本日発表された機械受注統計と経常収支と景気ウォッチャー調査
本日、内閣府から2月の機械受注統計と3月の景気ウォッチャー調査、さらに、財務省から2月の国際収支が発表されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから関係する記事を引用すると以下の通りです。
機械受注5.4%減 2月、2カ月連続マイナス
内閣府が8日発表した2月の機械受注統計によると、民間企業の設備投資の先行指標になる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は前月比5.4%減の6846億円になった。製造業、非製造業ともにマイナスになり、2カ月連続で前月を下回った。ただ受注額の水準は最悪期を脱しているため、「下げ止まりつつある」との基調判断を維持した。
2月は変動が大きい携帯電話を除くベースでも前月比7.4%減と、3カ月ぶりに落ち込んだ。鉄鉱石や原油の価格高騰で鉄鋼業や化学工業が振るわなかった。内閣府の津村啓介政務官は「設備投資が下げ止まりつつあるとの判断は変わらないが、素材系業種に弱い動きが出ており、(原料高などの)市況の影響が表れている可能性がある」と述べた。
製造業は同0.3%減の2899億円。素材のほか、電気機械などが落ち込んだ。非製造業は船舶・電力を除くベースで同4.0%減の3913億円。運輸業や金融・保険業が減少した。
内閣府の当初調査によると、1-3月期の機械受注は前期比2.0%増になる見通しだった。2月の結果を基に計算すると、見通しを達成するには3月が前月比4.3%増になる必要がある。ただ3月が前月比横ばいでも、1-3月期は前期比0.6%増とプラスを維持し、2四半期連続で前の期を上回る。
3月の街角景気、基調判断を上方修正 「マインドに明るさ」
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比5.3ポイント上昇の47.4と4カ月連続で改善した。エコカー減税や住宅版エコポイントなど政策効果が波及し、家計動向、企業動向、雇用のすべての分野でDIが上昇した。内閣府は景気判断を「景気は、厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。
上方修正は2カ月連続。前月は「厳しいながらも、下げ止まっている」だった。
2-3カ月先の先行き判断指数も2.2ポイント上昇の47.0と、4カ月連続で改善。家計、企業、雇用の3項目すべてのDIが上昇した。エコポイントなどに加え、子ども手当支給による需要増を期待する声が多かった。
記者会見した津村啓介内閣府政務官は「マインド面に明るさが見えてきた。今後の自律的回復に期待を持てる環境が整いつつあると前向きにとらえてよいのではないか」と説明。一方で新卒者の内定率の低さや原材料価格の上昇に触れ「リスク要因にも引き続き注視していく必要がある」と慎重な見方も示した。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、「家計」「企業」「雇用」の3分野で指数を作り加工する。今回の調査期間は3月25日から31日。
2月の国際収支、経常黒字1兆4706億円 自動車など輸出増で
財務省が8日発表した2月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子などの海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆4706億円の黒字だった。13カ月連続の黒字で、前年同月比で29.6%増加した。アジアや米国向けの輸出回復が続いており、貿易黒字が前年同月比で4倍近くに拡大したことが要因になった。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7780億円の黒字。輸出額は4兆8655億円と、前年同月比で47.3%増加した。伸び率は比較可能な1986年1月以降で最大になった。為替相場は1ドル=90円28銭と、前年同月よりも円高・ドル安基調で推移したが、米国向けなどの自動車や関連部品、半導体の需要増で大きく伸びた。
一方、輸入は原油や石油製品を中心に同31.6%増加し、4兆874億円になった。
サービス収支は847億円の赤字。中国の旧正月休暇で日本への旅行客が増えたことや、世界的な貿易の回復で輸送関連の収支が改善。赤字幅が縮小した。投資による稼ぎを示す所得収支は同22.2%減の8598億円の黒字だった。債券などによる収益が減った。
まず、船舶と電力を除く民需の機械受注、すなわち、いわゆるコア機械受注と呼ばれる統計のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、青い折れ線が毎月の実額、赤がその後方6か月移動平均です。左軸の単位は兆円です。影をつけた期間は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は昨年2009年3月と仮置きしています。
2か月連続のマイナスはややびっくりしたんですが、基本的にはドカンと増えた12月の反動であろうと受け止めています。基調として機械受注が底入れしたことは間違いないと考えるべきです。引用した記事にもある通り、1-3月期は前期比でプラスを記録するのは明らかですし、3月の統計が大きくリバウンドして+5%を超えても私は驚きません。しかし、その後の増加テンポがかなり緩慢であることは確かで、GDPベースの設備投資も昨年10-12月期の統計からプラスに転じたものの、力強さに欠ける展開となる可能性が高いと私は考えています。労働とともに要素需要は今年いっぱいくらいは活発化しない可能性が高くなっています。
次に長崎ローカルで注目されている船舶の受注残高と手持ち月数は上のグラフの通りです。青い折れ線が手持ち月数で左軸の単位は月、赤は受注残高で右軸の単位は兆円です。ここで、船舶の受注が原油価格が高騰する以前の2003年水準である2.5兆円に調整されるとすれば、それに必要な期間を大雑把に計算してみたいと思います。まず、船舶の受注残高のピークは2008年9月の7.2兆円で、このピークから直近の2010年2月の5.4兆円の水準まで、17か月をかけて1.8兆円をほぼ毎月0.1兆円のペースで調整が進んでいます。ですから、2.5兆円の水準に達するまで、これと同じペースで調整が進むとすれば、約27か月、すなわち、2012年年央まで調整に時間を要することになります。工期の長い産業ですからペースは緩やかなのかもしれませんが、調整期間は膨大になります。
景気ウォッチャー調査は、またまた、私の予想を裏切って強気に振れました。エコカーの減税や補助金に加え、家電エコポイント制度が4月から変更されるのに伴う駆込み需要が発生したこともあり、マインドは上昇を続けています。企業部門でもデフレ圧力は強いものの、価格の低下を補う数量の効果でマインドが改善しています。しかし、まだ、雇用増につながる段階ではないようです。
最後に経常収支は上のグラフの通りです。青い折れ線の経常収支を棒グラフの貿易収支、サービス収支、所得収支、移転収支で要因分解しています。順調に推移していると私は受け止めています。最初に引用した記事が季節調整していない原系列の統計に基づいているのに対して、グラフは季節調整済み系列ですから、少し違った印象を受けるかもしれません。
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