もっちゃりしたしゃべり方と無反応
家族のいる東京と大学のある長崎を移動していて、いろいろと違いがあって当然なんですが、特に、私は話し方が違うと感じています。大学に職を得て、文書で仕事を進める役所と違って、おしゃべりを用いた教育にたずさわっているわけですが、ハッキリ言って長崎の人はおしゃべりを通じた意思疎通は下手です。もちろん、東京の人もすべて気の短いチャキチャキの江戸っ子ではないんですが、私は独身の頃に浅草近くに住んでいた上に、京都よりも東京での暮らしの方が長くなってしまいましたから、しゃべり方はとっても簡潔です。でも、長崎の人のしゃべり方はもっちゃりしていて、なかなか用件を切り出さないので困る時があります。「もっちゃり」は関西弁かもしれませんが、雰囲気は分かるんではないでしょうか。少し前に、NHK の大河ドラマの「龍馬伝」で、坂本龍馬がかなり無理筋で千葉道場を通して松平春嶽の紹介を得て勝海舟に会いに行ったシーンを思い出します。勝海舟は文字通りのチャキチャキの江戸っ子なんでしょうが、なかなか用件を切り出さずにもっちゃりしたしゃべりを繰り返す坂本龍馬に×をいっぱい書き連ねていたりしました。ちょうどそんな感じです。
例えば、市立図書館に行って本を返却して帰ろうとした際に呼び止められたんですが、私から何度か「何の用件ですか?」と聞いても、なかなか用件を言ってくれません。以下、○が私、■が図書館司書さんです。
- 何のご用件ですか?
- 最近、図書館支所のある北公民館には行きましたか?
- 私が北公民館に行ったかどうかを知りたいのが用件ですか?
- そうではありません。重要な図書館の職務規定があります。
- 図書館の職務規定を私に知らせるのが用件ですか?
- そうではありません。北公民館で予約していた「西遊記」の取置き期間が過ぎていますので、もしも、まだ借りたいのであれば予約し直すよう、職務規定に基づきお知らせします。
- それが用件ですか?
- そうです。
図書館は本を読んだり借りたりするところであって、司書さんと会話を楽しむ場所ではないと私は心得ていますので、用件を早く言ってほしいんですが、なかなか最重要の用件を切り出さずに、周辺事情を相手に言わせてから、ようやく情報を開示するシステムになっています。図書館を出てから、これは、かの悪名高き節税目的のワンルーム・マンションのセールスと同じやり方だと気付きました。
でも、これはまだ用件が伝わるからマシな方で、何も反応がない場合もあります。先日の出来事で、とあるファストフード店に入ったんですが、しゃべり方だけでなく列の並び方までもっちゃりしていて、どう並んでいるのか私がよく理解できなかったものですから、「どう並んでいるんですか?」と聞いても反応がありません。続いて、「列の最後は誰ですか?」と聞いてみても誰も何も言いません。最後にダメ押しで、「みなさん、注文を終えて出来上がりを待っているところですか?」と聞いても無言の行が続きます。店員さんが「次の方どうぞ」と言うので、私が進み出ると店員さんから「アチラの方が次なんですが」と言われて私がもっちゃりした列を振り返ると、「お先にどうぞ」と初めて反応がありました。
大学での教育は、大教室での講義は私から一方的にしゃべるだけで、毎週90分しかも一方的にしゃべるのもそれなりに重労働だと思うものの、相手から適確な反応を引き出して手早く用件を済ませるのも長崎では骨が折れます。
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