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2010年10月31日 (日)

東野圭吾『白銀ジャック』(実業之日本社文庫) を読む

東野圭吾『白銀ジャック』(実業之日本社文庫)

東野圭吾さんの『白銀ジャック』(実業之日本社文庫) を読みました。実は、少し前に読み切っていて、我が家では今おにいちゃんが読んでいる最中なんですが、今日の朝日新聞の2面の下の方に広告が打ってありましたので思い出しました。実業之日本社のサイトから内容紹介を引用すると以下の通りです。

ゲレンデの下に爆弾が埋まっている
「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、山中でのトリッキーな身代金奪取。雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。今、犯人との命を賭けたレースが始まる。圧倒的な疾走感で読者を翻弄する、痛快サスペンス!

すべてはずれている

実業之日本社のサイトと同じように、新聞広告にも、手書きで「いろいろと推理するだろう 残念ながら すべてはずれている」と自信を持って宣言されていました。ハイ、私にはこの結末は分かりませんでした。でも、東野圭吾さんらしいさわやかな読後感です。多くの方にオススメします。

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2010年10月30日 (土)

昨日発表された経済指標の取りまとめ

昨日のエントリーはハッピーハロウィン AOYAMA を取り上げてしまったんですが、実は、昨日、いろいろと重要な経済指標が発表されていました。経済産業省から鉱工業生産指数、総務省統計局の労働力調査や厚生労働省の職業安定業務統計雇用統計、総務省統計局の消費者物価指数などです。いずれも9月の統計です。なお、ついでながら、米国商務省から7-9月期の米国GDP統計も発表されています。いつもの日経新聞の記事、グラフ、簡単な私の論評の順で以下の通り取り上げたいと思います。まず、鉱工業生産指数について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気、足踏み感一段と 鉱工業生産4カ月連続低下 9月1.9%低下
基調判断「弱含み傾向」

景気の足踏み感が一段と強まってきた。経済産業省が29日発表した9月の鉱工業生産指数は前月比で1.9%の低下と4カ月連続で悪化。総務省が発表した9月の完全失業率は5.0%に小幅改善したものの、家計の消費支出は前年比で横ばいにとどまった。円高の悪影響に加え、エコカー補助金などの政策効果が途切れたため。米国や中国などの成長鈍化もあって、昨年春から回復を続けてきた国内景気は転換点を迎えている。
経済産業省が29日発表した9月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は92.5と、前月比1.9%低下した。前月を下回るのは4カ月連続で、リーマン・ショック後の2008年10-09年2月以来の長期の低下となった。エコカー補助金の終了や輸出の鈍化が企業の生産活動に影響を与えている。
9月の鉱工業生産指数は事前の市場予測(中央値で0.6%低下)を大幅に下回った。経産省は基調判断を前月までの「生産は横ばい傾向で先行きは弱含み」から、「弱含み傾向」に下方修正した。「弱含み」の判断は08年8月以来となる。
エコカー補助金終了の影響で自動車など輸送機械工業が前月比4.2%減と5カ月連続でマイナス。オーストラリアや中南米向けの乗用車の生産も振るわなかった。自動車の減産が波及し、自動車タイヤや工業用ゴム製品などを含む「その他工業」も5.4%減少した。
家電エコポイントが継続中の液晶テレビや、新機種を発売した携帯電話など情報通信機械工業は6.5%増加した。
今後の需要を見込んだ液晶テレビの在庫増などがあり、在庫指数は0.2%上昇。上昇は2カ月連続。出荷指数は前月比0.7%低下した。
9月が大幅なマイナスとなったことで、7-9月期の鉱工業生産指数は93.9と、前期(4-6月期)に比べて1.9%低下した。四半期ベースで指数がマイナスになるのは09年1-3月期以来6四半期ぶりとなる。
製造工業生産予測指数によると、10月は前月比3.6%低下、11月は反動もあって1.7%上昇する見込み。企業の生産活動は一段と弱含む見通しだ。

いつものグラフは以下の通りです。上から、鉱工業生産指数の推移、輸送機械を除く資本財出荷の推移、電子部品・デバイスの在庫率の推移、四半期データでみた在庫循環図です。いずれも季節調整済の系列で、影をつけてある期間は景気後退期です。

鉱工業生産の推移

生産については、4か月連続で減産となり、さらに、製造工業予測指数で見て10月も減産が予定されていることから、5か月連続で鉱工業生産指数が低下するのはほぼ確実といえます。世界経済の減速に円高が加わって輸出が振るわず、家電エコポイントはもう少し残るもののエコカー補助金が9月初めに終了して政策効果も剥落しつつあります。資本財出荷も横ばいとなり、設備投資需要も停滞していることがうかがえます。先月から注目している電子・デバイス産業の在庫も調整が始まる水準に達しつつあるように見受けられますし、在庫調整に関しては電子・デバイス産業は製造工業全体の先行指標ですから注視する必要があります。在庫循環はようやく第1象限に戻りましたが、ここ数四半期は大きく循環図が外を回って、以前の在庫循環に比べて振幅が大きくなったことが示唆されています。

次に、雇用統計について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

完全失業率5%に改善9月、医療・福祉などけん引
先行き不透明で雇用環境は依然厳しく

総務省が29日発表した9月の完全失業率(季節調整)は5.0%となり、前月比で0.1ポイント下がった。改善は3カ月連続。女性を中心に医療・福祉などで就業者が増えた。厚生労働省が同日まとめた有効求人倍率(同)は前月比で0.01ポイント上昇の0.55倍。ただ円高の影響や海外経済の先行き不透明から企業は新規採用に慎重で、雇用環境は厳しい。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち職に就いていない人の割合。9月の完全失業者は340万人と前年同月に比べて23万人減った。男性の完全失業率が5.5%と前月比0.1ポイントの上昇に転じた一方、女性の失業率は0.3ポイント低下の4.3%だった。
厚労省は足元の雇用情勢について「持ち直しの動きがみられるものの、依然として厳しい状況にある」と基調判断を据え置いた。企業の生産活動が弱含みの傾向で、改善が続くかは予断を許さない状況だ。
就業者数は前年同月に比べて14万人増の6309万人となった。医療・福祉が引き続き好調だったため。製造業も5万人増と2008年4月以来の増加に転じた。一方で建設業と職業紹介や労働者派遣業を含む、その他のサービス業などは減った。
ハローワークで仕事を求める人に、1人当たり平均で何件の求人があるかを示す有効求人倍率は5カ月連続で上昇した。都道府県別では福井県が最も高く、0.86倍だった。最低は沖縄県で0.33倍。
雇用情勢の先行きを示すとされる新規求人倍率(季節調整値)は前月から0.03ポイント改善の0.91倍となった。

いつものグラフは以下の通りです。上から、失業率、有効求人倍率、新規求人数、産業別雇用者数の前年同月差増減です。一番下のグラフだけは季節調整していない原系列の前年同月差増減ですが、上の方の3枚は季節調整済の系列です。

雇用統計の推移

雇用については、極めて緩慢なペースながら回復は示しています。しかし、この緩やかなペースでは雇用の回復はほとんど実感されず、雇用の改善が所得の増加につながり、所得増が家計部門の消費を刺激するという景気拡大期の好循環が実現されない恐れがあると私は受け止めています。

次に、消費者物価について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価1.1%低下 9月、家電の下落続く
総務省が29日発表した9月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.1となり、前年同月に比べて1.1%低下した。低下幅は前月に比べ0.1ポイント拡大し、19カ月連続のマイナスとなった。家電製品が下落しているほか、ガソリン価格の上昇も鈍っており、物価が持続的に下落するデフレが続いている。
生鮮食品を含めた物価の総合指数は前年同月比で0.6%低下。生鮮野菜の値上がりで低下幅は0.3ポイント縮小した。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)は1.5%低下した。低下幅は前月と変わらなかった。
品目別でみると、電気冷蔵庫など家庭用耐久財が前年同月と比べて10.1%下落。値下げ競争が激しいデジタル家電では、薄型テレビが33.9%、デジタルカメラが37.1%それぞれ下がった。
エネルギー価格は前年同月に比べ3.7%上昇したが、前月に比べた上昇幅は0.6ポイント縮小した。灯油やガソリン代の上昇が鈍化傾向にある。
物価の先行指数となる東京都区部の10月のCPI(中旬速報値)は、たばこ増税の影響で低下幅が大幅に縮小。生鮮食品を除く総合指数では、前年同月比0.5%低下となり、下げ幅は0.5ポイント縮小した。食料とエネルギー価格を除いた総合指数は0.6%の低下だった。

いつものグラフは以下の通りです。折れ線グラフは青が生鮮食品を除く全国のコアCPIの前年同月比上昇率、赤が全国のコアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIです。棒グラフは全国コアCPI前年同月比に対する寄与度となっています。

消費者物価の推移

消費者物価のうち、東京都区部のマイナス幅が縮小したのには驚きました。生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比下落幅が9月の▲1.0%から10月には▲0.5%に大きく縮小しました。総務省統計局の「追加参考資料」によれば、たばこの寄与度が+0.20%、傷害保険が0.13%あるようですから、これは全国CPIの先行指標となります。特に、たばこは東京に比べて全国ではウェイトが約1.5倍ありますから、10月の全国では寄与度で+0.4%程度見込めることになります。もしも、総務省統計局からこの東京都区部の消費者物価統計が日銀に流れていたのであれば、日銀「展望リポート」の強気な物価見通しも一部に理解できる部分があるかもしれませんが、それはなかろうと私は考えています。それはともかく、たばこや傷害保険料といった制度的な要因を別にすれば、まだまだ深刻なデフレが続いていることは明らかんです。

最後に、米国GDP成長率について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

米GDP年率2.0%成長 7-9月、景気回復力弱く
米商務省が29日発表した2010年7-9月期の米実質国内総生産(GDP、速報値、季節調整済み)は、前期に比べて年率換算で2.0%増加した。個人消費が比較的好調だったことで、5四半期連続でプラスを維持した。ただ米経済の実力を示す潜在成長率を下回っており、米景気の回復力の弱さが改めて浮き彫りになった。
実質GDP増加率は市場予測の平均(2.0%)と同じだった。
GDP発表を受け、米連邦準備理事会(FRB)は11月2-3日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で追加金融緩和を議論する。
昨年10-12月期には5.0%増と高い成長率を記録していたが、今春以降は経済活動の鈍さや経済対策の効果縮小などを受け、2%程度の成長率にとどまっている。
今回、全体を押し上げたのはGDPの約7割を占める個人消費。前期比年率で2.6%増となり2006年10-12月期以来の高い伸び率となった。サービス支出が増えたことが主因だが、米失業率は9%台後半で高止まりしており持続性には課題を残す。
企業の設備投資は9.7%増。前期(17.2%増)に比べると増加率は縮小したが、3期連続のプラスを維持した。
一方、住宅投資は29.1%減となり、経済成長の足を引っ張った。住宅市場は米政府の減税などで一時は持ち直す兆しもあったが、需要の弱さが改めて鮮明となった。
さらに、輸出から輸入を差し引いた「純輸出」もGDPを大きく押し下げる要因として働いた。輸出は5.0%増となり、3期連続でプラス幅が縮小。一方、輸入は17.4%増となり、引き続き高い伸び率を維持したことが背景。オバマ政権は5年間で輸出を倍増する目標を掲げているが、輸出の勢いにも陰りがみられる。

グラフは以下の通りです。季節調整済の系列で、前期比年率成長率をプロットしています。

米国GDP成長率の推移

米国GDP成長率は単に潜在成長率と比較して低めの成長率にとどまった、というだけでなく、引用した記事にもある通り、これだけドル安になりながら純輸出の寄与がマイナスだったり、消費は増えたものの、これをサポートする雇用が改善していないことから、持続性に疑問があったりと、成長率の数字の低さにとどまらない内容の悪さも勘案し、米国経済の先行きに対する悲観的な雰囲気をもたらしています。来週早々の連邦公開市場委員会 (FOMC) で追加的な金融緩和策がとられるものと多くのエコノミストは想像しています。

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2010年10月29日 (金)

下の子が青山通りのハロウィン・イベントに参加する

ハッピーハロウィン AOYAMA

本日の夕刻午後5時から、ハッピーハロウィン AOYAMA が開催されました。青山通りのエイベックスのビルの前に仮装した子供達が集まって参加店の地図をもらい、"Trick or Treat!" といいながらお菓子をもらって回るイベントです。我が家の下の子もクラスメートのお友達といっしょに参加して、お菓子を大量に持ち帰りました。下の写真はハッピーハロウィン AOYAMA に出かける時の子供達です。

ハッピーハロウィン AOYAMA

今年もやっぱり、
Happy Halloween!

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2010年10月28日 (木)

日銀「展望リポート」に見る驚くべき強気の物価見通し

昨日から開催されていた日銀の金融政策決定会合が本日終了し、政策金利の据置きなどを決めるとともに、いわゆる「展望リポート」が発表されました。本日のところは「基本的見解」部分のみであり、明日、背景説明を含む全文が発表される予定です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

物価、12年度にかけプラス幅拡大 日銀展望リポート
11年度は0.1%で据え置き

日銀は28日に開いた金融政策決定会合で、2010-12年度の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)をまとめた。公表が初めてとなる12年度の経済見通しは、消費者物価指数(CPI)が前年度比でプラス0.6%になると予想。実質国内総生産(GDP)は同2.1%増とした。
予想の背景には「需給バランスが改善していくには相応の時間を要する」と見ていることがある。5日の会合ではCPIが1%程度上昇するという、物価の安定が展望できる状態まで実質ゼロ金利政策を継続する「時間軸政策」を明確化した。今回の物価見通しは金融緩和政策が当面継続することを示唆する。ただ、「12年度にかけてプラス幅が拡大していくものと見込まれる」との考えも示した。
国内景気については、11年度以降に輸出の増勢が回復し企業収益の改善や雇用・所得環境が改善傾向をたどる可能性に言及。「緩やかな回復経路に再び復していくと考えられる」とした。12年度には「潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる」との見通しを示した。一方、足元の景気認識については、海外経済の減速や円高の影響などで、「改善の動きが弱まっている」とした。
11年度のCPI予想は7月の中間評価時点の予想中央値であるプラス0.1%を据え置いた。半面、GDP見通しは1.9%増から1.8%増に小幅に引き下げた。10年度の予想もCPI見通しは前回のマイナス0.4%を据え置き、GDP見通しは2.6%増から2.1%増へ引き下げた。
今後の金融政策については改めて「適切に政策対応を行っていく方針」との姿勢を示した。リポートの中では「企業家精神に基づく民間企業の積極的な活動が何よりも重要」とも指摘した。

上の記事の中にもいくつか触れられていますが、2010年度から2012年度にかけての実質GDP成長率、国内企業物価指数と生鮮食品を除く消費者物価指数で見た物価上昇率の大勢見通しは以下の通りです。「展望リポート」の p.14 から引用しています。

政策委員の大勢見通し

上の表の明らかな特徴として、成長率が今年7月の時点からかなり下方修正された一方で、物価見通しはほぼ7月調査を踏襲し、もしくは上方改定されている部分すら見かけます。すなわち、成長率見通しは「こんなもん」という気がしないでもない一方で、私は余りに強気の物価予想にあ然としています。繰返しになりますが、成長率が下方修正されたにもかかわらず、物価見通しはほぼ維持されたので、やや世間の考えとズレを生じた可能性があると見るべきです。例えば、経済企画協会が実施しているESPフォーキャスト調査の10月調査結果では、生鮮食品を除くコア消費者物価の上昇率は、エコノミストの予想値の平均で2010年度▲0.90%、2011年度▲0.17%の後、2012年度になって+0.21%となり、四半期別では2012年1-3月期まで前年同期比でマイナスを続けると予想されていますが、日銀政策委員の大勢は2011年度中にプラスに転ずると考えていることから、私を含む世間一般のエコノミストの予想とのかい離が生じています。報道ベースでは、2012年度になってもコア消費者物価上昇率は1%に達することなく、現在の白川総裁の任期中にゼロ金利を解除することは難しい、といった論調が見られるんですが、市場の受止めは全く反対で、場合によっては、カギカッコ付きで「過激に物価が上昇するシナリオ」と受け止める向きもある可能性を考慮すべきです。少なくとも、期待に働きかける時間軸効果がグッと短くなった印象を私は持っています。10月5日付けのエントリーで前回の日銀金融政策決定会合の「包括的な金融緩和政策」の実施についてを取り上げた際に、「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検」というただし書きから、時間軸コミットメントに大きな疑問を呈しましたが、ますます、「やっぱり、日銀は早めに金利引上げに走る」可能性が高まった、とより多くのエコノミストや市場関係者は受け止めるんではないかと私は想像しています。私と同じ視点を提供しているのはみずほ総研のリポート「金融政策決定会合(2010/10/28)の評価 - 政策効果を減殺しかねない強気の物価見通しに疑問 -」です。

最後に、ひとつだけ期待を持って私が見ているのは、11月4-5日に次回の金融政策決定会合を前倒し開催することを決めた点です。もちろん、米国の連邦準備制度理事会 (FED) の連邦公開市場委員会 (FOMC) が11月2-3日に開催されることを受けて機動的な政策対応を行うための前倒しなんですが、今日の総裁記者会見でも質問されているような諸点、すなわち、長期国債の買切り枠の拡大がなされるかどうか、マチュアリティのより長い2年以上国債の買取りに踏み込むかどうか、などの点に注目したいと考えています。

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2010年10月27日 (水)

スケジュール管理はやっぱりアナログの手帳が便利か?

来週から11月に入り、例えば、年賀状の発売が始まって年の瀬の雰囲気が漂い始めるんではないかと想像しています。さらに12月に入れば、そろそろ手帳やカレンダーを携えた挨拶回りが役所にも来る季節になりました。実は、私は地方大学から東京の役所に戻るに当たっての引っ越しで手帳をなくしてしまいましたので、仕方なく、現在は役所のLANにある共用のスケジュール管理ソフトをパソコン上で使って日程管理しています。私のスケジュールが課内に限らず役所内で広く参照できる上に、必要な業務上のイベントは課員が私のスケジュール帳に書き込むことも可能です。大学の教員だったころは授業や教授会などがすべて週単位になっており、ほぼすべて手帳で管理していたんですが、その手帳そのものをなくしたことが原因で、東京の役所に戻ってからはパソコン上で管理しています。
来年はどうしようかと考えていたところ、やや旧聞に属する話題ながら、10月1日に能率協会マネジメントセンターから「あなたの手帳の流儀 2010」調査が発表されていました。今夜のエントリーではこの調査結果を私の興味に従って、ごく簡単に紹介したいと思います。

スケジュール管理ツール

まず、上のグラフは調査結果の p.3 【グラフ1】を引用しています。スケジュール管理のツールは、やっぱり、手帳が一番でパソコンも普及して来ており、また、カレンダーに直接書込む方式も根強い人気があります。

来年のスケジュール管理

次に、上のグラフは同じく調査結果の p.4 【グラフ3】を引用しています。来年のスケジュール管理はまだアナログ派が主流のようです。もっとも、私は役所内に周知させる必要から、パソコンのスケジュール管理が主になりそうな気がします。しかし、手帳もないことには家に帰ってからの日程確認が困難ですから、何か、手帳を買おうと予定しています。その際に、大きなポイントになるのは私の場合は大きさです。

手帳の大きさ

ということで、上のグラフもやっぱり調査結果の p.5 【グラフ5】を引用しています。その昔、地方大学に出向するまで、私は大判のダイアリー式の手帳を役所に置いて使っていたんですが、大学ではほとんどが週単位の分かりやすい予定だったのと長崎では大判ダイアリーの適当なものが売っていなかったので、通常の紙幣サイズの手帳に切り替えました。男性の中では紙幣より小さいサイズが主流のようです。私は紙幣サイズか、それより小さいサイズか、よく考えて買いたいと思います。

最後に、手帳やスケジュール管理とは何の関係もなく、地下鉄のゴミ箱が撤去されていることを、今日になってようやく認識しました。APEC開催に向けた警備強化の一環のようです。東京メトロの発表によれば、この先、11月に入ってAPEC開催がさらに近づけば、コインロッカーや飲み物の自動販売機が休止されるそうです。

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2010年10月26日 (火)

天野節子『氷の華』と『目線』 (幻冬舎文庫) を読む

天野節子『氷の華』と『目線』 (幻冬舎文庫)

天野節子さんの『氷の華』『目線』を読みました。いずれも幻冬舎文庫で、いずれ長編本格ミステリです。『氷の華』は最初から犯人が明示されていて、犯行に至る動機も明らかで、警察がいかに真相に迫るかが読ませどころですが、『目線』は動機も含めて犯人を推理する一般的な構成になっています。ただし、『目線』では作者は意図的に重要事項を読者に気づかせないように工夫しているように見受けられます。いずれもテレビでドラマ化され、または、される予定で、この作者には固定的なファンがいそうな気がします。『氷の華』は2年前の2008年9月にテレビ朝日開局50周年ドラマとして米倉涼子さん主演で2回シリーズで放送され、『目線』は今年の12月にフジテレビで仲間由紀恵さん主演でフジテレビ金曜プレステージ特別企画として放送予定です。ということで、ここ以下はネタバレがあるかもしれません。未読の方が読み進む場合は自己責任でお願いします。
まず、繰返しになりますが、同じ作者のミステリ作品で、ともに上流階級の家庭を舞台にして、女性が犯人である長編の本格推理小説なんですが、かなり大きな違いを意図的に盛り込んでいます。『氷の華』では恭子の動機や犯行を最初から綿密に記述している一方で、『目線』ではドラマ主演の仲間由紀恵さんの役である三女のあかりが犯人なんですが、あかりが車いす生活であることすら、最終段階まで意図的に読者には気づかれないようにしていると私は受け止めています。『氷の華』の犯人である恭子は、計画的で意志が明確で実行力もある強い性格の人間であり、犯罪に手を染めなければ別の方面で成功していた可能性がうかがわれます。最初の殺人では裁判で無罪になったりしています。もっとも、第2の殺人に依存した無罪ではありますが、一時不再理ですから無罪は無罪です。しかし、『目線』の犯人であるあかりはそうではありません。アリバイ工作のトリックはかなりズサンで、途中から犯人は読者にもバレバレになります。どちらの小説でも殺人をおかす犯人の動機はそれほど強くなく、この点については、特に『目線』では作者自身にも自覚があるのか、刑事達にそのような発言をさせています。しかし、両作品でもっとも大きな差は犯人のキャラの書き分けではないかと私は考えています。『氷の華』の恭子はキャラが立ち過ぎるほど立っていて、そのように明確に書かれている一方で、『目線』のあかりは可能な範囲で目立つことなく記述され、特に、同年代の二女の貴和子とのキャラの書き分けが十分かどうか、私は疑問です。意図的にキャラをそのように設定して明瞭に書き分けることを避けて物語を進めたのか、作者の力量不足で書き分けられなかったのか、私には不明です。次回作で判断したいと思います。重ねて書きますと、特に、車いすを最後の最後まで引っ張るのは無意味な気がします。ドラマでは明らかに最初からあかりが車いすを使うのは視聴者に丸分かりでしょう。ドラマを制作したフジテレビのサイトにある写真では、犯人のあかり役である仲間由紀恵さんは常に車いすに乗っています。

『氷の華』にはかなり高い点を差し上げられる一方で、『目線』には物足りないものを感じました。アマゾンのレビューもややそんな感じです。これがそのまま売上げに反映しているような気がしないでもありません。

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2010年10月25日 (月)

環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定 (TPP) について考える

本題の TPP に入る前に、本日、財務省から9月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる輸出額は5兆8429億円、輸入額は5兆459億円、差引き貿易黒字は7970億円でした。貿易黒字は18か月連続、輸出の前年同月比プラスは10か月連続なんですが、同時に、7か月連続で前年同月比伸び率は低下しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

輸出額、9月は14%増 アジア向け減速
財務省が25日発表した9月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比14.4%増の5兆8429億円と、10カ月連続で前年同月比プラスになった。ただ円高や高成長を続けてきたアジア経済の成長鈍化を背景に、伸び率は7カ月連続で縮小した。同時に発表した2010年度上半期(4-9月)の貿易収支は3兆4152億円の黒字で、3期連続の黒字になった。
9月の輸入額は9.9%増の5兆459億円。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7970億円で、18カ月連続の黒字になった。為替レートは対ドルで1ドル=84円66銭と前年同月比で9%の円高水準だった。
地域別の輸出額をみると、アジア向けは前年同月比14.3%増で、8月の18.0%増から伸び率が縮小した。中国向けが化学製品や金属加工機械を中心に8月の18.5%から10.3%増に鈍化したことが影響した。ただ財務省は尖閣諸島沖での漁船衝突事件に伴う日中関係の悪化の影響は「輸出入ともみられない」と説明している。
米国向けは前年同月比10.4%増で、建設用機械や原動機が伸びた。欧州連合(EU)向けは船舶や自動車部品が増えて11.2%増だった。
10年度上半期の輸出は前年同期比25.0%増の34兆980億円、輸入は20.8%増の30兆6828億円だった。アジア向けの貿易黒字は40.6%増の5兆2267億円。輸出の増加で、比較できる1979年度以降では最大になった。

次に、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上のパネルが季節調整する前の原系列、下のパネルが季節調整済みの系列です。いずれも、水色の折れ線グラフが輸出、赤が輸入、緑色の棒グラフがその差額の貿易収支です。上のパネルの原系列のグラフでも輸出の伸びが鈍化してきたことが読み取れるようになっていますし、下のパネルの季節調整済みの系列に着目すると、輸出入ともハッキリと前月比でマイナスをつけているのが明らかになるとともに、輸出よりも輸入の傾きの方が大きいのは、新興国を含む世界経済の鈍化よりも我が日本経済の鈍化の方が急ピッチで進んでいる可能性を示唆していると受け止めています。

貿易統計の推移

さらに、輸出のみに着目したのが下のグラフです。一番上のパネルでは輸出金額指数の前年同月比を価格指数と数量指数に寄与度分解してあり、真ん中のパネルでは輸出数量指数の前年同月比と OECD 先行指標の前年同月比を3か月ズラしたものを並べてあります。一番下のグラフでは同じく輸出数量指数の前年同月比と鉱工業生産指数のこれまた前年同月比を並べてあります。一番上のパネルのグラフから、輸出金額の伸びの鈍化は圧倒的に輸出数量に起因することが読み取れますし、真ん中のパネルから輸出数量の伸びの鈍化は世界経済の鈍化に起因し、さらに、輸出の鈍化は生産の鈍化に帰結することが見て取れます。

輸出数量の推移

長くなりましたが、貿易統計の概観を終えて、本題に入り、環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定 (Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement, TPP) について簡単に取り上げたいと思います。私が見た範囲の最近のメディアでは、先週10月22日の民主党の会議で TPP の経済効果に関する資料が配布され、経済産業省は10兆円、内閣府は3兆円と試算した、といった記事が日経新聞のサイトで報じられていたりしました。もちろん、政府でも10月8日に開催された第2回新成長戦略実現会議で取り上げられています。

アジア太平洋における自由貿易協定の枠組

ということで、上の地図は今年横浜で開催される APEC 総会にちなんで、関連するデータや情報などを集めた経済産業省のサイトから引用していますが、構想段階のものも含めたアジア太平洋地域における自由貿易協定の枠組みです。これに見るように、TPP はブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポール4国をメンバーに2006年に発効しています。地図では見にくいんですが、オーストラリア、ペルー、米国の3国が加盟を表明してラウンドに参加しており、ベトナムがオブザーバーとなっていたりします。マレーシアもラウンドには参加していないものの、加盟を表明しており、カナダも検討中と伝えられています。特に、昨年11月に米国のオバマ大統領が参加を表明しラウンドに加わってから大いに注目を集めました。米国の加盟表明に加えて、多くのエコノミストが関心を持った理由は、他に2つあると私は考えています。すなわち、第1に、例外品目がなく100%関税撤廃を実現する質の高い自由貿易協定であり、しかも、サービス貿易、政府調達、知的財産権を本協定に含み、さらに、労働と環境も補完協定と覚書に持つ包括的な自由貿易協定である点です。繰返しになりますが、自由貿易協定として、例外品目がなく100%関税撤廃という意味で質が高く、貿易に関連するさまざまな分野を含むという意味で包括的であるといえます。この特徴から、一部に「21世紀型の自由貿易協定」と呼ぶ向きもあります。ただし、私が調べた範囲で投資の自由化に関する規定を欠いているような気がします。第2に、「戦略的」と名付けられている通り、APEC のモデル協定として APEC 諸国の加盟を念頭にしており、APEC が自由貿易協定に発展する可能性がある点です。APEC 加盟国として、日本が TPP に加わるのか孤立するのか、どちらが望ましいのかを考えるべきです。

どんなに保守的な試算をしても、貿易を自由化し、関税を引き下げることにより、いわゆる自由貿易に近づけることは国民経済の観点からプラスの経済効果を有します。問題は抵抗勢力が強いことで、日本国内では農業セクターということになります。経済政策の中で圧倒的なエコノミストの合意がありながら実現されていないのは自由貿易なんですが、この TPP への参加はどうなりますことやら。

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2010年10月24日 (日)

日経新聞に見る味覚の境界線は関ヶ原か?

私は京都出身の関西人です。ですから、東京の都心で生活していると、いろいろな生活習慣の違いがありますが、もっとも大きいのは味覚です。特に、うどんやソバのツユが大きく異なります。最初、東京に来たころに、しょうゆを薄めただけに見えるうどんのツユを見てびっくりした記憶があります。
ということで、まったくの引用だけの手抜きのエントリーですが、日経新聞の生活欄のひとつ裏読みWAVEの記事「おでん・菓子も境界は関ケ原 日本人の味覚マップ」では、おでんやお菓子の味覚の境界は関ヶ原であると主張しています。

セブン-イレブン・ジャパンおでんの味の境界線

上の地図は日経新聞のサイトから引用しています。大雑把に、東日本ではカツオだし、西日本は昆布だしです。これは水の違いに起因すると聞いたことがあります。ですから、お酒は今でも灘や伏見が産地として有名です。もはやごく一部に残っているだけの表現ながら、「下り酒」といわれる場合もあります。京都や大阪などの上方からお江戸に下って来たお酒のことです。逆に、お酒に限らず、お江戸の近在で採れて上方から下って来たものではない産品は「下らない」と称されます。

カルビー「ポテトチップス」味の境界線

続いて、上の地図は日経新聞のもうひとつのサイトから引用しています。見れば分かると思いますが、カルビー「ポテトチップス」味の境界線を示しています。これも大雑把に関ヶ原を境界にしているように見受けられます。まさに、天下分け目の境界線なのかもしれません。

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2010年10月23日 (土)

G20 財務大臣・中央銀行総裁会議共同声明

G20 logo

Communiqué
Meeting of Finance Ministers and Central Bank Governors, Gyeongju, Republic of Korea
October 23, 2010

  1. We, the G20 Finance Ministers and Central Bank Governors, met with a sense of urgency to fully address the economic challenges facing us today in preparation for the Seoul Summit.
  2. The global economic recovery continues to advance, albeit in a fragile and uneven way. Growth has been strong in many emerging market economies, but the pace of activity remains modest in many advanced economies. Downside risks remain and are different from country to country and region to region. Yet, given the high interdependence among our countries in the global economic and financial system, uncoordinated responses will lead to worse outcomes for everyone. Our cooperation is essential. We are all committed to play our part in achieving strong, sustainable and balanced growth in a collaborative and coordinated way. Specifically, we will:
    • pursue structural reforms to boost and sustain global demand, foster job creation and increase growth potential;
    • complete financial repair and regulatory reforms without delay;
    • in advanced countries, formulate and implement clear, credible, ambitious and growth-friendly medium-term fiscal consolidation plans in line with the Toronto Summit commitments, differentiated according to national circumstances. We are mindful of the risks of synchronized adjustment on the global recovery and of the risks that failure to implement consolidation, where immediately necessary, would undermine confidence and growth;
    • continue with monetary policy which is appropriate to achieve price stability and thereby contributes to the recovery;
    • move towards more market determined exchange rate systems that reflect underlying economic fundamentals and refrain from competitive devaluation of currencies. Advanced economies, including those with reserve currencies, will be vigilant against excess volatility and disorderly movements in exchange rates. These actions will help mitigate the risk of excessive volatility in capital flows facing some emerging countries. Together, we will reinvigorate our efforts to promote a stable and well-functioning international monetary system and call on the IMF to deepen its work in these areas. We welcome the IMF's work to conduct spillover assessments of the wider impact of systemic economies' policies;
    • continue to resist all forms of protectionist measures and seek to make significant progress to further reduce barriers to trade; and
    • strengthen multilateral cooperation to promote external sustainability and pursue the full range of policies conducive to reducing excessive imbalances and maintaining current account imbalances at sustainable levels. Persistently large imbalances, assessed against indicative guidelines to be agreed, would warrant an assessment of their nature and the root causes of impediments to adjustment as part of the Mutual Assessment Process, recognizing the need to take into account national or regional circumstances, including large commodity producers. To support our efforts toward meeting these commitments, we call on the IMF to provide an assessment as part of the MAP on the progress toward external sustainability and the consistency of fiscal, monetary, financial sector, structural, exchange rate and other policies.
  3. Building on the success of the Toronto Summit, the Framework for Strong, Sustainable and Balanced Growth was refined, with the mutual assessment process carried out at country-level to tackle both short and medium term challenges. Informed by the IMF, the World Bank, the OECD, the ILO and other international organizations' analyses, the Framework provided a solid and practical platform for international cooperation to take place. In response to the tough challenges facing the global economy, we are developing a comprehensive action plan to mitigate risks and achieve our shared objectives. We will submit this action plan for consideration by our Leaders at the November 2010 Seoul Summit. Recognizing the benefits of the Framework, we agreed to recommend to Leaders that the country-led and consultative Framework process should continue beyond the Seoul Summit.
  4. We have made significant strides since the adoption of the Action Plan to Implement Principles for Reform at the Washington Summit in November 2008, with support from the FSB. We are committed to take action at the national and international level to raise standards, so that our national authorities implement global standards consistently, in a way that ensures a level playing field and avoids fragmentation of markets, protectionism and regulatory arbitrage. To build a stronger global financial system, we have agreed to prioritize the following issues on the agenda for the Seoul Summit:
    • Welcome and commit to fully implement within the agreed timeframe the new bank capital and liquidity framework drawn up by the Basel Committee and the Governors and Heads Of Supervision.
    • Endorsement of the FSB's recommendations to increase supervisory intensity and effectiveness.
    • Endorsement of the policy framework, work processes and timelines proposed by the FSB to mitigate the risks posed by Systemically Important Financial Institutions and address the 'too-big-to-fail' problems.
    • Commitment to implement all aspects of the G20 financial regulation agenda, in an internationally consistent and non-discriminatory manner, including the commitments on OTC derivatives, compensation practices and accounting standards and FSB principles on reducing reliance on credit rating agencies.
    • Further work on macro-prudential policy frameworks, including tools to help mitigate the impact of excessive capital flows; the reflection of the perspective of emerging market economies in financial regulatory reforms, including through increased outreach; commodity derivative markets; shadow banking; and market integrity.
    • Pursue our work decisively to tackle Non-Cooperative Jurisdictions.
  5. We have reached agreement on an ambitious set of proposals to reform the IMF's quota and governance that will help deliver a more effective, credible and legitimate IMF and enable the IMF to play its role in supporting the operation of the international monetary and financial system. These proposals will deliver on the objectives agreed in Pittsburgh and go even further in a number of areas. Key elements include:
    • shifts in quota shares to dynamic EMDCs and to underrepresented countries of over 6%, while protecting the voting share of the poorest, which we commit to work to complete by the Annual Meetings in 2012.
    • a doubling of quotas, with a corresponding roll-back of the NAB preserving relative shares, when the quota increase becomes effective.
    • continuing the dynamic process aimed at enhancing the voice and representation of EMDCs, including the poorest, through a comprehensive review of the formula by January 2013 to better reflect the economic weights; and through completion of the next regular review of quotas by January 2014.
    • greater representation for EMDCs at the Executive Board through 2 fewer advanced European chairs, and the possibility of a second alternate for all multi-country constituencies, and
    • moving to an all-elected Board, along with a commitment by the Fund's membership to maintain the Board size at 24 chairs, and following the completion of the 14th General Review, a review of the Board's composition every 8 years.
  6. We welcomed the recent reform of the IMF lending facilities, including the enhancement of the Flexible Credit Line and the establishment of the Precautionary Credit Line to strengthen the global financial safety nets. We call on the IMF to continue its work to further improve the global capacity to cope with shocks of a systemic nature.
  7. We look forward to the multi-year action plan of the G-20 Working Group on Development to promote inclusive and sustainable economic growth and resilience in developing countries. We are committed to meeting the Millennium Development Goals by 2015 and will reinforce our efforts to this end, including through the use of the Official Development Assistance. We reaffirm our commitment to an ambitious replenishment of the World Bank's International Development Association. We welcomed the progress of the Global Agriculture and Food Security Program in rapidly scaling up agriculture assistance in several developing countries and invite further contributions.
  8. We welcomed a set of actions identified to improve access to financial services for the poor and SMEs. We welcomed the strong response to the SME Finance Challenge and look forward to the announcement of the innovative winning entries at the Seoul Summit. We agreed to develop a funding framework to support the effective implementation of the winning proposals of the SME Finance Challenge. We agreed that a global consultative mechanism is needed to maximize the impact of the work on financial inclusion and enhance coordination amongst different initiatives and stakeholders.
  9. We noted the progress made on rationalizing and phasing out inefficient fossil fuel subsidies and promoting energy market transparency and stability and agreed to monitor and assess progress towards this commitment at the Seoul Summit.
  10. Recognizing the importance of enhancing public-private partnership to promote economic growth beyond the crisis, we welcome the work done by the 12 Seoul G20 Business Summit Working Groups.
  11. We thanked Korea for hosting the Finance Ministers and Central Bank Governors meetings this year and welcomed France as chair in 2011.

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2010年10月22日 (金)

国際通貨基金 (IMF) の「アジア太平洋地域経済見通し」

国際通貨基金 (IMF) の「世界経済見通し」 World Economic Outlook については、すでに10月4日付けのエントリーで分析編を、7日に見通し編を、それぞれ取り上げたところですが、昨日、「アジア太平洋地域経済見通し」 Regional Economic Outlook Asia and Pacific: Consolidating the Recovery and Building Sustainable Growth が発表されました。もちろん、pdf の全文リポートもアップされています。私のブログの特徴のひとつは国際機関のリポートを取り上げることにありますので、今夜は、この全文リポートから私が重要と考えている図表や囲み記事を紹介したいと思います。

Asia: Real GDP Growth

まず、上の図表は成長率見通しです。実は、すでに取り上げた「世界経済見通し」 World Economic Outlook の p.64 Table 2.1. Selected Asian Economies: Real GDP, Consumer Prices, Current Account Balance, and Unemployment と数字は変わりありません。でも、下のファンチャートは初出かもしれません。上の表はリポート p.24 Table 1.1. Asia: Real GDP Growth を、下のファンチャートは p.26 Figure 1.36. Asia: GDP Growth を、それぞれ引用しています。

Asia: Estimated Output Gap Closure Dates

見通しそのものは初出ではないということで、今回のリポートで私が注目したのは2点あり、第1は上のグラフの通りです。リポートの p.15 Figure 1.19. Asia: Estimated Output Gap Closure Dates から引用しています。タイトル通り、産出ギャップがゼロに戻る時期の推計結果です。台湾やシンガポールがすでに産出ギャップをゼロに戻していて、インド、韓国、タイ、フィリピンも今年中くらいとされているのに対して、日本は2015年いっぱいかかって産出ギャップがゼロに戻る、と試算されています。この表に掲げられたアジアの国や地域の中でもっとも遅いわけです。しかも、今年4月時点の推計から後ズレしているのは日本くらいのものです
第2に、私が注目したのは pp.8-10 の Box 1.2. The Yen's Appreciation and Its Implication for Japan's Outlook です。先月の為替市場介入について簡単に分析がなされています。日本円について、欧州のソブリン・リスクと米国の成長鈍化に従って円が買われて円高を招来したとし、かつて、円高は即時の株価下落とラグを伴った輸出減少をもたらしたが、現時点では、アジア域内貿易の比重も高まり、長期的なインフレ期待を通じたデフレの深刻化が問題、と指摘しています。

その昔1970年代後半、当時のカーター米国大統領にはドイツとともに「世界経済の機関車」と持ち上げられ、20年前にはボーゲル教授の著書で『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と称されたにもかかわらず、今や日本経済はアジア地域のお荷物になり果ててしまっているのかもしれません。

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2010年10月21日 (木)

スポーツの秋に考えるスポーツ市場の規模やいかに?

我が阪神タイガースが日本シリーズの出場を逃して、私にとっての今年のプロ野球は終了したんですが、今年はサッカーのワールドカップもありましたし、ウィンター・スポーツの季節もそろそろ始まり、食欲や読書とともにスポーツの秋が深まって来ています。
ということで、今夜はスポーツ市場について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルの共同調査に基づく「【速報】2010年スポーツマーケティング基礎調査」を取り上げたいと思います。10月18日に発表されています。両社のリポートのリファランス先は以下の通りです。会社のロゴなどを除いて、ほぼ同じ内容ではないかと思いますが、厳密なチェックはしていません。以下に取り上げるグラフなどはマクロミルのリポートから引用しています。なお、より詳細なリポートは来月に売り出されるようにアナウンスされています。

まず、日常生活におけるスポーツの位置づけは以下のグラフの通りです。リポートの p.3 図表1から引用しています。一番下をはっている紺色の折れ線が「することも見ることも、大きな位置付けを占めている」、次の緑色が「見ることよりもすることのほうが、大きな位置付けを占めている」、青が「することよりも見ることのほうが、大きな位置付けを占めている」、昨年から青を追い抜いたピンクが「することも見ることも、大きな位置付けではない」ということになっています。まあ、こんなもんですかね、という感じです。

日常生活におけるスポーツの位置づけ

ということで、リポートのメインとなるスポーツ市場規模なんですが、スポーツ用品の購入、スポーツ施設利用・会費・スクール料、スポーツのスタジアム観戦など、過去1年間のスポーツ活動への参加にかかる支出を対象としたスポーツ参加市場規模は2010年で3兆3,476億円と推計されていて、景気が拡大局面にありかつワールドカップ開催年であるにもかかわらず、前年からかなり減少しています。内訳は以下の表の通りです。リポートの p.3 図表2から引用しています。

 年間平均支出額
(前年比)
2010年市場規模
(2009年)
スタジアム観戦市場28,538円
(+16.6%)
5,917億円
(5,639億円)
用品購入市場33,581円
(▲9.6%)
1兆2,107億円
(1兆4,749億円)
施設利用・会費市場55,249円
(▲13.6%)
1兆5,452億円
(1兆9,926億円)
市場規模の合計n.a.3兆3,476億円
(4兆314億円)

「最も好きなスポーツ」と「よく観るスポーツ」のトップはともに野球で2位はサッカーです。しかし、昨年から今年にかけて、野球は落ちて来ている一方でサッカーは増加しており、そのうちに逆転するかもしれません。また、この両スポーツのプロ・チームのファンについて、プロ野球ファン人口を推計すると3,353万人と昨年比▲427万人減となった一方で、Jリーグファン人口は1,521万人と推計されており、これまた昨年から▲127万人減少しています。野球とサッカーのファン人口の開きはまだまだ大きいと言わざるを得ません。なお、このプロ野球ファン3,353万人の内訳は以下の通りです。我が阪神タイガースは800万人を超えるファンがいると推計されています。p.6 図表8から引用しています。

プロ野球チームファン人口
読売ジャイアンツ851万人
阪神タイガース829万人
中日ドラゴンズ318万人
福岡ソフトバンクホークス272万人
東北楽天ゴールデンイーグルス249万人

これらのほかに、今年のトピックとして、登山やサッカーのワールドカップに関する調査結果の概要も含まれています。ご興味ある方は、最初の方の三菱UFJリサーチ&コンサルティングまたはマクロミルのリンク先からリポートをご覧ください。

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2010年10月20日 (水)

国連地球生きもの会議で発表された『生態系と生物多様性の経済学』とは何か?

COP 10 Nagoya logo

今週から名古屋で国連生物多様性条約第10回締約国会議、通称、国連地球生きもの会議 (COP10) が開催されています。先週開催されていたカルタヘナ議定書第5回締約国会議 (COP-MOP5) に続く一連の会議ともいえます。今年は特に国連の定めた国際生物多様性年 (International Year of Biodiversity) であり、大きな注目を集めています。
エコノミストである私は生態系や生物多様性に関する自然科学的な知見には何の専門性もなく、部外者でしかないんですが、「生態系と生物多様性の経済学」を考えることは可能です。実際に、2008年5月に開催された前回の COP9 ボンにおいて The Economics of Ecosystem and Biodiversity の中間報告が示され、メディアでは全く注目されないながら、本日の午後、今回の COP10 名古屋のサイド・イベントで "Mainstreaming the Economics of Nature: a synthesis of the approach, conclusions and recommendations of TEEB" と副題のついた最終報告が明らかにされました。なお、最後の "TEEB" とはズバリ The Economics of Ecosystem and Biodiversity のことです。2006年に発表されたスターン卿による The Economics of Climate Change に合わせて命名されていることは明らかでしょう。なお、中間報告については日本語訳も日本生態系協会と住友グループにより作成されていて、『生態系と生物多様性の経済学』として入手可能です。
専門外ですので自信がなく、ややズレた意見かもしれませんが、私が「生態系と生物多様性の経済学」に関してもっとも重要なポイントと考えているのが、割引率の倫理性と生態系が破壊され生物多様性が失われた際のコストの計測です。前者は将来世代をどう考えるか次第で単純なんですが、後者は大きく分けて、機会費用 opportunity cost、取引費用 transaction cost、管理費用 management cost の3つの計測方法があり、私は機会費用を用いて十分慎重にカウントすべきであると考えています。なぜなら、生物多様性を考慮する際の観点として不可逆性は避けて通れず、すなわち、特定の生物種は長い進化の過程を経て地球に出現したものであり、生物種が一度絶滅してしまうと地球環境に関する諸条件を元に戻しても復活する保証は何らありませんから、無条件の青天井ではないものの、かなり大きなコストをかけても生物種の絶滅は回避すべきと私は考えているからです。これは割引率を小さく、コストを大きく見込むバイアスを有していることは自覚しています。要するに、現在の科学の水準を前提にすると、何らかの生物種が絶滅すると将来に何が起こるか分からないので慎重に対応すべきである、という意見です。
次に、やや私の専門分野に近づいて、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出規制と同じように、生態系と生物多様性の保護に関する問題でも先進国と途上国の対立が発生します。別の観点から、経済発展や経済的な豊かさと生態系や生物多様性の保護を含む環境とのトレードオフを考える必要があります。中間報告では、生態系と生物多様性の保護及び国連ミレニアム開発目標とのトレードオフについても考慮されていました。経済的な豊かさと生物多様性との関係を考える基礎的な概念として用いることが出来るツールのひとつは環境クズネッツ曲線です。しかし、残念ながら、私の最近の研究成果 "Estimation of Environmental Kuznets Curve for Various Indicators: Evidence from Cross-Section Data Analysis" に従えば、パラメーターの統計的有意性はそれほど高くないものの、生物多様性は購買力平価で計測した1人当たりGDPで代理される経済的な豊かさの単調減少関数でした。すなわち、経済発展に従って1人当たりGDPが増加すればするほど生物多様性はダメージを受ける可能性が示唆されています。私が書いたペーパーですから、決して影響力の大きな研究成果でありませんが、生物多様性に関しては逆U字型の環境クズネッツ曲線は成り立たない可能性が高く、生態系と生物多様性を維持するためには何らかの意図的な努力が必要であると受け止めるべきです。
最後に、生態系と生物多様性の維持を担うべき主体について経済学的に考えると、これらを公共財と受け止めれば政府の役割ですが、ビジネス・チャンスであれば企業や民間経済主体も含めて考えるべきです。日本人はどうしても政府への依存が強いんですが、例えば、という例を上げると、この『生態系と生物多様性の経済学』の研究プロジェクトの責任者であるスクデフ博士はドイツ銀行取締役で、同行グローバルマーケットセンター・ムンバイの代表だったりしますし、今年の7月に公表された TEEB for Business というリポートの Executive Summary の p.11 Table 2: Emerging markets for biodiversity and ecosystem services では認証農作物 Certified agricultural products などの2020年と2050年の市場規模が推計されていたりします。生態系と生物多様性の保護は決して政府だけに任せる問題ではなく、官民そろって取り組むべき課題であることを認識すべきです。

地球環境に関する重要かつ影響力ある会議が日本で開催されていますので、専門外ながら大胆にも、生態系や生物多様性についてエコノミストの立場から何点か考えてみました。繰返しになりますが、専門外ですので何か誤解や間違いがあるかもしれません。ご容赦ください。

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2010年10月19日 (火)

夏川草介『神様のカルテ 2』(小学館) を読む

夏川草介『神様のカルテ 2』 (小学館)

夏川草介さんの『神様のカルテ 2』 (小学館) を読みました。言うまでもありませんが、昨年11月21日付けのエントリーで取り上げた『神様のカルテ』の続編です。従って、栗原一止・榛名夫妻を主人公に、信州松本の「24時間、365日対応」をモットーにしている本庄病院や御嶽荘を舞台に物語は進みます。まず、小学館のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

医師の話ではない。人間の話をしているのだ。
栗原一止は夏目漱石を敬愛し、信州の「24時間、365日対応」の本庄病院で働く内科医である。写真家の妻・ハルの献身的な支えや、頼りになる同僚、下宿先「御嶽荘」の愉快な住人たちに力をもらい、日々を乗り切っている。
そんな一止に、母校の医局からの誘いがかかる。医師が慢性的に不足しているこの病院で一人でも多くの患者と向き合うか、母校・信濃大学の大学病院で最先端の医療を学ぶか。一止が選択したのは、本庄病院での続投だった(『神様のカルテ』)。新年度、本庄病院の内科病棟に新任の医師・進藤辰也が東京の病院から着任してきた。彼は一止、そして外科の砂山次郎と信濃大学の同窓であった。かつて"医学部の良心"と呼ばれた進藤の加入を喜ぶ一止に対し、砂山は微妙な反応をする。赴任直後の期待とは裏腹に、進藤の医師としての行動は、かつてのその姿からは想像もできないものだった。
そんななか、本庄病院に激震が走る。

ついでながら、登場人物の相関図は以下の通りです。これも小学館のサイトから直リンで引用しています。ヨソさまのサイトに置いてあるフラッシュに直リンするのは私のブログの特徴だったりします。人物名をクリックすると詳細なキャラクターが現れます。

前回の『神様のカルテ』の読書感想文の時もそうでしたし、今回も登場人物相関図を引用するのは、基本的に、「小学館が作ってくれるから引用しているだけ」というのもありますが、この小説では各々のキャラが際立っているからです。物語の舞台が病院ですから、そのまま死ぬ人と病気やケガを克服して回復する人に分かれます。おそらく、事実を少しデフォルメするだけで、どちらにも人間としてのドラマがあるんだろうと思います。しかし、自動車や電機製品のようなレディメイドの出来上がり品と違って、100人の患者がいれば100通りの治療があり、もちろん、医者と呼ばれる人間が治療に当たっています。ですから、一般化できる部分はあるいは科学的な説明が可能なのかもしれませんが、一般化できない部分で人間ドラマが生まれそうな気がします。純粋な文学作品としては、やや疑問が残らないでもない作品ですが、泣きたい人には泣けそうですし、別の観点から、ある意味で、楽しめる物語でもあります。終わり方は明らかに続編があることを示唆していると私は受け止めています。

いずれにせよ、前作と同様に老若男女すべてに受け入れられる素地を持った作品です。我が家の中学生や小学生にも読ませたいと考えています。前作は直木賞の候補作となり、本屋大賞の2位に上げられましたが、この作品もいいところに行きそうな予感がします。

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2010年10月18日 (月)

The Economist の Big Mac index に見る為替の不均衡

Big Mac index

今週号の The EconomistThe Big Mac index: An indigestible problem と題する記事で為替が取り上げられています。なお、副題の副題は Why China needs more expensive burgers だったりします。グラフは上の通りなんですが、記事を The Economist のサイトから最初の2パラだけ引用すると以下の通りです。

The Big Mac index
An indigestible problem
Why China needs more expensive burgers

A WEAK currency, despite its appeal to exporters and politicians, is no free lunch. But it can provide a cheap one. In China, for example, a McDonald's Big Mac costs just 14.5 yuan on average in Beijing and Shenzhen, the equivalent of $2.18 at market exchange rates. In America, in contrast, the same burger averages $3.71.
That makes China's yuan one of the most undervalued currencies in the Big Mac index, our gratifyingly simple guide to currency misalignments, updated this week (see chart). The index is based on the idea of purchasing-power parity, which says that a currency's price should reflect the amount of goods and services it can buy. Since 14.5 yuan can buy as much burger as $3.71, a yuan should be worth $0.26 on the foreign-exchange market. In fact, it costs just $0.15, suggesting that it is undervalued by about 40%.

ということで、今夜のエントリーではこの The Economist の記事を紹介したいと思います。
輸出業者や政治家に受けはいいものの、弱い為替もフリー・ランチではあり得ず、例えば、ということで、中国では人民元が安いためにビッグマックが非常に高額になっている、と記事では論じています。グラフに見る通り、ビッグマックに基づく購買力平価では人民元が40%も過小評価されていることになります。もちろん、その逆の国のひとつがブラジルであり、ビッグマックはお安く買える一方で、マンテガ財務大臣はブラジルがいわゆる "currency war" の潜在的な被害者であると発言している旨、記事は指摘しています。一応、我が日本もこの指標に従えば為替が過大評価されている国のひとつですが、先進国で唯一の為替介入を実施したにしては、その過大評価の幅はわずか5%に過ぎないと揶揄されています。国際社会で日本の為替介入の根拠が薄弱であると指摘される場合がありますが、その一方の好例であると私は受け止めています。
この記事では最後に、西オーストラリア大学の研究者による "The Big Mac Index Two Decades On An Evaluation Of Burgernomics" というペーパーの紹介で締めくくっています。2010年8月の刊行で、リファレンスは以下の通りです。

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2010年10月17日 (日)

あぁ落日!

クライマックス
  HE
読  売000020320 7141
阪  神201012000 6102

クライマックス・シリーズ初開催ながら、甲子園は落城です。終盤の攻防、特に、9回表の藤川投手の投球なんかを見ていると、やっぱり、メンタルなのかな、という気もします。巨人や中日と実力的に大きな差はなかったように感じていましたが、いわゆる「ここ一番」での弱さには、何か原因があるんでしょう。選手だけでなく、ベンチの采配なのかもしれません。

来年は、
がんばれタイガース!

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2010年10月16日 (土)

クライマックス・シリーズ第1戦は打てずに負ける!

クライマックス
  HE
読  売002010000 3100
阪  神010000000 151

巨人とのクライマックス・シリーズの第1ステージ第1試合、阪神はまったく打てずに負けました。
投手の方は先発の能見投手が5回3失点と、やや調子が悪かった印象ですが、一昨年のクライマックス・シリーズと違って序盤で試合がぶっ壊れるようなことはありませんでした。渡辺投手と久保田投手のリリーフ陣も何とかゼロに抑え切りました。細かな守備のミスも出ましたし、ヒット10本打たれながら3失点でしのぎ切ったんですから、まずは上首尾といえます。
しかし、問題は打線でした。巨人の1-2回の攻撃をゲッツーで抑えた後のブラゼル内野手のソロは効果的でしたが、要するにそれだけでした。8回ウラは盛り上がりを見せましたが、結局、ソロホームランの1点に抑え込まれてしまいました。
しかし、超短期決戦のために、いきなり王手をかけられたからといって悲観する必要はありません。明日、久保投手で勝って逆王手をかければいいんです。まだまだ勝負の行方は分かりません。

明日こそ、
がんばれタイガース!

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2010年10月15日 (金)

落盤事故からの救出に見られるチリ人の国民性やいかに?

我が国のメディアでも広く報じられている通り、チリ北部コピアポ近くのサンホセ鉱山の落盤事故で地下約700メートルに2か月あまり閉じ込められていた33人が24時間近くかけて無事に救出されました。私は外交官として1990年代の前半の3年間チリの首都サンティアゴにある大使館に勤務した経験があり、それなりに、チリ人の国民性や気質なんかをを肌で感じていましたので、今夜は週末前の気楽な話題として取り上げたいと思います。まず、チリ人の国民性について、朝日新聞のサイトで見かけた論調は以下の通りです。

冷静沈着、まじめ、団結…チリ人の国民性、救出劇に見た
地下約700メートルに閉じこめられた作業員33人を約22時間半で救出したチリ。当初の想定より2カ月も早い迅速な救出活動は世界を驚かせた。なぜ成功できたのだろう。
元駐チリ大使で日本チリー協会副会長の小川元(はじめ)・文化女子大教授は救出開始直後、地球の反対側に住む友人たちに祝福のメールを送った。
現地は深夜にもかかわらず、「ありがとう」とすぐに返信があった。「全国民が自分のことのように見守っている」と実感した。「チリ国民は冷静沈着な面がある。この冷静さが33人の一糸乱れぬ団結につながったのだろう」
チリに10年以上住んでいた国際協力機構研究所・上席研究員の細野昭雄さん(70)によると、チリ人は約束や時間を守る気質から「中南米の英国人」と表現されるという。
計画を準備周到に進めるまじめさも特徴で、南米で働く日本人のビジネスマンは、チリについて「仕事がやりやすい」「忍耐力があり持続的な結束力がある」と評価することが多いという。今回の救出劇を、細野さんは「合理的、組織的で、まさにチリ人の良さが発揮された」と評価する。
「国内外から注目され、大統領にとっても、絶対に失敗できない作戦だったでしょう」と話すのは、東京出身でサンティアゴ在住の商社員、佐藤剛志さん(45)。長年、首都の日本料理店で板前を務め、地元の人と接してきた。
チリは約17年間に及ぶピノチェト軍政の後も、左右両派の対立が長く続いた。中道右派のピニェラ大統領は、テレビ局オーナーなどとして知られた大富豪。有能なビジネスマンと評価される一方で、貧しい人や左派からは「エリートの大金持ち」の批判を浴びがちな存在だ。その大統領がヘルメットをかぶり、地上に戻った貧しい作業員と抱き合った。佐藤さんは「幅広い支持を得ようと、救出に全力を傾ける姿勢を見せていました」と話した。

全国紙の扱いも大きいんですが、さすがに、私の知った名前、知り合いも取材を受けているんだということが実感できました。チリに駐在していた時、私はまだ独身でまったく料理はしませんので、板前姿の佐藤さんのすぐ前のカウンターで楽しくおしゃべりしながら、ほぼ毎晩のように夕食をとっていたことを思い出します。いつの間にか商社員にご転進のようです。細野教授は長らく筑波大学でラテンアメリカ研究に携わっていらして、奥様がチリのご出身だったように記憶しています。私が外交官をしていた当時には、細野教授を指導教員と仰ぐ大学院生が専門調査員として大使館に派遣されていました。
その細野教授の見立てにある通り、チリ人は英国人的な気質を有しています。それは移民の出身によるといわれています。すなわち、俗説ながら、南米で長い国境を接するチリとアルゼンティンはともにメキシコのように混血の形ですら現地のインディオがほとんど残っておらず、逆にいえばインディオは死滅した歴史があり、欧州からの移民の8割はスペイン人である点までは同じですが、残りの2割について、チリは主として英国人に少しフランス人が来たのに対して、アルゼンティンは多くがイタリア人であったといわれています。統計的な根拠は示せないんですが、例えば、私がサンティアゴに駐在した当時の大統領はピノチェット将軍から民政移管された直後のエイルウィン氏でしたし、その内閣の財務大臣はフォクスレイ氏で、名前から判断するに2人とも英国系の移民の末裔でしょう。ついでながら、ピノチェット将軍はフランス系です。他方、私がチリにいた当時に絶大な人気を誇ったアルゼンティンのテニスプレーヤーはサバティーニ選手でした。全米オープンを1990年に制した直後だった記憶があります。私も彼女のマネをしてタッキーニのウェアを買ったりしました。いずれもイタリア系の姓です。また、「母をたずねて三千里」のマルコはジェノバから母の出稼ぎ先であるブエノス・アイレスに旅をします。最近では、サッカーのアルゼンティン代表メッシ選手は明らかにイタリア系です。
移民の出身に基づく先天的に英国人的な国民性に加え、気候や自然条件が南米の中ではそれなりに厳しいことが、後天的にチリ人の気質にも影響を及ぼしています。南米の中の相対的な話ながら、気候が厳しく自然条件に恵まれないため、チリ人はそれなりに勤勉である必要があります。地図を見れば分かりますが、チリは北が砂漠、南が南極、東がアンデス山脈、西が太平洋となっていて、隔絶された島国に近い地理を示しています。赤道直下の熱帯も含めて温暖なブラジルと違って、サンティアゴ以南では薄着で路上生活をすれば凍死する恐れがありますし、アルゼンティンに広がる肥沃なパンパのように、小麦や牧畜に適した平野も少なく、それなりに勤勉でなければ生活に困ってしまいます。
さらに、国民性だけでなく、やや経済的なアプローチも加えると、事故が起き救出が実行されたのが鉱山であるという観点も考えに入れる必要があります。というのは、チリの主要輸出品のひとつは銅のインゴットであり、私が駐在していた1990年代前半では輸出の半分近くを占めていました。銅の他にも鉱物資源は豊富で、鉱山はメインストリームの職場のひとつといえます。現在の日本で自動車工場や電機工場に勤めるのと同じです。国営銅公社をはじめとする鉱山会社への就職を希望する優秀な大学生は少なくありませんし、鉱山の現場には指導力あふれるリーダーもいれば、規律正しく勤勉な労働者もいっぱいいます。

いくつかの偶然と必然が重なった落盤事故からの救出劇だったと感じていますが、私がチリから帰国して約15年、ほとんど話題になることのない南米の国にスポットライトが当たって、やや誇張された部分は少なくないものの、日本人の中にもそれなりに親しみを感じる人が増えたんではないかと私なりに喜んでいます。

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2010年10月14日 (木)

企業物価に見るデフレの現状

本日、日銀から9月の企業物価 (CGPI) が発表されました。ヘッドラインとなる国内企業物価は前年同月比で▲0.1%の下落と、市場の事前コンセンサスであった保合いにほぼミートしました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の企業物価指数0.1%低下 円高も影響
日銀が14日に発表した9月の国内企業物価指数(2005年=100、速報値は102.8と前年同月比で0.1%低下した。自動車やパソコンなどの販売競争激化に伴う価格引き下げが影響したほか、円高も押し下げ要因になった。
同指数は企業が出荷や卸売りの段階で相互にやりとりするモノの価格を示す。調査対象の855品目のうち、下落したのは398品目で、下落品目数は前月よりも8品目減った。上昇したのは276品目だった。
品目別で下落幅が大きかったのは、情報通信機器(6.2%)、電子部品・デバイス(4.2%)、電気機器(3.4%)、輸送用機器(2.6%)など。上昇幅が大きかったのは、非鉄金属(7.4%)、鉄鋼(4.9%)、石油・石炭(3.0%)などだった。

次に、企業物価指数の前年同月比上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルは国内・輸出・輸入別の計数をプロットしており、下のパネルは需要段階別に国内品の素原材料・中間財・最終財となっています。下のパネルは内閣府の「今週の指標」 No.968 のマネだったりします。

企業物価の推移

見れば分かりますが、2007年から2008年における原油などの商品価格の大幅な上昇とその後の下落に伴って、輸入物価が乱高下する一方で、国内物価は当然ながら輸入物価にやや遅れつつもそのインパクトを生産や流通段階で吸収して、物価変動幅は小さいながらも同様の方向性を示し、最近では今年に入ってからほぼ前年同月比でゼロ近傍の上昇率を続けています。下のパネルから、物価の変動率は 素原材料 > 中間財 > 最終財 となっているのが明らかに読み取れます。当然です。ただし、ここで注目すべきであるのは、ホントは 素原材料 > 中間財 > 0 > 最終財 となっており、素原材料と中間財はプラスの物価上昇率であるにもかかわらず、最終財段階ではマイナスのデフレになっているということです。需給バランスとそれに基づく競争が反映されていると受け止めています。

資源価格のプッシュがないと国内物価がプラスの上昇率を示さず、需要段階別では最終財ほど下落率が大きいということは内需の不足を示しています。いかにして物価上昇率をプラスにするか、中央銀行の腕の見せどころであると私は考えています。

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2010年10月13日 (水)

機械受注統計から設備投資動向を読み解く

本日、内閣府から8月の機械受注統計が発表されました。ヘッドラインとなる船舶・電力を除く民需は季節調整済みの系列で前月比+10.1%増の8435億円とドカンと増えました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の機械受注、10.1%増 判断「持ち直し」に上方修正
3カ月連続プラス

内閣府が13日発表した8月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)が前月に比べて10.1%増の8435億円となった。プラスは3カ月連続。製造業、非製造業ともに大幅に伸びた。内閣府は基調判断を前月までの「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に上方修正した。
機械受注統計は工場の生産設備などの受注額を集計するもので、3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す。8月の実績は日経グループのQUICKがまとめたエコノミストの見通し中央値(前月比3.7%減)を大幅に上回った。変動が大きい携帯電話を除いたベースでも11.2%増の7900億円と堅調だった。
ただ内閣府の和田隆志政務官は記者会見で、足元の円高・株安などの不安要因を踏まえ「いい動きだが楽観できる状況ではない。1-2カ月様子を見る必要がある」との認識を示した。
業種別に受注額をみると、製造業は前月に比べて12.5%増と3カ月連続で増加した。電気機械から半導体製造装置の引き合いがあったほか、大型案件が入った鉄鋼業も好調だった。非製造業の受注額は船舶・電力を含んだベースで30.8%増えた。海外からの受注額は3.7%減の7697億円だった。
内閣府の当初調査では7-9月期の受注見通しは船舶・電力を除くベースで前期比0.8%増だった。7、8月が大きく伸びたことから、9月が前月比横ばいでも7-9月期は13.6%増に達する。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルはコア機械受注と呼ばれる船舶と電力を除く民需が青い折れ線で、その6か月後方移動平均が赤で、まら、コア機械受注からさらに携帯電話を除いたコアコア機械受注が緑の折れ線で、それぞれプロットされています。下のパネルでは、船舶を除く機械受注受注残高と、それ販売額で除した手持ち月数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

機械受注の推移

7月統計の前月比+8.8%増に続く、8月+10.1%増ですし、市場の事前コンセンサスでも▲4%近く減少するとの見通しでしたから、ちょっとびっくりなんですが、有り体にいえば、何かの特殊要因があったんだろうと私は受け止めています。コア機械受注における7月と8月の差が約770億円あるんですが、そのうち460億円超はその他非製造業で増加しています。怪しいのはこのあたりかと考えなくもありません。
従って、コア機械受注が設備投資の先行指標とはいえ、この結果をそのままの形で受け止めるのはややリスクがあります。例えば、鉱工業生産指数のうちの資本財出荷や先日の日銀短観の設備投資計画と比べて、今日の機械受注の結果は整合的ではありません。加えて、8月下旬から進行した円高の影響、一向に改善しないデフレ、内外の需要の停滞など、マクロ経済環境は確実に設備投資にはマイナスでしょうから、引用した記事にもある通り、内閣府は基調判断を前月までの「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に上方修正したようですが、このまま設備投資が順調に拡大局面に入ると楽観するのはムリがあると私は受け止めています。

機械受注についての特殊要因は統計を詳しくブレークダウンしても不明ですが、取りあえず、来月の統計の反動減がどれくらいあるかに注目したいと考えています。

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2010年10月12日 (火)

湊かなえ『夜行観覧車』(双葉社) と『往復書簡』(幻冬舎) を読む

湊かなえ『夜行観覧車』(双葉社) と『往復書簡』(幻冬舎)

湊かなえさんの『夜行観覧車』(双葉社) と『往復書簡』(幻冬舎) を立て続けに読みました。『夜行観覧車』は高橋家で起きた殺人事件、すなわち、母親が父親をトロフィーで殴って殺すという事件の真相の謎解きを中心に据えた長編ミステリです。犯人は分かっているんですが、その動機の謎に迫ります。高橋家だけでなく、高級住宅街にある向かいの遠藤家の家庭内暴力なんかも交えて、この作者独特のモノローグ形式で濃厚に描き出します。『往復書簡』は「10年後の卒業文集」、「20年後の宿題」、「15年後の補習」の3編の短編からなる作品で、これも書簡というモノローグから構成されています。
まず、私は湊かなえさんの作品は『告白』から始まって、『少女』、『贖罪』、『Nのために』と、この2冊を読むまでに発表順にすべて読んでいて、その中で『告白』が第1に指を屈すべき代表作であると考えていました。しかし、この2冊を読み終えてから、この『夜行観覧車』が最高傑作であろうと見なすようになりました。分かりやすいテーマながら、この作者ならではの濃厚な語り口で、最後に真相に達するまで、そして、真相に達してからの対処と、いずれも素晴らしい出来だと考えています。決して、高級住宅街で起こった殺人事件ののぞき見趣味ではありません。
他方、『往復書簡』もモノローグで物語を進める作者ならではの着想かもしれません。広く知られた通り、作者の湊かなえさんはアパレルメーカーに勤務の後、青年海外協力隊で2年間の南の島トンガ暮らしを経験し、その後、淡路島で教師の経験もあります。収録された短編の第1作と第2作は教師や学校の視点を踏まえており、第3作で交わされる書簡の一方の主は南の島に「国際ボランティア隊」で2年間の赴任中だったりします。いずれも、過去に起きた何らかの事件の背景を明らかにするという意味の往復書簡となっていますが、作者の人生体験を活かしているのであろうことは読み取るべきでしょう。

私の読後の感想として、『夜行観覧車』は5ツ星、『往復書簡』はやや分かりにくいので4ツ星くらい、でも、いずれもオススメです。この作者の作品は大きなハズレはないように受け止めています。

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2010年10月11日 (月)

ノーベル経済学賞はダイヤモンド教授ら3人に授賞

本日、ノーベル経済学賞がダイヤモンド教授ら3人に授賞されることが発表されました。ノーベル財団のサイト The Prize in Economic Sciences 2010 から引用すると以下の通りです。

  • Peter A. Diamond
    Born: 1940, New York, NY, USA
    Affiliation at the time of the award: Massachusetts Institute of Technology (MIT), Cambridge, MA, USA
    Prize motivation: "for their analysis of markets with search frictions"
  • Dale T. Mortensen
    Born: 1939, Enterprise, OR, USA
    Affiliation at the time of the award: Northwestern University, Evanston, IL, USA
    Prize motivation: "for their analysis of markets with search frictions"
  • Christopher A. Pissarides
    Born: 1948, Nicosia, Cyprys
    Affiliation at the time of the award: London School of Economics and Political Science, London, United Kingdom
    Prize motivation: "for their analysis of markets with search frictions"

見れば分かると思うんですが、3人とも授賞理由は for their analysis of markets with search frictions ということになっています。メディアでは失業や賃金などの雇用が規制や経済政策からどのような影響を受けるかの研究が有名であると報じられています。私は一応マクロエコノミストなんですが不勉強にして、ダイヤモンド教授の世代重複モデルの功績以外、後のお二人はよく知りません。悪しからず。私の承知しているダイヤモンド教授の世代重複モデルに関するリファレンスは以下の通りです。

このブログで取り上げた清滝教授は日本人初のノーベル経済学賞受賞を逃したようです。誠に残念です。

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2010年10月10日 (日)

所属学会の年次大会に参加する

日本地域学会ロゴ今日の午後、私の所属する日本地域学会の第47回年次大会のセッションに参加しました。昨日から明日までの3日間、六本木の政策研究大学院大学 (GRIPS) で開催されています。青山の我が家から徒歩圏内であるということもありますが、私の知り合いが環境のセッションでペーパーを出していて、そのプレゼンを聞いて、私も専門外ながら質問なんぞをして来ました。知り合いとはセッション終了後に少しお茶飲み話をしたりしました。
この地域学会は長崎大学に出向していた時に入会し、ペーパーを投稿したこともあります。長崎の経済学部の大学教授として、九州や長崎の経済に関する地域研究を志さなくもなかったんですが、東京に戻ると地域経済に対して一気に興味が失せてしまったのも事実です。学会の名称からも明らかな通り、決して経済学に特化した学会ではなく、自然科学分野も含めて、かなり学際的な色彩の強い学会ですし、何と、国際地域学会 RSAI, Regional Science Association International という国際学会の上部組織もあったりします。というか、この国際学会の日本支部だったりします。ということで、長崎から東京に戻った際にも学会を脱退することなく、引き続き、いろいろと勉強させていただいております。

帰り道に知り合いとお茶飲み話をして、明日発表されるノーベル経済学賞は清滝教授に授賞されるかもしれない、という話題になり、日本の経済学・社会科学の研究レベルも上がったもんだと、今さらながら2人して感激してしまいました。余りふさわしくない気もしますが、「お出かけの日記」に分類しておきます。

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2010年10月 9日 (土)

米国雇用統計の報道とグラフ

昨日、米国労働省から9月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から▲95千人の減少、失業率は前月と同じ9.6%となりました。ただし、民間部門の雇用者数は+64千人の増加となっています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、米国の主要紙である New York TimesWall Street Journal から関連する記事の最初の方のパラを引用すると以下の通りです。前者の報道は淡々と事実関係を、後者は米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) の対応まで含めて論じています。

Public Jobs Drop Amid Slowdown in Private Hiring
In the one-two punch long feared by many economists, hiring by businesses has slowed while government jobs are disappearing at a record pace.
Companies added just 64,000 jobs last month, a slowdown from 93,000 jobs in August and 117,000 in July, the Labor Department reported Friday. But over all, the economy lost 95,000 nonfarm jobs in September, the result of a 159,000 decline in government jobs at all levels. Local governments in particular cut workers at the fastest rate in almost 30 years.
U.S. Economy Lost 95,000 Jobs in September
America's job machine continued to sputter in September as a wave of government layoffs, including a move by cash-strapped localities to shed teachers, overwhelmed modest gains in the private sector.
The disappointing jobs report makes it almost certain the Federal Reserve will restart a bond-buying program aimed at stimulating the economy when it meets next month, and ensures job worries will remain issue No. 1 heading into the elections.
U.S. payrolls dropped by 95,000 in September as private employers added 64,000 workers, while governments shed 159,000, half of them temporary Census workers, the Labor Department said Friday. State and local governments shed 83,000 workers. The unemployment rate was unchanged at 9.6%.
But stocks rose on the report, with the Dow Jones Industrial Average gaining 57.90 to 11006.48, topping 11000 for the first time since May. The increase in private payrolls suggested the country was unlikely to slip back into recession, while the weak tenor of the report reinforced investors' belief that the Fed would take action when it meets Nov. 2 and 3.
Although some Fed officials are still resistant to the plan, top officials, including Fed Chairman Ben Bernanke, have said in recent days a bond-buying program could help to spur growth.

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルが非農業部門雇用者数の前月差増減で、赤い折れ線グラフが政府も含めた総数、水色が民間部門だけの計数です。下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期となっています。

米国雇用統計の推移

雇用者数に関する市場の事前コンセンサスでは、センサスに伴う政府の臨時雇用の削減と民間部門の増加がともに数万人でほぼ拮抗し、政府の減と民間の増とで相殺して数千人から1万人程度の減少という予想でしたが、結果は10万人近い大きなマイナスでした。上に引用した New York Times の記事にもある通り、臨時雇用されていたセンサス要員だけでなく、教員などを含めて州レベルを含めた地方政府が記録的なペースで人員削減を進めていることが原因のようです。失業率もここ1年ほどをならして見れば、昨年10月の10.1%をピークに緩やかに低下しているように見えますが、そのペースはあきれるほど緩慢です。

Comparing Recessions: Job Recovery

9月統計については地方政府の人員削減が主因で雇用者が大きく減少したといえる一方で、昨年6月を谷とする現在の米国の景気回復局面における雇用の回復が極めて立ち遅れていることは明らかです。これを示したのが上のグラフで、New York Times のブログサイトである Economix から引用しています。横軸は景気後退が始まる直前の景気の谷からの経過月数で、縦軸は非農業部門雇用者数の増減です。今回の Great Recession までの景気後退期では、量的にはせいぜい3%程度の雇用の落ち込みで、期間的にも3年くらいまでには回復していました。jobless recovery といわれた2001年リセッション後の景気回復期だけが4年を要しています。他方、直近の景気後退局面で6%を超える雇用の削減を経験した上に、現在の景気回復局面でも雇用の回復は進んでおらず、現状でも前回の景気の山と比べて5%超の雇用を失ったままであることが読み取れます。米国はまだ、日本のように人口が減少して労働力人口も減少する状態ではありませんから、雇用の増加がないと成長が大きく阻害されると考えるべきです。

いずれにせよ、政府部門を含めた雇用者数の減少もさることながら、私の目から見て、8月は+93千人の雇用増加を見た米国の民間部門が9月には+64千人と増加幅が縮小し、最初のグラフにも明らかな通り、今年4月の+241千人増から半年ほどの期間で大雑把な傾向として民間部門が増加幅を縮小させているのが気がかりです。

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2010年10月 8日 (金)

下がり始めた景気ウォッチャー調査結果と経常収支

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャー調査結果が、また、財務省から8月の国際収支が、それぞれ発表されました。景気ウォッチャー調査の現状判断DIは2カ月連続で大きく低下し、経常収支の黒字幅も縮小しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の街角景気、2カ月連続悪化 円高やエコカー補助金終了で
内閣府が8日発表した9月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比3.9ポイント低下の41.2と2カ月連続で悪化した。
エコカー補助金の終了による販売低下や生産調整、円高に輸出環境の悪化をうけ、指数を構成する家計、企業の指数が低下した。猛暑の影響で、秋物衣料の売れ行きがふるわなかった。一方、10月のたばこ値上げを見据えた駆け込み需要や夏物商品の販売は好調だった。
2-3カ月先の先行き判断指数は1.4ポイント上昇の41.4と、5カ月ぶりに改善。来年1-3月の家電エコポイント制度延長の対象外となる製品の年末までの駆け込み需要や、残暑の収まりによる秋物製品の売れ行きの持ち直しを期待する声などを反映した。
内閣府は現状判断指数の低下を踏まえ、判断を「景気は引き続き厳しいなかで、持ち直しの動きがこのところ緩やかになっている」から「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」と2カ月連続で下方修正した。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は9月25日から月末まで。
8月の経常黒字、5.8%減の1兆1142億円 貿易黒字の減少響く
財務省が8日発表した8月の国際収支(速報)によると、経常黒字は1兆1142億円で前年同月に比べ5.8%減少した。貿易黒字が15カ月ぶりに減少したことが影響し、2カ月ぶりに経常収支の黒字幅が縮小した。
貿易・サービス黒字は47.5%減の1010億円。うち貿易黒字は35.2%減の1959億円。円高や海外経済の減速を背景に、米国や欧州連合(EU)向けの乗用車などの輸出の伸びが鈍化した一方、液化天然ガス(LNG)や鉄鉱石など原燃料の輸入の伸びが大きかった。
サービス収支は949億円の赤字(前年同月は1099億円の赤字)。特許使用料の受け取りが増えたことなどで赤字幅が縮小した。
所得収支は4.4%増の1兆1075億円の黒字。海外債券、配当金などの投資収益が増加した。

次に、景気ウォッチャー調査のグラフは以下の通りです。赤い折れ線が現状判断DI、青が先行き判断DIです。影を付けた部分は景気後退期です。現状判断DIが2か月連続で大幅に低下したことから、内閣府は「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」と基調判断を下方修正しました。しかし、先行き判断DIは上昇していたりします。10-12月期を底に、来年に入ればマインドは再び上向きになる可能性が残されているのかもしれません。

景気ウォッチャー調査の推移

さらに、経常収支のグラフは以下の通りです。青い折れ線の経常収支の内訳を棒グラフで示してあり、凡例にある通り、黒が貿易収支、緑がサービス収支、赤が所得収支、黄色が移転収支です。グラフは季節調整済みの系列を取っていますので、引用した記事と少し印象が違うかもしれません。しかし、貿易収支が縮小して経常黒字が減っているのは同じです。すなわち、季節調整済みの系列で見て、8月は貿易収支が0.4兆円近く縮小しましたので、経常黒字も0.3兆円ほど減少しました。

経常収支の推移

最後に、別件で、国際エネルギー機関 (IEA) から CO2 Emissions from Fuel Combustion 2010 - Highlights が発表されています。燃料から発生したCO2について、2008年の国別ランキングのグラフを全文リポートの p.9 Figure 4. Top 10 emitting countries in 2008 から引用しています。昨年のリポートからトップは米国を抜いた中国になっています。

Top 10 emitting countries in 2008

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2010年10月 7日 (木)

そろそろ下降線をたどる景気動向指数とIMF「世界経済見通し」

まず、本日、内閣府から8月の景気動向指数が発表されました。一致指数が103.5と上昇した一方で、逆に先行指数は99.1と低下しました。また、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook の見通し編第1章と第2章が発表されました。月曜日にこのブログで取り上げた分析編の続編です。まず、景気動向指数について日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気先行指数2カ月連続マイナス 8月
内閣府が7日に発表した景気動向指数(2005年=100)は、景気に対し数カ月先に動く先行指数が前月に比べ0.9ポイント低い99.1となった。急激な円高や株安を背景に、マイナスは2カ月連続。2カ月以上続けて低下したのはリーマン・ショックの影響が残る09年2月以来となる。
先行指数の内訳をみると、中小企業売り上げ見通しDIが前月と比べ8.9ポイント急落したほか、消費者態度指数も0.9ポイント低下した。日経商品指数や東証株価指数といった市況に関する指標もマイナスに寄与した。
一方で景気の現状を示す一致指数は前月比0.5ポイント高い103.5となり、17カ月連続で上昇。比較可能な1980年以降のプラス期間の最長を更新し、内閣府は11カ月連続で「改善を示している」との基調判断を維持した。
ただ一致指数の内訳をみると、猛暑の冷房需要を反映した大口電力使用量や商業販売額が下支えした側面が強い。逆に鉱工業の生産指数は前月比0.3%、生産財の出荷指数は0.7%それぞれ低下した。内閣府は「生産面が少し弱含んでおり、来月以降の動向を注視する必要がある」と説明している。
景気の動きに遅れて反映される遅行指数は、雇用や家計の消費支出が上向き、前月比0.4ポイントプラスの87.8だった。

次に、景気動向指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは赤い折れ線がCI一致指数、水色が先行指数です。下のパネルの緑の折れ線はDI一致指数です。いずれも影を付けた部分は景気後退期を表しています。

景気動向指数の推移

グラフを見れば明らかですが、8月まで一致指数は傾きが緩やかになりつつも上昇を続けている一方で、先行指数は明らかにピークアウトして低下局面に入っています。エコカーの補助金終了間際の駆込み需要が8月まであったものの、9月7日付けまでで補助金受付は終了しました。減税はまだ残っているにしても、補助金ほどのインパクトはありません。もちろん、ディーラー各社による独自インセンティブが自動車需要を下支えする可能性もありますが、それも本来の補助金の締切である9月末を大きく越えるとはとても思えません。また、自動車に比べて単価で大きな違いはありますが、タバコが10月から値上げされる駆込み需要も考えられます。従って、何度か繰り返した私の足元から目先の景気観ですが、消費は8月をピークとして9月から下がり始め、特に10月はドカンと下がる、と考えるべきです。生産は一部にこれを先取りした動きを示しています。また、昨今の円ドル為替を見ている限り、この消費の動きを打ち消すような輸出の増加を期待するのはムリな気がします。追加の経済対策などによる財政金融政策でどこまで支えられるかも不透明です。日銀の追加緩和策は一昨日のブログで取り上げましたが、政府の経済対策については、昨日、民主党から海江田経済財政担当大臣に対して総額4.8兆円程度の「円高・デフレ対応緊急経済対策」が手交されたところです。要するに、現在すでに低下を初めているCI先行指数に見られるように、8月まで上昇したCI一致指数も9月以降は低下する可能性が高く、特に、10月は大きく低下すると受け止めています。

Latest IMF Projections

ということで、話題を国際通貨基金 (IMF) の「世界経済見通し」 World Economic Outlook に転じると、大雑把に、日本を含めて今年2010年の成長率が上方改定された一方で、来年2011年が下方改定されています。中でも、米国は今年も来年も下方改定されています。上の総括表の通りです。なお、上の総括表をクリックすると、全文リポートの p.2 Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections に示された詳細な総括表が別画面で開きます。ラインハート教授とロゴフ教授の一連のペーパーで示された通り、金融危機後の景気回復のペースは遅々として進まず、先進諸国の失業率は2015年になっても6%を超えたままであることが p.10 Figure 1.8. Prospects for Near-Term Activity に示されています。以下のグラフの通りです。

Figure 1.8. Prospects for Near-Term Activity

最後に、専門外ながら、北海道大学の鈴木教授とパーデュー大学の根岸教授にノーベル化学賞が授賞されました。誠におめでとうございます。もうすぐ、日本時間8時にノーベル文学賞の発表です。今年こそ村上春樹さんに期待しています。

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2010年10月 5日 (火)

日銀金融政策決定会合の結果を考える

昨日から開催されていた日銀の金融政策決定会合において、景気判断が「改善の動きが弱まっている」と下方修正されるとともに追加緩和策が決定され、「包括的な金融緩和政策」の実施についてが発表されました。まず、白川総裁会見前の第1報の記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

日銀追加緩和、実質ゼロ金利に 資産買入基金5兆円
政策金利0.0-0.1%に下げ 円高阻止狙う

日銀は5日に開いた金融政策決定会合で、政策金利を現状の0.1%から0-0.1%に引き下げ、4年3カ月ぶりに事実上のゼロ金利政策を導入する追加金融緩和策を決めた。国債やコマーシャルペーパー(CP)、社債、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)などの多様な資産を5兆円規模で購入する「資産買入基金」も新たに創設するなど「包括的な金融緩和政策」を打ち出した。世界経済の減速や長引く円高で景気の下振れリスクが高まったと判断。物価の安定が展望できる情勢になるまで実質ゼロ金利を継続する方針も明確に示した。
日銀の白川方明総裁が5日午後3時半をめどに記者会見を開き、今回の追加緩和策について詳しい決定理由などを説明する。
日銀は当初、期間3-6カ月の資金を金融機関に低利融資する「固定金利オペ(公開市場操作)」の拡充を軸に検討してきた。ただ日銀内では「円高阻止やデフレ脱却への強い姿勢を市場に示すため、もっと思い切った措置を講じるべきだ」との意見が強まり、より強力な緩和手段を導入する必要があるとの判断に傾いた。
今回決めた5兆円の購入資産については、買い取り開始から1年後をメドに、国債と国庫短期証券が合計3.5兆円程度、CPと資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)、社債は合計1兆円程度になるように買い取りを進める。創設する基金の規模は、今回購入を決めた5兆円に、固定金利オペの融資枠である30兆円を加えた35兆円程度に設定する方向で検討する。
米連邦準備理事会(FRB)は11月2-3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、国債買い増しを軸とする追加緩和に動くとの観測が強く、一段と円高・ドル安が進みかねないとの観測も日銀に判断を急がせた。資金供給手段の拡充で広い意味での「量的緩和」を進めれば、「日銀はFRBよりも金融緩和に消極的だ」との見方が薄れ、円高傾向に歯止めがかかりやすくなると判断した。
日銀は思い切った追加緩和を決断した背景として、7月に示した景気見通しよりも「成長率は下振れて推移する可能性が高い」と指摘。「米国経済を中心とする不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにはなお注意が必要」との判断を示した。

第1報の記事にも明らかですが、日銀の発表文書から今回の追加緩和策のポイントを上げると以下の3点となります。

  1. 金利誘導目標の変更
    無担保コールレートを0-0.1%に。
  2. 「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の明確化
    物価安定=デフレ脱却まで実質ゼロ金利政策を継続。
  3. 資産買入等の基金の創設
    国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託 (ETF)、不動産投資信託 (J-REIT)など多様な金融資産の買入のためにバランスシート上に基金を創設。

市場の反応は以下の通りです。日経新聞のマネー欄から引用したグラフです。上のパネルは日経平均株価、下は円ドル相場です。いずれも今日の日中の取引をプロットしてあります。

日経平均株価と円ドル相場の推移

株価は9500円台を回復し、円ドル相場も円安に振れています。もっとも、為替相場はすぐに戻ってしまいました。本日開催されていた景気討論会などでも、「円高が不安材料」との意見が大勢だったようですから、一時的ながら市場には評価されたのであろうと私は受け止めています。ただし、為替については来月の FOMC で決定されるであろう米国の緩和策との見合いで、現時点で評価を下すのは難しい気もします。ひょっとしたら、欧州も含めて世界中で近隣窮乏化策の域に入っているのかもしれません。

日米中央銀行のバランスシート

金利については米国連邦準備制度理事会 (FED) と歩調を合わせて実質ゼロ金利に引き下げ、さらに買取基金をバランスシートに乗せるということですが、そうであるなら、バランスシートの規模が問題となります。上のグラフは2008年以降の日米中央銀行のバランスシートですが、2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻から米国が猛烈な勢いでバランスシートを拡大している一方で、我が国ではほとんどバランスシートは手つかずです。このあたりを指して「日銀は金融緩和に消極的」とみなされる場合もあります。100兆円を超える現状にネットで5兆円の金融資産買入のための基金を上乗せしても、ほぼバランスシートを2倍にした FED とは規模が違います。福井総裁の時代には当座預金残高を30-35兆円膨らませた実績もあります。要するに、5兆円ぽっちの今回の追加緩和策は規模として十分かどうか疑問が残ります。国債買取については、いわゆる日銀券ルールの外数として処理されるようですから、今後、さらに増加させる余地があるのかもしれませんが、もしそうだとすれば、政策を小出しにしている印象が残ります。
加えて、時間軸については、すでに前の福井総裁の時に「早過ぎる引締め転換」を経験した上に、今回、ただし書きがあり、「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検」ということになっています。しかし、デフレ解消プロセスを考えると物価上昇に先行して資産価格の上昇が実現しますので、これを「金融面での不均衡の蓄積」と捉えると、時間軸コミットメントは実は全くの無効、と私は受け止めています。おそらく、今回もデフレ脱却の前に資産価格の上昇に伴って「早過ぎる引締め転換」がなされる可能性が極めて強いこと、しかも、日銀はそれを明白に意図していることを指摘しておきたいと思います。

最後に、実質ゼロ金利ということですが、米国にならって政策金利が0-0.1%のレンジになりました。米国ではMMFが決済に用いられる比率が無視できないことから、ファンド・マネージャーの手数料分はプラス金利にする必要があり、ホントのゼロ金利が不可能なんですが、日本ではMMFが決済に用いられる比率が無視できますから、ホントのゼロ金利にすることも可能です。単純に米国にならったのか、米国のMMFについて日銀が不勉強なのか、それとも、米国のMMFについて日本の金融界が不勉強であると高をくくったのか、真意は測りかねます。

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2010年10月 4日 (月)

国際通貨基金「世界経済見通し」分析編の財政再建を考える

やや旧聞に属する情報ですが、9月30日に国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook 分析編第3章と第4章が発表されています。まず、章別のタイトルは以下の通りです。

自分の興味の範囲で申し訳ありませんが、第4章の金融危機と貿易への効果については割愛し、今夜のエントリーでは第3章で焦点を当てられている財政再建 (fiscal consolidation) とマクロ経済へのダメージについて簡単に取り上げたいと思います。

Figure 3.2. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation on GDP and Unemployment

まず、上のグラフはリポートの p.7 Figure 3.2. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation on GDP and Unemployment から引用しています。見れば分かると思うんですが、短期におけるGDP比1%の財政再建を実施した場合の成長率と失業率への contractionary な影響です。大雑把に、成長率を▲0.5%ポイント引き下げ、失業率を+0.3%ポイント引き上げると試算されています。凡例にある通り、破線は1標準偏差の信頼区間を示しています。

Figure 3.5. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation: Taxes versus Spending

もちろん、財政再建といってもいろんな手法があり、上のグラフはリポートの p.11 Figure 3.5. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation: Taxes versus Spending から引用していますが、成長率と失業率へのインパクトについて、支出削減と増税でどのように異なるかを示しています。青が増税によるGDP比1%の財政再建を示すのに対して、赤は支出削減を表しています。支出削減の方が成長や失業率に対する contractionary なインパクトが小さいことが読み取れます。このブログでも何度か取り上げたペロッティ教授とアレジーナ教授の研究成果とほぼ整合的である一方で、逆の場合は減税よりも政府支出増の方が財政乗数が大きいとされているのに対して非対称的であると受け止めています。
さらに、GIMF モデルのシミュレーションによる分析もいくつかあります。例えば、財政再建により金利が低下する可能性があり、すでにゼロ金利政策を取っていて、ゼロ金利のフロアがある場合は財政再建によるダメージが大きい点については、p.18 の Figure 3.11. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation: GIMF Simulations で取り上げられており、また、1国だけでなく世界規模で財政再建が実施される場合の分析も、カナダを例に取って p.19 の Figure 3.12. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation: GIMF Simulations で焦点が当てられています。
また、リポートの pp.19-20 では財政再建の長期的な経済効果を論じており、財政赤字削減に伴って金利が低下し、貯蓄の増加による民間投資の増加に基づく成長の促進の効果も見込める、としており、当然ながら、強く財政再建を推奨する立場からの議論となっています。

10年ほど前にキワモノで「ネバダ・リポート」なるトンデモがこともあろうに国会質問で取り上げられたこともありましたが、確かにある意味で、先進国の中で財政破綻する確率が最も高い国のひとつは日本なのかもしれません。でも、需要不足の現在の日本にどこまで財政再建が必要かどうかは疑問なしとしません。私はそういうタイプのエコノミストです。

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2010年10月 3日 (日)

国勢調査をインターネット回答する!

センサスくん一昨日の10月1日から国勢調査が始まっています。国勢調査は5年に1度ですが、今年は10年に1度の大規模調査の方です。左の画像は「センサスくん」なるイメージキャラクターで、20年前から統計局で使っているらしいです。別途、シンボルマークもあるようです。私は不勉強にして両方ともまったく知りませんでした。なお、画像は統計局のサイトから引用しています。
当然ながら、我が家にも調査票が届き、原則として郵送で回答することとなっていますが、東京都の場合はインターネットでの返信が可能なようなので、私は今日の午前中に回答を済ませました。我が家は私と女房が昭和生まれで、子供達は平成生まれですから、国際化された現代社会の中でもあり、西暦で数える方が便利なんですが、昭和と平成で記入せねばならないのは面倒な限りです。私のような左翼の人間からすれば、いっわゆる「君が代・日の丸法」の悪い点が出ているような気がします。それから、もうひとつ困ったのが、この夏まで私が長崎に2年間の単身赴任をしていたため、我が家の中では私だけが現在の住所に1年未満の居住歴で、しかも、5年前は現在の同じ住まいに居住していた、という分かりにくい状態になっています。でも、そのあたりが統計局からすれば重要なんだろうという気もしないでもありません。

私のような官庁エコノミストは統計に頼りっきりですので、統計作成には大いに協力的ではあるんですが、役所のやることは何ごとによらず、役所のためなのか、国民のためなのか、常に問いかける必要がありそうな気がします。一応、久し振りにトリビアな日記に分類しておきます。

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2010年10月 2日 (土)

おにいちゃんの中学校の体育祭に行く

さすがの猛暑・酷暑もとうとう終わりを告げ秋の気配漂う中、今日は我が家のおにいちゃんが通う中学校で体育祭がありました。少し雲が広がる時もありましたが、まずまずの秋晴れの下、男子ばかりの中学生の元気いっぱいの体育祭でした。
我が家は運動系はサッパリで、おにいちゃんも下の子も我が家のDNAはしっかり受け継いでいるんですが、我が子が活躍する場面を見るというよりも、成長の過程のひとつのイベントを記録するために出かけました。ということで、下の写真は2年生全員参加の棒引きと桜組の応援席です。「桜組」なんて、分かる人にしか分からないかもしれません。

2年生の棒引き

桜組の応援席

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2010年10月 1日 (金)

雇用は実に緩慢なペースでしか改善せず、消費者物価はデフレを続ける

本日、総務省統計局から失業率などの労働力調査が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が、さらに、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ発表されました。いずれも8月の統計です。失業率が前月から0.1%ポイント、また、有効求人倍率も前月から0.1ポイント、それぞれ改善は示しましたが、雇用指標は実に緩慢にしか改善を示していない一方で、消費者物価は依然としてデフレから脱却する糸口さえ見えません。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

失業率5.1%に改善 8月、雇用環境はなお厳しく
有効求人倍率、0.54倍に上昇

総務省が1日発表した8月の完全失業率(季節調整)は5.1%と前月に比べ0.1ポイント下がった。改善は2カ月連続。勤め先の都合による離職などが減り、完全失業者数が減った。厚生労働省が同日まとめた有効求人倍率(同)は前月から0.01ポイント上昇し0.54倍。ただ、就業者数が減少に転じたほか、円高による影響や海外経済の先行きも不透明で、雇用環境の厳しさは続く見通しだ。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。8月の完全失業者は337万人と前年同月に比べ24万人減った。
男女別の失業率は男性が5.4%と0.1ポイント低下、女性も4.6%と0.1ポイント下がった。年齢別では15-24歳の失業率が0.8ポイント改善したものの、8.3%となお高水準。25~34歳も6.3%で、若い世代ほど仕事に就きにくい状況にある。
就業者数は18万人減の6278万人で2カ月ぶりに減少に転じた。業種別にみると、医療・福祉は654万人と23万人増える一方、建設業が30万人減の496万人、職業紹介や労働者派遣業を含むその他のサービス業も22万人減の453万人となった。
仕事を求めている人に1人当たりで何件の求人があるかを示す有効求人倍率は4カ月連続で上昇した。8月は求職者数が前月比0.3%増える一方で、求人数も1.7%増えた。新規求人倍率は0.88倍と0.01ポイント上昇。建設、製造、運輸などすべての主要産業で新規求人数が前年同月比でプラスに転じた。
ただ、厚労省は若い世代の失業率が高いことなどを理由に基調判断を「雇用情勢は持ち直しの動きが見られるが依然として厳しい」と8カ月続けて据え置いた。
消費者物価1.0%低下 8月、デフレ状況続く
18カ月連続マイナス

総務省が1日発表した8月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.1となり、前年同月に比べて1.0%低下した。低下幅は前月に比べ0.1ポイント縮小したものの、18カ月連続でマイナスとなった。ガソリン価格の上昇が鈍化したほか、食料や家電製品の価格下落が続いた。依然として物価の下落が続くデフレの状況が続いている。
生鮮食品を含めた物価の総合指数は前年同月比で0.9%低下。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)も1.5%下がった。ともに低下幅は前月と変わらなかった。円高の影響について、総務省は「はっきりとした傾向は見られない」としている。
品目別でみると、生鮮食品を除く食料の値段が1.3%下落。食用油やビスケットの価格下落が目立った。激しい値下げ競争が続く家電では、薄型テレビが33.2%、デスクトップ型パソコンも32.0%それぞれ下がった。
エネルギー価格は4.3%上昇し、前月に比べて上昇幅が0.6ポイント拡大した。ガソリン価格の上昇幅は縮小したが、電気料金が値上がりした影響が出た。
物価の先行指数となる東京都区部の9月のCPI(中旬速報値)は生鮮食品を除く総合指数で前年同月比1.0%低下した。食料とエネルギー価格を除いた総合指数は1.3%下がった。

今夜はお仕事の都合により少し遅くなりましたので、簡単に済ませたいと思います。まず、雇用指標のいつものグラフは以下の通りです。一番上のパネルが失業率、真ん中が有効求人倍率、下が新規求人数です。いずれも季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期です。失業率が遅行系列、有効求人倍率が一致系列、新規求人数が先行系列と見なされています。いずれも改善の方向に進んでいるものの、極めて緩慢な動きしか示しておらず、モメンタムではなくレベルを見ても、失業率もまだ5%を超えていれば、有効求人倍率も0.5を少し超えた程度と、いずれも極めて低いままで、特に私のような雇用を重視するエコノミストの目からは、経済政策の目標として望ましい水準とかけ離れているように受け止めています。

雇用指標の推移

産業別の雇用者数について、季節調整していない原系列の計数を見ると、下のグラフの通りです。ほぼ、前年同月差でマイナスを脱しつつあるところであり、公共投資の減少のために建設業はマイナスを続ける一方で、製造業でもまだプラスには転じることなく、金融・保険業と医療・福祉が雇用の増加に寄与しています。

産業別雇用者数の増減

最後に、消費者物価はどうしようもなくデフレが続いています。10月にはタバコ価格引上げでプラスの寄与が見込まれていますが、下のグラフを見ても分かる通り、ここ2-3か月でプラスの寄与を示しているのはエネルギーだったりします。金融政策とその政策目標である物価について、我が国は先進国の中でも特異な位置を占めているのかもしれません。

消費者物価上昇率の推移

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