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2010年10月 4日 (月)

国際通貨基金「世界経済見通し」分析編の財政再建を考える

やや旧聞に属する情報ですが、9月30日に国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook 分析編第3章と第4章が発表されています。まず、章別のタイトルは以下の通りです。

自分の興味の範囲で申し訳ありませんが、第4章の金融危機と貿易への効果については割愛し、今夜のエントリーでは第3章で焦点を当てられている財政再建 (fiscal consolidation) とマクロ経済へのダメージについて簡単に取り上げたいと思います。

Figure 3.2. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation on GDP and Unemployment

まず、上のグラフはリポートの p.7 Figure 3.2. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation on GDP and Unemployment から引用しています。見れば分かると思うんですが、短期におけるGDP比1%の財政再建を実施した場合の成長率と失業率への contractionary な影響です。大雑把に、成長率を▲0.5%ポイント引き下げ、失業率を+0.3%ポイント引き上げると試算されています。凡例にある通り、破線は1標準偏差の信頼区間を示しています。

Figure 3.5. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation: Taxes versus Spending

もちろん、財政再建といってもいろんな手法があり、上のグラフはリポートの p.11 Figure 3.5. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation: Taxes versus Spending から引用していますが、成長率と失業率へのインパクトについて、支出削減と増税でどのように異なるかを示しています。青が増税によるGDP比1%の財政再建を示すのに対して、赤は支出削減を表しています。支出削減の方が成長や失業率に対する contractionary なインパクトが小さいことが読み取れます。このブログでも何度か取り上げたペロッティ教授とアレジーナ教授の研究成果とほぼ整合的である一方で、逆の場合は減税よりも政府支出増の方が財政乗数が大きいとされているのに対して非対称的であると受け止めています。
さらに、GIMF モデルのシミュレーションによる分析もいくつかあります。例えば、財政再建により金利が低下する可能性があり、すでにゼロ金利政策を取っていて、ゼロ金利のフロアがある場合は財政再建によるダメージが大きい点については、p.18 の Figure 3.11. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation: GIMF Simulations で取り上げられており、また、1国だけでなく世界規模で財政再建が実施される場合の分析も、カナダを例に取って p.19 の Figure 3.12. Impact of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation: GIMF Simulations で焦点が当てられています。
また、リポートの pp.19-20 では財政再建の長期的な経済効果を論じており、財政赤字削減に伴って金利が低下し、貯蓄の増加による民間投資の増加に基づく成長の促進の効果も見込める、としており、当然ながら、強く財政再建を推奨する立場からの議論となっています。

10年ほど前にキワモノで「ネバダ・リポート」なるトンデモがこともあろうに国会質問で取り上げられたこともありましたが、確かにある意味で、先進国の中で財政破綻する確率が最も高い国のひとつは日本なのかもしれません。でも、需要不足の現在の日本にどこまで財政再建が必要かどうかは疑問なしとしません。私はそういうタイプのエコノミストです。

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