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2010年12月16日 (木)

日銀短観で緩やかな企業経営環境の悪化を確認!

昨日、日銀から12月調査の短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査の+8からやや下がって+5、さらに先行きは▲2となりました。しかし、この時期の短観の統計上のクセとして設備投資計画は上方修正されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。総じてメディアでは私が感じたよりも悲観的な論調が多かったような気がします。

日銀12月短観、景況感7期ぶり悪化 自動車・電機が減速
日銀が15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス5となり、9月の前回調査から3ポイント低下した。DIの悪化は2009年3月調査以来、7期(1年9カ月)ぶり。エコカー補助金の打ち切りや海外経済の減速が響き、自動車や電機を中心に景気の回復が足踏みしていることを映した。3カ月先を予想するDIはマイナス2だった。企業に先行きへの警戒感が強まっている。
企業の業況判断DIは景況感を「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。大企業製造業のDIはリーマン・ショック後の09年3月に過去最悪のマイナス58をつけた後、景気の持ち直しを受けて上向いてきたが、改善基調がいったん途切れたことになる。
大企業製造業の16業種のうち、自動車や電気機械など7業種が悪化した。自動車はプラス21と前回から11ポイント低下。エコカー補助金の終了を受けた販売の急減が響いた。電機は12ポイントの悪化。海外経済の減速や電子部品の在庫調整を反映した。
大企業非製造業のDIはプラス1で前回に比べ1ポイント低下。12業種中9業種が悪化した。小売りはマイナス3と、4ポイント悪化した。猛暑効果や10月からのたばこ増税を控えた駆け込み需要の反動が出た。電気・ガスや運輸・郵便の低下も目立った。
3カ月後を予想したDIは大企業製造業でマイナス2、非製造業でマイナス1となり、企業に「今後、自社を取り巻く環境が良くなる」という見方が後退していることを映した。大企業では28業種のうち21業種が悪化を予想している。
企業収益の先行き不透明感も色濃い。10年度の経常利益計画は大企業製造業で前年度比57.8%増で、前回調査の54.3%増から上方修正となった。ただ下期に限ると前年同期比11.7%の減益見込み。前回調査は2.7%の増益予想で、一転して減益となった。
10年度の想定為替レートは1ドル=86円47銭で、円が高値圏で推移していることを受けて前回の89円66銭から円高方向に修正された。下期は前回の89円44銭から83円87銭と現状の円相場に近い水準へと引き上げられた。
10年度の設備投資計画は大企業製造業で前年度比2.9%増と3年ぶりの増加を見込むが、前回調査の4.0%増から下方修正となった。10年度の新卒採用計画は大企業で前年度比31.1%減で、1994年度(32.0%減)に次ぐ過去2番目の大幅な減少となった。11年度にもさらに0.8%の減少を見込んでいる。

まず、産業別、規模別の業況判断DIの最近の推移を表に取りまとめると以下の通りです。6四半期連続で改善した企業マインドは9月調査で一時的なピークを付け、12月調査から低下を始め、次回の3月はさらに悪化するという見込みとなっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした日銀のリンクからお願いします。

業況判断DI2010/62010/92010/122011/3
(先行き)
全産業▲15▲10▲11▲18
大企業製造業+1+8+5▲2
中堅企業製造業▲6+4+1▲12
中小企業製造業▲18▲14▲12▲23
大企業非製造業▲5+2+1▲1
中堅企業非製造業▲13▲8▲10▲17
中小企業非製造業▲26▲21▲22▲29

上の表の業況判断DIをさらに長期にプロットしたのが下のグラフです。いうまでもありませんが、影を付けた部分は景気後退期です。

日銀短観業況判断DIの推移

企業マインドが一時的なピークを付けて踊り場に入るのは2004-05年にも経験しています。製造業のDIにとくに明瞭に現れています。しかし、前回9月調査の先行き予想ほど大幅なマインドの落ち込みではありませんが、やっぱり、先行きはマイナスに悪化すると考えるべきです。大企業はそれほどでもありませんが、中堅・中小企業では変化幅が大きくなっています。業種別に詳しく見ると、12月調査の現時点から先行きにかけての落ち込みが激しいのは、製造業では自動車、非鉄金属、電気機械、鉄鋼、非製造業では運輸・郵便、小売などです。一昨夜のエントリーでも指摘しましたが、典型的にエコカー補助金や家電エコポイントで需要を先食いした業界が反動減を警戒しているという気がしないでもありません。すなわち、極めて大雑把ながら、現状12月までは円高要因、来年以降の先行きは政策効果の剥落に起因するマインド悪化、と分けて考えることが出来るかもしれません。いずれにせよ、この程度のマインド悪化であれば2番底は回避したと受け止めています。

日銀短観設備投資計画と設備・雇用判断DIの推移

さらに、雇用や設備といった要素需要に関しては上の通りとなっています。一番上のパネルは設備投資計画です。大企業全産業の土地を含むベースですが、前回9月調査からリース会計対応となっていて、連続性がないので点線にしてあります。真ん中のパネルは設備判断DI、一番下は雇用判断DIで、それぞれプラスは過剰、マイナスは不足を表しています。影を付けた期間は業況判断DIと同じで景気後退期です。まず、設備投資計画は9月調査から0.5%ポイント上方修正されました。一見すると明るいニュースなのかもしれませんが、例年と同じ動きであり、短観の統計としてのクセと私は受け止めています。もしも、例年と同じ修正パターンが繰り返されると仮定すれば、2010年度の設備投資は最終的に前年度比1%を少し下回る増加率となりそうな気がします。ですから、必ずしも設備投資が順調とは私は考えていません。他方、設備と雇用の過不足感はレベルとして少し過剰感が残っているものの、今年に入ってから大きな変化は見せていません。特に雇用については、極めて緩やかにしか雇用過剰感が払拭されず、雇用の増加や失業率の低下につながっていない可能性があります。大学生や高校生の就職内定率が高まらない背景でもあります。

日銀短観新卒採用計画

本邦初公開で、上のグラフは規模別の新卒採用計画です。大学の場合でいうと、現在の4年生が大幅減の年にブチ当たってしまいましたが、私は現在の2年生、すなわち、上のグラフでいうと2012年度までマイナスを続けるんではないかと予想しています。重ねて同じことを書けば、雇用の改善は極めて緩やかでほとんど実感できないといえます。なお、私が注目した大企業製造業の「事業計画の前提となっている想定為替レート」は201年度下期で1ドル83.87円でした。ほぼ実勢レートに近づきました。逆に、現状よりも円高が進むとは余り想定していないようで、怖い気もしないでもありません。最後に、全体を短く取りまとめると、雇用や設備に対する過剰感はまだまだ根強い一方で、現状の景況感については意外と底堅いものの、来春くらいまでの先行きはかなり悲観的、といったところになりそうな気がします。円高要因よりも政策効果の剥落の方が落ち込みを激しくしている可能性が示唆されていると受け止めています。

一昨日12月14日まで開催されていた連邦公開市場委員会 (FOMC) で、連邦準備制度理事会 (FED) は景気の現状判断を11月3日 FOMC 後の "the pace of recovery in output and employment continues to be slow" から "the economic recovery is continuing, though at a rate that has been insufficient to bring down unemployment" と一歩進めました。実は、日本も米国も、そして世界経済も、要素需要は芳しくないものの、景気はそれなりに底堅くて、それほど悪化していなかったのかもしれません。それにしては、メディアの悲観的な論調はいったい何なのかと不思議です。

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