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2010年12月10日 (金)

来年度予算について考える

2週間ほど先の12月24日に政府予算案の決定に向けて、さまざまな歳出歳入の注目点がメディアの報道を賑わせています。例えば、本日付けの日経新聞に従えば、歳入と歳出の総額がともに92兆円程度に上り、歳入のうち、税外収入7兆円、税収41兆円に対して、新規国債発行額が44兆円程度となっており、今年度予算と同じように国債発行による歳入が税収を上回ります。2年連続は先進国には例を見ないような気がしないでもありません。もっとも、歳出にも国債費が21兆円ありますから、プライマリ・バランスは▲20兆円を大きく上回る赤字となります。その昔、私が長崎に赴任する前には、2010-11年度からはプライマリー・バランスの赤字幅を縮小させ始め、景気次第で2014-15年度には黒字に転換する目標としていたような、かすかな記憶があるんですが、前政権与党の時代の見込みでもあり、まったく反故にされた形です。今夜のエントリーでは、これらの報道と併せて、12月6日に立て続けに公表された以下の与党の各種提言などをもとに、私なりに来年度予算に関する論点を整理したいと思います。

まず、最初の「平成23年度予算に関わる民主党『提言』」から、以下の9項目の重点的な取扱いが要望に上っています。

  1. 「特別枠」要望の取り扱い
  2. 子ども手当
  3. 一括交付金
  4. 農業関係予算
  5. 求職者支援制度
  6. 雇用保険国庫負担の本則化
  7. 待機児童解消「先取り」プロジェクトの実施
  8. 基礎年金国庫負担の確保
  9. 離島におけるガソリン価格の実質的な引き下げ

最初の項目の「特別枠」は「元気な日本復活特別枠」であり、いわゆる「政策コンテスト」により評価された政策の実施に関する予算です。元気な日本復活特別枠に関する評価会議においてすでに評価が終了しており、1.3兆円が計上される予定です。子ども手当は広く知られている通り、今年度から月額13000円の半額支給で開始され来年度は満額に至らず、3歳未満の子供を持つ親に対して2万円という案も報じられましたが、現時点では未定です。満額支給はあり得ませんが、もしも満額支給すると仮定すれば、出産一時金などと合わせて2.8兆円の財源が必要です。3番目の一括交付金はひも付き補助金を縮減の上、一括化するので財源は不用であろうと考えられます。4番目の農業についてはいわゆる農家の個別所得保障であり、約1兆円の財源が必要と報じられています。次の雇用対策は、求職者支援のほか、非正規労働者への雇用保険の拡大などを含み、5番目と6番目の2項目の合計で平年度ベース0.8兆円の財源が必要となります。7番目は官邸にアップされている「国と自治体が一的に取り組む待機児童解消『先取り』プロジェクト」を見ると、保育サービス従事者の増加による所得増で約0.5兆円が見込まれていますが、これが予算措置されるのか、保育料でまかなわれるのかは明確ではありません。8番目の基礎年金国庫負担½の確保には2.5兆円の財源が必要で、鉄道建設・運輸施設整備支援機構や外国為替資金特別会計の剰余金などを充てる案が浮上していると報じられていますが、まだ決着したわけではありません。
重点に入っていないうちで、割合と人口に膾炙している政策は、まず、高速道路の無料化です。上限2000円との報道がありましたが、本格的に完全無料化するためには1.3兆円の財源を必要とします。さらに、みんな忘れてしまっていると思いますが、ガソリン税などの暫定税率を廃止するには2.5兆円の財源が必要です。既に実施されているものとして公立高校の実質無償化には0.5兆円の財源がかかっています。もちろん、後期高齢者医療制度の廃止を含む医療・介護をマニフェスト通りに実施したり、来年度までの年金記録問題への対応を終えた後、年金を本格的に見直す動きが出る可能性があります。もっとも、年金については負担増と給付減にならざるを得ないと多くのエコノミストは考えていますが、選挙日程次第ではさらに財源を必要とする方向での制度変更がなされる可能性も排除できません。加えて、税制についても、かなり不透明な部分が残っています。法人税の取扱いが最たるものですが、報道によれば、法人税率の5%引下げのため、野田財務大臣はまだ財源が足りないと発言しています。最大で1.5兆円の財源を必要とする可能性があります。次にさらに、環境税も家計や企業の負担を増加させる可能性が高くなっています。そして、overall で新規国債発行44兆円というのが目標のような形でひとり歩きしています。自民党内閣時代には30兆円だったような気がします。44兆円であれば sovereign risk を低下させることが出来るかどうかはまったく不明です。いわゆる「事業仕分け」でもほぼ財源の捻出は底をついたような報道を見かけます。欧州をはじめとして世界的に sovereign risk が注目されている中、このまま財政赤字を垂れ流すと日本が世界経済の重大なリスクになる可能性を高めることにつながりかねません。他方、マニフェストから大きく外れる政策を実行するのであれば、総選挙で国民の判断を仰ぐ必要があると主張する向きもあります。

一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移

現与党の責任だけでないんでしょうが、日本の財政はほぼ行き詰まりました。上のグラフは財務省の「我が国の財政事情」 p.2 一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移を引用しています。最近、海外でも有名になった「ワニの口」が明瞭に観察されます。従って、来年度予算に関しても以下の2点の視点が必要です。すなわち、第1に、sovereign risk の観点から、このまま放置することは世界経済への無責任な態度と見なされる恐れがあります。第2に、今夜のエントリーからの直接の帰結ではありませんが、従来からこのブログで主張している通り、高齢者優遇に起因する世代間格差は社会的に許容できる範囲を超えた可能性があります。もしも、「支持率1パーセントでも」という覚悟があるのであれば、何とかすべき段階に達しているように私には思えてなりません。

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