政策や制度変更は消費の変動を大きくしたか?
本日、自動車販売協会連合会(自販連)から軽自動車を除く10月の国内自動車販売の統計が発表されました。季節調整していない原系列のベースで前年同月比▲26.7%減の19万3258台と大きく落ち込み、2か月連続で減少しました。言うまでもなく、エコカー補助金が9月7日登録分までで打ち切られた反動です。まず、自動車販売に関して事実関係を報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
新車販売、10月26.7%減 2カ月連続マイナスに
日本自動車販売協会連合会(自販連)が1日発表した10月の国内新車販売台数(軽自動車を除く登録車、速報)は前年同月比26.7%減の19万3258台と大きく落ち込んだ。2カ月連続で減少し、10月としては1968年以来42年ぶりに20万台を割り込み、過去最低水準となった。販売を下支えしてきた「エコカー補助金」が9月7日に打ち切りとなり需要が急減。10月としては過去最大の減少率を記録した。
補助金終了の影響は「小型車など環境対応車が多いブランドほど大きい」(自販連)。主要ブランド別でみると、トヨタ(ダイハツ、日野、レクサスを除く)が24.2%減の10万1518台と落ち込み、ホンダが29.9%減と低迷。日産自は30.6%減少した。マツダが52.2%減、三菱自が48.7%減と前年比でほぼ半減する不振。販売各社は割引などのキャンペーンでテコ入れを図っているが、当面は苦戦が続きそうだ。
軽自動車の新車販売も大幅に減少。全国軽自動車協会連合会がまとめた10月の軽自動車販売台数は16.2%減の11万1070台と10カ月ぶりに前年を下回った。
国内自動車販売のグラフは以下の通りです。なお、軽自動車を除く販売台数の前年同月比を取っており、影を付けた部分は景気後退期です。8月に大きな駆込み需要を生じた後、9月10月と反動で前年同月比で減少に転じています。9月は7日申請分までという半端な状態でしたが、8月の駆込みと10月の反動による落ち込みはかなり大きいのがグラフから見て取れます。
より小規模ながら、制度的な要因により同様のことが生じているのがたばこ需要です。よく知られた通り、10月1日から大幅な値上げが実施されています。総務省統計局の家計調査から世帯当たりたばこの名目消費額をプロットしたのが下のグラフです。2003年、2006年と今年2010年の過去3回の値上げを取り上げています。2003年と2006年は7月から値上げ、今年は10月からです。いずれも値上げ当月がゼロで、横軸はその前後を月単位で取っています。加重平均ではなく代表的な銘柄であるマイルドセブン1箱の価格について見ると、2003年7月は250円から270円、2006年7月は270円から300円、そして、2010年10月は300円から410円に値上げされており、値上げ幅も値上げ率もともに今回が極めて大きくなっていますから、値上げ前月の買いだめ需要も過去2回に比較してもっとも大きくなっています。もともと喫煙人口が減って、ベースの購入金額が低下していることも併せて考えると、反動はより激しくなる可能性があります。なお、楽天リサーチの調査結果によれば、喫煙者の65%が平均4カートン余りの買いだめをしたようです。
消費者が政策や制度の与件に対して合意的に最適化行動する限り、今回のエコカー補助金やたばこ値上げは消費の振幅を大きくした可能性があります。さらに、グリーン家電に対するエコポイントの制度変更、すなわち、今年3月の変更に続いて、12月には概ねポイントを半減させ、最後に3月で制度自体が終了する、という制度変更も消費の振れを拡大する可能性を残しています。現時点で、これらの制度的な要因を除いた消費の基調について、エコノミストとしての私は方向感を失っていますが、マクロの消費関数を考える限り、ある程度、消費は所得に依存すると考えています。
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