昨日のエントリーはハッピーハロウィン AOYAMA を取り上げてしまったんですが、実は、昨日、いろいろと重要な経済指標が発表されていました。経済産業省から鉱工業生産指数、総務省統計局の労働力調査や厚生労働省の職業安定業務統計の雇用統計、総務省統計局の消費者物価指数などです。いずれも9月の統計です。なお、ついでながら、米国商務省から7-9月期の米国GDP統計も発表されています。いつもの日経新聞の記事、グラフ、簡単な私の論評の順で以下の通り取り上げたいと思います。まず、鉱工業生産指数について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
景気、足踏み感一段と 鉱工業生産4カ月連続低下 9月1.9%低下
基調判断「弱含み傾向」
景気の足踏み感が一段と強まってきた。経済産業省が29日発表した9月の鉱工業生産指数は前月比で1.9%の低下と4カ月連続で悪化。総務省が発表した9月の完全失業率は5.0%に小幅改善したものの、家計の消費支出は前年比で横ばいにとどまった。円高の悪影響に加え、エコカー補助金などの政策効果が途切れたため。米国や中国などの成長鈍化もあって、昨年春から回復を続けてきた国内景気は転換点を迎えている。
経済産業省が29日発表した9月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は92.5と、前月比1.9%低下した。前月を下回るのは4カ月連続で、リーマン・ショック後の2008年10-09年2月以来の長期の低下となった。エコカー補助金の終了や輸出の鈍化が企業の生産活動に影響を与えている。
9月の鉱工業生産指数は事前の市場予測(中央値で0.6%低下)を大幅に下回った。経産省は基調判断を前月までの「生産は横ばい傾向で先行きは弱含み」から、「弱含み傾向」に下方修正した。「弱含み」の判断は08年8月以来となる。
エコカー補助金終了の影響で自動車など輸送機械工業が前月比4.2%減と5カ月連続でマイナス。オーストラリアや中南米向けの乗用車の生産も振るわなかった。自動車の減産が波及し、自動車タイヤや工業用ゴム製品などを含む「その他工業」も5.4%減少した。
家電エコポイントが継続中の液晶テレビや、新機種を発売した携帯電話など情報通信機械工業は6.5%増加した。
今後の需要を見込んだ液晶テレビの在庫増などがあり、在庫指数は0.2%上昇。上昇は2カ月連続。出荷指数は前月比0.7%低下した。
9月が大幅なマイナスとなったことで、7-9月期の鉱工業生産指数は93.9と、前期(4-6月期)に比べて1.9%低下した。四半期ベースで指数がマイナスになるのは09年1-3月期以来6四半期ぶりとなる。
製造工業生産予測指数によると、10月は前月比3.6%低下、11月は反動もあって1.7%上昇する見込み。企業の生産活動は一段と弱含む見通しだ。
いつものグラフは以下の通りです。上から、鉱工業生産指数の推移、輸送機械を除く資本財出荷の推移、電子部品・デバイスの在庫率の推移、四半期データでみた在庫循環図です。いずれも季節調整済の系列で、影をつけてある期間は景気後退期です。
生産については、4か月連続で減産となり、さらに、製造工業予測指数で見て10月も減産が予定されていることから、5か月連続で鉱工業生産指数が低下するのはほぼ確実といえます。世界経済の減速に円高が加わって輸出が振るわず、家電エコポイントはもう少し残るもののエコカー補助金が9月初めに終了して政策効果も剥落しつつあります。資本財出荷も横ばいとなり、設備投資需要も停滞していることがうかがえます。先月から注目している電子・デバイス産業の在庫も調整が始まる水準に達しつつあるように見受けられますし、在庫調整に関しては電子・デバイス産業は製造工業全体の先行指標ですから注視する必要があります。在庫循環はようやく第1象限に戻りましたが、ここ数四半期は大きく循環図が外を回って、以前の在庫循環に比べて振幅が大きくなったことが示唆されています。
次に、雇用統計について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
完全失業率5%に改善9月、医療・福祉などけん引
先行き不透明で雇用環境は依然厳しく
総務省が29日発表した9月の完全失業率(季節調整)は5.0%となり、前月比で0.1ポイント下がった。改善は3カ月連続。女性を中心に医療・福祉などで就業者が増えた。厚生労働省が同日まとめた有効求人倍率(同)は前月比で0.01ポイント上昇の0.55倍。ただ円高の影響や海外経済の先行き不透明から企業は新規採用に慎重で、雇用環境は厳しい。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち職に就いていない人の割合。9月の完全失業者は340万人と前年同月に比べて23万人減った。男性の完全失業率が5.5%と前月比0.1ポイントの上昇に転じた一方、女性の失業率は0.3ポイント低下の4.3%だった。
厚労省は足元の雇用情勢について「持ち直しの動きがみられるものの、依然として厳しい状況にある」と基調判断を据え置いた。企業の生産活動が弱含みの傾向で、改善が続くかは予断を許さない状況だ。
就業者数は前年同月に比べて14万人増の6309万人となった。医療・福祉が引き続き好調だったため。製造業も5万人増と2008年4月以来の増加に転じた。一方で建設業と職業紹介や労働者派遣業を含む、その他のサービス業などは減った。
ハローワークで仕事を求める人に、1人当たり平均で何件の求人があるかを示す有効求人倍率は5カ月連続で上昇した。都道府県別では福井県が最も高く、0.86倍だった。最低は沖縄県で0.33倍。
雇用情勢の先行きを示すとされる新規求人倍率(季節調整値)は前月から0.03ポイント改善の0.91倍となった。
いつものグラフは以下の通りです。上から、失業率、有効求人倍率、新規求人数、産業別雇用者数の前年同月差増減です。一番下のグラフだけは季節調整していない原系列の前年同月差増減ですが、上の方の3枚は季節調整済の系列です。
雇用については、極めて緩慢なペースながら回復は示しています。しかし、この緩やかなペースでは雇用の回復はほとんど実感されず、雇用の改善が所得の増加につながり、所得増が家計部門の消費を刺激するという景気拡大期の好循環が実現されない恐れがあると私は受け止めています。
次に、消費者物価について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
消費者物価1.1%低下 9月、家電の下落続く
総務省が29日発表した9月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.1となり、前年同月に比べて1.1%低下した。低下幅は前月に比べ0.1ポイント拡大し、19カ月連続のマイナスとなった。家電製品が下落しているほか、ガソリン価格の上昇も鈍っており、物価が持続的に下落するデフレが続いている。
生鮮食品を含めた物価の総合指数は前年同月比で0.6%低下。生鮮野菜の値上がりで低下幅は0.3ポイント縮小した。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)は1.5%低下した。低下幅は前月と変わらなかった。
品目別でみると、電気冷蔵庫など家庭用耐久財が前年同月と比べて10.1%下落。値下げ競争が激しいデジタル家電では、薄型テレビが33.9%、デジタルカメラが37.1%それぞれ下がった。
エネルギー価格は前年同月に比べ3.7%上昇したが、前月に比べた上昇幅は0.6ポイント縮小した。灯油やガソリン代の上昇が鈍化傾向にある。
物価の先行指数となる東京都区部の10月のCPI(中旬速報値)は、たばこ増税の影響で低下幅が大幅に縮小。生鮮食品を除く総合指数では、前年同月比0.5%低下となり、下げ幅は0.5ポイント縮小した。食料とエネルギー価格を除いた総合指数は0.6%の低下だった。
いつものグラフは以下の通りです。折れ線グラフは青が生鮮食品を除く全国のコアCPIの前年同月比上昇率、赤が全国のコアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIです。棒グラフは全国コアCPI前年同月比に対する寄与度となっています。
消費者物価のうち、東京都区部のマイナス幅が縮小したのには驚きました。生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比下落幅が9月の▲1.0%から10月には▲0.5%に大きく縮小しました。総務省統計局の「追加参考資料」によれば、たばこの寄与度が+0.20%、傷害保険が0.13%あるようですから、これは全国CPIの先行指標となります。特に、たばこは東京に比べて全国ではウェイトが約1.5倍ありますから、10月の全国では寄与度で+0.4%程度見込めることになります。もしも、総務省統計局からこの東京都区部の消費者物価統計が日銀に流れていたのであれば、日銀「展望リポート」の強気な物価見通しも一部に理解できる部分があるかもしれませんが、それはなかろうと私は考えています。それはともかく、たばこや傷害保険料といった制度的な要因を別にすれば、まだまだ深刻なデフレが続いていることは明らかんです。
最後に、米国GDP成長率について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
米GDP年率2.0%成長 7-9月、景気回復力弱く
米商務省が29日発表した2010年7-9月期の米実質国内総生産(GDP、速報値、季節調整済み)は、前期に比べて年率換算で2.0%増加した。個人消費が比較的好調だったことで、5四半期連続でプラスを維持した。ただ米経済の実力を示す潜在成長率を下回っており、米景気の回復力の弱さが改めて浮き彫りになった。
実質GDP増加率は市場予測の平均(2.0%)と同じだった。
GDP発表を受け、米連邦準備理事会(FRB)は11月2-3日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で追加金融緩和を議論する。
昨年10-12月期には5.0%増と高い成長率を記録していたが、今春以降は経済活動の鈍さや経済対策の効果縮小などを受け、2%程度の成長率にとどまっている。
今回、全体を押し上げたのはGDPの約7割を占める個人消費。前期比年率で2.6%増となり2006年10-12月期以来の高い伸び率となった。サービス支出が増えたことが主因だが、米失業率は9%台後半で高止まりしており持続性には課題を残す。
企業の設備投資は9.7%増。前期(17.2%増)に比べると増加率は縮小したが、3期連続のプラスを維持した。
一方、住宅投資は29.1%減となり、経済成長の足を引っ張った。住宅市場は米政府の減税などで一時は持ち直す兆しもあったが、需要の弱さが改めて鮮明となった。
さらに、輸出から輸入を差し引いた「純輸出」もGDPを大きく押し下げる要因として働いた。輸出は5.0%増となり、3期連続でプラス幅が縮小。一方、輸入は17.4%増となり、引き続き高い伸び率を維持したことが背景。オバマ政権は5年間で輸出を倍増する目標を掲げているが、輸出の勢いにも陰りがみられる。
グラフは以下の通りです。季節調整済の系列で、前期比年率成長率をプロットしています。
米国GDP成長率は単に潜在成長率と比較して低めの成長率にとどまった、というだけでなく、引用した記事にもある通り、これだけドル安になりながら純輸出の寄与がマイナスだったり、消費は増えたものの、これをサポートする雇用が改善していないことから、持続性に疑問があったりと、成長率の数字の低さにとどまらない内容の悪さも勘案し、米国経済の先行きに対する悲観的な雰囲気をもたらしています。来週早々の連邦公開市場委員会 (FOMC) で追加的な金融緩和策がとられるものと多くのエコノミストは想像しています。
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