反転し拡大する機械受注とマイナス幅を狭めた企業物価
本日、内閣府から3月の機械受注統計の結果が、また、日銀から4月の企業物価が、それぞれ発表されました。ヘッドラインとなる電力と船舶を除いたコア機械受注は季節調整済みの前月比で+5.4%増と、ほぼ市場の事前コンセンサスに一致し、国内の企業物価は前年同月比で▲0.2%と下落幅を縮小させています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
機械受注1-3月2.9%増 4-5月は外需に弱さ
内閣府が17日発表した機械受注統計で、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は3月が前月に比べて5.4%増と3カ月ぶりにプラスになった。内閣府は基調判断を「下げ止まっている」に上方修正した。1~3月期は製造業の伸びに支えられて前期比2.9%増。ただ4-6月期は1.6%増にとどまるうえ、海外からの受注も2ケタ減の見通し。ギリシャ危機に伴う市場混乱で企業が投資に慎重になる恐れもあり、設備投資が一本調子で回復するかどうかは不透明だ。
機械受注統計は工場の生産設備などの受注額を示し、3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す指標として知られる。
直近3月の受注額(船舶・電力を除く民需)は前月比5.4%増の7329億円。これを受けて内閣府は機械受注動向の基調判断を2月の「下げ止まりつつある」から上方修正した。製造業が3.1%増と4カ月連続でプラスになったほか、回復が遅れていた非製造業も12.6%増と下げ止まりの動きを示した。
この結果、1-3月期の受注額は2兆1514億円となった。製造業は前期比13.6%増と、調査開始以来初めて、2期連続の2ケタの伸び。電気機械や一般機械に加え、非鉄金属や石油・石炭製品でも投資拡大の動きが出ている。非製造業は3.4%減と2期連続のマイナスだった。
1-3月期は、振れの大きい携帯電話を除いたベースでは前期比4.8%増だった。内閣府の津村啓介政務官は17日の記者会見で「製造業を中心に自律的な回復の兆しがある」と語った。
内閣府が3月下旬時点で機械メーカーから聞き取った4-6月期の受注見通しも、前期比プラスを維持した。非製造業が14.4%増と急速に回復するためだが、製造業は2期連続プラスの反動もあって16.0%減となる見込み。民需以外では海外需要も12.8%の減少が見込まれている。
2009年度の機械受注は船舶・電力を除く民需は20.6%減の8兆4337億円になった。3年度連続のマイナスで、統計が始まった1987年度以降で最大の減少率。受注金額も過去最低になった。
企業物価、4月は0.2%低下
日銀が17日発表した4月の国内企業物価指数(2005年=100、速報値)は103.0となり、前年同月に比べ0.2%低下した。低下率は8カ月連続で縮小し、前年比でゼロ水準に近づいた。電力・ガスの料金下落などで物価下落は続いているが、石油や非鉄の製品価格が上昇しており、全体の企業物価の水準を押し上げている。
国内企業物価指数は、企業同士が出荷や卸売りの段階でやりとりするモノの価格水準を示す。調査対象の855品目のうち、前年同月より低下した品目は468品。上昇した品目は213品目だった。
品目別で下げが目立ったのは、電力・都市ガス・水道で12.0%低下。料金の激変緩和措置が3月で終了した電力・ガス料金の下落が響いた。一方、石油・石炭製品は28.3%、非鉄金属は24.3%、それぞれ上昇した、原油や銅など非鉄の商品市況は、新興国の経済成長を背景に上昇基調をたどり、関連製品の値上がりにつながった。
今後は国内企業物価が前年同月比で上昇に転じるかが注目される。上昇に転じれば2008年12月(0.9%上昇)以来となる。
国内製品には商品市況の回復が十分に転嫁されていないものがある一方、5月以降は欧州の財政不安の広がりで商品市況が総じて低下に転じている。日銀は「企業物価に対する強弱の材料が交じっている状態であり、今後の動向を注視していきたい」としている。
次に、機械受注のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、一番上のパネルは電力と船舶を除いたコア機械受注の実額とその6か月後方移動平均です。いずれも左軸の単位は兆円となっています。真ん中のパネルは四半期ごとに公表されている達成率の推移です。コア機械受注を対象にしています。一番下のパネルは長崎ローカルで注目されている船舶の手持ち月数と受注残高です。青い折れ線が手持ち月数で左軸の単位は月、赤が受注残高で右軸の単位は兆円です。いずれも影をつけた部分は景気後退期ですが、直近の景気の谷は2009年3月、または、2009年1-3月期と仮置きしています。
一番上のグラフから明らかですが、内閣府が基調判断を「下げ止まりつつある」から「下げ止まっている」に上方修正したことに現れている通り、国内の設備投資の先行指標と見なされているコア機械受注は完全に底入れして反転し、順調に拡大を続ける勢いを示しています。四半期でならして見ると、1-3月期は前期比+2.9%増と2四半期連続の増加を示し、さらに、4-6月期の受注見通しも+1.6%増と増加する見込みとなっています。特に、製造業は明らかに回復を示しており、非製造業も下げ止まりの兆しがうかがえます。もちろん、変動の激しい電力と船舶を除いても、まだ変動の激しい統計ですから、この先も単月でマイナスをつける可能性は十分ありますが、方向として拡大を続けるものと私は考えています。従って、国内の設備投資も年内には本格的な拡大軌道に戻るものと期待しています。もうひとつの明るい指標は達成率です。景気の目安とされる90パーセントを上回り、これまた、本格的な景気拡大期に入ったことがうかがえます。誠に残念なのは船舶です。先月4月8日付けのエントリーで単純な計算を示して、この先2年ほどの調整期間を要すると書きましたが、ほぼ、そのラインに沿って推移しているように見えます。
上のグラフで示した企業物価は、国内物価が前年同月比で▲0.2%までマイナス幅を縮小しましたが、+10.1%と2桁の上昇を示した輸入物価にけん引されたものです。上のグラフでも明らかな通り、2007-08年にかけて輸入物価と輸出物価は逆の方向に動きましたが、国内企業物価はボリュームの大きさに反して輸入物価に影響される度合いが高いようです。NYMEX の原油価格はバレル当たり70ドルに上昇して来ており、このまま原油価格などの商品市況に引っ張られる形でデフレを脱却しても、2008年の二の舞になるだけだという気がしないでもありません。日銀は成長産業育成のための金融よりも、本来の目的であるマクロ経済の安定、そのためのデフレ脱却に本腰を入れていただきたいと願っています。
『数えずの井戸』を取り上げた昨日のエントリーで、経済学にもオカルトがあると書きましたが、メディアの報道とは違う真実を見るべきです。機械受注は低水準ながら拡大しています。低水準を強調するメディアの報道には疑問が残ります。企業物価はプラスに近づいているものの商品市況に後押しされたものです。これでデフレ脱却が近づいたとする報道には疑問が残ります。
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