« 先行き微妙な機械受注と上昇に転じた国内企業物価 | トップページ | 10月のたばこ値上げのその後の帰結やいかに? »

2010年11月12日 (金)

来週発表の7-9月期GDP1次QEは政策効果の駆込み需要で大幅なプラス成長か?

内閣府による来週11月15日の発表を前に、1次QEに必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから7-9月期の1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回の2次QEはいきなり「過去の数字」とみなされる可能性があることから、可能な範囲で10-12月期に関する見方を取ったつもりですが、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.6%
(+2.5%)
10-12月期以降は、景気対策効果の一巡、輸出の増勢鈍化を背景に、足踏み局面に入る見通し
みずほ総研+0.7%
(+2.7%)
秋以降は個人消費が弱含む中で景気は全体として停滞感を強めている
ニッセイ基礎研+0.5%
(+2.2%)
10-12月期は輸出の低迷が続く中、駆け込み需要の反動減により民間消費が大きく落ち込むことが見込まれるため、マイナス成長に転じる可能性が高い
第一生命経済研+0.9%
(+3.6%)
輸出の減速が続くなか、個人消費で大幅な反動減が予想されることから、10-12月期は大幅なマイナス成長になる可能性が高い
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.7%
(+2.9%)
4四半期連続でプラス成長となり、伸び率も高めになったと見込まれる
三菱総研+0.4%
(+1.7%)
4四半期連続のプラス成長を予測
三菱東京UFJ銀行+0.7%
(+2.9%)
基調としては、足元の景気は減速傾向
みずほ証券リサーチ&コンサルティング+0.7%
(+2.8%)
続く10-12月期はマイナス成長の可能性が高い
伊藤忠商事+1.1%
(+4.5%)
10-12月期は駆け込み需要の反動減が響き、マイナス成長への転落が濃厚

一目瞭然ですが、三菱総研を例外として、7-9月期はほぼ前期比年率で2%を超える予想が中心となっています。上の表の中で最も高いのは伊藤忠商事の前期比1.1%、年率4.5%となっています。実は、私の予想はこれに近いです。切りよく大雑把に、前期比1%、年率で4%くらいではないかと予想しています。なお、昨日発表された経済企画協会のESPフォーキャスト調査では、民間エコノミストの7-9月期成長率予想の平均は+2.3%を記録した後、10-12月期には▲0.9%に落ち込み、来年1-3月期には+1.0%に回復するというシナリオが示されています。別件ながら、このESPフォーキャスト調査結果で、民間エコノミスト諸氏と日銀政策委員の物価見通しが大きく乖離しているグラフが示されています。10月28日付けのエントリーで日銀の「展望リポート」を取り上げた際、私はエントリーのタイトルを「驚くべき強気の物価見通し」としたんですが、その根拠の一端が示せると思いますので、1次QE予測とは関係ないながら、ESPフォーキャストと日銀「展望リポート」の物価見通しの大きな差を明らかにしたグラフを引用します。特に今年度2010年度の差が大きくなっています。下がる方の高校実質無償化は考慮しないと「展望リポート」に明記してありましたが、上がる方のたばこ値上げは含めるとか、都合良く非対称的な処理をしていたりするんでしょうか。

ESPフォーキャストと日銀政策委員の物価見通しの乖離

1次QE予想に戻って、7-9月期の成長率が高い主たる要因は政策と制度に起因しています。すなわち、たばこの買いだめ需要こそ微々たるものでしょうが、エコカー補助金の終了を見越した駆込み需要が大きく、家電エコポイントも同様の需要の先食いを生じています。ということで、いくつかの機関のヘッドラインに取り上げておきましたが、これらの政策や制度要因に起因する駆込み需要や需要の先食いのため、世界経済の低迷や円高による輸出の鈍化と相まって、10-12月期は個人消費を中心に大幅なマイナスとなる可能性が強いと私は考えています。多くのエコノミストもご同様だと思います。従って、どんなに高成長を記録しようと、7-9月期の成長率は発表されたとたんに「過去の数字」と見なされる可能性が高いと私は受け止めています。

|

« 先行き微妙な機械受注と上昇に転じた国内企業物価 | トップページ | 10月のたばこ値上げのその後の帰結やいかに? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 来週発表の7-9月期GDP1次QEは政策効果の駆込み需要で大幅なプラス成長か?:

« 先行き微妙な機械受注と上昇に転じた国内企業物価 | トップページ | 10月のたばこ値上げのその後の帰結やいかに? »