米国の景気の谷は2009年6月と決定され景気後退期間は戦後最長!
我が国のメディアでも報じられていますが、昨日9月20日、NBER の景気日付委員会からステートメントが発表され、2007年12月を山とする米国の景気後退の谷は昨年6月と決定されました。発表は昨日ですが、決定は一昨日です。すなわち、景気日付委員会が19日に電話会議にて開催され、そこでの決定を20日に発表したわけです。ややこしい日付の関係です。それはともかく、まず、NBER のサイトからステートメントの最初のパラを引用すると以下の通りです。
Business Cycle Dating Committee, National Bureau of Economic Research
The Business Cycle Dating Committee of the National Bureau of Economic Research met yesterday by conference call. At its meeting, the committee determined that a trough in business activity occurred in the U.S. economy in June 2009. The trough marks the end of the recession that began in December 2007 and the beginning of an expansion. The recession lasted 18 months, which makes it the longest of any recession since World War II. Previously the longest postwar recessions were those of 1973-75 and 1981-82, both of which lasted 16 months.
上のステートメントにもある通り、18か月の景気後退期間は第2次世界大戦後で最長です。1970年代半ばと1980年代初のそれぞれ16か月を抜いた形になりました。国際通貨基金 (IMF) が Great Recession と命名したのも当然かもしれません。なお、NBER のステートメントからいくつかの月次指標の谷を引用すると以下の通りです。
- Macroeconomic Advisers' monthly GDP (June)
- The Stock-Watson index of monthly GDP (June)
- Their index of monthly GDI (July)
- An average of their two indexes of monthly GDP and GDI (June)
- Real manufacturing and trade sales (June)
- Index of Industrial Production (June)
- Real personal income less transfers (October)
- Aggregate hours of work in the total economy (October)
- Payroll survey employment (December)
- Household survey employment (December)
戦後最長の18か月の景気後退期ではありましたが、私の含めて、多くのエコノミストの実感と一致した結果であると受け止めています。以下のグラフはストック・ワトソン方式で推計された月次の米国実質GDPです。影を付けた部分が景気後退期となっており、データの最新月は今年6月です。
昨年6月を谷とする景気後退の終了後、米国で順調な景気回復が続いているかというと決してそうではなく、例えば、日経新聞の記事では、すでに減速感が強まっていたり、今後の景気回復の継続性が問題となっている旨の指摘が見られます。しかし、私は米国では雇用こそが大問題と受け止めています。というのは、大雑把にいって、日本では、雇用は景気の遅行指標で、時系列的な因果関係は景気から雇用に向かうんですが、米国では反対です。雇用が、そして、家計が景気を引っ張ります。そして、下のグラフを引用した New York Times の記事に示されている通り、米国では最近3回の景気後退後の景気回復局面において、雇用がほとんど増加しない jobless recovery となっています。
今後の米国景気を考える上で、雇用の動向にも十分な注意が払われるべきです。
| 固定リンク
コメント