今年最後の経済指標、生産統計と雇用統計と消費者物価と毎月勤労統計
今日は役所の御用納めです。昔は朝っぱらから酒を飲んだりしていましたが、今では夕方の勤務時間いっぱいまでお仕事です。ということで、本年最後の役所の稼働日で閣議日でもあります。いろいろと経済指標が発表されました。私が重要と考える順に、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率などの雇用統計が、そして、総務省統計局から消費者物価が、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ発表されました。いずれも11月の統計です。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産6カ月ぶり上昇 11月1.0%、自動車伸びる
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は前月比1.0%上昇の91.8だった。前月を上回るのは6カ月ぶり。年明けの需要増を見込んで自動車が生産を伸ばしたほか、携帯電話向けの液晶パネルなども指数を押し上げた。ただ10-12月期でみると2期連続でマイナスになる見通し。経産省は基調判断は「弱含み」で据え置いた。
11月の回復をけん引したのは輸送機械工業で、4.4%増と8カ月ぶりのプラスだった。エコカー補助金の終了で10月は10.0%低下したが、大幅な減産には歯止めがかかった形。国内向け小型・普通乗用車の生産が10年度末の需要期に向けて増えたほか、アジアや中近東向け普通乗用車も伸びた。自動車用タイヤを含むその他工業も4.1%増で6カ月ぶりに増えた。
品目別で見ると新機種の出た携帯電話が23.8%増と大きく伸びた。主に携帯電話向けの中小型液晶パネルの生産も中国や韓国向けで好調で、電子部品・デバイス工業は6カ月ぶりとなる3.1%増となり、全体の指数を押し上げた。
出荷指数は2.5%増の94.6だった。家電エコポイント制度で付与ポイントの縮小を前にした駆け込み需要があり、液晶テレビの出荷が急増。在庫指数も液晶テレビの減少などで、1.7%低下の95.0だった。
同時に発表した製造工業生産予測指数によると、12月は3.4%、1月は3.7%上昇する見込み。輸送機械工業で輸出向けなどの増産が予想されるためだ。ただ10月の落ち込みが大きかったこともあり、10-12月は1.6%減と2四半期連続でマイナスの見込みだ。指数水準は直近の低下開始前の5月(96.1)に届かない。
失業率横ばいの5.1% 11月、雇用情勢は一進一退
総務省が28日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は5.1%と前月に比べ横ばいだった。建設業や製造業の就業者が減ったものの、医療・福祉の分野で大幅に増えた。厚生労働省が同日まとめた11月の有効求人倍率(同)は前月から0.01ポイント上昇し0.57倍だった。一部の企業業績は回復に向かう一方で景気の先行きには不透明感もあり、雇用情勢は一進一退の状況が続いている。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。11月の完全失業者数(原数値)は前年同月に比べて13万人減の318万人と6カ月連続で前年水準を下回った。就業者数(同)も8万人減り6252万人と3カ月ぶりのマイナスだった。建設業(32万人減)や製造業(14万人減)などで減少が目立ったものの、医療・福祉(37万人増)や卸売業・小売業(32万人増)が増えた。
年齢別では15-24歳の失業率が0.6ポイント悪化し9.9%、25-34歳も0.6ポイント悪化の6.6%だった。一方で中高年は小幅改善した。男女別の失業率では男性が前月比横ばいの5.4%、女性が0.1ポイント悪化の4.7%だった。総務省は「勤め先の都合の退職が減るなどの改善傾向もみられるが、失業率は高水準で引き続き注視していく」と説明している。
ハローワークで仕事を求める人に1人当たり平均何件の求人があるかを示す有効求人倍率は7カ月続いて上昇した。都道府県別では福井の0.94倍が最も高く、沖縄の0.33倍が最低だった。雇用情勢の先行指標とされる新規求人倍率(季節調整値)は前月から0.02ポイント改善の0.95倍だった。
消費者物価、11月0.5%低下 耐久財落ち込む
総務省が28日発表した11月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.4となり前年同月に比べて0.5%低下した。21カ月連続のマイナスで、下落幅は前月に比べて0.1ポイント縮んだ。薄型テレビなどのデジタル家電や電気冷蔵庫といった耐久財の価格が落ち込んだ。物価が継続的に落ち込むデフレは依然として続いている。
生鮮食品を含めた物価の総合指数は前年同月比で0.1%上昇。生鮮野菜の値上がりが続き、2カ月連続のプラスとなった。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)は0.9%低下。低下幅は前月より0.1ポイント広がった。
品目別でみると政策による特殊要因が指数を左右している。プラス要因では10月からの増税の影響を受けたたばこが前年同月に比べて38.6%上昇し、指数を0.3ポイント押し上げた。マイナス要因では4月以降、高校授業料の実質無償化で「授業料等」が17.4%低下。指数を0.5ポイント押し下げている。
その他の品目では、デジタル家電の激しい値下げ競争が続く中、薄型テレビが前年同月比33.2%下がった。電気冷蔵庫も19.9%低下した。
物価の先行指数となる東京都区部の12月のCPI(中旬速報値)は、生鮮食品を除く総合指数が0.4%低下、食料とエネルギーを除いた総合指数は0.5%下がった。いずれも先月から低下幅が0.1ポイント縮まった。10年暦年の前年比では、生鮮食品を除く総合が1.2%のマイナス、食料とエネルギーを除いた総合指数が1.1%の低下だった。
次に、鉱工業生産のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルは鉱工業生産指数、下は製造工業と電子部品・デバイス工業の在庫率のそれぞれの推移です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。なお、先月と同じで、2年前のリーマン・ブラザース証券破綻後の急激な生産の落ち込みにより季節調整が歪んでいる可能性が指摘されていますが、ひとまず、今夜のブログでは無視しておきます。
引用した記事にもありますが、生産は薄日が差して来たように私は感じています。11月の鉱工業生産指数が6か月ぶりに上昇に転じた上、製造工業生産予測指数に従えば、12月、来年1月と増産が続くと見通されているからです。家電エコポイントの制度変更に伴うテレビの駆込み需要は11月で一段落したと考えられていますが、自動車とIT機器の増産が寄与しています。ですから、在庫率も10月がピークであり、すでに在庫調整は終了しつつある可能性も指摘されています。もっとも、12月の生産が予測指数通りの増産であったとしても、エコカー補助金終了に伴う10月の落ち込みが大きいため、10-12月期の生産は2四半期連続のマイナスであることに変わりありません。GDPもおそらく10-12月期はマイナス成長であろうと、私を含めた多くのエコノミストは受け止めています。
次に、雇用指標のグラフは上の通りです。これも上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、そして、一番下は産業別の雇用者数の前年同月差増減です。最後のグラフを除いて季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期です。最後の産業別雇用者数だけ季節調整していない原系列の前年同月差増減数です。毎月同じ感想ですが、景気の回復テンポが極めて緩やかなため、雇用の改善がほとんど実感されず、単に実感されないだけでなく、統計上も極めて緩やかな改善しか観察されません。この先、生産が増産に向かう中で、雇用の回復テンポがアップすることを願っています。
次に、消費者物価のグラフは上の通りです。すべて季節調整していない原系列の前年同月比上昇率なんですが、まず、折れ線は青が生鮮食品を除く全国のコアCPI、赤が全国のコアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIです。コアコアCPIでは食料とエネルギーを除いており、引用した上の記事では「欧米型コア」と呼ばれています。そして、棒グラフは全国コアCPIの前年同月比上昇率に対する寄与度を示しています。色分けは凡例の通りです。コアCPIは21か月連続の下落となり、デフレが続いています。しかも、グラフに見る通り、エネルギーの寄与度が+0.3%程度のプラスを示しており、欧米には例を見ないエネルギーを含むコアCPIであるにもかかわらず、プラス領域がまったく見通せない状況にあります。今年は、4月の高校実質無償化、10月のたばこ値上げといった制度要因がありましたが、来年はこの2つは剥落します。さらに、夏には基準改定のために▲0.5%ポイント程度の下振れが生ずると、私を含めた多くのエコノミストが考えています。5年前の基準改定の際には、部分的ながら結果的に間違っていた見通しが流布され混乱が生じましたから、今回の基準改定に関しては政策当局が基調判断を誤らないことを願うばかりです。
最後のグラフは毎月勤労統計調査から取っており、上のパネルは所定外労働時間指数、下は賃金指数の前年同月比上昇率です。所定外労働時間指数は季節調整済みの系列ですが、賃金指数は季節調整していない原系列の前年同月比上昇率を取っています。いずれも5人以上事業所の統計であり、影をつけた部分は景気後退期です。11月こそ増産に転じましたが、10月までの減産に伴って残業時間が減少し、その残業の減少に伴って11月の賃金は前年同月比で久し振りにマイナスに転じました。先行き、生産が増産に転じることにより、残業の増加から賃金も回復することを願っています。
繰返しになりますが、今日は御用納めでした。ということは、私は明日から冬休みに入ります。年間の長崎での単身赴任でも年末年始は東京の家族の元に帰っていたんですが、大学教授は正月明け早々からセンター試験で大忙しでしたので、今年の年末年始休みは昨年よりもお気楽そうな気がしなくもありません。
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