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2010年9月 6日 (月)

GDP統計2次QE予想から景気のサステイナビリティを考える

内閣府による今週9月10日の発表を前に、先週の法人企業統計をはじめとして2次QEに必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから4-6月期の2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回の2次QEはいきなり「過去の数字」とみなされる可能性があることから、可能な範囲で10-12月期に関する見方を取ったつもりですが、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府 1次QE+0.1%
(+0.4%)
n.a.
みずほ総研+0.3%
(+1.4%)
10-12月期には相当の反動減に至る可能性
ニッセイ基礎研+0.3%
(+1.2%)
4-6月期・GDP2次速報は上方修正を予測
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+0.4%
(+1.5%)
設備投資、在庫投資、公共投資の上方修正が見込まれる
第一生命経済研+0.5%
(+1.8%)
7-9月期は持ち直しも、10-12月期はマイナス成長へ
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.1%)
設備投資は1次速報値の前期比+0.5%から同+1.6%に上方修正
三菱総研+0.4%
(+1.5%)
景気の回復テンポは、足元鈍化

上の表の通り、主たる予測対象である4-6月期GDP統計の他は触れていないリポートもありますが、7-9月期までそこそこの成長を記録した後、10-12月期にはマイナス成長かゼロすれすれまで成長率が大幅に低下する、という私の直観的な見通しに多くのエコノミストは賛同してくれそうな気がします。大雑把に言って、4-6月期は3月末での家電エコポイントの制度変更に伴う駆込み需要の反動と4-5月の天候不順の影響により経済はイマイチでした。その後、7-9月期は猛暑とエコカー減税・補助金の政策効果、さらに、ボーナス増加による所得環境好転により、そこそこの成長を記録すると考えられます。ひょっとしたら、10月1日からのタバコ値上げの駆込み需要もあるかもしれません。しかし、10-12月期からは円高の影響が少しずつ現れるでしょうし、エコカー減税・補助金が9月いっぱいで打ち切られることから、政策効果も縮小します。大きく経済は減速するものと私は考えています。なお、家電エコポイントについては3月末まで延長となれば、最後の需要の盛り上がりは年内ではなく2-3月にズレ込む可能性が高いと私は受け止めています。すなわち、家電エコポイントの延長それ自体としては10-12月期には成長にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

ここでタイトル通り、景気のサステイナビリティの観点から、4点考えたいと思います。第1に、円高の影響です。少なくとも短期的には日本経済にマイナスの影響を及ぼすことは間違いありません。政府・日銀の経済政策が万能であり、自由に円レートを決められるなんて言うつもりは毛頭ありませんが、私にはかなり消極的に見受けられます。少なくとも、通貨価値の安定、すなわち、円レートの安定を目指すのか、円高による短期的な景気へのマイナス効果を相殺しようとするのか、やや不明です。前者は相対的により中長期的な課題であり、後者は為替介入も含めてかなり短期的な政策対応であるハズです。しかし、政策対応が不十分であるとすれば、多くの企業には円高がサステイナブルであると受け止められている可能性があります。中長期的に雇用や設備などの要素需要に影響を及ぼす可能性を排除できません。第2に、政策対応や制度的な要因です。最も重要なのはエコカー減税・補助金と家電エコポイントであることは言うまでもありません。場合によっては、10月1日からのタバコ値上げも含めていいかもしれません。少なくとも、これらの政策効果は景気にサステイナブルではないことを理解すべきです。例えば、下のグラフは今年8月の「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」の p.18 「各国の自動車買換え・購入支援策と自動車販売」から引用していますが、米国を例外にして、「0か月」で示された支援策の終了とともに自動車販売が下降線をたどっているのが見て取れます。日本が例外となる根拠はありません。

各国の自動車買換え・購入支援策と自動車販売

第3点は天候要因です。夏場の猛暑はエアコンや飲み物などの消費を大いに喚起することになりましたが、少なくとも、これまた景気に対してサステイナブルではありません。より一般的な地球温暖化の議論はさて置いて、このまま単に気温が高いだけだとすれば、秋冬物衣料の販売にはマイナス要因となりかねないことは明らかです。最後の第4点は所得です。所得に関しては特に恒常所得仮説との関係でサステイナビリティが問われます。一時的な所得であれば消費を増加させるインパクトは小さいと考えるエコノミストが多いのは言うまでもありません。そして、やや私の目に奇異に映るのは、今夏のボーナスへの着目度は高いんですが、政策的な所得増要因、すなわち、4月からの高校実質無償化と子ども手当については、メディアなどでほぼ無視されていることです。私も実際に簡単な計算をしてみましたが、確かに、子ども手当による所得増分は量的に見てボーナスに大きく見劣りすることも事実です。他方、この政策自身がサステイナブルかどうかについても、少し不確実性を感じないでもありません。少なくとも、子ども手当については昨年の総選挙のマニフェストに比較して半額実施で始まっているわけですし、経済界などからの反対論が強いことも確かです。量的なインパクトが小さいうえに、サステイナビリティの面からも疑問があるのであれば、私のように世代間の不公平緩和の観点から強く支持するエコノミストがいる一方で、不公平是正の質的な面を離れて、実際の経済への量的な効果は小さいのかもしれません。

どんどん2次QEから話題がそれて行くんですが、最後に、私が子ども手当を支持しているのは、世代間不公平の緩和とともに、財政リソースの使途を政府が決めるのではなく国民に委ねるという点も重視しているからです。この点からだけ見れば、昨年の定額給付金も子ども手当も同じだったりします。でも、政府が使い道を決める経済対策を今週中に決めると報道されていることも事実です。経済効果は大きいのかもしれませんが、まだ政府の "the best and the brightest" が決めるんですかねえ、という気がします。

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