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2010年11月21日 (日)

マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』 (岩波文庫) を読む

マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』 (岩波文庫)

マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』La Casa Verde (岩波文庫) を読みました。今年のノーベル文学賞受賞作家の代表作のひとつです。文庫本で上下となっています。物語は非常に重層的でかつ長い期間、30-40年くらいを対象にしていますので、極めて複雑であるといえます。この作者と同じく、ラテン・アメリカの代表的な作家といえば、何といってもガブリエル・ガルシア=マルケスに指を屈せざるを得ないんですが、ガルシア=マルケスの最高傑作のひとつであり、同時に、ラテン・アメリカ文学の最高峰のひとつである『百年の孤独』 Cien Años de Soledad も極めて長い期間、コチラは100年を対象にした複雑な小説であることはよく知られています。というか、南米はチリにある大使館に外交官として勤務した経験を持ちながら、私はラテン・アメリカを代表する文学作品はこの2冊しか読んだことがありません。
『百年の孤独』が数世代にわたるブエンディア家の歴史を綴っているのに対して、『緑の家』はペルーの地方の歴史を説き起こしています。タイトルとなっている「緑の家」とは娼家であり、ある面では町の社交場の要素も併せ持っています。そして、ペルー北方、アマゾン川の源流とも遠からぬ地方で、ある意味での対比が描かれています。スペイン本国では絶対にあり得ない対比です。すなわち、スペイン語、白人、キリスト教徒などの要素から成る文明と、これらの要素がないインディオの世界である野蛮が対比されています。作者の目は決して「文明」からだけの視点ではないんですが、少なくともラテン・アメリカの読者の多くは「文明」からの視点で読むべき作品と受け止めているような気がします。ただし、『百年の孤独』と同様に、とても『緑の家』を簡単に一言で要約しようという気はしません。

ある程度、ラテン・アメリカの人名に馴染みのある私でもスペイン系の名前かインディオ系かは判然としませんし、いつのことを物語っているのかも、しっかり読み進まないとあやふやになりかねません。しかし、世界の目から見てノーベル賞の水準に達した作家であり、その作家の代表作のひとつであることは確かです。現時点で、この作家の邦訳を読める作品は限られていますから、この『緑の家』も貴重だという気がします。

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