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2010年5月31日 (月)

鉱工業生産も所定外労働時間も鈍化の兆し、楽観的な景気見通しは下方修正すべきか?

このところ、普天間問題の報道を論評なく取り上げて来ましたが、今夜はこのブログ本来の姿に戻ります。本日、経済産業省から鉱工業生産指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計調査が、それぞれ発表されました。いずれも4月の統計です。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、4月は1.3%上昇 5月は0.4%予想 経産省「今後の動向、注視必要」
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は前月より1.3%高い96.0だった。半導体や自動車関連などが伸びたため、2カ月連続で前月の水準を上回った。ただ、市場予測は下回った。5月、6月は伸びの鈍化が見込まれている。国内の政策効果が一巡してきたことなどから、企業経営者が生産計画に慎重になり始めた。経産省も「今後の動向を注視する必要がある」と指摘している。
4月の鉱工業生産指数は事前の市場予測の中央値(前月比2.5%増)を大きく下回った。経産省は基調判断を「生産は持ち直しの動きで推移している」に据え置いた。
業種別では一般機械工業が2カ月ぶりに12.0%上昇。中国や台湾など主にアジア向けの半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレー製造装置などの生産が増加した。太陽光パネルに使われる産業用アルミニウム製品の生産増にけん引され、金属製品工業も好調だった。
一方、4月にエコポイント対象商品が切り替わった影響で、液晶テレビの生産が3.8%低下。輸送機械工業全体では0.3%増えたが、乗用車は1.6%下がり、小型乗用車は6.3%低下した。国内の環境対応車は好調だったが、海外向け生産は自動車会社によってばらつきがあったという。新学期に合わせた学校向け大量納入が終わり、ノート型パソコンの生産も18.9%下がった。
出荷指数は1.6%高い98.2で、2カ月連続の上昇。在庫指数も0.3%上昇し、94.3になった。
先行きの生産予測指数は5月に0.4%、6月に0.3%の上昇になる見通しで、生産の伸びはやや鈍化する。経産省はギリシャの金融危機について「国内製造業に影響が及ぶかもしれない」とみている。
4月の現金給与総額、2カ月連続プラス 残業時間伸びる
厚生労働省が31日発表した4月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は全産業ベースで前年同月比1.5%増の27万5985円となった。生産活動の回復を受けて残業時間が伸び、2カ月連続のプラスとなった。基本給を示す所定内給与は0.4%減っており、賃金が本格回復するにはなお時間がかかる。
残業代などの所定外給与は11.3%増の1万8650円。4カ月連続の増加となった。就労形態別の現金給与総額は一般労働者(正社員やパート以外の非正規社員を含む)が2.1%増、パートが0.2%増だった。
残業時間を示す所定外労働時間は10.8%増の10.3時間。4カ月連続で増えた。製造業の所定外労働時間は13.8時間で、53.4%の大幅増。5カ月連続のプラスだ。
雇用者数では一般労働者が0.5%減の3206万3000人。パートは1205万人と1.7%増えた。

次に鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。2005年=100となる季節調整済みの指数です。影をつけた部分は景気後退局面なんですが、直近の景気の谷は2009年3月と仮置きしています。

鉱工業生産指数の推移

グラフから明らかですが、2月の春節効果でマイナスを記録した後、やや伸びが緩やかになり、4月の生産は市場の事前予想の+2.5%増を大きく下回る+1.3%増にとどまりました。この伸びのほとんどが一般機械で占められており、それ以外はゼロに落ちたと受け止めています。引用した記事にもある通り、家電エコポイントの一部が3月末に終了したこともあり、政策効果の剥落から5-6月はさらに伸びが鈍化するとの予測となっています。季節調整指数で見て1-3月期は前期比+7.0%の増産だったんですが、5-6月の製造工業生産予測指数をそのまま当てはめれば、4-6月期は+2.2%増と大きくブレーキがかかる予想となっています。鉱工業生産は2009年2月の底から四半期ベースで前期比6%前後の増産を続けて来たんですが、2010年4月が大きなターニングポイントになりそうです。

所定外労働時間指数の推移

次に、毎月勤労統計調査の中で、もっとも景気に敏感な所定外労働時間指数のグラフは上の通りです。5人以上事業所の季節調整済み指数を取っています。影をつけた部分は鉱工業生産指数と同じです。こちらもハッキリと鈍化の兆しが読み取れます。生産に連動する部分が大きいので当然です。

私はかなり単純かつ楽観的なエコノミストですので、少し前まで、景気の順調な拡大が続いて、年央くらいから要素需要、すなわち、設備投資や雇用の本格的な回復が始まると予想していて、ギリシアの財政危機に端を発する欧州発の金融混乱があっても、それが少し後ズレするだけだろうと考えていましたが、政策効果の剥落がこれほど顕著にネガティブな影響を及ぼすとは想定外でした。楽観的な私の景気見通しを少し修正する必要があるのかもしれません。

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普天間直後の内閣支持率

今日は、本学の開学記念日で授業がなく、私も土曜日の教員免許更新講習の代休を取って大学には行っていません。というわけでもないんですが、この週末に、メディア各社が普天間直後の内閣支持率を調査した結果が本日の報道で取り上げられています。私のブログでは論評抜きにグラフとともに取りまとめておきたいと思います。なお、共同通信のグラフは「グラフのポイントをクリックすると、記事に飛びます。」とありますが、このブログのグラフのポイントをクリックしても記事には飛びません。リンクを張っておきますので、共同通信のサイトでお願いします。

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2010年5月30日 (日)

何とか勝ったものの、クローザー藤川投手の使い方は大いに疑問!

 十一 HE
阪  神00010001001 3121
日本ハム00000001100 271

今日は午後から買い物に行き、単身赴任の要諦であるパンツを買って帰宅したのが3時半ころでした。スコアを見ると1-0の最小リードで久保投手が6回ウラを三者凡退に退けたところでした。ネットで調べると、4回の得点はノーアウト1塁3塁から新井内野手のゲッツーの間に1点とか。そろそろ終盤7回くらいから久保投手は点を取られる傾向にあるので、昨日、無理して2イニングスを投げさせた藤川投手にヘバリが見られるだけに、リリーフ陣をどのように真弓監督が起用するかが見物だと思っていたました。
8回に実に効果的な代打・鳥谷選手のホームランが出て、少し余裕が出て来たと思ったのも束の間、やっぱりと言うか、そのウラの8回には連打でノーアウト1塁2塁とされ、打順はクリンナップへ回るというピンチを迎えます。久保投手はここは踏ん張り、ピーゴロ併殺に切って取ったものの、1点を取られて、何と、またしても8回から藤川投手を投入します。昨日に続いて、信頼できるピッチャーがいないとはいえ、そこまで含めて「一将功成る前に万骨枯る」型の采配と言えましょう。シロート目に見ても疲れの見える藤川投手ですから、9回に同点ホームランを打たれます。延長戦に入ると、このブログのスコアボードがオーバーフローして困るんですが…
何とか、11回に大和内野手の足を生かして決勝点を上げ、11回の裏に誰を投げさせるかが注目だったんですが、これまた、驚きの渡辺投手の続投でした。私は西村投手や江草投手も含めて、1人ずつでも片付ける覚悟でリリーフ陣総動員かと思っていましたが、徹底的に外角低めに集める城島捕手のリードによく応えて投げ切りました。好投した久保投手に勝ち星が付かなかったのは残念ですが、交流戦冒頭に連敗した日本ハムに借りを返し、連勝できた意義は大きいのではないでしょうか。

残りの交流戦も、
がんばれタイガース!

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2010年5月29日 (土)

下の子の小学校の運動会の写真が届く

今日は下の子が通う小学校の運動会でした。誠に残念ながら、私は東京に戻ることが出来ませんでした。というのは、長崎県南部の中学校・高校の教員免許更新講習で講師をして、主としてミクロ経済学を講義していたからです。ウチの子が通う小中学校の運動会のような行事には欠かさず出向いていたんですが、大学の主催する正式な講座の講師ですから通常勤務と同じで土曜日が潰れてしまいました。講義内容は大学3-4年生と同程度と考えていたんですが、少し難しかったかもしれません。
我が家の下の子も小学校の最終学年となり、運動会のような行事でも大活躍のようです。最終学年の6年生だけの競技である騎馬戦や組み体操の写真も送られて来ました。実は、ウチの子は私の子供ですから遺伝的にたぶん体が大きいので昨年も騎馬戦には出ていたんですが、6年生で出ているのはまた一味違います。でも、大学のお仕事とはいえ、こういった我が子の学校行事に出かけられないのは単身赴任の悲哀を感じます。キャンパスライフは楽しいとは言うものの、早く家族の元に帰りたいのが本音です。
下の写真は組み体操のヒトコマです。

小学校の運動会

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鶴投手、堂々のピッチングで阪神が勝利!

  HE
阪  神000201100 4110
日本ハム020000000 2101

今日も、先発投手を聞いた途端にやや暗い気持ちになり、2回表ウラの攻防でさらに暗い気持に拍車がかかりましたが、期待以上というか、鶴投手が堂々のピッチングで全日本エース級のダルビッシュ投手に投げ勝ちました。6回を6安打2失点なら立派なもんです。先発投手の役目を果たしたといえましょう。打つ方も、日本ハムの守備のまずさもあったものの、7回までで9安打で4点取ったんですから、打ち崩したとまでは言えないかもしれませんが、まずまず点が取れたと評価すべきでしょう。特に、4番に座るとブレーキだった新井内野手が、なぜか、5番に下がるとガンガン打っているような印象があります。打つ方の課題はむしろ、6回の藤川俊外野手と8回の大和内野手がともにバントを失敗し、なぜか両方とも城島捕手をアウトにしてしまったことの方が気がかりです。終盤8回と9回の併殺も何とかして欲しい気がします。また、1番に起用した坂選手は少し荷が重いように見受けられなくもありません。
投げる方では先発の鶴投手はスターターの役目を果たし、7回からリリーフした西村投手もいきなり連続ヒットを打たれましたが、森本外野手をあわやトリプルプレーというゲッツーで打ち取り、何と、8回アタマからクローザーの藤川投手が出て来ました。私は真弓監督がイニングを間違えたんではないかと思ってしまいました。アッとびっくりで、案の定、9回はツーダン満塁まで攻めたてられてややヘロヘロになりながらも逃げ切ってくれました。8回は打順が4番からというのも考えたんでしょうし、いくら登板間隔が開いたとはいえ、5月からこんな投手起用をしていて大丈夫なんでしょうか。一将功成る前に万骨枯れそうな気がします。

明日も連勝目指して、
がんばれタイガース!

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本日の全国紙社説から

本日の全国紙各紙の社説から印象的なパラグラフを集めました。もちろん、テーマは普天間です。

朝日新聞: 首相の普天間「決着」- 政権の態勢から立て直せ
これが、鳩山由紀夫首相の「5月末決着」の姿だった。深い失望を禁じ得ない。
読売新聞: 普天間日米合意 混乱の責任は鳩山首相にある
日本政治と日米関係を混乱させた末、「国民との約束」を簡単に破る。一応謝罪はするが、責任はとらない。これが鳩山首相の本質だろう。
毎日新聞: 「普天間」政府方針 この首相に託せるのか
私たちは、鳩山首相が政治の最高責任者の座に就き続けることに大きな疑念を抱かざるを得ない。最大の政治課題、普天間問題での一連の言動は、首相としての資質を強く疑わせるものだった。これ以上、国のかじ取りを任せられるだろうか。来る参院選は、首相の資質と鳩山内閣の是非が問われることになろう。
日経新聞: 「取り返しつかぬ鳩山首相の普天間失政
罪万死に値する失政である。
産経新聞: 普天間日米合意 国益損なう首相は退陣を 逃れられぬ迷走と失政の責任
目を覆うばかりの失政が続いている。米軍普天間飛行場移設に関する日米共同声明がようやく発表され、「辺野古」が明記された。当然だが、遅きに失した。

毎日新聞以外は冒頭のパラグラフです。毎日新聞だけは最初の方に事実関係を淡々と書いていたので、第6パラになります。でも、第6パラが社説らしく意見を述べた最初のパラグラフだと思います。

このブログでは従来からこの問題に関する海外論調を主に取り上げて来ましたが、とうとう、国内各紙の論説も火を噴きました。このブログの論評は抜きに取りまとめておきます。

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2010年5月28日 (金)

再び悪化に転じた雇用統計とデフレの続く消費者物価

本日、総務省統計局から失業率が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が、さらに、統計局から消費者物価が、それぞれ発表されました。いずれも4月の統計です。失業率が上昇する一方で、有効求人倍率が低下し、雇用統計は再び悪化に転じました。消費者物価も公立高校無償化の影響を除いてもなおマイナスのデフレが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

失業率の悪化続く 4月5.1%、求人倍率も低下
総務省が28日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は5.1%と前月に比べ0.1ポイント上昇した。悪化は2カ月連続。厚生労働省が同日まとめた有効求人倍率(同)は、0.01ポイント低下の0.48倍と8カ月ぶりに下がった。失業率は「女性」の上昇が目立った。家計を助けようと仕事を求める主婦が増えているが、受け皿が少ないため、失業率を押し上げた。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。男女別では男性が5.5%と0.1ポイント低下。一方、女性は4.7%と0.4ポイント上昇した。
4月の完全失業者は前年同月比10万人増の356万人。このうち、世帯主の配偶者は58万人と12万人増えた。総務省は「仕事を求める女性が増えているが、職に就けず失業者としてカウントされている」と説明している。今春に大学を卒業した人を含む学卒未就職者は21万人と1万人増えた。
就業者数は6269万人と53万人減った。公共事業の削減の影響を受け、建設業は14万人減の492万人。製造業は31万人減り、1066万人だった。政府が新たな雇用の受け皿として期待する医療・福祉は645万人と31万人増えた。
4月の有効求人倍率は、求職者数が前月に比べ0.5%の微減だったのに対し、求人数が1%減ったため悪化に転じた。雇用の先行指標となる新規求人倍率は0.88倍と0.04ポイント上昇したが、就職に結びついておらず、雇用のミスマッチは解消されていない。長妻昭厚労相は閣議後の会見で「雇用情勢は依然として厳しい」と述べ、雇用政策の周知を徹底するよう指示する考えを示した。
消費者物価、4月1.5%低下 14カ月連続マイナス
高校無償化も影響

総務省が28日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.2となり、前年同月比で1.5%低下した。マイナスは14カ月連続。4月から高校授業料が無償になった影響で指数が0.54ポイント押し下げられた特殊要因があったものの、物価下落基調は続いている。
個別品目をみると、家電などの価格下落が依然として物価を押し下げている。薄型テレビの価格が前年同月比28.3%低下したほか、ノート型パソコンも36.2%値下がりした。
一方、物価が上昇したのはエネルギー関連が中心で、ガソリンが前年同月比17.0%上昇した。
食料とエネルギーを除いた指数(欧米型コアCPI)は前年同月比1.6%低下した。そのうち、高校無償化の影響がマイナス0.78ポイントあった。
物価の先行指標である東京都区部の5月のCPI(中旬速報値)は生鮮食品を除いたベースで前年同月比1.6%低下した。食料とエネルギーを除いた指数では1.4%低下となった。

次に、いつもの雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、パーセント単位の失業率、倍率表示の有効求人倍率、万人で示した新規求人数です。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期ですが、直近の谷は2009年3月と仮置きしています。

雇用統計の推移

失業率が上昇し、有効求人倍率も低下し、一般的な雇用情勢が悪化を始めたように見えますが、景気回復期の一時的な現象であり、引用した記事にもある通り、世帯主の配偶者、多くは主婦が職を求めた結果であり、私はそれほど心配していません。雇用の先行指標である新規求人数は増加を続けており、もう少し長い目で見れば、失業率や有効求人倍率を含めた雇用情勢は景気の回復とともに好転すると考えるべきです。

産業別雇用者数の推移

上のグラフは産業別に雇用者数の増加を前年同月と比べたものですが、4月は一時的に減少を示しましたが、これも景気の回復に伴って、早晩、本格的な増加に転じると私は予想しています。4月統計は雇用について弱い結果となりましたが、年内には本格的な景気の回復に伴う雇用情勢の好転が望めるという私の考えに変化はありません。

消費者物価上昇率の推移

雇用よりも深刻なのが、あるいは、雇用にさらに悪い影響を与えるのがデフレです。4月の消費者物価上昇率は全国のコア CPI で前年同月比▲1.5%の下落となりました。もっとも、総務省統計局の「消費者物価指数における高校授業料無償化の影響」に報告されている通り、公立高等学校の授業料無償化や私立高校授業料への高等学校等就学支援金支給の影響などの寄与が▲0.54%ありましたから、マイナス幅は着実に縮小しています。しかし、先行きどれくらいまでマイナスのデフレが続くかについては、最近のIMFやOECDなどの国際機関に比べて、かなり日銀は甘い物価見通しを持っていると考えざるを得ません。3月から再び上昇に転じたエネルギー価格の寄与を大きく見積もっていたりするんでしょうか。金融政策に引締めバイアスがかかる可能性が懸念されます。消費者物価見通しは以下の表の通りです。なお、日銀のみ財政年度で、IMFとOECDは暦年です。

機関20102011
IMF▲1.4%▲0.5%
OECD▲0.7%▲0.3%
日銀▲0.5%+0.1%

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2010年5月27日 (木)

西武涌井投手の前に再び阪神打線は沈黙!

  HE
西  武200100003 690
阪  神010000000 162

西武が涌井投手、我が阪神がフォッサム投手と先発投手を聞いた時は、ヤバい試合展開になる可能性が脳裏をよぎったんですが、まずまず、こんなもんでしょう。全日本クラスのピッチャーに対して、よく得体の知れない外国人投手をぶつけているんですから、最初っから勝てる可能性は高くないと考えるべきです。しかし、大きな疑問は上園投手をあのタイミングで出すんであれば、先発させるべきではなかったか、ということです。もっとも、試合結果に大きな違いが出ていたとは思えません。昨夜と同じような試合展開で、先発投手が先制点を許し、打線がブラゼル内野手を除いて沈黙を続ける中で、終盤に渡辺投手がトドメを刺される、というカンジでしょうか。8回ウラのわけの分からない3連続フォアボールの後のワンアウト満塁で打席に立った4番の新井内野手のゲッツーも痛かったし、渡辺投手が終盤に出て来て、まずい守備があったとは言うものの、ポロポロと点を取られてるのも困ったもんです。やや登板過多の影響が出始めているのかもしれません。
交流戦前半を過ぎて、阪神はかなり負け越しました。もっとも、阪神だけでなくセリーグのチーム全般がパリーグに対して分が悪いような気がします。東京ヤクルトの高田前監督なんかは交流戦の犠牲者と呼べるかもしれません。後半戦はどうなりますことやら。
トラックバックはお風呂の後にでも!

交流戦後半戦も、
がんばれタイガース!

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貿易統計と OECD 経済見通し

本日、財務省から4月の貿易統計が発表されました。いずれも季節調整していない原系列で見て、ヘッドラインとなる輸出額は5兆8897億円、輸入額は5兆1474億円、差引き貿易黒字は7423億円の黒字でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の輸出額40%増 自動車関連が好調
貿易黒字7423億円 13カ月連続

財務省が27日発表した4月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比40.4%増の5兆8897億円になった。増加は5カ月連続。前年は金融危機の影響で大きく落ち込んでおり、1月以降は40%台の高い伸びが続いている。アジア向けの半導体輸出がけん引役となったほか、米欧向けにも自動車が大きく伸びた。輸入額は24.2%増の5兆1474億円で、4カ月連続で増えた。
輸出額から輸入額を引いた貿易収支は7423億円の黒字になった。黒字は13カ月連続で、前年同月の約15倍に拡大した。2008年秋のリーマン・ショック後としては3番目に大きい黒字額になった。
輸出の動向を地域別にみると、アジア向けは45.3%増と6カ月連続で増えた。シンガポールや台湾向けの半導体メモリーやタイ向けの鉄鋼などが伸びた。アジアのうち、中国向けは41.4%増。自動車や液晶関連デバイスが増えた。
米国向けも34.5%増。自動車の輸出額が前年同月の約2倍になったほか、ギアボックスなど自動車部品も好調だった。一方、欧州連合(EU)向けはスペイン向けの自動車やドイツ向け半導体などが増え、19.8%増だった。欧州はギリシャ問題を抱えるほか、経済回復の足取りが鈍く、アジアと米国に比べ伸び率が低い。
財務省による貿易統計の季節調整値で足元の動向をみると、4月の輸出は前月に比べ2.3%増と2カ月連続で増えた。ただギリシャ問題などを背景に為替相場の変動が激しく、輸出の先行きは不透明な部分もある。

次に、いつものグラフは以下の通りです。一番上と真ん中のパネルは輸出入額とその差額たる貿易収支の推移ですが、一番上のパネルは季節調整していない原系列、真ん中のパネルは季節調整済み系列です。いずれも左軸の単位は兆円です。一番下のパネルは金額ベースの輸出額指数の季節調整していない原系列の前年同月比伸び率について、数量指数と価格指数で寄与度分解したものです。

貿易統計の推移

メディアなどでは季節調整していない統計の前年同月比を取り上げていますが、真ん中のパネルに示した季節調整済み系列の輸出額、すなわち、水色の折れ線を見る限り、今年1月あたりで景気回復初期の急激な輸出の拡大は一段落し、2月の春節効果とともに輸出の伸びが鈍化していることが見て取れます。一番下のパネルの輸出金額の前年同月比も、やや伸び率が低下しつつあるのが明らかです。このため、OECD の先行指標 (CLI) を3か月ずらしたものと輸出の数量指数、いずれも前年同月比を並べたのが下のグラフです。かなりフィットがよく、この先、輸出が鈍化する傾向が読み取れると思います。

輸出数量指数とOECD先行指標の前年同月比の推移

ただし、詳細はお示ししませんが、私が受け取っている同業者エコノミスト諸氏の季節調整処理したデータの分析を見る限り、この輸出鈍化の傾向は引用した日経新聞の記事で持ち上げられている中国、あるいはアジアを震源地としているようです。ギリシアを含む欧州への輸出に大きな鈍化の兆しは見られません。もちろん、目先の輸出動向の分析であり、中長期的に高い成長率が望める中国やアジアへの輸出は高い伸びを示すことが考えられますが、目先の極超短期の輸出動向だけを考えると、アジア、特に中国への輸出が鈍化する可能性が高いと受け止めるべきです。
貿易統計の最後に、現時点で為替が1ドル90円前後の水準で推移していますが、為替の動向も輸出に大きな影響を及ぼします。基本的には、ギリシアの財政危機に端を発する欧州通貨ユーロの下げが円高をもたらしているんですが、3月調査の日銀短観では製造業各社の事業計画の前提となる為替は2010年度を通して1ドル91円、上期もほぼ同じ90.87円という結果が明らかにされています。輸出を大きく左右する為替の水準が気にかかるところです。

貿易統計に加えて、昨日、OECD から「経済見通し2010年5月」 OECD Economic Outlook No. 87, May 2010 が発表されています。長くなりましたので、簡単に図表だけ取り上げておきます。一番上のパネルが実質成長率見通し、次が失業率、一番下のパネルは2011年時点での政府債務のGDP比です。成長率はおおむね上方修正されたものの、失業率の低下は緩やかで、Growth rising faster than expected but risks increasing too. と特徴づけています。リスクの中でも、政府債務が大きく積み上がる見通しとなっており、特に日本は2011年で200パーセントを超える見込みとなっています。下のグラフは、いずれも OECD のサイトから引用しています。

OECD Economic Outlook No. 87, May 2010

日本について詳しく見たのが下の表です。これも別の OECD のサイトから引用しています。

Japan: Demand and output

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2010年5月26日 (水)

打線が沈黙し西武に完敗!

  HE
西  武010001010 371
阪  神000000001 170

今日は西武投手陣の前に組み換えた打線が沈黙し完敗でした。先発は下柳投手と石井一投手の両ベテラン左腕で、割合と落ち着いたスタートでした。でも、下柳投手が2回、6回とポロポロと1点ずつ取られ、阪神打線はチャンスらしいチャンスもなく、凡退を続けました。でも、9回ウラには桜井外野手がホームラン、指を痛めてスタメンを大和内野手に譲った鳥谷選手が代打でヒットと、最後の最後に意地を見せましたので、明日につながることを期待します。

気持ちを切り替えて、明日こそ、
がんばれタイガース!

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財政政策の役割は何か?

5月はどうしてもゴールデンウィークの関係で政府統計の取りまとめが遅くなり、今週後半の木曜日の貿易統計、金曜日の雇用統計と消費者物価まで、特に面白みのある経済指標が出ませんので、適当に時間を潰したいと思います。ということで、先週の授業でやった財政について取り上げます。通常の教科書では、財政の役割を以下の3点として教えています。

  1. 資源配分
  2. 所得再分配
  3. マクロ経済安定化

最初の資源配分機能については、私のようにかなり狭義に公共財の提供としか考えないエコノミストもいれば、自然独占に至る費用逓減産業が最適生産を行うための補助金、外部経済がある場合の補助金や課徴金なども、一応、何らかの財政措置を伴うので財政政策に入れる考えもあります。私は公共財以外は基本的に規制の問題だと考えていますので、財政政策には含めていません。私がこう考えているのは、実は、役所の作りがそうなっているからだったりします。第2の所得再分配は累進的な税制により達成されますし、憲法25条的な生活保護も含みます。最近の流行りの言葉でいえば格差是正と言うことになります。最後のマクロ経済安定化はほとんど公共財に近いものですが、多くの先進国では一昨年から昨年にかけての Great Recession のような例外を除いて、通常のファインチューニングは財政政策ではなく、金融政策に委ねられているような気がします。

 消費競合性
ありなし
排除可能私的財
アイスクリーム、鉛筆、本
混雑した有料道路
自然独占
上下水道、CATV、電話
混雑していない有料道路
不可能共有資源
海にすむ魚、地球環境、クジラ
混雑した無料道路
公共財
安全保障、外交、基礎研究
混雑していない無料道路

公共財を説明する際の定義ですが、経済的な財は上のように、消費の競合性と排除可能性から4種類に分類されます。4種類のうち、市場が効率的であるのは左上の私的財だけです。伝統的な財政学では、右下の公共財はコストが正しく認識されていれば過小供給またはまったく供給されないと考えます。しかし、現在の日本ではコストが正しく認識されず、逆に、ほとんどタダだと考えられているので、過剰供給されているのは誰の目にも明らかです。なお、上の表はマンキュー教授の初級の経済学のテキストから拝借しているんですが、道路の例は分かりにくいものの、それなりの含蓄があります。

  1. 認知ラグ
  2. 決定ラグ
  3. 実施ラグ
  4. 波及ラグ

マクロ経済の安定化については、上の4種類のラグを考える必要があります。一般に、財政政策では2番目の決定ラグと3番目の実施ラグが長く、4番目の波及ラグが短い一方で、金融政策はその反対で、決定ラグと実施ラグが短く、波及ラグが長いと考えられています。いずれにせよ、景気循環を打ち消すような方向でマクロ政策運営を実施しなければならないわけですが、ラグを考えないと、逆に、景気循環を増幅しかねません。

マクロ経済の安定化については、財政政策と金融政策とで大きな違いがあります。すなわち、財政政策は税制や補助金などにより市場を通さずに、何らかの方法で家計や企業の経済活動に対して直接に働きかけることが出来ますが、金融政策は合理的な市場行動を前提します。ですから、中央銀行に勤務するセントラル・バンカーは政府に勤務する官庁エコノミストよりも規制緩和や自由化に熱心であるといえます。

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学生諸君、薬物は絶対にダメ!

誠に残念なニュースです。我が長崎大学経済学部の学生が大麻所持容疑で現行犯逮捕されました。西日本新聞のサイトから記事を引用します。

長崎大生、大麻所持容疑で逮捕 自宅でガラス瓶に
長崎署は25日、長崎市内の自宅に大麻を隠し持っていたとして、大麻取締法違反(所持)の疑いで長崎大経済学部3年の石塚数之容疑者(28)を現行犯逮捕した。
同日記者会見した長崎大の橋本健夫理事は「薬物乱用防止に気を配ってきたが不十分だった。社会に対しおわびしたい」と謝罪した。
長崎大によると、石塚容疑者は2008年4月、経済学部の夜間主コースに入学。授業後にたびたび質問するなど受講態度は熱心で、所属する経営学ゼミでは21日も発表をしていたという。
逮捕容疑は25日午前10時20分ごろ、自宅でアルコールのような液体に漬けた大麻草を、ガラス瓶に入れて所持していた疑い。
長崎署と長崎税関によると、別の関税法違反(密輸入)の疑いで家宅捜索した税関職員が、押し入れで栽培されている大麻草1株を発見。通報を受けた長崎署員が大麻草の入った瓶と、たばこの空き箱に入った大麻草の種を見つけた。

実は、今日の午後は定例の教授会があるんですが、何らかのお話を聞くことになるのかもしれません。私の方からいつもの調子で、「故フリードマン教授はマリファナ解禁論者だった」とか、「大麻は都会の大学だけだと思っていた」とか、火に油を注ぐような不用意な発言をしないように気をつけたいと思います。私のようなヒラ教授はともかく、大学の幹部は神経をピリピリと尖らせているに違いありません。

学生諸君、改めて言うまでもないことだと思いますが、
薬物は絶対にダメ!

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2010年5月25日 (火)

千葉ロッテを相手に交流戦で初めての連勝!

  HE
ロ ッ テ000000000 041
阪  神42020000x 8160

今日の先発は阪神がスタンリッジ投手、千葉ロッテが小野投手。ロッテの選手について私はまったく知らないんですが、先発がスタンリッジ投手と聞いて不安を覚えない阪神ファンはいないんではないでしょうか。序盤でその不安を打ち砕いたのが4番に座る新井内野手とその前を打つマートン外野手でした。マートン選手は3打席連続ヒットで出塁し、新井選手は1-2回と連続のタイムリー・ヒットで3打点を上げました。ブラゼル内野手の打球を受けて退場した小野投手にはお気の毒でしたが、ブラゼル選手もガンガン打ったようです。4回までに計8点を奪ったんですから流れは一気に阪神に傾きます。実は、この先発投手なら中盤までに5-6点は覚悟しなければならないと感じていたんですが、さすがに大量点をバックに5回をゼロに抑えて試合が成立した時は、ファンとしては大いに胸をなでおろしたものです。と言うことで、この前の国際労働機関のリポートに関するブログを書き終えてアップしたところで、8時から入浴。お風呂から上がっても得点は変わりなく8-0のままで又安心。
不可解なのは、4回ウラに早々と鳥谷遊撃手に代打を送って引っ込めたことです。5回ウラに金本選手を代打に送ったのは分かります。左うちわの試合展開に浮かれて、雨でコールドになって連続試合出場を途切れさせるのは、監督として怠慢の極みでしょう。でも、一応、1回ウラには打点も上げている鳥谷選手を左投手とはいえ代打を送るのは私には理解できませんでした。選手起用で興味深かったのは、9回に杉山投手を持って来たことです。7回以降はあるいは真逆に、杉山・江草・西村とつなぐのも一案ですし、杉山・福原は敗戦処理要員として1軍に上げたと私は勝手に思っていたんですが、その杉山投手が最後を無難に締めました。完封リレーの一翼を担った自信がつくかもしれません。何にしても興味深い選手起用だった気がします。

明日は西武を相手に、
がんばれタイガース!

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国際労働機関 (ILO) の 「ASEAN 労働見通し」

先週5月20日に国債労働機関 (ILO) から 「ASEAN 労働見通し」 Labour and Social Trends in ASEAN 2010 が発表されています。もちろん、pdf ファイルの全文リポートもアップされています。構成は Overview を含めて、以下の4章構成となっています。

  1. Overview
  2. Labour market trends and policy lessons learned
  3. Improved productivity and competitiveness for balanced and inclusive growth
  4. Human resources for balanced and inclusive growth

上の章別構成で青い字でハイライトしておいた通り、balanced という語に重点が置かれています。この語が意味するところは、ASEAN 諸国ではいまだに informal sector の雇用が61%以上を占め、1日当たり US$2 以下の低賃金労働が最近2年間で51%、140百万人から57%、158百万人に増加したことを指しており、生産性の向上に基づく国際競争力の強化によるマクロ経済の成長を通じて、この状況が改善されることを目指すべきであるとしているからです。

Figure 3.3: Global competitiveness and infrastructure rankings, selected countries, 2009-2010 & Figure 4.1: Global Competitiveness Index and on-the-job training

上のグラフの通りなんですが、いずれも全文リポートから引用しています。まず、第3章では、p.26 Figure 3.3: Global competitiveness and infrastructure rankings, selected countries, 2009-2010 において、インフラ整備と国際競争力の間に何らかの相関があることを示しています。上のパネルの通りです。続いて、第4章では、p.38 Figure 4.1: Global Competitiveness Index and on-the-job training において、OJTと国際競争力の間に何らかの相関があることを示しています。下のパネルの通りです。

このリポートに従えば、ASEAN 諸国では2007年から2009年の2年間で0.3%の生産性向上しか達成できませんでした。一方で、同じ期間に中国は8.7%、インドでは4.0%となっています。インフラ整備や職場における OJT が ASEAN 諸国における国際競争力の強化や生産性の向上を通じた雇用の質の向上につながることが強く示唆されています。

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2010年5月24日 (月)

大幅な打線の組換えの評価やいかに?

  HE
ロ ッ テ100000300 490
阪  神103000001x 5110

今夜の阪神打線は大幅にオーダーを組み換えました。マートン外野手をセンターからレフトに移して守備の負担を減らしつつ3番に据え、ブラゼル内野手を5番に上げて、鳥谷遊撃手を7番に下げました。新人の藤川俊外野手は、いかにもふさわしいセンター2番で起用されています。盗塁も決めました。1回ウラこそ不動の4番に座った新井選手が期待に応えてくれませんでしたが、3回は見事なツーランで逆転に成功したりしました。同点に追いつかれたものの、最後の最後に城島捕手の犠牲フライでサヨナラ勝ちでした。積極的な走塁も目立ちました。1回の平野選手こそ盗塁でアウトになりましたが、3回には藤川俊外野手と城島捕手までが盗塁を決め、9回のマートン外野手も含めて、いずれもホームに還って来ました。
投げる方は今やローテーションの軸ともいえる久保投手が先発でした。1回の立ち上がりこそヒット、バント、ヒットであっさりと先取点を献上し、一昨日の試合で東京ヤクルト相手に超大量20点を取った千葉ロッテ打線を相手に大きな不安を覚えたんですが、中盤はまずまず落ち着いた投球でした。でも、久保投手の投球と言うよりも監督のスイッチのミスで終盤につかまり同点に追いつかれます。ブラゼル内野手を早々に引っ込めたんですから、結果論ではありますが、7回から自慢のリリーフ陣にスイッチする手もあったような気もします。

新オーダーでも、
がんばれタイガース!

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IMF の Article IV Consultation に見る日本の財政再建やいかに?

国際通貨基金による IMF 2010 Article IV Consultation の結果はいくつかのメディアに取り上げられていましたが、正式なリポートが IMF のサイトに先週5月21日付けでアップされましたので私のブログでも紹介したいと思います。まず、「見通しとリスク」 Outlook and Risks は4月23日付けのエントリーでお示しした「世界経済見通し」 World Economic Outlook 2010 April にほぼ準じており、以下の通り、簡単に表を引用して済ませておきます。

 200920102011
(Calendar Year, Growth Rate)
Real GDP-5.21.92.0
Total domestic demand-4.01.01.5
Net exports (contribution)-2.01.40.5
CPI inflation (average)-1.4-1.4-0.5
Current account balance
In billions of U.S. dollars141.7149.7131.1
In percent of GDP2.82.82.4
General government balance 1/-11.5-10.0-9.1
Structural balance 1/-8.7-7.8-7.6
Primary balance excluding social security 1/-8.9-7.2-6.2
Gross debt (in percent of GDP) 2/217.7227.4235.0
Net debt (in percent of GDP) 2/111.7121.8130.3
1/ In percent of GDP. Fiscal year basis.
2/ In percent of GDP. Calendar year basis.

私が特に注目しているのは、続く第2章の「信頼性ある財政改革戦略の道程」 Mapping A Credible Fiscal Reform Strategy と第4章「財政制度の強化」 Strengthening the Financial System です。我が国のネットの公的債務の2030年までの見通しは以下のグラフで示されています。

Japan: Net Public Debt

日本の財政は2010年度においてネットでGDP比122%、グロスで227%と推計し、先進国でも最高水準にあるとして世界の金融市場の注目を集めつつあります。上のグラフでは強力な財政調整策が適用される赤い折れ線と対策が遅れたり緩慢な gradual 財政調整しか行われないケースが青い破線で示されています。そして、財政調整策は主として消費税率の引上げにより達成される The fiscal adjustment could be achieved in a number of ways centered around an increase in the consumption tax rate と結論しています。そして、消費税率を14-22%に引き上げた試算を以下のように示しています。まあ、一見して明らかなんですが、さまざまなチェック項目から見て、15%まで消費税率を引き上げることを推奨しているようです。

Table: Potential Options for Gradual Fiscal Adjustment Over Next 10 Years

なお、第2章と第4章の間に置かれた第3章の「デフレ克服のための金融政策の選択肢」 Monetary Policy Options to Combat Deflation では6-12カ月のターム物の資金供給や日銀が明らかにした成長基盤強化のための資金供給などを追認している印象があります。

何度かこのブログでも書いた気がしますが、私は雇用を重視するエコノミストであり財政赤字には能天気な態度を取り続けて来たんですが、ギリシアの財政危機から世界の市場は日本の財政に厳しくなりつつあることは実感しています。

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2010年5月23日 (日)

低反発枕の効用

低反発枕 (東洋紡)
長崎は大雨の嵐です。仕方がないので、昨日のうちに買い込んだ食料と飲料を基に家に閉じこもっています。大半は寝て過ごしています。と言うことで、強引に低反発枕のお話です。実は、昨年の暮れ近く、ほぼ半年ほど前から東洋紡の低反発枕を愛用しています。適当な通販サイトから拾ったんですが、上の画像の品だと思います。テンピュールなどの1万円を超えるような高級品には手が届かないため、クレジットカードのポイントをためて交換しました。これが実に結構な品です。どこがどういいかと言うと、私の場合は肩凝りにいいような気がします。
私は肩凝りがひどくて、特に冬場は血行が悪くなっているせいか、首筋まで痛めることもありました。数年前、知り合いのエコノミストから年末に経済見通しのセミナーのお誘いを受けました。いろいろとご活躍の外資系証券会社のエコノミストで、今では私と同じように財政のサステイナビリティにご関心があるようで、それに関するご発言も多いながら、いまだにマンキュー教授らの "Deficit Gamble" 一本やりで勝負している人物です。それはともかく、私はほぼあらゆる会議に遅刻するのがデフォルトになっていますので、少し遅れて行くと前の方の席しか空いていなくて、スクリーンを見上げながら長々とお話を聞いていると、セミナーの終了間際に首筋から肩にかけてビリビリと電気が走ってしまい、翌日、近くの整形外科に駆け込んだこともありました。「東洋経済」か「エコノミスト」か何かで、当時の京大の佐和教授が同じようなことを書いておられたのを記憶しています。でも、この冬は低反発枕のおかげかどうかは専門外のために定かではないものの、肩凝りに悩まされずに済みました。一定の効果はあったものと考えています。

人間50歳になると体のアチコチにガタが来ますが、私は肩凝りとともに腰痛もあったりします。腰痛の方は柔らかいベッドがよくなくて、硬い方がいいんですが、肩凝りの方は低反発の素材の方がいいのは、やや不可解な気もします。

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2010年5月22日 (土)

交流戦に入って調子を落とすタイガース

  HE
阪  神100101000 390
オリックス00201101x 580

交流戦に入った阪神が冴えません。日本ハムに対して連敗スタートの後、楽天・ソフトバンクとヨタヨタでの勝ちとボロクソでの負けを繰り返していましたが、またしてもオリックスに連敗です。ソロホームランの打合いに負けた気がします。去年まで阪神監督だったオリックス岡田監督の高笑いが聞こえてくるようです。明日から、ロッテ戦と西武戦は甲子園ですから指名打者は使えませんが、連勝しなければ交流戦前半は五分に戻せません。セリーグの順位も下がる一方ですが、悲しくも、このあたりが実力なのかもしれません。

がんばれタイガース!

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スギ・ヒノキの花粉症の後はイネ科のアレルギーが始まる

スギ・ヒノキのいわゆる花粉症は、通常、2月の建国記念日から4-5月のゴールデンウィークまでと言われていますが、2週間ほどの爽快な五月晴れの季節を経て、先週から私はイネ科のアレルギーが始まってしまいました。カモガヤが主たる原因植物と言われています。なお、下のイネ科植物の種類別花粉飛散時期一覧表の画像は参天製薬のサイトから引用しています。

イネ科植物の種類別 花粉飛散時期一覧表

先週半ばなから、これはおかしいと感じ始め、ちょうど1週間前の土曜日にかかりつけの耳鼻科に駆け込みました。私は我が家のおにいちゃんなんかと比べるとアレルギーの度合いが大きくないので、いつもの少し弱めの抗アレルギー剤をもらっていたんですが、明らかに私の状態が異常だと感じたのか、医者からいつもより強めの薬も2日分6錠だけ処方されました。要するに、とっても症状がひどければ強めの薬を飲むように、ということです。そして、昨日がそうなりました。週の半ばから梅雨の走りのようなぐずついたお天気が続いた後、昨日の長崎はかなりピーカンのお天気に近くて気温も上がりました。思わず出勤前に洗濯を始めてしまったくらいなんですが、私の知る限り、イネは日照よりも気温に敏感だそうで、昨日は午前中の授業の時からクシャミの連発で、鼻水が止まらず、最前列の学生からティッシュをもらったりしてしまいました。夜になって強めの薬を飲んで、バッタリと寝てしまいました。

私の経験では、7月半ばまでイネのアレルギーは続きます。年による違いもあるんでしょうが、スギ・ヒノキは地域的な違いがないように感じる一方で、特に今年は、都会のど真ん中の青山よりも長崎の方がイネの花粉が多く飛散しているような気がします。

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2010年5月21日 (金)

大学生の就職は「自己責任ドグマ」のオカルトから脱却できるか?

本日、厚生労働省から「平成21年度大学等卒業予定者の就職状況調査」の4月1日時点における結果が発表されました。大卒の就職内定率は、卒業生ではなく、就職を希望する学生を分母として91.8%となり、昨年より3.9%ポイント下がりました。地域別では全国6地域の中で九州がもっとも低くなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大卒就職率、氷河期並み91.8% 下げ幅過去最大
大学を今春卒業した就職希望者の就職率が前年度を3.9ポイント下回る91.8%になり、2年連続で悪化したことが21日、文部科学省と厚生労働省の調査で分かった。1996年度の調査開始以来、就職氷河期と呼ばれた99年度の91.1%に次ぐ低さ。前年度からの下げ幅は過去最大だった。高校新卒者の就職状況も悪化し、深刻な就職難が浮き彫りになった。
全国の大学など112校を抽出し、4月1日現在の就職状況を6250人に聞き取り調査した。
大学生の就職率は男子が92.0%、女子が91.5%でいずれも前年度を3.9ポイント下回った。国公立・私立、文系・理系を問わず下がり、下げ幅も軒並み過去最大になった。
文科省の担当者は「不況で企業が採用数を絞ったことが最大の原因。中小企業は採用意欲があるのに、学生が安定を望んで大企業志向を強める雇用のミスマッチが広がったことも影響した」と分析している。
地域別では九州が88.9%(同2.9ポイント減)と最も低く、中部が93.6%(同5.3ポイント減)、近畿が94.7%(同2.1ポイント減)。関東は90.6%(同6.1ポイント減)で、下げ幅が最も大きかった。
大卒者のうち就職を希望した人の割合は66.8%(同3.6ポイント減)で、2年連続で低下した。「内定が得られないため、やむなく大学院に進んだり、就職活動そのものをやめたりした学生も多かった」(文科省の担当者)という。
高校の新卒者については、厚労省が学校やハローワークを通じて求職した人の3月末の内定状況をまとめた。内定を得たのは約14万4千人で、内定率は93.9%。2年連続の悪化で、前年度に比べて1.7ポイント減った。求人倍率は1.29倍で前年度を0.52ポイント下回った。
就職を希望する高卒者全員を対象にした文科省の調査でも就職率は91.6%と同1.6ポイント下落した。学科別では工業が97%(同1ポイント減)、情報が94.9%(同4.3ポイント増)、福祉が94.9%(同1ポイント減)と専門学科が健闘したのに対し、普通科は86.6%(同2.6ポイント減)と苦戦が目立った。

続いて、グラフは以下の通りです。上のパネルは大卒男女の就職希望者に対する内定率の推移です。下のパネルは2010年3月卒業生の内定率を地域別に見たものです。いずれも左軸の単位はパーセントです。やっぱり、と言うか、何と言うか、九州がもっとも内定率が低くなっています。地域的な執着が強いのかもしれません。

大卒就職内定率の推移

今夜のエントリーではタイトルにした「自己責任ドグマ」について考えます。私の考えは明らかです。先週、5月14日付けのエントリーで書いた通り、失業の原因はマクロの需要不足による循環的要因とミクロのミスマッチによる構造的要因に分けられ、個人ではどうしようもない循環的要因が圧倒的に大きく、失業だけでなく、大学生が内定をもらえないのも全く同じと考えるべきです。ですから、大学生が内定をもらえないことや、失業者やフリータについて自己責任や個人の努力を強調する見方はほとんど間違いだと私は考えています。さらに、引用した記事にあるように、文部科学省の担当者からキャリーして、学生の大企業志向の強さに起因するミスマッチを強調するのはさらに間違いです。上に引用した日経新聞とともに、朝日新聞のサイトでも同じ趣旨の記事がキャリーされています。独自取材のない朝日新聞はともかく、日経新聞は4月下旬の記事で「就活学生、中堅・中小に視線 親とはギャップも」と題して、グラフも掲げつつ、学生の大企業志向が大きく変化して来た実態を取材して記事にしていたんですが、取材して得た事実よりも官庁のカギカッコつきの「大本営発表」に頼る日本のメディアのレベルの低さを垣間見た気がします。
もちろん、メディアだけでなく、いくつか個人のブログなどを見ても、いかにも中年のサラリーマンが大学生を面接して、上から目線で学生のことを論じているサイトもあります。循環的な要因が学生に有利な時期に就職できて、いくぶんなりとも残っている長期雇用システムのおかげであるとは露ほども考えず、「自己責任ドグマ」かその変形版で凝り固まっているサイトも見受けます。でも、循環的要因が学生に不利な時期の現在の学生諸君は、これらのカン違いした「自己責任ドグマ」やその変形版で凝り固まったオジサンの面接を突破せねばならないわけですからタイヘンです。もっとも、私の知り合いに言わせれば、私のような大学教員は常に受験生を落とす一方の入試なんですが、企業の採用の方はそれこそ循環要因によって売り手市場の時もあれば買い手市場の時もあり、現在の局面では少しくらい上から目線で学生を見下すのも悪くない、といった見方も理解できないわけではありません。いずれにせよ、面接する方もされる方も、この「自己責任ドグマ」に気づいていない場合がほとんどだろうと私は想像しています。今週日曜日と月曜日のエントリーで立て続けに「経済学にもオカルトがある」と書きましたが、その最たるもののひとつだという気がします。

最後に、今日まで金融政策決定会合を開催していた日銀は、成長基盤強化のための資金供給の方法の骨子素案を含むステートメントを発表して終了しました。この資金供給については4月30日付けのエントリーの最後のパラから、私の意見は何ら変わっていません。世の中ではオカルトが流行しているのかもしれません。

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2010年5月20日 (木)

1-3月期GDP1次速報は4四半期連続のプラス成長!

本日、内閣府から1-3月期GDP統計1次速報、エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている指標が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済み実質系列の前期比は+1.2%成長、前期比年率では+4.9%成長と4四半期連続のプラス成長を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP、実質4.9%成長
1-3月、4期連続プラス
住宅投資5期ぶり増、消費が堅調

内閣府が20日発表した2010年1-3月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.2%増、年率換算では4.9%増となった。プラス成長は4四半期連続。輸出、設備投資、個人消費が堅調で、住宅投資も5四半期ぶりに増えた。物価動向を示すGDPデフレーターの上昇率は前期比で0.01%で、5半期ぶりのプラスに転じた。日本経済の着実な回復を裏付けた格好だが、ギリシャ危機を発端とする市場の混乱といった下振れリスクは残る。
前期比年率でみた10年1-3月期の実質成長率は、日経グループのQUICKがまとめた民間予測の中央値(5.5%)をやや下回った。生活実感に近い名目GDPの成長率は実質ベースと同じで、2期連続のプラスとなった。より細かくみると名目が前期比1.214%、実質が1.209%で、名目が実質を下回る「名実逆転」が5期ぶりに解消した。
前年同期と比べた実質GDPは4.6%増となり、8期ぶりに拡大した。ただピーク時の08年1-3月期より4.7%少なく、金融危機の後遺症がなお残っている。
GDPデフレーターの上昇は野菜や資源の値上がりの影響が大きい。前年同期比では3.0%下落。4期連続で低下し、過去最大のマイナス幅となった。
前期比でみた実質成長率1.2%のうち、内需は0.6ポイント、外需は0.7ポイントの押し上げ要因となった。国内の政策効果とアジア向け輸出の拡大が寄与した。
住宅投資は前期比0.3%増。住宅ローン減税の拡充が効いたとみられる。設備投資は1.0%増と2期連続で伸びた。輸出や生産の拡大が投資に波及してきた形だ。
個人消費は0.3%増で4期連続のプラスとなった。エコポイント制度の見直しで、薄型テレビの駆け込み需要が発生した。公共投資は1.7%減と3連続で落ちた。
輸出は6.9%増と4四半期連続の拡大。アジア向けや欧州向けが伸びた。輸入は2.3%増となった。
働く人の手取り総額を示す名目雇用者報酬は前年同期比0.3%減り、6期連続で落ち込んだ。前期比では1.6%増え、8期ぶりに拡大した。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は保証しません。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2009/
1-3
2009/
4-6
2009/
7-9
2009/
10-12
2010/
1-3
国内総生産GDP▲4.2+1.8+0.1+1.0+1.2
民間消費▲1.2+1.0+0.6+0.7+0.3
民間住宅▲7.1▲9.8▲7.3▲2.7+0.3
民間設備▲9.9▲3.7▲2.0+1.3+1.0
民間在庫 *▲1.4▲0.1▲0.1▲0.2+0.2
公的需要+1.2+1.5▲0.1+0.4+0.1
外需 *▲0.7+1.8+0.4+0.6+0.7
輸出▲24.8+10.1+8.6+5.8+6.9
輸入▲18.0▲3.7+5.6+1.5+2.3
国内総所得GDI▲2.9+1.6▲0.4+1.0+0.7
名目GDP▲4.4+0.2▲0.3+0.3+1.2
雇用者報酬▲0.9▲0.9+0.5▲0.0+1.9
GDPデフレータ+0.3▲0.6▲0.7▲2.7▲3.0
内需デフレータ▲1.3▲2.7▲2.9▲2.6▲1.9

さらに、グラフは下の通りです。いずれも前期比成長率・伸び率で、折れ線グラフは実質成長率、棒グラフは実質GDP成長率を需要コンポーネント別に季節調整済み系列の前期比伸び率で寄与度表示したもので、すべて左軸の単位はパーセントです。

GDP統計の推移

引用した記事にもある通り、家電エコポイントの制度変更による駆込み需要がどれくらいあったのかは気にかかるところですが、順調な成長経路を示していると私は受け止めています。もちろん、市場コンセンサスに届かなかったので、少し期待外れの感はあります。でも、上の表で見る通り、デフレータを除いて、名目成長率まで含めてプラスが並ぶのは極めて久し振りです。私のような単純なエコノミストはそれだけでうれしくなってしまいます。
まず、メディアでは2009年度のマイナス成長に少し注目していますが、上の表を見ても明らかな通り、四半期ベースでは2009年度中にはマイナス成長は1度もなかった、すなわち、いわゆるゲタによって年度のマイナス成長がもたらされたことは明らかです。2009年1-3月期を景気の転換点と見なせるわけで、私を含む多くのエコノミストの実感と一致します。先行きを考えると、第1に、消費については家電エコポイントの制度変更などにより不透明感がある一方で、第2に、設備投資については機械受注などから見ても、年内に本格回復の兆しがあります。第3に、外需は欧州の財政危機の広がりや、また、米国景気の動向にも依存して、やや弱含むタイミングが迫ってると私は考えています。

ひとつだけ気がかりなのは、エコカー減税や家電エコポイントなどにより消費が増加する一方で、ようやく持ち直しつつあるとはいえ、設備投資の構成比が落ちていることです。人口が減少に向かう中で資本ストックの伸び率が鈍化すれば、長期的な潜在成長率への影響が懸念されます。

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2010年5月19日 (水)

4連勝による羽生名人の3連覇を祝す!

昨日から福岡市中央区の九州電力城南クラブで指し継がれて来た名人戦第4局は、今夜10時前に羽生名人が163手で挑戦者の三浦八段を下し、4連勝で3連覇を達成しました。誠におめでとうございます。第3局まで続いた横歩取りの激しい戦いが一転、第4局は名人の矢倉に対し挑戦者が銀冠の堅陣を築く、じっくりした展開になりましたが、最後は羽生名人が押し切りました。下の終了図は朝日新聞のサイトから引用しています。

名人戦第4局終了図

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明日発表される1-3月期GDP1次速報やいかに?

内閣府による明日5月20日の発表を前に、1次QEに必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから1-3月期の1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回は、設備投資や先行きを示唆するものがあれば、それを優先的に拾ったつもりです。詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、日本経済研究センター以外については、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本経済研究センター+1.3%
(+5.4%)
年度は伸び率が鈍化しても、成長率のゲタにより2%成長が視野に
日本総研+1.1%
(+4.6%)
4-6月期の成長率は1-3月期を下回る可能性も
みずほ総研+1.4%
(+5.9%)
デフレ脱却へ向けての道のりは引き続き厳しい
ニッセイ基礎研+1.6%
(+6.5%)
雇用・所得環境の悪化に歯止めがかかったことも消費の下支え要因
第一生命経済研+1.5%
(+6.1%)
輸出関連製造業の収益、生産活動は急速に持ち直しており、リーマン・ショック以降冷え込んでいた投資意欲が持ち直しに転じている
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+1.3%
(+5.3%)
経済対策の効果と輸出の増加を背景に景気は持ち直しの動きが続いている
三菱総研+1.5%
(+6.2%)
輸出の回復や景気対策の下支えによる消費堅調の持続、設備投資の持ち直しを背景に、前期を上回る高い成長率
新光総研+1.6%
(+6.4%)
設備投資の調整に歯止めが掛かってきたことが確認される

実は、今回の発表を前に、4月27日付けで内閣府から推計方法の変更に関する2件のアナウンスがありました。「四半期別GDP速報における公的固定資本形成の推計方法の変更について」及び「国内家計最終消費支出の需要側補助系列における推計方法の変更について」です。特に前者は平成21年度、すなわち、2010年3月までの『建設総合統計』において、公共事業の冬季修正率に断層が生じているとして修正を加えています。スラッと修正せずに推計すると1-3月期の公的固定資本形成がドカンと伸びてしまうようです。3月末には家電エコポイントが一部終了したり、変更されたりする影響から駆込み需要が発生したと見られていますし、やや不透明な部分も残されていますが、1-3月期の高成長、4-6月期はその反動が表れるという構図は公共投資も家電エコポイントも同じです。

最後に、我々エコノミストやその集団であるシンクタンクでは、過去の数字である2009年度の年間の成長率にはほとんど何の興味もないんですが、ざっと私が計算したところ、2009年度の年間の成長率は▲2%くらいになります。2008年度、2009年度と2年続けてのマイナス成長というわけで、メディアはこのマイナス成長を大騒ぎするんではないかと私は想像しています。そして、もしもメディアに乗せられるとすれば、現政権は前政権に責任転嫁しそうな気がしてなりません。ある意味で、内閣府の津村政務官の記者発表が楽しみです。ここ何か月かでご理解が深まったんではないかと期待しています。

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2010年5月18日 (火)

佐伯泰英『孤愁ノ春』 (双葉文庫) を読む

佐伯泰英『孤愁ノ春』(双葉文庫)佐伯泰英さんの『孤愁ノ春』 (双葉文庫) を読みました。「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズの第33巻です。前巻の『更衣ノ鷹』上下では、とうとう徳川家基が毒殺され田沼一派が幕閣の中で絶大なる権力を掌握して、尚武館佐々木道場を閉鎖に追いやるとともに、その際に、主人公佐々木磐音の養父母である佐々木玲圓とおえいが切腹し、磐音とおこんは今津屋のご寮に引きこもり、おこんに子供が出来たところで終わっていました。私はてっきり老中田沼意次が失脚するまで、一気に年月を飛ばすのではないかと考えていたんですが、何と、そのまま続いています。まあ、失礼ながら、佐伯泰英さんの作家としての力量は一昨日のエントリーで取り上げた京極夏彦さんとは大きく差があり、それは文学賞などの受賞歴に如実に表れていると私は考えていたので、一気に飛ばす派だったんですが、これは意外でした。作家としての力量はそこそこなんでしょうが、小説自体は面白いので私も読み続けています。今回の第33巻は5月13日に発売され、私も先週末に買い求めました。江戸を出て磐音とおこんが旅をします。途中から弥助と霧子も加わり、田沼一派の追手を蹴散らすというものです。これから先、出羽山形の奈緒を訪ねるんではないかと私は想像しています。今度の予想は当たりますか、どうでしょうか。

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2010年5月17日 (月)

反転し拡大する機械受注とマイナス幅を狭めた企業物価

本日、内閣府から3月の機械受注統計の結果が、また、日銀から4月の企業物価が、それぞれ発表されました。ヘッドラインとなる電力と船舶を除いたコア機械受注は季節調整済みの前月比で+5.4%増と、ほぼ市場の事前コンセンサスに一致し、国内の企業物価は前年同月比で▲0.2%と下落幅を縮小させています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

機械受注1-3月2.9%増 4-5月は外需に弱さ
内閣府が17日発表した機械受注統計で、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は3月が前月に比べて5.4%増と3カ月ぶりにプラスになった。内閣府は基調判断を「下げ止まっている」に上方修正した。1~3月期は製造業の伸びに支えられて前期比2.9%増。ただ4-6月期は1.6%増にとどまるうえ、海外からの受注も2ケタ減の見通し。ギリシャ危機に伴う市場混乱で企業が投資に慎重になる恐れもあり、設備投資が一本調子で回復するかどうかは不透明だ。
機械受注統計は工場の生産設備などの受注額を示し、3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す指標として知られる。
直近3月の受注額(船舶・電力を除く民需)は前月比5.4%増の7329億円。これを受けて内閣府は機械受注動向の基調判断を2月の「下げ止まりつつある」から上方修正した。製造業が3.1%増と4カ月連続でプラスになったほか、回復が遅れていた非製造業も12.6%増と下げ止まりの動きを示した。
この結果、1-3月期の受注額は2兆1514億円となった。製造業は前期比13.6%増と、調査開始以来初めて、2期連続の2ケタの伸び。電気機械や一般機械に加え、非鉄金属や石油・石炭製品でも投資拡大の動きが出ている。非製造業は3.4%減と2期連続のマイナスだった。
1-3月期は、振れの大きい携帯電話を除いたベースでは前期比4.8%増だった。内閣府の津村啓介政務官は17日の記者会見で「製造業を中心に自律的な回復の兆しがある」と語った。
内閣府が3月下旬時点で機械メーカーから聞き取った4-6月期の受注見通しも、前期比プラスを維持した。非製造業が14.4%増と急速に回復するためだが、製造業は2期連続プラスの反動もあって16.0%減となる見込み。民需以外では海外需要も12.8%の減少が見込まれている。
2009年度の機械受注は船舶・電力を除く民需は20.6%減の8兆4337億円になった。3年度連続のマイナスで、統計が始まった1987年度以降で最大の減少率。受注金額も過去最低になった。
企業物価、4月は0.2%低下
日銀が17日発表した4月の国内企業物価指数(2005年=100、速報値)は103.0となり、前年同月に比べ0.2%低下した。低下率は8カ月連続で縮小し、前年比でゼロ水準に近づいた。電力・ガスの料金下落などで物価下落は続いているが、石油や非鉄の製品価格が上昇しており、全体の企業物価の水準を押し上げている。
国内企業物価指数は、企業同士が出荷や卸売りの段階でやりとりするモノの価格水準を示す。調査対象の855品目のうち、前年同月より低下した品目は468品。上昇した品目は213品目だった。
品目別で下げが目立ったのは、電力・都市ガス・水道で12.0%低下。料金の激変緩和措置が3月で終了した電力・ガス料金の下落が響いた。一方、石油・石炭製品は28.3%、非鉄金属は24.3%、それぞれ上昇した、原油や銅など非鉄の商品市況は、新興国の経済成長を背景に上昇基調をたどり、関連製品の値上がりにつながった。
今後は国内企業物価が前年同月比で上昇に転じるかが注目される。上昇に転じれば2008年12月(0.9%上昇)以来となる。
国内製品には商品市況の回復が十分に転嫁されていないものがある一方、5月以降は欧州の財政不安の広がりで商品市況が総じて低下に転じている。日銀は「企業物価に対する強弱の材料が交じっている状態であり、今後の動向を注視していきたい」としている。

次に、機械受注のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、一番上のパネルは電力と船舶を除いたコア機械受注の実額とその6か月後方移動平均です。いずれも左軸の単位は兆円となっています。真ん中のパネルは四半期ごとに公表されている達成率の推移です。コア機械受注を対象にしています。一番下のパネルは長崎ローカルで注目されている船舶の手持ち月数と受注残高です。青い折れ線が手持ち月数で左軸の単位は月、赤が受注残高で右軸の単位は兆円です。いずれも影をつけた部分は景気後退期ですが、直近の景気の谷は2009年3月、または、2009年1-3月期と仮置きしています。

機械受注の推移

一番上のグラフから明らかですが、内閣府が基調判断を「下げ止まりつつある」から「下げ止まっている」に上方修正したことに現れている通り、国内の設備投資の先行指標と見なされているコア機械受注は完全に底入れして反転し、順調に拡大を続ける勢いを示しています。四半期でならして見ると、1-3月期は前期比+2.9%増と2四半期連続の増加を示し、さらに、4-6月期の受注見通しも+1.6%増と増加する見込みとなっています。特に、製造業は明らかに回復を示しており、非製造業も下げ止まりの兆しがうかがえます。もちろん、変動の激しい電力と船舶を除いても、まだ変動の激しい統計ですから、この先も単月でマイナスをつける可能性は十分ありますが、方向として拡大を続けるものと私は考えています。従って、国内の設備投資も年内には本格的な拡大軌道に戻るものと期待しています。もうひとつの明るい指標は達成率です。景気の目安とされる90パーセントを上回り、これまた、本格的な景気拡大期に入ったことがうかがえます。誠に残念なのは船舶です。先月4月8日付けのエントリーで単純な計算を示して、この先2年ほどの調整期間を要すると書きましたが、ほぼ、そのラインに沿って推移しているように見えます。

企業物価の推移

上のグラフで示した企業物価は、国内物価が前年同月比で▲0.2%までマイナス幅を縮小しましたが、+10.1%と2桁の上昇を示した輸入物価にけん引されたものです。上のグラフでも明らかな通り、2007-08年にかけて輸入物価と輸出物価は逆の方向に動きましたが、国内企業物価はボリュームの大きさに反して輸入物価に影響される度合いが高いようです。NYMEX の原油価格はバレル当たり70ドルに上昇して来ており、このまま原油価格などの商品市況に引っ張られる形でデフレを脱却しても、2008年の二の舞になるだけだという気がしないでもありません。日銀は成長産業育成のための金融よりも、本来の目的であるマクロ経済の安定、そのためのデフレ脱却に本腰を入れていただきたいと願っています。

『数えずの井戸』を取り上げた昨日のエントリーで、経済学にもオカルトがあると書きましたが、メディアの報道とは違う真実を見るべきです。機械受注は低水準ながら拡大しています。低水準を強調するメディアの報道には疑問が残ります。企業物価はプラスに近づいているものの商品市況に後押しされたものです。これでデフレ脱却が近づいたとする報道には疑問が残ります。

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2010年5月16日 (日)

まぁ、こんなもんでしょう

  HE
楽  天113002000 7100
阪  神002100000 351

昨夜の岩隈投手にせよ、今日の田中マー君にせよ、いかに阪神打線が強力とは言え、やっぱり3点取るのがせいぜいといったところでしょうし、実際にそうだったんですから、昨日今日の先発投手の名前を聞いて、ローテーションの都合もあるとは言うものの、せっかくの甲子園での週末の試合に、応援席いっぱいのファンを前に真弓監督は何を考えているのかと不思議に思いました。昨日の試合では岩隈投手を打ち崩したとは言えないまでも、打撃陣が3点取って勝ちにつなげ、今日も3点取ったものの、投手陣が馬脚を現して、先発スタンリッジ投手と石川投手が合わせて7点取られれば、田中マー君を相手に勝てようはずもありません。終盤の3イニングスを投げた江草投手と鶴投手が抑えたのは収穫かもしれませんが、投壊の文字が目に浮かびます。

それでもやっぱり、
がんばれタイガース!

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京極夏彦『数えずの井戸』(中央公論新社) を読む

京極夏彦『数えずの井戸』(中央公論新社)

京極夏彦さんの『数えずの井戸』(中央公論新社) を読みました。作者は『後巷説百物語』で第130回直木賞を2004年に授賞されていますし、少し前に『嗤う伊右衛門』が映画化されたり、ミステリの『百鬼夜行シリーズ』などでも有名ですので前から読んでみたいと考えていたんですが、ようやくチャンスがありました。どうして、なかなか読まなかったのかというと、ズバリ、妖怪物だからです。でも、今年度上半期のNHK朝の連続テレビ小説は「ゲゲゲの女房」だったりしますし、オカルトがブームというわけでもないんでしょうが、よく流行っているので買いました。この『数えずの井戸』は『嗤う伊右衛門』、『覘き小平次』に続く「江戸怪談シリーズ」の第3弾です。この作者の特徴として長大なページ数を誇っています。以下、ネタバレがあるかもしれません。未読の方が読み進む場合はご注意ください。

京極夏彦『数えずの井戸』登場人物相関図

上の人物相関図も中央公論新社の特設サイトから引用しているんですが、見れば明らかな通り、この作品は「番町皿屋敷」を基にしています。いろんなバリエーションはありますが、旗本家の10枚揃いの家宝の皿の1枚を割って手討ちにされ、屋敷の井戸に投げ込まれた女中の菊が、井戸の縁に夜な夜な化けて出て皿を数える怪談です。この作品はその事件が起こるまでを描いています。もっとも、この作品では菊は皿を割りません。上の人物相関図で皿を割ったとされる当人の菊をはじめ、主人公的な役割は旗本家当主の青山播磨やその側用人の柴田十太夫などです。上の図に出現しないんですが、青山家腰元の仙や、もちろん、遠山主膳と大久保吉羅も重要な役回りをします。事件が起こった後で、右端に現れる又市と徳次郎が解説をしてくれます。

一応、エコノミストは科学者ですので、エセ科学としてのオカルトは否定します。他方、経済学にもオカルトはあります。エセ科学たる経済学オカルトを否定する代表者の1人は一昨年のノーベル経済学賞を授与されたクルーグマン教授だと私は考えています。でも、文学作品でオカルトを扱うのは、決して好きではありませんが、決して嫌いでもありません。4ツ星くらいで、まずまずオススメの1冊です。

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2010年5月15日 (土)

日本財政はどこまで赤字を続けるか、続けられるか?

昨日、米国の首都ワシントンに本部を置く国際通貨基金 (IMF) から World Economic and Financial Surveys: Fiscal Monitor - Navigating the Fiscal Challenges Ahead と題した見かけないリポートが発表されました。日本のメディアでも取り上げていますので、まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日本の政府債務、2015年にGDP比2.5倍 IMF見通し
国際通貨基金(IMF)は14日、世界各国の財政見通しを発表した。ギリシャを含む欧州、日本、米国など先進29カ国の国内総生産(GDP)比でみた政府の債務は国と地方を合わせ2010年の97.8%から15年には110.2%になると予測。日本は同250%まで上昇すると推計した。一方、高成長が続く新興国は11年から低下に転じ、15年に34.2%となる。財政面でも先進国と新興国の差が広がる。
IMFは4月に公表した世界経済見通しに基づき、国・地方の債務などを統合した財政状況を各国別に算出した。スペインやポルトガルが最近追加した財政再建策は反映していない。
世界合計の10年の財政赤字はGDP比で前年比0.7ポイント改善し6.0%の見通し。一方で「世界経済見通しの上方修正にもかかわらず、前回(昨年11月)予測よりも財政改善は小幅」とした。
日本の財政赤字は10年が9.8%、15年が7.3%と予測。日本はギリシャ、アイルランド、スペイン、英国、米国の5カ国とともに、債務残高が積み上がり政策経費を税収で賄えない比率も高いと分析した。
IMFは歳入増加策として、日本は消費税率を5%引き上げ、米国は州ごとの売上税とは別に税率10%の連邦レベルの付加価値税を創設するなどの案を示した。

まず、リポートの p.85 Statistical Table 6. General Government Gross Debt (In percent of GDP) からデータを拾って G5 諸国の一般政府のグロスの債務残高をプロットしたのが以下のグラフです。予測の最終年である2015年だけデータをラベルしてあります。

G5諸国における一般政府グロス債務残高

新しいペーパーとして、私が先に紹介した「ギリシアにおける財政危機に関するノート: 日本への教訓」(長崎大学経済学部『研究年報』、2010年6月に収録予定) でも強調しておいたんですが、ストックたる政府政務残高はフローの政府バランスの内生変数として決まります。そのプライマリー・バランスをリポートの p.81 Statistical Table 2. General Government Primary Balance (In percent of GDP) からデータを拾って G5 諸国についてプロットしたのが以下のグラフです。ここでも、予測の最終年である2015年だけデータをラベルしてあります。

G5諸国における一般政府プライマリ・バランス

なお、このリポートではプライマリー・バランスについて循環的な要因を除き、いわば構造的な要因だけを取り出した推計も行っていますが、言ってみれば、タテから見ても、ヨコから見ても、ナナメから見ても、ストックでもフローでも構造要因でも、何から何まで日本の財政赤字は先進国中最大といえます。危機感をあおるエコノミストであれば、「いつ、日本国債がデフォルトしても不思議ではない」くらいの発言をするかもしれません。しかし、これまた、「ギリシアにおける財政危機に関するノート: 日本への教訓」(長崎大学経済学部『研究年報』、2010年6月に収録予定) に書いたことですが、国債が取引される金融市場はかなり調整スピードが速いとは言うものの、日本国債 (JGB) の取引は幸田真音さんの『日本国債』の世界のように sudden death するのではなく、マーケットから警告が発せられる一定の期間があると私は考えています。もっとも、その警告期間がどれくらいの長さになるかは予断を持つべきではありません。可及的速やかに中長期の財政運営に関する指針が策定されることを市場は待っているのかもしれません。

このブログで何度も繰り返して来た通り、私は雇用に経済政策上の最大の重点を置くべきであり、働く意欲のある国民に対して、憲法第25条的な意味ではなく、先進国らしい豊かな生活を送るに足る所得を得ることが出来るような decent な職を提供できれば、経済政策の大部分の目標が達成できると考えて来ました。その分、という言い方もヘンかもしれませんが、財政赤字に能天気な態度を取り続けて来ました。この先、5-10年くらいで年貢を納める時期が来ているのかもしれません。

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2010年5月14日 (金)

失業の原因は何か?

先週の講義では労働を取り上げました。その昔から、戦後日本の労働の特徴は以下の3点と言われています。

  • 長期雇用
  • 年功賃金
  • 企業内組合

しかし、繰返しになりますが、この3点は戦後日本の労働の特徴であり、大正期や昭和初期の我が国は現在の英米と同じような転職社会だったと言われていますし、そもそも、高度成長期において典型的な日本の労働の特徴が形成された時点でも、上の3点が適用されていたのは、いわゆるエリート層だけであり、せいぜい3割、さらに、現在では、上の3点が大きく転換しつつあることも確かです。でも、大なり小なり、日本の職場では上の3点に適合的な労働システムになっていることも事実です。ですから、日本的な労働の特徴として把握しておく必要があると私は考えています。
授業の最後に私が強調したことがあります。それは失業の原因で、現時点で就業していない学生諸君にとっては就活で内定がもらえない原因と受け止めても同じことです。失業の原因は構造的=ミクロ的な要因と循環的=マクロ的な要因に分けることが出来ます。その中で、ケインズ卿の喝破した通り、マクロ的な需要の不足が失業の大きな要因であり、キチンとした定量的な分析はしていませんが、私の直感では8割以上を占めます。構造的なミクロの要因はミスマッチとも呼ばれます。逆順ですが、簡単に箇条書きすると以下の通りです。

  • 循環的=マクロ的な要因
  • 構造的=ミクロ的な要因
    1. 賃金
    2. 地域
    3. 産業
    4. 職種
    5. 年齢

圧倒的に失業の原因となっているマクロ的な需要不足は個人のレベルではどうしようもありませんが、ある意味で、構造的な要因は個人的な努力でカバー出来る部分でもあります。上の5点の構造的なミスマッチ要因のうち、特に私に気がかりなのは地域への執着です。すなわち、本学の場合、九州域内で生まれ育って九州域内の大学に進学している学生が大部分ですから、特に地域的な執着が見受けられると私は受け止めています。しかも、私から見たらやや誤った認識も散見されます。すなわち、東京や大阪で就職するのに比べて、九州域内で就職する方がラクである、という考え方です。もちろん、東京の総合職と九州域内で転勤のない一般職では、前者の方によりスキルが必要とされると考えるべきですが、条件が同じであれば、九州域内で就職しようとする方が難しいと私は受け止めています。典型的に観察されるのは教職の採用試験です。文部科学省の「平成21年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」のうちの第2表 各県市別受験者数、採用者数、競争率によれば、小中高校に養護学校などを合わせた公立学校の試験倍率で、首都圏が東京都4.2倍、千葉県4.4倍、神奈川県5.3倍、埼玉県5.4倍、また京阪神では京都府5.6倍、大阪府5.4倍、兵庫県5.8倍となっているのに対し、長崎県は九州7県の最高倍率15.1倍を記録し、福岡県でも12.8倍あります。要するに、倍率は圧倒的に首都圏や京阪神の方が九州域内よりも低くなっています。仕事の内容が同じであれば、九州域内で就職する方が東京や大阪に行くよりも難しいと私が考えるひとつの根拠です。
繰返しになりますが、大学生の就活を含めて、就業と失業の狭間は極めてマクロ要因の寄与が大きく、失業したり、あるいは、大学生が就職できなかったりするのは、圧倒的に個人の努力の範囲を超えていると私は考えています。ですから、失業者やフリータについて自己責任や個人の努力を強調する見方はほとんど間違いです。しかし、さはさりながら、個人で努力できる部分もゼロではありません。特に、九州域内では地域に執着するのは就活ではマイナスになることを覚悟しておくべきです。

おそらく、現在の大学3年生かあるいは2年生くらいが就職難のピークであろうと私は見ていますが、個人で出来る範囲として、地域に固執することなく、多くの学生諸君が ILO の言うところの decent な職を得ることを願っています。

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2010年5月13日 (木)

経常収支は景気後退前の水準に戻り、景気ウォッチャーは強気を続ける

本日、財務省から3月の国際収支が、また、内閣府から4月の景気ウォッチャー調査が、それぞれ、発表されました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月経常黒字、輸出持ち直しで65.1%増 貿易収支、最大の伸び
財務省が13日発表した3月の国際収支(速報)によると、経常収支は2兆5342億円の黒字で前年同月比65.1%増加した。輸出の改善が続き、貿易収支の黒字幅が拡大したことが寄与した。
貿易・サービス黒字は約7倍の1兆891億円。うち貿易黒字は約8倍の745.4%増の1兆747億円と、比較可能な1986年以降で最大の伸び率を記録した。海外需要の持ち直しで自動車や半導体関連などの輸出が拡大。輸入額も増加したが、輸出額の伸びが上回った。
一方、サービス黒字は46.8%減の144億円。貿易量の増加で輸送業の赤字幅は縮小したが、海外への旅行者が増加した。
所得収支は1兆6540億円の黒字で2.6%減少。企業の海外子会社の業績不振で直接投資収益が減ったことが影響した。
同時に発表した2009年度の経常黒字は15兆6545億円で、前年度に比べ26.9%増と、2年ぶりに増加に転じた。外需の持ち直しで貿易黒字が約6倍の6兆6088億円に改善。貿易・サービス収支の黒字は4兆7784億円と、前年度の赤字から転換した。所得収支は17.9%減の11兆9553億円の黒字で、2年連続の減少だった。
街角景気5カ月連続で上昇 5月、雇用動向も改善
内閣府が13日発表した4月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.4ポイント上昇の49.8だった。減税やエコポイントなど政策効果の波及や企業業績の改善を受け、5カ月連続で改善した。
指数を構成する家計動向、企業動向、雇用関連のすべての分野が改善。企業の受注や出荷が持ち直したほか、非正規社員などの新規求人が増加した。3月の家電エコポイント対象品変更前の駆け込み需要の反動で薄型テレビ販売は鈍化したが、エコカー減税で自動車の販売が引き続き好調だった。
2-3カ月先の先行き判断指数も2.9ポイント上昇の49.9と、5カ月連続で改善。子ども手当支給や、エコカー減税・補助金や家電・住宅のエコポイント制度の効果による需要増を期待する声が多かった。
内閣府は景気判断を2カ月連続で「厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」とした。
記者会見した津村啓介内閣府政務官は「非常にいい結果。設備投資の話や新規求人数の増加も確認でき、景気の自律的回復の前提条件のいくつかがクリアされつつある」と述べた。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、「家計」「企業」「雇用」の3分野で指数を作り加工する。今回の調査期間は4月25日から月末まで。

次に、経常収支のグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが合計の経常収支、棒グラフはその内訳となっています。黒が貿易収支、緑がサービス収支、赤が所得収支、黄色が移転収支です。すべて季節調整済みの系列で、左軸の単位は兆円です。ほぼ前の景気循環の拡大期に当たる2005-06年の水準に戻ったと考えてよさそうです。

経常収支の推移

さらに、景気ウォッチャー調査の結果をグラフにすると以下の通りです。引用した記事にもある通り、一致指数も先行指数もほぼ50に達する水準まで上昇しました。過去の例からして、このマインド調査が50を超えることはめったにないことから、かなり高い水準まで達したと私は受け止めています。加えて、夏季ボーナスが上がるようであれば、もっと高まる可能性もあると考えられます。

景気ウォッチャー調査の推移

来週、5月20日に発表される1-3月期のGDP速報、エコノミストの業界で1次QEと称されている指標は、かなり高い成長率を示すことが見込まれています。私もそう感じています。設備投資が増加に転じ、さらに、雇用にも波及すると、少しずつですが力強い成長経路を取り戻すものと期待しています。

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2010年5月12日 (水)

景気の現状やいかに?

本日、内閣府から今年3月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなるCI一致指数は3月の100.0兆度から1.1ポイント上昇して101.1となりました。DIも今年に入ってから3か月連続で100を続けています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の景気一致指数、12カ月連続上昇 基調判断は据え置き
内閣府が12日発表した3月の景気動向指数(CI、2005年=100、速報)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比1.1ポイント上昇の101.1と12カ月連続で上昇した。12カ月連続の上昇は、1996年2月から97年1月まで以来。有効求人倍率(除学卒)など雇用関係の指数や商業販売額など消費関連項目が改善したことが寄与した。
内閣府は基調判断を6カ月連続で「改善を示している」とした。
記者会見した津村啓介内閣府政務官は「雇用についてはまだ過去最悪水準から抜け切れていない。内需の自律的な回復という判断までたどり着けるか少し慎重な議論もしなければならない。ギリシャ問題も踏まえ総合的な判断も必要」との認識を示した。
数カ月後の景気の先行きを示す先行指数は4.4ポイント上昇の102.8。プラスは13カ月連続と、80年1月の統計開始以降の最長と並び、伸び幅も過去最大だった。在庫率指数や新規求人数(除学卒)の改善が寄与した。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCIの一致指数と先行指数、下のパネルはDIの一致指数です。いずれも影をつけた期間は景気後退期ですが、直近の景気の谷は2009年3月と仮置きしています。

景気動向指数の推移

多くのエコノミストは昨年2009年1-3月期が景気の谷であったであろうとのコンセンサスを共有していますので、景気の谷からほぼ1年が過ぎました。景気動向指数は経済活動の水準や付加価値額を代理する指標ではありませんが、この3月の一致指数である100から101という水準は、前回の景気循環における拡大期ではいつごろに当たるかというと、ほぼ2005年の年央から年後半くらいに相当します。私はまだ官邸スタッフをしていましたので記憶に新しいんですが、当時の小泉総理大臣が2005年8月にいわゆる「郵政解散」をして、9月の選挙で当時の与党であった自民党と公明党が圧倒的多数を占めた時期であり、株価が本格的に上昇軌道に乗ったころです。まだデフレは続いていたものの、かなり本格的な景気回復が実感できた時期ではなかったかと記憶しています。それに比べて、現時点の景気はというと、ギリシアの財政危機などの要因はあるとは言うものの、景気の力強さは実感できません。基本的に、今年あたりから設備投資が本格的にに回復を始めて、それに少し遅れる形で雇用の増加や賃金の上昇が始まると私は考えていますが、今少し時間がかかる可能性があります。

私自身はデフレの克服を第1の政策目標とすべきと考えていますが、現在の経済政策運営ではそうなっていません。経済政策運営の目標が国民一般に分かりにくくなっている気がしないでもありません。

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2010年5月11日 (火)

日本政府の借金の状況やいかに?

昨日の午後、財務省から前年度末すなわち2010年3月31日時点での国債及び借入金並びに政府保証債務現在高が発表されました。約47兆円の政府保証債務現在高を別にして、国債及び借入金の現在高は883兆円に上ります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

国の借金、最大の883兆円 3月末、国民1人693万円 1年で36兆円増える
財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の総額が2010年3月末時点で 882兆9235億円と過去最大になったと発表した。昨年3月末から36兆4265億円増加した。補正予算の財源確保のために国債を増発したことが借金増加の主因。10年4月1日時点の推計人口(概算値)1億2739万人で計算すると1人あたりの借金は約693万円で、過去最大だった。
国の借金残高は財務省が四半期おきに公表している。
国の借金の内訳をみると国債は前年同期比40兆408億円増の 720兆4890億円。一方、政府短期証券は2兆4545億円減の106兆281億円だった。

国債及び借入金現在高と政府保証債務現在高に分けて公表されていますが、私は後者の政府保証債務の方は余り興味がないので、前者の国債および借入金の残高を見ると以下の表の通りです。なお、単位は億円ですが、単位未満四捨五入のため合計において合致しない場合があります。また、財務省のサイトからコピペで計数を取っていますので間違いはないと思いますが、完全性は保証しません。正確な計数をお求めの向きは引用元の財務省のサイトをご覧ください。

区分金額前年度末比増減
内国債7,204,890+400,408
 普通国債5,939,717+480,360
 長期国債 (10年以上)3,731,545+189,166
中期国債 (2年から5年)1,771,932+161,749
短期国債 (1年以下)436,240+129,446
財政投融資特別会計国債1,222,253▲88,248
 長期国債 (10年以上)1,002,743+55,371
中期国債 (2年から5年)219,510▲143,619
交付国債4,496▲770
出資・拠出国債17,671▲4,434
株式会社日本政策投資銀行危機対応業務国債13,500+13,500
日本高速道路保有・債務返済機構債券承継国債7,254-
借入金564,063▲11,598
 長期 (1年超)210,921▲11,598
短期 (1年以下)353,142-
政府短期証券1,060,281▲24,545
合計8,829,235+364,265

上の表は2010年3月末現在の計数ですが、最後の債務残高合計と名目GDPを対比して、政府負債務残高のGDP比をプロットしたのが下のグラフです。青い棒グラフは期末における債務残高で左軸の単位は兆円、これを期中の名目GDPで除した比率が赤い折れ線グラフで右軸の単位はパーセントです。当然のことながら、債務残高とGDP比は同じような動きを示していますが、GDP比については、2006-07年の景気拡大終盤でやや低下する局面があった後、Great Recession で財政による景気浮揚策が取られたこともあり、大幅に上昇しているのが見て取れます。なお、お断りしておきますが、今年1-3月期のGDP統計は今月5月20日に発表される予定ですので、直近の政府債務残高のGDP比はまだ計算されていません。

政府債務残高とGDP比の推移

さらに、財務省のサイトから財政収支と国債残高に関する国際比較のグラフを引用すると以下の通りです。上のパネルがフローの財政収支、下がストックの国債残高のそれぞれGDP比となっています。2つのグラフを見れば明らかなんですが、現在の累増したストックの国債残高の多くは1990年代後半から2000年代初頭にかけてのフローの財政赤字に起因しています。

財政収支と債務残高の国際比較 (対GDP比)

このブログでは昨年も全く同じ2009年5月11日付けのエントリーで、まったく同じ話題を取り上げ、「政府債務残高の最適水準に関するエコノミストの合意はまったく形成されていない」とか、「マクロ経済や金融市場の安定が損なわれていない」として、私らしく財政赤字に能天気なところを示していましたが、少なくともこの2点に関しては事情の変更は何らないものの、さすがに、ギリシアの財政危機から世界経済が大きな影響を受けた現時点では、そこまで能天気にもなれません。ギリシアでこうなんですから、日本が財政危機に陥れば世界経済は大混乱どころの騒ぎではないと考えるべきです。

当然、我が国政府も大きな問題意識を持って取り組んでいるところであり、国家戦略室では今年に入ってから中期的な財政運営に関する検討会を数次に渡って開催しており、4月6日の会議では論点整理のポイントなどが公表されています。私は財政危機に対しては sudden death ではなく、市場から何らかの警告期間があるんではないかと考えているんですが、その期間の長さは予断を許しません。市場の信認を失うことのないよう、財政規律の維持に関する国民のコンセンサスを形成することが重要です。

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2010年5月10日 (月)

今夏のボーナスは上がるのか?

このブログでは先月4月27日のエントリーで今年の夏季ボーナスに関して、シンクタンク4機関の予想を取り上げましたが、5月に入って相次いで集計結果が出ています。私が見た範囲では日経新聞と労務行政研究所なんですが、いずれも大手中心ながら前年を2%も上回って大幅に増加する結果となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

夏ボーナス、3年ぶりプラス 非製造業は減少
日本経済新聞社が8日まとめた2010年夏のボーナス調査(中間集計)によると、平均支給額は前年に比べ2.78%増となった。新興国市場の開拓やコスト削減などが奏功し、自動車や電機など製造業の一部で回復した業績が反映した。ただ消費不況に苦しむ非製造業は3年連続のマイナス。全体水準は過去最大のマイナスとなった前年から小幅の回復にとどまっており、消費の底上げには力強さを欠きそうだ。
09年夏は17.79%減、08年夏は0.18%減でプラスに転じたのは3年ぶり。支給額は加重平均で74万4736円(37.9歳)となり、前年を4万3724円上回る。
製造業は4.55%増で05年以来となる4%台の伸びを確保した。輸出型産業の業績回復を反映した。徹底したコスト削減を収益力の回復に結びつけた自動車・部品(7.04%増)や電機(4.57%増)の伸びが目立つ。
対照的に非製造業は0.87%減。09年の3.13%減、08年の2.37%減に比べマイナス幅は縮小したが低調だった。百貨店・スーパー(7.66%減)や鉄道・バス(6.73%減)が目を引く。
ボーナスが前年より減った企業は理由に「業績」(78%)、「今後の見通しが不透明」(68%)などを挙げた。
第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「全産業を見渡すと人件費の過剰感は解消しておらず、内需依存度が高い非製造業の回復は遅れる」と指摘。ボーナスの消費への影響は「緊縮財政が続いた "節約疲れ" の反動で財布のひもも緩みつつあるが、リーマン・ショック以前に比べると盛り上がりを欠くだろう」と分析する。

同じ日経新聞のサイトから引用した夏季ボーナス増減率のグラフは以下の通りです。なお、このサイトには詳細な産業別などの支給額や増減率表も掲載されています。

夏季ボーナス増減率の推移

また、労務行政研究所が5月6日に発表した「東証第1部上場企業の2010年夏季賞与・一時金(ボーナス)の妥結水準調査」でも、単純平均ながら前年比+2.4%増と大きく増加する結果が弾き出されています。コチラの結果では日経新聞調査と違って非製造業も+1.5%と増加する結果となっています。
ボーナスは官民格差が大きく、民間の中でも大企業と中小零細企業の規模別の差が激しいわけですから、こういった大手中心の調査結果をそのまま受け入れるのも抵抗があり、結局のところ、今夏のボーナスは1人当たりで1%に達しない小幅のプラスではないかと私は見込んでいます。でも、景気が上向くに従って支給範囲が広がることから、支給総額としては1人当たりよりも大きなプラスになると期待しています。その意味では、決して、日経新聞の論調のように悲観的に見ることもなく、「節約疲れ」だけでなく、消費には一定の拡大効果をもたらすことと考えています。

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2010年5月 9日 (日)

ヨタヨタになりながら何とか広島に競り勝つ!

  HE
広  島000020010 370
阪  神01010020x 472

最初はテンポいい試合だったんですが、最後はハラハラドキドキの試合展開で、8回から藤川投手にイニングをまたいで登板させ、何とか広島相手に競り勝ちました。苦しい試合展開といえましょうが、これが今の阪神の実力なのかもしれません。
安藤投手の調子がサッパリ上がらず二軍落ち、加えて、能見投手がケガで戦列を離れて、ローテンション投手に不足するようになったとは言え、選手層の厚い我がタイガースですから、鶴投手がしっかりと試合を作り、広島の前田健投手と互角に投げ合いました。頼もしい限りです。残念ながら打線が振るわず、勝ち投手こそつきませんでしたが、立派な働きといえましょう。
まったく頼もしくないのは相変わらずの4番で、新旧の4番、すなわち、今の新井内野手と代打で出て来た金本選手です。精彩を欠くというのはこういうもんだという気がします。特に、金本選手は引退の2文字が近付いているように感じるのは私だけでしょうか。DH 制のある交流戦でも4番に戻すかどうかは微妙な判断でしょう。この2人に加えて、相変わらず守備で足を引っ張っているのが桜井外野手です。守備は目をつぶるので、もっと打ってくれないと勘定が合いません。守備のプレーが打棒に悪影響を及ぼしていたりするんでしょうか。打線を救ってくれたのが外国人選手の2人です。ブラゼル内野手が2ホーマー、マートン外野手が決勝の2点二塁打と、今年の外国人選手は打つ方は当たりの気がします。投げる方は疑問が残ります。

交流戦に入っても、
がんばれタイガース!

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単身赴任の良し悪しについて考える

一昨年の8月1日に長崎に赴任してから、2年近くを単身赴任で過ごしています。自由気ままで過ごせるのは独身時代に戻ったようで、それはそれでいいんですが、我が家のように専業主婦の女房がいるのと違って、身の回りのことは自分で片づけないといけません。それはそれで面倒です。加えて、私の場合は公務員でしたので、ごく普通のサラリーマンと同じ条件から大学教員に出向して、仕事も大きく変化しましたから、生活面と仕事の面と両方で対応が必要になっています。昨夏の新型インフルエンザを別にすれば、現時点まで、大きな病気やケガは経験していませんが、本学には医学部・歯学部・薬学部とそろっているとは言うものの、私くらいの年齢で単身赴任も長くなると健康に起因するリスクが増しそうな気がします。ということで、精神面と肉体面の単純なディコトミーに従って単身赴任の良し悪しを考えると以下の通りです。

まず、精神的には、もはや中年ですから、藤沢周平さんの名作短編集『たそがれ清兵衛』の最後の物語である「祝い人助八」みたいなもので、ある意味で、女房と離れて暮らすのは自由度が高まります。もちろん、「祝い人助八」の方は格上の家から嫁に来た小うるさい女房が早死にするという設定ですから、単身赴任とはまるっきり違うんですが、それはそれとして、自由度が高まって薄汚れた暮らしを始めるところは似通っているような気がします。でも、私のような親バカの場合は子供の顔を見られないのは寂しい限りです。もっとも、子供達の方では父親がいなくて自由度が増しているような気がしないでもありません。健康とは肉体的なものだけでなく、メンタルから病気になることもありますが、少なくとも我が女房は、私にはそういった心配はまったくないことを認識していることと思います。
肉体的な健康面を考えると、すべてを外食に頼る食事は自由気ままの典型で、好きな時刻に好きなものを食べていますので、私のような太る体質の人間は体重が増えます。一時は最大で3キロまで太りましたが、今は半分くらい戻しています。長崎ではチャンポンやお好み焼きなどの、自然と野菜が多く取れるようなメニューを心がけています。でも、チャンポンは店によっては塩分が多そうな気がしないでもありません。なお、食事については何とも言えない独自の悩みがあります。すなわち、大手の飲食店チェーンなどで学生バイトを雇っているところでは、必ず、経済学部の学生がアルバイトしていると言われています。実は、本学の場合、工学部よりも経済学部の方が学生数が多かったりします。我々教員の方からは判別できないんですが、小さな街ですし学生からは教員が判別できるようです。私はプライバシーを大切にしていますので、出来るだけ、こういった大手のチェーン店には行かないようにして、家族経営の小さな店に入るように心がけています。
私が最も苦手なのは掃除で、事実上、掃除は放棄しているに等しいんですが、掃除は放棄できても、洗濯をしないことにはどうしようもありません。ですから、洗濯物を減らす工夫をして、何日も同じジーンズをはいたり、週末は靴下を省略したり、なるべく薄着で済ませようとしていたりします。薄着し過ぎて肌寒く感じることもあれば、逆に、不必要に厚着してしまったと週末の洗濯の重労働を思いやって後悔する場合もあります。ミッション系の上品な私学などでは、男性の教員はクールビズ以外ではネクタイにスーツという暗黙の了解があるケースも少なくないと聞きますが、本学はドレスコードのようなものはないらしく助かっています。たぶん、経済学部では唯一だと思いますが、暑い季節を別にして白衣を羽織って押し通しています。日時を経過して薄汚れて来て、やや清潔感に欠ける場合もあるんですが、本来、白衣とは代わりに汚れてくれるものだと解釈しています。清潔感ある白衣とは仕事をしていない象徴ではないでしょうか?

最後に、青山にいた時は10時半か11時くらいには布団に入っていたんですが、長崎に来てから夜更かしをするようになりました。定時に出社して定時に帰宅するサラリーマンではなく夜学の学生を相手にすることもありますので、不規則な勤務は仕方ないんですが、寝付くのも朝起きるのも1-2時間遅くなり、私の本来のペースである夜型にシフトしたような気がします。

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2010年5月 8日 (土)

乱打戦で広島に打ち負ける!

  HE
広  島211300220 11171
阪  神104000003 8131

久々に、日本一になった1985年当時を思い起こさせるような乱打戦でした。出るごとに点を取られるザルのような投手陣でしたが、でも、1985年当時との違いは4番打者にあると感じました。また、4番がダメでも3番や5番に強力なスラッガーがいて、もっと点が入ったような気がしないでもありません。先発投手が弱いのもさることながら、先発が降板してからの中継ぎ陣も次々に得点を許して、1985年当時の福間投手のような毎日のように投げていた鉄腕ピッチャーが欲しい気もします。

何はともあれ、明日は、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計と名人戦第3戦

日本時間の昨夜、米国労働省から4月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は季節調整済みの前月差で290千人の増加となりましたが、失業率は同じく季節調整で見て9.9%と0.2%ポイント悪化しました。まず、New York Times のサイトから関連する記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy Gains Impetus as U.S. Adds 290,000 Jobs
Despite growing unease in the financial markets, the American economy is gathering steam, adding an unexpectedly large number of jobs last month.
The Labor Department's monthly snapshot of the job market, released on Friday, showed that employers added 290,000 jobs in April - the largest gain in four years - and that they did so across a broad swath of industries. The United States has now added jobs for four consecutive months.
The unemployment rate, however, crept up to 9.9 percent, from 9.7 percent in March, mostly because of a significant increase in the number of people who had previously given up deciding to look for work again.
Major stock gauges in the United States rose briefly on the unexpectedly strong job growth report before gyrating in a trading day marked by continuing fears about spreading European debt woes and concern about structural weaknesses in the stock markets that may have contributed to a terrifying sell-off on Thursday.

ということで、事前の市場コンセンサスでは200千人弱の増加と見根されていた非農業部門雇用者数が大きく増加したものの、職探しをあきらめていた人々が労働市場に参入したために失業率が上昇するという、景気回復初期にありがちな姿となりました。それにしても、290千人の雇用者数の増加はかなり大きいように私は感じています。

米国雇用統計の推移

上のグラフは米国雇用統計の推移を見たもので、一番上のパネルが非農業部門雇用者数の前月差、真ん中が失業率、最後が非農業部門の雇用者数の前月差増減を米国労働省と給与計算アウトソーシング会社である ADP とで比較したものです。いずれも季節調整済みの系列で、影をつけた期間は景気後退期なんですが、直近の米国の景気の谷は昨年2009年6月と仮置きしています。この3-4月は米国労働省の雇用統計と ADP のデータの乖離が大きくなっています。また、以下のフラッシュは記事を引用したのと同じNew York Times のサイトに直リンしています。

最後に、一昨日から千葉県野田市の同市市民会館 (旧茂木佐邸) で指し継がれていた名人戦第3局は132手で後手番の羽生名人が挑戦者の三浦八段を下して3連勝としました。第2局と同じ横歩取りから始まり、中盤以降はかなり一方的な展開になったと報じられています。下の終了図は朝日新聞のサイトから引用しています。

名人戦第3局終了図

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2010年5月 7日 (金)

欧州委員会の「経済見通し 2010年春」

昨夜の日本の財政から、今夜は目を欧州に転じて、一昨日の5月5日に発表された「欧州経済見通し 2010年春」 European Economic Forecast - Spring 2010 を取り上げたいと思います。もちろん、pdf のフルリポートも公表されています。ヘッドラインとなる成長率見通しは、欧州 (EU) で2010年+1.0%、2011年+1.7%、ユーロ圏諸国 (EA) で2010年+0.9%、2011年+1.5%となっています。ユーロ圏外の新興国の成長率がユーロ圏諸国より高くなっているからです。まず、最初にリンクを張ってある EU のサイトから引用した成長率などのグラフは以下の通りです。

EU and euro area quarterly GDP profile

一番上のパネルが欧州 (EU) とユーロ圏諸国 (EA) の成長率の見通しで、次のパネルはユーロ圏諸国の成長率見通しのファンチャートになっています。3番目のパネルが雇用なんですが、雇用の増加は2011年になってようやく緩やかに始まり失業率は10%近くで高止まりする見通しとなっています。最後のパネルは物価上昇率で、コアインフレは楽に2%を下回ると予想されています。次に各国別の見通しのフラッシュに直リンしたのが下の地図です。青がユーロ圏諸国、水色がユーロ圏でない EU 加盟国で、これらについてはクリックすると別画面か別タブで詳細見通しが現れます。なお、オリジナルの地図に比べて右側を少し割愛してありますので、キプロスは現れません、悪しからず。これも、最初にリンクを張ってある EU のサイトから引用しています。

最後に、最近の興味の的であるギリシアの財政に関するグラフを見ると以下の通りです。pdf のフルリポートの p.89 Graph II.8.2:Greece - General government debt, primary balance and interest を引用してます。最近のユーロ圏諸国と国際通貨基金 (IMF) による救済策がどのように織り込まれているのかは不明ですが、2011年でもヘッドラインとなる財政赤字で約10%、プライマリー・バランスでも5%近くの赤字を続けるという見通しが示されています。

Graph II.8.2:Greece - General government debt, primary balance and interest

最後に、欧州全体ではプラス成長に戻る中で、「欧州経済見通し 2010年春」 European Economic Forecast - Spring 2010 の p.90 Table II.8.1: Main features of country forecast - GREECE では、ギリシアの成長率は2010年▲3.0%、2011年▲0.5%と見通されているんですが、5月2日にギリシア財務省が発表した "Note on the Economic Policy Programme relating to the Eurogroup and the IMF support mechanism" の Appendix Ι Key macroeconomics に従えば、増税と政府支出削減により2010年▲4.0%、2011年▲2.6%と成長率はさらに悪化する予想となっています。

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2010年5月 6日 (木)

日本財政の猶予期間はどれくらいか?

ギリシアの財政がほぼ破綻して、ギリシア国債が S&P によって BB+ というジャンク債に格下げされてから、「次はどこか?」という議論が盛んです。もちろん、次はポルトガル・スペインなんでしょうが、広く財政悪化が認識されている「日本の財政はどうか?」という視点もあります。ということで、先月4月に興味深いリポートが2本発表されましたので、遅ればせながらゴールデンウィークも明けたタイミングで取り上げておきたいと思います。以下の2本です。

いずれも、現在の民主党政権の総選挙時のマニフェストとその見直しを基に、こども手当、高校無償化、農家個別補償などの政策を実行するとして、国債の国内消化がいつまで可能かを試算しています。まず、みずほ総研の試算では、2025年度に国債残高が1502.9兆円に達し、その時点まで家計貯蓄率が3%を維持するとしても、家計貯蓄残高は1560兆円程度にしかならないため、そのあたりから国債の国内消化が困難になると結論しています。これは国債利子率が現状のまま推移すると仮定した場合の試算であり、1%ポイント上昇するごとに100兆円余り国債残高は膨張しますから、金利変動に極めて脆弱性を有するといえます。
下のグラフは東京三菱UFJ銀行のリポートから p.11 第19図と p.12 第20図を引用したものです。いくつか前提の置き方にもよりますが、フローとしての国債の国内消化比率が低下し、ストックとしての国債残高の海外保有比率が大きく上昇する結果となっています。なお、各ケースの前提については東京三菱UFJ銀行のリポートの p.11 に詳しく報告されています。

国債の国内消化比率

さらに、5月4日付けの Financial Times でも、Japan's Debt と題して、バークレイズ・キャピタルの見通しを引いて、"By 2017 or thereabouts, on Barclays Capital projections, the private sector's cash surplus - currently financing the public cash deficit - will be almost gone." と、2017年前後には国債の国内消化が困難になると報じ、結論として、"It is time for Japan, just like Greece, to get real." と、今や増税などに現実的に向かい合うべきであると締めくくっています。
4月26日付けのこのブログのエントリーでギリシアの財政危機に関する新しいペーパーを紹介した折にも9番目のポイントとして書きましたが、国債の国内消化が出来なければ海外にファイナンスを頼ることとなり、フローでは借換債や償還とネットアウトした国債発行額が国内貯蓄額を上回れば、貯蓄投資バランスの恒等式から経常収支は赤字になります。1980年代前半のレーガン政権下の米国に特徴的だった「双子の赤字」に陥ることとなります。もちろん、フローの経常収支が赤字を続ければ、ストックの反応として、それまでに累積された対外資産が減少して行って対外債務を抱え込む可能性もあります。
従来から繰り返している通り、私の考える経済政策の最重要課題は、決して憲法第25条的な意味でなく、先進国の一員たる日本の国民として誇りある生活を送るにふさわしい所得を得るために、働く意思ある国民すべてが能力に従って雇用の機会を与えられることであって、財政赤字には能天気な態度を取り続けているんですが、その財政に能天気な姿勢もあと7-15年ほどの余裕しかないのかもしれません。

最後に、今夜のエントリーはギリシアに始まって、ギリシアに終わるんですが、ギリシアの財政危機をユーロの通貨危機に直結させないために、ギリシアのユーロ離脱がアジェンダに上る可能性を示唆したリポートが三井住友銀行から出ていると聞きました。私はまだ見たことがないんですが、これはギリシアに「死ね」と言っているのに等しい気がしないでもありません。少し前、米国にバッド・バンクを設立して不良債権を移管する構想がありましたが、ユーロ圏ではバッド・カントリーを切り離したりするんでしょうか?

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2010年5月 5日 (水)

もっちゃりしたしゃべり方と無反応

家族のいる東京と大学のある長崎を移動していて、いろいろと違いがあって当然なんですが、特に、私は話し方が違うと感じています。大学に職を得て、文書で仕事を進める役所と違って、おしゃべりを用いた教育にたずさわっているわけですが、ハッキリ言って長崎の人はおしゃべりを通じた意思疎通は下手です。もちろん、東京の人もすべて気の短いチャキチャキの江戸っ子ではないんですが、私は独身の頃に浅草近くに住んでいた上に、京都よりも東京での暮らしの方が長くなってしまいましたから、しゃべり方はとっても簡潔です。でも、長崎の人のしゃべり方はもっちゃりしていて、なかなか用件を切り出さないので困る時があります。「もっちゃり」は関西弁かもしれませんが、雰囲気は分かるんではないでしょうか。少し前に、NHK の大河ドラマの「龍馬伝」で、坂本龍馬がかなり無理筋で千葉道場を通して松平春嶽の紹介を得て勝海舟に会いに行ったシーンを思い出します。勝海舟は文字通りのチャキチャキの江戸っ子なんでしょうが、なかなか用件を切り出さずにもっちゃりしたしゃべりを繰り返す坂本龍馬に×をいっぱい書き連ねていたりしました。ちょうどそんな感じです。
例えば、市立図書館に行って本を返却して帰ろうとした際に呼び止められたんですが、私から何度か「何の用件ですか?」と聞いても、なかなか用件を言ってくれません。以下、○が私、■が図書館司書さんです。


  • 何のご用件ですか?
  • 最近、図書館支所のある北公民館には行きましたか?
  • 私が北公民館に行ったかどうかを知りたいのが用件ですか?
  • そうではありません。重要な図書館の職務規定があります。
  • 図書館の職務規定を私に知らせるのが用件ですか?
  • そうではありません。北公民館で予約していた「西遊記」の取置き期間が過ぎていますので、もしも、まだ借りたいのであれば予約し直すよう、職務規定に基づきお知らせします。
  • それが用件ですか?
  • そうです。

図書館は本を読んだり借りたりするところであって、司書さんと会話を楽しむ場所ではないと私は心得ていますので、用件を早く言ってほしいんですが、なかなか最重要の用件を切り出さずに、周辺事情を相手に言わせてから、ようやく情報を開示するシステムになっています。図書館を出てから、これは、かの悪名高き節税目的のワンルーム・マンションのセールスと同じやり方だと気付きました。
でも、これはまだ用件が伝わるからマシな方で、何も反応がない場合もあります。先日の出来事で、とあるファストフード店に入ったんですが、しゃべり方だけでなく列の並び方までもっちゃりしていて、どう並んでいるのか私がよく理解できなかったものですから、「どう並んでいるんですか?」と聞いても反応がありません。続いて、「列の最後は誰ですか?」と聞いてみても誰も何も言いません。最後にダメ押しで、「みなさん、注文を終えて出来上がりを待っているところですか?」と聞いても無言の行が続きます。店員さんが「次の方どうぞ」と言うので、私が進み出ると店員さんから「アチラの方が次なんですが」と言われて私がもっちゃりした列を振り返ると、「お先にどうぞ」と初めて反応がありました。

大学での教育は、大教室での講義は私から一方的にしゃべるだけで、毎週90分しかも一方的にしゃべるのもそれなりに重労働だと思うものの、相手から適確な反応を引き出して手早く用件を済ませるのも長崎では骨が折れます。

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2010年5月 4日 (火)

アローの不可能性定理とコーポレート・ガバナンス

先週の大学の講義では日本企業を取り上げ、さまざまな戦後日本企業の特徴を解説しました。その中で、日本企業の大きな特徴のひとつとして独特のコーポレート・ガバナンスが上げられます。特に、最近では企業の社会的責任 (CSR) と呼ばれる考え方です。私はこのステークホルダーを幅広く捉える考え方は社会的推移率を成り立たせにくくする傾向があり、結局、もっとも情報量の多い経営者に有利なガバナンス形態であろうと考えているんですが、今日は、ゴールデンウィークですることもなくヒマですので、少し、この社会的推移率に関してアローの不可能性定理を取り上げてみたいと思います。
まず、日本の経済学では不可能性定理と呼ばれているんですが、正しくは一般可能性定理 (General Possibility Theorem) です。この一般可能性定理や一般均衡に関する業績によりアロー教授は1972年にノーベル経済学賞を授賞されています。もっとも、経済学における不可能性定理といった方が、数学 (論理学) におけるゲーデルの不完全性定理、物理学 (量子力学) におけるハイゼンベルクの不確定性定理とともに、並びはいいような気がすることは確かです。それはともかく、不可能性定理では、3個人あるいは3グループ以上の構成員から成り立つ社会における3つの選択肢 x, y, z に関する社会的選好関数について、以下の3つの前提を置きます。

  • 完備性: x≥y か y≥x の少なくともいずれかが成り立ち、選好が不確定であることはない。
  • 反射性: x≥x が成り立ち、ある選択肢は少なくとも自分自身と同程度に選考される。
  • 推移性: x≥y かつ y≥z であれば x≥z が成り立ち、選好がループすることはない。

さらに、民主主義の原則に立って、以下の4条件を考えます。

  • 公理 U (非限定性、普遍性): 各社会構成員の選好は自由である。
  • 公理 P (パレート原則、全会一致制): 社会構成員すべてが一致した選好は社会的厚生関数の選好と一致する。
  • 公理 I (無関係対象からの独立性): ある選択肢間の選好関係は、それとは異なる別の選択肢間の選好関係に影響を与えない。
  • 公理 ND (非独裁性): 社会的選好関数の結果が特定の社会構成員の選好結果と一致してはならない。

この3前提、4条件を満たす社会的厚生関数は存在しないことを証明するのが不可能性定理です。私が京都大学で経済学を学んでいた当時は、4条件のうちの最後の公理 ND で表現される非独裁性が成り立たないことに主眼が置かれていたように思わないでもないんですが、現在では、3前提の最後の推移率が社会的には成り立たないとされています。この考えは我が国経済政策論の泰斗である熊谷教授のエッセイでも示されています。
社会的推移率が成り立たないとは、典型的にはコンドルセのパラドックスで示されている通りで、かつて2008年9月2日にこのブログでも取り上げた小島祥一教授の『なぜ日本の政治経済は混迷するのか』 (岩波書店) に詳しく解説されています。最も分かりやすい例はジャンケンです。グー、チョキ、パーの3つで強さがループしています。推移率は個人やグループでは成り立っても、社会的には成り立たずループしてしまうのが不可能性定理の含意です。ですから、企業が CSR で多くのステークホルダーを対象に何らかの利害関係を考えると、選好がループするため、もっとも情報量の多い取締役の選好に従った結果となる可能性が高く、株主をプリンシパルとし取締役をエージェントとする単純かつ一直線の英米型のコーポレート・ガバナンスの方が望ましいと私は考えています。
企業を離れて日本の政府制度について考えると、政官民でループする三すくみの関係が見られます。国民が憲法に定める間接民主制に基づいて政治家たる国会議員を選挙で選び、政が官である公務員をガバンスするというのが基本的な構造なんでしょうが、実は、官は許認可や規制・行政指導などで民をコントロールすることが出来ます。ただし、官をガバナンスする仕組みとして事業仕分けがいいのかどうかは議論が分かれるかもしれません。

授業ではループする三すくみの関係について、ポケモンのナエトル (草タイプ)、ポッチャマ (水タイプ)、ヒコザル (炎タイプ) で説明しようとしたんですが、これらのポケモンを知らない学生もいたりしました。今の大学生は「ハリー・ポッター」と「ポケモン」で育って来ていると私は考えていましたから、少し驚きでした。

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2010年5月 3日 (月)

甲子園での対巨人3連戦を動画で振り返る

特にすることもなく、ヒマに過ごしているゴールデンウィークに、昨夜までの甲子園での対巨人3連戦を終えて我がタイガースが首位に立った記念に、一夜限りのはかない夢かもしれませんが、動画で振り返ってみました。

5月1日、西村投手の熱投です。

同じく、得点シーンです。

最後に、昨夜の5月2日のハイライトをどうぞ。

がんばれタイガース!

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2010年5月 2日 (日)

巨人に勝って首位に立つ!

  HE
巨  人000104200 782
阪  神00024011x 8153

さすがに、昨日とは先発投手が違いますから落ち着いた立ち上がりでした。でも、5回ウラに走塁でのアクシデントがあって能見投手が交代した直後に、ジャイアンツの先発内海投手がタイガースにノックアウトされて降板し、両先発左腕がマウンドを去ってからは大荒れに荒れて壮絶な打ち合いになりました。でも、特にライトとセンターの外野守備の差をものともせずに、ホームラン攻勢で逆転し、伏兵の関本内野手の決勝ホームランを、最後は藤川投手がピンチをまねきながらもジャイアンツの2番3番を三振でねじ伏せて、阪神が8-7のいわゆるローズベルト・ゲームをものにしました。中盤からはハラハラドキドキでしたが、これで5月月初の現時点でいうのも気はひけますが、セリーグの首位に立ちました。ヘンな試合でしたが、勝てばいいです。ゴールデンウィークに甲子園のスタンドを埋め尽くしたファンも満足でしょう。

がんばれタイガース!

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連合総研の勤労者短観に見る生活苦を解消する経済政策とは?

景気は回復を続けているとはいうものの、まだまだ要素需要が出るまでに時間がかかり、雇用が改善しないんですが、雇用や所得について朝日新聞がいくつか特徴的な記事を掲載しています。今日の1面では「デフレ副業 夜に走る」と題した「ルポにっぽん」で、昼間の働きでは収入に不足が生じるため、副業で所得を補う運転代行、家庭教師、ネット店舗の成功例が紹介されています。もっとも、ネット店舗のドロップシッピングについては怪しげな事例も併せて取り上げられています。また、連合総研が実施した第19回「勤労者短観」(速報) の結果のうち、男性非正社員の生活苦についても少し前に報じられています。今日はコチラを取り上げたいと思います。まず、朝日新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

食事も医者も我慢…困窮する男性非正社員 連合総研調査
家計は赤字で、税金を払えず、医者にもかかれず、失業の不安がある――。男性非正社員の生活環境が、正社員だけでなく女性非正社員と比べても厳しいことが、連合総合生活開発研究所(連合総研)が発表した「勤労者短観」でわかった。
民間企業の900人に調査。4月12日までに573人が回答した。
男性非正社員は主に家計を支えている人でも収入が低く、配偶者が共働きでも非正社員のことが多く、世帯収支も赤字が62.9%と全体平均の38.7%を上回った。
男性非正社員の「生活苦の経験」は、「税金や社会保険料を支払えなかった」が31.4%、「食事の回数を減らした」が20.0%、「医者にかかれなかった」が17.1%。これらの経験は、男性正社員や家計を支える人の割合が少ない女性の正社員・非正社員では数%程度しかなかった。
また、今後1年間の失業不安を感じている男性非正社員は45.7%にのぼり、女性非正社員(25.6%)の倍近くとなった。

引用した記事の中の生活苦の例について、男性非正社員の比率の高い特徴的なものを連合総研のリポートの p.15 「図表Ⅲ-6 過去1年間における生活苦による経験」から引用すると以下の通りです。数字の単位は回答数についてのみ人で、その他はパーセントです。

生活苦の体験男性
正社員
男性
非正社員
女性
正社員
女性
非正社員
食事の回数を減らした6.420.03.54.8
税金や社会保険料を支払えなかった2.431.43.54.8
医者にかかれなかった3.717.12.65.6
クレジットや割賦、消費者ローンが返済できなかった3.411.42.64.8
家賃や住宅ローンを支払えなかった1.714.30.04.0
回答数 (人)29535114125

特に男性非正社員が高い回答を示している設問を取り上げて、しかも、少し背景色をつけたりして強調いますが、上の表の中でも、「食事の回数を減らした」や「医者にかかれなかった」に至っては、日本国憲法第25条的な意味で基本的な生存権まで脅かされていると考えるべきです。特に、今日の朝日新聞1面の特集では、ベンツの運転を副業として報じていましたが、他の家庭教師などは別にして、明らかに、この例は政府が何らかの政策をもって所得移転を図るべきであって、所得の少ない国民が労働の代償として所得の多い国民から報酬を受け取るべき筋合いのものであるかどうか、私は大いに疑問を感じています。すなわち、何らかの方法でベンツの所有者から運転代行を副業とせざるを得ない国民に対して、政府による再分配が可能なのではないかという気がしないでもありません。
私は相対的貧困率を取り上げた3月号の紀要論文の結論として、いわゆる「小泉改革」が格差拡大を助長したわけではないとしつつ、「本稿の結論は、景気拡大が単純な所得増加的な効果、あるいは、格差是正的な効果を有するかどうかについて、大きな疑問を投げかけるものである。」と締めくくりました。今日のエントリーは相対的な格差ではなく絶対的な貧困を取り上げていますが、最近の論調を見ていると、マクロ経済政策としてデフレを克服しつつ、それだけではなく、何らかの所得再分配政策が必要な段階に達しつつあるような気がしてなりません。すなわち、いかにもネオコン的な自己責任を強調した個人の努力云々ではなく、同時に、いかにもリベラル的な単純に国債発行により財源手当てをするのでもなく、社会的に許容されない貧困の存在を所得の再分配によって、貧困軽減と格差是正をセットにした政策が必要であると私は考えています。

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2010年5月 1日 (土)

外国人選手の投打の活躍で巨人を粉砕!

  HE
巨  人100102000 490
阪  神02320110x 9110

今日の先発投手の名前が発表された時、実は、私は2人ともまったく知りませんでした。直感的に、今夜は乱打戦の点の取り合いになり、5点では勝てないかもしれず、10点なければ安心できないと思ってしまいました。ですから、1回の表に併殺崩れで1点取られても、まだまだ先が長いと感じていました。案の定、大量点こそなかったものの、ポロポロと点が入り、阪神の外国人選手のツーラン2発が効果的でした。
先発のスタンリッジ投手はよく知らないんですが、1回はボークあり暴投ありの不安定な内容で先取点を献上したものの、6回途中で4失点であれば想定内ではないでしょうか。その後を抑えた西村投手と渡辺投手のピッチングが見事でした。最後は筒井投手で逃げ切って、明日の先発に下柳投手を温存するだけでなく、リリーフの久保田投手と藤川投手まで出さずに勝てたんですから、今シーズンの打線の力は偉大です。これで、明日も勝って3タテ、そして、超久し振りの首位が視野に入って来ました。

がんばれタイガース!

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上海万博2010いよいよ開幕!

上海万博2010ロゴ

昨夜の関係者のみの開会式を経て、今日から上海万博が一般に向けて開幕しました。テーマは「より良い都市、より良い生活」 "Better City Better Life" だそうです。いかにも著作権にルーズな国らしく、PR ソングの盗作疑惑などがありましたが、いかなる醜聞があろうと、おそらく、初日から人出はいっぱいなんだろうと想像しています。
「人類の進歩と調和」をテーマに1970年に開幕した大阪万博のころ、私はまだ小学生だったように記憶しています。一昨年のオリンピックと今年の万博に象徴されるように、中国は日本から30-40年のラグを伴って、着実にキャッチアップしています。

誠に残念ながら、私は上海万博を訪れる予定はありませんが、ゴールデンウィークも本格的に始まって、早くも万博を楽しんでいる日本人観光客も多いのではないでしょうか。

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