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2010年6月 1日 (火)

長崎都市経営戦略策定会議の提言「みんなでつくろう元気な長崎」はいかに活用されるべきか?

オールジャパンではまったく注目されておらず、長崎でも限定的にしか知られていないんですが、昨日、長崎の経済4団体、すなわち、長崎商工会議所、長崎経済同友会、県経営者協会、長崎青年会議所から成る長崎都市経営戦略策定会議の提言「みんなでつくろう元気な長崎」が発表されました。私も上司の経済学部長とともに記者発表会に出席しました。もっとも、学部長には発言の機会が与えられた一方で、ヒラ教授の私は座っているだけでした。ローカル紙の報道について、長崎新聞のサイト西日本新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

“外貨”獲得へ4分野強化の戦略提言 県内経済4団体、長崎地域で
県内の主要な経済団体で構成する都市経営戦略策定検討会(座長・高田浩司長崎商工会議所副会頭)は31日、長崎市を中心とする長崎地域で基幹製造業、観光、水産業、大学の4分野を活性化し、域内に「外需」を取り込む地域戦略を初提言した。2020年度まで10年間かけ4分野で重点施策を進め、人口減少による経済規模の縮小を最小限に抑制。「地域雇用と1人当たりGDPの水準維持」を目標に掲げた。
戦略策定検討会は6月、提言の具体化に向け「長崎都市経営戦略推進会議」に衣替え。行政機関とも連携して施策の優先順位付けや調整をし、行動計画に移行する。主要経済団体トップに知事と長崎市長、長崎大学長を交えた「長崎サミット」を7月の開催を皮切りに定例化し、施策の実現で連携を深める。
提言では、4分野の強化による波及効果を含め、産出額1千億円、就業者数1万4300人を新たに創出。20年度の全体の経済規模を1人当たりGDP331万円、産出額3兆5900億円、就業者数30万2千人と設定した。
地域経済の核となっている基幹製造業関連を中心に、共通の経済圏が見込める2市2町(長崎市、諫早市、時津町、長与町)を長崎地域とした。各種数値が確定している07年度を基準に、20年度まで成り行きで進んだ場合(トレンド)と、重点施策の実行による推定とを示した。
戦略策定検討会の構成は長崎商工会議所、長崎経済同友会、県経営者協会、長崎青年会議所の4団体。
「経済衰退に歯止めを」 観光など4分野を強化 4団体提言
長崎商工会議所や長崎経済同友会など経済4団体が共同で設置した「都市経営戦略策定検討会」は31日、2020年を目標年次とした提言を発表した。人口減などで長崎経済の衰退が予想される中、長崎市や諫早市など2市2町を対象に基幹製造業、観光、水産業、大学の4分野を強化し経済水準を維持する目標を掲げた。産学官連携で危機感を共有し衰退に歯止めをかけたいとしている。
検討会は昨年8月に発足し、県や長崎市、長崎大もオブザーバーとして参加。地域活性化の効果が大きい4分野を選び議論を重ねた。
検討会の試算では、人口減の影響などで20年の就業者数は07年に比べ約1万5千人減り域内産出額は約4千億円減少する見通し。提言は、新たな対策によって4分野の産出額を約1千億円増やし約1万4千人の雇用を生み出す目標を設定。これにより1人当たり域内総生産を維持するという。
具体的には、造船や機械などの基幹製造業で地元企業の受注率を現在の40%強から10ポイント引き上げ、既存企業の新規事業進出や生産能力増強を支援する。観光面では長崎市の観光客を年700万人(08年は556万人)に増やし、特に東アジアからの誘致に力を入れる。
水産業では、かまぼこの生産額を120億円に倍増するなど加工品の強化を打ち出した。大学では、留学生を増員することで学生数を3千人増やすとしている。
6月には、検討会を引き継いで「長崎都市経営戦略推進会議」を組織。7月、知事や長崎市長、各団体トップによる「長崎サミット」を開く。

4月9日付けのエントリーで紹介したディスカッションペーパー「Economate長崎モデルの長期外挿シミュレーション: 2030年における長崎経済」は、実は、いろいろな世間の義理もあって、この提言のバックグラウンドペーパーとして書いたものだったりします。ですから、提言にディスカッションペーパーの「長崎経済の停滞と人口減少は言わば『ニワトリとタマゴ』の関係にあり、この先の長期について長崎経済を考えると、経済活動と人口が相乗的に低下するような負のスパイラルの瀬戸際に立っている可能性がある。」といったくだりがそのまま引用されていたりします。そして、このバックグラウンドペーパーの結論は、雇用の増加のために民間投資が求められている、というものです。もっとも、この前提に、営業努力により売上げを伸ばす必要があります。決して、売上げの増加なしに闇雲な設備投資をオススメしているわけではありません。

就業者1人当たり設備投資額の推移

長崎に限らず、地方経済が衰退に向かっているのは、デフレなどのために売上げが伸びず、そのために設備投資を必要最小限に抑えるとともに、非正規雇用でやり繰りして来たからです。上のグラフは2000年度からの福岡県と長崎県における就業者1人当たりの設備投資額を比較したものです。ここ2-3年で長崎の設備投資が減少に転じているのが見て取れます。ですから、この歯車を逆に回す必要があるわけです。3つの過剰は地方経済でもほぼ解消されましたから、この先は、営業努力により売上げを伸ばして、それに見合う設備投資と雇用を増加させることです。営業努力を怠り、相変わらず設備投資を抑えて非正規雇用でやり繰りし、そして、長崎新幹線の延伸や高速道路を要求したり、行政の支援を陳情するだけでは、長崎経済はこの先も停滞を続け、ある時点で何らかのカタストロフィックな転換点に達する可能性があるかもしれません。もしも、微分方程式で表現できないような不連続な転換点があるとすれば、おそらく、長崎は日本全国の地域経済の中でもカタストロフィックな転換点に達するトップグループに属する可能性が大きいと受け止めるべきです。
私の例え話は分かりにくいと評判なんですが、人間に例えると、床に伏せりがちで所得の低い人が、食費を切り詰め運動もせずに、行政からの支援というビタミン注射だけで半病人になってしまいながら、体重を落として、すなわち、人口が減って行き、ますます健康状態を悪化させているように見えます。もちろん、所得を増やすことが第1なんですが、栄養バランスのいい食事と適度な運動、経済で言えば、設備投資と雇用に力を入れ、体力をつけてさらにしっかり働いて収入を得られるようないい循環に持って行くことが重要です。そうすれば、行政からの支援というビタミン注射は不必要になります。
ということで、今夜のエントリーに掲げたタイトルの問いの答えは両極端で次の2種類になると私は考えています。

  • 行政の支援を引き出すための陳情の手引き
  • 行政の支援を不必要とするような経営の指針

この提言を取りまとめたのは経営者4団体です。私が長崎の経営者の方々に、この提言をどのように活用していただきたいかは明白だろうと思います。「みんなでつくろう元気な長崎」のみんなの先頭に立つのは経営者であるべきです。そして、経営者は支援を期待して行政の方を向くのではなく、厳しい競争が待ち受けるマーケットに立ち向かっていただきたいと思います。昨年9月に長崎を訪れた日銀の須田審議委員の最後の締めくくりの言葉は単なる社交辞令ではないと私は考えています。

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