善に向かうまでには、なお時間がかかりそうだ。
完全失業率は15歳以上で働く意欲がある人のうち、職に就いていない人の割合を指す。男女別では男性が5.2%、女性が4.6%だった。
失業率が改善したのは就業者数(季節調整値)が6303万人と、前月比で54万人増えた影響が大きい。政府が新たな雇用の受け皿として期待する医療・福祉は前年同月比26万人増。卸売・小売業は7万人減だったが、マイナス幅は2009年12月の23万人減から大幅に縮小した。

次に雇用に関するいつものグラフは以下の通りです。1番上のパネルは失業率、2番目が有効求人倍率、3番目は新規求人数です。景気に対して、遅行系列、一致系列、先行系列の順で並べてあります。1番下の最後のパネルは主要な産業別雇用者数の前年同月差の増減数で単位は万人です。上の3つのパネルは季節調整済みの系列、最後のパネルは季節調整していない原系列の前年同月差です。上の3つのパネルで影をつけてある期間は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は昨年2009年3月と仮置きしてあります。

雇用統計の推移

失業率が4.9%、有効求人倍率は0.46倍と、雇用は少し前までの最悪期を脱して、就業者数や雇用者数は季節調整済みの前月比で増加しているんですが、まだまだ完全雇用にはほど遠いと受け止めるべきです。最後の4番目のパネルの雇用者数についても、季節調整していない原系列の前年比で増加を記録するには至らず、特に、製造業は前年同月差で見て大幅なマイナスを続けていますし、目につく増員セクターは医療・福祉くらいのものです。輸出や生産は堅調に回復しているんですが、方向は上向きとはいうものの、まだまだ水準が低いため労働や設備のような要素需要につながっていないことに加えて、昨年度の「財政経済白書」の分析にあったように、雇用保蔵が解消されていなかったり、あるいは、先行き業績に慎重な見方が残っていたりで、現時点ではマクロの経済全体で見て雇用が本格的に増加するに至っていません。かなり長い時間がかかりそうです。

家計調査の推移

続いて家計調査の結果は上のグラフの通りです。名目・実質とも季節調整済みの系列です。年末賞与が激減した影響からか、1月の消費支出は大きく減少しました。少し先ですが、エコカー減税・補助金は9月まで、家電などのエコポイントも12月までですから、少しずつ政策効果による消費下支えは剥落して行くものと考えられます。ですから、1-3月期のGDPベースの消費はマイナスに転じる可能性もあります。また、我が国経済を支える主要セクターであり、政策効果を顕著に受けた自動車と家電については、この先の見通しがやや分かれると私は考えています。家電については来年7月の地デジ完全移行まで、今しばらくの間は需要が期待できます。実は、我が家も右上に「アナログ」と表示の出るテレビをいまだに見ていたりします。しかし、自動車についてはエコカー減税・補助金がエコポイントより早く打ち切られる予定であることに加え、何度も言うようですが、訳の分からないトヨタのリコール問題の不透明さが依然として残っています。誠に小さいサンプルですが、我が家も地デジ移行までにはテレビを買い替えるつもりですが、自動車を購入する予定はありません。

GDPギャップの推移

ということで、最後に、昨日、内閣府の「今週の指標」で公表されたGDPギャップのグラフは上の通りです。図6から引用しています。日経新聞の記事などによれば、2009年1-3月期におけるGDPギャップは▲7.9%で約40兆円の需要不足と過去最悪だったのに比べると10-12月期は▲6.1%で約30兆円となり、3四半期で10兆円程度改善しています。しかし、こちらも雇用統計と同じで方向は改善を示しているものの、水準としてギャップの解消には至っていません。

私が最も重視する完全雇用実現に向けて、マイナスのGDPギャップ解消とデフレ脱却のため、菅副総理・財務大臣をはじめとして政府から日銀に対する圧力が強まっています。何度かこのブログに書いて来たことですが、今月中旬の日銀金融政策決定会合において、私は何らかの追加的な緩和策が決定されるものと予想しています。

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