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2010年3月23日 (火)

ジョン W. モファット『重力の再発見』(早川書房) を読む

ジョン W. モファット『重力の再発見』(早川書房)

モファット教授の『重力の再発見』を読みました。副題は「アインシュタインの相対論を超えて」となっています。誰が見ても明らかだと思うんですが、物理学に関する本であって私の専門分野である経済学ではありません。どうして読んだのかというと、2月14日付けの朝日新聞の書評を見て買い求めました。
物理の本なんですが、前半は古典的なアインシュタインまでの物理学を重力論を中心に紹介するとともに、後半では主として、これらの古典的な重力論、ひいては宇宙論に対して、調整パラメータや暗黒物質(ダークマター)などが不要になるような修正重力論(MOG)を展開しています。これで理解できた人は頭がいいんでしょうが、私もこれ以上の説明能力はありません。経済学を専門としていますので、当然ながら、物理学に関する理解力ははなはだ低いんですが、私が従来から気になっているのはダークマターやダークエネルギーではなく、古典的な重力論・宇宙論における特異点の存在です。かなり数多くの特異点が存在するのかもしれませんが、私が知っている有名な特異点は2つあり、宇宙の始まりの際のビッグバンといわゆるブラックホールです。特に、ブラックホールでは時間と空間が入れ替わるとされており、私には不可解でなりません。著者の主張する修正重力論(MOG)ではこれらの特異点は仮定する必要もなく、もちろん、ダークマターなども不要です。しかし、私の直感だけなんですが、やっぱり調整パラメータは依然として恣意的な気がします。悪名高きアインシュタインの宇宙定数と本質的には同じなんではないかという気がしないでもありません。もっとも、修正重力論では古典的な重力論の仮定をいくつか修正します。その最大のものは光速を可変とすることです。宇宙が発生したばかりの超初期段階では光速は今よりもずっと速かったと仮定しています。まあ、ユークリッド幾何学で前提されている平行線の仮定を緩めてリーマン幾何学が誕生したようなもので、何らかの前提を緩めたり否定したりすれば、新たなパラダイムが生じる可能性があります。
経済学と物理学は似通った方法論を有していると私は受け止めています。いずれも、分析対象に何らかのモデルを設定して、多くは数学的に記述し、数学的に解くというプロセスです。ただし、私の認識が正しいかどうか自信がありませんが、物理学がアナリティカルに数学を解いて行くのではないかと想像しているのに対して、経済学は多くの場合リカーシブに解きます。ジオメトリックに解く場合もあります。おそらく、モデルの設定の複雑性なんかにも差があるんだろうと思います。統計的な処理の仕方も、いわゆる数理統計と社会統計で微妙に違う場合もあります。もちろん、最も違うのは分析対象です。宇宙を含む自然を対象とするか、生産と交換を営んでいる社会を対象とするか、大きな違いだという気がします。方法論が似ているせいだけではないと思うんですが、官庁エコノミストの中にも経済学部出身だけでなく、いろんな他学部出身者がいます。すでに役所はお辞めになりましたが、東京大学理学部物理学科ご出身の方も知っています。もっとも、物理学を応用した製品を売っている営業担当はいっぱいいそうな気がしますが、経済学部出身で物理学分野でご活躍の方は知りません。

私ごとき理解力では半分も分からなかったような気がします。一般的な中学生や高校生ではかなり難しそうです。決して万人にオススメできる本ではありませんが、東京でも長崎でも図書館には収録されているようですから、何かの機会に手に取ってみることも一興かもしれません。

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