財政再建のために減速しつつ、さらに二極化する欧州経済見通し
一昨日の月曜日に、欧州委員会より「秋季欧州経済見通し」 European Economic Forecast - autumn 2010-2012 が発表されています。もちろん、pdf の全文リポートもアップされています。ユーロ圏17国の成長率で見て、2010年1.7%成長の後、2011年には1.5%に減速しますが、2012年には1.8%に再び回復するとの見込みになっています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
ユーロ圏1.5%成長に減速 11年予測、財政再建響く
欧州委の実質見通し 景気「二極化」強まる
欧州連合(EU)の欧州委員会は29日、2011年のユーロ圏の実質経済成長率が1.5%になるとの経済予測を発表した。財政赤字削減で景気に下押し圧力がかかり、成長率は10年より0.2ポイント低下、緩やかに減速する。ドイツを中心とする欧州北部の経済が堅調な一方、ギリシャやポルトガルは11年にマイナス成長を見込むなど域内景気は「二極化」の様相を強めそうだ。
レーン欧州委員(経済・通貨担当)は「域内の景気回復は一様ではない。国債市場の混乱は強力な政策対応が必要なことを示す」と表明。ユーロ圏の信用不安を払拭するための財政赤字削減と、潜在成長率上昇につながる構造改革の両立を加盟国に促した。
11年のユーロ圏の実質成長率が1.5%と、10年(1.7%)より鈍化する理由の一つは財政再建。11年は比較的財政状態が良好なドイツなどを含めてユーロ導入国が一斉に財政再建に着手、歳出削減や増税を通じて個人消費や設備投資などの伸びを抑える。
国別の実質成長率をみると、域内格差が浮かび上がる。ドイツは11-12年に2%台で推移する見通し。ドイツがけん引役となってオランダ、オーストリアなど周辺国の経済は底堅く、フランスも1%台後半の成長ペースを保つ。
半面、スペインは11年に3年ぶりにプラス成長に転じるものの、伸び率は0.7%と小幅のプラス。ポルトガルは2年ぶりのマイナス成長に戻る。巨額の財政赤字を抱える国々は市場での信認回復へ財政赤字削減が急務だが、短期的には実体経済の足を引っ張る。
11年の加盟国の財政状態は4年ぶりに改善する。ユーロ圏17カ国(11年1月にユーロ圏に加わるエストニアを含むベース)の財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は10年の6.3%から11年4.6%に低下する。
次に、「秋季欧州経済見通し」 European Economic Forecast - autumn 2010-2012 のサイトから、いくつか代表的な指標の見通し結果グラフを引用すると以下の通りです。上のグラフから、成長率、雇用、インフレ、となっており、最後の4枚目は成長率のファンチャートです。サイトには政府財政状態のグラフもあるんですが、引用した記事にもある通り、市場の信認にバラツキがありますので、欧州とか、ユーロ圏とかで一括することの意味がないような気がしますので割愛しました。
成長率は政府の財政再建のために、一時もたつきますが、民間セクターの需要回復に従って徐々に上向く見通しとなっています。しかし、我が国とご同様に雇用の回復ははかばかしくなく、失業率もなかなか低下しません。物価は極めて落ち着いた動きとなっています。というか、デフレには陥らない見通しとなっています。引用した日経新聞の記事がかなり詳細に解説していますので、私から付け加えるべきことは余りなかったりします。
国別には、財政再建の道のりが遠いギリシアは2011年までマイナス成長を続けるとか、タイトルのように財政調整の必要に従って二極化が進んでいます。成長率に着目すると、ドイツが域内平均を上回るパフォーマンスを示す一方で、ギリシア以外でも、アイルランドとスペインは今年はマイナス成長、ポルトガルは来年がマイナスと見込まれており、財政調整のコストを反映しているようです。詳細については、pdf の全文リポートの181ページから始まる Statistical Annex を見るのが一番ですが、いつもの通り、ヨソさまのフラッシュに直リンしておきます。EU のサイトから引用しています。青で示されたユーロ圏諸国と水色のユーロを採用していない EU 加盟国については、クリックすれば別画面でチョッピリ詳細な見通し結果が示され、さらにそのページの Full Forecast をクリックすると別画面でより詳細なリポートが現れます。
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