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2010年12月14日 (火)

12月調査日銀短観の予想と政策効果による需要の先食いの影響

明日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。いつもは先行きに注目しているんですが、今回は12月調査について着目しました。先行きやより詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。なお、見れば分かると思いますが、表の主たるコンテンツは大企業の製造業・非製造業の業況判断DIと大企業全産業の2010年度設備投資計画の前年度比です。ヘッドラインはおまけです。設備投資計画は土地を含んでいます。設備投資についてベースが異なる場合は数字を上げずに方向性だけをプラスかマイナスかで示してあります。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
12月調査実績+8
+2
<+2.4>
n.a.
日本総研+3
+1
<+2.4>
政策効果の剥落や輸出の増勢鈍化に伴い、2009年6月調査から改善してきた企業マインドが低下に転じる見通し
みずほ総研+2
0
<+>
生産活動は全般に弱含んでいる …(中略)… 個人消費は低迷している
ニッセイ基礎研+8
+1
<+3.0>
大企業製造業の足元の業況判断D.I.が頭打ちとなり、前回まで6期連続で続いてきた改善が止まることで停滞感の濃い内容になりそう
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+6
0
<+3.5>
DIはプラスを維持し、景気の調整が軽微にとどまり、踊り場的な調整局面となる可能性
第一生命経済研+4
▲1
<->
景気後退に移行するシナリオがある反面、再加速シナリオの方が蓋然性が高い
三菱総研+5
0
<+2.7>
国内外での需要の伸びが鈍化しているなか、製造業を中心に企業の経営環境に対する先行き不透明感は根強い
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+5
+1
<+3.6>
景気を牽引してきた輸出の増勢が鈍化しているのに加え、エコカー補助金支給が終了した影響で自動車の生産が大きく落ち込んでいることが背景
みずほ証券リサーチ&コンサルティング+3
0
<+2.5>
輸出の減速やエコカー補助金の終了に伴い、足元では生産調整局面にあることなどから、総じて業況判断は前回調査から悪化
富士通総研+4
0
<+3.5>
日本経済は世界経済の成長鈍化に伴う輸出の減速と、これまでの政策効果の一巡により、踊り場に入っており、業況判断DIは、製造業、非製造業とも小幅悪化
伊藤忠商事+2
0
<+2.1>
日本経済が踊り場的な状況に陥り、収益も頭打ちとなったことを受け、業況判断DIは総じて悪化

9月短観に比べて業況判断DIは悪化するものの、悪化の幅はそれほど大きくない、というのが大雑把なコンセンサスのような気がします。ゼロも含めてプラスを維持するという見方が有力です。さらに、設備投資計画は多くの機関の予想で9月調査よりも上方修正されています。もっとも、先行きの業況判断DIはもっと悪化するという予想が大勢となっています。すなわち、来年年央くらいまで企業経営環境は厳しさを増すというのが大方のコンセンサスになっているようです。これが雇用などの要素需要にどういう影響を及ぼしているのかが気にかかるところです。
この業況判断の裏側には輸出などとともに消費の大きな変動、それも政策に起因する消費の振幅の拡大を見逃すべきではありません。すなわち、エコカー補助金や家電エコポイントによる需要の先食いです。1か月以内くらいの期間に私の知っている範囲で、日本総研と第一生命経済研究所と伊藤忠商事情報調査部から、これらの政策効果の反動などについて、以下のリポートが出されています。特に、伊藤忠商事情報調査部の分析は鋭く、単に異時点間の消費の代替効果だけでなく、同時点における代替効果まで視野に入れて、つまり、需要の先食いとその反動に加えて、相対価格の変更に伴って政策対象とならずに割高感を生じた財サービスの消費抑制につながった可能性も指摘しています。

当然ながら、各リポートとも今年度にかなりの需要の先食いをした分、来年度には反動によるマイナス効果を見込んでいます。基本的には、これらの政策効果の反動も含めて、来年春先くらいまでの踊り場を見込んだ後、その後は世界経済の持直しに伴う輸出の回復により景気回復局面へ復帰する、という私のようなシナリオを考えるエコノミストが多いんではないかと想像していますが、期間的に短く程度は軽くても景気後退まで見込んでいるエコノミストも皆無ではありません。官庁エコノミストとして、政策に起因する景気後退は避けたいところです。

少し短観から離れましたが、明日発表の12月調査の注目点はヘッドラインの業況判断DIに加えて、いつも注目の高い設備投資計画や雇用判断DIなどとともに、「事業計画の前提となっている想定為替レート」もポイントになります。9月調査では1ドル90円を少し下回る程度でしたが、実勢レートはもっと円高に進んでいます。

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