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2010年12月31日 (金)

Financial Times のコラムから今年を締めくくり来年を占う

今さら言うまでもありませんが、今日は大晦日です。だからというわけなんでしょうが、Financial Times の Global Economy のコラムで Cuts, leaks and atom smashing と題して、以下の画像を掲げて18のポイントについて来年を占っています。なお、Global Economy のコラムなんですが、最後の Higgs particle ヒッグス粒子とは、量子物理学の用語で、ヒッグス場を量子化して得られる粒子だそうです。これだけで理解できる人は頭がいいんでしょうが、量子物理学のノーベル賞クラスの難解な概念を適切に解説する能力が私には欠けていますのでご容赦下さい。

Cuts, leaks and atom smashing

  • Will the euro survive?
  • Will Europe allow a bank to fail?
  • Will China’s bubble burst?
  • Will Korea reunify?
  • Will WikiLeaks retain its potency?
  • Will the US and its Nato allies start winning the war in Afghanistan?
  • Will the Mubarak era end in Egypt?
  • Will there be civil war in Sudan?
  • Will social unrest worsen in Europe?
  • Should investors switch out of bonds into equities?
  • Will bonuses shrink?
  • Will the currency wars go nuclear?
  • Where will oil finish the year?
  • Will there be a global food crisis?
  • Will I be seen naked in airports?
  • Will Britain’s coalition collapse?
  • Will the UK voting system change?
  • Will we find the Higgs particle?

メディアの地域性というのは当然に考慮するとしても、まったくどうでもいいことかもしれませんが、中国や韓国は何らかの Global Economy の観点から注目されている一方で、我が日本はどうでもいい存在になり果てたのかもしれません。

なにはともあれ、
よいお年をお迎え下さい!

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2010年12月30日 (木)

おにいちゃんと東京証券取引所の大納会を見学に行く

今日は東京証券取引所の大納会の見学に行きました。新年初めの大発会は振り袖姿もあでやかなイベントだったりするんですが、これに比べれば大納会は地味だったりします。今日は午後から東証の親子経済教室に参加した後、我が家のおにいちゃんが大納会を鐘の前で見学しました。今年の打鐘は「はやぶさ」の川口教授だったんですが、おにいちゃんはこの鐘から数メートルの位置でした。もっとも、保護者の私はおにいちゃんと遠く離れて1階上の桟敷席から大納会のセレモニーを拝見しました。株式の模擬売買をやらせたかったんですが、大納会で人がいっぱいでしたので省略されてしまい、部屋に閉じこもってお話を伺う経済教室が1時間余り続き親子で退屈してしまいました。何年か前に家族そろって日銀を見学した記憶がありますが、官庁エコノミストの父親を持つと、エンジニアの家族が工場や技術的な研究所に親近感を持つのと違って、こういった金融や経済などの機関への見学が多くなるのは仕方ないところです。

東証大納会見学

東証大納会見学

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2010年12月29日 (水)

Japan Presents a Superbad Annual Budget

12月28日付け Wall Street Journal 米国版の p.C8 からの引用です。タイトルは "Japan Presents a Superbad Annual Budget" です。James Simms 記者の記事です。

Japan Presents a Superbad Annual Budget
By James Simms
Japan's $1.1 trillion budget for next year is filled with unwanted superlatives: the nation's largest outlay ever, the worst debt-to-GDP ratio among industrial nations and the second consecutive year that debt issuance will exceed tax revenue.
And those are just the headlines.
The details are even worse. They illustrate the impact of indecision and a loss of political power by Prime Minister Naoto Kan.
Rather than fundamental reform to Tokyo's notorious inability to spend wisely, the hallmarks of this budget are the administration's scramble to secure revenue and fulfill unrealistic campaign pledges.
Tokyo will raid non-budget accounts and foreign-exchange reserves for $86 billion to fill its revenue shortfall. This isn't sustainable.
With local elections scheduled across Japan in the spring, spending is jumping. Agricultural income subsidies are set to skyrocket more than 40% to $9.5 billion. Child-care subsidies will expand. This effort to lift the nation's falling birth-rate is going to cost Japan $2.4 billion more than it in the current fiscal year ending in March.
Politicians promised to find nearly $110 billion in waste to fund their pledges. Next year's budget identifies only $3.6 billion in such cuts.
There are a few pluses. Tokyo already had decided to cut the country's high corporate tax rates, though it will do so by broadening the tax base.
Among the more unique cutbacks: a $140 billion, 400-year-old-project for levees along urban rivers didn't get funding.
Investors wondering when they will hear of real reform to Japan's finances ought to keep the timeline on that last one in mind.

誠に手抜きのエントリーで申し訳ありません。引用元が Wall Street Journal ですから、かなり右派的なバイアスはあるものと考えるべきですが、それでも、少しは海外からどう見られているのかが分かるような気がします。要するに、ボロクソです。評価されているのは法人税減税くらいのものでしょうか。引用文で青字にした部分ですが、昨年の総選挙で国民が "unrealistic campaign pledges" を見破れなかったのが悪いと批判されているような気がします。たぶん、そうなんでしょう。

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2010年12月28日 (火)

今年最後の経済指標、生産統計と雇用統計と消費者物価と毎月勤労統計

今日は役所の御用納めです。昔は朝っぱらから酒を飲んだりしていましたが、今では夕方の勤務時間いっぱいまでお仕事です。ということで、本年最後の役所の稼働日で閣議日でもあります。いろいろと経済指標が発表されました。私が重要と考える順に、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率などの雇用統計が、そして、総務省統計局から消費者物価が、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ発表されました。いずれも11月の統計です。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産6カ月ぶり上昇 11月1.0%、自動車伸びる
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は前月比1.0%上昇の91.8だった。前月を上回るのは6カ月ぶり。年明けの需要増を見込んで自動車が生産を伸ばしたほか、携帯電話向けの液晶パネルなども指数を押し上げた。ただ10-12月期でみると2期連続でマイナスになる見通し。経産省は基調判断は「弱含み」で据え置いた。
11月の回復をけん引したのは輸送機械工業で、4.4%増と8カ月ぶりのプラスだった。エコカー補助金の終了で10月は10.0%低下したが、大幅な減産には歯止めがかかった形。国内向け小型・普通乗用車の生産が10年度末の需要期に向けて増えたほか、アジアや中近東向け普通乗用車も伸びた。自動車用タイヤを含むその他工業も4.1%増で6カ月ぶりに増えた。
品目別で見ると新機種の出た携帯電話が23.8%増と大きく伸びた。主に携帯電話向けの中小型液晶パネルの生産も中国や韓国向けで好調で、電子部品・デバイス工業は6カ月ぶりとなる3.1%増となり、全体の指数を押し上げた。
出荷指数は2.5%増の94.6だった。家電エコポイント制度で付与ポイントの縮小を前にした駆け込み需要があり、液晶テレビの出荷が急増。在庫指数も液晶テレビの減少などで、1.7%低下の95.0だった。
同時に発表した製造工業生産予測指数によると、12月は3.4%、1月は3.7%上昇する見込み。輸送機械工業で輸出向けなどの増産が予想されるためだ。ただ10月の落ち込みが大きかったこともあり、10-12月は1.6%減と2四半期連続でマイナスの見込みだ。指数水準は直近の低下開始前の5月(96.1)に届かない。
失業率横ばいの5.1% 11月、雇用情勢は一進一退
総務省が28日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は5.1%と前月に比べ横ばいだった。建設業や製造業の就業者が減ったものの、医療・福祉の分野で大幅に増えた。厚生労働省が同日まとめた11月の有効求人倍率(同)は前月から0.01ポイント上昇し0.57倍だった。一部の企業業績は回復に向かう一方で景気の先行きには不透明感もあり、雇用情勢は一進一退の状況が続いている。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。11月の完全失業者数(原数値)は前年同月に比べて13万人減の318万人と6カ月連続で前年水準を下回った。就業者数(同)も8万人減り6252万人と3カ月ぶりのマイナスだった。建設業(32万人減)や製造業(14万人減)などで減少が目立ったものの、医療・福祉(37万人増)や卸売業・小売業(32万人増)が増えた。
年齢別では15-24歳の失業率が0.6ポイント悪化し9.9%、25-34歳も0.6ポイント悪化の6.6%だった。一方で中高年は小幅改善した。男女別の失業率では男性が前月比横ばいの5.4%、女性が0.1ポイント悪化の4.7%だった。総務省は「勤め先の都合の退職が減るなどの改善傾向もみられるが、失業率は高水準で引き続き注視していく」と説明している。
ハローワークで仕事を求める人に1人当たり平均何件の求人があるかを示す有効求人倍率は7カ月続いて上昇した。都道府県別では福井の0.94倍が最も高く、沖縄の0.33倍が最低だった。雇用情勢の先行指標とされる新規求人倍率(季節調整値)は前月から0.02ポイント改善の0.95倍だった。
消費者物価、11月0.5%低下 耐久財落ち込む
総務省が28日発表した11月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.4となり前年同月に比べて0.5%低下した。21カ月連続のマイナスで、下落幅は前月に比べて0.1ポイント縮んだ。薄型テレビなどのデジタル家電や電気冷蔵庫といった耐久財の価格が落ち込んだ。物価が継続的に落ち込むデフレは依然として続いている。
生鮮食品を含めた物価の総合指数は前年同月比で0.1%上昇。生鮮野菜の値上がりが続き、2カ月連続のプラスとなった。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)は0.9%低下。低下幅は前月より0.1ポイント広がった。
品目別でみると政策による特殊要因が指数を左右している。プラス要因では10月からの増税の影響を受けたたばこが前年同月に比べて38.6%上昇し、指数を0.3ポイント押し上げた。マイナス要因では4月以降、高校授業料の実質無償化で「授業料等」が17.4%低下。指数を0.5ポイント押し下げている。
その他の品目では、デジタル家電の激しい値下げ競争が続く中、薄型テレビが前年同月比33.2%下がった。電気冷蔵庫も19.9%低下した。
物価の先行指数となる東京都区部の12月のCPI(中旬速報値)は、生鮮食品を除く総合指数が0.4%低下、食料とエネルギーを除いた総合指数は0.5%下がった。いずれも先月から低下幅が0.1ポイント縮まった。10年暦年の前年比では、生鮮食品を除く総合が1.2%のマイナス、食料とエネルギーを除いた総合指数が1.1%の低下だった。

次に、鉱工業生産のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルは鉱工業生産指数、下は製造工業と電子部品・デバイス工業の在庫率のそれぞれの推移です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。なお、先月と同じで、2年前のリーマン・ブラザース証券破綻後の急激な生産の落ち込みにより季節調整が歪んでいる可能性が指摘されていますが、ひとまず、今夜のブログでは無視しておきます。

鉱工業生産の推移

引用した記事にもありますが、生産は薄日が差して来たように私は感じています。11月の鉱工業生産指数が6か月ぶりに上昇に転じた上、製造工業生産予測指数に従えば、12月、来年1月と増産が続くと見通されているからです。家電エコポイントの制度変更に伴うテレビの駆込み需要は11月で一段落したと考えられていますが、自動車とIT機器の増産が寄与しています。ですから、在庫率も10月がピークであり、すでに在庫調整は終了しつつある可能性も指摘されています。もっとも、12月の生産が予測指数通りの増産であったとしても、エコカー補助金終了に伴う10月の落ち込みが大きいため、10-12月期の生産は2四半期連続のマイナスであることに変わりありません。GDPもおそらく10-12月期はマイナス成長であろうと、私を含めた多くのエコノミストは受け止めています。

雇用統計の推移

次に、雇用指標のグラフは上の通りです。これも上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、そして、一番下は産業別の雇用者数の前年同月差増減です。最後のグラフを除いて季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期です。最後の産業別雇用者数だけ季節調整していない原系列の前年同月差増減数です。毎月同じ感想ですが、景気の回復テンポが極めて緩やかなため、雇用の改善がほとんど実感されず、単に実感されないだけでなく、統計上も極めて緩やかな改善しか観察されません。この先、生産が増産に向かう中で、雇用の回復テンポがアップすることを願っています。

消費者物価の推移

次に、消費者物価のグラフは上の通りです。すべて季節調整していない原系列の前年同月比上昇率なんですが、まず、折れ線は青が生鮮食品を除く全国のコアCPI、赤が全国のコアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIです。コアコアCPIでは食料とエネルギーを除いており、引用した上の記事では「欧米型コア」と呼ばれています。そして、棒グラフは全国コアCPIの前年同月比上昇率に対する寄与度を示しています。色分けは凡例の通りです。コアCPIは21か月連続の下落となり、デフレが続いています。しかも、グラフに見る通り、エネルギーの寄与度が+0.3%程度のプラスを示しており、欧米には例を見ないエネルギーを含むコアCPIであるにもかかわらず、プラス領域がまったく見通せない状況にあります。今年は、4月の高校実質無償化、10月のたばこ値上げといった制度要因がありましたが、来年はこの2つは剥落します。さらに、夏には基準改定のために▲0.5%ポイント程度の下振れが生ずると、私を含めた多くのエコノミストが考えています。5年前の基準改定の際には、部分的ながら結果的に間違っていた見通しが流布され混乱が生じましたから、今回の基準改定に関しては政策当局が基調判断を誤らないことを願うばかりです。

毎月勤労統計の推移

最後のグラフは毎月勤労統計調査から取っており、上のパネルは所定外労働時間指数、下は賃金指数の前年同月比上昇率です。所定外労働時間指数は季節調整済みの系列ですが、賃金指数は季節調整していない原系列の前年同月比上昇率を取っています。いずれも5人以上事業所の統計であり、影をつけた部分は景気後退期です。11月こそ増産に転じましたが、10月までの減産に伴って残業時間が減少し、その残業の減少に伴って11月の賃金は前年同月比で久し振りにマイナスに転じました。先行き、生産が増産に転じることにより、残業の増加から賃金も回復することを願っています。

繰返しになりますが、今日は御用納めでした。ということは、私は明日から冬休みに入ります。年間の長崎での単身赴任でも年末年始は東京の家族の元に帰っていたんですが、大学教授は正月明け早々からセンター試験で大忙しでしたので、今年の年末年始休みは昨年よりもお気楽そうな気がしなくもありません。

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2010年12月27日 (月)

日経新聞「2010年経済図書ベスト10」

昨日12月26日付けの日経新聞でエコノミストが選ぶ2010年経済図書ベスト10が特集されていました。慶応義塾大学の池尾教授の解説でした。日経新聞のサイトから画像で引用すると以下の通りです。なお、このサイトは何らかの無料登録をしなければ見られない可能性があります。悪しからず。

2010年経済図書ベスト10

他にもいろいろとあるのかもしれませんが、私の目についた範囲で12月18日付けの週刊ダイヤモンドでも同じような「経済学者・経営学者・エコノミスト162人が選んだ2010年のベスト経済書」ランキングが発表されていました。この上位10位までを引用すると以下の通りです。

  1. 大竹文雄『競争と公平感』
  2. マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』
  3. 藻谷浩介『デフレの正体』
  4. 岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』
  5. 岩田一政『デフレとの闘い』
  6. 楠木建『ストーリーとしての競争戦略』
  7. ヌリエル・ルービニ、スティーブン・ミーム『大いなる不安定』
  8. 細野薫『金融危機のミクロ経済分析』
  9. 宮本太郎『生活保障』
  10. クリス・アンダーソン『フリー』

これらのメジャーなメディアにはかなうハズもありませんが、私がこのブログの11月29日付けのエントリー「今年のベスト経済書やいかに?」で取り上げたのは以下の5冊でした。

  • 岩田一政『デフレとの闘い』
  • 細野薫『金融危機のミクロ経済分析』
  • アン・アリスン『菊とポケモン』
  • 岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』
  • 竹内啓『偶然とは何か』

私が上げた5冊のうち、本格派の部の『デフレとの闘い』は両方のトップ10に入っていますし、学術書の部の『金融危機のミクロ経済分析』とベストセラーの部の『もし高校野球の女子マネージャがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』もチラリと見えます。まずまずの成績といえます。しかし、私が上げた5冊の中で、ややレアもの受けを狙った『菊とポケモン』が外したのは仕方ないとしても、新書の部が大きくスライスしてOBゾーンに飛び込みました。要するに、私が新書をほとんど読んでいないことが明らかになったわけです。ただし、聞き苦しい言い訳ですが、『競争と公平感』はすでに2-3か月前に買ってあって、単に読んでいないだけですし、『デフレの正体』は読んだものの、リフレ派のエコノミストとしてデフレを人口動態に帰着させた結論を評価しなかったというのが正しいといえます。別の観点から、『これからの「正義」の話をしよう』については、私は経済書とは考えていませんでした。ですから、このブログでは経済書の読書感想文は原則として取り上げないことにしているんですが、この本は9月11日付けのエントリーで読書感想文を紹介しています。読書感想文を取り上げたということは、私が経済書と受け止めていないことのひとつの証拠でもあります。

まったくどうでもいいことですが、ハリー・ポッターの映画を見るに当たって、第6話『謎のプリンス』と第7話『死の秘宝』だけを読み返してお茶を濁そうと考えていたんですが、結局、第1話の『賢者の石』にまでさかのぼって読み返し始めてしまいました。ようやく今日になって第4話『炎のゴブレット』を読み終えて、第5話『不死鳥の騎士団』に入ったところです。この年末年始休みは経済書よりも小説をいっぱい読みそうな気がします。

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2010年12月26日 (日)

明治安田生命「2010名前ランキング」

すでに今月初めにリリースされたやや古い情報ですが、例年通り、明治安田生命「2010名前ランキング」が明らかにされています。明治安田生命加入者を調査し、2010年生まれの男の子4,078人、女の子3,805人から情報を収集しています。男の子は読み方はともかく「大翔」、女の子は「さくら」がトップだそうです。以下の表の通りなんですが、難しい漢字が並んでいます。我が家は男の子が2人なんですが、子供達が小学生になって自分の名前を漢字で書く際のことを考慮して、10画に満たない割合とシンプルな漢字から選んだ記憶があります。凝った名前をつけるのも親の愛情なら、簡単な漢字を選ぶのも親の愛情です。

明治安田生命「2010名前ランキング」

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2010年12月25日 (土)

来年度予算案が閣議決定される

本日の新聞の1面は来年度予算案の閣議決定についてがトップでした。当然です。このブログでも歳出・歳入と2回に分けて取り上げましたので、今日のところはメディアの報道からいくつか画像を引用して済ませます。なお、我が家は朝日新聞なんですが、どこかの面で「負担先送りは政治主導だった」といった旨の表現がありました。もっともです。

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2010年12月24日 (金)

クリスマスイブのごちそう

Merry Christmas!

Pokemon Christmas 2010

以前から明らかにしているように、我が家は仏教徒の日本人家族なんですが、世の習わしに従って、今夜はクリスマスイブのごちそうです。その実態はいつもながらのケンタッキー・フライドチキンのパーティー・バレルだったりします。

クリスマスイブのごちそう

特に理由はありませんが、「記念日の日記」に分類しておきます。

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2010年12月23日 (木)

ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』(岩波書店) を読む

エーコ『バウドリーノ』(岩波書店)

ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』(岩波書店) を読みました。舞台は13世紀初頭に第4回十字軍により蹂躙されるコンスタンティノープルにおいて、神聖ローマ帝国皇帝赤髭王フリードリッヒ一世の養子であったバウドリーノがビザンティン帝国の歴史家ニケタスを救い出すところから始まり、バウドリーノ自身が語るその生涯についての一代記となっています。もっとも、「ほら吹きの嘘八百」と称する向きもありますが、娯楽大作であることは明らかです。作者のエーコ教授は記号論の大家にして、私はダン・ブラウンの作品の主人公であるハーバード大学ラングドン教授のモデル、というか、創作の際に影響を与えたんではないかと想像したりしています。なお、エーコ教授の小説としては『薔薇の名前』、『フーコーの振り子』、『前日島』に続く4作目ですが、一応、私はすべて読んでいます。第1作目の『薔薇の名前』については、年末年始休みに見ようとショーン・コネリー主演の映画のDVDも借りました。でも、まだ見ていません。また、この本はかなり注目を集めましたので、いくつかの新聞で書評が取り上げられています。私の知る限りで朝日新聞と日経新聞の書評にリンクを張っておきます。

大雑把に、上巻を占める前半部分ではイタリア出身のバウドリーノがフリードリッヒの養子となり、イタリア諸都市との戦争を繰り広げるフリードリッヒに従ったり、パリに遊学したりして成長するバウドリーノの姿が語られます。バウドリーノは極めて多くの言語に通じた語学の天才として描かれています。後半の下巻では、フリードリッヒの死後、捏造された「司祭ヨハネの手紙」を起点に、パリの仲間らとともに聖遺物を求めて東方のキリスト教王国を目指す旅が語られます。この旅で、1本足のスキアポデス、頭のないブレミエスなどの荒唐無稽ながら中世には信じられていた怪人・怪物などが現れます。もちろん、東方のキリスト教王国も都市伝説といえます。そして、最後にフリードリッヒの死が密室殺人として謎解きされて、この小説にミステリの雰囲気をもたらします。このあたりは『薔薇の名前』に少し似ているかもしれません。

まさか、この小説を歴史的に正確な記述で成り立っているノンフィクションと受け取る読者はいないでしょうが、逆に、中世的な偏見に満ちた「ホラ吹きの嘘八百」と考えるのもやや極端です。中世に疎くてキリスト教徒ならざる私としては、現実と虚構の境目がやや不明瞭な小説ながら、思いっきり痛快な娯楽小説と受け止めています。エーコ教授の小説は4本とも何の関連も持たせてありません。独立の作品として大いに楽しめます。多くの方が手に取って読むことを期待します。

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2010年12月22日 (水)

横ばい圏内の踊り場続く輸出もほのかに明るさ

本日、財務省から11月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる貿易収支は1628億円の黒字で前年同月と比べて半減しました。市場の事前コンセンサスは5000億円近いとの見方でしたので、これを大きく下回りました。なお、輸出は前年同月比+9.1%増の5兆4411億円、輸入は+14.2%増の5兆2783億円でした。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の輸出9.1%増、9カ月ぶり拡大 貿易黒字1628億円
財務省が22日発表した11月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月に比べ9.1%増の5兆4411億円となり、12カ月連続のプラスだった。伸び率も9カ月ぶりに拡大した。中国などアジア向けの輸出がけん引し、欧州連合(EU)向けの自動車も好調だった。ただ米国向け輸出の鈍化や円高など不安要素も残り、このまま輸出の伸びが加速するかは不透明だ。
輸入額は14.2%増の5兆2783億円。鉄鉱石など輸入素材の価格上昇に加え、家電エコポイント縮小に伴う駆け込み需要でアジアからの家電輸入が急増した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は前年同月比55.4%減の1628億円となり、黒字幅は3カ月ぶりに減少した。為替レートは1ドル=81円39銭で前年同月比10%の円高・ドル安だった。
地域別の輸出動向ではアジア向けが前年同月に比べ13.0%増となり、10カ月ぶりに伸びが拡大した。このうち中国向けは18.3%増と好調を持続した。金属加工機械や鉄鋼の輸出がけん引した。EU向けは10.1%増で、2カ月ぶりにプラスに転じた。イタリア向けの自動車や自動車部品が大きく増えた。
一方で米国向けは前年同月比1.2%増にとどまり、伸び率は2カ月連続で縮んだ。建設用機械が増えたものの、自動車が7.5%減った。ただ自動車の輸出数量は増えていることから、財務省は「輸出額が伸び悩んだのは単価が下がった影響が大きい」とみている。
直近の動きを示す季節調整済みの前月比でみると、11月の輸出は1.7%増の微増にとどまった。大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は「輸出は横ばい圏の推移で、今後も踊り場が続く」と予測している。

次に、貿易統計のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルが季節調整していない原系列、下が季節調整済みの系列で、いずれも水色の折れ線グラフが輸出、赤が輸入、緑色の棒グラフがその差額である貿易収支です。

貿易統計の推移

今年に入ってから、2月の中国の天候と春節ショックを経て、輸出はほぼ横ばい圏内の動きが続いています。猛暑やエコカー補助金、家電エコポイントなどの一時的・制度的な要因とともに、この輸出の動きが生産を通じて我が国の景気動向を左右していると私は受け止めています。そして、輸出の鈍化は世界経済の鈍化と円高に起因しています。下のグラフは、一番上のパネルが金額ベースの輸出の前年同月比を数量と価格で寄与度分解し、真ん中のパネルでは OECD 先行指標と我が国の輸出のそれぞれの前年同月比を並べ、一番下のパネルで輸出と鉱工業生産指数の前年同月比伸び率をプロットしています。

輸出数量指数の推移

2点ほど付け加えると、第1に、もしも為替相場に大きな変化がないと仮定すれば、来年春先から年央くらいで我が国の輸出は再び回復軌道に復帰する可能性が高いと私は見込んでいます。割合と単純に、そのあたりから世界経済が再加速すると考えるからです。輸出にはほのかに明るさが見えます。第2に、さはさりながら、現時点までの貿易統計を見る限り、資源価格の上昇に加えて液晶テレビや航空機の増加などから輸入が増加していることもあり、今年10-12月期の外需はGDP成長率に対してマイナスの寄与を示すと私は受け止めています。GDP全体で考えて、家電エコポイントの駆込み需要が観察されるものの、エコカー補助金の打切りに伴う減産が見られ、さらに外需もマイナス寄与となれば、今年2010年10-12月期のGDP成長率はマイナスに落ち込むことはほぼ確定です。

長期的には人口動態というか、人口減少の影響により、また、短期的には金融政策の無策により、いずれにせよ、内需はサッパリ伸びそうにもありません。我が国の成長率が限界的に外需に大きく依存する状態がまだまだ続くのかもしれません。それだけに、為替の影響を重視すべきであろうと思います。

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2010年12月21日 (火)

今さらながら OECD PISA 2009 を振り返る

昨日から開催されていた日銀の金融政策決定会合で何か動きがあれば今夜のエントリーで取り上げるつもりだったんですが、相変わらず、世界に冠たる「無策の中央銀行」は短観の基調が変化しても何があっても一向に政策変更する気もないらしく、仕方がないので別のテーマで書いてみたいと思います。すなわち、昨年2009年に実施された経済協力開発機構 (OECD) の「生徒の学習到達度調査」 Programme for International Student Assessment (PISA) の結果が今月上旬に公表されています。今さら感が強いんですが、何はともあれ、簡単に取り上げておきたいと思います。専門外もはなはだしいことで、事実関係を中心に根拠のない感想だけにとどめます。なお、OECD PISA 2009のサイトだけでなく、文部科学省の国際学力調査のサイトなども参考にしています。まず、平均スコアでソートされたランキングは以下の通りです。読解力、数学、科学の3分野別で、10位までと OECD 平均を示しています。なお、OECD 加盟国以外の参加国・地域も含まれており、これらは青で示してあります。

rankcountryscore
reading
1Shanghai-China556
2Korea539
3Finland536
4Hong Kong-China533
5Singapore526
6Canada524
7New Zealand521
8Japan520
9Australia515
10Netherlands508
OECD average493
mathematics
1Shanghai-China600
2Singapore562
3Hong Kong-China555
4Korea546
5Chinese Taipei543
6Finland541
7Liechtenstein536
8Switzerland534
9Japan529
10Canada527
OECD average496
science
1Shanghai-China575
2Finland554
3Hong Kong-China554
4Singapore542
5Japan539
6Korea538
7New Zealand532
8Canada529
9Estonia528
10Australia527
OECD average501

次に、PISA は2000年に開始されて3年おきに、日本でいえばその時の高校1年生に当たる学年の生徒の到達度を計測しているんですが、これも平均スコアに従ったランキングで、我が国の順位がどのように推移したかを表に取りまとめると以下の通りです。

Japan
readingmathematicsscience
yaerrankyearrankyearrank
200082000120002
2003142003620032
20061520061020066
200982009920095

一般的な説としては、いわゆる「ゆとり教育」とともに我が国は順位を下げたんですが、逆に「ゆとり教育」を止めたので少し順位が戻りつつある、などと解釈されたりしています。この部分については感想は差し控えます。ただし、到達度を平均だけで観察することは何らかのバイアスを生じる可能性がありますので、レベル別に分布も併せて見ると以下のグラフの通りです。上から、読解力、数学、科学の順となっています。表と同じく上位10国・地域と OECD 平均だけです。なお、レベルはまちまちなんですが、赤と水色の境目で縦にそろうようにプロットしてあります。

OECD PISA 2009

直観的には、我が国はレベルごとにかなり分布が幅広く、いわゆる fat tail な分布をなしているように見えます。ある意味で、black swan が観察されるというか、この場合は天才が現れる可能性が比較的高い分布のような気がしなくもありません。日本以外の国・地域では、メディアでも話題になりましたが、中国の上海が各分野、特に数学で圧倒的なトップに立ったことが特徴的です。私は従来から数学的な能力は部分的には数の数え方、難しくいえば、記数法とか言語の数体系に依存するという説を持っており、中国語やその影響を強く受けた日本語の10進法は数学に有利ではないかと考えています。英語のような12進法、スペイン語の15進法、フランス語の16進法などは不利なのかもしれません。もっとも、ラテン語は私が知る限り10進法ですが、18なんかは20に2足りない、といった複雑な記数法を取ります。現在でもフランス語にその名残りが見られるのはよく知られた通りです。
なお、もちろん、OECD/PISA は悉皆調査ではなく、無作為抽出によるサンプル調査です。日本ではランダム・サンプリングにより約6000人が参加しています。しかし、上海の結果、特に数学については、サンプリングに疑義を生じるに十分な結果だと私は受け止めていたんですが、最近になって知り合いに謎解きをされました。すなわち、日本では高校はほぼ全入に近いわけですから、PISA 対象である高校1年生はほぼ日本人一般に近い概念である一方で、上海で日本の高校1年生に当たる学年まで学校に通っているのは、そもそも、かなりのエリート層ではないか、という見方です。中国の教育制度に関する情報はそれほど持ち合わせていませんが、そうなのかもしれません。そうでないのかもしれません。

最後に、昨年の今ごろ、私が外交官として3年間勤務したチリが OECD から招待状を受け取り加盟しました。ラテンアメリカではメキシコに次いで2番目の加盟国だったと書いた記憶があります。しかし、今回の PISA 2009 の結果を見ると、平均スコアでソートした加盟国の順は読解力、数学、科学ともワースト3はメキシコ、チリ、トルコの順でした。まあ、こんなもんでしょう。

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2010年12月20日 (月)

日本経済の見通しやいかに

今週金曜日の予算案の閣議決定に向けて、同時に、政府経済見通しも着々と進んでいることと思いますが、政府だけでなく多くのシンクタンクや金融機関、さらに、国際機関でもすでに来年以降の日本経済の見通しを明らかにしています。今夜は取りあえず成長率について、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。単位は成長率のパーセントです。なお、アスタリスクを付した2つの国際機関はカレンダーと同じ歴年の見通しですが、それ以外は政府と同じように4月から始まる財政年度の見通しです。ご注意ください。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。かなり長めに取ったつもりですが、さらに詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名201020112012ヘッドライン
経済開発協力機構*
(OECD)
+3.7+1.7+1.3deflation is projected to continue, with unemployment remaining above its pre-crisis level.
国際通貨基金*
(IMF)
+2.8+1.5n.a.In Japan, fiscal stimulus and the rebound in global trade and strong demand elsewhere in Asia have boosted output growth since the fourth quarter of 2009, but activity weakened significantly in the second quarter of 2010.
日本総研+3.3+0.3n.a.これまでの景気回復は、内外の政策効果に依存していたところが大部分。2011年度は、耐久財購入刺激策などのプラス効果が剥落し、日本経済の脆弱さが浮き彫りになる局面
ニッセイ基礎研+3.3+1.6+1.9足もとの景気は足踏み状態にあるが、海外経済の回復や円高の是正に伴い輸出の伸びが高まること、反動減の影響一巡により個人消費が持ち直すことから、2011年1-3月期はプラス成長に復帰し、景気後退局面入りは回避されるだろう
大和総研+3.0+1.0n.a.2011年度の経済成長率が2010 年度を下回るのは所謂「成長のゲタ」が低下することによる影響が大きく(2010年度: 前年比+1.9%→2011年度: 同▲0.2%)、「ゲタ」を除いた成長率は、2010年度、2011年度共に前年比+1.1%と底堅い成長が続く
みずほ総研+3.3+1.4n.a.2010年度高の日本経済は、需要・生産が停滞し、景気は一進一退の展開を辿る可能性が高い。…(中略)… 2011年度に入ると、景気は緩やかな回復軌道に戻る見通し
三菱総研+3.1+1.0n.a.10年10-12月期以降、日本経済は踊り場入りし、11年4-6月期にかけて足踏みの状況が続くと予想する。その後の回復テンポについても、為替相場など金融市場の動向に加え、米国経済の回復のスピードや中国経済の軟着陸の成否など海外経済の行方に大きく依存しており、先行きの不確実性は高い
野村證券金融経済研究所+2.7+1.2+2.1金融緩和策の一部奏功による円高傾向の一巡と海外経済の持ち直しを背景に、2011年半ばから輸出は再び回復傾向に転じよう。追加経済対策の効果や内需持ち直し傾向が持続する中で、輸出が牽引役を果たす形で国内景気は2011年7-9月期に「踊り場局面」を脱し、再び浮揚しよう
第一生命経済研+3.3+1.0+2.4景気が後退局面入りする可能性は低いと考えている。米国では景気の減速傾向に歯止めがかかりつつあることを示唆する経済指標が見られるようになってきたことに加え、中国でも景気の好調さを示す指標が増えてきた。海外経済の失速によって日本からの輸出が失速する可能性はかなり低下した
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+3.4+2.0+3.0景気は、すでに調整局面に入っているが、景気後退には至らず、11年4-6月期にかけての踊り場的な調整局面を経て、11年夏場に再加速し、12年度も堅調に推移する、との見通しに変更はない
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+3.2+1.5+2.02010年度下期は景気対策効果の剥落によって景気が足踏み状態に陥る可能性が高いが、2011年度には内需の拡大を背景に景気は自律的な回復軌道に乗り、デフレ圧力も薄らいでくるという見方に大きな変更はない
みずほ証券リサーチ&コンサルティング+3.2+1.6n.a.回復基調が途絶える可能性は低く、11年半ば以降については、内外における在庫調整が一巡するとともに、米国経済の回復ペースが徐々に高まっていくことなどから、日本経済の回復モメンタムは再び高まっていく
農林中金総研+2.8+1.1+2.4欧米経済には不安定さが残っているほか、堅調だった中国経済も調整が続いており、わが国からの輸出が再加速する状況にはない。とはいえ、世界経済全体が再び悪化するリスクは大きくはないと見られるが、わが国の輸出にとって好材料は少なく、当面は輸出の伸びが鈍化する可能性は高い
富士通総研+3.3+1.6n.a.日本経済は、輸出の減速と政策効果の一巡により踊り場に入っていますが、世界経済の再加速が見込まれる来年春以降は、輸出の増加を通じ、再び緩やかな回復軌道に戻っていくと予想
伊藤忠商事+3.3+0.8+2.4「踊り場的な状況」は2011年前半も続く見込みである。その後、2011年後半以降は、アジア向けを原動力に輸出が再加速へ転じ、日本経済の基調は上向くと予想
帝国データバンク+3.2+1.3+2.22011年度は、外需に下振れリスクがあるものの、住宅投資が7 年ぶりにプラスとなるなど、設備投資と住宅投資が成長を支えると予測される。2012 年度は、設備投資や住宅投資がけん引するほか、個人消費も安定した伸びを示し、バランスのとれた成長プロセスになると予測

一見して明らかなように、今年度2010年度はいわゆるゲタもあって高成長を記録した後、年明けから来年半ばくらいまで踊り場が続き、来年後半から景気は再加速して回復軌道に復帰し、2012年度は順調に成長率が上昇するという穏当な見通しが多くなっています。私は年央よりももう少し早めに成長率がピックアップするように見ています。大きな違いはありません。程度問題だという気がします。かなりの程度に外需に依存した成長経路だと思いますので、為替は引き続きリスク要因です。

ただし、いくつかのリポートを拝見していて、ハッキリと「デフレが緩和する」と書いていたものがあったんですが、私は見通し期間の2012年までデフレから脱却はしないと考えています。昨年の今ごろに政権交代後の鳩山内閣が「デフレ宣言」しましたが、2012年度までその逆の「デフレ脱却宣言」は出ないと受け止めています。もし出たら、私は眉に唾を付けて聞きたいと思います。

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2010年12月19日 (日)

Time Person of the Year 2010 は Facebook 創設者の Mr.Mark Zuckerberg

Mark Zuckerberg - Person of the Year 2010 - Time

やや旧聞に属する話題であるものの、毎年、この時期に注目される年末の風物詩的なイベントで、Time Person of the Year 2010 に Mr.Mark Zuckerberg が選ばれました。おそらく世界一の規模の SNS である Facebook の創設者です。彼の半生は映画 The Social Network にもなっています。日本では来年1月の封切りです。なお、最初の画像はまさにこれを報じる Time のサイトから引用しています。昨年はバーナンキ連邦準備制度理事会 (FED) 議長、一昨年はオバマ米国大統領だったと記憶しています。ついでながら、選に漏れたものの、主要な候補者は以下の画像の通りです。一応、知らない人のために、左から、Mr.Mark Zuckerberg、Ms.Sarah Palin、Lady Gaga、Mr.Julian Assange となっています。それでも知らない人はファイナリスト25人/組についてのテーブルを参照するとよいでしょう。

Candidates  - Person of the Year 2010 - Time

ファイナリスト25人/組について、Time 誌上の Poll Results は以下の通りです。省略しましたが、ランクでも得票数でも Mr.Julian Assange がダントツのトップとなっています。やっぱり、Person of the Year に選出するのは何らかの差障りがあったのかもしれません。8-9番目と、ひょっとしたら20番目は、個人というより集合体のような気がします。なお、「参考」欄は私の分かる範囲で人となりを書いておきました。さすがに、全員をよく知っているというわけでもありませんので、誤解があればご指摘ください。特段の明記ない場合は米国人と考えていただいて結構です。なお、WikiLeaks とは何か、どうしてトルコ首相が上位に入っているのか、などの初歩的な疑問はネット検索が便利ですので申し添えます。

ランク氏名参考
1Julian AssangeWikiLeaks 創設者
2Recep Tayyip Erdoğanトルコ首相
3Lady Gaga歌手。私は Bad Romance しか知らない。
4Jon Stewart and Stephen ColbertColbert Report で知られる社会風刺コメディアン
5Glenn BeckFOX ニュースのアンカー。当然、右寄りで Tea Party に近い。
6Barack Obama米国大統領
7Steve Jobsアップル CEO
8The Chilean Minersコピアポ近郊の鉱山から救出された
9The Unemployed American米国では雇用の回復が遅い
10Mark ZuckerbergFacebook 創業者
11Liu Xiaobo漢字表記は「劉暁波」、今年のノーベル平和賞を受賞した中国反体制活動家
12Sarah Palin前アラスカ州知事、前共和党副大統領候補
13David Cameron英国首相
14Hu Jintao漢字表記は「胡錦涛」、中国国家主席
15Robert Gates米国防長官
16Imam Feisal Abdul Raufニューヨークのイスラム教指導者。グランドゼロの隣にモスク建設を計画。
17Nancy Pelosi米国の民主党幹部。元下院議長。
18Craig Venterヒトゲノムの研究者・実業家
19Arne Duncan米国教育長官
20Elizabeth Warren, Mary Schapiro and Sheila BairMs.Warren はハーバード大学教授、Ms.Schapiro は米証券取引委員会委員長、Ms.Bair は連邦預金保険公社 (FDIC) 総裁であり、いずれもオバマ政権下において金融に携わる女性
21David and Charles KochKoch Industries 経営者兄弟。Tea Party の資金提供者として有名。
22LeBron JamesNBA を代表するスーパースター
23Jonathan Franzen米国人作家。私は The Corrections しか知らない。
24Tony Hayward流出事故を起こした BP の CEO
25Hamid Karzaiアフガニスタン大統領

繰返しになりますが、ランクも得票もトップのアサンジュ氏が選ばれなかったのは、それ自体としてニュースだという気がします。また、米国のオバマ大統領や英国のキャメロン首相などの著名な政治家や米国で人気の高い歌手、作家、スポーツ選手などは当然として、2人入っている中国人では国家主席よりも反体制活動家の方が上位にランクされているのは注目されます。政治的な立場では、米国の中間選挙で注目されたティー・パーティー寄りの人々が目立つ気がします。最後の2人なんかはノートリアスな意味で注目されたのかもしれません。

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2010年12月18日 (土)

日本橋三越に報道写真展を見に行く

2010年報道写真展

今日は、日本橋三越本店に第51回2010年報道写真展を見に行きました。上の画像に見る通り、昨日から開幕し12月26日までの予定です。今日の午後というか、ほとんど夕方近くに行ってみたんですが、なかなかの入りで盛況でした。
主催は東京写真記者協会で、今年の協会賞の一覧はコチラです。三越7階の会場に着き、私が考えた入口から入って最初の1枚が協会賞の特別賞を授賞された「金総書記、4年ぶり訪中」とかで、やや冴えない印象だったんですが、その隣が同じく特別賞の「はやぶさ帰還-7年、60億㌔の旅」でした。私は「はやぶさ」が今年一番のニュースだと考えていますので感激しました。また、冬季オリンピックにサッカーのワールドカップ、さらに、上海万博などの華やかなイベントがあった一方で、私は今年のハイチ大地震を忘れることが出来ません。ハイチの写真も数多く見かけました。スポーツについてはどうしても、冬季オリンピックとサッカーのワールドカップが中心になります。昨日の開会式にはロッテの井口選手が宇宙飛行士の山崎女史とともに出席していたと報じられていますが、どうしても野球は影が薄かったような気がします。それにしても、必ず毎年1回は内閣改造の写真を見せられるのも飽きて来た気がしないでもありません。「今年は内閣改造がなかった」というのがニュース・バリューを持ちそうです。

プロが撮った素晴らしい写真で今年1年のニュースや出来事を振り返ることが出来ます。多くの方にオススメします。

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2010年12月17日 (金)

来年度税制と予算案について考える

広く報じられているように、昨日、来年度の税制改正大綱が閣議決定されました。大雑把に高所得家計に増税、法人税は減税となっていることはよく知られた通りです。今夜のエントリーは以下の政府およびメディアのニュースソースから簡単に取りまとめています。

まず、日経新聞のサイトから税制改正の全体像をビジュアルに示した画像は以下の通りです。

2011年度税制改正大綱のポイント

さらに、別の日経新聞のサイトの情報を基にして、私なりに家計と企業の経済主体別に増減税を取りまとめると以下の通りです。なお、明記してあるように単位は億円で平年度ベースの国税ですから、初年度ベースではなく、地方税は含まれていません。当然ながら、プラスは増税、マイナスは減税を示しています。

平年度ベースの国税、単位は億円
家計+4,900
相続税の基礎控除縮減等+2,900
給与所得控除の縮減+1,200
成年扶養控除の縮減+800
退職所得課税の見直し+100
贈与税の減税▲100
企業▲5,800
法人実効税率5%引下げ▲13,500
中小企業軽減税率3%引下げ▲700
雇用促進税制の創設等▲700
減価償却制度見直しなど課税ベース拡大+6,500
地球温暖化対策税(環境税)の導入+2,400
中小企業向け租税特別措置の見直し+200

税制だけでなく歳出も含めて考えて、家計の可処分所得に対する影響をニッセイ基礎研が「制度改正による2011・12年の家計への影響」として発表しています。このリポートにはいくつかのケースが試算されているんですが、このリポートでいうところのケース2、すなわち、4人家族で配偶者と13歳と10歳の子ども2人のモデルケースでは、年収水準別にみた可処分所得の増減は以下のグラフの通りになります。横軸は万円単位の家計の年収であり、縦軸は2010年から2011年への可処分所得の増減差で、単位は同じく万円です。オレンジ色の折れ線グラフが合計の可処分所得の差、棒グラフはその内訳で、色分けは凡例の通りです。年収1000万円前後が増減の分れ目になっていることが読み取れます。リポートの p.7 にある図表を基にプロットしました。

年収水準別にみた可処分所得の増減

先週12月10日にお示しした歳出と合わせて、来年度予算の全体像で特徴を考えると、以下の3点に要約できると私は考えています。第1に、根拠の乏しいつじつま合わせになっている点です。特に、今年度の当初予算における新規国債発行額の44.3兆円を来年度予算では下回るとの目標が設定されましたが、これは経済学的にどのような意味があるのかまったく意味不明です。「44兆円枠」を順守すれば我が国の財政はサステイナブルであるという根拠はまったく示されておらず、単なる数字合わせと受け止めているのは私だけなんでしょうか。第2に、総選挙のマニフェストとの関係が不明です。マニフェストに固執して歪みを生じている項目がある一方で、マニフェストにあったガソリン暫定税率の廃止と地球温暖化税(環境税)の導入は全く矛盾しているように見えるのは私の頭が悪いからなんでしょうか。堂々とマニフェストを見直す時期に差しかかっている気がしてなりません。第3に、消費税論議を避けることにより高齢者の逃切りを許す結果となったことです。何度もこのブログで論じた通り、高齢者への過度の優遇が財政を悪化させている一因であることは明らかなんですが、政府もメディアも何ら改善の意欲は見られません。一応、「平成23年度予算編成の基本方針」の p.7 に「平成23年半ば頃、中期財政フレームの改訂を行い、平成24年度から平成26年度までを対象とする新たな中期財政フレームを定める」とありますが、どこまで議論が進むかは不透明です。ここまで高齢者パワーの温存を許すシステムが継続されるのであれば、我が国財政は破綻に向かう可能性があると受け止めるべきです。そして、単なる仮定ではありますが、もしも財政が破綻する場合、高齢者はそのレガシー・コストを部分的にしか負わずに一部は逃げ切ってしまう可能性がますます高くなっています。

エコノミストの目から見て民主党の政策の最も不可解なところは、何らかの基準がどこからか降って湧いて来るところです。例えば、普天間は今年5月までに結論、新規国債発行額は44兆円まで、TPP参加の基本方針は来年6月に決定、などなど、普天間はともかく、エコノミストから見て根拠が不明確な数字や期限が山盛りであると受け止めています。このままでは将来の消費税増税や国債発行についても十分な国民的議論を経ることなく、民主党的な根拠のハッキリしない「落としどころ」にいつの間にか決まってしまう危険を感じてしまいます。

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2010年12月16日 (木)

日銀短観で緩やかな企業経営環境の悪化を確認!

昨日、日銀から12月調査の短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査の+8からやや下がって+5、さらに先行きは▲2となりました。しかし、この時期の短観の統計上のクセとして設備投資計画は上方修正されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。総じてメディアでは私が感じたよりも悲観的な論調が多かったような気がします。

日銀12月短観、景況感7期ぶり悪化 自動車・電機が減速
日銀が15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス5となり、9月の前回調査から3ポイント低下した。DIの悪化は2009年3月調査以来、7期(1年9カ月)ぶり。エコカー補助金の打ち切りや海外経済の減速が響き、自動車や電機を中心に景気の回復が足踏みしていることを映した。3カ月先を予想するDIはマイナス2だった。企業に先行きへの警戒感が強まっている。
企業の業況判断DIは景況感を「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。大企業製造業のDIはリーマン・ショック後の09年3月に過去最悪のマイナス58をつけた後、景気の持ち直しを受けて上向いてきたが、改善基調がいったん途切れたことになる。
大企業製造業の16業種のうち、自動車や電気機械など7業種が悪化した。自動車はプラス21と前回から11ポイント低下。エコカー補助金の終了を受けた販売の急減が響いた。電機は12ポイントの悪化。海外経済の減速や電子部品の在庫調整を反映した。
大企業非製造業のDIはプラス1で前回に比べ1ポイント低下。12業種中9業種が悪化した。小売りはマイナス3と、4ポイント悪化した。猛暑効果や10月からのたばこ増税を控えた駆け込み需要の反動が出た。電気・ガスや運輸・郵便の低下も目立った。
3カ月後を予想したDIは大企業製造業でマイナス2、非製造業でマイナス1となり、企業に「今後、自社を取り巻く環境が良くなる」という見方が後退していることを映した。大企業では28業種のうち21業種が悪化を予想している。
企業収益の先行き不透明感も色濃い。10年度の経常利益計画は大企業製造業で前年度比57.8%増で、前回調査の54.3%増から上方修正となった。ただ下期に限ると前年同期比11.7%の減益見込み。前回調査は2.7%の増益予想で、一転して減益となった。
10年度の想定為替レートは1ドル=86円47銭で、円が高値圏で推移していることを受けて前回の89円66銭から円高方向に修正された。下期は前回の89円44銭から83円87銭と現状の円相場に近い水準へと引き上げられた。
10年度の設備投資計画は大企業製造業で前年度比2.9%増と3年ぶりの増加を見込むが、前回調査の4.0%増から下方修正となった。10年度の新卒採用計画は大企業で前年度比31.1%減で、1994年度(32.0%減)に次ぐ過去2番目の大幅な減少となった。11年度にもさらに0.8%の減少を見込んでいる。

まず、産業別、規模別の業況判断DIの最近の推移を表に取りまとめると以下の通りです。6四半期連続で改善した企業マインドは9月調査で一時的なピークを付け、12月調査から低下を始め、次回の3月はさらに悪化するという見込みとなっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした日銀のリンクからお願いします。

業況判断DI2010/62010/92010/122011/3
(先行き)
全産業▲15▲10▲11▲18
大企業製造業+1+8+5▲2
中堅企業製造業▲6+4+1▲12
中小企業製造業▲18▲14▲12▲23
大企業非製造業▲5+2+1▲1
中堅企業非製造業▲13▲8▲10▲17
中小企業非製造業▲26▲21▲22▲29

上の表の業況判断DIをさらに長期にプロットしたのが下のグラフです。いうまでもありませんが、影を付けた部分は景気後退期です。

日銀短観業況判断DIの推移

企業マインドが一時的なピークを付けて踊り場に入るのは2004-05年にも経験しています。製造業のDIにとくに明瞭に現れています。しかし、前回9月調査の先行き予想ほど大幅なマインドの落ち込みではありませんが、やっぱり、先行きはマイナスに悪化すると考えるべきです。大企業はそれほどでもありませんが、中堅・中小企業では変化幅が大きくなっています。業種別に詳しく見ると、12月調査の現時点から先行きにかけての落ち込みが激しいのは、製造業では自動車、非鉄金属、電気機械、鉄鋼、非製造業では運輸・郵便、小売などです。一昨夜のエントリーでも指摘しましたが、典型的にエコカー補助金や家電エコポイントで需要を先食いした業界が反動減を警戒しているという気がしないでもありません。すなわち、極めて大雑把ながら、現状12月までは円高要因、来年以降の先行きは政策効果の剥落に起因するマインド悪化、と分けて考えることが出来るかもしれません。いずれにせよ、この程度のマインド悪化であれば2番底は回避したと受け止めています。

日銀短観設備投資計画と設備・雇用判断DIの推移

さらに、雇用や設備といった要素需要に関しては上の通りとなっています。一番上のパネルは設備投資計画です。大企業全産業の土地を含むベースですが、前回9月調査からリース会計対応となっていて、連続性がないので点線にしてあります。真ん中のパネルは設備判断DI、一番下は雇用判断DIで、それぞれプラスは過剰、マイナスは不足を表しています。影を付けた期間は業況判断DIと同じで景気後退期です。まず、設備投資計画は9月調査から0.5%ポイント上方修正されました。一見すると明るいニュースなのかもしれませんが、例年と同じ動きであり、短観の統計としてのクセと私は受け止めています。もしも、例年と同じ修正パターンが繰り返されると仮定すれば、2010年度の設備投資は最終的に前年度比1%を少し下回る増加率となりそうな気がします。ですから、必ずしも設備投資が順調とは私は考えていません。他方、設備と雇用の過不足感はレベルとして少し過剰感が残っているものの、今年に入ってから大きな変化は見せていません。特に雇用については、極めて緩やかにしか雇用過剰感が払拭されず、雇用の増加や失業率の低下につながっていない可能性があります。大学生や高校生の就職内定率が高まらない背景でもあります。

日銀短観新卒採用計画

本邦初公開で、上のグラフは規模別の新卒採用計画です。大学の場合でいうと、現在の4年生が大幅減の年にブチ当たってしまいましたが、私は現在の2年生、すなわち、上のグラフでいうと2012年度までマイナスを続けるんではないかと予想しています。重ねて同じことを書けば、雇用の改善は極めて緩やかでほとんど実感できないといえます。なお、私が注目した大企業製造業の「事業計画の前提となっている想定為替レート」は201年度下期で1ドル83.87円でした。ほぼ実勢レートに近づきました。逆に、現状よりも円高が進むとは余り想定していないようで、怖い気もしないでもありません。最後に、全体を短く取りまとめると、雇用や設備に対する過剰感はまだまだ根強い一方で、現状の景況感については意外と底堅いものの、来春くらいまでの先行きはかなり悲観的、といったところになりそうな気がします。円高要因よりも政策効果の剥落の方が落ち込みを激しくしている可能性が示唆されていると受け止めています。

一昨日12月14日まで開催されていた連邦公開市場委員会 (FOMC) で、連邦準備制度理事会 (FED) は景気の現状判断を11月3日 FOMC 後の "the pace of recovery in output and employment continues to be slow" から "the economic recovery is continuing, though at a rate that has been insufficient to bring down unemployment" と一歩進めました。実は、日本も米国も、そして世界経済も、要素需要は芳しくないものの、景気はそれなりに底堅くて、それほど悪化していなかったのかもしれません。それにしては、メディアの悲観的な論調はいったい何なのかと不思議です。

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2010年12月15日 (水)

おにいちゃんのお誕生祝い

昨夜のエントリーでは日銀短観の予想を取り上げ、本日発表されたことは十分認識しているんですが、私的にはより重要なイベントとして、今夜のエントリーでは我が家のおにいちゃんのお誕生祝いを取り上げます。ホントは先週が誕生日だったんですが、期末試験の真っただ中ということで今週に順延されました。教育熱心な我が家では当然です。中学2年生ですから14歳になりました。私からのプレゼントは齋藤智裕(水嶋ヒロ)『KAGEROU』(ポプラ社)でした。ポプラ社小説大賞を受賞し、本日発売の話題の本です。予約はあの『1Q84』を上回ったと報じられていました。

おにいちゃんのお誕生祝い

おにいちゃんのお誕生祝い

おにいちゃんのお誕生祝い

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2010年12月14日 (火)

12月調査日銀短観の予想と政策効果による需要の先食いの影響

明日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。いつもは先行きに注目しているんですが、今回は12月調査について着目しました。先行きやより詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。なお、見れば分かると思いますが、表の主たるコンテンツは大企業の製造業・非製造業の業況判断DIと大企業全産業の2010年度設備投資計画の前年度比です。ヘッドラインはおまけです。設備投資計画は土地を含んでいます。設備投資についてベースが異なる場合は数字を上げずに方向性だけをプラスかマイナスかで示してあります。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
12月調査実績+8
+2
<+2.4>
n.a.
日本総研+3
+1
<+2.4>
政策効果の剥落や輸出の増勢鈍化に伴い、2009年6月調査から改善してきた企業マインドが低下に転じる見通し
みずほ総研+2
0
<+>
生産活動は全般に弱含んでいる …(中略)… 個人消費は低迷している
ニッセイ基礎研+8
+1
<+3.0>
大企業製造業の足元の業況判断D.I.が頭打ちとなり、前回まで6期連続で続いてきた改善が止まることで停滞感の濃い内容になりそう
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+6
0
<+3.5>
DIはプラスを維持し、景気の調整が軽微にとどまり、踊り場的な調整局面となる可能性
第一生命経済研+4
▲1
<->
景気後退に移行するシナリオがある反面、再加速シナリオの方が蓋然性が高い
三菱総研+5
0
<+2.7>
国内外での需要の伸びが鈍化しているなか、製造業を中心に企業の経営環境に対する先行き不透明感は根強い
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+5
+1
<+3.6>
景気を牽引してきた輸出の増勢が鈍化しているのに加え、エコカー補助金支給が終了した影響で自動車の生産が大きく落ち込んでいることが背景
みずほ証券リサーチ&コンサルティング+3
0
<+2.5>
輸出の減速やエコカー補助金の終了に伴い、足元では生産調整局面にあることなどから、総じて業況判断は前回調査から悪化
富士通総研+4
0
<+3.5>
日本経済は世界経済の成長鈍化に伴う輸出の減速と、これまでの政策効果の一巡により、踊り場に入っており、業況判断DIは、製造業、非製造業とも小幅悪化
伊藤忠商事+2
0
<+2.1>
日本経済が踊り場的な状況に陥り、収益も頭打ちとなったことを受け、業況判断DIは総じて悪化

9月短観に比べて業況判断DIは悪化するものの、悪化の幅はそれほど大きくない、というのが大雑把なコンセンサスのような気がします。ゼロも含めてプラスを維持するという見方が有力です。さらに、設備投資計画は多くの機関の予想で9月調査よりも上方修正されています。もっとも、先行きの業況判断DIはもっと悪化するという予想が大勢となっています。すなわち、来年年央くらいまで企業経営環境は厳しさを増すというのが大方のコンセンサスになっているようです。これが雇用などの要素需要にどういう影響を及ぼしているのかが気にかかるところです。
この業況判断の裏側には輸出などとともに消費の大きな変動、それも政策に起因する消費の振幅の拡大を見逃すべきではありません。すなわち、エコカー補助金や家電エコポイントによる需要の先食いです。1か月以内くらいの期間に私の知っている範囲で、日本総研と第一生命経済研究所と伊藤忠商事情報調査部から、これらの政策効果の反動などについて、以下のリポートが出されています。特に、伊藤忠商事情報調査部の分析は鋭く、単に異時点間の消費の代替効果だけでなく、同時点における代替効果まで視野に入れて、つまり、需要の先食いとその反動に加えて、相対価格の変更に伴って政策対象とならずに割高感を生じた財サービスの消費抑制につながった可能性も指摘しています。

当然ながら、各リポートとも今年度にかなりの需要の先食いをした分、来年度には反動によるマイナス効果を見込んでいます。基本的には、これらの政策効果の反動も含めて、来年春先くらいまでの踊り場を見込んだ後、その後は世界経済の持直しに伴う輸出の回復により景気回復局面へ復帰する、という私のようなシナリオを考えるエコノミストが多いんではないかと想像していますが、期間的に短く程度は軽くても景気後退まで見込んでいるエコノミストも皆無ではありません。官庁エコノミストとして、政策に起因する景気後退は避けたいところです。

少し短観から離れましたが、明日発表の12月調査の注目点はヘッドラインの業況判断DIに加えて、いつも注目の高い設備投資計画や雇用判断DIなどとともに、「事業計画の前提となっている想定為替レート」もポイントになります。9月調査では1ドル90円を少し下回る程度でしたが、実勢レートはもっと円高に進んでいます。

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2010年12月13日 (月)

日本は規模で経済大国を目指すべきか?

やや旧聞に属する話題ですが、Allstate / National Journal / The Atlantic の3社の共同調査による Heartland Monitor Poll の結果が先週に少し話題になりました。「最強の経済大国は中国」というものです。私が見かけた範囲では朝日新聞と読売新聞のサイトでニュースがキャリーされていました。以下のリンクの通りです。

この件について、私は主として Allstate のサイトから情報を得たんですが、ニュースソースは以下の通りです。

  1. Heartland Monitor VII: Return to Prosperity
  2. Heartland Monitor Poll Topline
  3. Heartland Monitor VII: Down From The Pedestal

そして、アンケート調査の共同主催のうちの1社である National Journal 2009年12月11日号の p.27 から引用したグラフは以下の通りです。現時点と20年後のそれぞれの最強の経済について、さらに、米国の優れている点と劣っている点についての質問結果です。

Second Best

「最強の経済」に対する回答として、中国、米国、日本の順となっています。こういったアンケートの場合、「経済的な豊かさ」という意味で、1人当たりの指標を比較して人口の多い中国はまだまだ…、といった論調を見かけますが、上の画像に見る通り、質問があくまで "Which one of the following countries or regions do you think has the strongest economy?" ですから、1人当たりではなく1国経済全体で比較するのが当然です。ただし、注意すべきであるのは米国人が回答していることです。「最大」ではなく「最強」との表現ですから、レベルとともにモメンタムの要素もあって、中国がトップというのは十分にあり得ることです。ただし、20年後には米国もかなり盛り返している、というのは米国民の自信の表れかもしれません。
下パネルの「米国の優れた点、劣った点」でも、大学レベルの高等教育や科学力などは米国民は自信を持っているようですし、自分自身の労働力についても "a fairly well-trained workforce" と評価していますが、その次の政府の成長戦略あたりから怪しくなり、"Americans see more clouds" ということになります。最後に、初等中等教育には自信がないようです。

PPP GNI

我が国でも今年2010年にはドル換算のGDPで中国に抜かれて、日本が1国経済のGDP規模で世界第3位に転落することは、このブログでも8月20日付けのエントリーで取り上げた The Economist の記事 Japan as number three: Watching China whizz by をはじめとして、ほぼ全世界的なコンセンサスになっている気がします。しかし、量的・規模的に中国経済の後塵を拝し出したのはずっと前からそうであり、上のグラフに見る通り、購買力平価で換算した1国経済規模ではすでに中国に大きく水を開けられ、インドに迫られているのが実情です。なお、上のグラフは世銀のデータベースに基づき、2009年の購買力平価換算の国際ドルに基づいてプロットしています。横軸の単位は兆ドルです。

特に新しい視点でもありませんが、経済面で量的・規模的には我が国は中国にはかなわないわけですし、そのうちにインドにも抜かれる可能性が高いわけですから、別の面で日本経済の美点を引き出すことが必要です。人口が減少する中で、国民生活の豊かさを増進すること、質の高いストックを維持すること、などもそれぞれ重要な政策目標なのだという気がします。

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2010年12月12日 (日)

年賀状を準備しつつ、室積光『史上最強の内閣』 (小学館) を読む

12月も半ばに迫り、そろそろ年賀状の準備に追われています。昨年の今ごろは長崎への単身赴任生活での2度目のお正月だから、東京に帰る日も近いことを予想して年賀状には熱心ではなかったんですが、今年は東京に帰ったことを周知徹底するためにも、少なくともいつも通りの年賀状を出そうかと考えています。というのも、つい先日、我が母校の京都大学経済学部の卒業生名簿が送られて来たんですが、私の住所はいかんともしがたく長崎のままになっていたりします。

室積光『史上最強の内閣』 (小学館)

年賀状準備の合間を縫って、室積光『史上最強の内閣』 (小学館) を読みました。何となくタイトルから中身は想像出来るような気もしますが、出版元の小学館のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

総理大臣は、京都のお公家様!?
北朝鮮が、日本にむけた中距離弾道ミサイルに燃料注入の報が!
中身は核なのか? それとも……。
支持率低迷と経済問題で打つ手なしの政権与党・自由民権党の浅尾総理は、本物の危機に直面し「本当の内閣」に政権を譲ることを決意した。
アメリカすら「あないな歴史の浅い国」と一蹴する京都出身の二条首相は、京都駅から3輛連結ののぞみを東京駅までノンストップで走らせたかと思えば、その足で皇居に挨拶へ。何ともド派手な登場の二条内閣は、早速暴力団の組長を彷彿とさせる広島出身の防衛大臣のもと「鉄砲玉作戦」を発動したのだが、果たしてその結果やいかに?
「こんな内閣があったら……」笑って笑って、涙する、史上初の内閣エンタテインメント!

ということで、「史上初の内閣エンタテインメント」とうたわれていますが、30年ほど前に私が読んだ記憶のある和久俊三さんの『権力の朝』が勘定に入っていない気がします。気になる方はネット検索でもしていただくこととして、私自身も内閣官房の官邸スタッフとして、内閣にお仕えした経験がありますが、2005年秋の小泉内閣退陣後、安倍内閣、福田内閣、麻生内閣、鳩山内閣と、ここ数年は政党を問わず1年ほどで内閣支持率が一気に下がり、内閣が1年持たないという現象が続いていることは事実です。とうとう政権交代後の鳩山内閣は1年にまったく達しませんでした。そこで、このエンタテインメント小説では憲法も内閣法も国会での首班指名も、まったく関係なしに超法規的に京都からナショナルチームの1軍内閣がやって来るというところから始まります。自分の出身地だから言うわけではありませんが、やっぱり、来るとすれば京都から来るんでしょう。他の都市では、たとえ大阪でも、しっくり来ない気がします。
きっかけは北朝鮮の核ミサイル発射準備ですから、内閣情報調査室のトップである内閣情報官が閣僚に交じって大活躍します。もちろん、閣僚では外務大臣と防衛大臣です。そして、極めて興味深いのは、テレビと新聞から1名ずつメディア代表ということで、内閣のすべての決定プロセスを明らかにし、50年後をめどとする後世にこの内閣の記録を残そうとすることです。これは私の知る限り、他にもあるのかもしれませんが、この時期に常に取り上げられる「忠臣蔵」の赤穂浪士の処分に関する時の徳川幕府のやり方と同じです。柳沢美濃守吉保から荻生徂徠に赤穂浪士の処分が下問され、切腹は致し方ないとしても、さまざまな意見を記録として残し、後年、赤穂浪士の処分が厳し過ぎると世論が盛り上がった際には、これらをチビチビと公表して赤穂浪士の切腹が苦肉の処分であったことを明らかにする、というのが荻生徂徠の回答だったと言われています。この超法規内閣も内閣の決定をすべてメディアの代表に明らかにし、50年後に公表するという予定になっています。作者がどのような観点からこうしたのか、極めて興味深いところです。
中身は基本的にコメディですが、ある意味で、国民の多くが納得できる戦略を取ります。もちろん、北朝鮮の後継者が首都圏近郊で捕まって、解放後も東京のキャバクラに通い詰めになるとか、信管を抜いた核ミサイルが飛来するとか、北朝鮮には残置諜者がいるとか、なかなか現実には想定しにくいプロットも置かれていますが、内閣の決定や閣僚の思考回路は極めてマトモで、国民のコンセンサスを形成できる可能性が高いものばかりです。しかも、この内閣が自ら期間限定で統治に当たるんですから、とっても分かりやすくなっています。

ある意味で、戦後民主主義の否定になりかねない登場をする内閣ですが、そこはエンタテインメント小説であることを認識の上、大人の対応で読み進むべき本といえます。リアリティの不足のためにフルマークの5ツ星に少し足りなくて、4ツ星半くらいではないかと思いますが、多くの方が手に取って読むことを私は願っています。

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2010年12月11日 (土)

映画「武士の家計簿」を見に行く

「武士の家計簿」ポスター

今日は、有楽町マリオンに映画を見に行きました。森田芳光監督作品になる「武士の家計簿」です。一応、原作は新潮新書から出ている『武士の家計簿』という本なんですが、この本は決して小説ではなく、学術書に近い歴史ものの新書だったりします。
マリオンではハリー・ポッターの「死の秘宝」と隣合わせの劇場で上演されており、私的な視点からはマリオンで上映されるのは「メジャーな映画」と考えていますので、それにふさわしい内容と受け止めています。お客さんはいっぱいでした。封切りから1週間ほどですから、まだまだ話題の映画なのかもしれません。心なしか観客の平均年齢が高かったような気がします。私は2階席の最終列から2番目の真ん中を取ったんですが、劇場を出るのに一苦労しました。観客の歩みが遅くてサッパリ出口に進まなかったような印象でした。
時代背景は幕末から明治初期、舞台は加賀藩の金沢です。算盤を使った会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わって来た猪山家8代目の猪山直之とその妻お駒を主人公に、猪山直之の嫡男成之のナレーションで物語は進みます。主人公の猪山直之は、飢饉の際の「お救い米」の横流しを帳簿から発見して、上司が握り潰して左遷されそうになるところを、逆に、悪事が露呈して昇進し、殿様のお側取次まで栄達します。しかし、嫡男成之の着袴の儀の折にお駒から家計の実情を知らされ、嫡男の武士としての重要な冠婚葬祭の通過儀礼の儀式でさえ「絵鯛」で済ませたり、家財道具を処分し借金の返済に充てることにより、猪山家が一家を上げて倹約生活を実行して行くとともに、嫡男成之に厳しいエリート教育を授ける、というストーリーです。
まず、会計処理の専門家と書きましたが、おばばさまが『塵劫記』を読んでひ孫の猪山成之に今でいう鶴亀算の問題を出題したりしていますので、広い意味での数学の家ともいえます。その意味で、今年の本屋大賞を受賞した『天地明察』と共通する部分があります。他方、映画の中では強調されませんでしたが、明治維新に伴って没落した武士が多い中で、大村益次郎に見出されて算盤と筆だけで海軍主計大監となった猪山成之は例外的な存在ともいえます。私が調べた範囲では、海軍主計大監は大佐クラスの奏任一等官であり、今の役所に当てはめると本省の課長クラスですから、ほぼ私と同じ職階です。私自身と同じ職階だけに、ストレートに「成功者」と言いづらいんですが、明治維新後の没落士族と比べれば世の移り変わりをうまく乗り切ったと言えそうな気がします。

この年末年始の邦画は「ヤマト」に話題が集中しているような気がしないでもないんですが、この「武士の家計簿」もよく出来たいい映画です。1人でも多くの方がご覧になるようオススメします。

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2010年12月10日 (金)

来年度予算について考える

2週間ほど先の12月24日に政府予算案の決定に向けて、さまざまな歳出歳入の注目点がメディアの報道を賑わせています。例えば、本日付けの日経新聞に従えば、歳入と歳出の総額がともに92兆円程度に上り、歳入のうち、税外収入7兆円、税収41兆円に対して、新規国債発行額が44兆円程度となっており、今年度予算と同じように国債発行による歳入が税収を上回ります。2年連続は先進国には例を見ないような気がしないでもありません。もっとも、歳出にも国債費が21兆円ありますから、プライマリ・バランスは▲20兆円を大きく上回る赤字となります。その昔、私が長崎に赴任する前には、2010-11年度からはプライマリー・バランスの赤字幅を縮小させ始め、景気次第で2014-15年度には黒字に転換する目標としていたような、かすかな記憶があるんですが、前政権与党の時代の見込みでもあり、まったく反故にされた形です。今夜のエントリーでは、これらの報道と併せて、12月6日に立て続けに公表された以下の与党の各種提言などをもとに、私なりに来年度予算に関する論点を整理したいと思います。

まず、最初の「平成23年度予算に関わる民主党『提言』」から、以下の9項目の重点的な取扱いが要望に上っています。

  1. 「特別枠」要望の取り扱い
  2. 子ども手当
  3. 一括交付金
  4. 農業関係予算
  5. 求職者支援制度
  6. 雇用保険国庫負担の本則化
  7. 待機児童解消「先取り」プロジェクトの実施
  8. 基礎年金国庫負担の確保
  9. 離島におけるガソリン価格の実質的な引き下げ

最初の項目の「特別枠」は「元気な日本復活特別枠」であり、いわゆる「政策コンテスト」により評価された政策の実施に関する予算です。元気な日本復活特別枠に関する評価会議においてすでに評価が終了しており、1.3兆円が計上される予定です。子ども手当は広く知られている通り、今年度から月額13000円の半額支給で開始され来年度は満額に至らず、3歳未満の子供を持つ親に対して2万円という案も報じられましたが、現時点では未定です。満額支給はあり得ませんが、もしも満額支給すると仮定すれば、出産一時金などと合わせて2.8兆円の財源が必要です。3番目の一括交付金はひも付き補助金を縮減の上、一括化するので財源は不用であろうと考えられます。4番目の農業についてはいわゆる農家の個別所得保障であり、約1兆円の財源が必要と報じられています。次の雇用対策は、求職者支援のほか、非正規労働者への雇用保険の拡大などを含み、5番目と6番目の2項目の合計で平年度ベース0.8兆円の財源が必要となります。7番目は官邸にアップされている「国と自治体が一的に取り組む待機児童解消『先取り』プロジェクト」を見ると、保育サービス従事者の増加による所得増で約0.5兆円が見込まれていますが、これが予算措置されるのか、保育料でまかなわれるのかは明確ではありません。8番目の基礎年金国庫負担½の確保には2.5兆円の財源が必要で、鉄道建設・運輸施設整備支援機構や外国為替資金特別会計の剰余金などを充てる案が浮上していると報じられていますが、まだ決着したわけではありません。
重点に入っていないうちで、割合と人口に膾炙している政策は、まず、高速道路の無料化です。上限2000円との報道がありましたが、本格的に完全無料化するためには1.3兆円の財源を必要とします。さらに、みんな忘れてしまっていると思いますが、ガソリン税などの暫定税率を廃止するには2.5兆円の財源が必要です。既に実施されているものとして公立高校の実質無償化には0.5兆円の財源がかかっています。もちろん、後期高齢者医療制度の廃止を含む医療・介護をマニフェスト通りに実施したり、来年度までの年金記録問題への対応を終えた後、年金を本格的に見直す動きが出る可能性があります。もっとも、年金については負担増と給付減にならざるを得ないと多くのエコノミストは考えていますが、選挙日程次第ではさらに財源を必要とする方向での制度変更がなされる可能性も排除できません。加えて、税制についても、かなり不透明な部分が残っています。法人税の取扱いが最たるものですが、報道によれば、法人税率の5%引下げのため、野田財務大臣はまだ財源が足りないと発言しています。最大で1.5兆円の財源を必要とする可能性があります。次にさらに、環境税も家計や企業の負担を増加させる可能性が高くなっています。そして、overall で新規国債発行44兆円というのが目標のような形でひとり歩きしています。自民党内閣時代には30兆円だったような気がします。44兆円であれば sovereign risk を低下させることが出来るかどうかはまったく不明です。いわゆる「事業仕分け」でもほぼ財源の捻出は底をついたような報道を見かけます。欧州をはじめとして世界的に sovereign risk が注目されている中、このまま財政赤字を垂れ流すと日本が世界経済の重大なリスクになる可能性を高めることにつながりかねません。他方、マニフェストから大きく外れる政策を実行するのであれば、総選挙で国民の判断を仰ぐ必要があると主張する向きもあります。

一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移

現与党の責任だけでないんでしょうが、日本の財政はほぼ行き詰まりました。上のグラフは財務省の「我が国の財政事情」 p.2 一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移を引用しています。最近、海外でも有名になった「ワニの口」が明瞭に観察されます。従って、来年度予算に関しても以下の2点の視点が必要です。すなわち、第1に、sovereign risk の観点から、このまま放置することは世界経済への無責任な態度と見なされる恐れがあります。第2に、今夜のエントリーからの直接の帰結ではありませんが、従来からこのブログで主張している通り、高齢者優遇に起因する世代間格差は社会的に許容できる範囲を超えた可能性があります。もしも、「支持率1パーセントでも」という覚悟があるのであれば、何とかすべき段階に達しているように私には思えてなりません。

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2010年12月 9日 (木)

政策・制度効果による需要の先食いで高成長を示した7-9月期2次QE

本日、内閣府から7-9月期のGDP統計2次速報、エコノミストの業界で2次QEと称されている指標が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済みの前期比実質成長率は+1.1%、年率+4.5%にと、1次QEの+0.9%、+3.9%から、設備投資と在庫投資を中心にやや上方修正されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP、年4.5%成長に上方修正 7-9月実質
10-12月、マイナスの公算

内閣府が9日に発表した7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比1.1%増となった。年率換算すると4.5%増。速報値の3.9%増から上方修正した。設備投資が上振れしたほか、耐久消費財などを中心に個人消費が成長率を押し上げた。ただ政策効果が弱まる10-12月期はマイナス成長に陥る公算が大きい。
改定値は、速報値の公表後に出される法人企業統計などのデータを使ってGDPを推計し直した数値。日経グループのQUICKがまとめた民間調査機関の事前予想は年率換算で4.1%増だったが、これを上回った。
生活実感に近い名目GDPは前期比で0.6%増。年率換算では2.6%増で、速報値の2.9%増から下方修正した。物価動向を示すGDPデフレーターの前期比が、速報段階の0.2%低下から0.5%低下に改定されたため。
内閣府の和田隆志政務官は9日の記者会見で、景気動向について「今までも、これからも厳しい状況にある」との認識を示した。
需要項目別にみると、設備投資は実質で前期比1.3%増と、速報値(0.8%増)から上方修正した。4四半期連続でプラスを維持した。個人消費は1.2%増と、速報値(1.1%増)からやや上向いた。エアコンなど耐久財消費の寄与度が年率換算で約2.8ポイントにのぼり、全体のGDP成長率(4.5%)の約3分の2を占めた。
これまで景気をけん引していた外需はマイナス要因となり、成長率を0.02ポイント押し下げた。外需寄与度がマイナスになるのはリーマン・ショック後の2009年1-3月期以来となる。
改定値を踏まえた09年度の実質経済成長率は前年度比2.4%減で、速報値の1.8%減から下方修正された。2年連続マイナスで、過去2番目の落ち込みだった。
内閣府のドルベースでの試算によると、日本の09年の暦年の名目GDP実額は5兆420億ドル。中国は4兆9850億ドルで、日本が中国を上回った。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需及び外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2009/
7-9
2009/
10-12
2010/
1-3
2010/
4-6
2010/7-9
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)▲0.3+1.4+1.7+0.7+0.9+1.1
民間消費+0.2+0.6+0.6+0.3+1.1+1.2
民間住宅▲8.2▲3.4+1.8▲0.8+1.3+1.2
民間設備▲2.1+1.5+0.9+2.7+0.8+1.3
民間在庫 *▲0.5+0.1+0.6▲0.1+0.1+0.2
公的需要+0.8+0.8▲0.4+0.3▲0.1▲0.1
内需寄与度 *▲0.7+0.8+1.1+0.5+0.9+1.1
外需寄与度 *+0.4+0.6+0.6+0.3+0.0▲0.0
輸出+9.4+4.9+7.2+6.8+2.4+2.5
輸入+5.6+0.7+3.2+4.2+2.7+3.0
国内総所得(GDI)▲0.8+1.3+1.2+0.2+0.9+1.1
名目GDP▲0.7+0.4+1.7▲0.3+0.7+0.6
雇用者報酬+0.8+0.0+1.8+0.8+0.7+0.7
GDPデフレータ+0.1▲2.5▲3.0▲2.3▲2.0▲2.4
内需デフレータ▲2.7▲2.5▲1.6▲1.1▲1.2▲1.6

さらに、いつもの成長率のグラフは以下の通りです。青い折れ線が季節調整済みのGDP前期比成長率を示し、棒グラフはその寄与度を表しています。色分けは凡例の通りです。4四半期連続でかなり高い成長率を続け、7-9月期は4-6月期よりも成長が加速したような印象を受けます。

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

7-9月期に成長が加速したように見えるのは、当然、政策効果による需要の先食いであり、エコカー補助金が9月7日申請分で終了し、家電エコポイントが12月から半減されるため、10-12月期は政策効果が大きく剥落し、マイナス成長に落ち込むと見込まれています。問題はその後の見通しなんですが、私を含めて多くのエコノミストはそのまま2番底に入るとは考えていません。マイナス成長は来年1-3月期だけで済み、4-6月期にはプラス成長に戻り、来年年央までに景気回復軌道に復帰すると見込まれています。景気の減速は踊り場で終わり、景気後退となる2番底までは想定されない、というのが大方のコンセンサスのように私は受け止めています。典型的な先行き見通しを経済企画協会のESPフォーキャストから引用すると以下の通りです。

成長率の先行き見通し

最後に、先行き経済を見通すうえでポイントになるのは、何度もこのブログで繰返した通り、為替相場と輸出であろうと私は考えています。今夜は遅くなりましたので、簡単に済ませます。

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2010年12月 8日 (水)

もたつく機械受注と経常収支、ただし、景気ウォッチャーは駆込み需要で上昇

今日は、いろいろな経済指標が発表されました。まず、内閣府から10月の機械受注統計、財務省から10月の経常収支などの国際収支、さらに、11月の景気ウォッチャー調査結果も内閣府から発表されています。簡単に取り上げたいと思います。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注10月1.4%減 2カ月連続、通信業落ちこむ
内閣府が8日発表した10月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)が前月に比べ1.4%減の7457億円になった。マイナスは2カ月連続で、市場の事前予測(0.6%減)よりもやや下げ幅が大きかった。内閣府は機械受注の基調について、前月に続き「持ち直している」との判断を据え置いた。
ただ一部の業種で生産や輸出に減速感もあり、先行きには不透明感が残っている。
機械受注統計は工場の生産設備などの受注額をまとめたもので、3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す。減少の主因は変動の大きい携帯電話など通信業で、前月比3ポイントの押し下げ要因となった。携帯電話の受注額を除いたベースでは、前月比0.6%増の6823億円と堅調だった。
内閣府の和田隆志政務官は同日の記者会見で、足元の輸出の減速や年明け以降の消費動向を踏まえ、「明るい展望ではない」と指摘。「企業に元気になってもらわないといけない」とも述べ、来年度税制改正での法人税減税など企業の競争力強化策が欠かせないとの認識を示した。
業種別に受注額を見ると、製造業は前月と比べて1.4%増と2カ月ぶりのプラス。電気機械業から半導体製造装置の引き合いがあったほか、非鉄金属などが数字を押し上げた。携帯電話を含む非製造業からの受注額は、船舶・電力を含んだベースで1.1%減と2カ月連続で減少した。情報サービス業や農林漁業が低調だった。
経常黒字、円高響き伸び鈍化 10月2.9%増
財務省が8日発表した10月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆4362億円の黒字だった。円高で輸出額の伸びが鈍化し貿易収支が悪化したことで、経常収支の黒字幅は前年同月に比べ2.9%増にとどまった。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9129億円の黒字で、前年同月に比べ2.6%減少した。輸出額は8.8%増の5兆4143億円。中国や米国向けの自動車や金属加工機械が好調だったが、9月に比べ伸び率は7ポイント縮小している。
輸入は4兆5014億円で11.5%増えた。アジアや中南米地域からの輸入が増加しており、商品別では鉄鉱石のほか石炭や液化天然ガスが大きく伸びた。
投資による稼ぎを示す所得収支は8832億円で3.9%拡大した。世界的な低金利で海外債券の利子収入が減少した一方で、海外子会社の業績が改善し内部留保が増えたことで所得収支を押し上げた。
旅行や輸送などのサービス収支は2745億円の赤字。海外からの特許使用料収入が増え赤字幅は514億円縮小した。
11月の街角景気、4カ月ぶり改善 家電エコポイント駆け込み需要で
内閣府が8日発表した11月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比3.4ポイント上昇の43.6と、4カ月ぶりに改善した。家電エコポイント制度変更前の駆け込み需要や、冬物衣料の売れ行きが好調だったことが寄与。たばこの駆け込み需要の反動減も落ち着き、指数を構成する家計、企業、雇用すべての指数が上昇した。
2-3カ月先の先行き判断指数は0.3ポイント上昇の41.4と2カ月ぶりに改善。円高進行への懸念が弱まり、企業、雇用の指数が上昇した。一方で、家電の駆け込み需要の反動減を懸念して、家計の指数は低下した。
内閣府は「家電エコポイント制度の影響という特殊要因を除けば基調は変わらない」として、判断を「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」に据え置いた。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は11月25日から月末まで。

機械受注統計のグラフは以下の通りです。一番上のパネルは船舶と電力を除く民需を青い折れ線グラフ、その後方6カ月移動平均を赤の折れ線、コア機械受注からさらに携帯電話を除いたコアコア機械受注を緑の折れ線でそれぞれ示しています。真ん中のパネルは外需、製造業、船舶と電力を除く非製造業の需要者別機械受注、一番下は船舶を除く受注残高とそれを販売で除した手持ち月数です。いずれも季節調整済みの系列で影をつけた部分は景気後退期です。

機械受注の推移

国内設備投資の先行指標となるコア機械受注は前月比で▲1.4%減となりました。市場の事前コンセンサスは▲2%減に近かったですから、サプライズはありませんでした。10月の実績だけでなく、10-12月期の見通しは前期比▲9.8%と5四半期ぶりの減少を見込んでおり、来年にかけて械受注とその帰結としての設備投資は大きく鈍化すると考えられます。キャッシュフローで見て、設備投資額はすでに減価償却を下回っているとの試算もありますが、来年初めにかけて、ようやく回復の始まった設備投資はいきなり停滞ないし横ばい局面に入る可能性があります。でも、先行指標である外需向けの受注が大きく増加していますので、案外と早く回復軌道に戻る可能性はあるかもしれません。楽観的なエコノミストとしては期待したいところです。

経常収支の推移

経常収支のグラフは上の通りです。折れ線グラフが合計の経常収支尻で、その内訳が棒グラフで示されています。色分けは凡例の通りです。相変わらず、所得収支が大きな黒字を記録していますが、円高などにより貿易収支の黒字幅が縮小しており、経常収支全体でも黒字が縮小しています。ただし、引用した記事は季節調整していない原系列の統計について記述していますが、上のグラフは季節調整済みの系列ですので、少し印象が異なるかもしれません。

景気ウォッチャー調査の推移

指標としては最後に、景気ウォッチャー調査の結果は上のグラフの通りです。赤い折れ線が現状判断DI、水色が先行き判断DIです。家電エコポイントの制度変更前の駆込み需要や天候要因による冬物衣料の売行き好調に起因して、現状判断DIは大きく上昇しましたが、多くの街角エコノミストは家電エコポイントに起因する駆込みは需要の先食いであろうと見なしており、先行き判断DIは余り変化ありません。

子ども手当の使途

最後に、経済指標以外で、昨日、厚生労働省から子ども手当の使途に関する調査結果が発表されていますので、グラフを書いてみました。上の通りです。一昨日には博報堂から「子ども手当」の実際の使途に関する保護者調査結果報告が発表されており、55.1%の家庭が子ども手当をすぐに使って、しかも、生活財源として使った30.9%が教育財源として使った24.2%を上回るとの結果を明らかにしています。政府予算が大詰めを迎える時期でもありますので、日を改めて来年度予算について考えたいと思います。

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2010年12月 7日 (火)

「足踏み」に下方修正された景気動向指数と順調な回復が見込まれる東アジア経済

本日、内閣府から10月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなるCI一致指数は100.7と前月よりも▲1.4ポイント低下しました。DI一致指数も33.3%まで低下し、早くからCI先行指数も低下を続けています。今年末から来年前半にかけての足元で踊り場まっただ中です。内閣府は基調判断を先月の「改善を示している。ただし、…(中略)… 足踏みの動きもみられる」から、今月は「足踏みを示している」に下方修正しています。8月の「改善を示している」2か月連続の下方修正で、10月の「足踏みを示している」まで落ちました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気動向指数、基調判断を2カ月連続で下方修正
内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(CI、2005年=100、速報)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比1.4ポイント低下の100.7と、2カ月連続で悪化した。エコカー補助金終了の影響や輸出の鈍化を受け、生産関連や消費関連の指数が低下したことが響いた。
基調判断は「足踏みを示している」へ、2カ月連続で下方修正した。前月は「改善を示している。ただし、足踏みの動きもみられる」だった。基調判断を2カ月連続で下方修正するのは、統計が現在の形になった2008年4月以来初めて。
記者会見した和田隆志内閣府政務官は「(政策)効果が発現して回復の兆しを見せていくことを見込んでいるが、今の状況ではまだ回復の足取りに下振れリスクがある」と語った。
数カ月後の景気の先行きを示す先行指数は1.4ポイント低下の97.2と4カ月連続で悪化。景気に数カ月遅れる遅行指数は、法人税収の増加などが寄与し、0.9ポイント上昇の89.2と2カ月連続で上昇した。
3カ月前に比べ改善した指標が占める割合を表すDIは一致指数が33.3と、18カ月ぶりに景気の良しあしの分岐点とされる50%を下回った。

いつものグラフは以下の通りです。上のパネルがCI一致指数と先行指数、下はDI一致指数です。いずれも影を付けた部分は景気後退期を示しています。

景気動向指数の推移

CI一致指数を構成する系列のうち、営業利益や有効求人倍率は景気押上げの方向に寄与したんですが、鉱工業生産指数、商業販売額、所定外労働時間指数などが軒並みマイナスに振れました。家電エコポイントの制度変更に伴うテレビの駆込み需要こそ見られましたが、エコカー補助金の終了や輸出の鈍化を受けて、生産や消費が悪化していることも事実です。上のグラフを見ても一致指数・先行指数ともに下降を示しており、内閣府が基調判断を下方修正したのも当然だという気がします。問題はいつまで景気が下降するかなんですが、早ければ年明け早々という強気のエコノミストもいれば、来年年央まで踊り場が続く考えるエコノミストもいます。私は後者に近かったんですが、米国経済の回復に伴って、我が国も来年年央よりは早めに景気回復軌道に復するように考えを改め始めています。

ついでながら、アジア開発銀行 (ADB) から Asia Economic Monitor - December 2010 が公表され、最新の東アジア発展途上国・新興国の経済見通しが明らかにされています。pdf の全文リポートの p.39 Table 11: Annual GDP Growth Rates から地域・国別の成長率見通しを引用すると以下の通りです。ただし、一番下の日米欧は見通しではなく、作業前提という位置づけです。

 200720082009ADB Forecast
20102011
Developing Asia10.16.65.48.67.3
Emerging East Asia10.46.75.28.87.3
ASEAN6.64.41.37.55.4
Brunei Darussalam0.2-1.9-1.81.11.5
Cambodia10.26.7-0.45.06.0
Indonesia6.36.04.55.96.3
Lao PDR7.87.26.57.47.5
Malaysia6.54.7-1.76.85.0
Myanmar5.53.64.45.05.3
Philippines7.13.71.16.84.6
Thailand5.02.5-2.37.64.5
Viet Nam8.56.35.36.77.0
Newly Industrialized Economies5.71.9-0.87.64.5
Hong Kong, China6.42.2-2.86.54.3
Korea, Rep. of5.12.30.26.04.6
Singapore8.51.8-1.314.05.0
Taipei,China6.00.7-1.99.84.0
China, People’s Rep. of14.29.69.110.19.1
Japan2.4-1.2-5.23.21.4
US1.00.0-2.62.82.6
eurozone2.80.4-4.11.51.4

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2010年12月 6日 (月)

政策・制度の変更や終了に起因する駆込み需要で7-9月期2次QEはかなりの高成長か?

内閣府による今週12月9日の発表を前に、先週の法人企業統計など、GDP速報に必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから7-9月期の2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回の統計はいきなり「過去の数字」とみなされる可能性があることから、可能な範囲で10-12月期かそれ以降に関する見方を取ったつもりです。2次QEですからあっさりした解説が多いんですが、その場合はこのブログへの引用もあっさりと済ませています。先行きについては長々と引用したケースもあります。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府 1次QE+0.9%
(+3.9%)
n.a.
日本総研+1.0%
(+3.9%)
小幅上方修正される見込み
みずほ総研+0.9%
(+3.7%)
10-12月期は個人消費中心にマイナス成長の可能性高い
ニッセイ基礎研+0.9%
(+3.8%)
それほど大きくは変わらない
第一生命経済研+0.9%
(+3.7%)
「自動車やたばこの駆け込み需要によって押し上げられた一時的な高成長」という構図は変わらない。景気認識に修正をもたらすものにはならない
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+1.0%
(+4.2%)
小幅に上方修正される見込み
三菱総研+1.0%
(+4.2%)
上方修正を予想
伊藤忠商事+1.1%
(+4.4%)
10-12月期の個人消費は当社予想を上回る可能性がある。但し、一時的な要因による消費拡大は、多くの場合において更に大きな反動減を伴う。今回も例外ではない。そのため、10-12月期の家電エコポイント商戦の盛り上がりは、来年1-3月期以降の反動減を増幅する

先行きの10-12月期については、エコカー補助金の終了による反動減と家電エコポイントの12月からの制度変更を前にした駆込み需要の綱引きなんですが、先行き、それほど明るい展望があるわけではない一方で、7-9月期はエコカー補助金終盤の駆込み需要でかなりの高成長を記録したんではないかと見込まれています。いずれにせよ、年率で3%をはるかに超えて4%に達しようかという成長率は潜在成長率水準を十分に上回っています。デフレ脱却の必要条件です。少なくとも、先行きは別にして7-9月期だけを取り出して考えれば、かなりの高成長といえます。当然ながら、先行きの景気を考える上での問題は、需要を先食いした駆込み需要の反動がこの先どうなるか、また、輸出が円高や米韓FTAショックからどのような影響を受けるか、などが中心的な論点となります。目先の話で来年いっぱいくらいまで、決して楽観は出来ないものの、それほど悲観する必要もないような気がします。

もっとも、中長期的な見通しは財政に依存します。このままでは5年は持たないと考える財政タカ派がいる一方で、私のような財政ハト派でも財政が持ちこたえられるのはこの先10年くらいと見込んでいますから、2020年くらいまでに我が国財政が破綻する確率は無視できません。現政権はどうするんでしょうか?

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2010年12月 5日 (日)

クリスマスを飛び越して早くも冬休みに思いをはせる

12月に入って、青山の街はすっかりクリスマス仕様になり、夜のイルミネーションはひとつ前のエントリーで写真をお示しした通りですが、私は何となくクリスマスを飛び越して年末年始のお休みに心が飛んでいる気がします。というのも、今年9月に発表されたイマドキ家族研究所の「1万人調査」の結果から、家族がいっしょに過ごす行事のアンケート結果にもある通り、「子どもの誕生日」というのもありますが、圧倒的に家族で過ごすのは年末年始に集中しているのが分かります。

家族で一緒に過ごす行事は?

ついでながら、11月18日付けのエントリーで候補60語を紹介したユーキャン新語・流行語大賞は「◆ゲゲゲの~」でした。12月1日に発表がありました。トップテンと特別賞も含めて以下の通りです。

トップテン
年間大賞
◆ゲゲゲの~
トップテン◆いい質問ですねえ!
トップテン◆イクメン
トップテン◆AKB48
トップテン◆女子会
トップテン◆脱小沢
トップテン◆食べるラー油
トップテン◆ととのいました
トップテン◆~なう。
トップテン◆無縁社会
特別賞◆何か持っていると言われ続けてきました。今日何を持っているのか確信しました…それは仲間です。

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表参道イルミネーションの鑑賞、ただし昨夜

昨日は、所属学会の年次総会に出席して、いろいろと勉強をしたり、ジャカルタ以来の旧知の先生と再会したりしましたが、取りあえず、昨夜の写真は以下の通りです。上の方は青山通り沿いの AVEXビル前のクリスマスツリー、下は表参道イルミネーションです。

AVEXビルのクリスマスツリー

表参道のイルミネーション

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2010年12月 4日 (土)

米国雇用統計のグラフィックスをチェックした後、所属学会の年次総会に参加する

昨日、米国の労働省から11月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月に比べてわずか+39千人の増加、うち民間部門がたったの+50千人増で、しかも、失業率が0.2%ポイント跳ね上がって9.8%になりました。いずれも季節調整済みの系列です。事前の市場コンセンサスを大きく下回り、極めて物足りない結果と受け止められています。まず、いつもの New York Times のサイトから記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。

Few New Jobs as Jobless Rate Rises to 9.8%
After several months of improvement, hiring by businesses slowed to a crawl in November, intensifying the debate over what can and should be done to reignite the economy.
The United States added a total of just 39,000 jobs last month, down from a gain of 172,000 in October, the Department of Labor reported on Friday. With local governments shedding jobs, the additions in the private sector were too small to reduce the ranks of the unemployed or even to keep pace with people entering the work force. The unemployment rate, which is based on a separate survey of households, rose to 9.8 percent.
The tally remains bleak. More than 15 million people are out of work, among them 6.3 million who have been jobless for six months or longer. Many are about to exhaust their unemployment benefits, which have been extended repeatedly by the government because of the severity of the downturn.
The latest snapshot of the labor market cast a pall over what had been a brightening picture of a steadying economy. The average number of people applying for unemployment benefits has been generally falling, pending home sales topped forecasts in October and retail sales posted one of their biggest increases in years last month.

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルが非農業部門雇用者数の前月差増減で、赤が政府を含みセンサスの影響で変動が大きく、水色は民間部門だけです。下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

米国雇用統計の推移

さらに、過去8回の景気後退期から景気回復初期にかけての雇用の増減を示すグラフです。景気後退に入る直前の景気の山の時点での非農業部門雇用者数をベンチマークにして、その後の増減をベンチマークからの増減の比率で示しています。前回2001年のITバブル後の景気後退でも Jobless Recovery といわれて、雇用が戻るのに48カ月近くを要しましたが、今回はもっと長くなりそうな予感です。

Jobless Recovery

最後に、New York Times のサイトから The Labor Picture in November を引用します。

The Labor Picture in November

もうすぐ出かけて今日の昼前からは所属する国際開発学会の全国大会に参加します。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で開催されています。長崎からはこういった学会に参加するのは不便だったんですが、さすがに東京は便利です。

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2010年12月 3日 (金)

最近読んだ話題のペーパーから

最近、いくつかの日本語サイトでも取り上げられていますが、NBER のワーキングペーパーから興味深い研究結果が発表されています。NBER からはいつも大量のペーパーが発表されていますので、すべてを見ているわけではありませんが、今夜は以下の2本のペーパーをごく簡単に取り上げたいと思います。

タイトルを見れば分かりますが、最初のペーパーは経済的な豊かさの指標のひとつであるGDPではなく、経済的厚生の水準を計測しようという試みです。私は必ずしも GDP が "a flawed measure" であるとは考えていませんが、いわゆる Stiglitz-Sen リポートも話題になりましたし、それなりに注目しています。計測結果はペーパーの p.22 Table 2: Welfare and Income across Countries, 2000 にいくつかの国が示されており、さらに、スタンフォード大学のサイトに Excel ファイルで詳細に提供されています。このデータを基に主要な国について、The Economist のサイトに画像が示されていますので、以下に引用します。

Standard of living and GDP

もうひとつのペーパーは11,571人を対象とした米国テネシー州のSTARプロジェクトの結果を取りまとめた内容で、何と、幼稚園を終了する段階でその後の人生が決まってしまっている可能性を示唆するものです。下のグラフは、ペーパーの p.54 Figure 1 Correlation between KG Test Scores and Adult Outcomes から引用しています。横軸が幼稚園終了時のテストのスコアを順位で相対的に並べたもの、縦軸は25-27歳時点での平均所得です。高校数学のレベルでも関数は y=ƒ(x) と学習しますが、横軸の x が縦軸の y を決定する定式化となっていて、見事なほどに相関しています。幼稚園卒業時のスコアの順位が高いほど高所得が享受でき、平均 $15,912 の所得に対して、1%ポイントの順位の違いが $132 の差をもたらすと結論されています。また、学級の人数は大きな影響がないものの、教員のスキルは影響が大きいとも指摘されています。ひょっとしたら、幼稚園終了時のスコアでもってその後の人生が決まってしまい、小学校の初等教育や中等教育、さらに、大学での高等教育を含めても、逆転することは難しいという結果が示唆されているのかもしれませんが、せいぜい27歳までしかフォローしていませんから、日本人的に言えば50年以上の人生が残っているわけで、その後の大逆転があるのかもしれません。この研究成果からは残り50年の人生については不明です。

Correlation between KG Test Scores and Adult Outcomes

いずれも9月に発表されたペーパーです。ご興味ある向きは最初にお示しした NBER のサイトをご覧ください。

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2010年12月 2日 (木)

増収増益も企業活動の鈍化を示す法人企業統計調査

本日、財務省から7-9月期の法人企業統計調査の結果が発表されました。ヘッドラインとなる売上げ、営業利益、経常利益などは季節調整をしていない原系列の前年同期比では増収増益でしたが、前期に比較してその幅は縮小しており企業活動の鈍化を示す形となりました。ただし、設備投資は前年同期比で3年半振りにプラスを記録しました。製造業がけん引しています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資3年半ぶりプラス 7-9月法人企業統計
経常利益は54%増

財務省が2日発表した7-9月期の法人企業統計によると、企業の設備投資は前年同期比5.0%増の9兆5550億円となった。輸送用機械を中心に製造業の投資が伸び、14期ぶりにプラスに転じた。売上高は6.5%、経常利益は54.1%それぞれ増え、3四半期連続の増収増益となった。ただ円高や海外経済の減速の影響で伸び幅は縮んでおり、先行きには不透明感も残っている。
今回の結果により、内閣府が9日に発表する国内総生産(GDP)の改定値で設備投資の項目が上方修正されるとの見方が強まっている。
法人企業統計は財務省が企業の収益動向や設備投資などを調べる統計で、四半期別調査では資本金1千万円以上の企業の仮決算をまとめる。財務省は7-9月期の結果について「総じて引き続き改善傾向にある」と判断している。
設備投資は参考系列として財務省が算出した季節調整値での足元の動きでも増加傾向。前期(4-6月)に比べ、1.9%増加した。実額ベースではリーマン・ショック当時の2008年7-9月期と比べて7割程度の水準にとどまっている。
産業別にみると、製造業では前年同期に比べて9.1%増で、9四半期ぶりのプラス。ハイブリッド車など輸送用機械、情報通信機械が数字を押し上げた。一方、景気の先行きの不透明感から石炭・石油業の投資は減った。非製造業は2.9%増で3期連続のプラスだった。コンビニエンスストアの出店で卸売・小売業が増えたほか、レンタカー事業者を中心に物品賃貸業が伸びた。
売上高は337兆2751億円で、3期連続の増収となった。ただ季節調整値での前期比では8.1%減となり、5四半期ぶりのマイナス。円高やアジア経済の減速による輸出の鈍化が、売上高に影を落としている。
産業別では、製造業が前年同期比で12.2%増加。自動車など輸送用機械や薄型テレビがけん引した。非製造業は4.1%のプラスだった。商社が扱う資源価格の上昇で卸売・小売業が好調だった。
経常利益は10兆7493億円となり、4期連続の増益を維持した。輸送用機械が好調だった製造業では、前年同期比で約3倍の利益を確保。非製造業では、自動車やたばこの販売増に企業のコスト削減効果も加わり19.9%増加した。

次に、報じ企業統計調査のヘッドラインをプロットしたグラフは以下の通りです。上のパネルは左軸に対応する売上高と右軸の経常利益、下はソフトウェアを除く設備投資です。単位はいずれも兆円ですが、引用した新聞記事とは異なり、季節調整済みの系列ですから、少し印象が異なるかもしれません。

法人企業統計調査の推移

引用した記事にもある通り、上のパネルの水色の折れ線で示した売上げ高は5四半期振りにマイナスを記録しています。製造業では円高や世界経済の鈍化に伴う輸出、それに、非製造業ではデフレの継続などに起因すると私は受け止めています。全体としても、前年同期で見た売上高や利益は伸び率を低下させており、企業活動が踊り場に差しかかっている可能性を示唆しています。特に、消費に関して政策や制度に起因する変動が大きく、たばこ値上げに伴う駆込み需要とその反動は影響が小さいとしても、エコカー補助金の終了と家電エコポイントの制度変更については、生産に及ぼす影響も大きく、今日発表された7-9月期の統計よりも10-12月期の統計でさらに大きな影響が観察される可能性があります。他方、設備投資は底を打って反転した印象がありますが、水準はまだかなり低いと言わざるを得ません。

労働分配率の推移

売上げや利益水準、設備投資などのヘッドラインに加えて、今回、私が注目したのは労働分配率です。上のグラフの通りですが、やや簡便に人件費を経常利益・減価償却・人件費の合計で除した比率です。いずれも季節調整済みの系列が発表されていませんので、後方4四半期移動平均を取りました。見れば一目瞭然なんですが、傾向として移動平均ではまだ下がっていますが、足元では2四半期連続で上昇しています。一昨日、雇用統計が発表された際に、恐ろしいほど緩やかな回復しか示していないと書きましたが、ひとつの背景と受け止めています。また、従来の景気循環局面と違って、極めて急激に上昇した後に、これまた、極めて急激に低下しています。雇用調整のあり方が従来と異なっている可能性が示唆されています。

最後に、来週の12月9日に発表される予定の7-9月期GDP速報2次QEに対しては、設備投資は上方修正される可能性が高いと私は受け止めています。このブログでも近く2次QE予想を取りまとめたいと考えています。

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2010年12月 1日 (水)

財政再建のために減速しつつ、さらに二極化する欧州経済見通し

一昨日の月曜日に、欧州委員会より「秋季欧州経済見通し」 European Economic Forecast - autumn 2010-2012 が発表されています。もちろん、pdf の全文リポートもアップされています。ユーロ圏17国の成長率で見て、2010年1.7%成長の後、2011年には1.5%に減速しますが、2012年には1.8%に再び回復するとの見込みになっています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

ユーロ圏1.5%成長に減速 11年予測、財政再建響く
欧州委の実質見通し 景気「二極化」強まる

欧州連合(EU)の欧州委員会は29日、2011年のユーロ圏の実質経済成長率が1.5%になるとの経済予測を発表した。財政赤字削減で景気に下押し圧力がかかり、成長率は10年より0.2ポイント低下、緩やかに減速する。ドイツを中心とする欧州北部の経済が堅調な一方、ギリシャやポルトガルは11年にマイナス成長を見込むなど域内景気は「二極化」の様相を強めそうだ。
レーン欧州委員(経済・通貨担当)は「域内の景気回復は一様ではない。国債市場の混乱は強力な政策対応が必要なことを示す」と表明。ユーロ圏の信用不安を払拭するための財政赤字削減と、潜在成長率上昇につながる構造改革の両立を加盟国に促した。
11年のユーロ圏の実質成長率が1.5%と、10年(1.7%)より鈍化する理由の一つは財政再建。11年は比較的財政状態が良好なドイツなどを含めてユーロ導入国が一斉に財政再建に着手、歳出削減や増税を通じて個人消費や設備投資などの伸びを抑える。
国別の実質成長率をみると、域内格差が浮かび上がる。ドイツは11-12年に2%台で推移する見通し。ドイツがけん引役となってオランダ、オーストリアなど周辺国の経済は底堅く、フランスも1%台後半の成長ペースを保つ。
半面、スペインは11年に3年ぶりにプラス成長に転じるものの、伸び率は0.7%と小幅のプラス。ポルトガルは2年ぶりのマイナス成長に戻る。巨額の財政赤字を抱える国々は市場での信認回復へ財政赤字削減が急務だが、短期的には実体経済の足を引っ張る。
11年の加盟国の財政状態は4年ぶりに改善する。ユーロ圏17カ国(11年1月にユーロ圏に加わるエストニアを含むベース)の財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は10年の6.3%から11年4.6%に低下する。

次に、「秋季欧州経済見通し」 European Economic Forecast - autumn 2010-2012 のサイトから、いくつか代表的な指標の見通し結果グラフを引用すると以下の通りです。上のグラフから、成長率、雇用、インフレ、となっており、最後の4枚目は成長率のファンチャートです。サイトには政府財政状態のグラフもあるんですが、引用した記事にもある通り、市場の信認にバラツキがありますので、欧州とか、ユーロ圏とかで一括することの意味がないような気がしますので割愛しました。

European Economic Forecast - autumn 2010-2012

成長率は政府の財政再建のために、一時もたつきますが、民間セクターの需要回復に従って徐々に上向く見通しとなっています。しかし、我が国とご同様に雇用の回復ははかばかしくなく、失業率もなかなか低下しません。物価は極めて落ち着いた動きとなっています。というか、デフレには陥らない見通しとなっています。引用した日経新聞の記事がかなり詳細に解説していますので、私から付け加えるべきことは余りなかったりします。
国別には、財政再建の道のりが遠いギリシアは2011年までマイナス成長を続けるとか、タイトルのように財政調整の必要に従って二極化が進んでいます。成長率に着目すると、ドイツが域内平均を上回るパフォーマンスを示す一方で、ギリシア以外でも、アイルランドとスペインは今年はマイナス成長、ポルトガルは来年がマイナスと見込まれており、財政調整のコストを反映しているようです。詳細については、pdf の全文リポートの181ページから始まる Statistical Annex を見るのが一番ですが、いつもの通り、ヨソさまのフラッシュに直リンしておきます。EU のサイトから引用しています。青で示されたユーロ圏諸国と水色のユーロを採用していない EU 加盟国については、クリックすれば別画面でチョッピリ詳細な見通し結果が示され、さらにそのページの Full Forecast をクリックすると別画面でより詳細なリポートが現れます。

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