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2010年11月19日 (金)

経済協力開発機構 (OECD) の「経済見通し」 Economic Outlook No.88

昨日、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し」 Economic Outlook No.88 が発表されました。ヘッドラインとなるGDP成長率で見て、OECD加盟国全体では2010年2.8%成長の後、2011年には2.3%と少し減速するものの、2012年には2.8%に戻ると見込んでいますが、日本については2010年3.7%と高い成長率を示した後、2011年1.7%、2012年1.3%と徐々に低下するシナリオを示しています。2011年から2012年にかけて成長率を低下させるのはG7の中で日独だけだったりします。まず、日経新聞のサイトから成長率を中心に事実関係だけを報じた記事を引用すると以下の通りです。

OECD、日本の11年実質成長率1.7%に下方修正
経済協力開発機構(OECD)が18日夜(日本時間)公表したエコノミック・アウトルック(経済見通し)によると、2011年の日本の実質国内総生産(GDP)の成長率見通しは1.7%(前回5月調査は2.0%)だった。米国は2.2%(同3.2%)、ユーロ圏は1.7%(同1.8%)。
10年の成長率は日本が3.7%(前回は3.0%)と高い伸び。米国は2.7%(同3.2%)、ユーロ圏は1.7%(同1.2%)の見通し。
OECDは日本経済の先行きについて「財政刺激効果が薄れていくなか、労働環境の改善と民需が経済活動を支えるが、失業率は高止まりしデフレは継続する」と指摘。円高の影響についても「世界市場での日本のシェアを減らしている」とした。
12年の日本の成長率は1.3%に低下する見通し。一方、米国は3.1%、ユーロ圏は2.0%を見込む。

拡大的な財政金融政策など、成長促進的な政策が取られていた中で、今後、成長促進効果が減じていく要因 (fading factors) と成長を支持する要因 (supporting factors) について、前者は財政再建に向かう財政政策、在庫調整、景気回復初期の急拡大局面を終えた世界貿易、の3点を上げるとともに、後者については新興国の高成長、設備投資の回復、家計貯蓄の安定の3点を指摘しています。同時に見通しに対する下振れリスクとして、政府債務残高の累増、住宅ストック調整、特に米国の住宅ストック調整の2点を、上振れリスクとして、強気を示す企業マインドと設備投資を促進する可能性がある高水準の企業収益の2点を、それぞれ上げています。まず、リポート第1章 General Assessment of the Macroeconomic Situation の p.12 Table 1.1. The global recovery will remain moderate を引用すると以下の通りです。加盟各国の主要指標を総括しています。

Table 1.1. The global recovery will remain moderate

特に、日本について詳しい表を主要なデータを格納した Excel ファイルから引用すると以下の通りです。成長率が低下していく中、緩やかながら失業率は改善するものの高止まりし、財政バランスはほとんど改善せず、物価上昇は見通し期間の2012年までマイナスを続けてデフレから脱却しないと見込まれています。このため、OECD から日本の政策当局に対して、2015年度までにプライマリー・バランスの赤字を2010年度の半分にするためには追加的な税収増が必要であり、日銀はしつこいデフレに対してより野心的な量的緩和政策を実行し、物価上昇が十分なプラスを記録するまでそれを継続すべきであると指摘しています。

OECD Projections - Japan

今回の「経済見通し」では、対外バランスと財政バランスの2つのバランスに目配りしています。どちらかといえば、後者に重点があります。例えば、見通し編として、Chapter 1 General Assessment of the Macroeconomic Situation とともに、分析編のひとつであるChapter 4 Fiscal Consolidation: Requirements, Timing, Instruments and Institutional Arrangements を章立てし、政府債務残高のリスクを回避するために、財政政策、特に、財政再建にスポットを当てています。しかし、財政バランスは後に詳しく見ることにして、ひとまず、対外バランスに関してリポート第1章 p.36 Table 1.4. World trade remains robust and imbalances will widen gradually を引用します。米国がGDP比4%近い赤字を出す一方で、中国は5%を超える黒字と見込んでいます。

Table 1.4. World trade remains robust and imbalances will widen gradually

次に、財政バランスは短期的に目先は改善するものの、長期的な財政再建に必要な調整額は大きいと指摘しています。もっとも、2009-10年の最悪期から大きな改善を示すのは米欧に限られ、いかなる指標を取っても我が日本の財政は米欧並みの改善は示さないと見込まれています。グロスの債務残高はGDP比で200%を超えて膨張を続けます。リポート第1章 p.45 Table 1.6. Fiscal positions will improve in coming years を以下の通り引用します。

Table 1.6. Fiscal positions will improve in coming years

米欧に限られて日本はカヤの外とはいえ、短期的に2011-12年は財政が改善するものの、長期的に政府債務を安定させるに必要な財政再建額は大きく残っています。特に、2012年以降の日本でGDP比8%を超える財政再建必要額を見込んでいます。額にすれば40兆円を軽く超え、世間で言われているように、単純に消費税率1%ポイントの引上げで2兆円の税収増を上げられるとすれば、4%ポイント程度の消費税率の引上げが必要ということになります。2012年までの短期でも、それ以降の長期でも、我が国の財政が先進国の中で最悪であることは、OECD に指摘されるまでもなく余りにも明らかです。リポート第4章 p.230 Table 4.4. Consolidation requirements to stabilise debt over the long-term を以下の通り引用します。一番右の欄の Requirement beyond 2012 に注目すべきです。なお、日本のGDP比8.4%に次ぐのは米国の5.3%だったりします。

Table 4.4. Consolidation requirements to stabilise debt over the long-term

先進国の中でもまれなデフレに陥って脱却できず、低成長の中で財政改善にも手が付けられていない日本の姿が明らかにされています。私も国家公務員なんですが、政策当局はどのような対応を示すんでしょうか。それとも、このまま日本経済はデフレと低成長を続けて「漂う」だけであればOKなんでしょうか。官庁エコノミストの端くれとして、日本が世界経済のリスクになることだけは避けたい気がします。

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