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2010年11月30日 (火)

反転の時期を探る生産と緩やかにしか回復しない雇用

今日は、月末の閣議日でしたので経済指標がいくつか発表されました。このブログで取り上げる順に、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局から失業率などの労働力調査と厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計、さらに、毎月勤労統計を合わせて雇用統計が、それぞれ発表されました。いずれも10月の統計です。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、10月は1.8%低下 市場予測より小幅
経済産業省が30日発表した10月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は91.1と、前月比1.8%低下した。前月を下回るのは5カ月連続で、エコカー補助金の終了に伴う自動車の減産が指数を押し下げた。ただ、エコポイント制度の見直しで家電の生産が増えたこともあり、事前の市場予測(中央値で3.4%低下)は上回った。11、12月の生産は上昇を見込んでいる。
生産指数が5カ月連続マイナスになるのは、リーマン・ショック後の08年10月-09年2月以来。マイナス幅は09年2月(8.6%)以来の大きさだった。経産省は基調判断を「生産は弱含み」に据え置いた。
エコカー補助金終了の影響で自動車など輸送機械工業が前月比10.0%減と6カ月連続でマイナス。国内向け普通乗用車や小型自動車の落ち込みが大きかった。
アジア向けの携帯電話用の半導体が減少したことなどで、電子部品・デバイス工業も3.2%低下。自動車の減産の影響で工業用ゴム製品が減少し、その他工業も2.3%の低下となった。
ただ「自動車以外は想定したほど悪くなかった」(経産省)ため、全体では市場予測を上回った。家電エコポイント対象商品の液晶テレビは11.9%増、電気冷蔵庫は14.1%増だった。国内や台湾向けのフラットパネル・ディスプレー製造装置が伸びた一般機械工業も3.8%増だった。
在庫指数は1.5%減った。エコポイント効果による液晶テレビの出荷増などで情報通信機械工業が24.0%減と6カ月ぶりに低下した。出荷指数は輸送機械工業の落ち込みが響いて2.7%低下だった。
製造工業生産予測調査によると、11月は前月比1.4%増、12月は1.5%増になる見込み。11月は普通乗用車など輸送機械工業が海外向けを中心に回復し、3.7%増える。家電エコポイントの駆け込み需要があるため、電気機械工業も押し上げ要因になる。
12月には国内向け自動車が回復するとして、輸送用機械工業で5.6%増を見込んでいる。鉄鋼業も輸出が回復するため、1.1%増になる。
失業率4カ月ぶり悪化 10月、若者雇用厳しく
総務省が30日発表した10月の完全失業率(季節調整値)は5.1%と前月に比べ0.1ポイント上がった。悪化は4カ月ぶり。10-20代の若者などの雇用情勢が厳しくなったことが要因。厚生労働省が同日まとめた10月の有効求人倍率(同)は前月から0.01ポイント上昇し0.56倍だった。企業の生産活動は弱含んだままで失業率がこれから改善に向かうか不透明な状況だ。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。年齢別では15-24歳の失業率が1.3ポイント悪化し9.3%、25-34歳も0.1ポイント悪化の6.0%だった。景気の先行きの不透明感や円高懸念から企業が新規採用に慎重になっているとみられる。
男女別の失業率では女性が0.3ポイント悪化の4.6%。男性は0.1ポイント改善の5.4%だった。
10月の完全失業者数(原数値)は前年同月に比べて10万人減の334万人だった。総務省は「高い水準が続いており注視していく」と指摘している。就業者数(同)は前年同月に比べ15万人増え6286万人となった。医療、福祉がけん引役となり46万人増えたものの、建設業や生活関連サービス業などで減った。
ハローワークで仕事を求める人に1人当たり平均何件の求人があるかを示す有効求人倍率は6カ月続いて上昇。新規求人倍率(季節調整値)は前月から0.02ポイント改善の0.93倍だった。厚労省は雇用情勢について「依然として厳しい状況にある」と判断を据え置いた。
現金給与総額、10月は0.6%増の26万8951円
厚生労働省が30日午前発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.6%増の26万8951円だった。増加は8カ月連続。残業代の増加や所定内給与の下げ止まりが寄与した。
所定内給与は0.1%増の24万5518円。残業代にあたる所定外給与は6.4%増の1万8391円だった。製造業の残業代が伸びた。
所定外労働時間は5.2%増の10.1時間。うち製造業は13.7%増の14.1時間だった。
雇用形態についてみると、常用雇用は前年同月比0.7%増加の4434万5000人。うち、パートタイム以外の一般労働者は0.3%増の3202万2000人と22カ月ぶりに増加に転じた。

次に、鉱工業生産に関するグラフは以下の通りです。一番上のパネルは鉱工業生産指数そのもので、真ん中のパネルは輸送機械を除く資本財の出荷指数です。一番下は製造工業と電子部品・デバイス工業の在庫率の推移です。すべて季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。なお、リーマン・ショック後の大幅な落ち込みで鉱工業生産指数の季節調整が歪んでいる可能性が指摘されていますが、今夜のブログではその可能性はひとまず無視しておきます。

鉱工業生産の推移

一番上のパネルの鉱工業生産指数をパッと見で、景気後退期に入っているんではないかと目を疑うようなグラフになっています。引用した記事にある通り、5か月連続の減産なんですが、10月の減産幅は事前の市場コンセンサスの予想よりもかなり小さかったですし、製造工業予測指数に従えば11-12月は増産に転じる見込みとなっています。これを信じれば、この10月が生産のボトムであり、その後、反転するということになります。産業別に詳しく見れば、11月はエコポイントの制度変更に伴うテレビなどの駆込み需要で、電気機械工業が大幅なプラスを記録し、さらに、12月には輸送機械工業がプラスに転じる見込みとなっています。下の2枚のグラフはいい材料と悪い材料を並べています。真ん中のパネルの資本財出荷は目立った低下を見せていません。設備投資需要はまだ伸びているのかもしれません。しかし、一番下のパネルに見るように、電子部品・デバイス工業は明らかに「意図せざる在庫積上がり局面」に入ったように見えます。近い将来に在庫調整が必要となります。場合によっては、鉱工業全体でミニ在庫調整局面となる可能性も排除出来ません。こういった要因をいろいろと考慮した結果、10月をボトムとして生産が反転するシナリオは十分あり得ますが、懸念材料は在庫と輸出です。世界経済も米国をはじめとして反転の兆しを見せていますが、我が国の輸出にとっては円高がラグを伴ってマイナスに効くのは当然です。

雇用指標の推移

生産の5か月連続の減産を受けて、雇用はホントに改善しているのかどうか、かなり疑わしい回復ペースまで落ちました。失業率は5%を超えて、失業者数は軽く300万人を上回っています。現在のテンポで有効求人倍率が1に達するのは3-4年かかりそうです。一応、方向として雇用は回復しつつありますが、その回復ペースは考えられないほど緩慢です。上のグラフは、一番上が失業率、次が有効求人倍率、3番目が新規求人数で、この3枚は季節調整済みの系列です。影を付けた部分は景気後退期です。最後の4枚目のグラフは季節調整していない原系列の産業別雇用者数の前年同月差の増減数です。棒グラフの色分けは凡例の通りです。

毎月勤労統計の推移

上のグラフは、毎月勤労統計調査から、所定外労働時間指数を上のパネルに、引用した記事にある現金給与総額指数を下のグラフに、それぞれプロットしています。所定外労働時間は季節調整済みの系列そのままですが、現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比を取っています。いずれも、影を付けた部分は景気後退期です。所定外労働時間は生産が減産に転じるとともに減少して残業は減り始めているようです。お給料はさすがに前年の反動で増加に転じていますが、水準としてはまだ低いままだったりします。結論は失業率などと同じで、雇用指標は改善の方向にあるものの、そのスピードはあきれるほど緩慢といわざるを得ません。

今日は、このブログで取り上げた経済指標のほかに、今日は、総務省統計局から家計調査が、また、国土交通省から住宅着工統計が、それぞれ発表されています。前者については、エコカー補助金、家電エコポイント、たばこ値上げなど、また、後者については、住宅ローン減税や住宅エコポイントなど、それぞれの政策・制度要因が経済要因以上に統計上の変動をもたらしているように見受けられます。

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2010年11月29日 (月)

2010年ベスト経済書やいかに?

この週末に「ヒット商品番付」を取り上げたりして、そろそろ、今年を振り返る季節になりました。特に、経済週刊誌では来月12月には、いわゆる2010年ベスト経済書の特集が組まれたりするんではないかと思います。私もこういったアンケートに回答したことがあったりするんですが、今夜は少し趣きを変えて私なりのカテゴリーに分けて今年の経済書を何冊か振り返りたいと思います。もっとも、読んでいないのがあったりしますので少し無責任なんですが、私が管理しているブログですから、「こんなんもんだ」とご容赦ください。

岩田一政『デフレとの闘い』 (日本経済新聞社)

まず、第1の観点として、ケインズ的ないわゆる「美人投票」、すなわち、みんなが選びそうなベスト経済書ということになれば、私は上の岩田一政『デフレとの闘い』 (日本経済新聞社) ではないかと考えています。副題は「日銀副総裁の1800日」です。各章に付論があって、モデルの解説などもていねいになされています。もっとも印象に残った点のひとつは、デフレが何らかの不均衡の結果として生じるものだけではなく、特に、日本の場合はデフレは均衡であることが示唆されており、このデフレ均衡から脱するのが金融政策の重要な課題のひとつという視点です。第3章に詳しいです。

細野薫『金融危機のミクロ経済分析』 (東京大学出版会)

第2に、決して一般向きではないものの、学術書としての観点からすれば、細野薫『金融危機のミクロ経済分析』 (東京大学出版会) がオススメです。私はミクロ経済学は必ずしも詳しくありませんし、本書のような詳細かつ最新のエコノメの手法に対する理解力があるとまで自信を持っているわけではありませんが、例えば、大学院のテキストなんかにはうってつけではないかと思います。不良債権に限っても、問題の長期化が銀行による何らかの会計手続きの結果であるとか、逆に、繰延税金資産の圧縮などの会計基準の厳格化が不良債権処理を進めたとか、あるいは、公的資金投入による資本増強は不良債権減少への寄与はほとんどなかった、などについて詳細なデータを駆使した実証分析結果は一般的なエコノミストの印象論とほぼ合致する一方で、逆の意味で、常識から外れてびっくりするような結論ではないのも、物足りないというか、よしあしだという気がします。なお、私の専門分野から、銀行の株式保有が景気循環を増幅しているというのは興味を引きました。加えて、学術書らしく価格が高いことを難点と見なす向きがあるかもしれませんが、一昨年のベスト経済書のひとつだった現在の日銀白川総裁による『現代の金融政策』も分厚くて高価だった気がします。

アン・アリスン『菊とポケモン』 (新潮社)

最初のケインズの「美人投票」的な観点を離れて、独自に自分の書評が特記される可能性を求めるのであれば独自性を追う必要があります。その観点から、私が読んだ中ではアン・アリスン『菊とポケモン』 (新潮社) を推したい気がします。ただし、タイトルについては、英語の原題は Millennial Monsters で、上の画像に見る通りです。日本語版へのあとがきでも、ベネディクト女史の『菊と刀』になぞらえたタイトルは「ショック」と著者本人も書いていますし、私も少し疑問に思わないでもありません。やや商業的な日本語タイトルといえます。でも、セーラームーン、たまごっち、ポケモンと日本のサブカルを的確に分析して、もはや、トヨタやソニーといった伝統的な企業ではなく、ハリウッドを擁する米国に代わって日本ブランドが子供向けの消費の主役になっていることを明らかにしています。経済書というよりは著者の専門からすれば文化人類学の学術書なのかもしれませんが、興味深い内容です。

岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』 (ダイヤモンド社)

ベストセラーという観点からは岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』 (ダイヤモンド社) ではないでしょうか。私は読んでいませんので内容は分かりませんが、説明の必要もないくらいでしょう。はなはだよく売れていることは確かで、100万部を突破したとの報道を見た記憶があります。私が登録している限りで、港区立図書館、渋谷区立図書館、新宿区立図書館などのサイトを見たんですが、予約は軽く500番台でした。所蔵数は確認しませんでしたが、待ち時間はかなり長そうです。

竹内啓『偶然とは何か』 (岩波新書)

最後に、新書からは竹内啓『偶然とは何か』 (岩波新書) が印象に残ります。歴史における偶然の果たす役割などについて著者独自の観点から論が進められています。ただし、「偶然」と「ランダム」の違いなど、少し分かりにくい部分もあります。また、第2章の章末コラムは明示してありませんが、モンティ・ホール問題を解説しています。私のこのブログでは3年前の2007年11月14日に取り上げています。私は図書館で借りてしか新書を読みませんが、新書ながらベスト経済書に入る本も多いですから、単純に新書から私の趣味で選ぶとこの本になります。

来月12月になると、経済週刊誌ではいっせいに今年2010年の経済書ベスト100とか何とかを特集すると思います。私自身は読書量には決して自信がないだけに、読書家のエコノミスト諸氏の評価が気になるところです。特段の理由はありませんが、「読書感想文の日記」ではなく、「経済評論の日記」に分類しておきます。

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2010年11月28日 (日)

神宮外苑の銀杏並木はすっかり色づく

11月も最後の日曜日となりました。そろそろ年賀状の準備で写真を撮りに行っている人も多いことと思います。何の関係もなく、私もフラフラと近場でお出かけして神宮外苑の銀杏並木を写真に収めて来ました。中にはまだ緑色の葉っぱが残っていないわけではないんですが、ほぼ全体的にすっかり色づいていました。もっとも、地面にはかなり落ち葉が舞っていましたので、もう終盤なのかもしれません。今週12月1日からは昨年に続いて表参道のイルミネーションが始まります。本格的にクリスマスから年末年始のシーズンです。

神宮外苑の銀杏並木

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2010年11月27日 (土)

今年のヒット商品番付は「話題は大きくヒットは小粒」で横綱なし

少し旧聞に属する話題ですが、一昨日、SMBC コンサルティングから今年「2010年のヒット商品番付」 が、また、電通総研から「話題注目商品2010」リポートが、それぞれ発表されました。そろそろ、今年を振り返る季節になった気がします。
まず、SMBC コンサルティングのサイトから「2010年のヒット商品番付」を引用すると以下の通りです。なお、雰囲気で理解できると思いますが、「殊」が殊勲賞、「敢」が敢闘賞、「技」が技能賞、をそれぞれ表わしています。

  西 
 該当なし横綱該当なし 
 スマートフォン大関食べるラー油 
 もしドラ関脇ゲゲゲの女房
猛暑特需 ガリガリ君小結チンしてこんがり魚焼きパック 
 上海万博前頭1平城遷都1300年祭 
 東京スカイツリー前頭2LED電球 
 3D映画前頭3コンパクト液体洗剤 
はやぶさ前頭4南アフリカサッカーW杯 
 禁煙外来前頭5借りぐらしのアリエッティ 
 AKB48前頭6該当なし 

続いて、ややついでの扱いになってしまうんですが、電通総研のサイトから「話題注目商品2010」リポートについて、ベスト10を引用すると以下の通りです。「話題注目商品ベスト10」のカッコ内の数字は昨年の順位です。なお、ベスト30まで発表されていますが、いろいろな都合により10で納めています、悪しからず。

話題注目商品ベスト10
1 (34)スマートフォン
2 (104)Twitter
3 (-)食べるラー油
4 (7)地デジ対応大画面薄型テレビ
5 (101)坂本龍馬
6 (-)羽田空港国際化
7 (-)東京スカイツリー
8 (5)エコポイント・エコ減税関連商品
9 (-)ワールドカップ南アフリカ大会
10 (15)LED電球
近未来ブレイク予想ランキング
1東京スカイツリー
2LED電球
3電気自動車
4羽田空港国際化
5スマートフォン
63D映画・テレビ・カメラなど
7ハイブリッドカー
8電子書籍端末
9格安航空チケット
10タブレット型情報端末

何となく、こんなもんだという気はします。SMBC コンサルティングの「ヒット商品番付」では東西の横綱は該当なしとなっており、サイトでも「話題は大きくヒットは小粒」とのキャッチコピーが示されています。そうかもしれません。

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2010年11月26日 (金)

一時的な制度要因で下落幅が縮小した消費者物価

本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が発表されました。生鮮食品を除くいわゆるコアCPIは前年同月比で▲0.6%の下落を示しました。20か月連続のマイナスなんですが、たばこと傷害保険料という制度要因により下落幅はかなり縮小しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月消費者物価0.6%低下 20カ月連続
総務省が26日発表した10月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.5となり前年同月に比べて0.6%低下した。20カ月連続のマイナスで、下落幅は前月に比べ0.5ポイント縮んだ。ただ、たばこ増税や傷害保険料の引き上げによる特殊要因が大きく、物価が継続的に落ち込むデフレの基調は変わっていない。
生鮮食品を含めた物価の総合指数は前年同月比で0.2%上昇と1年10カ月ぶりにプラスに転じた。たばこ増税に加え、夏の猛暑などによる生鮮野菜の値上がりが響いた。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)は0.8%低下。低下幅は前月より0.7ポイント縮小した。
品目別でみると、押し上げ要因となったたばこが前年同月と比べて38.6%、傷害保険料が11.8%それぞれ上がった。この2品目で指数の下落幅をおよそ0.4ポイント圧縮した。エネルギーは4.0%上昇。都市ガス代の上昇幅が拡大した。
一方で家電や耐久財の下落傾向は変わっていない。激しい値下げ競争が続くデジタル家電では、薄型テレビが前年同月比で35.3%、デジタルカメラが37.8%それぞれ低下。電気冷蔵庫など家庭用耐久財も9.9%下がった。
物価の先行指数となる東京都区部の11月のCPI(中旬速報値)は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比0.5%低下、食料とエネルギー価格を除いた総合指数は0.6%下がった。いずれも低下幅は先月と変わらなかった。

続いて、いつものグラフは以下の通りです。すべて前年同月比上昇率なんですが、まず、折れ線は青が生鮮食品を除く全国のコアCPI、赤が全国のコアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIです。コアコアCPIでは食料とエネルギーを除いており、引用した上の記事では「欧米型コア」と呼ばれています。そして、棒グラフは全国コアCPIの前年同月比上昇率に対する寄与度を示しています。色分けは凡例の通りです。

消費者物価上昇率の推移

10月の全国については、コアCPIもコアコアCPIもともに下落幅を縮小しました。要因は最初に書いたようにタバコと傷害保険料の値上げという一時的な制度要因が大きくなっています。引用した記事にもある通り、この2品目の寄与度を合計すると約0.4%ポイントの下落幅縮小に寄与したことになります。コアCPI全体の下落幅縮小は0.5%ポイントですから、ほとんどこの2品目で尽きているんですが、それ以外にも0.1%ポイントの寄与があるのはめでたい限りです。なお、東京都区部の統計は長らく全国の先行指標になっていない気がしていたんですが、この10月は見事に先行しました。ウェイトは別にして、たばこと傷害保険料という全国一律の制度要因ですから当然かもしれません。4月には公立高校授業料無償化という、これまた全国一律の制度要因で大きく下げたCPIなんですが、徐々にデフレ脱却に向けてマイナス幅を縮小しているように見えなくもありません。ひとつのサポート要因は3月から前年同月比でプラスを続けている毎月勤労統計の給与です。下のグラフの通りです。5人以上事業所の現金給与総額、季節調整していない原系列の前年同月比上昇率の推移です。もちろん、リーマン・ショック後の大幅下落の反動の要素は大きいんですが、GDPギャップ縮小がデフレ脱却の必要条件である一方で、賃金上昇がデフレ脱却の十分条件、との私の考えは何度かこのブログでも表明したことと思います。でも、来年8月には基準改定が控えており、5年前には大きく物価上昇率が下振れした記憶が強く残っていますので、一直線でデフレ脱却とはとても思えません。

現金給与総額上昇率の推移

10月のコアCPIはやや制度要因で振れた一方で、昨日紹介したように、7-9月期1次QEに基づくGDPギャップは縮小したと試算されていますが、足元でGDPギャップに敏感な企業向けサービス価格指数 (CSPI) はマイナス幅を拡大しており、私は CSPI の動向が足元の現状をよく表しているんではないかと受け止めています。

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2010年11月25日 (木)

貿易統計に見る輸出の足踏みとマイナス続く企業向けサービス物価

本日、財務省から貿易統計が、また、日銀から企業向けサービス価格指数 (CSPI) が、それぞれ発表されました。いずれも10月の統計です。貿易の方では輸出の鈍化が続き、企業向けサービス価格もデフレが止まりません。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

輸出10月7.8%増、伸び率鈍化 EU向けマイナスに
財務省が25日発表した10月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額が前年同月比7.8%増の5兆7236億円になった。自動車などが増え、11カ月連続で前年同月を上回った。ただ欧州連合(EU)向けが減少に転じたうえ、リーマン・ショック後の落ち込みの反動が一巡したこともあり、伸び率は8カ月連続で鈍化した。円高の影響もあり、景気のけん引役である輸出の先行きに不透明感が出てきた。
輸入額は8.7%増の4兆9017億円で、差し引きの貿易収支は8219億円の黒字だった。為替レートは1ドル=83円42銭と、前年同月比7%の円高になった。
地域別の輸出動向ではアジア、米国、EUに対する輸出の前年同月比が悪化した。特にEU向けは1.9%の減少で、2009年11月以来のマイナスになった。映像機器が減ったほか、前年計上していた大型船舶の輸出がなかったという特殊要因も重なった。財務省はEU向けについて「低調が続くとはみていない」と分析している。
アジア向け輸出は前年同月比11.3%増で、伸び幅は9カ月連続で縮小した。中国向けが金属加工機械を中心に17.5%増と伸び率が拡大した一方、韓国や台湾など新興工業経済群(NIES)向けが4.3%増と大幅に鈍化した。米国向けは4.7%増だった。
企業向けサービス価格1.2%低下、10月
日銀が25日に発表した10月の企業向けサービス価格指数(2005年=100、速報値)は96.6になり、前年同月比で1.2%低下した。指数は前月に続いて1985年の調査開始以来の最低水準を更新し、前年同月比での低下も2年1カ月連続になった。運輸価格の下落が響いた。
同指数は運輸や広告、不動産など企業間で取引するサービスの価格動向を示す。運輸は0.4%低下した。需要の回復で価格下落幅が急速に縮小した前年の反動に加え、円高進行の影響もあり、外航貨物輸送や貨物用船料が下落した。
安値受注を背景に、土木建築サービスなどの諸サービスは1.4%低下。情報通信も0.8%低下した。日銀は「低下幅の縮小がこのところ一服している」と分析し、当面は「一進一退の状況が続く」とみている。

リーマン・ブラザーズ証券破綻後の Great Recession に伴う落ち込み後の反動増が一巡し、輸出はほぼ足踏み状態に入ったと私は受け止めています。輸出の足踏みの要因として上げられるのは、足元で再び回復に向かいつつあるものの、先進国をはじめとする世界経済の成長の鈍化と円高です。所得効果も価格効果も我が国の輸出に逆風です。季節調整していない原系列と季節調整済みの系列の輸出入の推移のグラフは以下の通りです。季節調整済みの輸出は半年ほど前月比マイナスを続けていることが読み取れます。

貿易統計の推移

下のグラフは、上から輸出の前年同月比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解したもの、真ん中は輸出数量指数と OECD 先行指数のそれぞれの前年同月比、一番下が輸出数量指数と鉱工業生産指数のそれぞれの前年同月比です。輸出については、引用した報道にもある通り、欧州向けが落ち込みを示しており、合い無償の公式見解は否定しているものの、アイルランドを震源地とする欧州の金融財政問題の先行きが下振れリスクと考えられ、先進国をはじめとする世界経済の鈍化が円高とともに我が国輸出の足踏みをもたらし、輸出の足踏みが生産の落ち込みをもたらしていることが読み取れます。

輸出の推移

それでは、我が国の輸出の足踏み状態がいつまで続くかという先行きの見通しですが、私は来年年央近くまで輸出の回復は難しいと見込んでいます。為替レートについては今しばらくラグを伴いつつ輸出にマイナスの影響を及ぼし続ける可能性が高く、世界経済が景気回復初期を終えて直近にミニボトムをつけたのはおそらく2010年年央であろうと考えていますが、もう一度本格的な回復軌道に戻るのが来年前半から年央くらいと予測しているからです。外れたらゴメンナサイです。

企業物価の推移

目を企業向けサービス物価 (CSPI) に向けると、相変わらず前年同月比で▲1%を超えるデフレが続いています。上のグラフの通りです。CSPI だけで見ると、2008年10月から前年同月比でマイナスを続けていますので2年を超えました。日銀レビュー 2010-J-8 「企業向けサービス価格指数からみた日本経済」で明らかにされているように、CSPI は需給ギャップとの相関が高く、景気循環に敏感に動く指標であると受け止められていますが、今年5月には前年同月比で▲0.7%までマイナス幅を縮小したにもかかわらず、その後は景気の足踏みとともにナイマス幅を拡大させ、10月には前月に比べてさらに下落しました。デフレ脱却への道のりはまだまだ遠いといわざるを得ません。なお、下のグラフの通り、内閣府の今週の指標 No.973 によれば、7-9月期には1次QEベースでGDPギャップが▲3.5%まで縮小したと試算されています。

GDPギャップの推移

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2010年11月24日 (水)

ヴィカース・スワループ『6人の容疑者』 (武田ランダムハウスジャパン) を読む

ヴィカース・スワループ『6人の容疑者』 (武田ランダムハウスジャパン)

この飛び石連休に、ヴィカース・スワループ『6人の容疑者』 (武田ランダムハウスジャパン) を読みました。どうして読んだのかというと、我が家で購読している朝日新聞の読書欄で作家の江上剛さんがオススメしていたからです。10月31日付けの紙面ではなかったかと記憶しています。なお、作品の背景を説明する順序が逆になったかもしれませんが、作者は今年のアカデミー賞映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作者で、元来はインド外務省の職業外交官であり、昨年から大阪の総領事に赴任しているそうです。まず、出版元のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

6人の容疑者
"すべての死が平等というわけではない。殺人にさえカースト制は存在する"
舞台はインド。悪名高い若き実業家、ヴィッキー・ラーイが、パーティの席で拳銃で撃ち殺された。容疑者はパーティに出席していた6人。引退した元官僚、美しい人気女優、離島出身の部族民、携帯電話泥棒の青年、自称映画プロデューサーの間抜けなアメリカ人、そして州の内務大臣をつとめるヴィッキーの父親。
みなそれぞれに動機があり、それぞれが拳銃を隠し持っていた。
事件前の容疑者たちの人生を遡ることで、6人の物語が「殺人現場」という1点で奇妙に交差し、それぞれが拳銃の引き金に手をかける理由が明らかとなる。果たして犯人は誰なのか。

基本的にはミステリー仕立ての小説であり、事件の発端は、腐敗の限りを尽くした政治家の倅である実業家ドラ息子が、実際に自分がバーテンダーを射殺したにもかかわらず、無罪になった裁判の結果を祝うパーティーで射殺されるところから始まります。いかにもインドらしい6人がピストルを所持していたために容疑者とされ、警察というよりも調査ジャーナリズムの活躍により真実が明らかにされるというストーリーです。引用にもありますが、容疑者は被害者の父親である政治家、政治家と同様に腐敗し切った元高級官僚、ボリウッド映画のセックスシンボルのような売れっ子女優、その女優との結婚を目指してインドに来た間抜けなアメリカ人青年、なお、彼はグーグル創始者の1人と同姓同名だったりします。それから、大卒ながら携帯電話泥棒をしてスラム街に住むインド人青年、インド洋のアンダマン諸島から部族の宝を取り返すために出て来た部族民の青年、の6人です。そもそも、これらの登場人物もそうですが、日本では考えられないようなインド社会の実態をバックに、容疑者それぞれの背景をひも解きながら、最後に、バラバラに見えた容疑者6人の物語が収束して真実が明らかにされます。なお、ネタバレではないと信じていますが、紹介した容疑者の中の最初の2人を除く残りの4人、特にボリウッド映画のセックスシンボル女優を別にした3人は犯人ではあり得ないと、賢明なる読者はすぐに気付くと思います。もちろん、この6人の中に真犯人がいるとは限りません。

名前が難しくて、ストーリーを追うよりもソチラに注意力が殺がれてしまう部分もあります。しかし、誇張されているのかどうか私には判然としませんが、インド社会の実態に触れるチャンスがあるのかもしれません。

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2010年11月23日 (火)

「死の秘宝」パート1を見る前にどこまでさかのぼって読み返すか?

「死の秘宝」パート1のポスター

先週金曜日11月19日からハリー・ポッター最終第7話の映画「死の秘宝」パート1が公開されています。上の画像は映画のホームページからポスターをダウンロードしました。パート1は今年のクリスマスから年末年始にかけての公開で、ポスターにある通り、パート2は来年7月15日公開で夏休み向けです。通常のハリー・ポッターの映画の時期といえます。

前売り券のオマケ

我が家ではすでに前売り券を購入しており、冬休みに入ったら見に行こうとスタンバイしています。なお、ついでながら、ハリー・ポッターの映画の前売り券のオマケはいつも豪華なんですが、今回は上の画像の通りストラップです。左から賢者の石、空飛ぶフォード・アングリア、ファイアボルト、炎のゴブレット、となっています。パート2もこのシリーズで、死の秘宝のマークなんかが入ると聞いています。
私はハリー・ポッターの映画を見る前には原作を読み返すことにしています。昨年の第6話「謎のプリンス」は忘れましたが、その前の第5話「不死鳥の騎士団」までは第1話の「賢者の石」にさかのぼって読み返していました。昨夏はまだ長崎に単身赴任中でしたので、どこまでさかのぼったかは忘れてしまいました。今回はどこから読み始めようかと考えていたところ、下の子が早々に前話の「謎のプリンス」から読んでいましたので、私も便乗することに決め、早速、区立図書館から第6話の「謎のプリンス」と最終第7話の「死の秘宝」を借りて来ました。

特に適当なカテゴリーがないので、「読書感想文の日記」に分類しておきます。

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2010年11月22日 (月)

The Economist の日本特集 A special report on Japan: Into the unknown

Cover The Economist 2010 November 20

最新号の The Economist の表紙を見て、少しショックを受けた読者も中にはいるんではないでしょうか。"Japan's burden" と題されて、少年が苦しそうに日の丸を支えています。上の画像の通りです。もちろん、The Economist のサイトから引用しています。どうでもいいことなんですが、この表紙はアジア太平洋版だけであり、北米版ではチェーンソーを持ったオバマ米国大統領の画像とともに、"How to cut the deficit" と題されており、英国・欧州版ではさらに別の画像で "Saving the Euro" と題されています。
加えて、いわゆるセンター・フォールドの部分に日本特集が組まれています。すなわち、"A special report on Japan: Into the unknown" 「未知の領域へ」との特集記事が組まれているとともに、"The future of Japan: The Japan syndrome" という記事も掲載されています。なお、最近5年くらいで本格的な日本特集が The Economist で組まれたのは、2005年10月のかの有名な "The sun also rises" 「日はまた昇る」と2007年12月の "Going hybrid" 「ハイブリッドで行こう」に次ぐものではないかと思います。後者については、このブログの2007年12月4日付けのエントリーで取り上げています。私は2005年10月にはまだ The Economist を購読していなかったような気がします。読売新聞など大手のメディアも含めて、アチコチで取り上げられているんですが、今夜のエントリーではこれらに便乗して、以下、The Economist のサイトからいくつかグラフを引用しつつ、この特集記事を紹介したいと思います。

From pyramid to kite

"A special report on Japan: Into the unknown" 「未知の領域へ」では、日本の高齢化についてスポットを当てています。上の画像はどこかで見たことがある我が国の人口ピラミッドです。1950年、2005年、2050年と大雑把に50年おきの人口ピラミッドが示されています。私の記憶が正しければ、以前の "Going hybrid" の画像を使い回ししているようです。日本の高齢化について記事にする際につかみで必ず必要になるグラフだという気がします。

For whom the bell tolls

上の画像では日本の人口が先行き急速に減少するシナリオを示しています。欧州3国と比較して、ドイツも減少するんですが、もちろん、日本の方が減少スピードは大きく、英仏は2050年まで増加や横ばいを続けると見込まれています。この人口減少が成長率の加速とデフレ脱却を困難にしていると論じられています。人口が唯一の原因だとは考えませんが、私も人口動態が経済に大きな影響を及ぼしていることはその通りだと受け止めています。ただし、いわゆる一国経済の規模で考えるか、1人当たりの所得で考えるかは議論の分かれるところであり、後者の見方からすれば、一国経済が縮小しても人口減少を勘案した1人当たり所得が増加を続けるのであれば国民生活の上からは大きな問題ではない、との見方も出来ます。しかし、記事では2050年までに中国だけでなく、インド、ブラジル、インドネシア、メキシコなどの諸国にGDP規模で抜かれ、戦間期に米国に次ぐ経済規模を誇りながらも戦後には普通の国になったアルゼンティンになぞらえ、「東洋のアルゼンティン」との呼び名を日本に当てはめることが出来るかもしれないと示唆しています。

Regular guys

企業文化が日本経済に大きなダメージを与えつつあるとして、ありきたりではありますが、上のような男女年齢別の正規・非正規雇用比率のグラフを掲げ、新卒時の「一発勝負」の就職方式をやり玉に挙げています。同時に、外国人雇用の少なさも指摘して、ソニーのストリンガー会長や日産のゴーン会長の事例を紹介しています。人口減少に暗喩的に対比して、ここ20年間で合法的に日本に居住する外国人は2倍になったものの、移民については文化的な地雷原であることを示唆しています。

Not cheap, not cheerful

このブログでは最後にお示しする上のグラフは、いうまでもなく人口減少や少子高齢化社会の最大の難所である社会保障です。「ワニの口」と称される歳出と歳入のギャップを指摘しつつ、2020年には2005年の2倍の社会保障支出が必要になるとのマッキンゼーの試算を示し、最後に、外資系エコノミストの「もっとも不都合な真実は政府が社会保障支出の削減に乗り気でないことである」との取材結果を紹介しています。私に言わせれば「シルバー・デモクラシー」の結果であろうという気がします。もっとも、別の部分で、名目収入が固定されている年金で生活する引退世代にはデフレは歓迎すべき経済現象であることを喝破し、人口の高齢化により日本経済の選好体系が歪みつつあることを示唆しています。

私のような語学力薄弱なエコノミストには相変わらず少し難しい英語であるといわざるを得ませんが、さすがに我が国メディアに比べるべくもない広範な取材の結果を駆使しており、読みごたえはあります。いつまでかは知りませんが、現時点では pdf の全文リポートが入手できますので、ご興味ある方は以下のリンクからどうぞ。

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2010年11月21日 (日)

マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』 (岩波文庫) を読む

マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』 (岩波文庫)

マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』La Casa Verde (岩波文庫) を読みました。今年のノーベル文学賞受賞作家の代表作のひとつです。文庫本で上下となっています。物語は非常に重層的でかつ長い期間、30-40年くらいを対象にしていますので、極めて複雑であるといえます。この作者と同じく、ラテン・アメリカの代表的な作家といえば、何といってもガブリエル・ガルシア=マルケスに指を屈せざるを得ないんですが、ガルシア=マルケスの最高傑作のひとつであり、同時に、ラテン・アメリカ文学の最高峰のひとつである『百年の孤独』 Cien Años de Soledad も極めて長い期間、コチラは100年を対象にした複雑な小説であることはよく知られています。というか、南米はチリにある大使館に外交官として勤務した経験を持ちながら、私はラテン・アメリカを代表する文学作品はこの2冊しか読んだことがありません。
『百年の孤独』が数世代にわたるブエンディア家の歴史を綴っているのに対して、『緑の家』はペルーの地方の歴史を説き起こしています。タイトルとなっている「緑の家」とは娼家であり、ある面では町の社交場の要素も併せ持っています。そして、ペルー北方、アマゾン川の源流とも遠からぬ地方で、ある意味での対比が描かれています。スペイン本国では絶対にあり得ない対比です。すなわち、スペイン語、白人、キリスト教徒などの要素から成る文明と、これらの要素がないインディオの世界である野蛮が対比されています。作者の目は決して「文明」からだけの視点ではないんですが、少なくともラテン・アメリカの読者の多くは「文明」からの視点で読むべき作品と受け止めているような気がします。ただし、『百年の孤独』と同様に、とても『緑の家』を簡単に一言で要約しようという気はしません。

ある程度、ラテン・アメリカの人名に馴染みのある私でもスペイン系の名前かインディオ系かは判然としませんし、いつのことを物語っているのかも、しっかり読み進まないとあやふやになりかねません。しかし、世界の目から見てノーベル賞の水準に達した作家であり、その作家の代表作のひとつであることは確かです。現時点で、この作家の邦訳を読める作品は限られていますから、この『緑の家』も貴重だという気がします。

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2010年11月20日 (土)

六本木のイルミネーション - 六本木ヒルズと東京ミッドタウン

今日は近場に自転車で出かけて少し時間がかかり、戻る際には暗くなっていましたので、少し足を延ばして六本木まで遠回りをしました。六本木ヒルズ周辺では、11月9日から来月のクリスマスまでけやき坂周辺をはじめとして、66プラザと毛利庭園の六本木ヒルズのイルミネーションがきれいでした。サムスンの協賛で電力はすべて風力発電でまかなっているようです。また、帰り道の東京ミッドタウンでも11月11日から MIDTOWN CHRISTMAS 2010 が始まっており、コチラもミッドタウン・ガーデンのイルミネーションがきれいでした。私のように自転車でひとっ走りなら両方を回るのもいいんですが、電車で出て来てどちらか一方に決めなければならないとすれば、六本木ヒルズをオススメします。三井不動産の関係者の方々はご容赦ください。
写真は以下の通りなんですが、けやき坂はほぼ東西に延びていますので、角度が合えばバックに東京タワーが入ります。東京ミッドタウンの奇跡の木はうまく撮れていませんでしたが、シャンゼリゼ・イルミネーションはバッチリでした。以下の写真の出来栄えも、カメラと腕前の限界だとご容赦ください。

けやき坂イルミネーション

東京タワーをバックにけやき坂イルミネーション

東京ミッドタウンのイルミネーション

東京ミッドタウンのシャンゼリゼ・イルミネーション

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2010年11月19日 (金)

経済協力開発機構 (OECD) の「経済見通し」 Economic Outlook No.88

昨日、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し」 Economic Outlook No.88 が発表されました。ヘッドラインとなるGDP成長率で見て、OECD加盟国全体では2010年2.8%成長の後、2011年には2.3%と少し減速するものの、2012年には2.8%に戻ると見込んでいますが、日本については2010年3.7%と高い成長率を示した後、2011年1.7%、2012年1.3%と徐々に低下するシナリオを示しています。2011年から2012年にかけて成長率を低下させるのはG7の中で日独だけだったりします。まず、日経新聞のサイトから成長率を中心に事実関係だけを報じた記事を引用すると以下の通りです。

OECD、日本の11年実質成長率1.7%に下方修正
経済協力開発機構(OECD)が18日夜(日本時間)公表したエコノミック・アウトルック(経済見通し)によると、2011年の日本の実質国内総生産(GDP)の成長率見通しは1.7%(前回5月調査は2.0%)だった。米国は2.2%(同3.2%)、ユーロ圏は1.7%(同1.8%)。
10年の成長率は日本が3.7%(前回は3.0%)と高い伸び。米国は2.7%(同3.2%)、ユーロ圏は1.7%(同1.2%)の見通し。
OECDは日本経済の先行きについて「財政刺激効果が薄れていくなか、労働環境の改善と民需が経済活動を支えるが、失業率は高止まりしデフレは継続する」と指摘。円高の影響についても「世界市場での日本のシェアを減らしている」とした。
12年の日本の成長率は1.3%に低下する見通し。一方、米国は3.1%、ユーロ圏は2.0%を見込む。

拡大的な財政金融政策など、成長促進的な政策が取られていた中で、今後、成長促進効果が減じていく要因 (fading factors) と成長を支持する要因 (supporting factors) について、前者は財政再建に向かう財政政策、在庫調整、景気回復初期の急拡大局面を終えた世界貿易、の3点を上げるとともに、後者については新興国の高成長、設備投資の回復、家計貯蓄の安定の3点を指摘しています。同時に見通しに対する下振れリスクとして、政府債務残高の累増、住宅ストック調整、特に米国の住宅ストック調整の2点を、上振れリスクとして、強気を示す企業マインドと設備投資を促進する可能性がある高水準の企業収益の2点を、それぞれ上げています。まず、リポート第1章 General Assessment of the Macroeconomic Situation の p.12 Table 1.1. The global recovery will remain moderate を引用すると以下の通りです。加盟各国の主要指標を総括しています。

Table 1.1. The global recovery will remain moderate

特に、日本について詳しい表を主要なデータを格納した Excel ファイルから引用すると以下の通りです。成長率が低下していく中、緩やかながら失業率は改善するものの高止まりし、財政バランスはほとんど改善せず、物価上昇は見通し期間の2012年までマイナスを続けてデフレから脱却しないと見込まれています。このため、OECD から日本の政策当局に対して、2015年度までにプライマリー・バランスの赤字を2010年度の半分にするためには追加的な税収増が必要であり、日銀はしつこいデフレに対してより野心的な量的緩和政策を実行し、物価上昇が十分なプラスを記録するまでそれを継続すべきであると指摘しています。

OECD Projections - Japan

今回の「経済見通し」では、対外バランスと財政バランスの2つのバランスに目配りしています。どちらかといえば、後者に重点があります。例えば、見通し編として、Chapter 1 General Assessment of the Macroeconomic Situation とともに、分析編のひとつであるChapter 4 Fiscal Consolidation: Requirements, Timing, Instruments and Institutional Arrangements を章立てし、政府債務残高のリスクを回避するために、財政政策、特に、財政再建にスポットを当てています。しかし、財政バランスは後に詳しく見ることにして、ひとまず、対外バランスに関してリポート第1章 p.36 Table 1.4. World trade remains robust and imbalances will widen gradually を引用します。米国がGDP比4%近い赤字を出す一方で、中国は5%を超える黒字と見込んでいます。

Table 1.4. World trade remains robust and imbalances will widen gradually

次に、財政バランスは短期的に目先は改善するものの、長期的な財政再建に必要な調整額は大きいと指摘しています。もっとも、2009-10年の最悪期から大きな改善を示すのは米欧に限られ、いかなる指標を取っても我が日本の財政は米欧並みの改善は示さないと見込まれています。グロスの債務残高はGDP比で200%を超えて膨張を続けます。リポート第1章 p.45 Table 1.6. Fiscal positions will improve in coming years を以下の通り引用します。

Table 1.6. Fiscal positions will improve in coming years

米欧に限られて日本はカヤの外とはいえ、短期的に2011-12年は財政が改善するものの、長期的に政府債務を安定させるに必要な財政再建額は大きく残っています。特に、2012年以降の日本でGDP比8%を超える財政再建必要額を見込んでいます。額にすれば40兆円を軽く超え、世間で言われているように、単純に消費税率1%ポイントの引上げで2兆円の税収増を上げられるとすれば、4%ポイント程度の消費税率の引上げが必要ということになります。2012年までの短期でも、それ以降の長期でも、我が国の財政が先進国の中で最悪であることは、OECD に指摘されるまでもなく余りにも明らかです。リポート第4章 p.230 Table 4.4. Consolidation requirements to stabilise debt over the long-term を以下の通り引用します。一番右の欄の Requirement beyond 2012 に注目すべきです。なお、日本のGDP比8.4%に次ぐのは米国の5.3%だったりします。

Table 4.4. Consolidation requirements to stabilise debt over the long-term

先進国の中でもまれなデフレに陥って脱却できず、低成長の中で財政改善にも手が付けられていない日本の姿が明らかにされています。私も国家公務員なんですが、政策当局はどのような対応を示すんでしょうか。それとも、このまま日本経済はデフレと低成長を続けて「漂う」だけであればOKなんでしょうか。官庁エコノミストの端くれとして、日本が世界経済のリスクになることだけは避けたい気がします。

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2010年11月18日 (木)

今年のユーキャン流行語大賞ノミネート60語と「トイレの神様」

今週は今週でいろいろあって、いまだに先週の情報に追い付き切れていないんですが、今夜も先週金曜日11月12日に発表されたトピックです。
2010年ユーキャン新語・流行語大賞の候補語60語が発表されています。以下の通りです。

  1. iPad
  2. (クロス)カップリング
  3. 無縁社会
  4. 3D
  5. AKB48
  6. K-POP
  7. ~なう
  8. いい質問ですねえ!
  9. 名ばかり高齢者
  10. イクメン
  11. 家庭内野党
  12. ガラパゴス(ガラケー)
  13. ゲゲゲの~
  14. 白戸次郎もよろしく
  15. 生物多様性
  16. ダダ漏れ
  17. ととのいました
  18. どや顔
  19. なんで一段一段なんだろう
  20. ネトゲ廃人
  21. バイクコンシャスライフ
  22. パウル君
  23. はやぶさ
  24. パワースポット
  25. フェニックス
  26. ブブゼラ
  27. ホメオパシー
  28. もしドラ
  29. もってる
  30. モテキ
  31. リア充
  32. ルーピー
  33. 一兵卒
  34. 岡ちゃん、ごめんね
  35. 壊し屋
  36. 検察審査会
  37. 見える化(可視化)
  38. ・・ぜよ!
  39. 剛腕
  40. 国技を潰す気か
  41. 酷暑
  42. 最小不幸社会
  43. 山ガール
  44. 終活
  45. 女子会
  46. 食べるラー油
  47. 生きもの会議
  48. 待機老人
  49. 脱小沢/親小沢/反小沢
  50. 断捨離
  51. 東京スカイツリー
  52. 年金パラサイト
  53. 買い物難民
  54. ゴルコン
  55. 本田△(ほんださんかっけー)
  56. アジェンダ
  57. 33人の奇跡
  58. (W杯)ベスト16
  59. イラ菅/ダメ菅/○○菅
  60. 2位じゃダメなんですか

冬季オリンピックとサッカーのワールドカップがありましたので、これらに関係ない相撲も含めてスポーツ関係の流行語が通常の年より多い気がします。ノーベル化学賞のキーワードも入っています。高齢化社会を反映して高齢化に関する言葉もあります。もちろん、いつの世でも政治や外交に関する新たな表現は注目されます。それにしては、エコノミストの目から見て、というわけでもないんですが、経済関係のキーワードがやたらと少ない気がします。景気が順調だったからか、それとも、日本経済が力強く拡大することはすでに諦められているのか、よく分かりません。
いずれにせよ、今年の流行りモノといえば、私的には小惑星「イトカワ」から微粒子を持って帰って来た探査機「はやぶさ」が一番です。昨夜も取り上げた通りです。さらに、『もしドラ』やAKB48、食べるラー油なんかも捨てがたいんですが、歌の歌詞とメロディーでパッと頭に浮かぶのは植村花菜さんの「トイレの神様」ではないでしょうか。今年、私が TouTube の動画をダウンロードしたのは尖閣諸島の流出画像と「トイレの神様」だけでした。もっとも、上にリストアップした「2010年ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート60語には入っていなかったりします。

実は、本日パリ時刻の11時、すなわち、つい先ほど、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し」 Economic Outlook No.88 が発表されています。国際機関のリポートを取り上げるのは私のブログの大きな特徴なんですが、諸般の事情により、明日のエントリーででも詳しくフォーカスすることにしたいと思います。

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2010年11月17日 (水)

小惑星「イトカワ」由来の微粒子を持ち帰った「はやぶさ」の快挙を讃える!

広く報じられているところですが、昨日、宇宙航空開発機構 (JAXA) から「はやぶさカプセル内の微粒子の起源の判明について」と題するプレス発表があり、1,500個程度の微粒子を岩石質と同定し、さらに、そのほぼ全てが地球外物質、すなわち、小惑星「イトカワ」由来と判断した旨が明らかにされました。JAXA のサイトから記者発表文を以下の通り引用します。

はやぶさカプセル内の微粒子の起源の判明について
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、はやぶさ搭載の帰還カプセルにより持ち帰られた、サンプル収納容器(※)からの微粒子の採集とカタログ化を進めています。
サンプルキャッチャーA室から特殊形状のヘラで採集された微粒子をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察および分析の上、1,500個程度の微粒子を岩石質と同定いたしました。更に、その分析結果を検討したところ、そのほぼ全てが地球外物質であり、小惑星イトカワ由来であると判断するに至りました。
採集された微粒子のほとんどは、サイズが10ミクロン以下の極微粒子であるため取扱技術について特別なスキルと技術が必要な状況です。JAXAは、初期分析(より詳細な分析)のために必要な取扱技術と関連装置の準備を進めています。

※ サンプル収納容器内部は、サンプルキャッチャーA室及びB室と呼ばれる2つの部屋に分かれています。

7年かけて60億キロを旅して地球に帰還しただけでも素晴らしいと感じていましたが、人類史上で初めて地球外小惑星由来の微粒子を運んでいたとは、日本の科学技術がもたらした快挙と私は受け止めています。有り難う、はやぶさ。なお、アチコチのメディアで見かけたものですが、同じ JAXA の記者発表サイトから電子顕微鏡写真も引用しておきます。

電子顕微鏡写真

余りにも専門外で、よく理解できない部分が多々ありますので、簡単に済ませておきます。

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2010年11月16日 (火)

社会保障給付に見る手厚い引退世代への給付と軽視されている子育て世代

1次QEなどに押されて取り上げるのが遅れてしまい、やや旧聞に属する情報ですが、先週金曜日の11月12日に国立社会保障・人口問題研究所 (社人研) から「平成20年度社会保障給付費」が発表されました。主として2008年度の社会保障給付のデータが整理されて公表されていますが、国際比較では2007年データも見受けられます。2008年度は前年度比+2.9%増の94兆848億円と過去最高額を更新しており、国民所得に占める割合は26.8%と+2.6%ポイントも上昇しました。内容については、ここ何年かこのブログでも取り上げている通り、今年も圧倒的な引退世代の優遇と勤労世代へのケチッた給付が浮彫りになっています。まず、関連する記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

社会保障給付、過去最高の94兆円 08年度、高齢化で増加
国立社会保障・人口問題研究所は12日、年金や医療、介護などにかかった社会保障給付費が2008年度は前年度比2.9%増の94兆848億円になったと発表した。高齢化で年金受給者が増えたことなどから、過去最高額を更新した。国民所得に占める割合は26.8%と同2.6ポイント上昇した。リーマン・ショックの影響で経済規模が縮小したため、同割合は過去最大の上昇幅となった。
社会保障給付費は税金や保険料を元に支払われた年金や介護、福祉などの費用の総額で、政府の決算統計などを基に同研究所が毎年推計している。
08年度は経済の急激な落ち込みで国民所得が前年度比7.1%減と大きく減る一方、社会保障に対する支出は上昇した。このため、対国民所得の割合が大きく出て過去最高となった。海外と比べると日本の社会保障の規模は米国に比べれば大きいものの、ドイツ、フランスなど主要先進国に比べれば小さい。
08年度の社会保障の個別項目をみると、高齢化に伴って受給者が増えた「年金」が2.6%増の49兆5千億円になった。「医療」は2.3%増の29兆6117億円。「福祉その他」は5.1%増の14兆9千億円で、02年度以来の高い伸びとなった。景気悪化に伴い失業者が増え、雇用保険の給付費が増えたことが大きい。それぞれのシェアは「年金」が52.7%と圧倒的に大きく、「医療」は31.5%、「福祉その他」は15.9%だった。
社会保障のうち高齢者関係の給付費は合計で65兆4千億円と2.8%増えた。年金は2.9%増の48兆2千億円、高齢者の医療給付費は1.3%増の10兆4千億円だった。介護など老人福祉サービスは4.6%増の6兆7千億円、高齢者の再雇用に伴う給付費は10.9%増の1200億円だった。
09年度の見通しについても「高齢化が続くため(増加)トレンドは変わらない」(同研究所)という。クレディ・スイス証券の白川浩道チーフ・エコノミストは「相当大規模な増税をしなければ社会保障費はまかないきれなくなる。収入の高い人に医療費をもっと自己負担してもらうなど、歳出側の抑制が急務ではないか」と指摘する。

引用した記事にも「年金」シェアが50%超とある通り、社会保障給付については圧倒的な引退世代優遇が臆面もなく実行されています。2008年度は昨年の総選挙前ですから、政権交代前の統計なんですが、昨年の政権交代後はこの傾向が強まっているように感じているのは私だけではないと感じています。

政策分野別社会保障支出の国際比較 (2007年)

まず、私が引退世代優遇とするひとつの根拠ですが、OECD基準に準拠した政策分野別の社会保障給付費の国際比較のグラフは上の通りです。2007年の統計です。いろいろな分類がある中で、「高齢」と「家族」を取り出して、「遺族」や「失業」などを「その他」でひとまとめにしてあります。上のパネルは社会保障給付費の中での構成比、下のパネルはGDP比です。他の先進国と比較して、「高齢」分類では高福祉国スウェーデンもびっくりの手厚い引退世代への給付を実現している一方で、「家族」分類は低福祉国である米国とともにほぼ最低レベルにあるといえます。「高齢」と「家族」で10倍の差がついているのは上のグラフの中では日本だけです。もちろん、他国と比較して少子化も高齢化もともに進行していることは考慮する必要はあるのかもしれませんが、もしも、少子高齢化の流れを転換したいのであれば、5兆円、すなわち、社会保障給付費の中では5%くらい、GDP比で1%くらいの財源を「高齢」分類から「家族」分類に振り替えることは考えられないんでしょうか。それが先進国のスタンダードだという気がしなくもありません。

年収階層別にみた在学費用の年収に対する割合

特に、勤労世代の中でも子育て世代の教育費負担が重くなっています。上のグラフは11月12日に日本政策金融公庫から発表された「教育費負担の実態調査結果」の p.7 図-10 年収階層別にみた在学費用の年収に対する割合、という図からデータを取って私がグラフ化しています。もちろん、国の教育ローンを利用している勤務者世帯のデータですから、教育費の割合が高いバイアスはかかっているものの、それにしても、200-400万円所得世帯で50パーセントを超え、400-600万世帯でもほぼ40パーセントを占める教育費負担は異常と言わざるを得ません。このグラフに示されている通り、教育費負担が逆進的であるということは、所得格差が世代間で引き継がれる可能性が高いことを示唆しています。政府財政が火の車という財源問題が重くのしかかるとはいえ、この現状を放置したまま高齢者優遇を続けていいのかどうか、私は疑問に感じざるを得ません。

シルバー・デモクラシー

この引退世代と勤労世代で不公平な社会保障給付を実現してしまっている原因はシルバー・デモクラシーにあります。上のグラフは今年9月2日付けのエントリーで厚生労働省の「平成20年所得再分配調査」を取り上げた際にアップしたものですが、男女別にそれぞれの有権者総数に占める年齢階層別の有権者と白抜きの投票者のパーセンテージをプロットしたものです。50代後半以降の圧倒的な投票パワーを読み取るべきです。そして、この先しばらく、この傾向は強まりこそすれ逆転することはあり得ません。従って、このシルバー・デモクラシーに抗して、勤労世代や子育て世代を支援する仕組みを構築していく必要があります。その意味で、私は子ども手当は大いに意味があると受け止めています。

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2010年11月15日 (月)

7-9月期GDP統計の1次QEは過去の数字か?

本日、内閣府から今年7-9月期のGDP統計1次速報、エコノミストの業界で1次QEと呼ばれる重要な経済指標が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済みの成長率は前期比で+0.9%、前期比年率で+3.9%と潜在成長率をはるかに上回る高成長を記録しました。昨年2009年3月の景気の谷以降、4四半期連続のプラス成長を記録したことになります。民間消費が前期比+1.1%増で、消費の寄与度が+0.7%のうち、耐久財の寄与度が+0.6%ですから、猛暑とエコカー補助金やエコポイントによる需要の先食いの可能性が示唆されていると受け止めています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP、実質年率3.9%成長 駆け込み消費で上ぶれ
7-9月期、4四半期連続プラス

内閣府が15日発表した2010年7-9月期の国内総生産(GD)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%増、年率換算では3.9%増となり、4四半期連続のプラス成長となった。エコカー補助金終了やたばこ増税などをにらんだ駆け込み需要に猛暑効果が加わり、個人消費が大幅に伸びた。ただ、政策による押し上げ効果が弱まる10-12月期はマイナス成長に転じる可能性が高い。
海江田万里経済財政相は15日「海外景気の下振れ懸念や円高の影響など、景気をさらに下押しするリスクがある」とのコメントを発表した。さらに「今後の動向には引き続き注意したい」と警戒感を示した。
7-9月期の成長率は1%程度とされる日本の潜在成長率を大きく上回った。日経グループのQUICKが事前にまとめた民間予測平均は年率で前期比2.6%増。実績はこれを1.3ポイント上回った。生活実感に近い名目成長率は0.7%増、年率換算では2.9%増で、2期ぶりにプラスに転じた。
前期比でみた実質成長率0.9%の大半は内需で押し上げられた。とくにGDPの6割弱を占める個人消費は前期比1.1%増と、4-6月期の0.1%増を大きく上回った。なかでも駆け込み需要と猛暑効果で自動車やエアコンなど耐久財が11.1%増え、成長率を0.6ポイント押し上げたのが特徴だ。値上がり前のたばこの買いだめなどで非耐久財も0.6%増えた。
設備投資は前期比0.8%増と4期連続のプラスだったが、伸び幅は4-6月期の1.8%から縮小した。住宅投資は前期比1.3%増と2期ぶりにプラスに転じた。
大幅に伸びた内需とは反対に、外需の押し上げはわずか0.02ポイントだった。これまでの景気回復を支えてきた輸出の伸びが鈍化し、前期比2.4%増にとどまった。中国を含むアジア向けの輸出が数量指数べースで減少し、4-6月期の5.6%増を下回った。輸入は2.7%増だった。
物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比2.0%低下と6期連続でマイナスとなった。国内の価格動向を示す内需デフレーターも1.2%低下。ともに前期からマイナス幅を広げており、デフレから抜け出せない状況が続いている。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2009/
7-9
2009/
10-12
2010/
1-3
2010/
4-6
2010/
7-9
国内総生産GDP▲0.4+1.0+1.6+0.4+0.9
民間消費▲1.1+0.5+1.3+0.3+1.3
民間住宅▲8.3▲3.5+2.0▲0.8+1.3
民間設備▲2.1+1.7+1.0+1.8+0.8
民間在庫 *▲0.6▲0.1+0.3▲0.1+0.1
公的需要▲0.2+0.3+0.4▲0.3▲0.1
内需寄与度 *▲0.9+0.5+1.0+0.1+0.9
外需寄与度 *+0.5+0.5+0.6+0.3+0.0
輸出+9.3+5.1+7.0+5.6+2.4
輸入+5.2+1.4+3.2+4.0+2.7
国内総所得GDI▲0.9+0.9+1.2▲0.1+0.9
名目GDP▲0.6+0.4+1.7▲0.7+0.7
雇用者報酬+0.8▲0.2+2.1+0.5+0.7
GDPデフレータ▲0.7▲2.9▲3.0▲1.8▲2.0
内需デフレータ▲2.9▲2.6▲1.6▲0.7▲1.2

さらに、需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。季節調整済みの系列の前期比成長率に対する寄与度です。左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7-9月期の最新データでは赤い棒グラフの民間消費が大きな寄与を示していることが読み取れます。

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

すでに、先週金曜日11月12日のエントリーで、7-9月期は猛暑需要とエコカーなどの政策効果の駆込みやエコポイントを含む需要の先食いにより高い成長率を記録し、その後、10-12月期にはマイナス成長に陥るとの予想を示し、さらに、7-9月期は前期比で1%、前期比年率で4%くらいと見通しておきましたから、要するに、私の見方通りと受け止めています。なお、今後の成長率の展開について、「ESPフォーキャスト」11月調査結果から引用すると以下のグラフの通りです。10-12月期は明らかにマイナス成長が見込まれ、その後、私の目から見れば少し楽観的なシナリオですが、来年の1-3月期には潜在成長率近傍に戻り、さらにその後は順調に成長率が上昇するように見通されています。私はもう少し慎重なシナリオを持っています。ですから、来年年央まで成長率が停滞する踊り場に入る可能性を考慮すべきです。場合によっては、来年1-3月期も今年10-12月期に続いて2四半期連続でマイナス成長を記録する可能性があると私は考えています。そうすると、来年3月で終了する家電エコポイントの反動から来年4-6月期もマイナスを続け、3四半期連続でマイナス成長となる可能性すら排除できません。加えて、しょうもない観点ですが、米国流に2四半期連続のマイナス成長により暫定的ながら景気拡大局面が終了した、とする論調が出現する可能性を指摘しておきたいと思います。要するに、7-9月期はすでに発表されたようにかなりのプラス成長、10-12月期はマイナス成長、ここまでは私のような凡庸なエコノミストにも見通せますが、その後、来年1-3月期に10-12月期のリバウンドなどによるプラス成長を見込むか、10-12月期に続いてマイナス成長を見込むかは、エコノミストの見方により分かれる可能性があります。前者の1-3月期プラス成長を主張するエコノミストがかなり多いことは私も認識していますが、後者の可能性も見逃すべきではなく、また、1-3月期がプラスだとしても小幅にのプラス成長とどまり、マイナス成長の可能性もある来年4-6月期も含めて、年央まで踊り場的な経済状況を呈すると私は見ています。重ねて、少数意見であることは自覚していますが、踊り場シナリオも可能性として無視すべきではありません。為替相場に注目すべきです。

GDP前期比年率成長率

今回の統計では特にデフレータを取り上げて、デフレについて考えたいと思います。まず、1次QE発表時の最新のデフレータ、すなわち、GDPデフレータ、民間消費デフレータ、国内需要(内需)デフレータの前年同期比で見た騰落率は以下の通りです。伝統に従って、季節調整していないデフレータ原系列を前年同期で比べた騰落率を取っています。景気とともにデフレータの下落幅についても最悪期を脱したといえますが、成長率がプラスを4期連続で続けている一方で、7-9月期もデフレータは軒並み低下幅を拡大し、GDPデフレータで見た物価はいまだにプラスに転じそうな気配すらありません。

デフレータの推移

10年ほど前まで、デフレの定義について混乱が見受けられたんですが、2001年の岡本論文、すなわち、岡本直樹 (2001) 「デフレに直面する我が国経済 - デフレの定義の再整理を含めて -」、景気判断・政策分析ディスカッション・ペーパー DP/01-1、内閣府、2001年3月、によりデフレとは景気と切り離して「物価の持続的な下落」(岡本論文 p.19) と再定義された一方で、デフレの原因については混乱した議論が現在でも見受けられます。岡本論文でもフィリップス曲線や需給ギャップなど、複数の原因説を取り上げています。いくつかデフレに関する議論を概観した私の感想は、ここまで長期に継続している複雑な経済現象をたったひとつの原因で論じるのは無理があり、同時に、たった一つの解決策しか提示していない議論は疑わしい、というものです。
私がデフレに限らず主張しているのは、経済主体別に考えてみることです。すなわち、マクロ経済学では経済主体として家計と企業と政府と海外を想定します。家計と企業を合わせて民間部門となり、この民間部門に政府を合わせて国内部門といえます。国内部門に海外を加えて世界経済といえるかもしれません。ですから、例えばデフレに当てはめると、経済主体別にいくつかデフレの原因を考えるのも一案と考えています。少なくとも単純な見方を排して頭の体操になりそうな気がします。具体的には、家計部門では人口減少や少子高齢化、企業では値下げ・賃下げという意味でのカギカッコ付き「デフレ・スパイラル」、あるいは、海外進出に伴う産業空洞化、政府ではいうまでもなく金融政策と財政政策の経済政策の失敗、海外については中国をはじめとする新興国の追い上げ、キャッチアップ対象の喪失、などなどです。

繰返しになるものの、実はデフレに限らないんですが、デフレのような複雑な経済現象について、たったひとつの原因がすべてであると決めつけるような論調、あるいは、たったひとつの対応策ですべてが解決できるように主張する論調、こういった議論には一定の批判的な見方が必要であろうと私は受け止めています。その意味で、私自身はリフレ派のエコノミストであると自覚しており、デフレ対策としてインフレーション・ターゲティングの有効性や重要性は十分理解するものの、もしも「インフレーション・ターゲティング一本やり」になっているのであれば、疑問を感じる人が多いであろうことは理解しますし、リフレ派の議論は、決して、「インフレーション・ターゲティング一本やり」ではないことを主張する必要があると感じています。

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2010年11月14日 (日)

今年度下期のNHK連続テレビ小説「てっぱん」はパス!

すでに1月半経過していますが、今年度後半のNHK連続テレビ小説「てっぱん」が始まっています。せいぜい放送開始から1か月くらいでブログに取り上げる私なんですが、ここまで遅れたのは理由があります。好きになれないからです。でも、ビデオリサーチの視聴率はそこそこ行っています。直前の「ゲゲゲの女房」効果ではないかと私は想像していますが、以下の通りです。

放送年度番組名初回視聴率平均視聴率
2010年てっぱん18.2%?
ゲゲゲの女房14.8%18.6%
2009年ウェルかめ16.0%13.5%
つばさ17.7%13.8%
2008年だんだん16.8%16.2%
16.5%15.2%
2007年ちりとてちん17.1%15.9%
どんど晴れ14.9%19.4%
2006年芋たこなんきん20.3%16.8%
純情きらり17.7%19.4%

ルックスはともかく、ヒロインの性格が私には奇異に感じられます。ものすごい田舎育ちであればともかく、尾道出身でここまで田舎っぽく濃厚な人間関係を求める若い女性がいること自体が不思議です。ヒロイン同級生の篠宮造船の娘さんの政略結婚まがいのお話も、ムチャクチャに感じます。少し前までの「ゲゲゲの女房」との落差をとっても感じています。一応、NHKのサイトに置いてあるキャストのフラッシュに直リンしておきます。

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2010年11月13日 (土)

10月のたばこ値上げのその後の帰結やいかに?

先月10月1日からタバコが値上げされました。買いだめ需要の動向は11月1日のエントリーで簡単に取り上げておきましたが、今月に入ってから経済を離れて喫煙行動や禁煙に関するアンケート調査結果がいくつか発表されています。私が入手したのは発表順に従ってクロス・マーケティングとマクロミルで、参照先は以下の通りです。

クロス・マーケティングのリポートはメールアドレスとともに請求すれば pdf ファイルで送ってくれます。マクロミルのリポートはサイトにアップしてあります。クロス・マーケティングの調査対象には「元々吸っていない」人が過半数含まれていますが、マクロミルは値上げをきっかけに禁煙を始めた人を対象としていますので、調査結果はかなり雰囲気が違います。
まず、値上げからほぼ1か月経過時点における禁煙成功率はマクロミルでは60%を超えます。他方、諦めた人が約20%で、残りはグレーゾーンだったりします。以下のグラフの通りです。

マクロミル: 禁煙成功率

他方、クロス・マーケティングの結果では、禁煙に成功したのはほぼ8人に1人の12%余りだったりします。以下のグラフの通りです。

クロス・マーケティング: 禁煙成功率

クロス・マーケティングの結果から、「検討した」あるいは「実際にやってみた」禁煙対策は以下の通りです。いずれも電子たばこがもっとも多くなっています。以下の通りです。なお、マクロミルの調査から、禁煙を継続するための1か月の予算は平均2,188円との結果を得ています。セブンスター5箱分くらいですから安いものといえましょう。

クロス・マーケティング: 禁煙対策

そして、マクロミルの結果から、禁煙が最初に挫折したのは3日目が最も多く、実は1週間以内に65%ほどがたばこに手を付けていることが明らかになっています。下のグラフの通りです。なお、禁煙していてもっともたばこを吸いたいと思うのは、「イライラしたとき」、「食事のあと」、「お酒を飲んだとき」の順で高くなっています。

マクロミル: 禁煙が最初に挫折した日

両者の調査結果で、最初の禁煙成功率の大きな違いは別にして、禁煙に関しては、何となく実感に合っているような気がしないでもありません。週末ですので軽く済ませておきます。

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2010年11月12日 (金)

来週発表の7-9月期GDP1次QEは政策効果の駆込み需要で大幅なプラス成長か?

内閣府による来週11月15日の発表を前に、1次QEに必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから7-9月期の1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回の2次QEはいきなり「過去の数字」とみなされる可能性があることから、可能な範囲で10-12月期に関する見方を取ったつもりですが、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.6%
(+2.5%)
10-12月期以降は、景気対策効果の一巡、輸出の増勢鈍化を背景に、足踏み局面に入る見通し
みずほ総研+0.7%
(+2.7%)
秋以降は個人消費が弱含む中で景気は全体として停滞感を強めている
ニッセイ基礎研+0.5%
(+2.2%)
10-12月期は輸出の低迷が続く中、駆け込み需要の反動減により民間消費が大きく落ち込むことが見込まれるため、マイナス成長に転じる可能性が高い
第一生命経済研+0.9%
(+3.6%)
輸出の減速が続くなか、個人消費で大幅な反動減が予想されることから、10-12月期は大幅なマイナス成長になる可能性が高い
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.7%
(+2.9%)
4四半期連続でプラス成長となり、伸び率も高めになったと見込まれる
三菱総研+0.4%
(+1.7%)
4四半期連続のプラス成長を予測
三菱東京UFJ銀行+0.7%
(+2.9%)
基調としては、足元の景気は減速傾向
みずほ証券リサーチ&コンサルティング+0.7%
(+2.8%)
続く10-12月期はマイナス成長の可能性が高い
伊藤忠商事+1.1%
(+4.5%)
10-12月期は駆け込み需要の反動減が響き、マイナス成長への転落が濃厚

一目瞭然ですが、三菱総研を例外として、7-9月期はほぼ前期比年率で2%を超える予想が中心となっています。上の表の中で最も高いのは伊藤忠商事の前期比1.1%、年率4.5%となっています。実は、私の予想はこれに近いです。切りよく大雑把に、前期比1%、年率で4%くらいではないかと予想しています。なお、昨日発表された経済企画協会のESPフォーキャスト調査では、民間エコノミストの7-9月期成長率予想の平均は+2.3%を記録した後、10-12月期には▲0.9%に落ち込み、来年1-3月期には+1.0%に回復するというシナリオが示されています。別件ながら、このESPフォーキャスト調査結果で、民間エコノミスト諸氏と日銀政策委員の物価見通しが大きく乖離しているグラフが示されています。10月28日付けのエントリーで日銀の「展望リポート」を取り上げた際、私はエントリーのタイトルを「驚くべき強気の物価見通し」としたんですが、その根拠の一端が示せると思いますので、1次QE予測とは関係ないながら、ESPフォーキャストと日銀「展望リポート」の物価見通しの大きな差を明らかにしたグラフを引用します。特に今年度2010年度の差が大きくなっています。下がる方の高校実質無償化は考慮しないと「展望リポート」に明記してありましたが、上がる方のたばこ値上げは含めるとか、都合良く非対称的な処理をしていたりするんでしょうか。

ESPフォーキャストと日銀政策委員の物価見通しの乖離

1次QE予想に戻って、7-9月期の成長率が高い主たる要因は政策と制度に起因しています。すなわち、たばこの買いだめ需要こそ微々たるものでしょうが、エコカー補助金の終了を見越した駆込み需要が大きく、家電エコポイントも同様の需要の先食いを生じています。ということで、いくつかの機関のヘッドラインに取り上げておきましたが、これらの政策や制度要因に起因する駆込み需要や需要の先食いのため、世界経済の低迷や円高による輸出の鈍化と相まって、10-12月期は個人消費を中心に大幅なマイナスとなる可能性が強いと私は考えています。多くのエコノミストもご同様だと思います。従って、どんなに高成長を記録しようと、7-9月期の成長率は発表されたとたんに「過去の数字」と見なされる可能性が高いと私は受け止めています。

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2010年11月11日 (木)

先行き微妙な機械受注と上昇に転じた国内企業物価

本日、内閣府から9月の機械受注統計が、また、日銀から10月の企業物価 (CGPI)が、それぞれ発表されました。機械受注のうち、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」は、8月が前月比+10.1%増の後、9月は▲10.3%減の7,565憶円となりました。また、企業物価のうち国内企業物価は10月の前年同月比で+0.9%の上昇となりました。もっとも、このうち、+0.40%はたばこ値上げの寄与だったりします。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、10-12月は9.8%減見込む 9月10.3%減
内閣府が11日に発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標になる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は7565億円と前月比で10.3%減った。8月が大幅増だった反動から、4カ月ぶりにマイナスに転じた。7-9月期は前期比9.6%増になった。ただ同時に発表した10-12月期見通しでは9.8%減を見込み、円高の影響など先行きに警戒を示した。
機械受注統計は工場の生産設備などの受注額を集計した指標で、3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す。9月は日経グループのQUICKがまとめたエコノミストの中央値(前月比9.7%減)に近い水準で、内閣府は「機械受注は持ち直している」との基調判断を据え置いた。ただ円高の影響を踏まえて「製造業に生産や輸出の鈍化による弱い動きもある」と警戒感も示した。
業種別の受注額では、製造業が前月比20.7%減と4カ月ぶりにマイナスだった。8月に大型案件があった原子力原動機など非鉄金属や鉄鋼業が数字を押し下げた。非製造業の受注額は船舶・電力を除くベースで3.0%増だった。
7-9月期の受注額は2兆3662億円で4期連続のプラス。増加率は比較可能な1987年4月以降で3番目に高い伸びになった。一方で、10-12月期の見通しは5期ぶりのマイナス。製造業、非製造業とも受注が減少する予想だが、内閣府は「設備投資に慎重になっているとはいえない」とみている。
企業物価0.9%上昇 10月、22カ月ぶり高い伸び
日銀が11日に発表した10月の国内企業物価指数(2005年=100、速報値)は103.0と前年同月比で0.9%上昇した。08年12月以来、1年10カ月ぶりの高い伸び率になる。たばこ税の引き上げが響いたほか、原油や鉄などの資源価格上昇を関連製品に価格転嫁する動きも進んだ。デフレ下で最終製品の価格下落が続くなか、企業物価の上昇は企業収益の圧迫要因になる。
同指数は企業が出荷や卸売りの段階で相互にやり取りするモノの価格を示す。調査対象の855品目のうち、前月よりも23品目多い303品目が上昇した。下落したのは377品目だった。分野別では、たばこを含めた加工食品が2.7%上昇したほか、石油・石炭製品が5.6%、非鉄金属が8.7%それぞれ上昇した。

まず、機械受注に関するグラフは以下の通りです。上のパネルはコア機械受注と呼ばれる「船舶・電力を除く民需」及びその後方6カ月移動平均、さらに、コア機械受注からさらに携帯電話を除いたコアコア機械受注をプロットしてあります。下のパネルは需要者別に外需、製造業、船舶を除く非製造業です。折れ線グラフのラインの色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。

機械受注統計の推移

グラフは少し見づらいんですが、コア機械受注の後方6カ月移動平均は9月もプラスを続けています。コア機械受注は8月の2ケタ増を記録した後、9月は逆に▲10%超減の反動減となりました。内閣府も基調判断は変更しないようですし、もう少し推移を見なければよく分かりません。下のパネルを見る限り、機械受注全体の先行指標となっている外需も大きく方向転換したようには見えません。ただし、注意すべき点が2点あり、第1に、7-9月期は大幅増を記録した一方で、先行き10-12月期は2ケタ近い▲9.8%の減少が見込まれていることです。第2に、知り合いのエコノミストの指摘で分かったんですが、季節調整していない原系列ながら、大分類の産業別で見て電子・通信機器の前年同月比伸び率が今年に入ってから10%超を続けているんですが、例えば、このブログの10月30日付けのエントリーで鉱工業生産指数を取り上げた際にグラフを示した中で、電子部品・デバイスはかなり在庫が積み上がっており、整合性を欠いた統計となっています。どちらが正しくてどちらが間違っているのか、あるいは、別の見方も出来るのか、現時点では何とも言えませんが、やや不思議な動きを示しているので注意すべきであると受け止めています。

機械受注統計の推移

逆に、決して弱い方向に転換したわけではないことを示すグラフは上の通りです。上のパネルは受注残高とそれを販売額で除した手持ち月数です。下のパネルは達成率です。受注残高は少しもたついているものの、販売が順調に回復して手持ち月数は順調に低下しています。また、達成率は経験的に景気転換点を示す90%を超えて来ました。通常は、設備投資が上方修正される際のサインのひとつといえます。いずれにせよ、今日発表された9月の機械受注統計の結果は微妙であり、やや弱い気もしますが横ばい圏内と言われればそうかもしれませんし、私も判断に困っているのが実情です。もう少し先まで統計を見極めたい気がします。

企業物価の推移

最後に、企業物価前年同月比上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内、輸出入別、下のパネルは素原材料、中間財、最終財別です。国内物価は前年同月比+0.9%の上昇となりましたが、約半分の+0.40%の寄与はたばこに負っています。実力はほぼ半分の+0.5%といえます。また、下のパネルを見ると、加工段階が川下に下りるほど価格の上昇率が低下し、最も川下である最終財ではマイナスを記録しています。素原材料や中間財に比べて最終財の価格が上昇しないのは、原因としては需給バランスに起因しますが、原材料が値上がりして製品単価が下がるんですから、企業収益を圧迫する大きな要因となります。すなわち、デフレを脱却することが企業収益、ひいては株価のためにも重要な課題であることを改めて理解すべきです。

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結婚記念日おめでとう!

今日は私と女房の結婚記念日です。上のおにいちゃんが中学に上がっていますので、10年以上を経過していることは明らかです。中年のいいオッサンとオバハンの夫婦になって来た気がします。もしも、めでたいとお考えでしたら、左のくす玉をクリックして割って下さい。くす玉から現れる垂れ幕は「ご結婚おめでとう!」となっていますから、近い将来に結婚する人向きだという気がしないでもないんですが、適当に代用しておきます。

結婚記念日を忘れていないとの証拠のためにも、朝のうちにアップしておきます。

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2010年11月10日 (水)

国際機関からのリポート3本ほか、増え続ける国債残高

やや旧聞に属するものも含めて、先週から今週にかけて、私の気になっている国際機関のリポートを取りまとめておきたいと思います。まず、第1に、国際通貨基金 (IMF) の Fiscal Monitor です。先週11月4日に公表されています。取り上げるのが遅れた一つの理由ですが、国内のメディアにはあまり注目されなかったような気がします。どうして国内メディアに注目されなかったのかというと、憶測するに、メインテーマが副題の通り、Fiscal Exit: From Strategy to Implementation となっていて、財政政策の出口戦略から最も遠い日本では等閑視されたのかもしれません。例えば、pdf の全文リポートの p.25 Figure 2.1. Advanced Economies: General Government Debt (2010) and Financing Needs (2011) は以下の通りです。縦軸に財政調整必要額、横軸に債務残高のGDO比を取ったグラフで、日本だけが右上に飛び離れているのが分かります。

Advanced Economies: General Government Debt (2010) and Financing Needs (2011)

国際機関のリポートから離れますが、この点と関連して、本日、財務省から9月末現在での「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」が発表されています。政府保証債務を別にして、国債残高は以下のテーブルの通りです。数字の単位は億円です。とっくにグロスで900兆円を超えて、今年度に入ってからの増加額は半年で25兆円を超えています。1,000兆円を目指す展開になっているような気がします。なお、一番右の「増減」欄は昨年度末、すなわち、2010年3月末に対する増減です。

区分金額増減
内国債7,412,878207,988
 普通国債6,138,134198,417
 長期国債 (10年以上)3,911,225179,680
中期国債 (2年から5年)1,843,38571,454
短期国債 (1年以下)383,524▲52,716
財政投融資特別会計国債1,232,79910,546
 長期国債 (10年以上)1,017,31714,574
中期国債 (2年から5年)215,482▲4,028
交付国債3,824▲672
出資・拠出国債17,368▲303
株式会社日本政策投資銀行危機対応業務国債13,500-
日本高速道路保有・債務返済機構債券承継国債7,254-
借入金543,903▲20,160
 長期 (1年超)202,830▲8,091
短期 (1年以下)341,073▲12,069
政府短期証券1,131,83671,555
合計9,088,617259,382

第2に、いくつかの国内メディアで報じられていたように、昨日、経済開発協力機構 (OECD) から Southeast Asian Economic Outlook 2010 が発表されています。東南アジアが対象ですから、ASEAN が中心で中国やインドは含まれていません。ペーパーバックの書籍として売り出されるようです。OECD パリ本部のサイトでは html のテーブルしか見つけられなかったんですが、東京事務所のサイトにある「エグゼクティブ・サマリー」から以下の表を引用しています。東南アジア諸国の経済成長は Great Recession の前の pre-crisis の水準に復帰したと評価しています。

表1-実質GDP成長率 (年率、%)

最後に、第3に、国際エネルギー機関 (IEA) から World Energy Outlook 2010 が発表されました。昨年の Early Excerpt は気候変動に関する章だったんですが、今年は Energy Poverty と題して国連ミレニアム開発目標に合わせてエネルギーへのアクセスを取り上げていましたので、私は特に興味ありませんでした。下のグラフは Key Graphs の最後のページから引用した Change in oil demand by region in the 450 Scenario compared with 2008 です。プレスへのプレゼン資料にも同様のグラフがあります。なお、450シナリオとは昨年からIEAが提言し始めたエネルギー政策で、大気中の温室効果ガスのCO2換算濃度450ppmに抑えることを目標にすることから命名されています。このためには、2050年までにCO2排出量を現状より50%削減することが必要で、また、これが達成されれば、気温上昇を2度程度に抑えることが出来ることから、国連や昨年のCOP15の議論とも整合的といえます。この450シナリオの他に、IEAでは、エネルギー消費がバンバン増える現状維持シナリオと、この両者の中間の新政策シナリオの3セットで示されることが多いんですが、下のグラフは450シナリオに従っていますから、エネルギー消費が逆U字型の環境クズネッツ曲線に沿って目に見えて減少する結果となっています。でも、大雑把に中国やインドなどの新興国のエネルギー消費増を米欧の先進国の減少で吸収する形であることは、グラフを見れば分かると思います。日本は明示されていませんが、一番下の Other OECD に含まれるものと考えられます。

Change in oil demand by region in the 450 Scenario compared with 2008

少し遅れてしまったモノもありますし、特徴的な図表の引用だけのいつもの手抜きではありますが、国際機関のリポートをグラフも含めて世間一般のメディアよりも少し詳しく取り上げるのが私のブログの特徴だったりします。今夜はまとめて3本ピックアップしておきます。

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2010年11月 9日 (火)

順調な経常収支と大幅に落ち込んだ景気ウォッチャー調査

本日、財務省から9月の国際収支が、また、内閣府から10月の景気ウォッチャー調査結果がそれぞれ発表されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の鳥です。

9月の経常黒字、2カ月ぶり増加 自動車輸出が堅調
財務省が9日発表した9月の国際収支(速報)によると、経常黒字は前年同月比24.3%増の1兆9598億円と、2カ月ぶりに増加した。中国など向けに乗用車輸出が堅調だったほか、円高で輸入額の伸びが抑えられたことから貿易黒字が増加。海外子会社からの配当金が増えた所得収支も伸びた。
貿易・サービス収支は8571億円の黒字で49.9%増加。うち貿易収支は9269億円の黒字で53.2%増加した。サービス収支は699億円の赤字(前年同月は332億円の赤字)。海外からの特許料の受け取りが減少したことが影響した。所得収支は1兆1810億円の黒字で、9.4%増加した。
財務省は「世界経済回復のプロセスのなかで、少しずつ元の姿に戻りつつある」と分析。一方、輸出の伸び率が足元で縮小していることや、世界的な低金利から慎重な見方も示した。
同時に発表した2010年度上期(4-9月期)の経常黒字は、前年同期比13.9%増の8兆3615億円。リーマン・ショック後の落ち込みの反動で、貿易黒字が大幅に拡大したことが寄与した。
街角景気、3カ月連続悪化 補助金終了や円高懸念で
内閣府が9日発表した10月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比1.0ポイント低下の40.2と3カ月連続で悪化した。エコカー補助金の終了や円高の影響で、指数を構成する家計、企業、雇用すべての指数が低下した。たばこの駆け込み需要の反動減も響いた。
2-3カ月先の先行き判断指数は0.3ポイント低下の41.1と、2カ月ぶりに悪化。エコカー補助金終了や円高などが景気に与える悪影響を懸念する声が強く、企業や雇用関連の指数が低下した。
内閣府は判断を「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」に据え置いた。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は10月25日から月末まで。

いつものグラフについて、最初に経常収支は以下の通りです。上のパネルは経常収支の実額の月次データを折れ線グラフにして表し、その内訳の貿易収支やサービス収支などを棒グラフで示しています。凡例の通りです。下のパネルはG20などで注目されている経常収支のGDP比の四半期データを経常収支の額とともにプロットしています。赤い棒グラフは経常収支の実額を左軸の目盛りで、青い折れ線は経常収支のGDP比を左軸の目盛りで示しています。いずれも季節調整済みの系列です。

経常収支の推移

上下のパネルの2枚のグラフとも、リーマン・ブラザース証券の破たん後の Great Recession から世界経済が立ち直りつつある中で、我が国の貿易収支や経常収支が順調に回復している姿を示していると受け止めています。また、下のパネルを見れば分かりますが、現時点では我が国の経常収支GDP比はG20などで議論された4%には達していませんが、第14循環の最終盤から谷の周辺では4%を超える局面もあったことから、この経常収支のGDP比4%というのはいいセンを突いていることが理解できると思います。

景気ウォッチャー調査の推移

景気ウォッチャー調査の結果は上のグラフの通りです。国民のマインドは一段と下がりました。赤い折れ線グラフが現状判断DIで水色が先行き判断DIです。影を付けた部分は景気後退期を示しています。エコカー補助金の終了や円高の影響などにより、指数を構成する家計・企業・雇用すべての指数が低下しています。

最後に、昨日、財務省から発表された今年7-9月期の「外国為替平衡操作の実施状況」に従えば、7-9月期の為替介入は9月15日に2兆1,249億円の米ドル買い・日本円売り介入が実施されただけでした。このブログでは、9月24日も円ドル相場に不連続な動きがあったことを取り上げましたが、これは当局の為替介入ではなかったようです。

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2010年11月 8日 (月)

景気動向指数の一致指数が1年半振りに前月比マイナスに突っ込む!

本日、内閣府から9月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月から▲1.3ポイント低下して102.0となり、昨年2009年3月を谷とする現在の景気回復局面で、1年半振りに初めて前月比マイナスを記録しました。もっとも、CI先行指数は3か月連続でマイナスとなっています。いずれにせよ、CI一致指数の3か月後方移動平均の前月差が17カ月ぶりに▲0.13ポイントのマイナスに転じたことから、内閣府は基調判断を「足踏みの動きもみられる」とただし書きを付け、1年11か月振りに下方修正しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数1年半ぶり悪化 9月、基調判断を下方修正
内閣府が8日発表した9月の景気動向指数(CI、2005年=100、速報)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比1.3ポイント低下の102.0と、1年6カ月ぶりに悪化した。エコカー補助金終了の影響や輸出の勢いが鈍化していることを受け、生産関連や消費関連の指数が低下した。
基調判断は「改善を示している。ただし、CI一致指数の3カ月後方移動平均の前月差が17カ月ぶりにマイナスに転じており、足踏みの動きもみられる」とただし書きを付け、1年11カ月ぶりに下方修正した。CI一致指数の3カ月後方移動平均は0.13ポイント低下した。
記者会見した和田隆志内閣府政務官は「必要以上に神経質になる必要はないが、マイナスの要因分析をしっかりしながら政策に反映することが必要だ」と説明。一方で「景気がいわゆる足踏み状態に入っているのだろうと実感せざるをえない。少し心配な状況になっている。しっかりと資金の回転を得るための経済対策を打っていく」とも語った。
数カ月後の景気の先行きを示す先行指数は0.6ポイント低下の98.9と3カ月連続で低下した。景気に数カ月遅れる遅行指数は1.0ポイント上昇の88.4と2カ月ぶりに上昇した。

つぎに、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCI、下がDIです。CIは赤が一致指数、水色が先行指数を表しています。DIは一致指数だけです。上下のパネルとも影を付けた部分は景気後退期です。

景気動向指数の推移

景気動向指数を見る限り、エコカー補助金の終了に加えて世界経済の減速と円高などに伴う輸出の停滞から、足元で景気指標は8月がピークだった可能性があります。もちろん、四半期でならしてみれば7-9月期まで景気は回復期にあったことは明らかですが、少なくとも、10-12月期にはエコカー補助金打切りと輸出停滞に加えて、たばこ買いだめ需要の反動や家電エコポイントの制度変更なども加え、GDPベースで大きなマイナス成長を記録することは明らかです。月次で見れば8月が、四半期で見れば7-9月期が足元のピークになる可能性があります。もちろん、そのまま景気後退局面に移行するとまで単純に考えているわけではありませんが、マイナス成長が10-12月期のみで終わるとはとても思えず、来年前半くらいまで日本経済は低迷する可能性が高いと受け止めるべきです。

私は来年年央くらいから緩やかに日本経済は回復軌道に復帰するものと楽観していますが、政策要因で景気が振れているだけに、政策効果が剥落した時に日本経済の基調がどうなっているのか、それほどの自信はありません。現時点で考えて、もっとも警戒すべきポイントは為替レートの水準であろうと私は予想しています。

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2010年11月 7日 (日)

体重計の復活

夏の人事異動で東京に戻ってから、体重の記録を復活しました。
今日は準備が整いませんでしたが、そのうち、サイドにも置いておきます。

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2010年11月 6日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

昨日、米国の労働省から10月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業雇用者数は季節調整済みの前月差+151千人、うち民間部門が+159千人となり、失業率も同じく季節調整済みの系列で前月と同じ9.6%となりました。評価の難しい結果だという気がします。「まずまず」という気もすれば、「まだまだ」という気もします。典型的には、私がよく参照している New York TimesWall Street Journal でかなり評価が異なりました。前者は Good, but not good enough. で書き出したのに対し、後者は The American job machine appears to have finally slipped into a higher gear. で始めています。私は基本的に Wall Street Journal の記者に近い評価なんですが、New York Times の記者の気持ちも分からないでもありません。まず、両社の記事の最初の方の事実関係を報じたパラを引用すると以下の通りです。

New York Times: Jobs Data Highlights the Challenges for Washington
Good, but not good enough.
As President Obama said himself, that was the message in Friday's Labor Department report, which showed that the United States economy added 151,000 jobs in October.
The gain was certainly a welcome change after four months of job losses, and was better than what economists had expected. Still, it was not nearly strong enough to make a dent in unemployment. Nearly 15 million people are still out of work, and the unemployment rate remains stubbornly high at 9.6 percent.
Wall Street Journal: U.S. Sees Surprise Growth in Jobs
The American job machine appears to have finally slipped into a higher gear.
Employers boosted hiring in October, offering hope that the recovery may be picking up steam. The government's broadest snapshot of the labor market showed the U.S. created 151,000 jobs last month, mainly on a surge of hiring by service businesses. The private sector notched its largest gain since April, adding 159,000 jobs.
The government also revised up job figures for August and September, indicating the economy shed 110,000 fewer jobs than previously thought. Even so, the jobless rate, based on a separate survey of households, remained at 9.6% for the third straight month as more workers gave up looking for work and left the official jobless rolls.
The upbeat job report came just two days after the Federal Reserve announced a plan to buy up government debt in an effort to boost growth, and it follows other indications that the economy may be growing faster than the roughly 2% rate that many analysts project for the fourth quarter.

続いて、私がいつも書いているグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差ですが、赤い折れ線は政府部門を含むすべての非農業部門、水色は政府をのぞいた民間部門です。下のパネルの緑色の折れ線グラフは失業率です。いずれも季節調整済の系列で、影をつけた部分は景気後退期を表しています。

米国雇用統計の推移

2枚ほど New York Times のサイトから画像を引用してお終いにします。まず、久し振りに復活した The Labor Picture in October です。

The Labor Picture in October

最後に、New York Times のブログ・サイトである Economix から、1か月分だけ更新された Jobless Recovery のグラフの引用です。

Jobless Recovery

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2010年11月 5日 (金)

今冬の年末ボーナスは期待できるか?

11月に入って年の瀬も近づき、そろそろボーナスが気になる時期を迎えました。ということで、やや強引ながら、今夜のエントリーでは、シンクタンクなどから出そろった年末ボーナスの予想を取り上げたいと思います。思い起こせば、2年ほど前、2008年9月のリーマン・ブラザース証券の破たんに端を発する金融危機とその少し前から始まっていた景気後退のために、昨年2009年のボーナスは夏も冬も壊滅的な打撃を受けましたが、その後、今年に入って緩やかながら徐々にお給料全般が回復し始めているような実感があります。まず、厚生労働省の毎月勤労統計から今年の夏季ボーナスの額を産業別に見ると以下の通りです。

2010年夏季ボーナス額

最近の雇用統計では、医療・福祉の雇用者数の伸びが大きいんですが、少なくとも、今夏のボーナス額で見る限り、それほどお給料のいい業種ではないのかもしれません。それはさて置き、厚生労働省の毎月勤労統計に従えば、2010年夏季ボーナスは5人以上事業所の平均で前年比+1.1%増でした。で、年末ボーナスの予想がどうかというと、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名民間
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研38.3万円
(+0.8%)
59.4万円
(▲8.1%)
昨年の大幅減を埋め合わせるには至らず、水準としては1980年代前半並みにとどまる見通し
みずほ総研38.5万円
(+1.3%)
69.9万円
(▲9.3%)
前年の落ち込みに比べてプラス幅は小さい。今後弱含みが予想される個人消費を下支えするには力不足
三菱UFJリサーチ&コンサルティング39.3万円
(+3.3%)
58.6万円
(▲9.4%)
2010年冬のボーナスは、2年ぶりに増加すると予想
第一生命経済研38.6万円
(+1.5%)
57.4万円
(▲9.0%)
冬季賞与も夏季賞与同様に小幅な増加が続く可能性が高い

いつも思うことですが、ボーナスこそ官民格差が最も激しい指標であり、国家公務員になってよかったと思う瞬間です。なお、上の表の中でみずほ総研の公務員ボーナス額がとりわけ大きくなっているのは、管理職を含めているからといわれています。それから、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングの両社は国家公務員と地方公務員を別々に算出しており、平均は明らかではありませんので、自分の興味の対象として国家公務員で代表させています。悪しからず。

年末賞与平均金額の推移

上のグラフは表にある日本総研のリポートから引用しています。昨年の年末ボーナスが10%近く減少したのに対して、今年の増加は小幅にとどまっており、5人以上事業所でも50万円を超えていたかつての支給水準に遠く及びません。もちろん、上の4機関の年末ボーナス見通しでは、すべて、民間ボーナスが1人当たりで増加し、さらに、支給対象者数も増加すると見込まれていますので、このかけ算の結果であるボーナス支給総額は当然ながら増加します。しかし、年末ボーナスが増加するとはいえ、エコカー補助金や家電エコポイントなどの政策や制度要因で大きな変動を生じ、10-12月期にはほぼ確実にマイナスを記録するであろう個人消費を下支えするには力不足と私は受け止めています。

単にボーナスだけの問題ではないんですが、従来から繰り返して主張している通り、私はデフレからの脱却の必要条件が需給ギャップの縮小、あるいは、需要超過への逆転である一方で、十分条件は賃金の上昇であると考えています。

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2010年11月 4日 (木)

本日の日経新聞経済教室の「経済学者アンケート」と海外情報2件

昨年に続いて、日本経済学会と日本経済新聞のコラボにより、「経済学者アンケート」が実施され、マクロ政策、菅政権の政策、世界経済の3点について、本日付けの日経新聞の経済教室に取り上げられています。なお、私もいくつか経済学に関連する学会に所属してるんですが、誠に残念ながら、日本経済学会とはご縁がなく、当然ながら、このアンケートにも回答していません。ということで、ごく簡単に日経新聞のサイトからアンケート結果のグラフを引用して、私の感想を述べたいと思います。なお、グラフを引用した日経新聞のサイトを開くには何らかの登録が必要かも知れません。悪しからず。

経済学者アンケート「日本のマクロ経済政策に対する考え方」

まず、「日本のマクロ経済政策に対する考え方」について、最初の問いである「90年代以降の財政・金融政策」はともに「あまり効果なし」と私は考えています。ただし、理由が異なっていて、財政政策は構造的に効果が小さくなっている可能性があるのに対して、金融政策はまじめに取り組んで来なかったので効果がないんだと考えています。ですから、次の「財政拡大は必要か」に対する回答は「拡大すべきではない」になります。どうして、「金融緩和は必要か」という問いがないのかは理解できませんが、問いがあれば「無条件で緩和を」くらいを回答するんではないかと思います。
次の消費税に関する2つの問いは、誠に申し訳ないながら、「わからない」と「その他」です。現時点で私自身の考えがまとまっていません。基本的には、高齢者に対する大盤振る舞いを止めれば消費税の増税は必要ないような気もしないでもないんですが、キチンとした試算はしていないという意味で、考えがまとまっていません。それから、金融政策に関する次の2つの問いについては「非伝統的な金融政策」は「積極的に実施・強化」すべきであると考えていますし、「インフレ目標政策」も「採用すべきだ」というのはリフレ派のエコノミストとして当然でしょう。

経済学者アンケート「菅政権の政策など」

次に、「菅政権の政策など」についての問いでは、「『第三の道』に対する考え方」は「支持できない」と言わざるを得ません。忌憚なくいえば、私には「トンデモ経済学」にしか見えません。「労働者派遣法改正の方向」は「製造業も登録型も禁止すべきではない」と考えます。ひょっとしたら、唯一の多数意見に一致なのかもしれません。「移民受け入れ」には「慎重であるべき」と考えています。最後の「福祉の水準と負担のバランスは」の問いに対する回答のグラフはネットだけにあって、新聞の方にはありませんでしたが、私は「その他」であって、国民が選択すべき課題であると考えます。ここでは意見を述べるだけでしょうから OK なんですが、少なくとも、「今後の消費税」とともに、一連の問いの中でもっとも国民の決定に委ねるべき問題であるという気がします。

経済学者アンケート「世界経済の行方」

最後に、紙面では見かけずに、ネットだけにアップされていた「世界経済の行方」に関するグラフは上の通りです。「今の世界経済の状況は」日本と違って、というただし書きが必要ですが、「克服しつつある」ように私には見受けられます。さらに、「5年後の中国経済は」これまためずらしく多数意見と同じで、「成長率は鈍化するが、引き続き安定成長で世界経済を下支え」するんではないかと期待している一方で、さらに先の、例えば、20年後は「成長率が大きく落ち込み、世界経済の波乱要因に」なっている可能性が否定できないと考えています。どこまで短期や長期を考えるかで中国経済の評価は異なります。どうしてかというと、「一人っ子政策」のために日本よりさらに急速に人口の高齢化が進むからです。

Balance Sheet of Federal Reserve

経済学者のアンケートを離れて、海外からのトピックを2点ほど、軽く取り上げておきます。第1に、米国連邦準備制度理事会 (FED) の連邦公開市場委員会 (FOMC) が開催され、広く報じられているように、2011年6月までに6000億ドルの長期国債を購入すると発表しました。市場の事前コンセンサスは5000億ドルでしたので、「予想の範囲内」との受止めで為替相場は大きく変動しませんでした。FED はさらにバランスシートを拡大させ、3兆ドルを目指すことになります。上のグラフはクリーブランド連銀のサイトにあるデータを基に書いています。なお、グラフに凡例がないんですが、上からグレーが "FED Agency Debt Mortgage-Backed Securities Purchases"、黄色が "Liquidity to Key Credit Markets"、緑色が "Lending to Financial Institutions"、赤が今回増額を決定した "Long Term Treasury Purchases"、最後に、青が "Traditional Security Holdings" となっています。また、縦軸の単位は兆ドルです。

OECD Economic Projections

第2に、昨日、G20 ソウル会議に向けて OECD から提出予定の政策提言資料がプレスに発表されています。財政再建をメインテーマにしていますが、次の経済見通し Economic Outlook No.88 で11月18日に明らかにされる予定の OECD の成長率見通しも含まれています。小さいですが、上の表の通りです。Economic Outlook and Requirements for Economic Policy と題する記者発表資料の p.3 を引用しています。大雑把に、2010年から2011年にかけて成長率が鈍化するのは先進国で共通ですが、欧米では小幅ながら2012年には成長率が持ち直すものの、日本では下がり続けるシナリオを OECD は持っているようです。日本経済が冴えないのは世界のコンセンサスになりつつあるのかもしれません。

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2010年11月 3日 (水)

自転車に乗って神宮外苑サイクリングに行き、テスラのショールームに立ち寄る

新しく買った自転車

長崎から東京に戻って、少し前に自転車を買いました。前のママチャリは2003年にジャカルタから帰国して買い求めましたので、すでに7年経過して何度か虫ゴムも取り換えましたが、致命傷だったのが後輪のブレーキの故障です。特に愛着もなかったので、スンナリと新しい自転車を買い求めました。上の写真の通りです。神宮外苑の絵画館をバックに撮っています。

神宮外苑サイクリングコース

ということで、今日はお天気もよかったので午前中から神宮外苑サイクリングコースに出かけます。競輪補助事業ではなかったかと記憶しています。私は競輪はやったことはありませんし、この先そう長くもない人生でやるとも思えませんが、利用できるものは利用します。何周か都心のサイクリングコースを回って楽しませていただきました。
今日の神宮外苑はスポーツファンで大賑わいです。神宮球場では東京六大学秋季リーグの優勝決定戦の早慶戦が闘われますし、国立競技場ではJリーグのヤマザキナビスコカップの決勝戦です。岩田と広島の対戦とありました。さらに、秩父宮ラグビー場では関東大学対抗戦グループの早稲田大vs帝京大と慶應義塾大vs明治大の2戦が予定されています。スポーツの秋真っ盛りといったところです。

テスラのロゴ

テスラ・ロードスター

最後に、神宮外苑からの帰り道で、話題のテスラのショールームをチラリとのぞいて来ました。10月26日にオープンしたそうです。ありました。注目のロードスターを写真に収めて来ました。全国紙各社の以下のサイトで報じられているのと同じだと感激してしまいました。

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2010年11月 2日 (火)

今さら聞けないポケモン「ブラック」と「ホワイト」

9月にポケモンの「ブラック」と「ホワイト」がニンテンドーDS向けのゲームとして発売され、1か月半ほどたちました。その昔の「ダイヤモンド」と「パール」と同じように、「ブラック」と「ホワイト」は基本的に同じ内容ですが、登場するポケモンの種類や出現率、伝説のポケモンに関するイベント内容やポケモン図鑑の説明文などが異なっています。また、その前の世代である「プラチナ」と違って、150種類を超える大量の新ポケモンが追加されました。今さらながらですが、休日前の気楽なエントリーらしく、新しく登場したポケモンについて、中年のオッサン向けにサーベイしておきたいと思います。

スターターのポケモン

まず、スターター向けのポケモンは上の3種類です。左からくさタイプの「くさへびポケモン」ツタージャ、ほのおヤイプの「ひぶたポケモン」ポカブ、みずタイプの「ラッコポケモン」ミジュマルです。スターターはこの3匹から1匹を選ぶことになります。一番最初の世代のフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ、それからダイヤモンド・パールのナエトル、ヒコザル、ポッチャマと同じように、くさタイプ、ほのおタイプ、みずタイプで構成されています。ほのおタイプはくさタイプを燃やすので有利な一方で、みずタイプに弱く、また、くさタイプは水をかけられても平気なのでみずタイプに強い、という三すくみの関係を取っています。なお、アニメの主人公であるサトシがピカチュウをスターター・ポケモンにしたのは、寝坊してフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメが残っていなかったからです。

伝説のポケモン

伝説のポケモンとして注目されているのは上の2体です。左が「はくようポケモン」のレシラム、右が「こくいんポケモン」のゼクロムです。ダイヤモンド・パールではパルキアとディアルガに当たると、我が家の子供達は言っています。ただし、「ブラック」と「ホワイト」の伝説のポケモンはこれだけではなく、トルネロスとか、ボルトロスとか、ランドロスとか、キュレムとか、ほかにもいっぱいいます。伝説のポケモンではないようですが、まったくゲームをしない私には位置づけが不明なのが下の「しょうりポケモン」ビクティニです。図鑑の番号ではスターター・ポケモンの前に来ます。こんなポケモンは初めてです。

ビクティニ

「プラチナ」に続いて、「ブラック」と「ホワイト」も我が家の子供達が買わなかったので、別の面から成長は実感するものの、私の大好きなポケモンの知識も増えません。でも、AKB48や嵐なんかのメンバー構成とか、中年のオッサンにはついて行けない流行分野があることも確かですが、私についてはポケモンぐらいはフォローしておきたいと考えています。

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2010年11月 1日 (月)

政策や制度変更は消費の変動を大きくしたか?

本日、自動車販売協会連合会(自販連)から軽自動車を除く10月の国内自動車販売の統計が発表されました。季節調整していない原系列のベースで前年同月比▲26.7%減の19万3258台と大きく落ち込み、2か月連続で減少しました。言うまでもなく、エコカー補助金が9月7日登録分までで打ち切られた反動です。まず、自動車販売に関して事実関係を報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

新車販売、10月26.7%減 2カ月連続マイナスに
日本自動車販売協会連合会(自販連)が1日発表した10月の国内新車販売台数(軽自動車を除く登録車、速報)は前年同月比26.7%減の19万3258台と大きく落ち込んだ。2カ月連続で減少し、10月としては1968年以来42年ぶりに20万台を割り込み、過去最低水準となった。販売を下支えしてきた「エコカー補助金」が9月7日に打ち切りとなり需要が急減。10月としては過去最大の減少率を記録した。
補助金終了の影響は「小型車など環境対応車が多いブランドほど大きい」(自販連)。主要ブランド別でみると、トヨタ(ダイハツ、日野、レクサスを除く)が24.2%減の10万1518台と落ち込み、ホンダが29.9%減と低迷。日産自は30.6%減少した。マツダが52.2%減、三菱自が48.7%減と前年比でほぼ半減する不振。販売各社は割引などのキャンペーンでテコ入れを図っているが、当面は苦戦が続きそうだ。
軽自動車の新車販売も大幅に減少。全国軽自動車協会連合会がまとめた10月の軽自動車販売台数は16.2%減の11万1070台と10カ月ぶりに前年を下回った。

国内自動車販売のグラフは以下の通りです。なお、軽自動車を除く販売台数の前年同月比を取っており、影を付けた部分は景気後退期です。8月に大きな駆込み需要を生じた後、9月10月と反動で前年同月比で減少に転じています。9月は7日申請分までという半端な状態でしたが、8月の駆込みと10月の反動による落ち込みはかなり大きいのがグラフから見て取れます。

自動車販売台数の推移

より小規模ながら、制度的な要因により同様のことが生じているのがたばこ需要です。よく知られた通り、10月1日から大幅な値上げが実施されています。総務省統計局の家計調査から世帯当たりたばこの名目消費額をプロットしたのが下のグラフです。2003年、2006年と今年2010年の過去3回の値上げを取り上げています。2003年と2006年は7月から値上げ、今年は10月からです。いずれも値上げ当月がゼロで、横軸はその前後を月単位で取っています。加重平均ではなく代表的な銘柄であるマイルドセブン1箱の価格について見ると、2003年7月は250円から270円、2006年7月は270円から300円、そして、2010年10月は300円から410円に値上げされており、値上げ幅も値上げ率もともに今回が極めて大きくなっていますから、値上げ前月の買いだめ需要も過去2回に比較してもっとも大きくなっています。もともと喫煙人口が減って、ベースの購入金額が低下していることも併せて考えると、反動はより激しくなる可能性があります。なお、楽天リサーチの調査結果によれば、喫煙者の65%が平均4カートン余りの買いだめをしたようです。

たばこ支出金額の推移

消費者が政策や制度の与件に対して合意的に最適化行動する限り、今回のエコカー補助金やたばこ値上げは消費の振幅を大きくした可能性があります。さらに、グリーン家電に対するエコポイントの制度変更、すなわち、今年3月の変更に続いて、12月には概ねポイントを半減させ、最後に3月で制度自体が終了する、という制度変更も消費の振れを拡大する可能性を残しています。現時点で、これらの制度的な要因を除いた消費の基調について、エコノミストとしての私は方向感を失っていますが、マクロの消費関数を考える限り、ある程度、消費は所得に依存すると考えています。

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