IMF 「世界経済見通し」見通し編を概観する
一昨日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook 2010 April の見通し編、第1章と第2章が発表されました。月曜日のエントリーで第3章と第4章の分析編を取り上げていますので、今夜のエントリーで完結ということになります。もちろん、いつもの通り、全文リポートの pdf ファイルがアップロードされており入手可能です。まず、IMF のサイトから成長率見通しのサマリーを引用すると以下の通りです。日本の成長率は2010年+1.9%、2011年+2.0%と見通されています。なお、クリックすると、「世界経済見通し」p.4 の Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections の画像が別ウィンドウか別タブで開きます。
一言でいうと、リポートの p.1 の表現を借りて、Recovery Is Stronger than Expected, but Speed Varies ということになります。世界経済の回復は順調で予想以上なんですが、回復テンポは一様ではありません。以下のグラフはリポートの p.4 Figure 1.2. Global Indicators の引用ですが、新興国の高成長が続き、特に左下のパネルで、世界経済に対する中国の寄与が大きくなっていることが読み取れます。
今回の Great Recession で世界的な経常収支不均衡は大きく縮小しました。しかし、この先、世界経済が拡大を続けるのであれば、徐々に不均衡は拡大することが予想され、しかも、従来の日独から中国とアジア新興国が世界の経常黒字を集積することが見通されています。下のグラフはリポートの p.8 Figure 1.6. Global Imbalances を引用しています。
もちろん、先行きリスクもいくつかあります。今夜のブログでは財政バランスを取り上げておきたいと思います。すなわち、今回の Great Recession では景気後退に伴う税収の低下とともに財政による景気刺激策が取られたことから、各国で財政収支が大幅に赤字化しており、日本も財政を悪化させた主要な国のひとつとなっています。景気刺激策だけでなく、人口の高齢化に伴って社会保障給付の増額も続いています。さらに、やや別の異なる要因ながら、欧州のユーロ圏であるギリシアで財政危機が表面化していることはよく知られた通りです。下のグラフはリポートの p.9 Figure 1.7. General Government Fiscal Balances and Public Debt を引用しています。
また、日米欧について、IMF の Global Integrated Monetary Fiscal Model のシミュレーション結果が示されており、財政の信頼性の回復が遅れると成長や資本ストックの蓄積に悪影響が出ることが示されています。これに基づいて、中期的な財政対応策の必要性が強調されています。下のグラフはリポートの p.27 Figure 1.17a. Fiscal Consolidation Packages Designed to Raise Potential Output under Dierent Assumptions about Credibility を引用しています。
最後に、読売新聞のサイトによれば、4月末の日銀「展望リポート」では経済見通しが上方修正され、2011年度の消費者物価上昇率がプラスに改定されるのではないかとの観測が報じられています。しかし、IMF のリポートの各国編に当たる第2章を見ると、p.49 Table 2.3. Selected Asian Economies: Real GDP, Consumer Prices, and Current Account Balance では、暦年と財政年度の違いはありますが、2011年も消費者物価は▲0.5%のデフレが予測されています。
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