本日発表された鉱工業生産、雇用、消費者物価と日銀「展望リポート」
今日は今月最後の閣議日ですので、経済統計がいくつか発表されました。経済産業省から鉱工業生産指数、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率などの雇用統計、総務省統計局から消費者物価指数と家計調査、といったところです。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
3月の鉱工業生産、2カ月ぶり上昇 09年度は22年ぶり低水準
経済産業省が30日発表した3月の鉱工業生産指数(2005=100、季節調整済み)速報値は、前月比0.3%上昇の94.0と2カ月ぶりに上昇した。経産省は基調判断を「持ち直しの動きで推移している」に据え置いた。
業種別にみると、携帯電話開発用の電気測定器や鉄道車両向け電力変換装置、リチウムイオン電池などが伸びた電気機械工業が6.1%上昇。普通自動車や鉄道車両などが好調だった輸送機械工業も1.8%上昇した。海外向けの天然ガスパイプラインなどの生産も伸び、鉄鋼業も3.1%伸びた。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、4月は3.7%の上昇、5月は0.3%の低下を見込む。6月を横ばいと仮定すると4-6月期は前期比3.5%上昇する見通し。
1-3月期の鉱工業生産指数は前期比6.7%上昇の94.0と4四半期連続で上昇。一方、09年度は前の年度に比べ9.0%低下の85.9と、現行の05年基準で最低。過去にさかのぼると1987年度(84.4)に次ぐ低水準だった。前の年度に引き続き、生産が低調に推移した。
3月の完全失業率、0.1ポイント悪化 09年度は過去2番目の高水準
総務省が30日朝発表した3月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント悪化の5.0%だった。建設業を中心に就業者数が減少。完全失業者数の増加も続いていることから、総務省は「予断できない状況が続いている」とみている。
就業者数は前年同月に比べ35万人減少。うち建設業は33万人減と前月(10万人減)よりマイナス幅が拡大しており、「公共投資の弱含みの可能性がある」(総務省)という。製造業は31万人減だった。一方、医療・福祉は51万人増と比較可能な2003年1月以降で最大の増加幅だった。
同時に発表した09年度平均の完全失業率は前の年度に比べ1.1ポイント悪化の5.2%と、6年ぶりに%%を上回り、02年度(5.4%)に次いで過去2番目の高水準。悪化幅は過去最大だった。完全失業者は68万人増、就業者は108万人減といずれも過去最大を記録した。
有効求人倍率は0.02ポイント上昇 3月0.49倍 09年度は過去最低 0.45倍
厚生労働省が30日朝発表した3月の有効求人倍率(季節調整)は前月比0.02ポイント上昇の0.49倍だった。上昇は3カ月連続。新規求人倍率は横ばいの0.84倍だった。有効求人は2.7%増。有効求職者は0.4%増だった。
新規求人は前年同月に比べ7.3%の増加と、2006年12月以来、3年3カ月ぶりにプラスへ転じた。製造業(37.4%増)が大幅に増加したほか、マイナスが続いていた教育・学習支援業(14.7%増)やサービス業(13.0%増)などがプラスへ転じた。一方、宿泊業・飲食サービス業(9.0%減)、建設業(7.5%減)は落ち込みが続いた。
正社員の有効求人倍率は前年同月比0.04ポイント低下の0.28倍だった。
都道府県別の有効求人倍率は、最も高かったのが福井県の0.70倍で、最も低かったのは沖縄県の0.30倍だった。
同時に発表した09年度平均の有効求人倍率は、前年度に比べ0.32ポイント低下の0.45倍。マイナスは3年連続で、統計を取り始めた1963年以降の最低を記録した。
消費者物価、3月は1.2%下落 13カ月連続
総務省が30日発表した3月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は価格変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.5と前年同月比1.2%低下した。下落は13カ月連続。薄型テレビ、カメラや住居費などが下落。エアコン、家具などの家庭用耐久財は10%強下げた。一方、光熱費は寒い日が多かったことなどを映して上昇した。
このほかに下げ幅が大きかったのは外国パック旅行(マイナス11.0%)携帯電話通信料(同1.9%)など。全体に家電やサービス関連での下落が続いている。
CPIの下落幅は昨年8月のマイナス2.4%を境に縮小傾向をたどっていたが、ここへ来て足踏み状態が鮮明。しばらくは指数のマイナスが続くとの見方が多い。
3月の実質消費支出4.4%増 家計調査
総務省が30日発表した3月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は物価変動を除いた実質で前年同月比4.4%増えた。年度末のエコポイント制度の一部見直しを前に駆け込み需要が生じ、薄型テレビなどの売り上げが大きく伸びた。実感に近い名目消費も3.0%増となった。
1世帯あたりの消費支出は総額で31万9991円。前年同月比の実質伸び率は04年5月以来の高さとなった。ただ、総務省は「エコポイントの特殊要因で押し上げられている面が強く、個人消費の基調は今後を見極める必要がある」とも指摘している。
品目別にみると、薄型テレビが前年同月比で実質182%増え、消費支出全体を1.1ポイント押し上げた。ブルーレイ・ディスクの録画機も好調だった。自動車や国内外のパック旅行も伸びた。ただ、勤労者世帯の実収入は名目0.9%減の43万9410円。物価変動を除いた実質でも前年同月比0.4%増と伸びは弱い。
まず、鉱工業生産については以下のグラフの通りです。上のパネルが2005年=100とする季節調整済み指数そのもので、影をつけた部分は景気後退期です。直近の景気の谷は2009年3月と仮置きしています。昨年2月を底とした急ピッチの回復局面が終了し、通常の巡航速度に移行しつつある局面と私は考えています。下のパネルに見られる在庫循環図は四半期データの季節調整済み指数の前年同期比で書いており、1999年1-3月期の緑色の上向き矢印から10年余りかけて2周近くし、今年1-3月期の下向き矢印まで、とうとう第2象限まで達しました。
次に雇用指標のグラフは以下の通りです。上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、産業別雇用者の対前年同月差の増減です。上から3つのパネルの計数は季節調整済みの系列で、影をつけた部分は上の鉱工業生産指数と同じです。通常、失業率が景気回復初期に悪化するのは、景気の回復とともに労働市場への参入があるからなんですが、今回の統計についてはその要因ではなく、公共投資の削減に伴う建設業での雇用者数の大幅減少が原因となっています。全体として雇用指標は改善の方向にあるものの、引き続き、雇用水準は低いままですし、建設業雇用者減などの少し気がかりな動きも見受けられます。
次に、消費者物価は依然として日銀の無策の下でデフレが続いています。下のグラフは生鮮食品を除くコア CPI とエネルギーと食料を除く欧米流のコアコア CPI と東京都区部のコア CPI を折れ線グラフで、また、全国のコア CPI を寄与度分解した結果を棒グラフで示してあります。いずれも季節調整していない原系列の前年同月比です。4月の東京都区部のデフレ悪化は高校授業料無償化の影響も含まれています。後述する日銀の姿勢も含めて、直感的に、来年いっぱいはデフレが続きそうな気がします。
さらに、家計消費については以下のグラフの通りです。実質と名目の季節調整済みの消費指数です。3月になって大きく跳ねました。薄型テレビなどに対する家電エコポイントの制度変更に起因する駆込み需要の発生と受け止めています。少しずつ所得は上向いているものの、消費の持続性には疑問が残ります。
最後に、金融政策決定会合を開催していた日銀は政策金利の据置きを決めるとともに、「展望リポート」を発表しました。政策委員の大勢経済見通しは以下の表の通りです。前々から予想されていた通り、来年度はわずかながらプラスの消費者物価上昇率を見込んでいます。
日銀の金融政策決定会合では、なぜか、「成長基盤強化」が打ち出されました。執行部に検討が指示されています。以前から西村副総裁などが主張している「社会投資ファンド」への積極的な資金供給を指すのであれば私も理解しなくもないんですが、まだ追加緩和の余地が残されているにもかかわらず、環境や介護といったカギカッコ付きの「成長産業」への資金供給強化なんぞはいかがなもんでしょうか。法王と呼ばれたかつての一万田総裁が川崎製鉄の高炉建設計画に反対して「ペンペン草」発言をしたらしいですが、デフレ脱却を放棄して産業政策に走るとすれば、誰も「政府からの独立」を盾にした日銀を止めることが出来ないだけに、間違った道を走り出す日銀に私は恐怖を感じています。
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