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2010年7月14日 (水)

政府の公債と民間の借金はどこが違うか?

最初に一言だけ、昨夜のエントリーの最後に、「国債残高を減少させるには4つの方法があります。第1に支出削減、第2に増税、第3にインフレ、第4に債務放棄、すなわち、デフォルトです。」と書きましたが、第5の方法として、国有財産・資産の売却が抜けていると感じられるかもしれません。しかし、この場合の国債残高の減少とはネットで考えています。ですから、国有財産・資産の売却を行っても、グロスの国債残高は減少しますが、両建てになっているので、ネットの国債残高は減少しません。念のため、申し添えておきます。
ということで、今夜は政府の国債と民間の家計や企業の借金とは何がどう違うのかを考えたいと思いますが、さらにその前に、そもそも国債発行とは何なのか、について考えます。これは単純で、国債発行とは政府の歳入であり、租税に代替する収入の手段です。ですから、国債発行とは租税徴収の先送りであり、減税に他なりません。従って、国債の償還を担保するものは有形の国有財産・資産ではなく、無形の租税徴収という公権力の行使です。政府について民間企業と同じような損益計算書や貸借対照表を考えることは、決して無意味ではないものの、貸方だか資産だか、私はよく知りませんが、租税徴収権限が入っていなければ、大きな意味はないと考えるべきです。貸方だか、資産だかには、将来の租税収入流列の現在割引価値が入るべきなのかもしれません。でも、そんな数字はどこまで確からしいのか、誰も分かりませんから計上のしようがないんだろうと私は考えています。
前置きが長くなりましたが、本題に戻って、政府の国債と民間の家計や企業の借金とは何がどう違うのかを考えたいと思います。なぜなら、多くの国債残高に関する議論で混乱が見られるのは、この政府の国債残高と民間経済主体の借金を同一視しているからだと私は受け止めています。何といっても、債務不履行 (default) になった場合の扱いがまったく政府と民間では異なります。例えば、民間企業が債務不履行になった場合、裁判所の命令に基づいて政府の強制力を背景に、換金可能な資産を差し押さえて債務の一部なりとも強制履行させられるとともに、法人としての企業は市場から退出します。しかし、政府の国債や借入れの場合、対応がまったく異なります。相手が外国政府で対外債務の場合、国際慣習法に基づく主権免除 (sovereign immunity) が適用されますし、国内債務に関しても実質的に債務の強制履行は免除されていると考えられます。そもそも、政府は強制執行する際に公権力の背景となっているわけですから、自分で自分の首を絞めるわけはありません。もちろん、借金に対する債務不履行により政府が消滅するハズもありません。ですから、政府は公債発行に傾くバイアスがあると考えるべきです。Reinhart and Rogoff (2009) This Time is Different: Eight Centuries of Financial Folly (Princeton University Press) ではタイトル通りに800年間を分析対象にしていますが、延々と政府は借金をしては、何度も債務不履行に陥っています。世界の先進国の中でも、日本は特に公債発行のバイアスが強いため、現在のような大きな公債残高を抱えていると解釈されますから、当然ながら、日本政府が債務不履行にならないという保証はないと受け止めるべきです。

最後に、政府が借金を重ねた末に踏み倒してもとがめられることのないアブナイ貸出し先だと分かっていても、どうして、公債が売れるんでしょうか。これはパズルです。私が知っている範囲で、対外債務の場合を取り上げた参考文献を引用しておきます。

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