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2010年8月16日 (月)

4-6月期1次QEは予想以上の大幅な減速を示す

本日、内閣府から今年4-6月期の四半期別GDP速報、エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている重要な経済統計が発表されました。先週8月12日のエントリーでシンクタンクなどの予想を取り上げましたが、その中の最低値であった三菱総研の年率+0.6%をさらに下回り、季節調整済の前期比で+0.1%、前期比年率で+0.4%まで成長率は減速しました。市場の事前コンセンサスは前期比+0.6%、前期比年率が+2.3%でしたので、大幅に下回ったことになります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP実質0.4%成長に鈍化 4-6月年率
内閣府が16日発表した2010年4-6月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.1%増、年率換算では0.4%増となった。年率換算の実質成長率は3四半期連続のプラスを維持したものの、1-3月期の4.4%より大幅に鈍化した。この結果、日本の名目GDPはドル換算で中国を下回った。政策効果の一巡などで景気回復のペースが鈍っていることが鮮明となり、同日の東京市場では株価の下落と長期金利の低下が加速した。
前期比年率でみた4-6月期の実質成長率は、日経グループのQUICKがまとめた民間予測の中央値(2.3%)も割り込んだ。個人消費や住宅投資などの不振が響き、3.9%のユーロ圏や2.4%の米国を下回る水準となった。
生活実感に近いとされる名目GDPは前期比0.9%減、年率換算では3.7%減で、3期ぶりのマイナス成長に転じた。物価の総合的な動向を示すGDPデフレーターは前期比1.0%低下しており、日本はデフレから抜け出せずにいる。
前期比でみた実質成長率0.1%のうち、内需は0.2ポイントの押し下げ要因、外需は0.3ポイントの押し上げ要因となった。内需の寄与度は3期ぶりのマイナスに転じた。
内需の伸び(実質の前期比)を項目別にみると、個人消費は0.03%増。辛うじてプラスを維持したが、ほぼ横ばいにとどまった。4月のエコポイントの制度変更を控えた駆け込み需要が膨らみ、その反動で薄型テレビの売り上げが落ち込んだ。住宅投資は1.3%減と2期ぶりに減少した。
設備投資は0.5%増と3期連続のプラスとなった。産業機械や掘削機械などが伸びた。公共投資は3.4%減と4期連続でマイナス。民主党政権の公共事業削減の影響が出ている。民間在庫は実質成長率を0.2ポイント押し下げた。
外需では輸出が5.9%増と5期連続でプラスとなった。高水準で推移していたアジア向けが伸び悩んだものの、欧州向けや米国向けが好調だった。輸入は4.3%増となった。
働く人の手取り総額を示す名目雇用者報酬は前年同期比0.9%増え、7期ぶりのプラスに転じた。夏のボーナスが下げ止まったのが寄与した。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2009/
4-6
2009/
7-9
2009/
10-12
2010/
1-3
2010/
4-6
国内総生産GDP+2.5▲0.3+1.0+1.1+0.1
民間消費+1.3+0.6+0.7+0.5+0.0
民間住宅▲9.6▲7.2▲2.9+0.3▲1.3
民間設備▲4.8▲1.8+1.5+0.6+0.5
民間在庫 *+0.2▲0.3▲0.2+0.0▲0.2
公的需要+1.8▲0.3+0.3+0.3▲0.5
内需寄与度 *+0.4▲0.5+0.4+0.5▲0.2
外需寄与度 *+2.1+0.2+0.6+0.6+0.3
輸出+10.4+8.5+5.7+7.0+5.9
輸入▲5.0+6.3+1.5+3.0+4.3
国内総所得GDI+2.2▲0.7+0.9+0.7▲0.4
名目GDP+0.6▲0.6+0.4+1.4▲0.9
雇用者報酬▲0.9+0.8▲0.1+1.9+0.3
GDPデフレータ▲0.6▲0.7▲2.8▲2.8▲1.8
内需デフレータ▲2.7▲2.9▲2.7▲1.6▲0.8

さらに、グラフは下の通りです。いずれも前期比成長率・伸び率で、青い折れ線グラフは実質成長率、棒グラフは実質GDP成長率を需要コンポーネント別に季節調整済み系列の前期比伸び率で寄与度表示したもので、すべて左軸の単位はパーセントです。棒グラフの需要項目への対応は凡例の通りです。

四半期別GDP成長率寄与度の推移

8月12日付けのエントリーで書いた通り、私も含めて多くのエコノミストは4-6月期までは年率2%程度の成長を維持したものと考えていましたので、予想外の大きな減速でした。この4-6月期で考えるべきポイントとしては、政策効果の一巡ないし剥落、特に、3月末の家電エコポイントの制度変更に伴う仮需の発生と4月の反動、4-5月の天候不順、ボーナスの増加、ジワジワと進んだ円高、米欧中をはじめとする世界景気の変調の兆し、などが上げられますが、GDPの1次QEの推計結果にして正しいのであれば、マイナス・インパクトがすでに現れていたということになります。
需要項目別では、消費が家電エコポイントによる反動で伸びが小さくなり、公共投資が抑制されたために公的需要がマイナスになるのは予想通りでしたが、在庫寄与度が予想に反してマイナスをつけました。設備投資はプラスながら、緩やかな伸びが続いており、住宅投資はマイナスに舞い戻りました。また、輸出入も、輸出が引き続き高い伸びを続けている一方で、輸入も大きく増加し、差引き、外需の寄与度はまだプラスとはいえ、かなり縮小しました。
今後の見通しからも明るい材料は乏しいと私は考えています。下振れリスクとしては、国内要因としては政策効果の剥落、海外要員としては、米国のデフレ、中国のインフレ、欧州のソブリン・リスクと3点セットによる海外経済の変調、そして、何よりも円高の進展が景気の足を引っ張ることが予想されます。私はすでに景気のエンジンが輸出や生産から設備や消費にバトンタッチしたり、あるいは、設備投資や雇用の要素需要が出るまでには、まだまだ相当の時間を要すると考えを改めましたが、さらに暗い予想に傾きそうで怖い気がします。

経済官庁では、大臣が踊り場入りを否定する一方で、政務官は踊り場入りを一定の条件付きながら認めているようです。私の好きな言葉のひとつに、ケンブリッジ大学ロビンソン教授の "The purpose of studying economics is not to acquire a set of ready-made answers to economic questions, but to learn how to avoid being deceived by economists." というのがあります。政府発表にも "deceive" されないようにしたいものです。

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