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2010年4月30日 (金)

本日発表された鉱工業生産、雇用、消費者物価と日銀「展望リポート」

今日は今月最後の閣議日ですので、経済統計がいくつか発表されました。経済産業省から鉱工業生産指数、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率などの雇用統計、総務省統計局から消費者物価指数家計調査、といったところです。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

3月の鉱工業生産、2カ月ぶり上昇 09年度は22年ぶり低水準
経済産業省が30日発表した3月の鉱工業生産指数(2005=100、季節調整済み)速報値は、前月比0.3%上昇の94.0と2カ月ぶりに上昇した。経産省は基調判断を「持ち直しの動きで推移している」に据え置いた。
業種別にみると、携帯電話開発用の電気測定器や鉄道車両向け電力変換装置、リチウムイオン電池などが伸びた電気機械工業が6.1%上昇。普通自動車や鉄道車両などが好調だった輸送機械工業も1.8%上昇した。海外向けの天然ガスパイプラインなどの生産も伸び、鉄鋼業も3.1%伸びた。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、4月は3.7%の上昇、5月は0.3%の低下を見込む。6月を横ばいと仮定すると4-6月期は前期比3.5%上昇する見通し。
1-3月期の鉱工業生産指数は前期比6.7%上昇の94.0と4四半期連続で上昇。一方、09年度は前の年度に比べ9.0%低下の85.9と、現行の05年基準で最低。過去にさかのぼると1987年度(84.4)に次ぐ低水準だった。前の年度に引き続き、生産が低調に推移した。
3月の完全失業率、0.1ポイント悪化 09年度は過去2番目の高水準
総務省が30日朝発表した3月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント悪化の5.0%だった。建設業を中心に就業者数が減少。完全失業者数の増加も続いていることから、総務省は「予断できない状況が続いている」とみている。
就業者数は前年同月に比べ35万人減少。うち建設業は33万人減と前月(10万人減)よりマイナス幅が拡大しており、「公共投資の弱含みの可能性がある」(総務省)という。製造業は31万人減だった。一方、医療・福祉は51万人増と比較可能な2003年1月以降で最大の増加幅だった。
同時に発表した09年度平均の完全失業率は前の年度に比べ1.1ポイント悪化の5.2%と、6年ぶりに%%を上回り、02年度(5.4%)に次いで過去2番目の高水準。悪化幅は過去最大だった。完全失業者は68万人増、就業者は108万人減といずれも過去最大を記録した。
有効求人倍率は0.02ポイント上昇 3月0.49倍 09年度は過去最低 0.45倍
厚生労働省が30日朝発表した3月の有効求人倍率(季節調整)は前月比0.02ポイント上昇の0.49倍だった。上昇は3カ月連続。新規求人倍率は横ばいの0.84倍だった。有効求人は2.7%増。有効求職者は0.4%増だった。
新規求人は前年同月に比べ7.3%の増加と、2006年12月以来、3年3カ月ぶりにプラスへ転じた。製造業(37.4%増)が大幅に増加したほか、マイナスが続いていた教育・学習支援業(14.7%増)やサービス業(13.0%増)などがプラスへ転じた。一方、宿泊業・飲食サービス業(9.0%減)、建設業(7.5%減)は落ち込みが続いた。
正社員の有効求人倍率は前年同月比0.04ポイント低下の0.28倍だった。
都道府県別の有効求人倍率は、最も高かったのが福井県の0.70倍で、最も低かったのは沖縄県の0.30倍だった。
同時に発表した09年度平均の有効求人倍率は、前年度に比べ0.32ポイント低下の0.45倍。マイナスは3年連続で、統計を取り始めた1963年以降の最低を記録した。
消費者物価、3月は1.2%下落 13カ月連続
総務省が30日発表した3月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は価格変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.5と前年同月比1.2%低下した。下落は13カ月連続。薄型テレビ、カメラや住居費などが下落。エアコン、家具などの家庭用耐久財は10%強下げた。一方、光熱費は寒い日が多かったことなどを映して上昇した。
このほかに下げ幅が大きかったのは外国パック旅行(マイナス11.0%)携帯電話通信料(同1.9%)など。全体に家電やサービス関連での下落が続いている。
CPIの下落幅は昨年8月のマイナス2.4%を境に縮小傾向をたどっていたが、ここへ来て足踏み状態が鮮明。しばらくは指数のマイナスが続くとの見方が多い。
3月の実質消費支出4.4%増 家計調査
総務省が30日発表した3月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は物価変動を除いた実質で前年同月比4.4%増えた。年度末のエコポイント制度の一部見直しを前に駆け込み需要が生じ、薄型テレビなどの売り上げが大きく伸びた。実感に近い名目消費も3.0%増となった。
1世帯あたりの消費支出は総額で31万9991円。前年同月比の実質伸び率は04年5月以来の高さとなった。ただ、総務省は「エコポイントの特殊要因で押し上げられている面が強く、個人消費の基調は今後を見極める必要がある」とも指摘している。
品目別にみると、薄型テレビが前年同月比で実質182%増え、消費支出全体を1.1ポイント押し上げた。ブルーレイ・ディスクの録画機も好調だった。自動車や国内外のパック旅行も伸びた。ただ、勤労者世帯の実収入は名目0.9%減の43万9410円。物価変動を除いた実質でも前年同月比0.4%増と伸びは弱い。

まず、鉱工業生産については以下のグラフの通りです。上のパネルが2005年=100とする季節調整済み指数そのもので、影をつけた部分は景気後退期です。直近の景気の谷は2009年3月と仮置きしています。昨年2月を底とした急ピッチの回復局面が終了し、通常の巡航速度に移行しつつある局面と私は考えています。下のパネルに見られる在庫循環図は四半期データの季節調整済み指数の前年同期比で書いており、1999年1-3月期の緑色の上向き矢印から10年余りかけて2周近くし、今年1-3月期の下向き矢印まで、とうとう第2象限まで達しました。

鉱工業生産の推移

次に雇用指標のグラフは以下の通りです。上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、産業別雇用者の対前年同月差の増減です。上から3つのパネルの計数は季節調整済みの系列で、影をつけた部分は上の鉱工業生産指数と同じです。通常、失業率が景気回復初期に悪化するのは、景気の回復とともに労働市場への参入があるからなんですが、今回の統計についてはその要因ではなく、公共投資の削減に伴う建設業での雇用者数の大幅減少が原因となっています。全体として雇用指標は改善の方向にあるものの、引き続き、雇用水準は低いままですし、建設業雇用者減などの少し気がかりな動きも見受けられます。

雇用指標の推移

次に、消費者物価は依然として日銀の無策の下でデフレが続いています。下のグラフは生鮮食品を除くコア CPI とエネルギーと食料を除く欧米流のコアコア CPI と東京都区部のコア CPI を折れ線グラフで、また、全国のコア CPI を寄与度分解した結果を棒グラフで示してあります。いずれも季節調整していない原系列の前年同月比です。4月の東京都区部のデフレ悪化は高校授業料無償化の影響も含まれています。後述する日銀の姿勢も含めて、直感的に、来年いっぱいはデフレが続きそうな気がします。

消費者物価の推移

さらに、家計消費については以下のグラフの通りです。実質と名目の季節調整済みの消費指数です。3月になって大きく跳ねました。薄型テレビなどに対する家電エコポイントの制度変更に起因する駆込み需要の発生と受け止めています。少しずつ所得は上向いているものの、消費の持続性には疑問が残ります。

家計消費の推移

最後に、金融政策決定会合を開催していた日銀は政策金利の据置きを決めるとともに、「展望リポート」を発表しました。政策委員の大勢経済見通しは以下の表の通りです。前々から予想されていた通り、来年度はわずかながらプラスの消費者物価上昇率を見込んでいます。

日銀「展望リポート」大勢見通し

日銀の金融政策決定会合では、なぜか、「成長基盤強化」が打ち出されました。執行部に検討が指示されています。以前から西村副総裁などが主張している「社会投資ファンド」への積極的な資金供給を指すのであれば私も理解しなくもないんですが、まだ追加緩和の余地が残されているにもかかわらず、環境や介護といったカギカッコ付きの「成長産業」への資金供給強化なんぞはいかがなもんでしょうか。法王と呼ばれたかつての一万田総裁が川崎製鉄の高炉建設計画に反対して「ペンペン草」発言をしたらしいですが、デフレ脱却を放棄して産業政策に走るとすれば、誰も「政府からの独立」を盾にした日銀を止めることが出来ないだけに、間違った道を走り出す日銀に私は恐怖を感じています。

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2010年4月29日 (木)

「ゲゲゲの女房」は期待できるか?

「ゲゲゲの女房」今年度上期のNHK朝の連続テレビ小説は、放送開始が8時に繰り上がって「ゲゲゲの女房」です。タイトル通り、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者の水木しげるさんの奥さまを主人公にした物語です。4月中に、生立ちから始まって、いよいよ結婚して調布の生活が始まりました。時代背景は高度成長期の古き良き昭和なんですが、貸し本マンガ作家のかなり貧困な生活が描かれています。でも、この先は有名な売れっ子マンガ家になるんでしょうから、いかにも昭和らしいサクセス・ストーリなんだと思います。土曜日に寝過ごすことがあるものの、私はほぼ毎朝熱心に見ています。主人公の生まれが昭和7年ですから、ほぼ私の親の世代に当たります。ということは、主人公の結婚が当時としては少し遅めですから、ほぼ私の生まれ育った時代背景が描かれているわけです。

ここ2-3年の朝の連続テレビ小説と違って、今回はいきものががりのみなさんによるオープニングのテーマソングがとてもいいです。これも、私が熱心に毎朝見ている一つの理由です。この先も大いに期待しています。

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2010年4月28日 (水)

日本人はどれくらい幸福か?

昨日4月27日、内閣府から「国民生活選好度調査」の結果が発表されています。幸福度を表す新たな指標の開発に向けた一歩として、国民が実感している幸福感・満足感の現状を把握することを目的とした調査だそうです。少し前に『目からウロコの幸福学』なんて本がよく売れていたりしましたし、「幸福の科学」というのは宗教団体だったようにも思いますが、「幸福」とは私のような素朴なエコノミストにはよく分からない概念ながら、東大の玄田教授なんかがこれに近い分野を研究されていたような気がしないでもありません。経済官庁から発表されていますので、というわけでもないんですが、それなりに面白そうなので、簡単に見ておきたいと思います。なお、以下のグラフはすべて国民生活選好度調査の「参考図表」から引用しています。

「どの程度幸福か」の国際比較

まず、どれくらい幸福かを国際比較したグラフは上の通りです。日本の幸福度の分布は英国やデンマークといった成熟した先進国よりも、ハンガリーやウクライナといった新興国に近く、ツインピークスを持ってやや二極分解しています。背景に何らかの格差があるのかもしれません。

「どの程度幸福か」 (男女別)

次に、男女別の幸福度を見たのが上のグラフです。男女ともツインピークスで二極分解しているのは変わりないんですが、少しへこんだ6点を境にして、明らかに男性の方が幸福度が低く、女性の方が幸福度が高いのが見て取れます。実際の客観的条件としてそうなのか、それとも、主観的な感じ方としてそうなのかは私には不明です。

「どの程度幸福か」 (年齢別)

最後に、年齢別の幸福度を示したのが上のグラフです。これも各年代すべてでツインピークスを持っています。性別でも年齢別でも、どう切り分けても日本人は幸福度についてツインピークスを持った二極分解しているようです。年齢別では、30代が最も幸福度が高く、年齢が上がるにつれて幸福度が落ちているのが見て取れます。

最後に、内閣府の国民生活選好度調査とも幸福度とも何の関係もなく、一昨日の月曜日のエントリーでペーパーを紹介したギリシアの財政について、昨日、S&P がギリシアとポルトガルの長期のソブリン格付をそれぞれ3ノッチ格下げして BB- と2ノッチで A- にダウングレードし、ギリシアの国債は一気にジャンク債になってしまいました。世界的な株安を招いたこともあり、ユーロ圏16カ国の緊急首脳会議が5月10日に開かれるそうです。メモとして、以下に、S&P の記者発表へのリンクのみ掲げておきます。

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2010年4月27日 (火)

今夏のボーナスの予想やいかに?

昨年のボーナスは極めて渋く、夏季も年末も10%近い減少率となりましたが、今夏のボーナス予想が今月初めに出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名民間
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研35.7万円
(▲1.6%)
57.2万円
(▲0.2%)
背景には、企業の人件費増大に対する慎重な姿勢
みずほ総研36.7万円
(+1.0%)
69.2万円
(▲0.2%)
2010年夏のボーナスを取り巻く環境には、昨年よりも幾分明るさ
三菱UFJリサーチ&コンサルティング36.1万円
(▲0.7%)
57.2万円
(▲0.2%)
景気は持ち直しの動きが続いているとはいえ、2010年夏のボーナスを取り巻く環境は、依然として厳しい
第一生命経済研37.3万円
(+2.6%)
55.9万円
(▲0.3%)
企業収益の増加に伴ってボーナスも08年年末賞与以来のプラス

なお、公務員については、みずほ総研と第一生命経済研は国家公務員と地方公務員の平均、日本総研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングは国家公務員の計数を取っています。ボーナスについては地方公務員よりも国家公務員の方がやや水準が高くなっています。特に、みずほ総研の公務員のボーナス支給額が高くなっているのは管理職を含めているためであると聞いたことがあります。いずれにせよ、ボーナスだけは、いつもながらの官高民低です。他はともかく、ボーナスだけは公務員をしていてよかったと私も実感します。しかも、支給額だけでなく公務員の場合は支給率もほぼ100%です。民間の場合は8割を少し上回ったくらいだと思います。
それはともかく、上の表に取り上げた4機関の意見は真っ二つに分かれました。制度的な要因で決まっている公務員ボーナスを別にして、民間企業の1人当たりボーナス予想を見ると、2機関はボーナスが増えると予想してますし、減る予想も2機関です。リポートを読んでいて、何に着目しているのかに相違が起因すると私は受け止めています。すなわち、ボーナス算定の基礎となる所定内賃金か、あるいは、企業業績かです。所定内賃金を重視すればボーナス減と予想し、企業業績を重視すればボーナス増と見ているようです。でも、その差は小さいと考えるべきです。1人当たりボーナスについては意見が分かれたんですが、1人当たりに支給人数を乗じて得られる支給総額については、ほぼ4機関とも一致して微増を予想しています。もちろん、支給人数が増加し支給率が上昇するからです。マクロ経済学的には1人当たり支給額とともに支給総額も、個人消費を決定する重要な所得要因ですから、そろって増加が予想されているということは、先行きの消費の底堅い動きを期待させます。
なお、昨夏までのボーナスの伸び率の実績は以下の通りです。

夏季ボーナス伸び率の推移

なんといっても、ボーナスは勤め人の大きな楽しみのひとつです。景気が順調に回復して、ボーナスも増額されるのが、いかなる観点からも望ましいことはいうまでもありません。

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2010年4月26日 (月)

ギリシアの財政危機に関する新しいペーパーを書き上げる

ギリシアの財政危機に関する新しいペーパー「ギリシアにおける財政危機に関するノート: 日本への教訓」を書き上げました。6月に刊行される『長崎大学経済学部研究年報』に研究ノートとして掲載される予定です。
実証研究を含まない研究ノートのいつもの例に漏れず、かなり大量の図表や参考文献で補強して、私の考えていることを、ギリシアの財政危機から始めて、一般論としてバブルを取り上げつつ、最後は日本財政に対する含意まで、やや根拠薄弱に書き連ねています。でも、一応、学術論文ですから、事実関係についてはさまざまなソースを当たって確認する作業がそれなりにタイヘンでした。従って、私が書いた本文よりも脚注や参考文献の方がそれなりに価値ある資料集となっているんではないかと自負しています。結論として、細かく分けて以下の12点を指摘しています。

  1. ギリシアの財政危機の背景にはユーロ導入によるバブルの発生と崩壊がある。
  2. 従って、ギリシアだけでなくポルトガルやスペインといった南欧諸国に財政危機が伝染する素地が存在する。
  3. ギリシア、あるいは南欧諸国の財政危機の経済的帰結はユーロの通貨危機である。
  4. 従って、ギリシア以外のユーロ圏諸国はギリシアの財政危機を救済するインセンティブを有する。
  5. しかし、ユーロ圏諸国を主体とする救済は経済規模から見てギリシアとポルトガルまでであり、スペインに財政危機が伝染すれば IMF を主体とする救済に依存せざるを得ない。
  6. ギリシアがユーロ圏諸国に救済を要請したのは IMF の厳しいコンディショナリティを回避したわけではなく、「最後の貸し手」の役割を域内諸国に求めたものである。これは従来にない新しいスキームである。
  7. バブルとは非合理的であったり、情報の非対称性に基づくばかりではなく、合理的なバブルもある。
  8. 財政危機とは流動性の不足であり、政府の支払い能力の低下であることから、財政調整政策で重視されるべき第1次接近目標はストックの国債残高ではなく、フローの財政赤字、特に、プライマリー・バランスである。
  9. フローの財政赤字を国内で調達できなければ海外に頼ることになり、その意味で、経常収支の動向も重要な指標となる。
  10. 日本はフローでもストックでも大幅な財政赤字を抱えているが、経常収支は黒字を続けており、これは民間貯蓄による財政赤字ファイナンスが可能であることを意味することから、ただちに深刻な財政危機に陥る可能性は低い。
  11. しかし、高齢化に伴う国内貯蓄率の低下がすでに始まっており、さらに、経済規模から見て日本の財政は国際機関でも救済されない可能性もあることから、何らかの財政健全化策が必要である。
  12. ギリシアの例を見ると、財政危機は国債の sudden deth ではなく、市場から一定の警告期間が示される可能性もあるが、この期間の長さについては予断を持つべきではない。

いつかブログで書いた記憶がありますが、通常、私はペーパーを書き終えてから1-2週間ほど寝かせる習慣があります。しかし、このギリシアの財政危機については、3月から先週まで毎日のように目まぐるしくイベントが次々に発生したため、とうとう、先週末の4月23日にギリシアが金融支援を要請した段階で書き進むのをストップしました。毎日のように書き直しましたので、論旨が飛んだりうねったりしています。少しまとまりの悪いペーパーになってしまって反省しています。

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2010年4月25日 (日)

伊坂幸太郎『オー! ファーザー』 (新潮社) を読む

伊坂幸太郎『オー! ファーザー』 (新潮社)伊坂幸太郎さんの新刊『オー! ファーザー』 (新潮社) を読みました。もっとも、新刊といっても、2006-07年にかけて河北新報などの地方紙に連載されていたものを単行本化したらしく、作者自身のあとがきの表現を借りれば、『ゴールデンスランバー』から始まる第2期の前の第1期を締めくくる作品、ということになるのかもしれません。しかしながら、この第2期の最近の2作、すなわち、『あるキング』と『SOS の猿』については、意欲的な作品だと思うものの、一部に評価が定まらなかったりもしますし、この『オー! ファーザー』は私や我が家のおにいちゃんを含めて多くの読書子がカギカッコ付きの「伊坂幸太郎の作品」に求めている軽快感やエンタテインメントなどの要素をギッシリ詰め込んでいるような気がします。新潮社のサイトから引用している左上の写真にチラリと見えるかもしれませんが、この『オー! ファーザー』の英語タイトルは a family となっています。ついでながら、私は日本語タイトルを無理やり複数形にして『オー! ファーザー』にすればいいんではないかと思ったりしています。なお、この先はいつもの通りネタバレがあるかもしれませんから、未読の方が読み進む場合はご注意ください。
物語は1人の母親と4人の父親といっしょに6人家族で暮らす高校生の由紀夫を主人公に進みます。4人の父親に育てられた由紀夫は勉強の出来もよければ、バスケ部のレギュラーで格闘技にも覚えがあるというスーパー高校生です。4人の父親は、ギャンブル好きながら妙に言葉に説得力ある鷹、容姿端麗で女好きの葵、格闘技好きの体育会系中学教師の勲、冷静沈着で知性豊かな大学教授の悟の4人です。誰が誰とはいいませんが、明らかにビートルズの4人を意識したキャラと私には見受けられます。その意味で『ゴールデンスランバー』との連続性を見出す読者も少なくないと思います。なお、母親の知代は残業や出張のため最後の最後まで姿を見せません。その昔に我が家の子供達が熱心に見ていた「パワーパフガールズ」に出て来るダウンズヴィル市長秘書のミズ・ベラムを思い浮かべてしまいました。見事なプロポーションながら、首から下しか現れず顔は画面からはみ出ている女性です。
この由紀夫が1学期の中間試験の時期に県知事選挙に絡む事件に巻き込まれてしまうんですが、悟がテレビのクイズ番組に出場して「明日、予定通りに、朝10時半に迎えに行くから、窓空けて待ってろよ」と宣言して、実際に、4人の父親が連携して由紀夫を救い出すというものです。由紀夫と4人の父親以外にも、由紀夫の同じクラスの多恵子や殿様、小学校からの幼馴染みの鱒二、あるいは、富田林などの個性的な脇役についても人間がキチンと描き分けられています。事件が起こるまでにバラまかれたいろんな伏線、すなわち、電線を使った脱出、手旗信号、順番で英単語を覚える殿様方式、富田林が熱狂的なファンだったプロ野球の天才投手、E.T.の着メロ、などが事件解決の際に見事に収束します。伊坂作品の真骨頂といったところかもしれません。

最後に、やや不謹慎な仮定かもしれませんが、母親の知代がすでに死んでいたらと考えたところ、それでもこの作品は成り立っているような気がします。あるいは、知代の存在感が希薄なのかもしれません。でも、最後に、由紀夫の脳裏によぎる父親の葬式と残された3人の父親の連想から、やっぱり、母親の知代もこの作品に欠かせない存在であることを作者は主張したいのであろうと私は解釈しています。

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2010年4月24日 (土)

大学生の就職戦線はますます厳しく「厳選採用」へ

少し旧聞に属する話題なんですが、今週4月21日水曜日にリクルートのワークス研究所から「ワークス大卒求人倍率調査 (2011年卒)」が発表されました。大学に出向してから学生の就職戦線の話題にも敏感になり、昨年もこの時期に取り上げています。まず、リポートからハイライトを引用すると以下の通りです。

求人倍率は前年の1.62倍から1.28倍に低下
大企業は0.38倍から0.47倍、300人未満企業は8.43倍から4.41倍と、規模間の倍率差は縮小
来春2011年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は、1.28倍となった。全国の民間企業の求人総数(計画)は、前年の72.5万人から58.2万人への19.8%のマイナスとなった。一方、学生の民間企業就職希望者数は、前年の44.7万人から45.6万人への1.9%のプラスとなった。
厳しい経済環境が続き、また厳選採用を行っているが、今年の求人倍率は、1996年3月卒(1.08倍)や、2000年3月卒(0.99倍)の就職難とされている時期ほどには、落ち込まない見通しとなった。
従業員規模ごとの求人倍率は、5000人以上の大企業では前年の0.38倍から0.47倍、300人未満企業では前年の8.43倍から4.41倍となり、前年より規模間の倍率差は縮小し、規模間のミスマッチは緩和した。

ということで、リポートに示されているグラフと同じのをマネして書いてみました。以下の通りです。赤い棒グラフが企業からの求人総数、青が大学生の民間求職希望者数で、ともに左軸の単位は万人です。緑の折れ線グラフはこの比率として求められる求人倍率で、右軸の単位は倍です。2008-09年卒の2年ほど2倍を超えていたのが今年2010年卒からガクンと下がって、とうとう来年2011年卒は1.28倍となりました。昨年調査の2010年卒まではまだまだ大学生の新卒者に対する求人は意外と堅調だったんですが、2011年卒からますます厳しさが増していると私は受け止めています。上の引用の言葉を借りると「厳選採用」ということになります。

ワークス大卒求人倍率調査 (2011年卒)

2008年卒までは景気が順調に拡大していた上に、いわゆる団塊の世代の退職に合わせて新卒採用意欲も高かったんですが、Great Recession を経て団塊の世代の退職補充もほぼ終わり、大学生の就職戦線は厳しさを増しています。また、規模別では倍率格差が顕著に縮小しています。どの規模で見ても企業の求人は減少しているんですが、学生の希望の方が大きくシフトしているのが原因です。学生の大企業志向が一段落するとともに景気も上向きになって、この先の大学生の就職戦線は落ち着く方向にあるのかもしれません。

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2010年4月23日 (金)

IMF 「世界経済見通し」見通し編を概観する

一昨日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook 2010 April の見通し編、第1章と第2章が発表されました。月曜日のエントリーで第3章と第4章の分析編を取り上げていますので、今夜のエントリーで完結ということになります。もちろん、いつもの通り、全文リポートの pdf ファイルがアップロードされており入手可能です。まず、IMF のサイトから成長率見通しのサマリーを引用すると以下の通りです。日本の成長率は2010年+1.9%、2011年+2.0%と見通されています。なお、クリックすると、「世界経済見通し」p.4 の Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections の画像が別ウィンドウか別タブで開きます。

Latest IMF projections

一言でいうと、リポートの p.1 の表現を借りて、Recovery Is Stronger than Expected, but Speed Varies ということになります。世界経済の回復は順調で予想以上なんですが、回復テンポは一様ではありません。以下のグラフはリポートの p.4 Figure 1.2. Global Indicators の引用ですが、新興国の高成長が続き、特に左下のパネルで、世界経済に対する中国の寄与が大きくなっていることが読み取れます。

Figure 1.2. Global Indicators

今回の Great Recession で世界的な経常収支不均衡は大きく縮小しました。しかし、この先、世界経済が拡大を続けるのであれば、徐々に不均衡は拡大することが予想され、しかも、従来の日独から中国とアジア新興国が世界の経常黒字を集積することが見通されています。下のグラフはリポートの p.8 Figure 1.6. Global Imbalances を引用しています。

Figure 1.6. Global Imbalances

もちろん、先行きリスクもいくつかあります。今夜のブログでは財政バランスを取り上げておきたいと思います。すなわち、今回の Great Recession では景気後退に伴う税収の低下とともに財政による景気刺激策が取られたことから、各国で財政収支が大幅に赤字化しており、日本も財政を悪化させた主要な国のひとつとなっています。景気刺激策だけでなく、人口の高齢化に伴って社会保障給付の増額も続いています。さらに、やや別の異なる要因ながら、欧州のユーロ圏であるギリシアで財政危機が表面化していることはよく知られた通りです。下のグラフはリポートの p.9 Figure 1.7. General Government Fiscal Balances and Public Debt を引用しています。

Figure 1.7. General Government Fiscal Balances and Public Debt

また、日米欧について、IMF の Global Integrated Monetary Fiscal Model のシミュレーション結果が示されており、財政の信頼性の回復が遅れると成長や資本ストックの蓄積に悪影響が出ることが示されています。これに基づいて、中期的な財政対応策の必要性が強調されています。下のグラフはリポートの p.27 Figure 1.17a. Fiscal Consolidation Packages Designed to Raise Potential Output under Dierent Assumptions about Credibility を引用しています。

Figure 1.17a. Fiscal Consolidation Packages Designed to Raise Potential Output under Dierent Assumptions about Credibility

最後に、読売新聞のサイトによれば、4月末の日銀「展望リポート」では経済見通しが上方修正され、2011年度の消費者物価上昇率がプラスに改定されるのではないかとの観測が報じられています。しかし、IMF のリポートの各国編に当たる第2章を見ると、p.49 Table 2.3. Selected Asian Economies: Real GDP, Consumer Prices, and Current Account Balance では、暦年と財政年度の違いはありますが、2011年も消費者物価は▲0.5%のデフレが予測されています。

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2010年4月22日 (木)

貿易統計にみる輸出の拡大ペースは巡航速度に

昨日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook 2010 April の見通し編、第1章と第2章が発表されました。何分、200ページを超える英文リポートですので、もう少し目を通してから、日を改めて取り上げたいと思います。

ということで、本日、財務省から3月の貿易統計が発表されました。コチラに注目したいと思います。ヘッドラインとなる輸出が6兆49億円、輸入が5兆560億円、差引きの貿易収支が9489億円の黒字でした。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

09年度貿易収支、2年ぶり黒字 中国、最大の輸出相手国に
財務省が22日発表した2009年度の貿易統計速報(通関ベース)によると、貿易収支は5兆2332億円の黒字と、2年ぶりに黒字になった。年度ベースでは輸出、輸入とも前年度を下回ったものの、足元では3月の輸出が前年同月比43.5%増と4カ月連続で増加するなど輸出の回復基調が続いている。また09年度の中国向けの輸出額は米国を上回り、日本にとって最大の輸出相手国になった。
09年度の輸出額は前年度比17.1%減の59兆円、輸入額は25.2%減の54兆円だった。米欧の金融危機の影響で年度前半は世界貿易が低迷し、輸出額は比較可能な1980年度以降で初めて2年連続2ケタ減となった。ただ年度後半は各国の景気対策やアジア経済のいち早い回復で持ち直している。
地域別に09年度の輸出をみると、米国向けは22.7%減と3年連続で減った。大型自動車や金属加工に使う工作機械が落ち込んだ。欧州連合(EU)向けは27.5%減と2年連続でマイナス。オランダやフランス向け自動車、ドイツ向け旋盤などが減った。アジア向けも8.3%減になったものの、欧米に比べると減少率は小さい。一方で、輸入は原油価格が前年度よりも下がったことなどで、中東からの輸入額が34.8%減った。
同日発表した10年3月の貿易収支は9489億円の黒字と、一昨年秋のリーマン・ショック後では最大になった。輸出では自動車が米国向けを中心に前年同月の2倍に増えた。半導体などの電子部品の輸出も前年同月比1.6倍。シンガポールや中国向けメモリーなどが好調だった。

どうしても報道では年度の統計が主になるんですが、年度の数字は過去のものだと考えていますので、私のこのブログでは月次の統計を中心に見たいと思います。ということで、いつものグラフは以下の通りです。上の2つのパネルは輸出入とその差額たる貿易収支の毎月の動向です。一番上のパネルが季節調整していない原系列の統計、真ん中が季節調整済みの系列です。一番下のパネルは金額ベースの輸出を価格と数量で寄与度分解したものです。

貿易統計の推移

まず、指摘しておきたいのは、第1に、前年同月比では昨年の大幅な落ち込みの反動で輸出が大幅増に見えるんですが、上のグラフの真ん中のパネルに明らかなように、季節調整で見た前月比ベースの輸出の増勢は大きく鈍化しつつあることです。2月は春節と呼ばれる旧正月の影響もありましたし、私自身も4-5月くらいまでは輸出の回復が続くと考えていたんですが、ここに来て大きなブレーキがかかったと受け止めています。鈍化の中心は中国とアジア向けです。第2に、このところ、このブログでは OECD の先行指数を取り上げていないんですが、これに見られる景気動向にも少し変化が現れ始めており、先行きはさらに日本の輸出が鈍化する可能性が高まっていることです。そして、第3に、従って、1-3月期の GDP 統計で外需の寄与度が縮小する可能性が大きくなっています。10-12月期の外需寄与度は+0.5%だったんですが、1-3月期はもう少し小さくなる可能性があります。もちろん、外需として見ると輸入も含めて考える必要があり、3月の貿易黒字などからは大幅な縮小には至らないと受け止めていますが、少なくとも、10-12月期の+0.5%から拡大することはないと考えるべきです。第4に、輸出の鈍化は生産の鈍化に直結すると考えられます。家電エコポイントは12月まで延長されましたが、一部のテレビは3月いっぱいで打ち切られたりするため、この影響も含めて、4月以降の生産は鈍化が見込まれます。

最後に、輸出や生産の鈍化は景気回復の鈍化につながるわけですが、これは、景気の転換点から約1年を経て、急ピッチだった景気回復が巡航速度に移行すると受け止めるべきです。従って、私はそんなに悲観的になっていません。

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2010年4月21日 (水)

名人戦第2局も羽生名人が制して2連勝!

昨日から岩手県遠野で指されていた将棋の名人戦第2局は、激しい攻め合いの末、先日の第1局に続いて羽生名人が押し切り、2連勝となりました。三浦八段も第1局で終盤に時間が足らなかったのを考慮してか、初日は両者ともテンポよく指し継がれ、やや羽生名人が優勢か、くらいで終わったんですが、2日目に入ってから、極めて激しい攻め合いとなり、最後は玉がほぼ丸裸になった頭に羽生名人が金を打ち、三浦八段に受けがなく投了となりました。下の終了図の通りです。朝日新聞のサイトから引用しています。

名人戦第2局終了図

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2010年4月20日 (火)

もはやブラウン管テレビは少数派か?

昨日午後、内閣府から消費動向調査の結果が公表されました。普段、私はまったく注目していない指標なんですが、3月調査の折には耐久消費財の普及率などの調査があるので、時折、チェックしていたりします。今回の私の注目点はテレビです。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

薄型テレビ「一家に1台」、3月の消費動向調査
内閣府が19日発表した3月の消費動向調査によると、100世帯あたりの薄型テレビ保有台数が2009年度は一般世帯(単身世帯を除く)で108.5台となった。前年度から30台の増加で、液晶やプラズマテレビが平均で初めて「一家に一台」を突破した。地上デジタル放送への移行や政府のエコポイントによる販売促進が追い風となったようだ。
一般世帯でのカラーテレビ全体の保有台数は100世帯あたり243台でほぼ横ばい。ブラウン管のテレビは134.5台で前年度に比べ30.1台減っており、お茶の間のテレビの「薄型」シフトが加速した。デジタルカメラも100世帯あたり102.5台と増え、同じく「一家に一台」になった。
乗用車は139.4台と前年度に比べ2.4台増えた。携帯電話は6.1台増の220.6台。家族一人ひとりが携帯電話を持っている構図が見える。
同時に発表した3月の消費者態度指数は1.1ポイント上昇し40.9となった。指標は3カ月連続で上昇した。内閣府は消費者マインドの基調判断について「このところ持ち直し」と2カ月連続で上方修正した。

報道にもある通り、薄型テレビをはじめとして、さまざまな耐久消費財について「一家に一台」になっています。一部、上の引用の繰返しですが、今年3月調査時点での一般世帯における耐久消費財の保有状況を見ると以下のグラフの通りです。いずれも100世帯当たりの保有台数となっています。携帯電話なんかは「一家に二台」を超えています。

耐久消費財の保有状況

さらに、テレビについてくわしく見ると、2005年からブラウン管テレビと液晶やプラズマなどの薄型テレビに分けて調査されています。この2種類のテレビの普及率を見たのが下のグラフです。3月調査の時点で、どちらもほぼ70%で肉薄しており、ひょっとしたら、4月の現時点ではすでに薄型テレビがブラウン管テレビを追い抜いていたりして、すでに、薄型テレビが主流になっているのかもしれません。

テレビ普及率の推移

実は、上の方のグラフで取り上げた「一家に一台」の耐久消費財4種のうち、我が家にあるのはデジタルカメラだけだったりします。さすがに、地デジ移行までにテレビは買い換えるつもりですが、こういう統計を見るにつけて、我が家の貧しい消費生活が明らかになってしまいます。

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2010年4月19日 (月)

IMF 「世界経済見通し」分析編を読む

2010 Spring Meetings - International Monetary Fund / World Bank Group

次の週末4月24-25日に米国ワシントンで開催される国際通貨基金 (IMF) 世界銀行グループの Spring Meetings に先立って、IMF の「世界経済見通し」 World Economis Outlook の分析編、第3章と第4章が IMF のサイトで公表されています。このブログでも、先週金曜日のエントリーでチラリと触れておいた通りです。なお、今春のリポートの副題は Rebalancing Growth となっています。第4章に直結する副題ではないかと私は受け止めています。なお、日本語の要旨も pdf ファイルで発表されています。第3章と第4章の標題は以下の通りです。pdf ファイルの全文リポートにリンクしています。

どうでもいいことですが、この「世界経済見通し」2010年4月版から「大規模景気後退」とでも訳すのか、大文字で始める Great Recession という言葉が使われ出しています。前回の2009年10月版リポートでは見かけなかった言葉だという気がします。もっとも、2段組みで200ページを超える英文のリポートですから、隅々まで目を通したわけではありません。ちなみに、1929年から始まる「大恐慌」のもともとの英語の表現は Great Depression であることはよく知られている通りです。

Figure 3.1. Change in Unemployment Rates and Output Declines during the Great Recession

上のグラフはリポート第3章の Figure 3.1. から引用しています。この大規模景気後退期において、上のパネルは失業率が上昇したパーセンテージ・ポイント、下は産出が減少した絶対比率パーセントです。どう見るかというと、例えば、左から3番目の日本と右端のスペインを比較すると、日本の方が産出の減少割合が高いにもかかわらず、失業率の上昇は小さく抑えられています。すなわち、産出の減少と失業率の上昇の間にはそんなに相関はないということになります。この産出と失業率の間の相関を示したのが、この章の標題となっているオークンの法則 なんですが、少なくとも、クロスセクションで国別で見た産出と失業率の相関は明瞭ではありません。特に、右端のスペインや右から3番目の米国で、産出の減少が他の国との比較で相対的に小さかったにもかかわらず、失業率の上昇が大きかったのは、産出の減少に加えて、金融ストレスの影響や住宅価格の低下が大きかったからであると分析しています。逆に、日本なんかは雇用調整助成金などの短期の雇用維持制度が機能した結果、失業率の上昇は比較的小幅に抑えられたわけですが、景気の回復とともに段階的にこういった短期の雇用維持制度を撤廃し、産業・企業横断的に労働が移動しやすい環境を整えることが今後の課題とされています。

Figure 4.3. Output and Employment Growth during Surplus Reversals

上のグラフは第4章の Figure 4.3. から引用しています。先週4月14日に取り上げたアジア開発銀行 (ADB) の「アジア開発見通し」 Asian Development Outlook 2010 の第2部と同じで、明示はしていませんが、中国の人民元の切上げを強く意識した分析となっています。経常収支黒字から転換する際に取られる政策を為替切上げとマクロ刺激策に分けつつ、いずれの政策でも、経常黒字からの転換の際に産出や雇用の悪化を伴うことはないと強調しています。まあ、中国に対して「成長や雇用へのダメージはないから、安心して人民元を切り上げていいですよ」と言っているようなもんです。でも、1985年のプラザ合意後の円切上げの後、日本のバブル景気で成長率が上昇した例は少し疑問が残りますが、これも、通貨切上げに伴う経済抑制効果を回避するためのマクロ刺激策の結果であったことは、確かに、その通りです。ただし、少しやり過ぎて、その後に、バブル崩壊で激しい景気後退を経験したことも忘れるべきではありません。いずれにせよ、人民元の切上げは目前に迫っていると私は受け止めています。

「世界経済見通し」の中心となる経済見通し編の第1章と第2章は今週水曜日の4月21日発表の予定となっています。

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2010年4月18日 (日)

金本外野手の連続フルイニング出場止まる

一軍試合速報 | 阪神タイガース公式サイト

とうとう金本外野手の連続フルイニング出場がストップしました。鉄人の限界でしょう。もうすぐ達成される1500試合連続までは温情采配で続けられるんではないかとの見方もありましたが、今シーズンに入ってからの成績を見れば、私を含めて多くの阪神ファンが納得しているんではないでしょうか。私はプロ野球とは基本はショービジネスだと受け止めていますが、それにしても実力の世界です。なお、上の画像は阪神タイガースの公式サイトから引用しています。画像にある通り、今日の試合開始前の1時過ぎにキャプチャし、少し縮小をかけています。

Expected path of cloud

さて、阪神タイガースとは何の関係もなく、アイスランドの Eyjafjallajoekull 氷河にある火山が噴火した火山灰のため、欧州の空の便はマヒしています。上の地図は BBC 放送のサイトから引用しているんですが、ソースは英国気象庁 Met Office のようです。AFP 通信のサイトによれば、 Eyjafjallajoekull 氷河とは、「エイヤフィヤトラヨークトル氷河」と発音します。この先、欧州から地球規模の天候などにも影響する可能性も否定できないようです。昨日の朝には東京都心で積雪が観測されましたし、天変地異の始まりなのかもしれません。

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2010年4月17日 (土)

村上春樹『1Q84 BOOK3』 (新潮社) を読む

村上春樹『1Q84 BOOK3』 (新潮社)

村上春樹さんの『1Q84 BOOK3』を読みました。昨日、極めて大きな注目の下に発売されています。私は昨日午後の授業を終えて夕食の後に読み出して、徹夜して一気に読み切ってしまいそうな勢いだったんですが、新学年の授業が始まったばかりの時期に年齢的な体力的の衰えを考慮し、かなり強い決意を持って半分弱を読んだところで布団に入りました。当然ながら、今日のうちに読み切りました。さすがに、予想を裏切らないすばらしい作品です。なお、この先はネタバレ満載ですから未読の場合は自己責任でお願いします。

まず、BOOK1 と BOOK2 を読み終えた段階では、昨年6月5日付けのエントリーで書いた通り、私は『1Q84』はこれで完結と考えていました。理由はチェーホフ的に拳銃が発射されて、青豆が死んだからだったんですが、一応、コナン・ドイル卿の「シャーロック・ホームズ」の例も引いて、続編がある可能性を指摘しておきました。実にその通りで、拳銃は発射されず、青豆も死んでいないところから続編が始まります。BOOK1 と BOOK2 が青豆の章と天吾の章を交互に展開したのに対して、BOOK3 では牛河の章を含めた3人の主人公を中心に物語が展開します。すべて3人称で語られています。前半は青豆が潜伏し、天吾が父親の病院近くに滞在するという形で、牛河だけが動き回って、牛河自身の人となりを含めて、いろいろな事実関係を読者に提示し、割合と静かな展開なんですが、後半は大きくストーリーが動きます。青豆の妊娠という驚愕の事実が明らかにされ、最後に、青豆と天吾が再会し、カギカッコ付きの「1Q84年」の世界から月がひとつでカギカッコなしの1984年の世界に2人で文字通り手を取り合って戻って来ます。ただし、エッソのタイガーの顔の向きが違っていることから、第3の世界である可能性が示唆されます。BOOK3 はここまでです。
よく知られているように、一時の村上作品はかなり暴力的な要素を含んでいました。典型的には、『ねじまき鳥クロニクル』や『海辺のカフカ』であり、『アフターダーク』にも当てはまります。しかし、『1Q84』では暴力的なシーンはかなり減り、青豆がミッションを遂行する際の描写も洗練されていますし、BOOK3 でも天吾の父が死ぬのは自然死で、牛河は殺されますが、リトルピープルを引き出すために必要な段階を踏んでいるとも考えられます。その点で、私は村上春樹さんの作風に一定の変化、すなわち、暴力的な要素の軽減という作風の変化が見られると感じています。
ところで、ふたたび続編について考えてみたいと思います。結論的には、私には何とも言えません。でも、直感的には続編がありそうな気がします。ひょっとしたら、一気に10-15年くらい時代をすっ飛ばした続編かもしれません。続編がある根拠は3点あり、チェーホフ的に拳銃が発射されていないこと、青豆が妊娠していて出産が期待されること、そして、かなり大きな唐突感を持ってタマルに17歳になる子供がいる可能性が言及されたことです。17歳というのは同年齢の深田絵里子 (ふかえり) との何らかの関係を強く示唆していると私は受け止めています。続編がない根拠はたったひとつであり、それはカギカッコ付きの「1Q84年」が終わったことです。青豆と天吾は月がひとつの1984年に戻りましたし、そうでなくても、「1Q84年」のままでも年末を迎えています。

何度も書きましたが、この『1Q84』は村上さんの最高傑作です。2-3年のうちにノーベル文学賞が授賞されることを期待しています。

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2010年4月16日 (金)

核安全保障サミットにおける鳩山総理大臣の注目度やいかに?

Nuclear Security Summit logoこのブログでも普天間の米軍基地移転問題や日米間の首脳の信頼関係については、何せ私のまったくの専門外ですので、報道などを引用する形で取り上げて来ましたが、昨日の読売新聞の一連の報道は興味深かったと私は受け止めています。発端は核安全保障サミットに関する In the Loop と題する Washington Post 紙の辛辣極りないコラムです。Al Kamen 記者が書いています。以下に鳩山総理について言及しているパラグラフのみを引用します。

Among leaders at summit, Hu's first
By far the biggest loser of the extravaganza was the hapless and (in the opinion of some Obama administration officials) increasingly loopy Japanese Prime Minister Yukio Hatoyama. He reportedly requested but got no bilat. The only consolation prize was that he got an "unofficial" meeting during Monday night's working dinner. Maybe somewhere between the main course and dessert?
A rich man's son, Hatoyama has impressed Obama administration officials with his unreliability on a major issue dividing Japan and the United States: the future of a Marine Corps air station in Okinawa. Hatoyama promised Obama twice that he'd solve the issue. According to a long-standing agreement with Japan, the Futenma air base is supposed to be moved to an isolated part of Okinawa. (It now sits in the middle of a city of more than 80,000.)
But Hatoyama's party, the Democratic Party of Japan, said it wanted to reexamine the agreement and to propose a different plan. It is supposed to do that by May. So far, nothing has come in over the transom. Uh, Yukio, you're supposed to be an ally, remember? Saved you countless billions with that expensive U.S. nuclear umbrella? Still buy Toyotas and such?
Meanwhile, who did give Hatoyama some love at the nuclear summit? Hu did. Yes, China's president met privately with the Japanese prime minister on Monday.

ここまで悪く言われた日本の総理大臣もめずらしいような気がします。最初のパラなんかメチャメチャな言われようです。後に引用する通り、平野官房長官は「非礼」として不快感を示しているようですが、どっちもどっちの喧嘩両成敗的な印象が私にはあって、こんな書き方は礼を失していると言えばそうなんでしょうが、こんな書かれ方をする一国の総理大臣にも何らかの非があるような気がしてなりません。
次に、一連の読売新聞の報道です。すべて、基地移設に関する特集サイトからの引用です。この関係の一連の報道については、読売新聞がどの新聞よりも詳細に報じていることは私が保証します。一応、chronological に並べてあります。

なお、国際通貨基金 (IMF) が「世界経済見通し」の分析編第3章と第4章を公表しているんですが、日を改めて取り上げたいと思います。

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2010年4月15日 (木)

『1Q84 BOOK3』明日発売!

本邦読書界で大きな話題になっているところですが、新潮社から『1Q84 BOOK3』が明日発売です。『1Q84 BOOK3』の新潮社公式サイトにおいてあるブログパーツが発売当日になると、何かが起こるそうです。本来であれば、ブログのサイドに置くんでしょうが、私は記事のど真ん中に置いてみます。

まさか、知らない人はいないと思いますが、著者は村上春樹さんです。午前0時から売出しを始める書店もありそうな報道を見た記憶があります。私は明日の午前中の授業が終わってから買いに行こうかと考えています。読みふけってしまえば、明日のブログは「『1Q84 Book3』を買った」で終わるかもしれません。

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OECD/DAC 統計に見る開発援助

昨日、経済協力開発機構 (OECD) から2009年の政府開発援助 (ODA) に関する OECD/DAC 統計が公表されています。OECD 加盟国からの ODA は2009年に実質で+0.7%増、変動の激しい債務救済 (debt relief) を除くと+6.8%増となります。この数字は、2010年までに250億ドルの ODA 増を目指したグレンイーグルズ・サミットの目標に合致しています。なお、DATA/OECD から引用したグラフは以下の通りです。上のパネルはネットの ODA 額、下はその国民所得比です。

Net Official Development Assistance in 2009

上のグラフから明らかな通り、我が国はネットの ODA は5番目なんですが、国民所得比では少ない方から3番目となっています。もちろん、国連ミレニアム目標の国民所得比0.7%には遠く及びません。

Pre- and post-crisis budget balances

もちろん、我が国は財政状況が著しく悪化している国のひとつであることは、OECD の Preparing fiscal consolidation から引用した上のグラフの通りです。しかし、無用の公共投資なんかよりも開発援助の方が世界経済の厚生を大いに高めると考えるエコノミストは私だけではないと信じたいと思います。

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2010年4月14日 (水)

今シーズン初めての虎ブロ!

  HE
阪  神100000020 391
巨  人000010010 270

狭い東京ドームの投手戦を制して巨人に快勝です。昨日のようなホームラン合戦もいいんですが、今夜のような接戦をきわどくものにする勝ち方もいいもんです。阪神の勝ちパターンです。長崎ではほとんど阪神戦はテレビ観戦できないんですから、テレビ放送のある時くらいは勝つところが見たいもんです。
それにしても、日テレ系のテレビの解説のどちらかが言っていた気がするんですが、阪神にしては久し振りに外国人選手が当たりな年ではないでしょうか。今夜の決勝点もブラゼル選手の執念の一打でした。相変わらず、中軸はサッパリです。

何はともあれ、
がんばれタイガース!

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アジア開発銀行の Asian Development Outlook 2010 に見る人民元

昨日、アジア開発銀行から「アジア開発見通し 2010」 Asian Development Outlook (ADO) 2010: Macroeconomic Management Beyond the Crisis が公表されています。もちろん、pdf ファイルの全文リポートも入手可能です。今夜は、見通し全般は軽くで済ませておいて、世界的な注目を集めている中国の人民元の切上げについて考えたいと思います。まず、ADO 2010 の Highlights p.8 から2010-11年にかけての成長率とインフレの見通しは以下の通りです。アジア途上国・新興国全体で見て、7%台の高成長と4%前後の適度なインフレの下で経済発展を遂げると見通されています。

Table 1 Growth rate of GDP and Table 2 Inflation

次に、ADO 2010 の構成ですが、いつもの通り、3部構成で第3部は国別の見通しとなっています。以下の通りです。

  1. Part 1: Momentum for a sustained recovery?
  2. Part 2: Macroeconomic management beyond the crisis
  3. Part 3: Economic trends and prospects in developing Asia

第1部では、アジア新興国・途上国の見通しの前提となる世界経済に関するリスクとして、p.23 に以下の7点が上げられています。

  1. Continued weakness in US mortgage markets.
  2. Mistimed macroeconomic policy responses.
  3. Weakening fiscal sustainability.
  4. Jump in commodity prices.
  5. Persistent global imbalances.
  6. Incoherent international policy coordination.

今夜のエントリーでは第2部のマクロ経済政策運営、特に金融政策、その中でも為替についてピックアップしたいと思います。中国の人民元レートについては、このブログでも The EconomistBig Mac Index にひっかけて、3月19日付けで取り上げておきました。ハッキリ言って、私は人民元の切上げは時間の問題だと受け止めています。後、1か月半、すなわち、5月末までには何らかの結果が出ていると思います。中国のことですから渋い結果だろうという気はします。
ということで、下の表は ADO 2010 の p.69 Table 2.3.5 Actual and fundamental equilibrium exchange rates, per US dollar を引用しています。

Table 2.3.5 Actual and fundamental equilibrium exchange rates, per US dollar

といっても、この引用した表そのものが引用となっており、もともとの推計結果はピーターソン国際経済研究所から出されている Notes on Equilibrium Exchange Rates: January 2010 なるリポートのものです。表から明らかなように、現時点での人民元の対ドル相場6.8元は40%ほど過小評価されており、4.9元が均衡為替レートだと推計されています。このシリーズは私も注目しており、以下の通り、昨年と一昨年も同様のリポートが発表されています。

アジア開銀の見通しにピーターソン国際経済研究所のリポートが引用されているんですから、分かる人には分かると思いますが、結局、そういうことなんだろうと思います。要するに、人民元を切り上げることについては米中の間で合意済みなんだろうという気がします。おそらくは、渋く小幅の切上げなんでしょう。
第2部について、最後に、pp.93-97 の Key policy messages を簡単に箇条書きで引用すると以下の通りです。

  • Monetary policy and financial regulation
    • The main focus for monetary policy should be geared toward stabilizing the fluctuation in the aggregate domestic price level and managing its expectation.
    • Financial supervision and regulation need to be strengthened and better coordinated with monetary policy to prevent asset boom and bust cycles.
  • Exchange rate policy and capital controls
    • Exchange rates should be allowed to adjust and reflect the fundamentals-driven rate, and intra-Asian coordination on exchange rate policy and reserve management needs to be strengthened.
    • Capital controls against volatile short-term inflows can safeguard macroeconomic stability and facilitate the transition to more flexible exchange rates.
  • Fiscal policy
    • Asian countries should continue to maintain their fiscal discipline, and strengthen their medium-term fiscal policy frameworks.
    • Asian governments can tap into a wide range of fiscal measures to facilitate sustainable and more balanced growth in the postcrisis period.
  • Overall policy messages
    • As the global crisis recedes, Asia should gradually return to its basic macroeconomic framework of monetary and fiscal prudence.
    • More systematic coordination between different macroeconomic policies will enhance their effectiveness.

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2010年4月13日 (火)

NBER は米国景気の谷を判定せず

昨日、NBER から発表があり、4月8日に開催された景気日付委員会 (Business Cycle Dating Committee) では2007年12月から始まった米国の景気後退の谷を決定するには至らなかった、という結論が出たようです。一般的には、例えば、「景気後退脱却宣言を見送り」といった見出しで報じられています。私は NBER からメールを受け取りました。何かのメールマガジンかメールサービスに登録していたのをすっかり忘れていたんだと思います。まず、関連する NBER のサイトから発表文を引用すると以下の通りです。

Committee Confers: No Trough Announced
CAMBRIDGE, April 12 -- The Business Cycle Dating Committee of the National Bureau of Economic Research met at the organization's headquarters in Cambridge, Massachusetts, on April 8, 2010. The committee reviewed the most recent data for all indicators relevant to the determination of a possible date of the trough in economic activity marking the end of the recession that began in December 2007. The trough date would identify the end of contraction and the beginning of expansion. Although most indicators have turned up, the committee decided that the determination of the trough date on the basis of current data would be premature. Many indicators are quite preliminary at this time and will be revised in coming months. The committee acts only on the basis of actual indicators and does not rely on forecasts in making its determination of the dates of peaks and troughs in economic activity. The committee did review data relating to the date of the peak, previously determined to have occurred in December 2007, marking the onset of the recent recession. The committee reaffirmed that peak date.
実は、米国の雇用統計が4月2日に発表された後、NBER の景気日付委員会の Chair であるスタンフォード大学のホール教授の発言が Bloomberg のサイトで「雇用統計で米景気後退の終息は『明白』」と報じられていたものですから、近く景気後退終了というか、景気の谷の特定に関する発表があるだろうと予想していたんですが、肩透かしを食わされた格好です。私は昨年年央、ズバリ特定すると2009年6月が米国景気の谷だったと考えています。

さて、話題が変わって、本日、日銀から3月の企業物価が発表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比は▲1.3%までマイナスを縮小しました。でも、市場の事前コンセンサスは▲1.1%でしたから、まだまだ深刻なデフレが続いていると私は受け止めています。世界的な景気回復に伴ってジワジワと上昇を始めた原油などの資源価格の影響を除けば、企業物価も消費者物価もプラスに転ずるのに時間がかかりそうな気がします。下は企業物価の推移のグラフです。

企業物価の推移

最後に、管理人である私が考える限りで、このブログで取り上げるべきトピックとして、昨日、コロンビア大学からピュリツァー賞が発表されるとともに、本日、アジア開発銀行から「アジア開発見通し 2010」 Asian Development Outlook 2010: Macroeconomic Management Beyond the Crisis が公表されています。今週は発表される経済指標も少ないので、Asian Development Outlook 2010 は明日にでも取り上げることとしたいと思いますが、毎年、私が注目しているピュリツァー賞の速報写真部門では、今年は Des Moines Register 紙の Mary Chind 女史に授賞されました。デモイン川から女性が救出される写真です。言うまでもありませんが、大いに一見の価値があります。

Register photographer Mary Chind wins Pulitzer Prize

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2010年4月12日 (月)

減り続ける銀行貸出し、国民の預金は国債に向かうのか?

本日、日銀から2月のマネーストック統計が発表されました。マネーストック統計の速報といえる「貸出・資金吸収動向」については3月統計も発表されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の銀行貸出残高、2%減 4カ月連続マイナス
企業の設備投資意欲弱く

日銀が12日発表した3月の「貸出・資金吸収動向」によると、全国銀行の貸出残高(月中平均)は前年同月比2.0%減の401兆1327億円だった。4カ月連続のマイナスで、減少幅は2005年8月以来の大きさ。企業の設備投資意欲や資金需要が弱かったため。金融危機の影響で前年同月に貸出残高が大きく伸びた反動も出た。
内訳をみると、都銀が同3.6%減の206兆6757億円で5カ月連続で減った。地方銀行と第二地方銀行の合計は同0.1%減の194兆4570億円で5年ぶりにマイナスに転じた。3月末のコマーシャルペーパー(CP)引受残高は同34.1%減の8兆7131億円で、01年4月の調査開始以来、過去最低となった。
実質預金(手形や小切手を除き、譲渡性預金を含む)は同2.4%増の534兆2300億円だった。企業が手元資金を厚めに積んでおく傾向が続いており、高水準の伸びとなった。
09年度の全国銀行の平均貸出残高は前年度比0.8%増の402兆4027億円で4年連続の増加となった。上半期中に貸出残高が高水準で伸びたことから、年度ベースでもプラスを保った。

いつものグラフは以下の通りです。銀行貸出しとそのコンポーネントの前年同月比です。青の折れ線が合計の銀行貸出し、棒グラフはそのコンポーネントの寄与度となっています。

銀行貸出しの推移

グラフから明らかな通り、法人向けが大きく前年比マイナスを記録しています。大企業を中心とする設備投資資金が低調なことに起因すると私は考えています。GDPベースでは昨年10-12月期から設備投資は反転上昇を開始していますが、まだまだ金額ベースの水準が低く、減価償却などの自己資金で調達できる範囲であり、借入に依存するほどの資金需要はないと受け止めています。また、この先、住宅版エコポイントにより個人からの資金需要が出る可能性がありますが、資金需要全体を大きく押し上げることはないと考えるべきです。相変わらず、銀行は国債を買い続けるんでしょうか?

最後に、先月3月16-7日の日銀金融政策決定会合の議事要旨も公表されています。日経新聞が日銀の追加緩和に関する報道を行った3月5日付けのエントリーで書いたところですが、直前に観測気球を上げた野田審議委員は追加緩和策に反対しているようです。その心情を理解するに忍びないものがあります。

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2010年4月11日 (日)

五木寛之『親鸞』上下 (講談社) を読む

五木寛之さんの『親鸞』上下 (講談社) を読みました。今年に入って正月休みが明けてすぐに買い求めてから長らく積んであったんですが、とうとう読みました。いうまでもなく、我が家が代々信奉する一向宗=浄土真宗の宗祖である親鸞聖人の物語です。幼きころから、朝廷により念仏が禁止されて親鸞も流罪となり、妻である恵信尼の出身地である越後に向かう直前まで、親鸞が親鸞と名乗るまでの親鸞聖人の半生を描いています。

『親鸞』登場人物

上は登場人物なんですが、伏見平四郎が六波羅王子として、また、黒面法師として、親鸞の敵役キャラとなっています。私は史実に詳しくないんですが、実に巧みに人物を配することで物語に深みを持たせています。『蓮如』をはじめ、英訳もされて諸外国でも話題となった『他力』などの念仏や一向宗に関する著作の多い作者ですから、法然や親鸞の人物に関する描写も的確です。多くの方にオススメします。

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2010年4月10日 (土)

名人戦7番勝負第1局は羽生名人の先勝で始まる

一昨日から昨日にかけて指し継がれて来た名人戦7番勝負第1局は昨夜遅くに終局し、羽生名人が102手で先勝しました。まず、名人戦の主催新聞社のひとつである朝日新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

羽生名人が先勝 第68期将棋名人戦第1局
羽生善治名人(39)に三浦弘行八段(36)が挑戦している第68期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の第1局は9日朝から東京都文京区の椿山荘で指し継がれ、午後8時57分、羽生名人が102手で勝ち、3連覇に向け好スタートを切った。持ち時間各9時間のうち残りは羽生名人4分、三浦挑戦者1分。第2局は20、21の両日、岩手県遠野市で。
両者指し慣れた横歩取りの中盤戦で、先手の挑戦者が攻勢に出た。一直線の攻め合いを目指す挑戦者に、名人は攻めをかわすような曲線的な手で対抗。相手の攻め駒を攻める54手目の△2五飛などは、対局場の控室に集まった棋士たちも予想していなかった。
読みをはずされた形の挑戦者は、攻めながらもたびたび長考を余儀なくされた。1日目の封じ手時点で、挑戦者は名人よりも2時間以上多く持ち時間を残していたが、その差はみるみる詰まり、ついに逆転。挑戦者優勢と見られていた形勢も急接近した。
終盤は、控室での形勢判断が一手ごとに揺れ動くほど難解な攻防が続いたが、最後に名人が制した。副立会人兼解説の阿久津主税七段は「羽生さんは苦しそうだったが、相手に決め手を与えず、ねばり強く指したのがよかった。三浦さんは勝てそうな局面があっただけに残念でしょう」と話した。

最後の投了図は以下の通りです。上の記事と同じ朝日新聞のサイトから引用しています。

名人戦第1局投了図

がっぷり胸を合わせた大一番で、中盤までは三浦八段が優勢と見られていましたが、決定的なリードを手にする前に、羽生名人が最後に押し切った形になりました。引用した記事にもある通り、終盤は一手ごとに形勢判断が揺れ動く難解な攻防が続きましたが、羽生名人が制しました。挑戦者の三浦八段にも十分に勝機があったように見ました。第2局からが大いに楽しみです。

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2010年4月 9日 (金)

新しいペーパー「Economate長崎モデルの長期外挿シミュレーション: 2030年における長崎経済」を書き上げる

私は地域経済については熱心ではないんですが、いろいろな世間の義理もあって、長崎経済のあり得るシナリオを探って、モデルのシミュレーション結果を「Economate長崎モデルの長期外挿シミュレーション: 2030年における長崎経済」と題して、ディスカッションペーパーに取りまとめました。私の方で2030年までの長崎経済のベースラインを引いて、実際のシミュレーションを実行してくれたのは共著者の方です。シミュレーション結果だけでは単なる図表集になってしまいますから、私の方で計量モデルの微分方程式体系や産業連関表の行列計算に関する解説をしています。
まず、私のいつもの主張ですが、長崎経済は人口減少と経済停滞が負のスパイラルを起こす瀬戸際にあります。この2つは「ニワトリとタマゴ」の関係にあります。これを見たのが下のグラフです。上のパネルは社会的な移動に伴う他府県からの純転入者数です。2008年の統計です。長崎県は北海道と青森県に次いで、社会的な転出者数が最も多い県のひとつです。いうまでもなく、日本は人口減少社会に入っており、人口は自然減を始めていますから、それに社会的な減少が加わるとダメージが大きくなります。その結果、下のパネルの通り、県民1人当たり所得はこれまた全国でもトップクラスに低くなっています。

長崎経済の現状

この長崎経済について、将来シナリオを探り、2011年までは直近の情報を基に足元を設定し、2012年からは以下のような前提で定常状態に入ると考えて、計量モデルをシミュレーションしています。ただし、消費税率の変更などの不連続な与件の変更は含めていません。

  1. 日本の潜在成長率は+1%
  2. 長崎の潜在成長率は▲1%
  3. 名目利子率は全国一律に1.2%
  4. 物価上昇率も全国一律に+0.2%
  5. 長崎の人口と就業者数は▲1%で減少

これらの前提で計量モデルをシミュレーションし、県民所得などのマクロ経済の結果を産業連関表に従って部門分割したのが以下の結果です。実は、ディスカッションペーパー本体もそうなんですが、数字を並べた表は意図的に見にくいように小さいフォントで書いていたりします。

長崎経済の将来シミュレーション

これらの結果を受けて、「ニワトリとタマゴ」の関係で人口減少と経済停滞が負のスパイラルを起こすのを防止するには、まず、雇用の確保であると結論しています。下のグラフは長崎県内の高校と大学の卒業生の県内と県外の就職比率です。上のパネルが高校生、下が大学生です。高校生の半分くらいしか職がないような長崎県の将来は非常に暗いことはいうまでもありません。

長崎県内の高校・大学卒業生の就職状況

しかし、長崎県ではほぼ公共事業が飽和に近い状況になっていますから、公共投資の生産性が極めて低くなっています。「キツネしか通らない農道」という表現を聞いたことがありますが、そんな感じです。そんな道路を作っても生産性は上がりません。逆に、長崎県は民間企業投資の生産性が全国でも有数に高くなっており、雇用の増加を考える場合、決して、公共投資に頼るのではなく、積極的な民間投資を引き出す政策が求められています。

このディスカッションペーパーはサイドにある大学の研究室のホームページにアップしてあります。ご興味ある方はダウンロードして下さい。

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2010年4月 8日 (木)

本日発表された機械受注統計と経常収支と景気ウォッチャー調査

本日、内閣府から2月の機械受注統計と3月の景気ウォッチャー調査、さらに、財務省から2月の国際収支が発表されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから関係する記事を引用すると以下の通りです。

機械受注5.4%減 2月、2カ月連続マイナス
内閣府が8日発表した2月の機械受注統計によると、民間企業の設備投資の先行指標になる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は前月比5.4%減の6846億円になった。製造業、非製造業ともにマイナスになり、2カ月連続で前月を下回った。ただ受注額の水準は最悪期を脱しているため、「下げ止まりつつある」との基調判断を維持した。
2月は変動が大きい携帯電話を除くベースでも前月比7.4%減と、3カ月ぶりに落ち込んだ。鉄鉱石や原油の価格高騰で鉄鋼業や化学工業が振るわなかった。内閣府の津村啓介政務官は「設備投資が下げ止まりつつあるとの判断は変わらないが、素材系業種に弱い動きが出ており、(原料高などの)市況の影響が表れている可能性がある」と述べた。
製造業は同0.3%減の2899億円。素材のほか、電気機械などが落ち込んだ。非製造業は船舶・電力を除くベースで同4.0%減の3913億円。運輸業や金融・保険業が減少した。
内閣府の当初調査によると、1-3月期の機械受注は前期比2.0%増になる見通しだった。2月の結果を基に計算すると、見通しを達成するには3月が前月比4.3%増になる必要がある。ただ3月が前月比横ばいでも、1-3月期は前期比0.6%増とプラスを維持し、2四半期連続で前の期を上回る。
3月の街角景気、基調判断を上方修正 「マインドに明るさ」
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比5.3ポイント上昇の47.4と4カ月連続で改善した。エコカー減税や住宅版エコポイントなど政策効果が波及し、家計動向、企業動向、雇用のすべての分野でDIが上昇した。内閣府は景気判断を「景気は、厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。
上方修正は2カ月連続。前月は「厳しいながらも、下げ止まっている」だった。
2-3カ月先の先行き判断指数も2.2ポイント上昇の47.0と、4カ月連続で改善。家計、企業、雇用の3項目すべてのDIが上昇した。エコポイントなどに加え、子ども手当支給による需要増を期待する声が多かった。
記者会見した津村啓介内閣府政務官は「マインド面に明るさが見えてきた。今後の自律的回復に期待を持てる環境が整いつつあると前向きにとらえてよいのではないか」と説明。一方で新卒者の内定率の低さや原材料価格の上昇に触れ「リスク要因にも引き続き注視していく必要がある」と慎重な見方も示した。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、「家計」「企業」「雇用」の3分野で指数を作り加工する。今回の調査期間は3月25日から31日。
2月の国際収支、経常黒字1兆4706億円 自動車など輸出増で
財務省が8日発表した2月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子などの海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆4706億円の黒字だった。13カ月連続の黒字で、前年同月比で29.6%増加した。アジアや米国向けの輸出回復が続いており、貿易黒字が前年同月比で4倍近くに拡大したことが要因になった。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7780億円の黒字。輸出額は4兆8655億円と、前年同月比で47.3%増加した。伸び率は比較可能な1986年1月以降で最大になった。為替相場は1ドル=90円28銭と、前年同月よりも円高・ドル安基調で推移したが、米国向けなどの自動車や関連部品、半導体の需要増で大きく伸びた。
一方、輸入は原油や石油製品を中心に同31.6%増加し、4兆874億円になった。
サービス収支は847億円の赤字。中国の旧正月休暇で日本への旅行客が増えたことや、世界的な貿易の回復で輸送関連の収支が改善。赤字幅が縮小した。投資による稼ぎを示す所得収支は同22.2%減の8598億円の黒字だった。債券などによる収益が減った。

まず、船舶と電力を除く民需の機械受注、すなわち、いわゆるコア機械受注と呼ばれる統計のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、青い折れ線が毎月の実額、赤がその後方6か月移動平均です。左軸の単位は兆円です。影をつけた期間は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は昨年2009年3月と仮置きしています。

コア機械受注の推移

2か月連続のマイナスはややびっくりしたんですが、基本的にはドカンと増えた12月の反動であろうと受け止めています。基調として機械受注が底入れしたことは間違いないと考えるべきです。引用した記事にもある通り、1-3月期は前期比でプラスを記録するのは明らかですし、3月の統計が大きくリバウンドして+5%を超えても私は驚きません。しかし、その後の増加テンポがかなり緩慢であることは確かで、GDPベースの設備投資も昨年10-12月期の統計からプラスに転じたものの、力強さに欠ける展開となる可能性が高いと私は考えています。労働とともに要素需要は今年いっぱいくらいは活発化しない可能性が高くなっています。

船舶受注と手持ち月数の推移

次に長崎ローカルで注目されている船舶の受注残高と手持ち月数は上のグラフの通りです。青い折れ線が手持ち月数で左軸の単位は月、赤は受注残高で右軸の単位は兆円です。ここで、船舶の受注が原油価格が高騰する以前の2003年水準である2.5兆円に調整されるとすれば、それに必要な期間を大雑把に計算してみたいと思います。まず、船舶の受注残高のピークは2008年9月の7.2兆円で、このピークから直近の2010年2月の5.4兆円の水準まで、17か月をかけて1.8兆円をほぼ毎月0.1兆円のペースで調整が進んでいます。ですから、2.5兆円の水準に達するまで、これと同じペースで調整が進むとすれば、約27か月、すなわち、2012年年央まで調整に時間を要することになります。工期の長い産業ですからペースは緩やかなのかもしれませんが、調整期間は膨大になります。

景気ウォッチャー調査の推移

景気ウォッチャー調査は、またまた、私の予想を裏切って強気に振れました。エコカーの減税や補助金に加え、家電エコポイント制度が4月から変更されるのに伴う駆込み需要が発生したこともあり、マインドは上昇を続けています。企業部門でもデフレ圧力は強いものの、価格の低下を補う数量の効果でマインドが改善しています。しかし、まだ、雇用増につながる段階ではないようです。

経常収支の推移

最後に経常収支は上のグラフの通りです。青い折れ線の経常収支を棒グラフの貿易収支、サービス収支、所得収支、移転収支で要因分解しています。順調に推移していると私は受け止めています。最初に引用した記事が季節調整していない原系列の統計に基づいているのに対して、グラフは季節調整済み系列ですから、少し違った印象を受けるかもしれません。

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2010年4月 7日 (水)

OECD Economic Outlook: interim assessment, April 2010

本日パリ時刻11時に、OECDから Economic Outlook: interim assessment, April 2010 が発表されました。ジャーナリスト向けハンズアウトの pdf ファイルも公表されています。日銀金融政策決定会合より私はコチラに注目しました。まず、日米欧主要国の今年2010年前半の成長率見通しは以下の通りです。先進各国では順調な景気回復を見せていたんですが、特に、日米で今年2010年前半に成長率が減速する見通しとなっています。冬季の天候不順や春節の時期が一因です。なお、EU 3とは独仏伊3国のことです。

 09Q410Q110Q2
United States5.62.4 (+/-1.6)2.3 (+/-1.4)
Japan3.81.1 (+/-2.5)2.3 (+/-2.7)
Euro 30.40.9 (+/-1.4)1.9 (+/-1.5)
Germany0.0-0.4 (+/-1.8)2.8 (+/-1.8)
France2.42.3 (+/-0.9)1.7 (+/-1.1)
Italy-1.31.2 (+/-1.4)0.5 (+/-1.6)
UK1.82.0 (+/-1.1)3.1 (+/-1.2)
Canada5.06.2 (+/-1.0)4.5 (+/-2.0)
G73.71.9 (+/-1.5)2.3 (+/-1.7)

以下、OECD のサイトからのグラフとその説明の引用です。

OECD countries have benefited through trade linkages from strong activity growth in the large emerging-market economies, including China, India and Brazil.

Industrial production is bouncing back strongly

Following a sharp narrowing during the recession, global imbalances have widened somewhat as activity has picked up. Large external imbalances remain within the euro area.

Is a new pattern of global imbalances emerging?

As for fiscal policy, the sharp increase in government indebtedness in the OECD area during the downturn calls for ambitious, clearly communicated medium-term consolidation programmes in many countries. Consolidation should start in 2011, or earlier where needed, and progress gradually so as not to undermine the incipient recovery.

Public finances have weakened significantly

最後に、政策インプリケーションとして、政策金利の正常化は各国の景気回復とインフレ見通しに応じて実行されるべきであり、また、急激に赤字が拡大した財政政策については中期的な財政再建策の策定を主張しています。

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2010年4月 6日 (火)

景気動向指数に見る景気の現状と経済政策のマッチングやいかに?

本日午後、内閣府から2月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなる一致指数は100.7、先行指数は97.9となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数、2月は0.4ポイント上昇 11カ月連続プラス
内閣府が6日発表した2月の景気動向指数(2005年=100)は一致指数が100.7と、前月に比べて0.4ポイント上昇した。11カ月連続で前の月を上回ったが、上昇率は過去最大だった1月(2.7ポイント上昇)と比べると縮小した。商業販売額などが伸びる半面、鉱工業生産指数など企業の生産関連の指標が足踏みした。
一致指数が11カ月連続で上がるのは1997年1月までの12カ月連続以来。内閣府は基調判断を5カ月連続で「改善を示している」とした。
一致指数のうち鉱工業生産指数は前月を0.9%下回ったほか、生産財の出荷指数も1.8%低下した。大口電力使用量も0.6%減少するなど、景気の持ち直しをけん引してきた生産関連の指標が指数を押し下げた。一方で、有効求人倍率や製造業の所定外労働時間指数などは前月を上回った。
数カ月先の景気の動きを示す先行指数は1.0ポイント上昇の97.9となり、12カ月連続でプラスとなった。実際の景気動向に遅れて動く遅行指数も0.5ポイント上昇し85.4となった。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCIで、赤い折れ線が一致指数、青が先行指数です。下のパネルの緑の折れ線はDIです。いずれも影をつけた期間は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は昨年2009年3月と仮置きしています。

景気動向指数の推移

グラフからは少し分かりづらいんですが、2月の一致指数の速報値は前月比で+0.4%の上昇に止まりました。昨年2月を底として、12か月連続で上昇を続けていた中で、一貫して+1%台半ばから後半の上昇率を示していた一致指数なんですが、2月は速報値ベースながら一気に+1%を割り込みました。もちろん、1月が+2.8%の上昇でしたし、季節調整し切れていない2月の春節効果もあるんでしょうが、そろそろ、景気拡大が初期のV字型の局面から巡航速度に移行しつつある前触れかもしれません。2番底は回避するとしても、私は今年の年央くらいから巡航速度に回復のスピードが落ちると予想しています。これは何を意味するかといえば、経済活動の水準として、ほぼリーマン・ショックの前の水準は回復したとはいうものの、現時点で巡航速度のペースに戻ってしまうわけですから、設備や労働などの要素需要がさらに出にくくなる可能性を示唆しています。もっとも、この足元の1-3月期はかなり消費が爆発したので、内需の伸びは順調そうに見えるかもしれませんが、雇用の下支えのない消費ですから持続性に疑問が残ります。そこを子ども手当と農家の個別保障でカバーする、というのは少しムリそうに私には見えます。

今後の景気動向と経済政策動向、果たしてマッチしているのかどうか、微妙な局面に差しかかっているような気がします。

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2010年4月 5日 (月)

秋葉原に出かけて神羅万象チョコを買う

今日は久し振りに秋葉原に出かけて、いろいろと見て回った後、神羅万象チョコを買い求めました。カードがおまけで付いて来る食玩です。今日の発売分からゼクスファクターにシリーズが新たになりました。カードのキャラは上のフラッシュの通りです。ホログラム・カードが6種類、シルバー・カードが8種類、ノーマル・カードが10種類の計24種類のうち、ホームページで公表されているのはまだ半分ほどです。いつもの通り、私のこのブログの大きな特徴として、ヨソさまのフラッシュに直リンしています。引用元は神羅万象チョコのサイトです。

早速、オヤツの時間に下の子とともにいただきました。私はカリンのホログラム・カードを引き当てましたので、下の子に献上しました。もはや、おにいちゃんは見向きもしません。長崎でも神羅万象チョコはコンビニなどで見かけますが、まとまった数を買おうと思ったら秋葉原の食玩をそろえているお店が便利です。東京スカイツリー見学や UNICEF のイベント参加などとともに、東京でしか出来ないことをやっておこうと考えています。

親子そろっての春休みも、そろそろ終わりに近づきました。長崎新聞の報道によれば、何と、長崎大学では先週の金曜日に入学式があったようです。というか、私も教授会などで薄々聞いていたんですが、今日はオリエンテーションで明日からは授業です。

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2010年4月 4日 (日)

下の子といっしょに UNICEF ラブウォークに参加する

UNICEF ラブウォークロゴ

今日は下の子のスカウト活動に便乗して、UNICEF ラブウォーク中央大会に参加して来ました。品川の UNICEF ハウスをスタート・ゴールとして、目黒不動尊から東品川海上公園などを回る12キロコースです。下の通りです。去年は「守りたい。子どもたちの命、アフリカの未来」をテーマに、「ハイセンスな都会のオアシスを、歴史にふれながらお洒落に歩きます」をうたい文句として、東京タワーなどを回りましたが、今年のテーマは「安全な水と衛生施設」で、「都会の水スポットを訪ねながら桜並木を優雅に歩きます」との表現です。いずれにしても、UNICEF ハウスを中心に考えると都会であることに変わりはありません。また、水に関するテーマについては、UNICEF TAP Project 2010 の「きれいな水を、世界の子どもに。」と基本的に同じです。

UNICEF ラブウォーク

エコノミストの視点からは景気局面に連動する協賛各社が気になります。昨年は volvic、ディズニー、エポック、王子製紙など8社に過ぎなかったんですが、今年は、スパゲティを配っていた日本製粉をはじめ、三菱東京UFJ銀行、ソニー、住友生命、NEC、花王、ライオン、オムロンなど、名だたる大手企業42社が協賛に名を連ねていました。昨年と比較して3倍くらいのお土産をもらったような気がします。景気回復もさることながら、このようなイベントが多くの企業や個人に支えられているのは素晴らしいことだと思います。
下の写真は、上から順に、ゼッケンをつけて UNICEF ハウスでコースの説明を受けるスカウトたち、目黒不動尊を通過するスカウトたち、目黒川沿いのサクラをバックに歩くスカウトたち、最後に、12キロを歩き終えて UNICEF ハウスで戦利品を手にしたスカウトたちです。

UNICEF ラブウォーク
UNICEF ラブウォーク
UNICEF ラブウォーク
UNICEF ラブウォーク

ウチの子は昨年時点ではまだ上進式前のカブ隊だったんですが、今年からはボーイ隊のカーキ色の制服で参加です。一段と成長した倅とともに中年のオヤジは遅れずについて行くのが精いっぱいでした。

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2010年4月 3日 (土)

東京スカイツリーを見に行く

今日は午後からフラフラと外出し、満開のサクラの花見を兼ねて、噂の東京スカイツリーを見に行きました。今週に入って、3月29日に338メートルに達して東京タワーを抜いたと報じられています。

東京スカイツリー

ロケーションは上の画像の通りです。東京スカイツリーのサイトから引用しています。我が家のある青山あたりからでしたら、銀座線で浅草から歩くか、半蔵門線で押上から地上に出れば目の前です。私は浅草から長大な水上バスの待ち行列をチラリと横目で見つつ吾妻橋を渡り、隅田川の堤防のサクラを楽しみながら、時代小説にもよく出て来る源森橋を越えて、スカイツリーの工事現場は業平橋の際になります。最初に書いたように、現在の高さは338メートルと表示してありました。最後に、押上方面に歩いて行くと、かなり近くで見ることが出来ました。あれだけ近いと思いっきり上を見上げる形になります。東京タワーは底面が正方形で、ピラミッドを極端に上に引っ張り上げたような形をしているんですが、東京スカイツリーは底面が正三角形でした。知りませんでした。
下の写真は、上から順に、隅田川の堤から満開のサクラを通して見たところ、業平橋から撮った写真、現在の高さを表示する工事現場、もっとも近くから見上げたスカイツリーの4枚です。

東京スカイツリー
東京スカイツリー
東京スカイツリー
東京スカイツリー

それにしても、現在でも東京タワーより高い338メートルなんですが、来年中にも予定されている完工の時点ではさらに300メートルほど高い634メートルになる予定ですから、びっくりしてしまいます。我が家も地デジ対応のテレビに買い替える時期が近づいているのかもしれません。

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米国雇用統計のグラフィックス

昨日、米国労働省から3月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+162千人増加し、失業率は前月と変わらずの9.7%でした。いずれも季節調整済みの統計です。まず、Wall Street Journal のサイトから記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。

Job Market Picks Up, but Slowly
The job market is showing signs of life, though its slow recovery suggests unemployment will remain high for years to come.
Employers added 162,000 jobs in March, the biggest monthly gain in three years, with one-third of the growth coming from the government's hiring of 48,000 temporary workers for the 2010 Census. Despite those gains, the jobless rate held steady at 9.7% as new workers entered the job market and people who had previously quit the labor force returned.
The average length of unemployment rose last month to the highest point since record keeping began in 1948: more than 31 weeks. The number of workers out of work for six months or more rose sharply.
The latest report, which marks the third month since November in which payrolls increased, indicates the labor market is pulling out of a deep downturn that slashed more than eight million jobs since the recession hit in late 2007.

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減で、左軸の単位は千人です。下は失業率です。もちろん、単位はパーセントです。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた期間は景気後退期なんですが、直近の米国の景気の谷は昨年2009年6月と仮置きしています。

米国雇用統計の推移

非農業部門雇用者数は+162千人増でしたが、市場の事前コンセンサスはこれより大きかったですし、天候不順で雇用者が減少したと考えられている2月からの反動増も含まれ、さらに、政府が2010年国勢調査のために+48千人の雇用を増やしていますから、引用した記事にあるように雇用の回復は緩やかと考えるべきです。雇用者数が増加しているにもかかわらず失業率が3か月連続で9.7%にとどまっているのは、景気回復に伴って労働者の市場参入が始まったと受け止めています。もちろん、事業所調査の雇用者数と家計を対象とする失業率という統計のベースの違いもあります。ただし、いつも比較する ADP のデータに比べると米国労働省の統計は変動が大きいように見えます。下のグラフの通りです。

米国雇用統計の比較

さらに、いつもの New York Times のサイトに直リンしているフラッシュは以下の通りです。

最後に、先月半ばから末にかけて、北半球の多くの先進国はサマータイムに入り、この週末はイースター休暇です。私のいつもの主張ですが、地球環境保護の観点からも我が国もサマータイム制度を導入すべきであると訴えておきたいと思います。

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2010年4月 2日 (金)

国会図書館に行って調べものをし、各種図書館カードを見比べる

今日は、久し振りに調べもので国会図書館に出かけました。どうしても The New Palgrave Dictionary of Economics が必要だったからです。アマゾンによれば全8巻で30万円を超える資料ですから、長崎県内にはないような気がしました。実は、長崎大学の図書館にはやや古い1987年版の全4巻はなぜか2セットもあるんですが、さすがに、20年以上も前の辞書はヤメにしました。

 The New Palgrave Dictionary of Economics

いろんな図書館カードを持っているんですが、当然ながら、私は大学の図書館のカードは絶対に必要ですし、国会図書館にも利用者登録をしています。昨年から休館中ですが、日比谷図書館のひびやカードも持っていました。霞が関をホームグラウンドにする公務員が調べものをする際の強い味方でした。来春から千代田区に移管されることが決まっています。もちろん、長崎市立図書館と県立図書館にも登録してありますし、東京都港区立図書館のカードもまだ使っています。さすがに、役所の図書カードは持っていません。大学に出向する際に返却しました。地理的にかなり広範囲の図書館に登録をしていることになりますが、ネットからも予約などが出来ることは当たり前ですから、便利よく使っています。

春の嵐でかなり強い風が吹く一方で、雨の方は予報ほどには降らないお天気の1日でした。霞が関周辺では外務省前のサクラが有名なんですが、まだそんなには散っていませんでした。

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2010年4月 1日 (木)

企業マインドは完全に底入れし順調に回復、でも先行きは?

本日、3月調査の日銀短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは▲14と、市場の事前コンセンサスにピッタリ一致しました。4四半期連続での改善です。また、2010年度の設備投資計画も大企業全企業で前年度比▲0.4%減から始まりましたので、決して悪くないと私は受け止めています。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

日銀短観 大企業製造業の景況感、4期連続改善
3月のDI、マイナス14 前期から11ポイント改善

日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス14となり、新基準で算出した前回(マイナス25)から11ポイント改善した。4期連続の改善で、改善幅は昨年9月以来となる半年ぶりの大きさ。水準はリーマン・ショック時の2008年9月(マイナス3)以来の高さになった。新興国経済の拡大を受けた輸出と生産の増加を反映した。ただ3カ月先の見通しは改善だが、改善幅は縮小となった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。大企業製造業の業況判断DIは3カ月先の見通しがマイナス8で、今回に比べ6ポイント改善した。
大企業製造業の業種別でみると、ほぼすべてがマイナスで、金融危機による景気低迷から脱していない。しかし新興国の景気拡大や円相場が昨秋の高騰から下落していることを背景に、自動車が前回比19ポイント改善のマイナス2となった。生産用機械はマイナス40と低水準だが20ポイントの改善をみせ、景況感の底入れを示した。
大企業非製造業の業況判断DIは前回比7ポイント改善のマイナス14となった。4期連続の改善で、1年3カ月ぶりの高水準。改善幅は1999年3月以来、11年ぶりの大きさだった。業種別では対個人サービス、宿泊・飲食サービス、小売などが改善した。
企業収益は改善する見通し。10年度の大企業製造業の計画は、売上高が前年度比3.9%増加、経常利益は当初計画として過去最大の同49.3%増となった。金融危機後のコスト削減効果や海外景気の拡大で大幅増益を見込んでいる。10年度の想定為替レートは1ドル=91円ちょうどで、足元の相場より円高を予想している。
大企業製造業の10年度の設備投資計画は前年度比0.9%減。09年度より減少幅は縮小するが3年連続のマイナススタートとなった。設備が「過剰」との回答から「不足」を引いた設備判断DIは25となり、4期連続で低下。08年12月以来の低水準となったが、なお設備の過剰感は残る。
雇用の過剰感は縮小。「過剰」から「不足」を引いた雇用人員判断DIは大企業製造業で17となり、4期連続で低下。08年12月以来の低水準となった。

次に、日銀短観の業況判断DIのグラフと表は以下の通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業です。いずれも、赤い折れ線が大企業、青が中堅企業、緑が中小企業です。影を付けた期間は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は昨年2009年1-3月期と仮置きしています。

業況判断DIの推移

業況判断DI2009/92009/122010/32010/6
(先行き)
全産業▲38▲31▲24▲26
大企業製造業▲33▲24▲14▲8
中堅企業製造業▲40▲30▲19▲20
中小企業製造業▲52▲40▲30▲32
大企業非製造業▲24▲22▲14▲10
中堅企業非製造業▲30▲29▲21▲21
中小企業非製造業▲39▲35▲31▲37

統計から明らかな通り、企業マインドは完全に底入れし、足元まで順調に改善を示しています。しかし、問題は先行きです。どの指標を見ても私が主張しているのは同じなんですが、今年年央くらいまでは順調な景気拡大が続き、2番底は回避される可能性が高まったものの、今年後半くらいから少し巡航速度を下回る踊り場的な経済状況になる可能性を指摘し続けています。企業マインドについてもご同様で、製造業・非製造業とも、大企業は引き続きマインドガ改善を続けますが、中堅・中小企業は3カ月先のマインドは落ちると見通しています。企業規模が小さくなるほど悲観的であることが読み取れます。ただし、ポジティブなサプライズだったのは非製造業のマインドの改善幅が大きかったことです。外需にけん引された製造業でマインドの改善幅が大きく、内需に依存する非製造業はもっと改善幅が小さいと私は予想していたんですが、大企業製造業だけでなく、かなり景気拡大のすそ野が広がっていることが読み取れます。ただし、気になるのは為替の動向です。2010年度は大企業製造業の事業計画の前提になっている為替レートは91円ちょうどとなっています。現時点ではこれよりも円安に振れていますが、金融政策の運営いかんでは円高になる可能性も否定できません。

設備・雇用判断DIと設備投資計画の推移

業況判断DIに続いて、設備と雇用の要素需要に関するグラフは上の通りです。一番上のパネルは設備判断DI、真ん中が雇用判断DIで、いずれもプラスは過剰感、マイナスは不足感を示しています。一番下のパネルは各年度の設備投資計画です。設備と雇用の過剰感は緩やかながら解消に向かう動きを見せていますが、これも、中小企業の雇用過剰感が先行き上昇する見通しとなっていて、規模の小さな企業で厳しい経営状況が見られます。なお、2010年度の設備投資計画はこんなもんだという気がしますが、2009年度の反動も含まれていますし、為替動向も影響しますから、今後の動向を注視したいと思います。

長崎短観の推移

最後に長崎短観です。先行き業況判断DIは全国レベルでも規模の小さい企業を中心に低下すると見通されているんですが、特に、長崎では機械受注統計の際に触れているように造船業が資源高の効果が剥落し、この先の見通しが楽観できません。先行き企業マインドは全国と比べても大きく低下する結果となっています。ひょっとしたら、長崎経済はこのまま長期停滞に陥る可能性があるのかもしれません。

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