ストック・ワトソン指数を推計する
昨年までの景気後退局面の谷を判断するための一助として、ストック・ワトソン指数を推計したペーパー "Identifying Trough of Recent Recession in Japan: An Application of Stochastic Business Indicator" を書き上げました。サイドにある研究室のサイトに pdf ファイルでアップしてあります。下のグラフは推計結果を視覚化したものです。上のパネルが推計したストック・ワトソン指数 (SWI) を内閣府で算出している景気動向指数の一致指数 (CI) に対比してプロットしており、左軸の単位はいずれも 2005年=100 の指数です。下のパネルは SWI と CI のそれぞれに HP フィルターをかけてトレンド部分とサイクル部分に分割 (decompose) し、サイクル部分をトレンド部分で除した比率を GAP と定義して、パーセント表示しプロットしています。
推計結果はオリジナリティに富むんですが、方法論としては私らしくありきたりです。ストック・ワトソン指数の原著論文やこれを日本に適用した同志社大学の大日教授の方法をそのままに、何のヒネリもなく推計しています。すなわち、生産、労働、所得、消費の代理変数に、鉱工業生産指数、所定外労働時間指数、実質賃金指数、商業動態統計の小売業の売上げを消費者物価でデフレートして実質化したデータ、をそれぞれ採用し、状態空間表現したモデルをカルマン・フィルターで解いています。
結果は上のグラフの通りで、それなりに良好な推計結果を得ています。上のパネルの指数水準を見ると、1980年代で景気局面が不明瞭な印象を受けるんですが、HP フィルターでサイクル部分を抽出すると、それなりのパフォーマンスを示しています。景気の山と谷をこの推計結果から判断すると、直近の景気の谷は昨年3月だったと考えられます。この点について SWI と CI は一致しています。
今年半ばには内閣府の景気動向指数研究会が開催され、昨年3月を景気の谷と暫定的に認定するものと私は考えています。
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