政策・制度効果による需要の先食いで高成長を示した7-9月期2次QE
本日、内閣府から7-9月期のGDP統計2次速報、エコノミストの業界で2次QEと称されている指標が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済みの前期比実質成長率は+1.1%、年率+4.5%にと、1次QEの+0.9%、+3.9%から、設備投資と在庫投資を中心にやや上方修正されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
GDP、年4.5%成長に上方修正 7-9月実質
10-12月、マイナスの公算
内閣府が9日に発表した7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比1.1%増となった。年率換算すると4.5%増。速報値の3.9%増から上方修正した。設備投資が上振れしたほか、耐久消費財などを中心に個人消費が成長率を押し上げた。ただ政策効果が弱まる10-12月期はマイナス成長に陥る公算が大きい。
改定値は、速報値の公表後に出される法人企業統計などのデータを使ってGDPを推計し直した数値。日経グループのQUICKがまとめた民間調査機関の事前予想は年率換算で4.1%増だったが、これを上回った。
生活実感に近い名目GDPは前期比で0.6%増。年率換算では2.6%増で、速報値の2.9%増から下方修正した。物価動向を示すGDPデフレーターの前期比が、速報段階の0.2%低下から0.5%低下に改定されたため。
内閣府の和田隆志政務官は9日の記者会見で、景気動向について「今までも、これからも厳しい状況にある」との認識を示した。
需要項目別にみると、設備投資は実質で前期比1.3%増と、速報値(0.8%増)から上方修正した。4四半期連続でプラスを維持した。個人消費は1.2%増と、速報値(1.1%増)からやや上向いた。エアコンなど耐久財消費の寄与度が年率換算で約2.8ポイントにのぼり、全体のGDP成長率(4.5%)の約3分の2を占めた。
これまで景気をけん引していた外需はマイナス要因となり、成長率を0.02ポイント押し下げた。外需寄与度がマイナスになるのはリーマン・ショック後の2009年1-3月期以来となる。
改定値を踏まえた09年度の実質経済成長率は前年度比2.4%減で、速報値の1.8%減から下方修正された。2年連続マイナスで、過去2番目の落ち込みだった。
内閣府のドルベースでの試算によると、日本の09年の暦年の名目GDP実額は5兆420億ドル。中国は4兆9850億ドルで、日本が中国を上回った。
次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需及び外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。
需要項目 | 2009/ 7-9 | 2009/ 10-12 | 2010/ 1-3 | 2010/ 4-6 | 2010/7-9 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産(GDP) | ▲0.3 | +1.4 | +1.7 | +0.7 | +0.9 | +1.1 |
民間消費 | +0.2 | +0.6 | +0.6 | +0.3 | +1.1 | +1.2 |
民間住宅 | ▲8.2 | ▲3.4 | +1.8 | ▲0.8 | +1.3 | +1.2 |
民間設備 | ▲2.1 | +1.5 | +0.9 | +2.7 | +0.8 | +1.3 |
民間在庫 * | ▲0.5 | +0.1 | +0.6 | ▲0.1 | +0.1 | +0.2 |
公的需要 | +0.8 | +0.8 | ▲0.4 | +0.3 | ▲0.1 | ▲0.1 |
内需寄与度 * | ▲0.7 | +0.8 | +1.1 | +0.5 | +0.9 | +1.1 |
外需寄与度 * | +0.4 | +0.6 | +0.6 | +0.3 | +0.0 | ▲0.0 |
輸出 | +9.4 | +4.9 | +7.2 | +6.8 | +2.4 | +2.5 |
輸入 | +5.6 | +0.7 | +3.2 | +4.2 | +2.7 | +3.0 |
国内総所得(GDI) | ▲0.8 | +1.3 | +1.2 | +0.2 | +0.9 | +1.1 |
名目GDP | ▲0.7 | +0.4 | +1.7 | ▲0.3 | +0.7 | +0.6 |
雇用者報酬 | +0.8 | +0.0 | +1.8 | +0.8 | +0.7 | +0.7 |
GDPデフレータ | +0.1 | ▲2.5 | ▲3.0 | ▲2.3 | ▲2.0 | ▲2.4 |
内需デフレータ | ▲2.7 | ▲2.5 | ▲1.6 | ▲1.1 | ▲1.2 | ▲1.6 |
さらに、いつもの成長率のグラフは以下の通りです。青い折れ線が季節調整済みのGDP前期比成長率を示し、棒グラフはその寄与度を表しています。色分けは凡例の通りです。4四半期連続でかなり高い成長率を続け、7-9月期は4-6月期よりも成長が加速したような印象を受けます。
7-9月期に成長が加速したように見えるのは、当然、政策効果による需要の先食いであり、エコカー補助金が9月7日申請分で終了し、家電エコポイントが12月から半減されるため、10-12月期は政策効果が大きく剥落し、マイナス成長に落ち込むと見込まれています。問題はその後の見通しなんですが、私を含めて多くのエコノミストはそのまま2番底に入るとは考えていません。マイナス成長は来年1-3月期だけで済み、4-6月期にはプラス成長に戻り、来年年央までに景気回復軌道に復帰すると見込まれています。景気の減速は踊り場で終わり、景気後退となる2番底までは想定されない、というのが大方のコンセンサスのように私は受け止めています。典型的な先行き見通しを経済企画協会のESPフォーキャストから引用すると以下の通りです。
最後に、先行き経済を見通すうえでポイントになるのは、何度もこのブログで繰返した通り、為替相場と輸出であろうと私は考えています。今夜は遅くなりましたので、簡単に済ませます。
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