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2010年7月 5日 (月)

中国人観光客に長崎は魅力があるか?

先週7月1日に、ニッセイ基礎研究所から興味深いリポートが発表されました。この研究所の一連の不動産投資リポートのひとつとして、「中国人宿泊者数の動向 - ビザ発行要件緩和で高まる宿泊需要」と題するリポートです。もちろん、私は不動産投資には何の興味もなく、時折、節税目的のワンルーム・マンションを勧める電話勧誘に辟易しているくらいなんですが、長崎の経済界では中国人向け観光業は有望であるという誤解が見られるので、この機会に取り上げておきたいと思います。
よく知られたように、この7月1日から中国人向けのビザの要件が緩和され、中国からの観光客が増加することを見込んだリポートになっています。同じ趣旨のリポートは三菱東京UFJ銀行が出した「拡大が予想される中国人観光客とわが国経済への好影響」や中央三井トラスト・ホールディングスが出した「訪日外国人3,000万人の達成に向けて - 存在感を増す中国人海外旅行客」などもあるんですが、ニッセイ基礎研究所のリポートで特に興味深いのは、2007-09年の3年間の中国人観光客の都道府県別訪問先を示す以下のグラフです。リポートの p.3 から引用しています。

中国人宿泊客の都道府県別動向

要するに、北海道を除いて、首都圏、中部圏、関西圏の都会にほぼ集中しています。近畿圏から西は九州を含めて全滅といった状態です。例外は沖縄だけです。なお、このリポートに従えば、北海道での宿泊者数の急増は、北海道を舞台にした『狙った恋の落とし方 (中国語原題「非誠勿擾」)』と題する2009年正月映画が中国国内で大ヒットした影響で、ロケ地を回るツアーが人気となったことが一因といわれているそうです。ですから、北海道を除く都市圏への宿泊客の集中は、買い物が主たる目的の観光客ではないかと私は考えています。ただし、首都圏の中でも千葉が東京に次いでいるのはディズニー・リゾートへの訪問客の影響があるのかもしれません。
これらを総合的に考えると、私は以下の3点で長崎の人は誤解していると受け止めています。第1に、中国人観光客は、たとえ富裕層であっても買い物が主たる目的であり、さらにビザ発給が広げられたとすれば、この買い物目的が強まることはあっても弱まるとはとても考えられないんですが、残念ながら長崎は買い物目的にまったく適していない、ということです。長崎が買い物目的に適していないこと自体は理解されているような気もしますが、中国人観光客が買い物目的であることの理解が進んでいないように見受けられます。第2に、海外からの観光客を呼び込むのに重要なのは宿泊なんですが、長崎の宿泊施設のクオリティに疑問が残る、ということです。私が何度か強調して来た設備投資が不足しているように受け止めています。小中学生の修学旅行向けではなく、海外からの観光客を受け入れるには、量とともに一定程度の宿泊設備の質を確保する必要があります。第3に、長崎には観光収入を得るに十分な資源があるかどうか、というポイントは長崎の人が故意に見落としているとしか私には考えられません。観光収入を滞在日数と1日当たりの消費額に分解すると、まず、滞在日数については、私のように京都に生まれ育ち、奈良の学校に通い、東京で仕事をして来た人間からすれば、長崎に観光スポットがいっぱいあって、まとまって3-4泊して滞在するような魅力があるかどうか、はなはだ疑問です。半日ほどで回り終えそうな気がします。それから、消費金額については、その気になれば、あくまで、その気になればですが、東京では1日に100万円使う可能性もありますが、長崎では1週間でも100万円は使い切れなような気がします。繰返しになりますが、観光収入を得るに十分な観光資源に不足している、とはこういう意味も含みます。
もちろん、長崎にも中国人観光客に対する利点があります。いうまでもなく、中国からの距離的な近さです。さらに、先ほどの第2点の逆で、「安かろう、悪かろう」の逆を突くことです。宿泊設備の質が悪いのであれば低価格戦略も考えられます。この2点を活かせば、ビザ発給要件の緩和に伴って日本旅行ブームが中国で生じた場合、とにもかくにも日本に行ったことになりますから、交通と宿泊の両方で安いとなれば、中国人の限界的な観光客を呼び込める可能性はあります。長崎の場合、ハウステンボスが典型で、観光施設はまったくリピーターを期待しない作りになっていますが、リピーターになる可能性の低い限界的な中国人観光客には低価格は魅力であろうと考えられます。いずれにせよ、長崎は観光の分野でもニッチな層をターゲットとするのが得策のように思います。もっとも、現時点でこれが出来ているのであれば、もう少し長崎でバックパッカーが見られるような気がするんですが、今のところ、私の立ち回り先ではほとんど見ません。ですから、これから先行き考えるべきポイントだという気がします。

観光に限らず、私なんかの部外者から見て、長崎の人自身が長崎を誤解している部分が見受けられますので、ターゲットや経営戦略にハズレやブレが生じている気がしてなりません。まず、長崎経済を担う長崎の人が自分自身で長崎を知ることが重要ではないでしょうか?

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