もたつく機械受注と経常収支、ただし、景気ウォッチャーは駆込み需要で上昇
今日は、いろいろな経済指標が発表されました。まず、内閣府から10月の機械受注統計、財務省から10月の経常収支などの国際収支、さらに、11月の景気ウォッチャー調査結果も内閣府から発表されています。簡単に取り上げたいと思います。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
機械受注10月1.4%減 2カ月連続、通信業落ちこむ
内閣府が8日発表した10月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)が前月に比べ1.4%減の7457億円になった。マイナスは2カ月連続で、市場の事前予測(0.6%減)よりもやや下げ幅が大きかった。内閣府は機械受注の基調について、前月に続き「持ち直している」との判断を据え置いた。
ただ一部の業種で生産や輸出に減速感もあり、先行きには不透明感が残っている。
機械受注統計は工場の生産設備などの受注額をまとめたもので、3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す。減少の主因は変動の大きい携帯電話など通信業で、前月比3ポイントの押し下げ要因となった。携帯電話の受注額を除いたベースでは、前月比0.6%増の6823億円と堅調だった。
内閣府の和田隆志政務官は同日の記者会見で、足元の輸出の減速や年明け以降の消費動向を踏まえ、「明るい展望ではない」と指摘。「企業に元気になってもらわないといけない」とも述べ、来年度税制改正での法人税減税など企業の競争力強化策が欠かせないとの認識を示した。
業種別に受注額を見ると、製造業は前月と比べて1.4%増と2カ月ぶりのプラス。電気機械業から半導体製造装置の引き合いがあったほか、非鉄金属などが数字を押し上げた。携帯電話を含む非製造業からの受注額は、船舶・電力を含んだベースで1.1%減と2カ月連続で減少した。情報サービス業や農林漁業が低調だった。
経常黒字、円高響き伸び鈍化 10月2.9%増
財務省が8日発表した10月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆4362億円の黒字だった。円高で輸出額の伸びが鈍化し貿易収支が悪化したことで、経常収支の黒字幅は前年同月に比べ2.9%増にとどまった。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9129億円の黒字で、前年同月に比べ2.6%減少した。輸出額は8.8%増の5兆4143億円。中国や米国向けの自動車や金属加工機械が好調だったが、9月に比べ伸び率は7ポイント縮小している。
輸入は4兆5014億円で11.5%増えた。アジアや中南米地域からの輸入が増加しており、商品別では鉄鉱石のほか石炭や液化天然ガスが大きく伸びた。
投資による稼ぎを示す所得収支は8832億円で3.9%拡大した。世界的な低金利で海外債券の利子収入が減少した一方で、海外子会社の業績が改善し内部留保が増えたことで所得収支を押し上げた。
旅行や輸送などのサービス収支は2745億円の赤字。海外からの特許使用料収入が増え赤字幅は514億円縮小した。
11月の街角景気、4カ月ぶり改善 家電エコポイント駆け込み需要で
内閣府が8日発表した11月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比3.4ポイント上昇の43.6と、4カ月ぶりに改善した。家電エコポイント制度変更前の駆け込み需要や、冬物衣料の売れ行きが好調だったことが寄与。たばこの駆け込み需要の反動減も落ち着き、指数を構成する家計、企業、雇用すべての指数が上昇した。
2-3カ月先の先行き判断指数は0.3ポイント上昇の41.4と2カ月ぶりに改善。円高進行への懸念が弱まり、企業、雇用の指数が上昇した。一方で、家電の駆け込み需要の反動減を懸念して、家計の指数は低下した。
内閣府は「家電エコポイント制度の影響という特殊要因を除けば基調は変わらない」として、判断を「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」に据え置いた。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は11月25日から月末まで。
機械受注統計のグラフは以下の通りです。一番上のパネルは船舶と電力を除く民需を青い折れ線グラフ、その後方6カ月移動平均を赤の折れ線、コア機械受注からさらに携帯電話を除いたコアコア機械受注を緑の折れ線でそれぞれ示しています。真ん中のパネルは外需、製造業、船舶と電力を除く非製造業の需要者別機械受注、一番下は船舶を除く受注残高とそれを販売で除した手持ち月数です。いずれも季節調整済みの系列で影をつけた部分は景気後退期です。
国内設備投資の先行指標となるコア機械受注は前月比で▲1.4%減となりました。市場の事前コンセンサスは▲2%減に近かったですから、サプライズはありませんでした。10月の実績だけでなく、10-12月期の見通しは前期比▲9.8%と5四半期ぶりの減少を見込んでおり、来年にかけて械受注とその帰結としての設備投資は大きく鈍化すると考えられます。キャッシュフローで見て、設備投資額はすでに減価償却を下回っているとの試算もありますが、来年初めにかけて、ようやく回復の始まった設備投資はいきなり停滞ないし横ばい局面に入る可能性があります。でも、先行指標である外需向けの受注が大きく増加していますので、案外と早く回復軌道に戻る可能性はあるかもしれません。楽観的なエコノミストとしては期待したいところです。
経常収支のグラフは上の通りです。折れ線グラフが合計の経常収支尻で、その内訳が棒グラフで示されています。色分けは凡例の通りです。相変わらず、所得収支が大きな黒字を記録していますが、円高などにより貿易収支の黒字幅が縮小しており、経常収支全体でも黒字が縮小しています。ただし、引用した記事は季節調整していない原系列の統計について記述していますが、上のグラフは季節調整済みの系列ですので、少し印象が異なるかもしれません。
指標としては最後に、景気ウォッチャー調査の結果は上のグラフの通りです。赤い折れ線が現状判断DI、水色が先行き判断DIです。家電エコポイントの制度変更前の駆込み需要や天候要因による冬物衣料の売行き好調に起因して、現状判断DIは大きく上昇しましたが、多くの街角エコノミストは家電エコポイントに起因する駆込みは需要の先食いであろうと見なしており、先行き判断DIは余り変化ありません。
最後に、経済指標以外で、昨日、厚生労働省から子ども手当の使途に関する調査結果が発表されていますので、グラフを書いてみました。上の通りです。一昨日には博報堂から「子ども手当」の実際の使途に関する保護者調査結果報告が発表されており、55.1%の家庭が子ども手当をすぐに使って、しかも、生活財源として使った30.9%が教育財源として使った24.2%を上回るとの結果を明らかにしています。政府予算が大詰めを迎える時期でもありますので、日を改めて来年度予算について考えたいと思います。
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