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2011年1月28日 (金)

IMF のリポートから日本財政のリスクを考え、今日発表の経済指標もフォローする

S&P が日本のソブリン格付けを引き下げたことについては、昨夜のエントリーの最後のパラでチラリと書いておきましたが、今日の全国紙各紙の1面を飾ったようです。これに加えて、昨夜、国際通貨基金 (IMF) から Fiscal Monitor Update: Strengthening Fiscal Credibility が発表されました。ここでも、日本は米国とともに取組みの遅れを指摘されています。まず、リポート の p.2 Table 1. Fiscal Indicators, 2008-12 を引用すると以下の通りです。クリックすれば別ウィンドウで pdf ファイルが開きます。

Table 1. Fiscal Indicators, 2008-12

見れば明らかですが、Overall Fiscal Balance、General Government Cyclically Adjusted Balance、General Government Gross Debt のそれぞれのGDP比が示されており、いかなる指標をとっても日米、特に日本が先進国の中で財政は最悪といえます。日米に対するリポートの結論部分を p.6 から引用すると以下の通りです。

The United States and Japan where fiscal adjustment has now been delayed relative to the pace envisaged in the November 2010 Fiscal Monitor, need in particular to strengthen their adjustment credentials by detailing the measures they intend to adopt to honor their commitments to reduce deficits and debt.

また、日本の財政赤字が注目を集めるに従って、国内の報道でもいくつか見かけましたが、日本国債に対するCDSスプレッドが上昇しています。リポートでも注目していて、p.5 に以下のグラフを掲げています。なお、どうでもいいことですが、グラフのタイトルは "CDS Spreads in G-5 Economies" となっているところ、"G-5" の間違いではないかと私は考えています。

CDS Spreads in G-5 Economies

しかしながら、CDS スプレッドはやや上昇しているものの、S&P の格付け引下げに従って、確かに、円レートが円安に振れたり、国債価格が下がって金利が上昇したりする動きは見られたようですが、目立って市場が反応したとは考えられていません。特に、国債金利については IMF のリポートでも p.5 で "a large and stable domestic investor base, and continued sluggish growth and deflation" としており、国内で国債消化が順調に進んでいる限りは目立った動きは表面化しない可能性があります。しかし、現在の政府が「44兆円枠」のような何ら経済合理性のない目標を設定して財政運営をしている限り、市場の反応が急変する可能性は排除できません。ソブリンについては一昨年くらいから欧州に注目が集まっていましたが、今年は日本に焦点が当たるのかもしれません。

最後に、本日、総務省統計局や厚生労働省から発表された雇用統計と消費者物価について、グラフとともに簡単に振り返っておきたいと思います。

雇用統計の推移

まず、上のグラフは雇用統計の推移です。上のパネルから、失業率、有効求人倍率、新規求人数、産業別雇用者数の前年同月差増減ですが、最後のグラフ以外は季節調整済みの系列であり、さいごの産業別雇用者数増減だけは季節調整していない原系列の前年同月差となっています。このブログでは何回も繰り返していますが、雇用の改善は極めて緩慢であり、本格的な消費の拡大には力不足と私は感じています。

消費者物価の推移

消費者物価上昇率は上のグラフの通りです。生鮮食品を除いた全国と東京都区部のコアCPI、食料とエネルギーを除いた全国のコアコアCPI、そして、全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。色分けは凡例の通りです。デフレが続いている一方で、物価上昇率のマイナス幅は縮小しつつあります。しかし、今年夏の基準改定直前の計測誤差である可能性が高いと私は受け止めています。

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